JP2018103241A - 異材接合用アーク溶接法、接合補助部材、異材溶接継手、及び、接合補助部材付き板材 - Google Patents

異材接合用アーク溶接法、接合補助部材、異材溶接継手、及び、接合補助部材付き板材 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金と鋼との異材を、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる、異材接合用アーク溶接法、接合補助部材、異材溶接継手、及び、接合補助部材付き板材を提供する。【解決手段】異材溶接継手1は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の上板10と、上板10にアーク溶接された鋼製の下板20とを備え、上板10は下板20との重ね合わせ面に臨む円形の穴を有し、軸部とフランジ部32とを持った段付きの外形形状を有し、軸部がフランジ部側でくびれ部を有する鋼製の接合補助部材30をさらに備える。接合補助部材30は、上板10に設けられた穴に圧入され、接合補助部材30の中空部は、鉄合金、または、Ni合金の溶接金属40で充填されると共に、溶接金属40と、溶融された下板20及び接合補助部材30の一部とによって溶融部が形成される。【選択図】図1A

Description

本発明は、異材接合用アーク溶接法、接合補助部材、異材溶接継手、及び、接合補助部材付き板材に関する。
自動車を代表とする輸送機器には、(a)有限資源である石油燃料消費、(b)燃焼に伴って発生する地球温暖化ガスであるCO、(c)走行コストといった各種の抑制を目的として、走行燃費の向上が常に求められている。その手段としては、電気駆動の利用など動力系技術の改善の他に、車体重量の軽量化も改善策の一つである。軽量化には現在の主要材料となっている鋼を、軽量素材であるアルミニウム合金、マグネシウム合金、炭素繊維などに置換する手段がある。しかし、全てをこれら軽量素材に置換するには、高コスト化や強度不足になる、といった課題があり、解決策として鋼と軽量素材を適材適所に組み合わせた、いわゆるマルチマテリアルと呼ばれる設計手法が注目を浴びている。
鋼と上記軽量素材を組み合わせるには、必然的にこれらを接合する箇所が出てくる。鋼同士やアルミニウム合金同士、マグネシウム合金同士では容易である溶接が、異材では極めて困難であることが知られている。この理由として、鋼とアルミニウムあるいはマグネシウムの溶融混合部には極めて脆い性質である金属間化合物(IMC)が生成し、引張や衝撃といった外部応力で溶融混合部が容易に破壊してしまうことにある。このため、抵抗スポット溶接法やアーク溶接法といった溶接法が異材接合には採用できず、他の接合法を用いるのが一般的である。鋼と炭素繊維の接合も、後者が金属ではないことから溶接を用いることができない。
従来の異材接合技術の例としては、鋼素材と軽量素材の両方に貫通穴を設けてボルトとナットで上下から拘束する手段があげられる。また、他の例としては、かしめ部材を強力な圧力をかけて片側から挿入し、かしめ効果によって拘束する手段が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、他の例としては、アルミ合金素材に鋼製の接合部材をポンチとして押し込むことで穴あけと接合部材を仮拘束し、次に鋼素材と重ね合わせ、上下両方から銅電極にて挟み込んで、圧力と高電流を瞬間的に与えて鋼素材と接合部材を抵抗溶接する手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、他の例としては、摩擦攪拌接合ツールを用いてアルミ合金と鋼の素材同士を直接接合する手段も開発されている。(例えば、特許文献3参照)。
特開2002−174219号公報 特開2009−285678号公報 特許第5044128号公報
しかしながら、ボルトとナットによる接合法は、鋼素材と軽量素材が閉断面構造を構成するような場合(図31A参照)、ナットを入れることができず適用できない。また、適用可能な開断面構造の継手の場合(図31B、図31C参照)でも、ナットを回し入れるのに時間を要し能率が悪いという課題がある。
また、特許文献1に記載の接合法は、比較的容易な方法ではあるが、鋼の強度が高い場合には挿入できない問題があり、且つ、接合強度は摩擦力とかしめ部材の剛性に依存するので、高い接合強度が得られないという問題がある。また、挿入に際しては表・裏両側から治具で押さえ込む必要があるため、閉断面構造には適用できないという課題もある。
さらに、特許文献2に記載の接合法も、閉断面構造には適用できず、また、抵抗溶接法は設備が非常に高価であるという課題がある。
特許文献3に記載の接合法は、アルミ合金素材を低温領域で塑性流動させながら鋼素材面に圧力をかけることで、両素材が溶融し合うことがなく、金属間化合物の生成を防止しながら金属結合力が得られるとされ、鋼と炭素繊維も接合可能という研究成果もある。しかしながら、本接合法も閉断面構造には適用できず、また高い圧力を必要とするので機械的に大型となり、高価であるという問題がある。また、接合力としてもそれほど高くならない。
したがって、既存の異材接合技術は、(i)部材や開先形状が開断面構造に限定される、(ii)接合強度が低い、(iii)設備コストが高価であるといった一つ以上の問題を持っている。このため、種々の素材を組み合わせたマルチマテリアル設計を普及させるためには、(i’)開断面構造と閉断面構造の両方に適用できる、(ii’)接合強度が十分に高く、かつ信頼性も高い、(iii’)低コストであるという全ての要素を兼ね備えた、使いやすい新技術が求められている。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アルミニウム合金(以下「Al合金」とも言う)もしくはマグネシウム合金(以下、「Mg合金」とも言う)と鋼の異材を、既に世に普及している安価なアーク溶接設備を用いて、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる、異材接合用アーク溶接法、接合補助部材、異材溶接継手、及び、接合補助部材付き板材を提供することにある。
ここで、Al合金もしくはMg合金と鋼を溶融接合させようとすると、上述したように金属間化合物(IMC)の生成が避けられない。一方、鋼同士の溶接は最も高い接合強度と信頼性を示すことは、科学的にも実績的にも自明である。
そこで、本発明者らは、鋼同士の溶接を結合力として用い、さらに拘束力を利用して異材の接合を達成する手段を考案した。
従って、本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用アーク溶接法であって、
前記第1の板に円形の穴を空ける工程と、
軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する鋼製の接合補助部材を、前記フランジ部の露出面が前記第1の板の表面と略面一又は内側に位置するように、前記第1の板の穴に圧入する工程と、
前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
以下の(a)〜(e)のいずれかの手法によって、前記接合補助部材の中空部を溶接金属で充填すると共に、前記第2の板及び前記接合補助部材を溶接する工程と、
を備える異材接合用アーク溶接法。
(a)鉄合金、または、Ni合金の前記溶接金属が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
(b)前記溶接ワイヤを溶極として用いるノンガスアーク溶接法。
(c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
(d)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。
(e)鉄合金、または、Ni合金の前記溶接金属が得られる被覆アーク溶接棒を溶極として用いる被覆アーク溶接法。
(2) 前記接合補助部材の厚さが前記第1の板の板厚以下である、(1)に記載の異材接合用アーク溶接法。
(3) 前記第2の板には、絞り加工により膨出部が形成されており、
前記重ね合わせ工程において、前記第2の板の膨出部が、前記第1の板の穴内に配置される、(1)又は(2)に記載の異材接合用アーク溶接法。
(4) 前記重ね合わせ工程の前に、前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って接着剤を塗布する工程を、さらに備える、(1)〜(3)のいずれかに記載の異材接合用アーク溶接法。
(5) 前記圧入工程後に、前記第1の板は、プレス成形される、(1)〜(4)のいずれかに記載の異材接合用アーク溶接法。
(6) 前記接合補助部材のフランジ部の厚さPH2は、前記第1の板の板厚Bの20%以上80%以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載の異材接合用アーク溶接法。
(7) 前記接合補助部材のフランジ部の幅PD2は、前記第1の板の穴の直径Bに対し110%以上200%以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の異材接合用アーク溶接法。
(8) 前記充填溶接工程において、前記フランジ部の露出面からの前記溶接金属の未充填高さPH3が、前記第1の板の板厚Bの30%以下である、(1)〜(7)のいずれかに記載の異材接合用アーク溶接法。
(9) (1)〜(8)のいずれかに記載の異材接合用アーク溶接法に用いられ、
鋼製で、軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する、接合補助部材。
(10) アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、該第1の板にアーク溶接された、鋼製の第2の板と、を備える異材溶接継手であって、
前記第1の板は、前記第2の板との重ね合わせ面に臨む円形の穴を有し、
軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する鋼製の接合補助部材をさらに備え、
前記接合補助部材は、前記フランジ部の露出面が前記第1の板の表面と略面一又は内側に位置するように、前記第1の板の穴内に固定されており、
前記接合補助部材の中空部は、鉄合金、または、Ni合金の溶接金属で充填されると共に、前記溶接金属と、溶融された前記第2の板及び前記接合補助部材の一部とによって溶融部が形成される、異材溶接継手。
(11) 前記接合補助部材の厚さが前記第1の板の板厚以下である、(10)に記載の異材溶接継手。
(12) 前記第1の板の穴内には、前記第2の板に形成された膨出部が配置される、(10)又は(11)に記載の異材溶接継手。
