JP2018115259A - グラフト共重合体及びその製造方法 - Google Patents

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栄一 石田
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雄介 天野
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Kazuhiko Maekawa
一彦 前川
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Abstract

【課題】耐熱水性およびガスバリア性に優れ、ポリスチレンとの良好な接着性を有するグラフト共重合体を提供する。【解決手段】所定の単位構造を有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であって、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を主鎖とし、所定の繰り返し単位から構成される重合体を側鎖として有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であり、前記側鎖の一部または全部が、前記主鎖の2級炭素原子または3級炭素原子に結合しているエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体とする。【選択図】なし

Description

本発明は、新規なエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体及びその製造方法に関する。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、優れた耐気体透過性、耐油性、親水性を有した熱可塑性樹脂であり、種々の包装体、シート、容器等に広く利用されている。一方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体は親水性が高いことから、吸湿可塑化によるバリア性の低下や、疎水性樹脂との接着性に劣るといった課題も有している。前者については、例えば廃棄時の環境負荷が大きい金属缶やガラス瓶の代替を目指す包装材料には、レトルト処理時の高温・多湿雰囲気下においても、これらの気体(ガス)を長期にわたり遮断するガスバリア性を備えていることが、強く求められている。こうした耐熱水性を改善する手段として、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に架橋を施す技術がこれまでいくつか提案されている。例えば、架橋剤による化学架橋(特許文献1)、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の変性による溶融成形時の架橋(特許文献2および3)の手法が開示されている。エチレン−ビニルアルコール系共重合体に架橋を導入することにより、レトルト処理時におけるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の白化・変形・バリア性の低下等の、性能や品質の低下を防ぐことができるが、特殊な架橋剤を使用する必要があったり、樹脂の変性に加え成形加工後に高エネルギー線の照射工程を必要としたりする等、工程の煩雑化が問題であった。
後者については、例えばカップやトレイ等硬質の包装用途として使用されるポリスチレンをベースとしたバリアシートは、エチレン−ビニルアルコール系共重合体がそのバリア層として使用されている。エチレン−ビニルアルコール系共重合体はポリスチレンとの接着性を有しないため、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体からなる接着材を用い接着する方法が知られている(例えば、特許文献4を参照)。しかし、本法ではポリスチレン層、接着層、エチレン−ビニルアルコール系共重合体層の3種5層構造を共押出する必要があり、高度な成形技術が求められるだけでなく、特殊な成形設備を必要とする等課題があった。
他方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に疎水性基を導入する試みも提案されている。例えば特許文献5には、末端にカルボキシル基を有するスチレン−ブタジエンゴムとエチレン−ビニルアルコール系共重合体のエステル化反応により、側鎖にスチレン−ブタジエンゴムを有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体が例示されている。しかし、本法では側鎖が主鎖とエステル結合を介して結合していることから、高湿熱下では加水分解により側鎖が分解、脱離する懸念を抱えていた。
特開昭63−8448号公報 国際公開第03/072653号 特開2011−162255号公報 特表2010−500450号公報 特開2016−000797号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、耐熱水性、ガスバリア性に優れ、ポリスチレンとの良好な接着性を有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体(以下、「グラフト共重合体」と略称する場合がある。)を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の主鎖にスチレン構造を有するグラフト鎖を導入することによって、高い結晶性を維持しつつ耐熱水性、ガスバリア性とポリスチレンとの接着性を改善することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、上記課題は、
[1]下記式(I)で表される単位構造を有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であって、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を主鎖とし、前記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体を側鎖として有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であり、前記側鎖の一部または全部が、前記主鎖の2級炭素原子または3級炭素原子に結合しているエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。

[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4、R5、R6、R7,R8はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の飽和炭化水素基を表す。]
[2]前記エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を構成する全単量体単位に対する前記式(I)で表される繰り返し単位の含有量が0.2〜40モル%である[1]に記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。
[3]メルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)が0.1g/10分以上である[1]または[2]に記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。
[4]前記式(I)で表される繰り返し単位がスチレンである[1]〜[3]のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体からなる粉末またはペレット。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を含む層と他の熱可塑性樹脂を含む層とを含む多層構造体。
[7]エチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射する工程と、
電離放射線が照射されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を下記式(II)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う工程を備える、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の製造方法。

