JP2018102120A - 誘導機制御装置及び誘導機制御方法 - Google Patents

誘導機制御装置及び誘導機制御方法 Download PDF

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哲也 松山
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Abstract

【課題】誘導機の電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合において、3相誘導機のすべり角速度及び/又は回転子速度を推定可能な技術を提供する。【解決手段】磁束有効電力成分特定ユニット150は、電圧ベクトルと、検出された3相誘導機102の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、3相誘導機102の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、有効電力成分と、を特定する。誘導機制御装置100は、有効電力成分と、第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、3相誘導機102のすべり角速度を特定する。【選択図】図3

Description

本開示は、誘導機制御装置及び誘導機制御方法に関するものである。
従来から、誘導機を制御する技術が提案されている。非特許文献1には、誘導機の電流ベクトルを制御する技術が記載されている。特許文献1には、誘導機の磁束ベクトルを制御する技術が記載されている。特許文献2及び3並びに非特許文献2及び3には、ベクトル制御に関連する技術が記載されている。
特開平8−80099号公報 特開平11−98898号公報 特開2016−100994号公報
新中新二:「瞬時速度推定同伴の最小次元D因子磁束状態オブザーバを用いた誘導モータのセンサレスベクトル制御」、電気学会論文誌D、Vol.135、No.3、pp.299−307、(2015) 新中新二:「誘導モータのベクトル制御技術」、東京電機大学出版局、pp.154−158、(2015) 井上征則、森本茂雄、真田雅之、「永久磁石同期モータを駆動する直接トルク制御のためのトルクと磁束の指令値作成法とトルク制御器のワインドアップ対策(A reference value calculation scheme for torque and flux and an anti-windup implementation of torque controller for direct torque control of permanent magnet synchronous motor)」電気学会論文誌D,130巻,6号,p.777−784(2010年)
本発明者らは、誘導機の電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合において、3相誘導機のすべり角速度及び/又は回転子速度を推定可能な技術には、利用価値があると考えた。
本開示は、
3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御装置であって、
前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する磁束有効電力成分特定ユニットを備え、
前記誘導機制御装置は、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機のすべり角速度を特定する、誘導機制御装置を提供する。
本開示に係る技術によれば、誘導機の電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合において、3相誘導機のすべり角速度及び/又は回転子速度を推定できる。
図1は、3相誘導機、インバータ及び誘導機制御装置のブロック図である。 図2Aは、dq座標系を説明するための図である。 図2Bは、αβ座標系を説明するための図である。 図3は、実施形態1に係る誘導機制御部のブロック図である。 図4は、PWMインバータの構成図である。 図5は、磁束ベクトル及び電流ベクトルを説明するための図である。 図6は、実施形態2に係る誘導機制御部のブロック図である。 図7は、PWMインバータの電流と電圧のタイミングを表す図である。 図8は、位相のずれを説明するための図である。 図9は、実施形態3に係る誘導機制御部のブロック図である。 図10は、負荷電流を説明するための図である。 図11は、実施形態4に係る誘導機制御部のブロック図である。 図12は、実施形態5に係る誘導機制御部のブロック図である。 図13Aは、実施形態5の指令位相特定部の一例の構成図である。 図13Bは、実施形態5の指令位相特定部の一例の構成図である。 図13Cは、実施形態5の指令位相特定部の一例の構成図である。 図13Dは、実施形態5の指令位相特定部の一例の構成図である。 図14は、実施形態6に係る誘導機制御部のブロック図である。 図15は、実施形態6の指令位相特定部の構成図である。 図16は、実施形態7に係る誘導機制御部のブロック図である。 図17は、実施形態7の指令位相特定部の構成図である。 図18は、実施形態8に係る誘導機制御部のブロック図である。 図19は、実施形態8の指令位相特定部の構成図である。 図20は、実施形態9に係る誘導機制御部のブロック図である。 図21は、実施形態10に係る誘導機制御部のブロック図である。 図22は、実施形態11に係る誘導機制御部のブロック図である。
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る誘導機制御装置は、