(13) 前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の前記重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って設けられた接着剤を備える、(10)〜(12)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(14) 前記接合補助部材のフランジ部の厚さPH2は、前記第1の板の板厚Bの20%以上80%以下である、(10)〜(13)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(15) 前記接合補助部材のフランジ部の幅PD2は、前記第1の板の穴の直径Bに対し110%以上200%以下である、(10)〜(14)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(16) 前記フランジ部の露出面からの前記溶接金属の未充填高さPH3が、前記第1の板の板厚Bの30%以下である、(10)〜(15)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(17) 前記接合補助部材は、前記第1の板の穴に圧入して固定されている、(10)〜(16)のいずれかに記載の異材接合継手。
(18) 鋼製の板材とアーク溶接することで異材溶接継手を形成可能な接合補助部材付き板材であって、
円形の穴を有するアルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の板材と、
軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する鋼製の接合補助部材と、
を備え、
前記接合補助部材は、前記フランジ部の露出面が前記第1の板の表面と略面一又は内側に位置するように、前記板材の穴内に固定されている、接合補助部材付き板材。
(19) 前記接合補助部材の厚さが前記板材の板厚以下である、(18)に記載の接合補助部材付き板材。
(20) 前記接合補助部材は、前記板材の穴に圧入して固定されている、(18)又は(19)に記載の接合補助部材付き板材。
本発明によれば、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金と、鋼との異材を、安価なアーク溶接設備を用いて、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
本発明の一実施形態に係る異材溶接継手の斜視図である。 図1AのI−I線に沿った異材溶接継手の断面図である。 本実施形態の接合補助部材の側面図である。 本実施形態の接合補助部材の正面図である。 接合補助部材の第1変形例の側面図である。 接合補助部材の第2変形例の側面図である。 第1変形例の接合補助部材を用いた異材溶接継手の図1Bに対応する断面図である。 接合補助部材の第3変形例の正面図である。 接合補助部材の第4変形例の正面図である。 接合補助部材の第5変形例の正面図である。 接合補助部材の第6変形例の正面図である。 接合補助部材の第7変形例の正面図である。 接合補助部材の第8変形例の正面図である。 本実施形態の異材溶接継手の断面図である。 図6AのVI−VI線に沿った断面図である。 本実施形態の異材接合用アーク溶接法の穴開け作業を示す図である。 本実施形態の異材接合用アーク溶接法の圧入作業を示す図である。 本実施形態の異材接合用アーク溶接法の重ね合わせ作業を示す図である。 本実施形態の異材接合用アーク溶接法の溶接作業を示す図である。 圧入作業の過程を説明するための断面図である。 圧入作業の過程において、フランジ部の露出面が上板の表面よりも内側に位置するまで圧入される場合を説明するための断面図である。 接合補助部材の第9変形例を示す側面図である。 溶接金属の溶込みを説明するための異材溶接継手の断面図である。 溶接金属の溶込みを説明するための異材溶接継手の断面図である。 アルミ製の上板と鋼製の下板を重ねて貫通溶接した比較例としての異材溶接継手の斜視図である。 図12Aの異材溶接継手の断面図である。 図12Aの異材溶接継手にせん断引張が作用した状態を示す断面図である。 図13Aの異材溶接継手を示す斜視図である。 図12Aの異材溶接継手に上下剥離引張が作用した状態を示す断面図である。 図14Aの異材溶接継手を示す斜視図である。 穴を有するアルミ製の上板と鋼製の下板を重ねて貫通溶接した比較例としての異材溶接継手の斜視図である。 図15Aの異材溶接継手の断面図である。 図15Aの異材溶接継手にせん断引張が作用した状態を示す断面図である。 図15Aの異材溶接継手にせん断引張が作用し、接合部が90°近くずれた状態を示す斜視図である。 図15Aの異材溶接継手に上下剥離引張が作用した状態を示す断面図である。 図17Aの異材溶接継手を示す斜視図である。 本実施形態の異材溶接継手の断面図である。 図18Aの異材溶接継手に上下剥離引張が作用した状態を示す斜視図である。 本実施形態の異材溶接継手にせん断引張が作用した状態を示す断面図である。 金属間化合物が生成された本実施形態の異材溶接継手にせん断引張が作用した状態を示す断面図である。 上向き姿勢でアーク溶接が施されている状態を示す図である。 接合補助部材の寸法関係を説明するための上板、下板、及び接合補助部材の断面図である。 溶接金属の未充填高さを説明するための異材溶接継手の断面図である。 中空部が充填された異材溶接継手に板厚方向(3次元方向)の外部応力が作用した状態を示す断面図である。 未充填高さが高い場合の異材溶接継手を示す断面図である。 図24Aの異材溶接継手に板厚方向(3次元方向)の外部応力が作用した状態を示す断面図である。 異材接合用アーク溶接法の第1変形例を説明するための上板と下板の斜視図である。 異材接合用アーク溶接法の第1変形例を説明するための上板と下板の断面図である。 異材接合用アーク溶接法の第2変形例を説明するための上板と下板の斜視図である。 異材接合用アーク溶接法の第2変形例を説明するための上板と下板の断面図である。 接合補助部材の第10変形例を示す側面図である。 接合補助部材の第11変形例を示す側面図である。 異材接合用アーク溶接法の第3変形例を説明するための断面図である。 図29の下板に膨出部を絞り加工する前の状態を示す図である。 図29の下板に膨出部が絞り加工された後の状態を示す図である。 本実施形態の異材溶接継手が適用された閉断面構造を示す斜視図である。 本実施形態の異材溶接継手が適用された、L字板と平板による開断面構造を示す斜視図である。 本実施形態の異材溶接継手が適用された、2枚の平板による開断面構造を示す斜視図である。 異材接合用アーク溶接法の第4変形例を示す図である。 異材接合用アーク溶接法の第5変形例を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る異材接合用アーク溶接法、接合補助部材、異材溶接継手、及び、接合補助部材付き板材を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の異材接合用アーク溶接法は、互いに重ね合わせされる、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の上板10(第1の板)と、鋼製の下板20(第2の板)とを、鋼製の接合補助部材30を介して、後述するアーク溶接法によって接合することで、図1A及び図1Bに示すような異材溶接継手1を得るものである。
上板10には、板厚方向に貫通して、下板20の重ね合わせ面に臨む円形の穴11が設けられており(図7A参照)、この穴11に接合補助部材30全体が圧力をかけて挿入される。
図2A及び図2Bに示すように、接合補助部材30は、軸部31と、該軸部31に対して外向きのフランジ部32と、を持った段付きの外形形状を有する。接合補助部材30には、軸部31及びフランジ部32を貫通する円形の中空部33が形成されている。
また、接合補助部材30は、後述するように、軸部31の最大外径PD1、フランジ部32の幅PD2、及び上板10の穴11の直径Bの関係が、PD2>PD1>Bを満たすと共に、全体の厚さPが上板10の板厚B以下に設計される(図23A参照)。
さらに、本実施形態では、軸部31の外形形状は、フランジ部側でくびれ部39を有する構成としている。具体的に、軸部31は、外周面が先端からフランジ部12側に向かって徐々に拡径し、最大外径PD1を規定するテーパ部35と、該テーパ部35の最大外径PD1よりも小径の小径円筒部36と、を有する。したがって、小径円筒部36によって、軸部31の外形形状は、フランジ部側でくびれ部39を有する。
軸部31の外形形状は、フランジ部側でくびれ部39を有することで、上板10にかしめ拘束力を持って接合補助部材30を固定するものであれば、特に限定されない。例えば、図3Aに示すように、軸部31は、外周面が先端からフランジ部32まで徐々に縮径する縮径テーパ部37としてもよい。また、図3Bに示すように、軸部31は、先端側に設けられた大径円筒部38と、フランジ部側に設けられた小径円筒部36と、で構成してもよい。
なお、くびれ部39における機能は、図2、図3A、図3Bの接合補助部材30のいずれであっても実質的に変わらないため、任意の接合補助部材30を用いて以降の説明を行っている。また、図4は、図3Aの接合補助部材30を用いた場合の異材溶接継手1の図1Bに対応する断面図である。
接合補助部材30のフランジ部32の外形形状は、図2Bに示すような六角形に限定されず、溶接後に上板10に空けられた穴11を塞いでいれば、任意の形状とすることができる。つまり、図5Aに示す円形や、図5Bに示す楕円形、図2B、図5C〜図5Fに示す四角形以上の多角形でもよい。また、図5Dに示すように、多角形の角部を丸くしてもよい。
また、本実施形態では、フランジ部32は上板10内に圧入されて用いられる。このため、上板10と下板20とが1個のみの接合補助部材30で接合される場合、真円形のフランジ部32では、上板10に強い水平方向の回転力Fが加わると、接合補助部材30を中心に回るように上板10が回転してしまう可能性がある。このため、フランジ部32の外径形状を、楕円形や多角形とすることで、図6Bに示すように、回転力Fが加わっても、上板10が下板20に対して相対的に回転するのを防止することができる。
なお、これらの接合補助部材30では、後述するフランジ部32の幅PD2は、最も短い対向面間距離で規定される。
このように、接合補助部材30全体が上板10に圧入されることで、軸部31及び中空部33は上板10の穴11と同軸上に位置している。
また、接合補助部材30の中空部33には、アーク溶接によってフィラー材(溶接材料)が溶融した、鉄合金、または、Ni合金の溶接金属40が充填されると共に、溶接金属40と、溶融された下板20及び接合補助部材30の一部とによって溶融部Wが形成される。したがって、溶融部Wは、上板10の穴11内にも配置されて、接合補助部材30と下板20とを溶接しており、これによって、上板10と下板20とが接合される。
以下、異材溶接継手1を構成する異材接合用アーク溶接法について、図7A〜図7Dを参照して説明する。
