JP2013001653A - フルオロ硫酸エノールエステル類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フルオロ硫酸エノールエステル類の工業的な製造方法を提供する。
【解決手段】α位に水素原子を有するカルボニル化合物を塩基の存在下にスルフリルフルオリド(SO2F2)と反応させることによりフルオロ硫酸エノールエステル類を製造することができる。スルフリルフルオリドは燻蒸剤として広く使用されているため、大量規模での入手が容易で、且つ取り扱いが安全に行える。また、ケト−エノール平衡がケト形に傾いているカルボニル化合物に対しても好適に適用することができるため、基質適用範囲が広い。さらに、好適な塩基を用いることにより所望の反応を効率良く行うことができ、精製困難な不純物を殆ど副生しない。この様に、本発明の製造方法は、フルオロ硫酸エノールエステル類の工業的な製造方法として極めて有用である。
【選択図】なし
【解決手段】α位に水素原子を有するカルボニル化合物を塩基の存在下にスルフリルフルオリド(SO2F2)と反応させることによりフルオロ硫酸エノールエステル類を製造することができる。スルフリルフルオリドは燻蒸剤として広く使用されているため、大量規模での入手が容易で、且つ取り扱いが安全に行える。また、ケト−エノール平衡がケト形に傾いているカルボニル化合物に対しても好適に適用することができるため、基質適用範囲が広い。さらに、好適な塩基を用いることにより所望の反応を効率良く行うことができ、精製困難な不純物を殆ど副生しない。この様に、本発明の製造方法は、フルオロ硫酸エノールエステル類の工業的な製造方法として極めて有用である。
【選択図】なし
Description
本発明は、フルオロ硫酸エノールエステル類の工業的な製造方法に関する。
フルオロ硫酸エノールエステル類は、トリフルオロメタンスルホン酸エノールエステル類の安価な代替として利用することができる(非特許文献1)。本発明に関連する技術として、5H−3−オキサ−オクタフルオロペンタンスルホン酸エノールエステル類の製造方法が報告されている(非特許文献2)。
一方、本発明で開示するフルオロ硫酸エノールエステル類の製造方法は一切報告されていない。
Tetrahedron Letters(英国),1991年,第32巻,第33号,p.4073−4076 Tetrahedron Letters(英国),1996年,第37巻,第47号,p.8553−8556
Tetrahedron Letters(英国),1991年,第32巻,第33号,p.4073−4076 Tetrahedron Letters(英国),1996年,第37巻,第47号,p.8553−8556
フルオロ硫酸エノールエステル類の従来の製造方法では、フルオロ硫酸無水物が用いられている。しかしながら、本反応剤は大量規模での入手が困難であり(市販が限られている)、さらに毒性の問題から工業的な製造方法には採用し難いものであった(非特許文献1参照)。
一方、非特許文献2では、5H−3−オキサ−オクタフルオロペンタンスルホニルフルオリドと1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンの組み合わせによる、各種ステロイド基質の3位カルボニル基選択的なエノールスルホニル化が開示されている。ステロイドD環の17位カルボニル基(シクロペンタノン部位)は反応に全く関与せず、さらに同様の反応において、用いるエノールスルホニル化剤の種類により反応性が大きく異なる。本発明で用いるスルフリルフルオリド(SO2F2)は開示されておらず、本化合物が好適なエノールスルホニル化剤に成り得るか否かは全く不明であった。
この様な状況下において、大量規模での入手が容易で、且つ取り扱いが安全な(エノール)スルホニル化剤を用いる、フルオロ硫酸エノールエステル類の工業的な製造方法が強く望まれていた。
本発明者らは、α位に水素原子を有するカルボニル化合物を塩基の存在下にスルフリルフルオリドと反応させることによりフルオロ硫酸エノールエステル類が製造できることを見出した。本発明の製造方法は、ケト−エノール平衡がケト形に傾いているカルボニル化合物に対しても好適に適用することができる。よって、この様な基質への適用は本発明の有用性を最大限に発揮することができるため、好ましい態様と言える。さらに、塩基としては有機塩基が好ましく、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが特に好ましく、所望の反応を効率良く行うことができる。
すなわち、本発明は[発明1]〜[発明4]を含み、フルオロ硫酸エノールエステル類の工業的な製造方法を提供する。
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基、置換芳香環基、アルキルカルボニル基、置換アルキルカルボニル基、芳香環カルボニル基、置換芳香環カルボニル基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、シアノ基またはニトロ基を表し、R3は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基、置換芳香環基、アルコキシ基または置換アルコキシ基を表し、R1とR2、R1とR3またはR2とR3は任意の炭素原子同士で、任意の数および任意の組み合わせで、共有結合により環式構造を形成することができる。]
で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物を、塩基の存在下にスルフリルフルオリド(SO2F2)と反応させることにより、一般式[2]:
で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物を、塩基の存在下にスルフリルフルオリド(SO2F2)と反応させることにより、一般式[2]:
[式中、R1、R2およびR3は一般式[1]と同じであり、R1とR2、R1とR3またはR2とR3は任意の炭素原子同士で、任意の数および任意の組み合わせで、共有結合により環式構造を形成することができ、波線は二重結合の立体化学がE体、Z体またはこれらの混合物であることを表す。]
で示されるフルオロ硫酸エノールエステル類を製造する方法。
で示されるフルオロ硫酸エノールエステル類を製造する方法。
[発明2]
前記一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1およびR2がそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基であることを特徴とする、発明1に記載の方法。
前記一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1およびR2がそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基であることを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明3]
塩基が有機塩基であることを特徴とする、発明1または2に記載の方法。
塩基が有機塩基であることを特徴とする、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