3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御装置であって、
前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する磁束有効電力成分特定ユニットを備え、
前記誘導機制御装置は、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機のすべり角速度を特定する。
第1態様に係る技術によれば、誘導機の電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合において、3相誘導機のすべり角速度を推定できる。
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る誘導機制御装置では、
前記磁束有効電力成分特定ユニットは、前記電圧ベクトルと、前記検出電流ベクトルと、を用いて、前記一次磁束ベクトルを特定し、
前記誘導機制御装置は、位相特定部と、回転子速度特定部と、を備え、
前記位相特定部は、前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定された前記一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相を特定し、
前記回転子速度特定部は、前記第1の一次磁束ベクトルの位相の時間差分を用いて特定された前記第1の一次磁束ベクトルの回転速度と、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の回転子速度を特定する。
本開示の第3態様に係る誘導機制御装置は、
3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御装置であって、
前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記一次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する磁束有効電力成分特定ユニットと、
前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定された前記一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相を特定する位相特定部と、
前記位相の時間差分を用いて特定された前記第1の一次磁束ベクトルの回転速度と、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の回転子速度を特定する回転子速度特定部と、を備えたものである。
第2態様及び第3態様に係る技術によれば、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合に回転子速度を推定することができる。第2態様及び第3態様に係る技術によれば、負荷が大きい場合等、すべり角速度が大きい場合(一次磁束角速度と回転子速度が大きく乖離している場合)においても、回転子速度を推定することができる。第2態様及び第3態様の技術は、例えば、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)とともに用いられ得る。
なお、誘導機では、すべり角速度及び回転子速度は、誘導機の負荷の影響を受ける速度である点で、共通している。また、一次磁束ベクトルを指令磁束ベクトルに追従させる場合には、回転子速度は、すべり角速度に依存する。このため、これらの速度の推定の技術上の意義は密接に関連していると言える。
本開示の第4態様において、例えば、第2態様又は第3態様に係る誘導機制御装置は、前記回転子速度が指令速度に追従するように構成されており、
前記誘導機制御装置は、指令トルク特定部と、指令振幅特定部と、を備え、
前記指令トルク特定部は、前記回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相誘導機の前記トルクが追従するべき指令トルクを特定し、
前記指令振幅特定部は、前記指令トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する。
第4態様によれば、特定された回転子速度を活かして誘導機を制御することができる。
本開示の第5態様において、例えば、第2〜第4態様のいずれか1つに係る誘導機制御装置は、前記回転子速度が指令速度に追従するように構成されており、
前記有効電力成分は、前記3相誘導機のトルクであり、
前記誘導機制御装置は、指令トルク特定部と、指令位相特定部と、を備え、
前記指令トルク特定部は、前記回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相誘導機の前記トルクが追従するべき指令トルクを特定し、
前記指令位相特定部は、磁束有効電力成分特定ユニットで特定された前記トルクと前記指令トルクとの偏差であるトルク偏差をゼロに近づけるフィードバック制御によって磁束ベクトルの回転量を求め、前記第1の一次磁束ベクトルの位相に前記回転量を加算することによって、前記指令磁束ベクトルの位相を特定する。
第5態様によれば、特定された回転子速度を活かして誘導機を制御することができる。
本開示の第6態様において、例えば、第1態様に係る誘導機制御装置は、すべり角速度特定部を備え、
前記すべり角速度特定部は、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機のすべり角速度を特定する。
第6態様に係る技術によれば、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合にすべり角速度を推定することができる。第6態様に係る技術によれば、負荷が大きい場合等においても、すべり角速度を推定することができる。
