JP2018115374A - 高伸直性焼入鋼線の製造方法 - Google Patents

高伸直性焼入鋼線の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高伸直性の焼入焼戻し鋼線の製造方法を提供する。【解決手段】 鋼線を直進走行させて連続的に加熱・焼入・焼戻しする熱処理ラインにおいて、鋼線の走行駆動装置を3段に設け、初段と2段間で加熱と焼入を処理する際、速度比(=2段速度/初段速度)を1.04〜4.0として張力を発生させることにより熱間で伸直し、且つ該速度比に比例して延伸させ所望径に誘導し、2段と3段間には焼戻し加熱と常温への冷却を処理し、両速度比(=3段速度/2段速度)を1.005〜1.040とすることによりプレステンパー効果又は該効果+応力時効効果を発現させて伸直性を一層向上させる。【選択図】 図1

Description

本発明は伸直性が極めて優れた焼入焼戻し鋼線(通称オイルテンパー線、以下焼入鋼線と称する)の製造方法に関するものである。
焼入鋼線の主たる特徴は高強度と伸直性と広範囲の線径が得易いことである。例えばピアノ線では伸線加工によって強度を得るので太径線の製造は困難である。
使用される鋼種は高炭素鋼・ボロン鋼又は低合金鋼であり、製品径は通常1〜20mmであり、主な用途は、ばね、ニードル、ピン、シャフト、ブラシ、高強度鉄筋、プレストレストコンクリート等である。
焼入鋼線の一般的な製造方法は以下である。用途に合った適切な鋼種の線材が準備される。必要ならまず該線材に伸線加工を容易にするため熱処理がなされる。次いで製品径に向かって伸線されコイルに巻かれる。所定径の該鋼線を熱処理装置に直進させ連続的に焼入焼戻しを行って焼入鋼線のコイルへと巻き取られる。
鋼線は伸線によりリング状に形成され巻き癖を持っているが、熱処理に際しては多少の張力を持つ直進状態で焼入・焼戻しされるので伸直になる。さらに巻取では弾性範囲内で巻かれるので外形はコイルになるが結束を外すと伸直に戻る。しかし数メートルの範囲で見ると弓なりの曲がりや捻れ(螺旋状)が残存するのがよく解る。
適用される製品によっては該曲がりの大きさが問題とされる。例えば長身のコンクリートパイルの緊張材に使用する場合、曲がりは自動加工機の作動トラブルの原因となる。精密ピンでは超伸直性を得るため研磨仕上げ工程が附加される。その際材料鋼線の曲がりは研磨厚さが増加し作業能率を大きく阻害する。ばねでは半端な曲がり癖は製品はね寸法のバラツキを誘発する。
伸直性に影響する要因を考察する。
伸線において鋼線はダイス通過過程で一定の巻き癖が付けられ曲がりと多少の捻れを持つ。該鋼線を加熱装置に直進させて加熱すると該曲がりは矯正される(熱間逆曲げ加工)。しかし多少張力を作用させても曲がりの内外寸法差が完全に無くなるわけではなく曲がりが残る。
次に焼入のため急冷する際、鋼線の接線方向に関して必ずしも均等に冷却されるわけではない。ある側面はタイミングが早く、又は強く冷却されることがある。焼入歪みにより新たな曲がりが生ずることがある。
焼戻しでは接線方向、軸方向とも比較的均一加熱がやり易いが、焼戻しに併発する収縮により新たな歪みが加わることがある。
加熱装置の構造、冷却装置の構造に関係して加熱区間が長い場合、鋼線は直進と言えども厳密には自重により懸架曲線(カテナリー)を描く。超伸直性を追求する場合、熱間での該作用は検討対象になる。
伸直性に関わる先行技術を検討する。
先行例1として、非特許文献1には張力状態で直進する鋼線に局所加熱と直後の急冷により鋼線を該加熱部で連続的に且つ均一に延伸加工する方法(通称 Dieless Drawing, ダイレス引抜)が記載されている。本方法では、1)延伸比は鋼線の送り速度と巻取速度の比に一致する、2)断面形状は正確に相似的に縮小する、3)張力により熱間延伸するので材料鋼線の曲がりは消去される。
先行例2として、特許文献1には、上記加工方法を通常の鋼線の焼入焼戻しラインに応用した例が開示されている。それによると、1)1種の線径の鋼線から種々の線径の製品が効率的に製造される、2)熱間延伸量に依存して疑似オースフォーム効果(強靭化)が誘発される、3)ばねに適用する場合、ばね常数は線径の4乗に比例することから線径・偏径差が厳しく管理されている。正確な計算からは断面積の2乗に比例することから断面積管理の方が合理性があり且つ容易であるとしている。断面積管理は速度比により容易になされる。