まず、図7Aに示すように、上板10に穴11を空ける穴開け作業を行う(ステップS1)。次に、図7Bに示すように、接合補助部材30全体を、上板10の上面から、上板10の穴11に圧入する(ステップS2)。さらに、図7Cに示すように、上板10と下板20を重ね合わせる重ね合わせ作業を行う(ステップS3)。そして、図7Dに示すように、以下に詳述する(a)溶極式ガスシールドアーク溶接法、(b)ノンガスアーク溶接法、(c)ガスタングステンアーク溶接法、(d)プラズマアーク溶接法、(e)被覆アーク溶接法のいずれかのアーク溶接作業を行うことで、上板10と下板20とを接合する(ステップS4)。なお、図7Dは、(a)溶極式ガスシールドアーク溶接法を用いてアーク溶接作業が行われた場合を示している。
ステップS1の穴開け作業の具体的な手法としては、a)ポンチを用いた打抜き、b)金型を用いたプレス型抜き、c)レーザ、プラズマ、ウォータージェット法などによる切断があげられる。
ステップS2の圧入作業では、図8に示すように、フランジ部32の露出面32aが上板10の上面(第1の板の表面)10aと略面一な同一面となるまで、接合補助部材30が、上板10の上面10aから穴11に圧入される。フランジ部32が上板10の上面10aより張り出していると美観が悪いだけでなく、上板10の上に他の部材が組み合わさる場合、接合補助部材30の張り出しが邪魔になる虞があるからである。また、上板10の上面10aが溶接後も平坦性を維持することは設計自由度の面で価値がある。
ただし、接合補助部材30の押し込み深さについては、図9に示すように、上板10の上面10aより陥没していても、継手強度にはさほど悪影響を与えないことから、許容される。
一方、接合補助部材30の下面は上板10の下面(=下板20との合わせ面)から飛び出さないようにする必要がある。飛び出すと、接合補助部材30を圧入した上板10と下板20間にギャップが出来て、組立て精度が悪くなるからである。
ただし、最初から上板10と下板20間にギャップがあることが判っている、特殊なケースでは、そのギャップに応じて上板10の下面からの接合補助部材30の出っ張りが許容される。
以上の理由から、接合補助部材30の厚さPは、上板10の板厚B以下に設計される。
なお、圧入作業については、その手段を問わないが、ハンマー等で叩いたり、油圧、水圧、空気圧、ガス圧、電気駆動などの動力を用いるプレス機を用いるといった実用的手段が挙げられる。
また、回し入れる事も可能で、そのような手段を用いる場合は、軸部31の先端にネジ状の規則的な起伏を設けて回し入れやすくすることができる。例えば、図10に示すように、軸部31のテーパ部35には、螺旋状の溝35aが形成されてもよい。
また、ステップS4のアーク溶接作業は、上板10の穴11内の溶接金属40を介して接合補助部材30と下板20を接合し、かつ接合補助部材30に設けられた中空部33を充填するために必要とされる。したがって、アーク溶接には充填材となるフィラー材(溶接材料)の挿入が不可欠となる。具体的に、以下の4つのアーク溶接法により、フィラー材が溶融して溶接金属40が形成される。
(a) 溶極式ガスシールドアーク溶接法は、一般的にMAG(マグ)やMIG(ミグ)と呼ばれる溶接法であり、ソリッドワイヤもしくはフラックス入りワイヤをフィラー兼アーク発生溶極として用い、CO,Ar,He,Oといったシールドガスで溶接部を大気から遮断して健全な溶接部を形成する手法である。
(b)ノンガスアーク溶接法は、セルフシールドアーク溶接法とも呼ばれ、特殊なフラックス入りワイヤをフィラー兼アーク発生溶極として用い、一方、シールドガスを不要として、健全な溶接部を形成する手段である。
(c)ガスタングステンアーク溶接法は、ガスシールドアーク溶接法の一種であるが非溶極式であり、一般的にTIG(ティグ)とも呼ばれる。シールドガスは、ArまたはHeの不活性ガスが用いられる。タングステン電極と母材との間にはアークが発生し、フィラーワイヤはアークに横から送給される。
一般的に、フィラーワイヤは通電されないが、通電させて溶融速度を高めるホットワイヤ方式TIGもある。この場合、フィラーワイヤにはアークは発生しない。
(d)プラズマアーク溶接法はTIGと原理は同じであるが、ガスの2重系統化と高速化によってアークを緊縮させ、アーク力を高めた溶接法である。
(e)被覆アーク溶接法は、金属の芯線にフラックスを塗布した被覆アーク溶接棒をフィラーとして用いるアーク溶接法であり、シールドガスは不要である。
フィラー材(溶接材料)の材質については、溶接金属40がFe合金となるものであれば、一般的に用いられる溶接用ワイヤまたは溶接棒が適用可能である。なお、Ni合金でも鉄との溶接には不具合を生じないので適用可能である。
具体的には、JISとして(a)Z3312,Z3313,Z3317,Z3318,Z3321,Z3323,Z3334、(b)Z3313、(c)Z3316,Z3321,Z3334,(d)Z3211,Z3221,Z3223,Z3224、AWS(American Welding Society)として、(a)A5.9,A5.14,A5.18,A5.20,A5.22,A5.28,A5.29,A5.34、(b)A5.20、(c)A5.9,A5.14,A5.18,A5.28,(d)A5.1,A5.4,A5.5,A5.11といった規格材が流通している。
これらのアーク溶接法を用いて接合補助部材30の中空部33をフィラー材で充填するが、一般的にフィラーワイヤもしくは溶接棒の狙い位置は移動させる必要がなく、適切な送給時間を経てアークを切って溶接終了させれば良い。ただし、中空部33の面積が大きい場合は、フィラーワイヤもしくは溶接棒の狙い位置を中空部33内で円を描くように移動させても良い。
溶接金属40の溶込みについては、図11Aに示すように、下板20を適度に溶融していることが必要である。なお、図11Bに示すように、下板20の板厚を超えて溶接金属40が形成される、いわゆる裏波が出る状態にまで溶けても問題はない。
ただし、下板20が溶けずに、溶接金属40が乗っかっているだけであると、金属結合が不完全であるので、継手として高い強度は得られない。また、溶接金属40が深く溶け込みすぎて、溶接金属40と下板20が溶け落ちてしまわないように溶接する必要がある。
以上の作業によって、Al合金やMg合金製の上板10と鋼製の下板20は高い強度で接合される。
以下、上記アーク溶接法において使用される鋼製の接合補助部材30の役割について説明する。
まず、接合補助部材を使用せず、図12A及び図12Bに示すように、単純にアルミ製の上板10と鋼製の下板20とを重ね、上板側から鋼もしくはニッケル合金製溶接ワイヤを用いたアーク溶接を定点で一定時間保持したアークスポット溶接を行った場合、形成される溶接金属40aはアルミと鋼、もしくはアルミと鋼とニッケルの合金となる。この合金は、アルミ含有量が多いので脆性的特性である金属間化合物(IMC)を呈している。このような異材溶接継手100aは、一見接合されている様に見えても、横方向に引張応力がかかる(せん断引張)と、図13A及び図13Bに示すように、溶接金属40aが容易に破壊して、外れてしまう。また、縦方向に引張応力がかかる(剥離引張)場合でも、図14A及び図14Bに示すように、溶接金属40aが破断するか、もしくは溶接金属40aと上板10の境界部あるいは溶接金属40aと下板20の境界部が破断し、上板10が抜けるようにして接合が外れてしまう。
このように単にアルミ製の上板10と鋼製の下板20を重ねて、貫通溶接しようとしても、溶接金属40aは全部分が金属間化合物になってしまうので、せん断引張にも剥離引張にも弱く、溶接継手としては実用にならない。
また、図15A及び図15Bに示すように、上板10に適当なサイズの穴11を開けておき、その穴11を埋めるように鋼もしくはニッケル合金の溶接材料を溶かし込む手法が考えられる。
この場合、溶接初期に形成される下板20となっている鋼と溶接材料で形成される溶接金属40bはアルミを溶かしていないので、金属間化合物は生成せず、高い強度と靱性を有しており、下板20と強固に結合されている。また、上板10に開けられた穴11の内部に形成された溶接金属40bは、アルミが溶融する割合が非常に少なく、金属間化合物の生成は大幅に抑制され、特に中心部は健全性を有している。ただし、上板10に設けられた穴11の近傍に限れば、アルミと鋼、あるいはアルミとニッケルの金属化合物層を形成する。このような異材溶接継手100bに対し、図16Aに示すように、せん断引張応力がかかった場合、下板側は強固に金属結合しているため、高い応力に耐える。一方、上板側は金属間化合物が穴周囲に形成されてはいるが、それが剥離して動くことは形状的にできないため、初期には上板10、下板20の母材が変形する。このため、ほぼ変形せずに脆性破断する図11A及び図11Bの異材溶接継手100aと比較すると、変形能力の向上が見られる。しかし、母材の変形が進み、図16Bに示すように、接合部が90°近く傾斜すると上下剥離引張と同じ状態になる。このようになると穴11の周囲部に形成された金属間化合物が剥離し、上板10が溶接部から容易に抜けてしまう。つまり、改善が不十分である。この結果は、図17A及び図17Bに示すように、上下引張方向試験でも無論同じである。
上記2つの異材溶接継手100a、100bにおける課題から、せん断方向の引張応力及び上下剥離方向の応力にも耐えるように本実施形態の2段階形状の接合補助部材30が使用される。つまり、図7A〜図7Dに示すように、上板10に穴開けを施し、さらに中空部33を有する接合補助部材30を上板10に設けられた穴11に圧入して固定した後、接合すべき下板20と重ね、上板10および接合補助部材30の内部を充填するようにアーク溶接にて溶接金属40を形成する。このようにすると、断面としては接合補助部材30、溶接金属40、下板20が強固な金属結合によって溶接接合されている状態になる。上板10に設けられた穴11よりも幅広である接合補助部材30のフランジ部32の最大の役割は、上下剥離応力に対する抵抗である。図18aに示すように、適切なサイズの接合補助部材30を適用することにより、上板10と溶接金属40の界面が剥離して抜けてしまう現象を防止することが可能となる。一般的に、溶接金属40は、十分に塑性変形した後、破断する。なお、接合補助部材30は、せん断方向の引張応力に対しても、初期応力に対して悪影響を及ぼすことはなく、さらに母材変形による溶接部が90°傾斜(図18B参照)後の剥離応力変化に対して、上板10と溶接金属40の界面が剥離して抜けてしまう現象を防止する。
また、接合補助部材30のフランジ部32は、面積が大きく、かつ厚さPH2が大きいほど板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して強度を増すため、望ましい。だが、面積や厚さが過剰に大きいと、圧入に必要な圧力が高くなり、強力なプレス装置が必要になるだけでなく、上板に対して過度な歪みを発生させる結果、上板10あるいは接合補助部材30に亀裂が入ったり、変形してしまう。したがって、上板10の材質、板厚、穴径を考慮して適切なサイズにする。