[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4、R5、R6、R7,R8はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の飽和炭化水素基を表す。]
を提供することにより解決される。
本発明のグラフト共重合体は、耐熱水性、ガスバリア性に優れ、またポリスチレンとの接着性も有する。したがって、このような特性を生かして、本発明のグラフト共重合体は様々な用途へ好適に用いられる。
(グラフト共重合体)
本発明は、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であって、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を主鎖とし、下記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体を側鎖として有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であり、前記側鎖の一部または全部が、前記主鎖の2級炭素原子または3級炭素原子に結合しているエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体である。
[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の飽和炭化水素基を表す。]
上記式(I)中、R1、R2、R3は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の結晶性を阻害しにくいこと、また耐熱性の観点から、水素原子であることが好ましい。
また、上記式(I)中、R4、R5、R6、R7、R8は、耐熱性の観点から水素原子、または炭素数1〜10の飽和炭化水素基であることが好ましく、結晶性を阻害しにくい観点から、特に水素原子であることが好ましい。
上記式(I)で表される繰り返し単位としては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-オクチルスチレン、αメチルスチレン、(cis/trans)β-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、4-イソプロペニルトルエン、2-メチル-1-フェニルプロペン等が好ましく、耐熱性や接着性の観点から、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、αメチルスチレン、(cis/trans)β-メチルスチレンがより好ましく、結晶性を阻害しにくい観点からスチレンが特に好ましい。上記式(I)で表される繰り返し単位は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよく、他の成分を含んでいても良い。
本発明のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体は、グラフト重合を行うことにより主鎖であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して上記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体が側鎖として導入されている。このように導入された重合体は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体部分の結晶性を阻害しにくいため、下記の実施例で示されているように上記式(I)で表される繰り返し単位の含有量に対する結晶化度の低下が小さい。また、側鎖の繰り返し単位は芳香環を含む構造であるため、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の欠点である吸湿による可塑化を防ぐことができることから耐熱水性およびガスバリア性が改善し、またポリスチレンとの接着性を発現する。さらに、側鎖の一部または全部は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる主鎖の2級炭素原子または3級炭素原子に直接結合していることから、エステル結合やアミド結合を介して主鎖と結合する場合に比べて化学的安定性が高い。従って、本発明のグラフト共重合体は、耐熱水性、ガスバリア性や接着性、結晶性を両立することが可能となる。
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体を構成する全単量体単位に対する前記式(I)で表される繰り返し単位の含有量が0.2〜40モル%であることが好ましい。0.2モル%以上であると耐熱水性、ガスバリア性や接着性が一層向上する。前記繰り返し単位の含有量は、より好ましくは1モル%以上、さらに好ましくは3モル%以上、特に好ましくは6モル%以上である。一方、前記繰り返し単位の含有量が40モル%を超える場合、結晶性が低下し、バリア性や機械強度が著しく低下するおそれがある。前記繰り返し単位の含有量は、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。
耐熱水性、ガスバリア性や接着性を高める観点から、側鎖を構成する重合体における、上記式(I)で表される単位の繰り返し数は2以上であることが好ましい。
本発明のグラフト共重合体のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、0.1g/10分以上であることが好ましい。0.1g/10分未満の場合、成形性に劣るおそれがある。前記MFRは、より好ましくは0.5g/10分以上である。なお、前記MFRの上限は例えば25g/10分以下であってもよい。
本発明のグラフト共重合体の結晶融解温度は、150℃以上であることが好ましい。このような結晶融解温度を有することで、優れたバリア性が発現される。一方、前記グラフト共重合体の結晶融解温度は、200℃以下であることが好ましい。200℃を超えると成形時に高温が必要になり、樹脂の熱劣化が生じるおそれがある。
本発明のグラフト共重合体の形態としては、平均粒子径が20〜1,000μmの粉末、または5mm以下のペレットの形態であることが好ましい。平均粒子径が上記範囲であると、前記グラフト共重合体の取扱性や加工性が向上する。平均粒子径が20μm未満の場合、粉末が飛散し易い等の問題があり、取り扱いが難しく実用的ではないおそれがある。平均粒子径は50μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましい。一方、平均粒子径が1,000μmを超えると、側鎖が均一に導入されたグラフト共重合体が得られない場合がある。平均粒子径は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。本発明における粉末の平均粒子径は、レーザー光による光散乱法を用い、水中にグラフト共重合体粒子を分散させて測定される体積平均径を意味する。
