本発明の樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂、(b)メチロール基が結合した芳香環と、直鎖状の脂肪族構造を有する化合物を含有するものである。
本発明の樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂として、ポリイミド前駆体、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、およびフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含有する。これらの樹脂は、加熱または触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有するポリマーとなり得るものである。好ましくは、既閉環のポリイミド、ポリイミド前駆体のポリアミド酸やポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドなどが挙げられる。環状構造となることで、耐熱性、耐薬品性が飛躍的に向上する。
ポリイミドは、テトラカルボン酸や対応するテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドなどと、ジアミンや対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンなどを反応させることにより得ることができ、テトラカルボン酸残基とジアミン残基を有する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリイミド前駆体の1つであるポリアミド酸を、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。この加熱処理時には、m−キシレンなどの水と共沸する溶媒を加えることもできる。または、カルボン酸無水物やジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤やトリエチルアミンなどの塩基などを閉環触媒として加えて、化学熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。または、弱酸性のカルボン酸化合物を加えて、100℃以下の低温で加熱処理により脱水閉環することにより得ることもできる。ポリイミド前駆体については後述する。
ポリベンゾオキサゾールは、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸や対応するジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸活性エステルなどを反応させて得ることができ、ジカルボン酸残基とビスアミノフェノール残基を有する。例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を反応させて得られるポリベンゾオキサゾール前駆体の1つであるポリヒドロキシアミドを、加熱処理により脱水閉環することにより得ることができる。または、無水リン酸、塩基、カルボジイミド化合物などを加えて、化学処理により脱水閉環することにより得ることができる。ポリベンゾオキサゾール前駆体については後述する。
本発明において、ポリイミドは、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、テトラカルボン酸残基および/またはジアミン残基にOR6、SO3R6、CONR6R7、COOR6、SO2NR6R7などで示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、R6およびR7はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。なお、酸性基とはR6およびR7が全て水素原子となる場合を示し、酸性基誘導体とはR6またはR7に炭素数1〜20の1価の有機基が含まれる場合を示す。有機基としては、アルキル基、アルコキシル基、エステル基などが挙げられる。
また、ポリベンゾオキサゾールは、ジカルボン酸残基および/またはビスアミノフェノール残基にOR6、SO3R6、CONR6R7、COOR6、SO2NR6R7などで示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、R6およびR7はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。なお、酸性基とはR6およびR7が全て水素原子となる場合を示し、酸性基誘導体とはR6またはR7に炭素数1〜20の1価の有機基が含まれる場合を示す。有機基としては、アルキル基、アルコキシル基、エステル基などが挙げられる。
本発明において、ポリイミドのテトラカルボン酸残基およびポリベンゾオキサゾールのジカルボン酸残基(以下、これらをあわせて酸残基という)の好ましい構造として、下記に示す構造や、これらの構造における水素原子の一部を炭素数1〜20のアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子により1〜4個置換した構造などが挙げられる。
式中、Jは直接結合、−COO−、−CONH−、−CH2−、−C2H4−、−O−、−C3H6−、−C3F6−、−SO2−、−S−、−Si(CH3)2−、−OSi(CH3)2−O−、−C6H4−、−C6H4−O−C6H4−、−C6H4−C3H6−C6H4−、または−C6H4−C3F6−C6H4−のいずれかを示す。
本発明において、ポリイミドのジアミン残基およびポリベンゾオキサゾールのビスアミノフェノール残基(以下、これらをあわせてジアミン残基という)の好ましい構造として、下記に示す構造や、これらの構造における水素原子の一部を炭素数1〜20のアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子により1〜4個置換した構造などが挙げられる。
式中、Jはそれぞれ直接結合、−COO−、−CONH−、−CH2−、−C2H4−、−O−、−C3H6−、−C3F6−、−SO2−、−S−、−Si(CH3)2−、−O−Si(CH3)2−O−、−C6H4−、−C6H4−O−C6H4−、−C6H4−C3H6−C6H4−、または−C6H4−C3F6−C6H4−のいずれか示す。R8はそれぞれ水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。
本発明において、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体は、主鎖にアミド結合を有する樹脂であり、加熱処理や化学処理により脱水閉環し、前述のポリイミド、ポリベンゾオキサゾールとなる。構造単位の繰り返し数は10〜100,000が好ましい。ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミドなどを挙げることができ、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステルが好ましい。ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、ポリヒドロキシアミド、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどを挙げることができ、ポリヒドロキシアミドが好ましい。