本開示の第7態様において、例えば、第6態様に係る誘導機制御装置は、指令位相特定部を備え、
前記指令位相特定部は、前記3相誘導機の回転子速度が追従するべき指令速度に前記すべり角速度を加算したものである指令一次角速度を用いて、前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、
前記指令位相特定部は、特定された前記移動量を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相を特定する。
第7態様によれば、簡易磁束ベクトル制御により誘導機を駆動する場合において、指令磁束ベクトルの位相を特定することができる。
本開示の第8態様において、例えば、第6態様又は第7態様に係る誘導機制御装置は、指令振幅特定部を備え、
前記有効電力成分は、前記3相誘導機のトルクであり、
前記指令振幅特定部は、磁束有効電力成分特定ユニットで特定された前記トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する。
第8態様によれば、簡易磁束ベクトル制御により誘導機を駆動する場合において、指令磁束ベクトルの振幅を特定することができる。
本開示の第9態様において、例えば、第1〜第8態様のいずれか1つに係る誘導機制御装置は、前記誘導機制御装置で特定された前記3相誘導機のすべり角速度を用いて、前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、
前記誘導機制御装置は、特定された前記移動量を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相を特定する。
第9態様によれば、特定されたすべり角速度を活かして誘導機を制御することができる。
本開示の第10態様において、例えば、第1〜第9態様のいずれか1つに係る誘導機制御装置では、
前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトルと、を用いて前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトルと、を用いて前記有効電力成分を特定する。
第10態様の磁束有効電力成分特定ユニットによれば、シンプルに第2の二次磁束ベクトル及び有効電力成分を特定することができる。つまり、第10態様によれば、シンプルにすべり角速度及び/又は回転子速度を特定することができる。
本開示の第11態様において、例えば、第1〜第9態様のいずれか1つに係る誘導機制御装置では、
前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、少なくとも1つの位相調整部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
前記少なくとも1つの位相調整部は、前記第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の一次磁束ベクトル及び前記電圧ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の電圧ベクトルの少なくとも一方を特定し、
前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記第2の一次磁束ベクトルと、を用いて、前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル若しくは前記第2の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトル若しくは前記第2の電圧ベクトルと、を用いて、前記有効電力成分を特定し、
前記二次磁束特定部及び前記有効電力成分特定部の少なくとも一方で、前記第2の一次磁束ベクトル又は前記第2の電圧ベクトルが用いられる。
厳密に言うと、第1の一次磁束ベクトルは、電流検出タイミングにおいて誘導機に印加されている磁束を表すものではなく、電流検出タイミングからずれたタイミングにおいて誘導機に印加されている磁束を表すものである。このずれは、誘導機の回転速度が高くなると顕在化する。この点、第11態様では、第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の一次磁束ベクトル及び電圧ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の電圧ベクトルの少なくとも一方が特定される。そして、二次磁束特定部及び有効電力成分特定部の少なくとも一方で、第2の一次磁束ベクトル又は第2の電圧ベクトルが用いられる。このため、第2の二次磁束ベクトル及び有効電力成分の少なくとも一方の特定精度を向上させることができる。つまり、第11態様によれば、回転子速度が高い場合であっても、回転子速度及び/又はすべり角速度の特定精度を確保し易い。
本開示の第12態様において、例えば、第1〜第9態様のいずれか1つに係る誘導機制御装置では、
前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、負荷電流特定部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
前記負荷電流特定部は、前記検出電流ベクトルを用いて、前記固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定し、
前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトルと、を用いて、前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトルと、を用いて、前記有効電力成分を特定し、