さらに、接合補助部材30は、Al合金やMg合金の溶融を避けるための防護壁作用を有する。Al合金やMg合金の接合部で最も溶融しやすい箇所は、穴11の内面や、該内面の周囲の表面である。これらの面を接合補助部材30で覆うことで(図19Aの領域X参照)、アーク溶接の熱が直接Al合金やMg合金に伝わるのを防ぎ、鋼と混合して金属間化合物(IMC)を作るのを防止する。アーク溶接の溶込み範囲が接合補助部材30と下板20のみとなれば、AlやMgの溶接金属40への希釈はゼロとなり、IMCは完全に防止される。
ただし、本実施形態ではIMCの発生がゼロである必要はなく、IMCの多少の形成は許容される。図19Bに示すように、穴11の内面にIMCが形成されても、溶接金属40が延性と適度な強度を有していれば、溶接金属40が板幅方向(2次元方向)への外部応力への抵抗作用として働くので、溶接金属40の周囲に形成されるIMC層の影響は小さいからである。また、IMCは脆性的であるが、構造体として引張応力が作用しても、接合部には圧縮応力と引張応力が同時に働く仕組みになっており、圧縮力に対してIMCは十分な強さを維持することから、IMC層の形成は破壊伝播にはならない。したがって、接合補助部材30は必ずしも、上板10の板厚と同じである必要はない。
以上述べたとおり、接合補助部材30には、(1)溶接時に上板10の素材であるアルミ合金やマグネシウム合金の溶融によるIMC生成を防止し、(2)溶接後に上板10と下板20を強固に結合させる役割を有する。しかし、溶接工程前に上板10にセットする際、単に圧入するだけでは、容易に上板10から抜けてしまい、溶接工程に支障を来す場合がある。例えば、上板10に接合補助部材30をセットした後、離れた場所に搬送させて溶接する場合や、溶接する姿勢が横向や上向(図20参照)などの場合が典型的に該当する。これらのケースでは不可避的に抜けてしまうことがあり、その場合、溶接できない。このような事態を防ぐために、溶接するまで接合補助部材30を上板10に一時的に仮固定しておく必要がある。その策として、上板10の素材である金属の弾塑性変形を利用した”かしめ”の機能を接合補助部材30に付与する。
具体的には、接合補助部材30のフランジ部32だけでなく、軸部31の最大外径PD1も上板10に設けた穴11の直径Bよりも大径とし、かつ軸部31のフランジ部32との境界部分に径が小さなくびれ部39を設けることで達成される。
接合補助部材30の軸部31の最大外径PD1を上板10の穴11の直径Bよりも若干大きく設計し、圧力をかけて挿入することで、上板10の素材は弾塑性変形して押し広がる。この後、径が小さなくびれ部39が挿入されると、押し広げる圧力が下がるため、弾性変形分は金属流入して、形状的なかしめ効果が得られる。このように素材自身の弾性力を利用して接合補助部材30が容易には外れないようすることができる。
また、軸部31の軸方向断面は、圧入しやすいように、上板10の穴11と相似である円形断面とするのが望ましい。
また、フランジ部32の幅PD2は、上板10の板厚方向への剥離応力に対してフランジ部32が抵抗作用を発揮するため、軸部31の最大外径PD1よりも相対的に大きくする必要がある。
以上の理由から、接合補助部材30は、鋼製で、軸部31とフランジ部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、軸部31及びフランジ部32を貫通する中空部33が形成され、軸部31の最大外径PD1、フランジ部32の幅PD2、及び上板10の穴11の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、軸部31がフランジ部側でくびれ部39を有し、厚さPが上板10の板厚B以下であるものが使用される。
なお、鋼製の接合補助部材30の材質は、純鉄および鉄合金であれば、特に制限されるものでなく、例えば、軟鋼、炭素鋼、ステンレス鋼などがあげられる。
また、図21は、接合補助部材30の各種寸法を示している。即ち、本実施形態では、軸部31の最大外径PD1、フランジ部32の幅PD2、及び上板10の穴11の直径Bの関係をPD2>PD1>Bとし、接合補助部材30の厚さPを上板10の板厚B以下とするこれらの規定の他に、以下のように接合補助部材30の寸法が規定される。
・フランジ部の幅PD2
フランジ部32の幅PD2は、上板10の穴11の直径Bに対し110%以上200%以下に設計される。上述の通り、フランジ部32は面積が大きく、かつ高さPH2が大きいほど板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して強度を増すため、望ましい。フランジ部32の幅PD2が上板10の穴11の直径Bに対し110%未満では、フランジ部32が板厚方向への外部応力に対して弾塑性変形した場合に、上板10の穴11の大きさ以下の見かけ直径に容易になりやすく、さすれば上板10が抜けてしまいやすくなる。つまり、フランジ部32が高い抵抗力を示さない。したがって、フランジ部32の幅PD2は、上板10の穴11の直径Bの110%を下限とする。より好ましくは、120%を下限とするとよい。一方、フランジ部32は軸部31よりも断面積が大きいため、圧入により大きな力を必要し、上板10に大きな歪みを与えるので、広い面積を圧入すると上板10に亀裂が入るなど壊してしまう場合がある。したがって、フランジ部32の直径PD2は200%以下にすることが望ましい。
・フランジ部の高さPH2
フランジ部32の高さPH2は、上板10の板厚Bの20%以上80%以下に設計される。接合補助部材30のフランジ部32は、板厚方向への外部応力、言い換えれば引き剥がす応力が働いた際への抵抗力としての主体的役割を担う。部材構成の中では、軸部31とくびれ部39も上板10に対するかしめ効果である程度、剥離応力に対する抵抗力を持つが、相対的にはフランジ部32の役割が大きい。フランジ部32は面積が大きく、かつ高さPH2が大きいほど板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して強度を増すため、望ましい。厚さPH2が上板10の板厚Bの20%未満では、接合補助部材30のフランジ部32が板厚方向への外部応力に対して容易に弾塑性変形を生じ、上板10が接合補助部材30から抜けてしまいやすくなる。つまり高い抵抗力を示さない。したがって、フランジ部32の高さPH2は、上板10の板厚Bの20%を下限とするのが望ましい。一方、フランジ部32の高さPH2は、上板10の板厚Bの80%を超えて大きくすると、上板10と接合補助部材30を一時的にかしめる作用のあるくびれ部39と軸部31の高さが合計で20%未満となり、かしめ力が弱くなる。また、フランジ部32は軸部31よりも断面積が大きいため、圧入により大きな力を必要し、上板10に大きな歪みを与えるので、深く圧入すると上板10に亀裂が入るなど壊してしまう場合がある。したがって、フランジ部32の高さPH2は、上板10の板厚Bの80%以下にすることが望ましい。
また、図22に示すように、フランジ部32の露出面32aからの溶接金属40の未充填高さPH3は、上板10の厚さBの30%以下に設定される。溶接金属40は接合補助部材30の中空部33を充填し、その表面位置が接合補助部材30の表面と同じ高さになるのが望ましい。これにより、図23に示すように、板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して、接合補助部材30の変形が抑えられ、高い強度が得られる。一方、図24Aに示すように、未充填高さPH3が過度に大きいと、接合補助部材30と溶接金属40の結合面積が小さくなるので、接合強度が低くなる。上板10の厚さBの70%未満しか充填されていないと、継手接合強度の低下が顕著であり、図24Bに示すように、接合補助部材30が変形して、上板10が抜けやすくなる。このため、未充填高さを上板10の厚さBの30%を下限とする。
一方、理想的には、上述の通り、溶接金属40は、上板10の表面と同じ高さに充填されるのがよい。ただし、接合後の異材溶接継手1がさらに大きな構造体に組み上げられる際、接合部の上部空間に余裕がある場合には、接合補助部材30の中空部33全面を溶接金属40で充填し、さらに余盛りが形成されても良い。
なお、上板10及び下板20の板厚については、限定される必要は必ずしもないが、施工能率と、重ね溶接としての形状を考慮すると、上板10の板厚は、4.0mm以下であることが望ましい。一方、アーク溶接の入熱を考慮すると、板厚が過度に薄いと溶接時に溶け落ちてしまい、溶接が困難であることから、上板10、下板20共に0.5mm以上とすることが望ましい。
以上の構成により、上板10がアルミニウム合金もしくはマグネシウム合金、下板20が鋼の素材を強固に接合することができる。
ここで、異種金属同士を直接接合する場合の課題としては、IMCの形成という課題以外に、もう一つの課題が知られている。それは、異種金属同士が接すると、ガルバニ電池を形成する為に腐食を加速する原因になる。この原因(電池の陽極反応)による腐食は電食と呼ばれている。異種金属同士が接する面に水があると腐食が進むので、接合箇所として水が入りやすい場所に本実施形態が適用される場合は、電食防止を目的として、水の浸入を防ぐためのシーリング処理を施す必要がある。本接合法でもAl合金やMg合金と鋼が接する面は複数形成されるので、樹脂系の接着剤をさらなる継手強度向上の目的のみならず、シーリング材として用いることが好ましい。
例えば、図25A及び図25Bに示す第1変形例のように、上板10及び下板20の接合面で、溶接部周囲に接着剤60を全周に亘って環状に塗布してもよい。なお、接着剤60を上板10及び下板20の接合面で、溶接部周囲に全周に亘って塗布する方法としては、図26A及び図26Bに示す第2変形例のように、溶接箇所を除いた接合面の全面に塗布する場合も含まれる、これにより、上板10、下板20、及び溶接金属40の電食速度を下げることができる。
また、図27に示すように、接合補助部材30の辺に当たる箇所には、使用時の安全性や鍛造時の制限などの点から、丸みを持たせることには何ら問題がない。特に、中空部33の上面端面はすり鉢状に広げておくと、溶接金属40と接合補助部材30の馴染み性が向上し、外観が向上する効果もある。
なお、接合補助部材30に空けられる中空部33の面は平坦な円筒面でかまわないが、図28に示すように、ネジ溝33aを形成していてもかまわない。本工法では雄ネジは用いないが、ネジ溝33aがあることで、アーク溶接時に溶融池との接触表面積が増え、より強固に溶接金属40と接合補助部材30が結合される。ネジ溝33aなど平坦面でない場合の穴11の直径Pは、最も広い対面間距離と定義する。
さらに、図29に示す変形例のように、下板20に膨出部21を設けてもよい。
Al合金やMg合金製の上板10の板厚が比較的薄い場合には、下板20は無加工とし、上板10は穴開けして、接合時に接合補助部材30を穴11に挿入するだけで良好な溶接が可能となる。しかし、上板10の板厚が大きいと、溶接工程で、接合補助部材30の中空部33を充填するのに時間がかかり、能率が悪くなる。また、熱量が過大となって、充填完了するより先に下板20の鋼板が溶け落ちしてしまいやすくなる。このため、下板20について絞り加工で膨出部21を設ければ、穴11の体積が小さくなるので溶け落ち欠陥を防ぎながら、充填することができる。