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、酸残基またはジアミン残基にOR9、SO3R9、CONR9R10、COOR9、SO2NR9R10などで示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。ここで、酸性基とはR9およびR10が全て水素原子となる場合を示し、酸性基誘導体とはR9またはR10に炭素数1〜20の1価の有機基が含まれる場合を示す。有機基としては、アルキル基、アルコキシル基、エステル基などが挙げられる。
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の酸残基を構成する酸成分としては、ジカルボン酸の例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸など、トリカルボン酸の例としてトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸など、テトラカルボン酸の例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1.]ヘプタンテトラカルボン酸、ビシクロ[3.3.1.]テトラカルボン酸、ビシクロ[3.1.1.]ヘプト−2−エンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2.]オクタンテトラカルボン酸、アダマタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸などを挙げることができる。また、上に例示したジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸の水素原子の一部を、OR9、SO3R9、CONR9R10、COOR9、SO2NR9R10などで示される酸性基または酸性基誘導体で置換することが好ましく、水酸基やスルホン酸基、スルホン酸アミド基、スルホン酸エステル基などで1〜4個置換することがより好ましい。ここで、R9およびR10は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。
これらの酸は、そのまま、または酸無水物や活性エステルとしても使用できる。また、これらを2種以上用いてもよい。
また、ジメチルシランジフタル酸、1,3−ビス(フタル酸)テトラメチルジシロキサンなどのシリコン原子含有テトラカルボン酸を用いることにより、基板に対する接着性や、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。これらシリコン原子含有テトラカルボン酸は、全酸成分の1〜30モル%用いることが好ましく、1モル%以上では基板接着性やプラズマ処理に対する効果発現の点で好ましい。30モル%以下では、得られる樹脂のアルカリ水溶液への溶解性の点で好ましい。
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体のジアミン残基を構成するジアミン成分の例としては、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−カルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのカルボキシル基含有ジアミン、3−スルホン酸−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン、ジチオヒドロキシフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、またはこれらの芳香族環の水素原子の一部をアルキル基やF、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子で置換した化合物、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂肪族ジアミンなどを挙げることができる。さらにこれらのジアミンは、水素原子の一部をメチル基、エチル基などの炭素数1〜10のアルキル基、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜10のフルオロアルキル基、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子で置換してもよい。また、上に例示したジアミンは、OR9、SO3R9、CONR9R10、COOR9、SO2NR9R10で示される酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。ここで、R9およびR10は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。
これらのジアミンは、そのまま、または対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。また、これらを2種以上用いてもよい。耐熱性が要求される用途では、芳香族ジアミンをジアミン全体の50モル%以上使用することが好ましい。
また、ジアミン成分として、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アニリノ)テトラメチルジシロキサンなどのシリコン原子含有ジアミンを用いることにより、基板に対する接着性や、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。これらシリコン原子含有ジアミンは、全ジアミン成分の1〜30モル%用いることが好ましく、1モル%以上では接着性向上やプラズマ処理に対する耐性を高めることができる点で好ましい。30モル%以下では、得られる樹脂のアルカリ水溶液への溶解性の点で好ましい。
また、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、それらの前駆体の末端を、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基またはチオール基を有するモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、酸クロリドにより封止することが好ましい。これらを2種以上用いてもよい。樹脂末端に前述の基を有することにより、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に容易に調整することができる。
モノアミンの好ましい例としては、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−3−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノ−4−tert−ブチルフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノールなどを挙げることができる。
酸無水物、モノカルボン酸、酸クロリドの好ましい例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類の1つのカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などを挙げることができる。
