JP2018104317A - フラン環を有するα−オレフィンの製造方法 - Google Patents

フラン環を有するα−オレフィンの製造方法 Download PDF

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淳志 岡村
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尚道 萩庭
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【課題】本発明は、汎用性の高い比較的安価な原料からフラン環を有するα−オレフィンをより高収率で得るための新規な製造方法を提供する。【解決手段】下記式(2)で表されるフラン環を有するα−オレフィンの製造方法であって、下記式(1)で表されるフラン環を有する第一級アルコールを出発原料として用いることを特徴とするα−オレフィンの製造方法。[式中、Rは水素原子または炭素数が1〜5である炭化水素基を示し、nは2以上6以下の整数を示す]【選択図】なし

Description

本発明は、フラン環を有するα−オレフィンの新規な製造方法に関する。
フラン環を有するα−オレフィンは、従来のベンゼン環を有するα−オレフィンに比べて、フラン環が有する極性により極性材料への密着性や極性溶媒への相溶性、分散性等の向上が想定され、また、フラン環による耐熱性やガスバリア性の付与なども期待される物質である。
これらフラン環を有するα−オレフィンを、例えば、従来のスチレンのような極性を持たないベンゼン環を有するα−オレフィンの用途の一つである印刷インキ用バインダー、顔料分散剤、増粘剤向け機能性ポリマーの共重合物等に代用することで、新たな機能を付与した機能性ポリマーとなることが期待されるが、現状フラン環を有するα−オレフィンは試薬レベルでも入手困難な物質である。
これらフラン環を有するα−オレフィンを製造する方法として、特許文献1には、塩基性化合物の存在下、PPhCHRXで示される化合物(Phはフェニル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルメチル基、炭素数7〜11のアリールメチル基、炭素数3〜7のアシルメチル基、ホルミル基、カルボキシル基、炭素数2〜6のアシル基、または炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基を表し、Xはハロゲン原子を表す)と、原料であるフルフラール類とを反応させ、得られた反応液を水蒸気蒸留して対応するビニルフラン類を得る方法が開示されている。
非特許文献1には、フルフラールを酸化して得たフリルアクリル酸を脱COすることでビニルフランを得る方法について開示されている。また、非特許文献2には、トリフルオロ酢酸タリウムの存在下、フランとアリルトリメチルシランを反応させてアリルフランを合成する方法が開示されている。
特開2010−235545号公報
工業化学雑誌 第45編 第5冊 474頁(昭和17年5月) Tetrahedron Letters vol.22、No.45、4491−4494 (1981)
特許文献1の方法は、Wittig反応により原料であるフルフラール類から対応するビニルフラン類を得るものであり、反応の進行のためには量論量の有機リン化合物が必要であるため、反応後に多量の副生物が発生する問題がある。非特許文献1では、特許文献1のように有機リン化合物を必要としないため多量の副生物の発生は抑制されるが、目的物の収率は低く、また、原料からCOを脱離させるため炭素利用率が低下するという問題がある。非特許文献2では、高収率で目的物であるアリルフランを得ることができるが、その反応には毒性が強いタリウム塩やアリルトリメチルシランを用いる必要がある。また、目的物と同量の引火性、毒性を有するトリメチルシランが副生するため、工業的な生産を行う上で課題が多い。
かくして、本発明は、汎用性の高い比較的安価な原料からフラン環を有するα−オレフィンをより安全に、より高収率で得るための新規な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、汎用性が高く比較的入手容易であるフラン環を有する第一級アルコールを出発原料とすることで、対応するフラン環を有するα−オレフィンを効率よく得られることを見出し、本発明を完成した。
さらには、原料であるフラン環を有する第一級アルコールの末端水酸基を水酸基以外の他の脱離基に変換後に当該脱離基を脱離させることで、対応するフラン環を有するα−オレフィンをより高収率で得られることも見出した。
以下、本発明を示す。
[1]下記式(2)で表されるフラン環を有するα−オレフィンの製造方法であって、下記式(1)で表されるフラン環を有する第一級アルコールを出発原料として用いることを特徴とするα−オレフィンの製造方法。
Figure 2018104317
Figure 2018104317
[式中、Rは水素原子または炭素数が1〜5である炭化水素基を示し、nは2以上6以下の整数を示す]
[2]前記式(1)で表されるフラン環を有する第一級アルコールを分子内脱水する工程を含む[1]記載のα−オレフィンの製造方法。