前記二次磁束特定部及び前記有効電力成分特定部の少なくとも一方で、前記負荷電流ベクトルが用いられる。
固定子電流ベクトルではなく負荷電流ベクトルを用いれば、鉄損を考慮して第2の二次磁束ベクトルを特定したり有効電力成分を特定したりすることができる。第12態様では、二次磁束特定部及び有効電力成分特定部の少なくとも一方で、負荷電流ベクトルが用いられる。このため、第2の二次磁束ベクトル及び有効電力成分の少なくとも一方の特定精度を向上させることができる。つまり、第12態様によれば、鉄損の割合が大きい(回転子速度が高い場合等)であっても、回転子速度及び/又はすべり角速度の特定精度を確保し易い。
本開示の第13態様において、例えば、第1〜第9態様のいずれか1つに係る誘導機制御装置では、
前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、負荷電流特定部と、少なくとも1つの位相調整部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
前記負荷電流特定部は、前記検出電流ベクトルを用いて、前記固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定し、
前記少なくとも1つの位相調整部は、前記第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の一次磁束ベクトル及び前記電圧ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の電圧ベクトルの少なくとも一方を特定し、
前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記第2の一次磁束ベクトルと、を用いて、前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル若しくは前記第2の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトル若しくは前記第2の電圧ベクトルと、を用いて、前記有効電力成分を特定し、
前記有効電力成分特定部及び前記二次磁束特定部の少なくとも一方で、前記第2の一次磁束ベクトル又は前記第2の電圧ベクトルが用いられ、
前記二次磁束特定部及び前記有効電力成分特定部の少なくとも一方で、前記負荷電流ベクトルが用いられる。
第13態様によれば、第11態様の効果と第12態様の効果の両方を得ることができる。
本開示の第14態様において、例えば、第1〜第13態様のいずれか1つに係る誘導機制御装置では、
前記磁束有効電力成分特定ユニットは、二次磁束特定部を有し、
前記固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルを負荷電流ベクトルと定義し、前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義し、前記第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルを第2の一次磁束ベクトルと定義し、前記固定子電流ベクトルと固定子総合漏れインダクタンスとの積を第1の積と定義し、前記負荷電流ベクトルと固定子総合漏れインダクタンスとの積を第2の積と定義したとき、前記二次磁束特定部は、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記第2の一次磁束ベクトルから前記第1の積又は前記第2の積を差し引くことによって、前記第2の二次磁束ベクトルを特定する。
第14態様の二次磁束特定部は、適切に第2の二次磁束ベクトルを特定することができる。
本開示の第15態様に係る誘導機制御方法は、
3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御方法であって、
前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する磁束有効電力成分特定ステップを備え、
前記誘導機制御方法は、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機のすべり角速度を特定する。
第15態様によれば、第1態様の効果と同じ効果を得ることができる。
本開示の第16態様に係る誘導機制御方法は、
3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御方法であって、
前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記一次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と
、を特定する磁束有効電力成分特定ステップと、
前記磁束有効電力成分特定ステップによって特定された前記一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相を特定する位相特定ステップと、
前記位相の時間差分を用いて特定された前記第1の一次磁束ベクトルの回転速度と、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の回転子速度を特定する回転子速度特定ステップと、を備えたものである。
第16態様によれば、第3態様の効果と同じ効果を得ることができる。
誘導機制御装置の技術は、誘導機制御方法に適用できる。誘導機制御方法の技術は、誘導機制御装置に適用できる。
本開示の第17態様に係るコンピュータプログラムは、第15態様又は第16態様の誘導機制御方法を実行するための命令を含む。