前述の末端封止剤として使用するモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、酸クロリド、の含有量は、酸成分モノマーまたはジアミン成分モノマーの仕込みモル数の0.1〜60モル%の範囲が好ましく、5〜50モル%がより好ましい。このような範囲とすることで、樹脂組成物を塗布する際の溶液の粘性が適度で、かつ優れた膜物性を有した樹脂組成物を得ることができる。
(a)アルカリ可溶性樹脂中に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入された樹脂を酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるジアミン成分と酸成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、末端封止剤を容易に検出することができる。これとは別に、末端封止剤が導入された樹脂を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C−NMRスペクトル測定することにより検出することも可能である。
また、(a)アルカリ可溶性樹脂の末端に重合性官能基を有してもよい。重合性官能基の例としては、エチレン性不飽和結合基、アセチレン基、メチロール基、アルコキシメチル基などが挙げられる。
本発明において、(a)アルカリ可溶性樹脂としてはポリイミド、ポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体が好ましく、より好ましくはポリイミドである。
また本発明の感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性樹脂に加えて他のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリに可溶となる酸性基を有する樹脂を言い、具体的にはアクリル酸を有するラジカル重合性樹脂、フェノール−ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリシロキサンなどが挙げられる。また、これら樹脂の酸性基を保護してアルカリ溶解性を調節してもよい。このような樹脂は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド以外に、コリン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液に溶解する。これらの樹脂を2種以上含有してもよいが、(a)の樹脂全体に占める割合は70質量%以下であることが、熱硬化後に優れた膜物性の樹脂膜を得られる点で好ましい。
本発明の樹脂組成物は、(b)メチロール基が結合した芳香環と、直鎖状の脂肪族構造を有する化合物を含有するものである。そして、前記(b)化合物の直鎖状の脂肪族構造が、アルキレン基およびアルキルエーテル基からなる群から選ばれる一つ以上の構造を有するものであることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、メチロール基が結合した芳香環と、直鎖状の脂肪族構造を有する化合物を熱架橋剤として含有することにより、低応力かつ高耐薬品性の硬化膜を得ることができる。このような効果が得られる理由は次のように推測される。
(b)化合物は、メチロール基が結合した芳香環を有し、このメチロール基が(a)ポリマーの芳香環に直接付加する反応機構によって(a)ポリマー間に架橋構造を形成するため、熱硬化後の膜特性や耐薬品性を向上させることができる。また、(b)化合物は芳香環を有するため、化合物自身が耐熱性を発現し、熱硬化時の熱分解を抑制して収縮率を低減することができる。
また、(b)化合物は、直鎖状の脂肪族構造で柔軟性が高いアルキレン基およびアルキルエーテル基を有するため、熱硬化時にポリマー間に架橋構造を形成しても弾性率の増加が抑制され、硬化膜の弾性率を低下させて、低応力化することができる。また柔軟性が高いため、伸度にも優れた硬化膜を得ることができる。
(b)化合物の含有量について、(a)アルカリ可溶性樹脂に対して適切な量を添加することにより、低応力と耐薬品性に優れた硬化膜を形成することができる。
本発明において、(b)化合物の含有量は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、10質量部〜50質量部が好ましい。10質量部以上であると、耐薬品性および低応力の点で好ましく、より好ましくは15質量部以上である。50質量部以下であると、(a)アルカリ可溶性樹脂本来の機械特性や電気絶縁性などの優れた膜特性が得られる点で好ましく、より好ましくは45質量部以下である。
(b)化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(1)〜一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる一つ以上の構造を有する化合物を含むことが好ましい。ここで、(b)化合物は一般式(1)〜一般式(3)で表される構造のうちいずれか1種類の構造を有してなるものであっても良いし、一般式(1)〜一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる2つ以上の構造を有するものであってもよい。
一般式(1)〜一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる2つ以上の構造を有する場合、(b)化合物100モル%に対して、一般式(2)で表される構造を50モル%以上100モル%以下含有し、かつ一般式(1)および一般式(3)で表される構造の含有比率の合計が0モル%以上50モル%以下で、合計100モル%であると、耐薬品性および耐熱性の点で好ましい。
(一般式(1)〜一般式(3) 中、芳香族環を含む構造単位はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子あるいはまたはメチル基を表す。また、一般式(2)における(CH2−OR1)pと(CH2−OR1)qはそれぞれ同じでも異なっていても良い。また、一般式(3)における(CH2−OR1)r、(CH2−OR1)s、および(CH2−OR1)tはそれぞれ同じでも異なっていても良い。また、m>1、n>1、o>1、p+q>1、r+s+t>1、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0である。A、B、D は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、単結合、エーテル結合、水酸基、イソプロピリデン基、ケトン基、カルボニル基、アミド基、スルホニル基からなる群から選ばれる一つ以上を有する有機基を表す。)
さらに、(b)化合物が、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物を含むことが、耐薬品性および耐熱性の点でより好ましい。ここで、(b)化合物は、上記一般式(1)〜一般式(3)で表される構造に代えて、一般式(4)で表される構造を有する化合物のみを有していても良いし、一般式(1)〜一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる一つ以上の構造に加えて、一般式(4)で表される構造を有する化合物であってもよい。下記一般式(4)で表される構造を有する化合物の含有比率は、(b)化合物100モル%に対して、50モル%以上100モル%以下含有することが、耐薬品性および耐熱性の点で好ましい。