有機塩基が1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンであることを特徴とする、発明1乃至3のいずれかに記載の方法。
有機塩基が1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンであることを特徴とする、発明1乃至3のいずれかに記載の方法。
本発明の好ましい態様によれば、フルオロ硫酸エノールエステル類の製造方法において、スルフリルフルオリドは燻蒸剤として広く使用されているため、大量規模での入手が容易で、且つ取り扱いが安全に行える。また、本発明の好ましい態様によれば、ケト−エノール平衡がケト形に傾いているカルボニル化合物に対しても好適に適用することができるため、基質適用範囲が広い。実際に、ステロイドD環の17位カルボニル基のモデル基質であるシクロペンタノン(実施例1参照)に対しても所望の反応が良好に進行する。さらに、好適な塩基を用いることにより所望の反応を効率良く行うことができ、精製困難な不純物を殆ど副生しない。
この様に、本発明の製造方法は、フルオロ硫酸エノールエステル類の工業的な製造方法として極めて有用である。
本発明のフルオロ硫酸エノールエステル類の製造方法について詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基、置換芳香環基、アルキルカルボニル基、置換アルキルカルボニル基、芳香環カルボニル基、置換芳香環カルボニル基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、シアノ基またはニトロ基を表す。該ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を表す。該アルキル基は、炭素数1〜18の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)のものである。該芳香環基は、炭素数1〜18の、フェニル基、ナフチル基およびアントリル基等の芳香族炭化水素基、またはピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等の窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基である。該アルキルカルボニル基(RCO)のアルキル部位(R)は、前記のアルキル基と同じである。該芳香環カルボニル基(ArCO)の芳香環部位(Ar)は、前記の芳香環基と同じである。該アルコキシカルボニル基(ROCO)のアルキル部位(R)は、前記のアルキル基と同じである。該置換アルキル基、置換芳香環基、置換アルキルカルボニル基、置換芳香環カルボニル基および置換アルコキシカルボニル基は、それぞれ前記のアルキル基、芳香環基、アルキルカルボニル基、芳香環カルボニル基およびアルコキシカルボニル基の、任意の炭素原子または窒素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、置換基を有する。係る置換基は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のハロゲン原子、メチル基、エチル基およびプロピル基等の低級アルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基およびブロモメチル基等の低級ハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等の低級アルコキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基およびブロモメトキシ基等の低級ハロアルコキシ基、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基およびブチリルオキシ基等の低級アシルオキシ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基およびプロポキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等の芳香環基、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体、ならびにヒドロキシル基の保護体等である。さらに、該置換アルキル基は、前記のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合が、任意の数および任意の組み合わせで、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合に置換することもできる(当然、これらの不飽和アルキル基に前記の置換基を同様に有することもできる)。
なお、本明細書において、"低級"とは、炭素数1〜6の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)であるものを意味する。また、前記の“係る置換基は”の芳香環基には、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、ホルミルオキシ基、低級アシルオキシ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体およびヒドロキシル基の保護体等が置換することもできる。さらに、ピロリル基、インドリル基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.等に記載された保護基である。その中でも水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基が好ましい。
一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR3は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基、置換芳香環基、アルコキシ基または置換アルコキシ基を表す。該アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1およびR2のアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。該アルコキシ基(RO)のアルキル部位(R)は、一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1およびR2のアルキル基と同じである。該置換アルコキシ基(R’O)の置換アルキル部位(R’)は、一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1およびR2の置換アルキル基と同じである。