また、この変形例では、下板20の膨出部21は、上板10と下板20とを位置合わせをするための目印となり、下板20の膨出部21と上板10の穴11を容易に合わせることができ、重ね合わせ作業の効率向上につながる。
なお、膨出部21の絞り加工は、図30Aに示すように、下板20の膨出部21が形成される部分の周辺部をダイ50で拘束する。そして、図30Bに示すように、膨出部21が形成される部分に圧力をかけてポンチ51を押し込むことで、膨出部21が成形される。
また、本実施形態の溶接法は、接合面積が小さい点溶接と言えるので、ある程度の接合面積を有する実用部材同士の重ね合わせ部分Jを接合する場合は、本溶接法を図31A〜図31Cに示すように、複数実施すればよい。これにより、重ね合わせ部分Jにおいて強固な接合が行われる。本実施形態は、図31B及び図31Cに示すような開断面構造にも使用できるが、特に、図31Aに示すような閉断面構造において好適に使用することができる。
また、図32及び図33に示すように、本接合法では、上板10内に埋め込まれた接合補助部材30は上板10の表裏面から突き出ないことから、溶接工程の前工程として、金型70等を用いて、接合補助部材30が埋め込まれた上板10(接合補助部材付き上板10)のAlやMg母材をプレス成形することが容易である。また、その後工程として、プレス成形された接合補助部材付き上板10と、下板20とが重ね合わされて、溶接される。本溶接法は、無論、開断面構造、閉断面構造を分け隔てることなく、いずれも製造可能である。
このような接合補助部材付き上板10は、プレス成形工程前は、いずれも略平坦に形成されることから、取り扱い性がよい。
以上説明したように、本実施形態の異材接合用アーク溶接法によれば、上板10に円形の穴11を空ける工程と、軸部31とフランジ部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、軸部31及びフランジ部32を貫通する中空部33が形成され、軸部31の最大外径PD1、フランジ部32の幅PD2、及び上板10の穴11の直径Bの関係が、PD2>PD1>Bであり、軸部31がフランジ部側でくびれ部39を有する鋼製の接合補助部材30を、フランジ部32の露出面が上板10の表面と略面一又は内側に位置するように、上板10に設けられた穴11に圧入する工程と、上板10と下板20を重ね合わせる工程と、以下の(a)〜(e)のいずれかの手法によって、接合補助部材30の中空部33を溶接金属40で充填すると共に、下板20及び接合補助部材30を溶接する工程と、を備える。
(a)鉄合金、または、Ni合金の溶接金属40が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
(b)前記溶接ワイヤを溶極として用いるノンガスアーク溶接法。
(c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
(d)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。
(e)鉄合金、または、Ni合金の溶接金属40が得られる被覆アーク溶接棒を溶極として用いる被覆アーク溶接法。
これにより、Al合金もしくはMg合金の上板10と鋼の下板20を、安価なアーク溶接設備を用いて、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
また、接合補助部材30の厚さPが上板10の板厚B以下であるので、接合補助部材30のフランジ部32の露出面が上板10の表面と略面一に位置するように、上板10に設けられた穴11に圧入されれば、接合補助部材30が上板10の下面から突出するのを防止することができる。
また、下板20には、絞り加工により膨出部21が形成されており、重ね合わせ工程において、下板20の膨出部21が、上板10の穴11内に配置される。これにより、上板10の板厚が大きな場合でも溶け落ち欠陥を防止して溶接することができ、また、上板10と下板20を容易に位置決めすることができる。
また、重ね合わせ工程の前に、上板10と下板20の少なくとも一方の重ね合せ面には、穴11の周囲に、全周に亘って接着剤60を塗布する工程を、さらに備える。これにより、接着剤は、継手強度向上の他、シーリング材として作用し、上板10、下板20及び溶接金属40の電食速度を下げることができる。
また、圧入工程の際、上板10は、プレス成形される。つまり、接合補助部材30は、上板10の上面10aから突き出さないので、接合補助部材30が圧入された上板10を金型等を用いて所望の形状にプレス成形することができる。
また、接合補助部材30のフランジ部32の厚さPH2は、上板10の板厚Bの20%以上80%以下であるので、接合補助部材30は、かしめ作用を与える軸部31の長さを確保しつつ、板厚方向の外部応力への抵抗力として機能することができる。
また、接合補助部材30のフランジ部32の幅PD2は、上板10の穴11の直径Bに対し110%以上200%以下であるので、接合補助部材30の上板10への圧入性を考慮しつつ、接合補助部材30が板厚方向の外部応力への抵抗力として機能することができる。
また、充填溶接工程において、前記フランジ部の露出面からの前記溶接金属の未充填高さPH3が、前記第1の板の板厚Bの30%以下であるので、異材溶接継手1の接合強度を確保することができる。
また、本実施形態の接合補助部材30は、鋼製で、軸部31とフランジ部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、軸部31及びフランジ部32を貫通する中空部33が形成され、軸部31の最大外径PD1、フランジ部32の幅PD2、及び上板10の穴11の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、軸部31がフランジ部側でくびれ部39を有する。これにより、接合補助部材30は、上述した異材接合用アーク溶接法に好適に用いられる。
また、本実施形態の異材溶接継手1は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の上板10と、上板10にアーク溶接された、鋼製の下板20と、を備え、上板10は、下板20との重ね合わせ面に臨む円形の穴11を有し、軸部31とフランジ部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、軸部31及びフランジ部32を貫通する中空部33が形成され、軸部31の最大外径PD1、フランジ部32の幅PD2、及び上板10の穴11の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、軸部31がフランジ部側でくびれ部39を有する鋼製の接合補助部材30をさらに備え、接合補助部材30は、フランジ部32の露出面32aが上板10の上面10aと略面一又は内側に位置するように、上板10の穴11内に固定されており、接合補助部材30の中空部33は、鉄合金、または、Ni合金の溶接金属40で充填されると共に、溶接金属40と、溶融された下板20及び接合補助部材30の一部とによって溶融部Wが形成される。
これにより、Al合金もしくはMg合金の上板10と鋼の下板20とを備えた異材溶接継手1は、安価なアーク溶接設備を用いて、強固かつ信頼性の高い品質で接合され、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
さらに、本実施形態の接合補助部材付き板材は、円形の穴11を有するアルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の上板(アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の板材)10と、軸部31とフランジ部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、軸部31及びフランジ部32を貫通する中空部33が形成され、軸部31の最大外径PD1、フランジ部32の幅PD2、及び上板10の穴11の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、軸部31がフランジ部側でくびれ部39を有する鋼製の接合補助部材30と、を備える。そして、接合補助部材30は、フランジ部32の露出面32aが上板10の表面と略面一又は内側に位置するように、上板10の穴11内に固定されている。
これにより、接合補助部材付き板材は、鋼製の下板(鋼製の板材)20とアーク溶接することで、強固かつ信頼性の高い品質で異材溶接継手を形成することができる。
尚、本発明は、前述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
ここで、以下の実施例A〜Eを用いて、本実施形態の有効性を確認した。
<実施例A>
実施例Aでは、上板10を板厚1.6mmのアルミニウム合金A5083、下板20を板厚1.4mmの590MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手を用いた。また、この重ね継手は、直径1.2mmのJIS Z3312 YGW16の鋼製溶接ワイヤを用い、Ar80%+CO20%の混合ガスをシールドガスとしたマグ溶接法にて、一定時間定点でのアーク溶接を行って接合された。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136「抵抗スポット及びプロジェクション 溶接継手のせん断試験に対する試験片寸法及び試験方法」、およびJIS Z3137「抵抗スポット及びプロジェクション溶接継手の十字引張試験」に従って、破壊試験を行った。ここでは、Z3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSとして表す。合否判定値として、TSS≧8kN、CTS≧5kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、溶接継手を塩水噴霧→乾燥→湿潤を繰り替えして加速腐食させるJASO−CCT(Japanese Automobile Standards Organization Cyclic Corrosion Test)を28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。
表1では、比較例をNo.A1〜A9、本実施例をNo.A10〜A15に示す。
Figure 2018103241
No.A1は、接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接アーク溶接を実施したものである。また、接着剤も用いていない。鋼製溶接ワイヤとアルミ母材が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。
No.A2は上板10に直径7.0mmの穴11を設けるが、接合補助部材30を用いないでアーク溶接を実施したものである。No.A1に比べると溶接金属のアルミ混合量が低下するので、金属間化合物量が少なく、脆化度合も低いが、それでもなお低いTSS,CTSであった。