[3]前記式(1)で表されるフラン環を有する第一級アルコールの末端水酸基を脱離基に変換後、当該脱離基を脱離させる工程を含む[1]記載のα−オレフィンの製造方法。
本発明によれば、汎用性の高い比較的安価な原料であるフラン環を有する第一級アルコールから新たな機能を付与した機能性ポリマー原料として期待されるフラン環を有するα−オレフィンをより高収率で得ることができる。
以下、本発明に係るα−オレフィンの製法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し、実施することができる。
(フラン環を有する第一級アルコール)
本発明に係る前記式(1)で表される出発原料であるフラン環を有する第一級アルコールとしては、前記式(1)中のフラン環に結合したR基が水素原子または炭素数が1〜5である炭化水素基であり、また、フラン環に結合したヒドロキシアルキル基のnが2以上6以下の整数、すなわち炭素数が2〜6のヒドロキシアルキル基である。
具体的には、フラン−2−エタノール、フラン−2−プロパノール、フラン−2−ブタノール、フラン−2−プロパノール、フラン−2−ペンタノール、フラン−2−ヘキサノール、5−メチルフラン−2−エタノール、5−メチルフラン−2−プロパノール、5−メチルフラン−2−ブタノール、5−メチルフラン−2−プロパノール、5−メチルフラン−2−ペンタノール、5−メチルフラン−2−ヘキサノール、5−エチルフラン−2−エタノール、5−エチルフラン−2−プロパノール、5−エチルフラン−2−ブタノール、5−エチルフラン−2−プロパノール、5−エチルフラン−2−ペンタノール、5−エチルフラン−2−ヘキサノール、5−プロピルフラン−2−エタノール、5−プロピルフラン−2−プロパノール、5−プロピルフラン−2−ブタノール、5−プロピルフラン−2−プロパノール、5−プロピルフラン−2−ペンタノール、5−プロピルフラン−2−ヘキサノール、5−isoプロピルフラン−2−エタノール、5−isoプロピルフラン−2−プロパノール、5−isoプロピルフラン−2−ブタノール、5−isoプロピルフラン−2−プロパノール、5−isoプロピルフラン−2−ペンタノール、5−isoプロピルフラン−2−ヘキサノール、5−ブチルフラン−2−エタノール、5−ブチルフラン−2−プロパノール、5−ブチルフラン−2−ブタノール、5−ブチルフラン−2−プロパノール、5−ブチルフラン−2−ペンタノール、5−ブチルフラン−2−ヘキサノール、5−isoブチルフラン−2−エタノール、5−isoブチルフラン−2−プロパノール、5−isoブチルフラン−2−ブタノール、5−isoブチルフラン−2−プロパノール、5−isoブチルフラン−2−ペンタノール、5−isoブチルフラン−2−ヘキサノール、5−tertブチルフラン−2−エタノール、5−tertブチルフラン−2−プロパノール、5−tertブチルフラン−2−ブタノール、5−tertブチルフラン−2−プロパノール、5−tertブチルフラン−2−ペンタノール、5−tertブチルフラン−2−ヘキサノール、5−ペンチルフラン−2−エタノール、5−ペンチルフラン−2−プロパノール、5−ペンチルフラン−2−ブタノール、5−ペンチルフラン−2−プロパノール、5−ペンチルフラン−2−ペンタノール、5−ペンチルフラン−2−ヘキサノール、5−isoペンチルフラン−2−エタノール、5−isoペンチルフラン−2−プロパノール、5−isoペンチルフラン−2−ブタノール、5−isoペンチルフラン−2−プロパノール、5−isoペンチルフラン−2−ペンタノール、5−isoペンチルフラン−2−ヘキサノール、5−neoペンチルフラン−2−エタノール、5−neoペンチルフラン−2−プロパノール、5−neoペンチルフラン−2−ブタノール、5−neoペンチルフラン−2−プロパノール、5−neoペンチルフラン−2−ペンタノール、5−neoペンチルフラン−2−ヘキサノールが挙げられる。
中でも、前記式(1)におけるnが2又は3である、フラン−2−エタノール、5−メチルフラン−2−エタノール、5−エチルフラン−2−エタノール、5−プロピルフラン−2−エタノール、5−isoプロピルフラン−2−エタノール、5−ブチルフラン−2−エタノール、5−isoブチルフラン−2−エタノール、5−tertブチルフラン−2−エタノール、5−ペンチルフラン−2−エタノール、5−isoペンチルフラン−2−エタノール、5−neoペンチルフラン−2−エタノール、フラン−2−プロパノール、5−メチルフラン−2−プロパノール、5−エチルフラン−2−プロパノール、5−プロピルフラン−2−プロパノール、5−isoプロピルフラン−2−プロパノール、5−ブチルフラン−2−プロパノール、5−isoブチルフラン−2−プロパノール、5−tertブチルフラン−2−プロパノール、5−ペンチルフラン−2−プロパノールが好ましい。
これら、フラン環を有する第一級アルコールは、汎用性が高く比較的容易に入手することができる。また、フルフラール、アセトアルデヒド、アセトン、水素等の汎用の原料から容易に合成することもできる。
(フラン環を有するα−オレフィン)