問題点は、製品の伸直性は熱間延伸により改善されるが、焼入時に発生する焼入歪みや焼戻し時に発生する焼戻し歪みに対しては特に考慮されず微妙な曲がりは残る。
焼入鋼の他の問題点として、製品鋼線には焼入時の冷却収縮と変態膨張、焼戻し時の熱膨張と変態収縮とに関係して残留応力が発生する。該応力は意図した分布に制御されれば利用可能ともなるが、多くは成り行き次第であって不利な方向に作用する。例えば焼きワレは冷却時・焼戻し時だけでなく経時後にも発生する。また該応力は経時変形等の不都合な現象の原因にもなる。残留応力は緩和されていることが望ましい。
特許第4038541号 特許第4284396号 特願2012−249858
小畠ら;"ダイレス引抜の研究1"塑性と加工、vol20,no.224(1979-9),p814 小畠ら;"ダイレス引抜の研究2"塑性と加工、vol21,no.228(1980-1),p52
以上述べたように被処理材の鋼線を熱処理ラインに直進走行させて連続的に焼入焼戻しした焼入鋼線は加熱の1効果として通常伸直性を持つが材料の曲がり癖を残している。
先行例2の鋼線を熱間で延伸させるダイレス引抜を焼入焼戻しに組み込んだ方法においては材料鋼線が持っていた曲がりは解消される。しかし焼入時と焼戻し時に新たに発生する微妙な曲がりに対処することはできず、高度の直進性には届かない。
本発明は焼入鋼線の製造方法において、先行例2の方法におかる新たな該曲がりを解消し、伸直性を一層改善する方法を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本願発明は以下である。
鋼線を直進走行させて連続的にダイレス引抜に続いて焼入焼戻しを適用する方法において、鋼線の駆動装置が3段から成っていて、
1)第1段は走行パスの入り口部にあって、被処理材の鋼線を所定速度で引き出して走行パスに送り出し、
2)第2段は冷却変態後に設けられ、該第1段に対する該第2段の速度比を1.04以上4.0以下として張力により冷却直前部において延伸を誘発させ、
3)第3段は焼戻し後に設けられ、該第2段に対する該第3段の速度比を1.004以上1.040以下として張力により焼戻し部位においてプレステンパー又はプレステンパーと応力時効の両作用を誘発させ、伸直効果を前記延伸に重複させることを特徴とする高伸直性焼入鋼線の製造方法である。
本願発明は引用2の発明を改良したものであって、引用発明の効果の上に新たに製品に対してプレステンパー効果等が附加される。
1) 被処理鋼線は熱間で延伸作用を受けるので先行例2と同様に伸直性の良い焼入鋼線が得られ、さらに焼戻し時には線軸方向の張力によるプレステンパー処理を受け、焼入歪み・焼戻し歪みを矯正するので高伸直性の焼入鋼線が得られる。
2) 焼入鋼線は鋼種・線径・線速・冷却方法等に依存して通常固有の残留応力を持っている。プレステンパーによる延伸は残留応力分布を緩和させ、遅れ破壊やH脆化に対して弱い焼入鋼には好都合な処理となっている。
3) プレステンパーとは焼戻し中のある温度帯・ある時間帯において一時的に降伏力が低下する現象を利用した矯正加工法である。低応力下の歪み量には限度がある。変形容易量が消費されると降伏力は正常値に戻り、限度を超える速度比を与えた場合プレステンパー終了後に温間延伸が発現する。温間応力時効効果(Hot Stretch)が誘発され、降伏点の向上・耐リラクセーション性の向上が得られる。
4) 先行例2の発明の効果を全て合わせ持つ。
線速比の調整のみで一種の線径の被処理材から多種線径の焼入鋼線を無停止で効率的に製造することができる。多品種少量生産や稼働率向上に対して有利になる。
5) 熱間延伸比が約1.3以上あればオースフォーム効果が発現し、製品の延靭性が多少向上する。
6) 熱間延伸では相似形が維持されるので多種径の異形線の製造が簡素になる。
本発明の高伸直性焼入鋼線の製造方法を実施する装置の概略構造を示す。 先行例2の発明の熱処理方法を実施する装置の概略構造を示す。 鋼線を連続的に焼入焼戻しする通常の熱処理装置の概略構造である。 鋼線を連続的に焼入焼戻しする通常の熱処理装置の他の例の概略構造である。 本発明の第2段速度/第1段速度と延伸比の関係の実験例を示す。 本発明を通常の焼入ライン(図3)を使用して実験し、線径の長さ方向の変化を示す。