(一般式(4)中、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子またはメチル基を表す。また、m>1、n>1、o>1、p+q>1、r+s+t>1 、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0である。A、Bは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、単結合、エーテル結合、水酸基、イソプロピリデン基、ケトン基、カルボニル基、アミド基、スルホニル基からなる群から選ばれる一つ以上を有する有機基を表す。)
(b)化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
また、(b)化合物の重量平均分子量が、3,000以上20000以下であることが好ましい。3,000以上であると熱硬化時の収縮抑制の点で好ましく、より好ましくは5,000以上である。20,000以下であると有機溶媒への溶解性向上の点で好ましく、より好ましくは15,000以下である。
(b)化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)や光散乱法、X線小角散乱法などで重量平均分子量(Mw)を測定することで容易に算出できる。本発明における重量平均分子量は、最も簡便なポリスチレン換算によるGPC測定を用いて算出する値をいう。
本発明の樹脂組成物は(c)感光剤を含有しても良い。感光剤としては、(c−1)光酸発生剤や、(c−2)光重合開始剤および(c−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物の組み合わせが挙げられる。(c−1)光酸発生剤を含有することで、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。また、(c−2)光重合開始剤および(c−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物を含有することで、光照射部に発生した活性ラジカルがエチレン性不飽和結合のラジカル重合を進行させ、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
(c−1)光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。また、(c−1)光酸発生剤を2種以上含有することが好ましく、これにより高感度な感光性を付与した耐熱性樹脂組成物を得ることができる。
本発明において、キノンジアジド化合物は5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有する化合物、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有する化合物のいずれも好ましく用いられる。4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収を持っており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよいし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。
(c−1)光酸発生剤のうち、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩は、露光によって発生した酸成分を適度に安定化させるため好ましい。中でもスルホニウム塩が好ましい。さらに増感剤などを必要に応じて含有することもできる。
(c−2)光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルなど、エオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤との組み合わせなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
(c−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物として、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレートなどのアクリルモノマーを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
(c)感光剤の含有量は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.01 〜50質量部が好ましい。
(c−1)光酸発生剤の含有量は、高感度化の観点から、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。このうち、キノンジアジド化合物は3〜40質量部が好ましい。また、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩の総量は0.5〜20質量部が好ましい 。この含有量の範囲では、添加量が過剰となって現像パターンの残渣が発生することがなく、光照射により十分な酸を発生し、感度が向上する点で好ましい。
(c−2)光重合開始剤の含有量は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましい。0.1質量部以上であれば、光照射により十分なラジカルが発生し、感度が向上する。また、20質量部以下であれば、過度なラジカルの発生によって光未照射部が硬化することがなく、アルカリ現像性が向上する。
(c−3)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物の含有量は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して5〜50質量部が好ましい。5質量部以上であれば、活性ラジカルによるエチレン性不飽和結合のラジカル重合が十分に進行し、感度が向上する点で好ましい。50質量部以下であれば、過度なラジカル重合の進行によって光未照射部が硬化することなく、アルカリ現像性が向上する点で好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、(b)化合物以外の、(d)その他の熱架橋剤を含有しても良い。