本発明に係る前記式(2)で表される目的生成物であるフラン環を有するα−オレフィンとしては、前記した出発原料であるフラン環を有する第一級アルコールに対応したものであって、前記式(2)中のフラン環に結合したR基が水素原子または炭素数が1〜5である炭化水素基である。また、出発原料であるフラン環を有する第一級アルコールの水酸基から水一分子が脱離することによって得られる末端に二重結合を持つ不飽和炭化水素基のnが2以上6以下の整数、すなわち炭素数が2〜6の末端に二重結合を持つ不飽和炭化水素基を有する。
具体的には、2−ビニルフラン、2−メチル−5−ビニルフラン、2−エチル−5−ビニルフラン、2−プロピル−5−ビニルフラン、2−isoプロピル−5−ビニルフラン、2−ブチル−5−ビニルフラン、2−isoブチル−5−ビニルフラン、2−tertブチル−5−ビニルフラン、2−ペンチル−5−ビニルフラン、2−isoペンチル−5−ビニルフラン、2−neoペンチル−5−ビニルフラン、2−アリルフラン、2−メチル−5−アリルフラン、2−エチル−5−アリルフラン、2−プロピル−5−アリルフラン、2−isoプロピル−5−アリルフラン、2−ブチル−5−アリルフラン、2−isoブチル−5−アリルフラン、2−tertブチル−5−アリルフラン、2−ペンチル−5−アリルフラン、2−isoペンチル−5−アリルフラン、2−neoペンチル−5−アリルフラン、2−(but−3−en−1−yl)フラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−メチルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−エチルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−プロピルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−isoプロピルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−ブチルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−isoブチルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−tertブチルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−ペンチルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−isoペンチルフラン、2−(but−3−en−1−yl)−5−neoペンチルフラン、2−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−メチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−エチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−プロピル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−isoプロピル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−ブチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−isoブチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−tertブチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−ペンチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−isoペンチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−neoペンチル−5−(pent−4−en−1−yl)フラン、2−(hex−5−en−1−yl)フラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−メチルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−エチルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−プロピルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−isoプロピルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−ブチルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−isoブチルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−tertブチルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−ペンチルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−isoペンチルフラン、2−(hex−5−en−1−yl)−5−neoペンチルフランが挙げられる。