No.A3は穴開けをしていない上板10の上に接合補助部材30を載せて、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30の材質はJIS G3106 SM490Cである(以降、実施例Aの材質は同じ)。なお、ここでは接合補助部材30には穴開けをしていない。この結果、接合補助部材30と上板10を貫通して下板20まで溶け込ますことができず、溶接することができなかった。
No.A4は直径7.0mmの穴開けをした上板10に接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、ここでは接合補助部材30には穴開けをしていない。この結果、接合補助部材30を貫通して下板20まで溶け込ますことは何とかできたものの、下板20の溶込み幅が非常に小さく、破壊試験をすると容易に破断した。
No.A5は穴開けをしていない上板10の上に接合補助部材30を載せて、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30には直径5.0mmの穴開けをしている。この結果、溶接金属はNo.A1と同様に鋼製溶接ワイヤとアルミ母材が溶融混合したものになるので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。
No.A6は直径7.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30の軸部31にはくびれ部39を設けているが、軸部31の最大外径は上板10の穴径よりも小さい。ゆえに、接合補助部材30は、軸部31が、穴11に圧入ではなく、穴11内に置いてある状態である。接合補助部材30のフランジ部32まで上板10の穴11に圧入しても、かしめ効果が得られず、接合補助部材30が飛び出して外れてしまった。ゆえに溶接自体が出来なかった。
No.A7は直径7.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30を圧入して、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30のくびれ部39に対して露出面側の部分(フランジ部32に相当する部分)は、軸部31の最大外径よりも小さい。上板10に応力がかかると容易に上板10が接合補助部材30の周囲から抜けてしまったため、CTS、TSS共に低い値であった。
No.A8は直径7.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。フランジ部32、軸部31とも上板10の穴径よりも大きいが、軸部31にはくびれ部がなく、寸胴である。この場合、接合補助部材30は、一時的に穴11に圧入することは出来たが、くびれ部がないことから、かしめ効果が得られず、接合補助部材30が飛び出して外れてしまった。ゆえに溶接自体が出来なかった。
No.A9は直径7.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。しかし、接合補助部材30は軸部31とフランジ部32の境界、さらにはくびれ部もない、つまり円形鋼管の形態であり、その径は上板10の穴11よりも小さい。接合補助部材30の軸部31と上板10の穴11の壁面間には隙間があり、上板10の表面もかろうじて余盛りで接合補助部材30と繋がっているだけなので、応力がかかると容易に破断した。CTS、TSS共に低い値であった。
一方、No.A10〜A15は、穴開けをした上板10に、接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、上板10の穴径は、表1に示すように設定されており、接合補助部材30の適当なサイズの穴開けが施されている。接合補助部材30は、軸部31の最大外径及びフランジ部32の幅が上板10の穴径よりもそれぞれ大きく、且つ、フランジ部32の幅が軸部31の最大外径より大径であり、さらに、軸部31のフランジ部側にはくびれ部39を持たせた形状となっている。これらの試験体では、くびれ部39によって上板10と接合補助部材30がかしめ拘束されていることから、安定して圧入することが出来た。溶接品質としては、形成される溶接金属40のアルミ流入が接合補助部材30の軸部31の存在によりゼロもしくは極めて低く抑制され、高品質の溶接金属が形成される。さらに、下板20の溶込みも十分大きくなり、また接合補助部材30のフランジ部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、TSSも十分高い値であった。さらにまた、適切な箇所に高温硬化型2液混合接着材を塗布した後、180℃×0.5時間環境に保持して硬化させた試験体(A11,A13,A14)では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、高い腐食後CTS,TSSを示した。具体的にはNo.A10に対して、No.A11は接着剤塗布を行う事により、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。
<実施例B>
実施例Bでは、上板10を板厚0.8mmのマグネシウム合金ASTM AZ31B、下板20を板厚1.0mmの780MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手を用いた。また、この重ね継手は、Ar100%ガスをシールドガスとして用いたティグ溶接法にて、直径1.0mmのJIS Z3316 YGT50の鋼製溶接ワイヤを非通電フィラーとして挿入しながら、一定時間定点でのアーク溶接を行って接合した。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136およびJIS Z3137に従って、破壊試験を行った。ここではZ3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSと表す。合否判定値として、TSS≧4kN、CTS≧3kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例Aと同様に、溶接継手1に対してJASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。
表2では、比較例をNo.B1〜B8、本実施例をNo.B9〜B13に示す。
Figure 2018103241
No.B1は接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接アーク溶接を実施したものである。接着剤も用いていない。鋼製溶接ワイヤとマグネシウム母材が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。
No.B2は上板10に直径5.0mmの穴11を設けるが、接合補助部材を用いないでアーク溶接を実施したものである。No.B1に比べると溶接金属のマグネシウム合金混合量が低下するので、金属間化合物量が少なく、脆化度合も低いが、それでもなお低いTSS,CTSであった。
No.B3は穴開けをしていない上板10の上に接合補助部材30を載せて、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30の材質はJIS G3101 SS400である(以降、実施例Bの材質は同じ)。なお、ここでは接合補助部材30には穴開けをしていない。この結果、接合補助部材30と上板10を貫通して下板20まで溶け込ますことは何とかできたものの、下板20の溶込み幅が非常に小さく、破壊試験をすると容易に破断した。
No.B4は、No.B2と同様、直径5.0mmの穴11を穴開けした上板10に接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、ここでは接合補助部材30には穴開けをしていない。この結果、接合補助部材30を貫通して下板20まで溶け込ますことは何とかできたものの、下板20の溶込み幅が非常に小さく、破壊試験をすると容易に破断した。
No.B5は穴開けをしていない上板10の上に接合補助部材30を載せて、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30には直径3.8mmの穴開けをしている。この結果、溶接金属はNo.B1と同様に鋼製溶接ワイヤとマグネシウム合金母材が溶融混合したものになるので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。
No.B6は直径5.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30全体を挿入して、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30の軸部31にはくびれ部39を設けているが、軸部31の最大外径は上板10の穴径よりも小さい。ゆえに、接合補助部材30は、軸部31が、穴11に圧入ではなく、穴11内に置いてある状態である。接合補助部材30のフランジ部32まで上板10の穴11に圧入しても、かしめ効果が得られず、接合補助部材30が飛び出して外れてしまった。ゆえに溶接自体が出来なかった。
No.B7は直径5.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30のくびれ部39に対して露出面側の部分(フランジ部32に相当する部分)は、軸部31の最大外径よりも小さい。上板10に応力がかかると容易に上板10が接合補助部材30の周囲から抜けてしまったため、CTS、TSS共に低い値であった。
No.B8は直径5.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。フランジ部32、軸部31とも上板10の穴径よりも大きいが、軸部31にはくびれがなく、寸胴である。この場合、接合補助部材30は、一時的に穴11に圧入することは出来たが、くびれ部がないことから、かしめ効果が得られず、接合補助部材30が飛び出して外れてしまった。ゆえに溶接自体が出来なかった。