一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1とR2、R1とR3またはR2とR3は、任意の炭素原子同士で(窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子等のヘテロ原子を介することもできる)、任意の数および任意の組み合わせで、共有結合により環式構造(例えば、単環式、縮合多環式、架橋、スピロ環、環集合等)を形成することができる[当然、共有結合に関与することができない置換基(R1およびR2では、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基およびニトロ基、R3では、水素原子)は除かれる]。その中でもR1とR3またはR2とR3が、共に置換アルキル基であり、前記の共有結合により環式構造であるステロイド骨格を形成し、一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のカルボニル基が、ステロイドD環の17位カルボニル基に対応する化合物が好ましい。具体例として、図1のデヒドロエピアンドロステロンの3位アシル化体が挙げられる。本化合物は、本発明の製造方法により対応するフルオロ硫酸エノールエステル類に変換することができ、トリフルオロメタンスルホン酸エノールエステル類の安価な代替として利用することができる(米国特許5618807号明細書参照)。本フルオロ硫酸エノールエステル類は、新規物質として極めて有用である。
一般式[2]で示されるフルオロ硫酸エノールエステル類のR1、R2およびR3は、一般式[1]と同じであり、R1とR2、R1とR3またはR2とR3は、任意の炭素原子同士で、任意の数および任意の組み合わせで、共有結合により環式構造を形成することができ、波線は、二重結合の立体化学がE体、Z体またはこれらの混合物であることを表す。
塩基は、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドおよびカリウムビス(トリメチルシリル)アミド等の無機塩基、ならびにトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の有機塩基である。その中でも有機塩基が好ましく、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが特に好ましい。これらの塩基は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
塩基の使用量は、一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物1molに対して0.35mol以上を用いれば良く、0.4〜20molが好ましく、0.45〜10molが特に好ましい。
スルフリルフルオリドの使用量は、一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物1molに対して0.7mol以上を用いれば良く、0.8〜10molが好ましく、0.9〜5molが特に好ましい。
反応溶媒は、n−ヘキサンおよびn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレンおよび1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系、テトラヒドロフランおよびtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系、酢酸エチルおよび酢酸n−ブチル等のエステル系、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリルおよびプロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド、ならびに水等である。その中でもn−ヘプタン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよび水が好ましく、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルが特に好ましい。これらの反応溶媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
反応溶媒の使用量は、一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物1molに対して0.01L(リットル)以上を用いれば良く、0.05〜20Lが好ましく、0.1〜10Lが特に好ましい。本反応は、反応溶媒を用いずにニートの状態で行うこともできる。
反応温度は、−80〜+200℃の範囲で行えば良く、−60〜+150℃が好ましく、−40〜+100℃が特に好ましい。
反応時間は、24時間以内の範囲で行えば良く、原料基質、反応剤および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすることが好ましい。
後処理は、有機合成における一般的な操作を採用することにより、一般式[2]で示されるフルオロ硫酸エノールエステル類を得ることができる。粗生成物は、必要に応じて活性炭処理、分別蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により高い純度に精製することができる。得られたフルオロ硫酸エノールエステル類は、遷移金属触媒による各種カップリング反応の求電子剤として利用できる。代表的なカップリング反応としては、熊田・玉尾・コリュー、右田・小杉・スティレ、鈴木・宮浦、根岸、檜山等の人名反応が挙げられる。また、カップリング反応以外に、遷移金属が拓く有機合成;その多彩な反応形式と最新の成果(辻 二郎 著、化学同人、1997年)に記載された、擬ハロゲン化物の反応における代替として利用することもできる。本発明の製造方法では、反応終了液に、副生物としてフッ化物(例えば、アルカリ金属塩、有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体等)が量論的に含まれるが、該フッ化物により所望の反応が活性化される場合がある。この様な場合には、敢えて後処理操作を省略して、ワンポット反応として連続的に反応を行うことにより、好結果が得られることがある。また、反応終了液が2相分離する場合には、フルオロ硫酸エノールエステル類を含む相を分液回収し、直接、所望の反応に供することもできる。
[実施例]
実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物2.10g(25.0mmol、1.00eq)、トルエン12.5mL(0.5L/mol)と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン7.60g(49.9mmol、2.00eq)を加え、−40℃の冷媒浴に浸し、スルフリルフルオリド10.4g(102mmol、4.08eq)をボンベより吹き込み、室温で終夜攪拌した。反応終了液のガスクロマトグラフィーより変換率は88%であった。反応終了液をトルエン20mLで希釈し、水10mLで洗浄し、1N塩酸10mLで洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mLで洗浄し、飽和食塩水10mLで洗浄した。回収有機層のガスクロマトグラフィー純度は85.8%であった(原料基質のシクロペンタノンが12.6%)。回収有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、クーゲルロールで蒸留することにより、下記式:
で示されるフルオロ硫酸エノールエステル類(無色澄明油状物)を2.61g得た。収率は63%であった。ガスクロマトグラフィー純度は97.6%であった(反応溶媒のトルエンが1.4%)。MSにより分子イオンピーク(m/z 166)を確認した(基準ピークはm/z 66)。1Hと19F−NMRを下に示す。
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;2.05(m、2H)、2.44(m、2H)、2.60(m、2H)、5.67(m、1H)。
19F−NMR(基準物質;C6F6、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;199.45(s、1F)。
[参考例1]
ナスフラスコ30mLに、実施例1で得られたフルオロ硫酸エノールエステル類332mg(2.00mmol、1.00eq)、トルエン6.00mL(3L/mol)、塩化リチウム254mg(5.99mmol、3.00eq)、1N炭酸ナトリウム水溶液3.00mL(3.00mmol、1.50eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)116mg(100μmol、0.05eq)とフェニルボロン酸のエタノール溶液[フェニルボロン酸366mg(3.00mmol、1.50eq)とエタノール2.00mL(1L/mol)より調製]を窒素雰囲気下で加え、90℃で1時間攪拌した。反応終了液のガスクロマトグラフィーより、変換率は100%であり、下記式:
ナスフラスコ30mLに、実施例1で得られたフルオロ硫酸エノールエステル類332mg(2.00mmol、1.00eq)、トルエン6.00mL(3L/mol)、塩化リチウム254mg(5.99mmol、3.00eq)、1N炭酸ナトリウム水溶液3.00mL(3.00mmol、1.50eq)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)116mg(100μmol、0.05eq)とフェニルボロン酸のエタノール溶液[フェニルボロン酸366mg(3.00mmol、1.50eq)とエタノール2.00mL(1L/mol)より調製]を窒素雰囲気下で加え、90℃で1時間攪拌した。反応終了液のガスクロマトグラフィーより、変換率は100%であり、下記式:
で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物1.00g(10.2mmol、1.00eq)、トルエン10.0mL(1L/mol)と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン3.08g(20.2mmol、1.98eq)を加え、−40℃の冷媒浴に浸し、スルフリルフルオリド2.63g(25.8mmol、2.53eq)をボンベより吹き込み、室温で終夜攪拌した。反応終了液のガスクロマトグラフィーより変換率は61%であった。反応終了液をトルエン50mLで希釈し、1N塩酸30mLで洗浄し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液30mLで洗浄し、10%食塩水30mLで洗浄した。回収有機層のガスクロマトグラフィー純度は63.6%であった(原料基質のシクロヘキサノンが36.3%)。回収有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、19F−NMR(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、下記式:
で示されるフルオロ硫酸エノールエステル類が1.03g含まれていた。収率は56%であった。クーゲルロール精製品(ガスクロマトグラフィー純度98.1%)の1Hと19F−NMRを下に示す。
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;1.61(m、2H)、1.80(m、2H)、2.19(m、2H)、2.34(m、2H)、5.83(m、1H)。
19F−NMR(基準物質;C6F6、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;200.65(s、1F)。
本発明で対象とするフルオロ硫酸エノールエステル類は、たとえば、医農薬中間体として利用できる。
Claims (4)
- 一般式[1]:
で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物を、塩基の存在下にスルフリルフルオリド(SO2F2)と反応させることにより、一般式[2]:
で示されるフルオロ硫酸エノールエステル類を製造する方法。 - 前記一般式[1]で示されるα位に水素原子を有するカルボニル化合物のR1およびR2がそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 塩基が有機塩基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 有機塩基が1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
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JP2011131749A JP2013001653A (ja) | 2011-06-14 | 2011-06-14 | フルオロ硫酸エノールエステル類の製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106164037A (zh) * | 2014-03-28 | 2016-11-23 | 陶氏环球技术有限责任公司 | 用于将第一芳香族化合物偶联到第二芳香族化合物的方法 |
JP2017039704A (ja) * | 2015-08-18 | 2017-02-23 | ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー | フルオロスルホニル置換ビス(アリール)アセタール化合物 |
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2011
- 2011-06-14 JP JP2011131749A patent/JP2013001653A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN106164037A (zh) * | 2014-03-28 | 2016-11-23 | 陶氏环球技术有限责任公司 | 用于将第一芳香族化合物偶联到第二芳香族化合物的方法 |
JP2017039704A (ja) * | 2015-08-18 | 2017-02-23 | ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー | フルオロスルホニル置換ビス(アリール)アセタール化合物 |
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