中でも、前記式(2)におけるnが2又は3である、2−ビニルフラン、2−メチル−5−ビニルフラン、2−エチル−5−ビニルフラン、2−プロピル−5−ビニルフラン、2−isoプロピル−5−ビニルフラン、2−ブチル−5−ビニルフラン、2−isoブチル−5−ビニルフラン、2−tertブチル−5−ビニルフラン、2−ペンチル−5−ビニルフラン、2−isoペンチル−5−ビニルフラン、2−アリルフラン、2−メチル−5−アリフラン、2−エチル−5−アリルフラン、2−プロピル−5−アリルフラン、2−isoプロピル−5−アリルフラン、2−ブチル−5−アリルフラン、2−isoブチル−5−アリルフラン、2−tertブチル−5−アリルフラン、2−ペンチル−5−アリルフラン、2−isoペンチル−5−アリルフラン、2−neoペンチル−5−アリルフランが好ましい。
(フラン環を有する第一級アルコールから対応するα−オレフィンの製法)
本発明に係るフラン環を有する第一級アルコールから対応するα−オレフィンの製法については、対応するα−オレフィンが製造できる限り特段の限定はない。
その製法としては、例えば、フラン環を有する第一級アルコールを、無触媒、あるいは触媒の存在下に分子内脱水(直接脱水)する方法、あるいは、無触媒、あるいは触媒の存在下にフラン環を有する第一級アルコールの水酸基を他の脱離基に変換後、脱離基を脱離させて対応するα−オレフィンを得る方法が挙げられる。
フラン環を有する第一級アルコールからの分子内脱水(直接脱水)は、気相、液相のいずれの条件下でも実施することができる。例えば、気相反応の場合、触媒としてアルミナ等の金属酸化物を用いることができる。触媒を充填した反応管を外部加熱により加温し、加温された触媒層に、窒素、ヘリウムのような不活性ガスで希釈した原料を流通することで脱水反応を行うことができる。触媒体積基準のSVは200〜20000h−1、反応温度は200〜700℃、原料濃度は1〜99体積%として実施することができる。
フラン環を有する第一級アルコールの末端水酸基を脱離基に変換する方法としては、出発原料や脱離基によって異なるため一概には決定できないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)無触媒、あるいは酸触媒の存在下にオキソ酸との脱水縮合反応により当該オキソ酸エステルへと変換する方法
(2)無触媒、あるいは塩基触媒の存在下に、オキソ酸ハロゲン化物またはオキソ酸無水物との縮合反応により当該オキソ酸エステルへと変換する方法
(3)無触媒、あるいは酸触媒または塩基触媒存在下、オキソ酸エステルとの置換反応により当該オキソ酸エステルへと変換する方法
(4)無触媒、あるいは酸触媒または塩基触媒存在下に、ハロゲン化物との置換反応により当該ハロゲン化アルキルへと変換する方法
(5)無触媒、あるいは酸触媒または塩基触媒存在下に、(1)〜(3)で合成されたエステルとハロゲン化物との置換反応により当該ハロゲン化アルキルへ変換する方法あるいは無触媒、あるいは酸触媒または塩基触媒存在下に、(4)で合成されたハロゲン化アルキルを当該ハロゲン化アルキル中に含まれるハロゲンとは異なるハロゲンを含むハロゲン化物との置換反応により新たなハロゲン化アルキルへ変換する方法
(1)の方法としては、例えば、酸触媒として硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、脱水縮合剤としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチル アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド等が挙げられる。オキソ酸としては、酢酸等のアルキルカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸、リン酸等が挙げられる。
(2)の方法としては、例えば、塩基触媒としてピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。オキソ酸ハロゲン化物としては、酢酸クロリド等のアルキルカルボン酸ハロゲン化物、安息香酸クロリド等の芳香族カルボン酸ハロゲン化物、p−トルエンスルホン酸クロリド、メタンスルホン酸クロリド等のスルホン酸ハロゲン化物、塩化ホスホリル等のリン酸ハロゲン化物等が挙げられる。オキソ酸無水物としては、無水酢酸、無水安息香酸等のカルボン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物等のスルホン酸無水物等が挙げられる。
(3)の方法としては、例えば、酸触媒として硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。塩基触媒としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