本発明のグラフト共重合体からなる粉末またはペレットは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記グラフト共重合体以外の他の成分を含有していても構わない。他の成分として、光安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。前記粉末中の他の成分の含有量は、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
(グラフト共重合体の製造方法)
本発明のグラフト共重合体の製造方法は、一般的に公知である種々のグラフト重合法を用いることができる。例えば、重合開始剤を用いたラジカル重合を用いてグラフト重合する方法、電離放射線を用いてラジカルを発生させ、グラフト鎖を導入する方法、等が挙げられる。これらのうち、グラフト鎖の導入効率が高い観点から、電離放射線を用いてグラフト重合する方法が好ましい。
本発明のグラフト共重合体は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射する工程と、電離放射線が照射されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を、下記式(II)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う工程を備える方法により製造することが好ましい。
本発明の製造方法に用いられる原料のエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、エチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化することによって得ることができる。
前記のエチレン−ビニルエステル系共重合体の製造に用いられるビニルエステル単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でもコスト面から酢酸ビニルが最も好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体中のビニルエステル成分のケン化度は、90モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体のケン化度が90モル%以上であることによりガスバリア性および熱安定性により優れる。また、ケン化度の上限は99.99モル%であってもよい。ケン化度はH−NMR測定等公知の方法により求めることができる。
前記のエチレン−ビニルエステル系共重合体を構成する全単量体単位に対するエチレン単位の含有量は5〜60モル%の範囲内であることが好ましく、20〜55モル%の範囲内であることがより好ましく、25〜50モル%の範囲内であることがさらに好ましい。上記エチレン単位の含有量が5モル%以上であることにより、得られるグラフト共重合体は耐熱水性およびガスバリア性により優れる。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のエチレン含有量が60モル%以下であることにより、ガスバリア性により優れる。
前記エチレン−ビニルエステル系共重合体は、他の共重合可能な単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。前記エチレン−ビニルエステル系共重合体を構成する全単量体単位に対する上記他の共重合可能な単量体に由来する単量体単位の占める割合は、30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。上記他の共重合可能な単量体としては、例えば、ピバル酸ビニルのようなビニルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド系単量体などが挙げられる。
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、単独で用いてもよいし又は2種以上組み合わせて用いても構わない。
本発明のグラフト共重合体の製造に用いられるエチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、平均粒子径が20〜1,000μmであるエチレン−ビニルアルコール系共重合体を用いることが好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体の粒子径は、粉砕等により適宜調整すればよい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体粉末の平均粒子径が20μm未満の場合、粉末が飛散し易い等の問題があり、取り扱いが難しい。一方、エチレン-ビニルアルコール粉末の平均粒子径が1,000μmを超える場合、側鎖が均一に導入されたグラフト共重合体が得られないおそれがある。
グラフト重合方法としては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂と不飽和単量体の共存下、電離放射線を照射する同時照射法が知られている。しかしながら、当該方法は、副反応が起こり易いうえに、分子間架橋によるゲル化によって、得られるグラフト共重合体の成形性が悪化する等の問題があった。それに対して、本発明の製造方法においては、予め前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射した後、当該エチレン−ビニルアルコール系共重合体と上記式(II)で表される単量体とを用いてグラフト重合を行う。通常、樹脂に電離放射線を照射して発生したラジカルは空気中の酸素等と反応して短時間で失活する。一方、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射した場合、長期間経過後もエチレン−ビニルアルコール系共重合体は上記式(II)で表される単量体に対する高い反応性を有する。このメカニズムは明らかではないが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体はガラス転移温度が高いため室温付近では軟化せず、且つ高いバリア性を有するため、大気中でも樹脂内部のエチレン−ビニルアルコール系共重合体に発生したラジカルが酸素等と反応して消失することなく、長期間存在するものと考えられる。