(d)その他の熱架橋剤としては、例えば、熱架橋性基を1つ有するものとしてML−26X、ML−24X、ML−236TMP、4−メチロール3M6C、ML−MC、ML−TBC(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、P−a型ベンゾオキサジン(商品名、四国化成工業(株)製)など、2つ有するものとしてDM−BI25X−F、46DMOC、46DMOIPP、46DMOEP(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、DMLMBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PC、DML−PCHP、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、DML−OC、ジメチロール−Bis−C、ジメチロール−BisOC−P、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MB25、DML−MTrisPC、DML−Bis25X−34XL、DML−Bis25X−PCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、“ニカラック(登録商標)”MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)、B−a型ベンゾオキサジン、B−m型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業(株)製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾールなど、3つ有するものとしてTriML−P、TriML−35XL、TriML−TrisCR−HAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)など、4つ有するものとしてTM−BIP−A(商品名、旭有機材工業(株)製)、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、“ニカラック”(登録商標)MX−280、“ニカラック”(登録商標)MX−270(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)など、6つ有するものとしてHML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、“ニカラック”(登録商標)MW−390、“ニカラック”(登録商標)MW−100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
下記に本発明の感光性樹脂組成物に特に好ましく用いられる代表的な(d)その他の熱架橋剤の構造を示す。
これらの(d)その他の熱架橋剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用される。
(d)その他の熱架橋剤の含有量は、(a)アルカリ可溶性樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは150質量部以下、特に好ましくは130質量部以下である。(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対する(d)その他の熱架橋剤の含有量を150質量部以下にすることで、感光性樹脂組成物被膜の熱処理により得られる耐熱性脂組成物被膜の耐熱性を低下させることがない。一方、0.5質量部以上とすることで、十分な架橋による分子量増大効果により、耐熱性樹脂組成物被膜の耐熱性が向上する。
その他、本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を調整する目的で、フェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。
本発明で使用することができるフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis−Z、BisOC−Z、BisOPP−Z、BisP−CP、Bis26X−Z、BisOTBP−Z、BisOCHP−Z、BisOCR−CP、BisP−MZ、BisP−EZ、Bis26X−CP、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisCR−IPZ、BisOCP−IPZ、BisOIPP−CP、Bis26X−IPZ、BisOTBP−CP、TekP−4HBPA(テトラキスP−DO−BPA)、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOFP−Z、BisRS−2P、BisPG−26X、BisRS−3P、BisOC−OCHP、BisPC−OCHP、Bis25X−OCHP、Bis26X−OCHP、BisOCHP−OC、Bis236T−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、BisRS−OCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)が挙げられる。
これらのうち、好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis−Z、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisRS−2P、BisRS−3P、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−Fである。このフェノール性水酸基を有する化合物を含有することで、得られる樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液に容易に溶解し、露光するとアルカリ現像液に難溶になりかつ、現像による膜減りが少なく、短時間で現像が容易になる。
フェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、(a)アルカリ可溶性樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部であり、さらに好ましくは3〜50質量部の範囲内である。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、接着改良剤を含有してもよい。接着改良剤としては、アルコキシシラン含有化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの化合物を含有することにより、焼成後または硬化後の膜と基材との接着性を向上させることができる。
アルコキシシラン含有化合物の具体例としては、N−フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。
接着改良剤の総含有量は、(a)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましい。0.01質量部以上では、焼成後または硬化後の膜と基材との接着性を向上させることができる点で好ましい。15質量部以下では、過剰な密着でアルカリ現像性が低下することなく、接着性が向上する点で好ましい。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよく、これにより基板との濡れ性を向上させることができる。
界面活性剤としては、“FLUORAD”(登録商標)(スリーエムジャパン(株)製)、“メガファック”(登録商標)(DIC(株)製)、“サーフロン”(登録商標)(旭硝子(株)製)などのフッ素系界面活性剤、KP341(商品名、信越化学工業(株)製)、DBE(商品名、チッソ(株)製)、グラノール(商品名、共栄社化学(株)製)、“BYK”(登録商標)(ビック・ケミー(株)製)などの有機シロキサン界面活性剤、ポリフロー(商品名、共栄社化学(株)製)などのアクリル重合物界面活性剤などが挙げられ、上記各社から入手できる。