本開示の第18態様に係るメモリは、第17態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリである。
本開示の第19態様に係るプロセッサは、第17態様のコンピュータプログラムを実行する。
本開示の第20態様に係る制御システムは、
第17態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリと、
前記コンピュータプログラムを実行するプロセッサと、を備える。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本開示の誘導機制御装置100は、第1電流センサ105a、第2電流センサ105b、誘導機制御部101及びデューティ生成部103を含んでいる。誘導機制御装置100は、PWMインバータ(PWM方式で電力変換を行う電力変換回路)104及び3相誘導機102に接続され得る。誘導機制御装置100に関するこれらの説明は、誘導機制御装置200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100についても該当する。また、誘導機制御部101に関するこれらの説明は、誘導機制御部201,301,401,501,601,701,801,901,1001,1101についても該当する。
誘導機制御部101は、速度制御系で直接トルク制御を実現するための構成を有している。また、誘導機制御部101は、3相誘導機102の速度センサレス運転を実行するように構成されている。速度センサレス運転は、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを用いない運転である。本実施形態の速度センサレス運転では、3相誘導機102の磁束ベクトルを推定する。そして、推定された磁束ベクトルの位相を用いて磁束ベクトルを制御する。磁束ベクトルは、3相誘導機102に印加されている3相交流座標上の電機子鎖交磁束と、この電機子鎖交磁束を座標変換することにより得た磁束の両方を含む概念である。同様に、電流ベクトルは、3相誘導機102を流れている3相交流座標上の電流ベクトルと、この電流ベクトルを座標変換することにより得た電流ベクトルの両方を含む概念である。同様に、電圧ベクトルは、3相誘導機102に印加されている3相交流座標上の電圧ベクトルと、この電圧ベクトルを座標変換することにより得た電圧ベクトルの両方を含む概念である。本明細書では、「振幅」は、単に大きさ(絶対値)を指す場合がある。また、「角速度」を単に「速度」と表記することがある。
誘導機制御装置100の一部又は全部の要素は、DSP(Digital Signal Processor)又はマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供され得る。DSP又はマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路及び通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、誘導機制御装置100の一部又は全部の要素は、論理回路によって構成されていてもよい。
(誘導機制御装置100を用いた制御の概要)
図1を参照しながら、誘導機制御装置100を用いた制御の概要を説明する。電流センサ105a,105bによって、相電流iu,iwが検出される。相電流iu,iwは、U相電流iu及びW相電流iwをまとめて記載したものである。U相電流iu及びW相電流iwは、それぞれ検出された固定子電流ベクトルiaのU相成分及びW相成分である。誘導機制御部101によって、指令速度ωref *及び相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が特定される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分は、それぞれ3相交流座標上のU相電圧、V相電圧及びW相電圧に対応する。デューティ生成部103によって、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwが生成される。PWMインバータ104によって、デューティDu,Dv,Dwから、3相誘導機102に印加するべき電圧ベクトルvu,vv,vwが生成される。指令速度ωref *は、上位制御装置から誘導機制御装置100に与えられる。指令速度ωref *は、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき回転速度(単位:rad/秒)を表す。このような制御により、3相誘導機102は、回転子速度が指令速度ωref *に追従するように制御される。
指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *は、逐次更新される。本明細書では、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が更新されてから次に更新されるまでのサイクルを「制御サイクル」と称する。本実施形態では、制御サイクル毎に、指令トルク及び指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が特定される。特定された指令トルクは、次の制御サイクルにおいて3相誘導機102に印加されるトルクを規定する。特定された指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *は、次の制御サイクルにおいて3相誘導機102に印加される電圧ベクトルvu,vv,vwを規定する。本実施形態の各制御サイクルは、周期Tsを有する。