以下本発明の高伸直性焼入鋼線の製造方法を図面に従って説明する。
図1において被処理材である所定線径の鋼線1が直進走行の熱処理パス2に供給される。該鋼線1は第1段駆動装置3(例えばタンデム式ピンチロール)によって第1段加熱装置4(例えば高周波加熱コイル)を通過しつつ金属組織がオーステナイトに変態し且つ所定温度に加熱される。該加熱装置4の直後には冷却装置5が設けられ、該冷却装置5(例えば円錐頂点集中式のスプレイ冷却装置)を通過しつつ接線方向均一に常温まで冷却され焼入される。
次いで該鋼線1は第2段駆動装置6により引き抜かれ第2段加熱装置7を通過し所定温度の焼戻しを受ける。次いで焼戻しが終わる部位に設けられた第2段冷却装置8により常温まで冷却される。次いで第3段駆動装置9により該鋼線1は引き抜かれ且つ走行して旋回する巻取機10に送給され弾性的に曲げて巻取られ、製品コイル11が形成される。
各駆動装置は鋼線との間で滑りが生じないよう設計されている。
第1段駆動装置3の速度(V1 )に対して第2段駆動装置6の速度(V2 )は一定の比率で増速する。鋼線1は張力により第1段加熱装置の出口(最高温度部)において相似形を維持しつつ延伸する。滑りが無いので該速度比(=V2 /V1 )に比例して鋼線の延伸比(=延伸後長さ/延伸前長さ)が決まる。比例係数は1である。所望線径が得られるように両速度を設定し維持する。線径センサー15(例えばレーザー式プロフィルメーター)により常時追跡する。線速は例えば速度センサー12、13によって計測し制御する。鋼線は熱間延伸加工を受けるので保有していた巻き癖は解消され伸直状態となっている。
延伸比は1.04以上4.0以下が望ましい。
該延伸比の下限値の根拠は以下である。通常の走行式焼入焼戻しラインにおいては曲がり防止のため入側速度に対して巻取側速度を約1〜3%増速し張力状態を維持している。該増速量には熱膨張分・弾性伸び分・塑性伸び分が含まれている。製品線径は塑性伸びによるわずかな縮小を見越して管理されている。本発明では現行条件外であって、且つ曲がりが一層矯正されるよう4%を下限とした。
上限値に関しては熱間延伸加工の先行例2(特許文献2)を実施した事例(特許文献3)で既に3倍が達成されており、今後4倍程度は充分可能と見なされることを根拠とした。
速度比の変更により1種の線径から多種の線径の製品を容易に製造することができる。また該比を連続的に変更することにより無停止で線径変更が可能となる。過渡期部分は巻取直前部位において排除する。焼入ラインへの延伸の組込は生産性を向上させる。
焼入鋼に対して熱間延伸は他の効果、即ちオースフォーム効果を誘発することが引用文献2に記載されている。必要延伸量の下限は該文献内で引用している文献から1.3程度と見なされる。
第2段駆動装置6に対して第3段駆動装置8の速度(V3 )は一定の比率で微増速し、速度比(V3/V2)は1.005以上1.040以下とする。
鋼線1は張力により第2段加熱装置の出口近辺から下流にかける焼戻し区間の一部におい微少に延伸する。その結果焼入歪みが修正されるとともに焼戻し歪みの発生も抑制されて伸直性が一層向上する。
第2段冷却装置の下流側に線径センサー16を、第3段駆動装置の下流側に線速センサー14を設け線径と速度比を管理する。
伸直に関して冶金学的には以下と説明される。焼戻し中のある温度帯ある時間帯において過飽和炭化物の拡散・析出・格子歪みの緩和が起こり、その過程で降伏応力の異常低下が発現する。当該時期に拘束力を作用させると焼入歪みを容易に矯正することができる。該処理はプレステンパーと称される。特に硬度の大きい鋼種ほどプレステンパー効果が出し易いと言われている。本願発明では該処理を適用して鋼線の伸直性を改良する。
約500℃の焼戻し温度において鋼線は熱膨張している。一方焼戻しにより変態収縮が発生する。差し引き膨張が残る。本来上記速度比と区間の伸び率は比例関係にあるが膨張が介入するとズレが生ずる。焼戻し区間が長く且つ前後速度差が小さいと張力が緩和して所望効果が得られないこともある。上記速度比の適正値は特に下限値に近い場合は一概には決められず実測に基づいて前記範囲内で修正することが望ましい。