本発明において、(a)〜(d)の各成分、フェノール性水酸基を有する化合物、接着改良剤および界面活性剤は、有機溶媒に溶解または分散した状態で用いられる。有機溶媒は、大気圧下沸点が80℃〜250℃であるものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる有機溶媒としては具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルプロピレン尿素、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、デルタバレロラクトンなどが挙げられる。これらは単独または2種以上用いてもかまわない。
これらのうち、(a)アルカリ可溶性樹脂を溶解しかつ、大気圧下沸点が100℃〜210℃であるものが特に好ましい。沸点がこの範囲であれば、組成物塗布時に有機溶媒が揮発しすぎて塗布できなくなることがなく、かつ組成物の熱処理温度を高くしなくてもよいため、下地基板の材質に制約が生じることがない。また、(a)アルカリ可溶性樹脂を溶解する有機溶媒を用いることによって、下地基板に均一性の良い塗膜を形成することができる。
このような沸点を有する特に好ましい有機溶媒として、具体的には、シクロペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物に使用される有機溶媒は、(a)アルカリ可溶性樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上であり、好ましくは800質量部以下、特に好ましくは500質量部以下である。
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。例えば、前記(a)アルカリ可溶性樹脂および(b)化合物と、必要により(c)、(d)成分などを溶解させることにより、樹脂組成物を得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。加熱する場合、加熱温度は感光性樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温〜80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。また、界面活性剤や一部の密着改良剤など、撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することで、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
得られた樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.07μm、0.05μm、0.03μm、0.02μm、0.01μm、0.005μmなどがあるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあるが、PEやNYが好ましい。
次に、本発明の樹脂組成物を用いて樹脂膜を製造する方法について、例を挙げて説明する。
まず、感光性を付与した樹脂組成物を基板上に塗布する。基板としてはシリコンウエハ、セラミックス類、ガリウムヒ素などが用いられるが、これらに限定されない。シランカップリング剤、チタンキレート剤などの薬液で基板を前処理してもよい。例えば、前述のカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5〜20質量%溶解させた溶液をスピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などで表面処理をする。場合によっては、その後50℃〜300℃までの温度をかけることで、基板と上記カップリング剤との反応を進行させることもできる。
樹脂組成物の塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが通常、乾燥後の膜厚が、1〜50μmになるように塗布する。
次に、感光性を付与した樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性の塗布膜を得る。この工程をプリベークとも言う。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、70〜140℃の範囲で1分間〜数時間行うことが好ましい。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピンなどの治具上に塗布膜を保持して加熱する。プロキシピンの材質としては、アルミニウムやステンレスなどの金属材料、またはポリイミド樹脂や“テフロン(登録商標)”などの合成樹脂があり、耐熱性があればいずれの材質のプロキシピンを用いてもかまわない。プロキシピンの高さは、基板のサイズ、塗布膜の種類、加熱の目的などにより様々であるが、0.1〜10mmが好ましい。
次に、この感光性の塗布膜に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。ポジ型の感光性を有する場合、露光部は現像液に溶解する。ネガ型の感光性を有する場合、露光部は硬化し、現像液に不溶化する。
次に、必要に応じて露光後のベーク処理を行う。この温度としては50〜180℃の範囲が好ましく、特に60〜150℃の範囲がより好ましい。時間は特に制限はないが、その後の現像性の観点からは10秒〜数時間が好ましい。
露光後、樹脂膜のパターンを形成するには、現像液を用いて露光部を除去する。現像液は、テトラメチルアンモニウム水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを1種類以上添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。リンス処理には、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシメチルプロパネートなどのエステル類などを1種類以上水に添加してもよい。
現像後、得られた塗布膜のパターンを150〜500℃の温度範囲で加熱して樹脂膜を硬化レリーフパターンに変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間〜5時間実施することが好ましい。例としては、130℃、200℃、350℃で各30分間ずつ熱処理する方法、室温より320℃まで2時間かけて直線的に昇温する方法などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物により形成した硬化レリーフパターンは、半導体部品の表面保護膜、薄膜インダクタや高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などの用途に好適に用いられる。
次に、本発明の樹脂組成物を用いたコイル導体を有する電子部品への応用例について図1を用いて説明する。図1は、本発明のコイル導体を有する電子部品における、絶縁層とコイル導体層とを交互に積層してなる多層構造部分を拡大した断面図である。
基板1の上に本発明の樹脂組成物による絶縁膜2aが形成され、この絶縁膜2a上にコイル導体層3aが形成される。同様に絶縁膜2b〜2dに対応するコイル導体層3b〜3dが形成され、絶縁膜2eおよび2fが形成される。