本発明の製造方法において、水分率15質量%以下のエチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射することが好ましい。前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体の水分率が15質量%以上の場合、電離放射線を照射することによりエチレン−ビニルアルコール系共重合体に発生したラジカルが消失しやすくなり、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の単量体に対する反応性が不十分になるおそれがある。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体に照射する電離放射線としては、α線、β線、γ線、電子線及び紫外線等が挙げられるが、実用的には電子線及びγ線が好ましく、処理速度が早く、かつ設備も簡便にできる電子線がより好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体粉末に電離放射線を照射する線量としては、例えば5〜200kGyが好ましく、10〜150kGyがより好ましく、20〜100kGyがさらに好ましく、30〜90kGyが最も好ましい。照射する線量が5kGy未満の場合、得られるグラフト共重合体中の上記式(I)で表される繰り返し単位の含有量が目的の量に到達できないことがある。一方、照射する線量が200kGyを超える場合、コスト高になったり、電離放射線の照射によってエチレン−ビニルアルコール系共重合体が劣化したりするおそれがある。
電離放射線が照射された前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体を、上記式(II)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う。このとき用いられる液体媒体は、上記式(II)で表される単量体を溶解させるが、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶解させないものである必要がある。前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体が溶解した場合、グラフト重合の進行とエチレン−ビニルアルコール系共重合体に発生したラジカルの失活が同時に進行するため、付加する単量体の量を制御することが困難である。前記グラフト重合に用いられる液体媒体としては、例えば水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;トルエン、ヘキサン等が挙げられる。また、前記単量体を分散させるために界面活性剤等を併用してもよい。
グラフト重合を行う工程において、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体が膨潤することで上記式(II)で表される単量体が粒子内部まで浸透し、上記式(I)で表される繰り返し単位を均一且つ多量にグラフト共重合体の側鎖に導入することが可能になる。したがって、使用する液体媒体は前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体との親和性を考慮して選択することが好ましい。上述の液体媒体の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールは前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体との親和性が高いため、本発明の製造方法において好適に用いられる。また、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体が溶解しない範囲で、上記液体媒体の混合物を液体媒体として使用することも、上記と同様の理由で効果的である。
グラフト重合に用いる上記式(II)で表される単量体の量は、単量体の反応性に合わせて適宜調整される。反応性は前述の通り、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体への単量体の浸透し易さ等に依存して変化する。したがって、単量体の適切な添加量は、液体媒体の種類や量、またエチレン−ビニルアルコール系共重合体の重合度やエチレン共重合比率に依存して変化するが、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体100質量部に対して、0.4〜200質量部が好ましい。上記式(II)で表される単量体の量が上記範囲から外れる場合には、上記式(I)で表される繰り返し単位の含有量が前述の範囲であるグラフト共重合体が得られないおそれがある。上記式(II)で表される単量体の使用量は、1〜100質量部がより好ましく、2〜50質量部がさらに好ましい。
グラフト重合に用いる上記液体媒体の量は、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体100質量部に対して、100〜4000質量部が好ましく、200〜2000質量部がより好ましく、300〜1500質量部がさらに好ましい。
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射するとエチレン-ビニルアルコール単位中のメチン基の炭素原子にラジカルが発生することが確認されている。したがって、上記式(II)で表される単量体が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の主鎖を構成するビニルアルコール単位中のメチン基の炭素原子に結合することにより、上記式(I)で表される繰り返し単位が形成されると考えられる。この場合の前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる主鎖と側鎖の重合体との連結部の構造を下記式Aに示す。また、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射するとエチレンのメチレン基にもラジカルが発生すると考えられ、その場合、上記式(II)で表される単量体は、当該炭素原子に結合することにより、上記式(I)で表される繰り返し単位が形成されると考えられる。この場合の前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる主鎖と側鎖の重合体との連結部の構造の一例を下記式Bにそれぞれ示す。
本発明の製造方法において、グラフト重合を行う場合の反応温度としては、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは40℃〜100℃である。反応温度が20℃を下回る場合、グラフト重合反応がほとんど進行しないおそれがある。反応温度が150℃を超える場合、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の熱溶融が起こるおそれがある。
本発明のグラフト共重合体は、成形体(例えばフィルム、シート、ボード、繊維等)、多層構造体として用いることができ、コート剤、バリア材等の広範な用途に使用できる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
[変性量の算出]
原料のエチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン単位をA質量%、ビニルアルコール単位をB質量%とする。以下の計算式に従い、変性量(グラフト共重合体中の全単量体単位に対する上記式(I)で表される繰り返し単位の含有量)を算出した。