(4)の方法としては、例えば、ハロゲン化物としてヨウ化水素、臭化水素、塩化水素等のハロゲン化水素、塩化オキサリル等のカルボン酸ハロゲン化物、三フッ化N,N−ジエチルアミノ硫黄、塩化チオニル、塩化スルフリル等のハロゲン化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、リン酸トリクロリド、三臭化リン、五臭化リン等のハロゲン化リン等が挙げられる。
(5)の方法としては、例えば、エステルとしてトリフルオロメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル等のスルホン酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。ハロゲン化アルキルとしては、ヨウ化アルキル、臭化アルキル、塩化アルキル等、またはアジ化アルキル等の擬ハロゲン化アルキル等が挙げられる。ハロゲン化物しては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム等、またはアジ化ナトリウム等の擬ハロゲン化物等が挙げられる。
また、脱離基に変換した後に、当該脱離基を脱離させる条件等も、出発原料や脱離基によって異なるため一概には決定できないが、例えば、不活性ガス中での熱分解反応や液相での塩基との反応が挙げられる。
不活性ガス中での熱分解反応を利用して脱離基を脱離させる場合、石英砂やガラスビーズのような不活性な充填剤を充填した反応管を外部加熱により加温し、加温された充填層に、窒素、ヘリウムのような不活性ガスで希釈した原料を流通することで行うことができる。充填剤体積基準のSVは200〜20000h−1、熱分解温度は400〜700℃、原料濃度は1〜99体積%として実施することができる。この熱分解反応を利用して脱離基を脱離させる場合には、生成物としてフラン環を有するα−オレフィンと脱離基由来のオキソ酸、または、ハロゲン化物が等モル量生成するので、フラン環を有するα−オレフィンとオキソ酸、または、ハロゲン化物を分離すれば、目的物としてフラン環を有するα−オレフィンを得ることができる。なお、ここで分離されるオキソ酸、または、ハロゲン化物は、原料であるフラン環を有する第一級アルコールの末端水酸基を脱離基に変換する反応に再利用することができるため、フラン環を有するα−オレフィンを経済的に製造することが可能となるため好ましい。
脱離基としては、不活性ガス中での熱分解反応でフラン環を有するα−オレフィンと脱離基由来のオキソ酸、または、ハロゲン化物を与えるものであれば、前記したいずれの脱離基も利用することができるが、より安価で取扱いの容易な点から酢酸等のアルキルカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸、リン酸等が好ましい。
また、液相での塩基との反応の場合、オキソ酸エステルまたはハロゲン化アルキルは塩基存在下、脱離反応により当該アルケンへ変換できる。オキソ酸エステルとしては酢酸エステル等のアルキルカルボン酸エステル、安息香酸エステル等の芳香族カルボン酸エステル、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル等のスルホン酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステルが挙げられる。ハロゲン化アルキルとしては、ヨウ化アルキル、臭化アルキル、塩化アルキル等、またはアジ化アルキル等の擬ハロゲン化物等が挙げられる。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。
[実施例]
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
<末端水酸基の変換>
(調製例1)フラン−2−プロパノールトシル酸エステルの調製
200mLフラスコにフラン−2−プロパノール(95%)10.5g、p−トルエンスルホニルクロリド18.3g、ピリジン9.5g、4−ジメチルアミノピリジン4.9g、ジクロロメタン70.3g(モレキュラシーブス3A脱水品、53mL)を加え、室温で18時間撹拌した後、飽和NHCl水溶液を加えてクエンチした。得られた水溶液をジクロロメタンで抽出、飽和食塩水で脱水、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮液27.8gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー((シリカゲル60、粒子径40〜100μm)300g、展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン=2/3重量比)を用いて精製し、薄黄色液体のフラン−2−プロパノールトシル酸エステル19.8gを取得した。その収率は、89モル%であった。
(調製例2)フラン−2−プロパノールヨウ素体の調製