図2Aに示すdq座標系は、回転座標系である。d軸及びq軸は、回転子磁束ベクトル(二次磁束ベクトル)の回転速度(角速度)と同じ速度で回転する。図2Aでは、これらの回転速度と同じ回転速度で回転する正規化二次磁束ψ2nを図示している。反時計回り方向が、位相の進み方向である。d軸は、回転子磁束ベクトルの方向に延びる軸として設定されている。q軸は、d軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。U軸は、U相巻線に対応する。V軸は、V相巻線に対応する。W軸は、W相巻線に対応する。U軸、V軸及びW軸は、回転子が回転しても、回転しない。つまり、U軸、V軸及びW軸は、固定軸である。
回転子速度ω2nは、回転子の速度を表す(図示していない)。二次磁束回転速度ω2fは、二次磁束ベクトルの回転速度を表す。誘導機のような非同期機の場合は回転子速度(回転子の速度)ω2nと二次磁束の回転速度ω2fの間には差があり、この差はすべり角速度ωsと呼ばれる。本明細書では、特に断りが無い限り、角度は電気角を意味する。d軸とq軸との間の角度、角度θ、回転子速度ω2n及び二次磁束回転速度ω2fは、電気角に基づいた値である。回転子速度ω2n及び二次磁束回転速度ω2fの単位はrad/秒である。
図2Bに示すαβ座標系は、固定座標系である。α軸及びβ軸は、固定軸である。反時計回り方向が、位相の進み方向である。α軸は、U軸と同一方向に延びる軸として設定されている。β軸は、α軸を進み方向に90度回転させた軸として設定されている。
(実施形態1−4及びその変形例に関する本発明者らによる知見)
非特許文献1には、回転子速度を推定する技術が記載されている。しかし、この技術は、電流ベクトルを制御する場合に利用可能な技術である。この技術は、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合には利用できない。
以上の事情に鑑み、実施形態1−4及びその変形例は、特に、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合に回転子速度を推定可能な技術を提供することを目的とする。
実施形態1−4及びその変形例に係る技術によれば、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合に回転子速度を推定することができる。
(実施形態1−4及びその変形例に関する本発明者らによる具体的な知見)
本発明者らは、誘導機の回転子速度を制御するために、誘導機の回転子速度を特定することを考えた。誘導機の回転子速度は、速度センサを用いて特定できる。しかし、低コストで制御を行うべき場合等、速度センサを用いずに回転子速度を特定することが望ましい場合もある。
誘導機の一次磁束ベクトルを制御する場合には、一次磁束ベクトルの回転速度を計算することができる。しかし、すべり角速度を特定しなければ、回転子速度(=一次磁束ベクトルの回転速度−すべり角速度)を特定することはできない。すべり角速度は、負荷等によって変動するものであって、定数ではないためである。
非特許文献1には、誘導機の電流ベクトルを制御しつつ誘導機の回転子速度を推定する技術が記載されている。この技術では、正規化二次磁束ベクトルをオブザーバで推定することで、回転子速度を求め、すべり角速度を推定している。しかし、この技術は、電流ベクトルを制御しない場合には利用できない。
そこで、実施形態1−4及びその変形例は、特に、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合に回転子速度を推定可能な技術を提供することを目的とする。
(実施形態1)
(誘導機制御部101について)
図3に示すように、誘導機制御部101は、u,w/α,β変換部(3相2相座標変換部)106、指令電圧特定部107、一次磁束推定部(一次磁束特定部)108、二次磁束推定部(二次磁束特定部)115、トルク推定部(トルク特定部)109、速度・位相推定部(速度・位相特定部)110、回転子速度推定部(回転子速度特定部)129、指令トルク特定部121、指令振幅特定部122、トルク偏差特定部111、指令位相特定部127、指令磁束特定部112、α軸磁束偏差特定部113a、β軸磁束偏差特定部113b及びα,β/u,v,w変換部(2相3相座標変換部)114を含んでいる。
誘導機制御部101では、u,w/α,β変換部(3相2相座標変換部)106によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。軸電流iα,iβは、3相誘導機102のα−β座標上におけるα軸電流iα及びβ軸電流iβをまとめて記載したものである。相電流iu,iw及び軸電流iα,iβは電流ベクトル(固定子電流ベクトル)であるので、相電流iu,iw及び軸電流iα,iβをそれぞれ電流ベクトルiu,iw及び電流ベクトルiα,iβと称することができる。一次磁束推定部108によって、指令軸電圧vα *,vβ *及び軸電流iα,iβから、3相誘導機102の一次磁束ベクトルが推定される(推定一次磁束ψsが特定される)。推定一次磁束ψsのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定一次磁束ψα及び推定一次磁束ψβと記載する。推定一次磁束ψsの振幅を|ψs|と記載する。軸指令電圧vα *,vβ *は、次の制御サイクルにおいて誘導機に印加される電圧ベクトルを規定するものである。速度・位相推定部110によって、推定一次磁束ψα,ψβから、3相誘導機102の一次磁束ベクトルの位相と、3相誘導機102の一次磁束の回転速度が推定される(推定位相θsと推定一次磁束速度ω1fが特定される)。トルク推定部109によって、推定一次磁束ψα,ψβ及び軸電流iα,iβから、3相誘導機102のトルクが推定される(推定トルクTeが特定される)。