変性量[モル%]=Z/(X+Y+Z)×100

但し、X、Y、Zは以下の数式で算出される値である。
X={(原料のエチレン−ビニルアルコール系共重合体質量部)×(A/100)}/28
Y={(原料のエチレン−ビニルアルコール系共重合体質量部)×(B/100)}/44
Z={(反応後のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体質量部)−(原料のエチレン−ビニルアルコール系共重合体質量部)}/(グラフトする単量体の分子量)
[平均粒子径の算出]
株式会社堀場製作所製レーザー回折装置「LA−950V2」を用い、グラフト共重合体を水に分散させた状態で体積平均粒子径を測定した。
[MFR評価]
宝工業株式会社製「メルトインデクサーL244」を用いて測定した。具体的には、検体の樹脂あるいは樹脂組成物のチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、210℃で溶融した後、溶融した検体の樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけた。シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出された樹脂の流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレートとした。
[熱物性評価]
TA instruments株式会社製示差走査熱量測定装置「Q1000」を用い、昇温・降温速度:10℃/min、温度範囲:0℃〜240℃の条件で熱物性を測定した。結晶融解温度(T)はいずれも2ndヒーティングの値を採用した。
[耐熱水性評価]
耐熱水性の指標として熱水暴露による形状変化の観点で評価を行った。圧縮成形機を用いてポリマーの結晶融解温度+20℃に加熱し2分間溶融させフィルム状の検体を得た。それを100mm×100mmに裁断し正確に試料面積を測定した(Sa)。その後、90℃に熱した水に20分間浸漬し試料を取出し直ちに試料面積を測定した(Sb)。Sa及びSbの面積の測定は75g/m2の方眼紙にSa及びSbの検体を縁取りし切り出した後に重量を測定し面積換算することで求めた。試料変形率が2%未満であるものをA、2%以上5%未満であるものをB、5%以上10%未満であるものをC、10%以上20%未満であるものをD、20%以上であるものをEとして比較した。
試料変形率(%):(Sb−Sa)/Sa×100
[接着性評価]
圧縮成形機を用いてポリマーの結晶融解温度+20℃に加熱し2分間溶融させフィルム状の検体を得た(a)。接着対象としてポリスチレン(PSジャパン製PSJポリスチレン475P)を圧縮成形機を用いて260℃で加熱し2分間溶融させフィルムを得た(b)。a及びbを重ね、圧縮成形機を用いて190℃に加熱、0kgfで加圧せず圧着した。得られた試料を幅15mm長さ100mmの短冊状に裁断し、オートグラフ(島津製AG−5000B、ロードセル1kN)を用いてT字状に引張り接着力を測定した。その際の引張り速度は250mm/分であった。5回測定の平均応力を読み取り、接着強度とした。その接着強度が、0.5kgf以上であるものをA,0.4を超え0.5kgf未満であるものをB、0.3を超え0.4kgf未満であるものをC、0.2を超え0.3kgf未満であるものをD、0.2kgf以下であるものをEとして比較した。
[OTR評価]
圧縮成形機を用いてポリマーの結晶融解温度+20℃に加熱し2分間溶融させフィルム化した試料を作成しシート状の検体を得た。得られたフィルムを20℃、85%RHの条件下で3日間調湿後、同条件下で酸素透過速度の測定(Mocon社製「OX−TORAN MODEL 2/21」)を行った。
[実施例1]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、目開き150μm〜500μmの篩で粒子を得た。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの25質量部メタノール975質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1及び表2に示す。
[実施例2]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、L101、エチレン単位含有量27モル%、エチレン質量分率19.0質量%、ビニルアルコール質量分率81.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径53μm〜150μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの50質量部メタノール950質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1及び表2に示す。
[実施例3]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径500μm〜1000μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの10質量部メタノール990質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径150μm〜500μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの1質量部メタノール999質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[実施例5]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径53μm〜150μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの40質量部メタノール960質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1及び表2に示す。
[実施例6]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径53μm〜150μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの100質量部メタノール900質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[実施例7]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、L101、エチレン単位含有量27モル%、エチレン質量分率19.0質量%、ビニルアルコール質量分率81.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径53μm〜212μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの60質量部メタノール940質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[実施例8]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径53μm〜150μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの250質量部メタノール750質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[実施例9]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径212μm〜500μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換した4−メチルスチレンの70質量部メタノール930質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[実施例10]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径212μm〜500μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換した4−tert-ブチルスチレンの50質量部メタノール950質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[実施例11]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕することなくペレット状の樹脂を使用した。粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したスチレンの20質量部メタノール980質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、L101、エチレン単位含有量27モル%)についての各種物性の評価結果を表1に示す。
[比較例2]
特許第4509963号の合成例3に記載の方法で、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の水酸基とエポキシプロパンを反応させ、下記式(III)で表されるエポキシプロパン変性エチレン−ビニルアルコール系共重合体を合成した。該粒子の変性量をH−NMR(溶媒:d−DMSO)で確認したところ、5.0モル%であった。なお、変性量は、エポキシプロパンの開環反応により生じたメチル基のピーク(1.0〜1.1ppm)と、エチレン部位のピーク(1.2〜1.6ppm)との面積比により算出した。各種物性の評価結果を表1及び表2に示す。