一方、No.B9〜B13は、穴開けをした上板10に接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、上板10の穴径は、表2に示すように設定されており、接合補助部材30も適当なサイズの穴開けが施されている。接合補助部材30は、軸部31の最大外径及びフランジ部32の幅が上板10の穴径よりもそれぞれ大きく、且つ、フランジ部32の幅が軸部31の最大外径より大径であり、さらに、軸部31のフランジ部側にはくびれ部39を持たせた形状となっている。これらの試験体では、くびれ部39によって上板10と接合補助部材30がかしめ拘束されていることから、安定して圧入することが出来た。溶接品質としては、形成される溶接金属40のマグネシウム流入が接合補助部材30の軸部31の存在によりゼロもしくは極めて低く抑制され、高品質の溶接金属40が形成される。さらに、下板20の溶込みも十分大きくなり、また接合補助部材30のフランジ部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、TSSも十分高い値であった。さらにまた、適切な箇所に高温硬化型2液混合接着材を塗布した後、180℃×0.5時間環境に保持して硬化させた試験体(B10〜B12)では、マグネシウム合金と鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、高い腐食後CTS,TSSを示した。具体的にはNo.B9に対して、No.B10は接着剤塗布を行う事により、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。
<実施例C>
実施例Cでは、上板10が板厚3.6mmのアルミニウム合金A6061、下板20が板厚2.2mmの400MPa級鋼板とした組合せの重ね継手を用いた。また、重ね継手は、直径4.0mmのJIS Z3252 ECNi−CIのNi合金被覆アーク溶接棒を用いた被覆アーク溶接法にて、一定時間定点でのアーク溶接を行って接合した。なお、上板10に穴開けを施した場合、下板20の溶接箇所にポンチによる深絞り加工を行い、1.8mmの高さ、すなわち上板10に設けた穴11の板厚中央まで入り込むように加工した。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136およびJIS Z3137に従って、破壊試験を行った。ここではZ3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSと表す。合否判定値として、TSS≧9kN、CTS≧6kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例A、Bと同様に、溶接継手1に対して、JASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。
表3では、比較例をNo.C1〜C7、本実施例をNo.C8〜C13に示す。
Figure 2018103241
No.C1は接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接アーク溶接を実施したものである。接着剤も用いていない。Ni合金被覆アーク溶接棒とアルミニウム母材が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。
No.C2は上板10に直径9.0mmの穴11を設けるが、接合補助部材30を用いないでアーク溶接を実施したものである。No.C1に比べると溶接金属のアルミニウム合金混合量が低下するので、金属間化合物量が少なく、脆化度合も低いが、それでもなお低いTSS,CTSであった。
No.C3は穴開けをしていない上板10の上に接合補助部材30を載せて、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30の材質はJIS G4051 S12Cである(以降、実施例Cの材質は同じ)。なお、ここでは接合補助部材30には穴開けをしていない。この結果、接合補助部材30と上板10を貫通して下板20まで溶け込ますことができず、溶接することができなかった。
No.C4は直径9.0mmの穴開けをした上板10に接合補助部材30を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、ここでは接合補助部材30には穴開けをしていない。この結果、接合補助部材30を貫通して下板20まで溶け込ますことは何とかできたものの、下板20の溶込み幅が非常に小さく、破壊試験をすると容易に破断した。
No.C5は穴開けをしていない上板10の上に接合補助部材30を載せて、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30には直径7.0mmの穴開けをしている。この結果、溶接金属はNo.C1と同様にNi合金溶接棒とマグネシウム合金母材が溶融混合したものになるので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。
No.C6は直径9.0mmの穴開けをした上板10に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30の軸部31にはくびれ部39を設けているが、軸部31の最大外径は上板10の穴径よりも小さい。ゆえに、接合補助部材30は、軸部31が、穴11に圧入ではなく、穴11内に置いてある状態である。接合補助部材30のフランジ部32まで上板10の穴11に圧入しても、かしめ効果が得られず、接合補助部材30が飛び出して外れてしまった。ゆえに溶接自体が出来なかった。
No.C7は直径9.0mmの穴開けをした上板に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。フランジ部32、軸部31とも上板10の穴径よりも大きいが、軸部31にはくびれ部がなく、寸胴である。この場合、接合補助部材30は、一時的に穴11に圧入することは出来たが、くびれがないことから、かしめ効果が得られず、接合補助部材30が飛び出して外れてしまった。ゆえに溶接自体が出来なかった。
一方、No.C8〜C13は、穴開けをした上板10に接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、上板10の穴径は、表3に示すように設定されており、接合補助部材30も適当なサイズの穴開けが施されている。接合補助部材30は、軸部31の最大外径及びフランジ部32の幅が上板10の穴径よりもそれぞれ大きく、且つ、フランジ部32の幅が軸部31の最大外径より大径であり、さらに、軸部31のフランジ部側にはくびれ部39を持たせた形状となっている。これらの試験体では、くびれ部39によって上板10と接合補助部材30がかしめ拘束されていることから、安定して圧入することが出来た。溶接品質としては、形成される溶接金属のアルミ流入が接合補助部材30の軸部31の存在によりゼロもしくは極めて低く抑制され、高品質の溶接金属が形成される。さらに、下板20の溶込みも十分大きくなり、また接合補助部材30のフランジ部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、TSSも十分高い値であった。上板10の板厚は3.6mmと比較的厚いが、下板20の深絞り加工によって溶接箇所では接合補助部材30と下板20間の距離が小さくなり、溶接能率の向上や溶落ち防止効果が得られた。さらにまた、適切な箇所に高温硬化型2液混合接着材を塗布した後、180℃×0.5時間環境に保持して硬化させた試験体(No.C9〜C12)では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、高い腐食後CTS,TSSを示した。具体的にはNo.C8に対して、No.C9は接着剤塗布を行う事により、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。
<実施例D>
実施例Dでは、上板10が板厚1.2mmのアルミニウム合金A6N01、下板20が板厚1.2mmのSPCC鋼板とした組合せの重ね継手を用いた。また、重ね継手は、直径1.2mmのJIS Z3313 T49T14−0NS−Gの鋼製フラックス入りワイヤを用いたセルフシールドアーク溶接法にて、一定時間定点でのアーク溶接を行って接合した。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136およびJIS Z3137に従って、破壊試験を行った。ここではZ3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSと表す。合否判定値として、TSS≧6kN、CTS≧4kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例A,B,Cと同様に、溶接継手1に対して、JASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。
表4では、比較例をNo.D1〜D3、本実施例をNo.D4〜D7に示す。
Figure 2018103241
No.D1は接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接アーク溶接を実施したものである。接着剤も用いていない。鋼製溶接ワイヤとアルミニウム母材が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。
No.D2は上板10に直径6.0mmの穴11を設けるが、接合補助部材30を用いないでアーク溶接を実施したものである。No.D1に比べると溶接金属のアルミニウム合金混合量が低下するので、金属間化合物量が少なく、脆化度合も低いが、それでもなお低いTSS,CTSであった。
No.D3は直径5.5mmの穴開けをした上板に、穴開けをした接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。接合補助部材30の軸部31にはくびれ部39を設けているが、軸部31及びフランジ部32の外径は等しいため、板厚方向、即ち引き剥がしの応力に対する抵抗力が小さく、容易に上板10が接合補助部材30の周囲から抜けてしまい、CTS、TSS共に低い値であった。
一方、No.D4〜D7は、穴開けをした上板10に、JIS G3106 SM570材を加工した、接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、上板10の穴径は、表4に示すように設定されており、接合補助部材30も適当なサイズの穴開けが施されている。接合補助部材30は、軸部31の最大外径及びフランジ部32の幅が上板10の穴径よりもそれぞれ大きく、且つ、フランジ部32の幅が軸部31の最大外径より大径であり、さらに、一方、軸部31のフランジ部側にはくびれ部39を持たせた形状となっている。これらの試験体では、くびれ部39によって上板10と接合補助部材30がかしめ拘束されていることから、安定して圧入することが出来た。溶接品質としては、形成される溶接金属40のアルミ流入が接合補助部材30の軸部31の存在によりゼロもしくは極めて低く抑制され、高品質の溶接金属40が形成される。さらに、下板20の溶込みも十分大きくなり、また接合補助部材30のフランジ部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、TSSも十分高い値であった。さらにまた、適切な箇所に高温硬化型2液混合接着材を塗布した後、180℃×0.5時間環境に保持して硬化させた試験体No.D5、D6では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、接着材無しの試験体No.D4に対してNo.D5は接着剤塗布を行う事により、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。