もしズレが無いならば鉄の弾性係数から歪み(=伸び率=伸び量/初期長さ)約0.005に対してプレステンパーに充分な応力(1000MPa )が得られる。従って上記速度比(=第3段速度V3 /第2段速度V2 )の下限値は1.004は妥当である。
プレステンパー処理により焼入鋼特有の残留応力は緩和される。表面接線方向の引張残留応力とスジキズが起因となる置きワレ(1種の遅れ破壊)や軸方向残留応力が関係するコイルのヘタリ(経時変形)等の問題に対して有利に作用する。
プレステンパーを誘発させる上記速度比(V3 /V2 )を大きくすると、プレステンパーによる限られた伸びの後に温間引張による延伸が生ずる。これは応力時効効果(Hot
stretch)を誘発する。即ち降伏点の上昇、耐リラクセーションの向上が得られるが他方伸びや捻りの延性は多少低下する。後工程で塑性加工しないプレストレス用とかピン等に対しては好ましいがばね用等には加工性が低下して好ましくない。従って上記速度比は用途に対応した値を設定しなければならない。
ホットストレッチ加工には通常約2%の伸びが附加される。ズレ(約1%)とプレステンパー分(約1%)の加算を考慮して上記速度比の上限値1.040は妥当とされる。
ライン各部の構造について補足する。
駆動装置として多段ピンチロールを例示したが線径が大きくそのため大きな牽引力を要する場合、耐摩ゴムを装着した圧着ベルト式が良い。
速度センサーには一般的な回転数計測式よりも精度が高い光学・電子式がよい。
線径測定には断面形状を測定するレーザー式プロフィルメーターが適切である。
第1段加熱装置には直接通電加熱も良い。高速加熱が必要である。加熱炉を使用すると昇温速度が小さく最高温度部が長くなって延伸が不安定で断線が発生し易い。
冷却装置には穏当な冷却を期待して油浸漬する一般的な方法よりも強冷却の水冷を使用して円周均等に処理する方がより良い。
巻取に対してはヘタリ(長期在庫による曲がり)が生じないよう曲げ応力を弾性限内に止めることが必要である。それにはコイル径を線径の約200倍(歪み=1/200=0.005,応力=1000MPa)以上とする。
焼入ラインの先行例について検討する。
図2は先行例2(引用2)の方法を示す。鋼線の駆動装置は2段から成る。両区間内に加熱と焼入が組み込まれ速度差により熱間延伸がなされる。その後は従来通り単純に焼戻しがなされる。生産性の向上、材質改善が加わる。
本願発明は当該方法に新たな冶金的処理(プレステンパー)を附加して製品の品質・性能の向上を図ったものである。
図3は一般的な焼入ラインの例を示す。2段の駆動装置により鋼線は直進するが、引用2と異なり、第2段の駆動装置は焼戻し後の部位に設けられている。この場合、経験的に設定された1〜3%の速度差により焼戻し区間にも張力が作用する。焼戻し部位よりも高温部の方が耐力が小さく高温部で微少延伸して速度差は吸収されプレステンパー効果は誘発されない。
図4は一般的な焼入ラインの他の例を示す。巻取機が第2段の駆動装置を役割を果たす。
この場合も同様に焼戻し部位において張力が作用するがプレステンパー効果は得られない。
またコイル径が変化するので巻取速度(=ライン走行速度)を一定にする補助機構が必要になる。
焼入鋼線の性質に及ぼす張力の作用を明らかにするため、従来方法である図3の装置を使用して先行例2の熱間延伸・焼入焼戻し鋼線を試作した。供試材は鋼種SAE9254、直径4.23mmのばね鋼線であり、高周波加熱・水冷ノズル焼入・高周波焼戻しの直進ラインにおいて線速80m/分、920℃加熱、490℃焼戻しを行った。
初めに、焼戻し後に配置された第2段駆動装置6の速度調整により第1段に対する2段の速度比を種々変え、線径変化から延伸比を求めた。図5は速度比と延伸比との関係を示す。図から多少ズレはあるが理論通り両者は比例関係にあることが解る。先行例2の方法の実証事例となる。
次いで、線速比1.10において第1段の加熱電源を切断し、以後の非加熱部が巻き取られるまで同一速度比で焼戻しのみを継続した。ピンチロール式の第2弾駆動装置において圧痕スジを軽減するため圧下力を半減させた。断線は発生しなかった。鋼線の関連部分における直径の長さ方向変化を図6に示す。加熱停止後線温は急速に低下するので熱間延伸は無くなる。線径変化も正常延伸から無延伸を示す。しかも断線しなかったのは圧下力不足によって鋼線とロール間に滑りが生じ、駆動力の多くが逃げたと解釈される。