コイル導体層3a、3bの内周端どうしは絶縁層2bを貫通するスルーホール部4aを介して互いに接続されている。そのため、コイル導体層3a、3bは2つのコイルの直列回路からなる単一のインダクタを構成している。コイル導体層3c、3dも同様に、内周端どうしは絶縁層2dを貫通するスルーホール部4bを介して互いに接続されているため、コイル導体層3c、3dは2つのコイルの直列回路からなる単一のインダクタを構成している。
上記構造中の絶縁膜に求められる特性は、積層した際に低反りで、かつ、コイルパターン形成に伴う薬液処理に耐えることであり、本発明の樹脂組成物は本用途に好適に用いることができる。
以下実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例中の樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
<低応力性(反り応力)の評価>
6インチのシリコンウエハの反り応力を、ストレス装置FLX3300−T(東朋テクノロジー株式会社製)を用いて測定した。次にワニスを120℃で3分間のプリベーク後の膜厚が12μmとなるように塗布現像装置Mark−7を用いてスピンコート法で塗布およびプリベークした後、イナートオーブンCLH−21CD−S(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、酸素濃度20ppm以下で3.5℃/分で220℃まで昇温し、220℃で1時間加熱処理を行なった。温度が50℃以下になったところでシリコンウエハを取り出し、シリコンウエハ上の硬化膜の膜厚を測定後、硬化膜の反り応力を上記のストレス装置を用いて測定した。ここで、反り応力は25MPa未満が好ましく、15MPa未満がより好ましい。反り応力評価は、15MPa未満の場合を3、15MPa以上25MPa未満の場合を2、25MPa以上の場合を1として評価とした。
<耐薬品性の評価>
各実施例および比較例に記載のワニスについて、前記の方法でシリコンウエハ上に作製したキュア膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いて室温で30分間浸漬処理を行い、処理前後の膜厚を測定し、膜厚変動率を求めた。さらに、クラックや剥離の有無を光学顕微鏡で確認した。ここで、膜厚変動率は3%未満が好ましく、1%未満がより好ましい。耐薬品性評価は、膜厚変動率0%以上1%未満の場合を3、1%以上3%未満の場合を2、3%以上の場合を1として評価とした。クラックや剥離が認められない場合を3、クラックのみで基板から剥離が認められない場合を2、基板から剥離が認められる場合を1として評価した。
<合成例1 ポリイミドの合成>
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)32.9g(0.09モル)をNMP500gに溶解した。ここにODPA31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、30℃で2時間撹拌した。その後、3−アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)を加え、40℃で2時間撹拌した。さらにピリジン(東京化成(株)製)5gをトルエン(東京化成(株)製30g)で希釈して、溶液に加え、冷却管を付け系外に水をトルエンとともに共沸で除去しながら溶液の温度を120℃にして2時間、さらに180℃で2時間反応させた。この溶液の温度を室温まで低下させ、水3Lに溶液を投入し、白色の粉体を得た。この粉体を濾過で集め、さらに水で3回洗浄を行った。洗浄後、白色粉体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥させ、ポリイミドを得た。
<合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(HFHA)の合成>
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド(東京化成(株)製)17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間撹拌し、その後室温に戻した。析出した白色固体を濾別し、50℃で真空乾燥した。
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素(和光純薬(株)製)を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(HFHA)を得た。
<合成例3 ポリイミド前駆体の合成>
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたHFHA51.3g(0.085モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA、信越化学(株)製)1.24g(0.005モル)、3−アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)200gに溶解した。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA、マナック(株)製)31.0g(0.1モル)を加え、40℃で2時間撹拌した。その後、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(三菱レーヨン(株)製、DFA)7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分間かけて滴下した。滴下後、40℃で2時間撹拌を続けた。撹拌終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿を濾過で集めた。さらに水2Lで3回洗浄を行い、集めたポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド前駆体を得た。
<合成例4 ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成>
乾燥窒素気流下、BAHF18.3g(0.05モル)をNMP50g、グリシジルメチルエーテル26.4g(0.3モル)に溶解させ、溶液の温度を−15℃まで冷却した。ここにジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド(日本農薬(株)製)7.4g(0.025モル)とイソフタル酸クロリド(東京化成(株)製)5.1g(0.025モル)をγ−ブチロラクトン25gに溶解させた溶液を内部の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−15℃で6時間撹拌を続けた。反応終了後、メタノールを10質量%含んだ水3Lに溶液を投入して白色の沈殿を集めた。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。
<合成例5 キノンジアジド化合物の合成>
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)、21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド(東洋合成(株)製、NAC−5)26.8g(0.1モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン12.65gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、下記式で表されるキノンジアジド化合物を得た。