[式(III)中、l、m、nは単量体単位の繰り返し数を表す値であり、任意の正の数である。]
[比較例3]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、F101、エチレン単位含有量32モル%、エチレン質量分率23.0質量%、ビニルアルコール質量分率77.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径53μm〜212μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したジビニルベンゼンモノマーの50質量部メタノール950質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。該粒子は溶媒(d−DMSO/d−トルエン=75/25混合溶媒)に不溶であり、圧縮成形機による溶融成形も不可であった。
[比較例4]
市販のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製、L101、エチレン単位含有量27モル%、エチレン質量分率19.0質量%、ビニルアルコール質量分率81.0質量%)を粉砕した後、篩を用いて粒子径100μm〜212μmの粒子を作製した。得られた粒子100質量部に30kGyの電子線を照射し、該粒子を65℃窒素置換したビニルベンジルアンモニウムクロリドの50質量部メタノール950質量部溶液に浸漬し、180分攪拌しグラフト重合を実施した。その後、得られた粒子をテトラヒドロフランで洗浄した後乾燥し、目的のグラフト共重合体を得た。各種物性の評価結果を表1に示す。
実施例1〜11から明らかなように、本発明のグラフト共重合体は、高い結晶性を維持しながら高い耐熱水性、ガスバリア性やポリスチレンとの接着性を有することが分かる。但し、実施例11に示すように電子線照射前のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の粒子径が大きい場合、耐熱水性、ガスバリア性や接着性が低下する傾向にある。変性されていない未反応部位が存在することが原因であると考えられる。
比較例2から明らかなように、多数存在するエチレン−ビニルアルコール系共重合体における水酸基が反応点となって、エポキシプロパンが導入されるため、結晶融解温度の低下が著しく、結晶性を大きく阻害すると推定される。本手法は電子線照射により生じたラジカルを起点として、側鎖の成長反応が主に進行するため、主鎖と側鎖の結合点が比較的少なく、結晶性を阻害することなく変性できると推定される。
比較例3から明らかなように、二官能性のモノマーを選択すると架橋反応が進行しやすく、ゲル化を引き起こすなどのおそれがあるため、単独での使用は控えるべきである。
比較例4から明らかなように、単に芳香族を有するだけでは性能を発現しない。疎水的な官能基を導入することで耐熱水性を発現していることが分かる。

Claims (7)

  1. 下記式(I)で表される単位構造を有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であって、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を主鎖とし、前記式(I)で表される繰り返し単位から構成される重合体を側鎖として有するエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体であり、前記側鎖の一部または全部が、前記主鎖の2級炭素原子または3級炭素原子に結合しているエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。

    [式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の飽和炭化水素基を表す。]
  2. 前記エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を構成する全単量体単位に対する前記式(I)で表される繰り返し単位の含有量が0.2〜40モル%である請求項1に記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。
  3. メルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)が0.1g/10分以上である請求項1または2に記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。
  4. 前記式(I)で表される繰り返し単位がスチレンである請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体からなる粉末またはペレット。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体を含む層と他の熱可塑性樹脂を含む層とを含む多層構造体。
  7. エチレン−ビニルアルコール系共重合体に電離放射線を照射する工程と、
    電離放射線が照射されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を下記式(II)で表される単量体を含む溶液中に分散させてグラフト重合を行う工程を備える、エチレン−ビニルアルコール系グラフト共重合体の製造方法。

    [式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の飽和炭化水素基を表す。]
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