100mLナスフラスコに、調製例1で得られたフラン−2−プロパノールトシル酸エステル10.1g、ヨウ化カリウム12.1g、アセトン30.3gを加えて、室温で120 時間撹拌した。ロータリーエバポレーターでアセトンを除去した後、ジクロロメタンで抽出して、水で洗浄した。得られた油層をNaSOで乾燥して、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮液8.4g をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカ350g、展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン=1/9重量比)を用いて精製し、薄黄色液体のフラン−2−プロパノールヨウ素体7.9gを取得した。その収率は、93モル%であった。
(調製例3)フラン−2−プロパノール酢酸エステルの調製
500mL ナスフラスコにフラン−2−プロパノール(95%)38.5g、無水酢酸44.4g、ピリジン39.2g、ジクロロメタン288g(モレキュラシーブス3A脱水品、217mL)を加え、室温で17時間撹拌した。ロータリーエバポレーターでジクロロメタンを除去した後、水を加えてクエンチした。得られた水溶液をジクロロメタンで抽出、水で洗浄、10%酢酸水溶液で洗浄、炭酸ナトリウム水溶液で洗浄、飽和食塩水で脱水、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮液73.3gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカ380g、展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン=1/9〜3/17〜1/4重量比)を用いて精製し、無色透明液体のフラン−2−プロパノール酢酸エステル47.0gを取得した。その収率は、96モル%であった。
<フラン環を有するα−オレフィン(アリルフラン)の製造>
(実施例1)
ニッケル−鉄合金製の反応管に石英砂5mLを充填し、窒素を50mL/minで流しながら、反応管を電気ヒーターにより外部から加熱した。反応管が所定温度に到達後、調製例3で調製したフラン−2−プロパノール酢酸エステルを0.05g/minで供給して熱分解反応を行った。反応管出口に冷却トラップを設けて未反応原料、および、熱分解生成物を捕集した。一定時間捕集した後に冷却トラップ内の捕集液を回収、重量測定後、内部標準液を加えてGC−FIDで分析した。525℃、575℃、600℃での熱分解反応結果を表1に示す。
Figure 2018104317
525℃でのアリルフラン収率は53%であったが、熱分解温度上昇に伴い収率は向上し、熱分解温度を600℃とすると収率98%が得られた。また、いずれの温度でもアリルフラン(AF)選択率は99%以上であった。
(実施例2)
50mLナスフラスコに調製例2で合成したフラン−2−プロパノールヨウ素体2.0g、テトラヒドロフラン30.4g(モレキュラシーブス3A 脱水品、34mL)、カリウムtert−ブトキシド1.5g、1,4−ジオキサン0.2g(内部標準物質、モレキュラシーブス3A 脱水品)を加え、室温で1時間撹拌した。撹拌後、GC−FIDにて分析した。その結果、アリルフランが収率84%で得られた。
(実施例3)
50mLナスフラスコに調製例1で合成したフラン−2−プロパノールトシル酸エステル2.0g、テトラヒドロフラン32.1g(モレキュラシーブス3A 脱水品、36mL)、カリウムtert−ブトキシド1.2g、1,4−ジオキサン0.2g(内部標準物質、モレキュラシーブス3A 脱水品)を加え、室温で2時間撹拌した。撹拌後、GC−FIDにて分析した。その結果、アリルフランが収率66%で得られた。
(実施例4)
鉄−ニッケル−クロム合金製の反応管に触媒として顆粒状のアルミナを1mL充填した。窒素を50mL/minで流しながら、反応管を電気ヒーターにより外部から加熱した。反応管が400℃に到達後、フラン−2−プロパノールを0.05g/minで供給して脱水反応を行った。反応管出口に冷却トラップを設けて未反応原料、および、反応生成物を捕集した。一定時間捕集した後に冷却トラップ内の捕集液を回収、重量測定後、内部標準液を加えてGC−FIDで分析した。その結果、アリルフランが収率20%で得られた。この時、フラン−2−プロパノール転化率は52%であった。
現状、試薬レベルでも入手困難な物質であり、新たな機能を付与した機能性ポリマー原料として期待されるフラン環を有するα−オレフィンを効率よく製造するができる。

Claims (3)

  1. 下記式(2)で表されるフラン環を有するα−オレフィンの製造方法であって、下記式(1)で表されるフラン環を有する第一級アルコールを出発原料として用いることを特徴とするα−オレフィンの製造方法。
    Figure 2018104317
    Figure 2018104317
    [式中、Rは水素原子または炭素数が1〜5である炭化水素基を示し、nは2以上6以下の整数を示す]
  2. 前記式(1)で表されるフラン環を有する第一級アルコールを分子内脱水する工程を含む請求項1記載のα−オレフィンの製造方法。
  3. 前記式(1)で表されるフラン環を有する第一級アルコールの末端水酸基を脱離基に変換後、当該脱離基を脱離させる工程を含む請求項1記載のα−オレフィンの製造方法。
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