<合成例6 直鎖状の2官能エポキシ化合物の合成>
エピクロルヒドリン(東京化成(株)製)69.4g(0.750モル)と水酸化ナトリウム30g (0.750モル) と水3mLの混合物に対してヘキサエチレングリコール(東京化成(株)製)35.3g(0.125モル)を滴下し、65℃で2時間攪拌した。これを冷却してろ過し、ジクロロメタンで洗浄した。さらに乾燥して減圧蒸留して直鎖状の2官能エポキシ化合物を得た。
<合成例7 メチロール基が結合した芳香環と直鎖状の脂肪族構造を有する熱架橋剤>
ビスフェノールA(東京化成(株)製)20.6g(0.09モル)と、合成例6で得られた直鎖状の2官能エポキシ化合物39.4g(0.10モル)とを仕込み、150℃で溶融混合させた。その後、トリフェニルホスフィン0.016gを添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、メチルイソブチルケトンを100g添加し、5%の水酸化ナトリウム水溶液100gを入れて90℃で30分撹拌した後、静置分液し、有機溶媒層をリン酸で中和して水洗した。
水洗後の有機溶媒層を、40℃で攪拌しながら、20%水酸化ナトリウム水溶液25.0gを5分かけて滴下した。この後、50℃で攪拌しながら、35%ホルムアルデヒド水溶液25.0gを30分かけて滴下し、同じ温度で5時間反応させた。反応終了後、10%酢酸水溶液70gを10分かけて滴下して、反応混合物を中和した。次いで、分液操作を行なって、水層を除去し、室温まで冷却して一晩攪拌した後に減圧蒸留してメチルイソブチルケトンを留去し、目的物を得た。これにγ‐ブチロラクトンを加えて、目的物の50質量%γ‐ブチロラクトン溶液とした。重量平均分子量は5360であった。
[実施例1]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例1のポリイミド3.50g、(b)化合物として、合成例7の熱架橋剤(50質量%γ‐ブチロラクトン溶液)2.10g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.55gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[実施例2]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例1のポリイミド3.50g、(b)化合物として、合成例7の熱架橋剤(50質量%γ‐ブチロラクトン溶液)1.40g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.60gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[実施例3]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例1のポリイミド3.50g、(b)化合物として、合成例7の熱架橋剤(50質量%γ‐ブチロラクトン溶液)2.80g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.50gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[実施例4]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例3のポリイミド前駆体3.50g、(b)化合物として、合成例7の熱架橋剤(50質量%γ‐ブチロラクトン溶液)2.10g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.55gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[実施例5]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例4のポリベンゾオキサゾール前駆体3.50g、(b)化合物として、合成例7の熱架橋剤(50質量%γ‐ブチロラクトン溶液)2.10g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.55gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[実施例6]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例4のポリベンゾオキサゾール前駆体3.50g、(b)化合物として、合成例7の熱架橋剤(50質量%γ‐ブチロラクトン溶液)2.10g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、(d)その他の熱架橋剤としてTM−BIP−A(商品名、旭有機材工業社製)0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン4.20gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[実施例7]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例1のポリイミド3.50g、(b)化合物として、合成例7の熱架橋剤(50質量%γ‐ブチロラクトン溶液)4.20g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.40gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[比較例1]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例1のポリイミド3.50g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.71gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
[比較例2]
(a)アルカリ可溶性樹脂として、合成例4のポリベンゾオキサゾール前駆体3.50g、(c)感光剤として合成例5のキノンジアジド化合物0.70g、(d)その他の熱架橋剤としてTM−BIP−A(商品名、旭有機材工業社製)0.70g、接着改良剤としてKBM−1003(商品名、信越化学工業社製)0.15g、界面活性剤としてポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)0.001gを、γ‐ブチロラクトン3.55gに加えて攪拌し、感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて、前記に記載の方法で、反り応力、耐薬品性の評価を実施した。
上記の組成および評価結果に関し、実施例1〜7と比較例1〜2について表1に示す。
表1に示した名称は、それぞれ以下の意味である。
TM−BIP−A(商品名、旭有機材工業社製)
KBM−1003:シランカップリング剤KBM−403(商品名、信越化学工業社製)
PF77:ポリフローNo.77(商品名、共栄化学社製)
GBL:γ‐ブチロラクトン