<実施例E>
実施例Eでは、上板10を板厚4.0mmのアルミニウム合金A7N01、下板20を板厚3.0mmの1180MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手を用いた。下板20の溶接すべき箇所には、絞り加工により高さ1.5mmの膨出部21を形成した。また、この重ね継手は、直径1.2mmのJIS Z3321 YS309Lのステンレス鋼製溶接ワイヤを用い、プラズマガス:Ar100%、シールドガス:Ar99%+H1%としたプラズマアーク溶接法にて、一定時間定点でのアーク溶接を行って接合された。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136「抵抗スポット及びプロジェクション 溶接継手のせん断試験に対する試験片寸法及び試験方法」、およびJIS Z3137「抵抗スポット及びプロジェクション溶接継手の十字引張試験」に従って、破壊試験を行った。ここでは、Z3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSとして表す。合否判定値として、TSS≧10kN、CTS≧8kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例A〜Dと同様に、溶接継手1に対してJASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。
表5では、本実施例をNo.E1〜E4に示す。
Figure 2018103241
No.E1〜E4は穴開けをした上板10にSUS304ステンレス鋼材を加工した接合補助部材30全体を圧入して、その上からアーク溶接したものである。なお、上板10の穴径は、表5に示すように設定されており、接合補助部材30も適当なサイズの穴開けが施されている。接合補助部材30は、軸部31の最大外径及びフランジ部32の幅が上板10の穴径よりもそれぞれ大きく、且つ、フランジ部32の幅が軸部31の最大外径より大径であり、さらに、軸部31のフランジ部側にはくびれ部39を持たせた形状となっている。これらの試験体では、くびれ部39によって上板10と接合補助部材30がかしめ拘束されていることから、安定して圧入することが出来た。溶接品質としては、形成される溶接金属40へのアルミ流入が接合補助部材30の軸部31の存在によりゼロもしくは極めて低く抑制され、高品質の溶接金属が形成される。さらに、下板20の溶込みも十分大きくなり、また接合補助部材30のフランジ部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、TSSも十分高い値であった。
上板10の板厚が4.0mmと比較的厚いが、下板20の深絞り加工によって溶接箇所では接合補助部材30と下板20間の距離が小さくなり、溶接能率の向上や溶落ち防止効果が得られた。さらにまた、適切な箇所に高温硬化型2液混合接着材を塗布した後、180℃×0.5時間環境に保持して硬化させた試験体No.E3では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、高い腐食後CTS,TSSを示した。具体的には、接着材無しの試験体No.E2に対してNo.E3は接着剤塗布を行う事により、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。
10 上板
11 穴
20 下板
30 接合補助部材
31 軸部
32 フランジ部
33 中空部
40 溶接金属
W 溶融部

Claims (20)

  1. アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用アーク溶接法であって、
    前記第1の板に円形の穴を空ける工程と、
    軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する鋼製の接合補助部材を、前記フランジ部の露出面が前記第1の板の表面と略面一又は内側に位置するように、前記第1の板の穴に圧入する工程と、
    前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
    以下の(a)〜(e)のいずれかの手法によって、前記接合補助部材の中空部を溶接金属で充填すると共に、前記第2の板及び前記接合補助部材を溶接する工程と、
    を備える異材接合用アーク溶接法。
    (a)鉄合金、または、Ni合金の前記溶接金属が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
    (b)前記溶接ワイヤを溶極として用いるノンガスアーク溶接法。
    (c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
    (d)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。
    (e)鉄合金、または、Ni合金の前記溶接金属が得られる被覆アーク溶接棒を溶極として用いる被覆アーク溶接法。
  2. 前記接合補助部材の厚さが前記第1の板の板厚以下である、請求項1に記載の異材接合用アーク溶接法。
  3. 前記第2の板には、絞り加工により膨出部が形成されており、
    前記重ね合わせ工程において、前記第2の板の膨出部が、前記第1の板の穴内に配置される、請求項1又は2に記載の異材接合用アーク溶接法。
  4. 前記重ね合わせ工程の前に、前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って接着剤を塗布する工程を、さらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異材接合用アーク溶接法。
  5. 前記圧入工程後に、前記第1の板は、プレス成形される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異材接合用アーク溶接法。
  6. 前記接合補助部材のフランジ部の厚さPH2は、前記第1の板の板厚Bの20%以上80%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の異材接合用アーク溶接法。
  7. 前記接合補助部材のフランジ部の幅PD2は、前記第1の板の穴の直径Bに対し110%以上200%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の異材接合用アーク溶接法。
  8. 前記充填溶接工程において、前記フランジ部の露出面からの前記溶接金属の未充填高さPH3が、前記第1の板の板厚Bの30%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の異材接合用アーク溶接法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の異材接合用アーク溶接法に用いられ、
    鋼製で、軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する、接合補助部材。
  10. アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、該第1の板にアーク溶接された、鋼製の第2の板と、を備える異材溶接継手であって、
    前記第1の板は、前記第2の板との重ね合わせ面に臨む円形の穴を有し、
    軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する鋼製の接合補助部材をさらに備え、
    前記接合補助部材は、前記フランジ部の露出面が前記第1の板の表面と略面一又は内側に位置するように、前記第1の板の穴内に固定されており、
    前記接合補助部材の中空部は、鉄合金、または、Ni合金の溶接金属で充填されると共に、前記溶接金属と、溶融された前記第2の板及び前記接合補助部材の一部とによって溶融部が形成される、異材溶接継手。
  11. 前記接合補助部材の厚さが前記第1の板の板厚以下である、請求項10に記載の異材溶接継手。
  12. 前記第1の板の穴内には、前記第2の板に形成された膨出部が配置される、請求項10又は11に記載の異材溶接継手。
  13. 前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の前記重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って設けられた接着剤を備える、請求項10〜12のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
  14. 前記接合補助部材のフランジ部の厚さPH2は、前記第1の板の板厚Bの20%以上80%以下である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
  15. 前記接合補助部材のフランジ部の幅PD2は、前記第1の板の穴の直径Bに対し110%以上200%以下である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
  16. 前記フランジ部の露出面からの前記溶接金属の未充填高さPH3が、前記第1の板の板厚Bの30%以下である、請求項10〜15のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
  17. 前記接合補助部材は、前記第1の板の穴に圧入して固定されている、請求項10〜16のいずれか1項に記載の異材接合継手。
  18. 鋼製の板材とアーク溶接することで異材溶接継手を形成可能な接合補助部材付き板材であって、
    円形の穴を有するアルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の板材と、
    軸部とフランジ部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、前記軸部及び前記フランジ部を貫通する中空部が形成され、前記軸部の最大外径PD1、前記フランジ部の幅PD2、及び前記第1の板の穴の直径Bの関係がPD2>PD1>Bであり、前記軸部がフランジ部側でくびれ部を有する鋼製の接合補助部材と、
    を備え、
    前記接合補助部材は、前記フランジ部の露出面が前記第1の板の表面と略面一又は内側に位置するように、前記板材の穴内に固定されている、接合補助部材付き板材。
  19. 前記接合補助部材の厚さが前記板材の板厚以下である、請求項18に記載の接合補助部材付き板材。
  20. 前記接合補助部材は、前記板材の穴に圧入して固定されている、請求項18又は19に記載の接合補助部材付き板材。
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