図6には奇妙な事実が認められる。線径は正常な延伸焼入状態部分(図中A)から延伸消滅(同D)への変化を示すが、過渡期(同C)の少し前(同B,正常に焼入焼戻しされている)で線径は少し小さい方へ偏っている。これは高温部が無くなって張力(速度差)がそのまま焼戻し部位に作用し、張力水準がそれ以前よりも大きくなり、わづかだが当該部で延伸が発生していることを示す。正常な部分Aと過渡期前Bと非加熱部Dの鋼線の曲がり(=円弧の高さ/m)を測定すると、それぞれ約20mm、約5mm、約300mmとなり、伸直が一層進行した、即ちプレステンパー効果が認められたと言える。
1;鋼線 2;熱処理パス 3;第1段駆動装置 4;第1段加熱装置 5;第1段冷却装置 6;第2段駆動装置 7;第2段加熱装置 8;第2段冷却装置
9;第3段駆動装置 10;巻取機 11;製品コイル 12,13,14;速度センサー 15,16;線径センサー
次に焼入のため急冷する際、鋼線の接線方向に関して必ずしも均等に冷却されるわけで
はない。ある側面はタイミングが早く、又は強く冷却されることがある。焼入歪みにより
新たな曲がりが生ずることがある。
焼戻しでは接線方向、軸方向とも比較的均一加熱がやり易いが、焼戻しに併発する収縮
により新たな歪みが加わることがある。
加熱装置の構造、冷却装置の構造に関係して加熱区間が長い場合、鋼線は直進と言えど
も厳密には自重により懸垂曲線(カテナリー)を描く。超伸直性を追求する場合、熱間で
の該作用は検討対象になる。
以上述べたように被処理材の鋼線を熱処理ラインに直進走行させて連続的に焼入焼戻しした焼入鋼線は加熱の1効果として通常伸直性を持つが材料の曲がり癖を残している。
先行例2の鋼線を熱間で延伸させるダイレス引抜を焼入焼戻しに組み込んだ方法においては材料鋼線が持っていた曲がりは解消される。しかし焼入時と焼戻し時に新たに発生する微妙な曲がりに対処することはできず、高度の直進性には届かない。
本発明は焼入鋼線の製造方法において、先行例2の方法における新たな該曲がりを解消し、伸直性を一層改善する方法を提供することを解決すべき課題とする。
延伸比は1.04以上4.0以下が望ましい。
該延伸比の下限値の根拠は以下である。通常の走行式焼入焼戻しラインにおいては曲がり防止のため入側速度に対して巻取側速度を約1〜3%増速し張力状態を維持している。該増速量には熱膨張分・弾性伸び分・塑性伸び分が含まれている。製品線径は塑性伸びによるわずかな縮小を見越して管理されている。本発明では現行条件外であって、且つ曲がりが一層矯正されるよう4%を下限とした。
上限値に関しては熱間延伸加工の先行例3(特許文献2)を実施した事例(特許文献3)で既に3倍が達成されており、今後4倍程度は充分可能と見なされることを根拠とした。
延伸比は1.04以上4.0以下が望ましい。
該延伸比の下限値の根拠は以下である。通常の走行式焼入焼戻しラインにおいては曲がり防止のため入側速度に対して巻取側速度を約1〜3%増速し張力状態を維持している。該増速量には熱膨張分・弾性伸び分・塑性伸び分が含まれている。製品線径は塑性伸びによるわずかな縮小を見越して管理されている。本発明では現行条件外であって、且つ曲がりが一層矯正されるよう4%を下限とした。
上限値に関しては熱間延伸加工の先行例3(特許文献2)を実施した事例(特許文献3)で既に3倍が達成されており、今後4倍程度は充分可能と見なされることを根拠とした。

Claims (1)

  1. 鋼線を直進走行させて連続的にダイレス引抜に続いて焼入焼戻しを適用する方法において、鋼線の駆動装置が3段から成っていて、第1段は走行パスの入り口部にあって、被処理材の鋼線を所定速度で引き出して走行パスに送り出し、第2段は冷却変態後に設けられ、該第1段に対する該第2段の速度比を1.04以上4.0以下として張力により冷却直前部において延伸を誘発させ、第3段は焼戻し後に設けられ、該第2段に対する該第3段の速度比を1.004以上1.040以下として張力により焼戻し部位においてプレステンパー又はプレステンパーと応力時効の両作用を誘発させ、伸直効果を前記延伸に重複させることを特徴とする高伸直性焼入鋼線の製造方法。
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