二次磁束推定部115によって、推定一次磁束ψα,ψβ及び軸電流iα,iβから正規化二次磁束ベクトルが推定される(推定正規化二次磁束ψ2nが特定される)。推定正規化二次磁束ψ2nのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定正規化二次磁束ψ2nα及び推定正規化二次磁束ψ2nβと記載する。回転子速度推定部129によって、推定一次磁束速度ω1f、推定トルクTe及び正規化二次磁束ψ2nから回転子速度ω2nが推定される。指令トルク特定部121によって、推定回転子速度ω2nが指令速度ωref *に一致するように、指令トルクTe *が特定される。指令振幅特定部122によって、指令トルクTe *から指令振幅|ψs *|が特定される。トルク偏差特定部111によって、推定トルクTeと指令トルクTe *との偏差(トルク偏差ΔT=Te *−Te)が求められる。指令位相特定部127によって、トルク偏差ΔT及び推定位相θsから、指令位相θs *が特定される。指令磁束特定部112によって、指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|から、指令磁束ベクトルψs *が特定される。指令磁束ベクトルψs *のα軸成分及びβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束ψα *及びβ軸指令磁束ψβ *と記載する。α軸磁束偏差特定部113aによって、α軸指令磁束ψα *と推定一次磁束ψαとの偏差(磁束偏差Δψα=ψα *−ψα)が求められる。β軸磁束偏差特定部113bによって、β軸指令磁束ψβ *と推定一次磁束ψβとの偏差(磁束偏差Δψβ=ψβ *−ψβ)が求められる。指令電圧特定部107によって、磁束偏差Δψα,Δψβ及び軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα *,vβ *が特定される。指令軸電圧vα *,vβ *は、3相誘導機102のα−β座標上におけるα軸指令電圧vα *及びβ軸指令電圧vβ *をまとめて記載したものである。指令軸電圧vα *,vβ *は電圧ベクトルであるので、指令軸電圧vα *,vβ *を指令電圧ベクトルvα *,vβ *と称することができる。α,β/u,v,w変換部114によって、指令軸電圧vα *,vβ *が、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。
このような制御(フィードバック制御)により、3相誘導機102のトルクが指令トルクTe *に追従し、3相誘導機102の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルψs *に追従する(3相誘導機102の一次磁束ベクトルの振幅が指令振幅|ψs *|に追従する)ように、PWMインバータ104を介して3相誘導機102に電圧ベクトルが印加される。その結果、3相誘導機102の回転速度ω2nが指令速度ωref *に追従する。
本明細書では、軸電流iα,iβは、実際に3相誘導機102を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。指令軸電圧vα *,vβ *、推定一次磁束ψs(磁束ψα,ψβ)、推定位相θs、推定トルクTe、指令トルクTe *、指令速度ωref *、指令位相θs *、指令振幅|ψs *|、指令磁束ベクトルψs *、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *等も同様である。
本実施形態の制御に関する各構成要素について、以下で説明する。
(第1電流センサ105a、第2電流センサ105b)
第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bは、3相誘導機102の相電流(電流ベクトル)iu,iwを検出する。図1に示す第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bとして、公知の電流センサを用いることができる。本実施形態では、第1電流センサ105aは、u相を流れる相電流iuを測定するように設けられている。第2電流センサ105bは、w相を流れる相電流iwを測定するように設けられている。ただし、第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bは、u相及びw相の2相以外の組み合わせの2相の電流を測定するように設けられていてもよい。以下では、第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bの組み合わせを電流検出部と称することがある。電流検出部は、固定子電流ベクトルiaを検出する。
(u,w/α,β変換部106)
図3に示すu,w/α,β変換部106は、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換する。具体的に、u,w/α,β変換部106は、式(1−1)及び(1−2)により、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換して、軸電流iα,iβを出力する。
Figure 2018102120
(一次磁束推定部108)
一次磁束推定部108は、前の制御サイクルにおいて特定された指令軸電圧(指令電圧ベクトル)vα *,vβ *を用いて、現在の制御サイクルにおける3相誘導機102の一次磁束ベクトルを推定する(推定一次磁束ψsを特定する)。具体的には、一次磁束推定部108は、軸電流iα,iβ及び指令軸電圧vα *,vβ *から、推定一次磁束ψs(推定一次磁束ψα,ψβ)を求める。より具体的には、一次磁束推定部108は、式(1−3)、(1−4)及び(1−5)を用いて、推定一次磁束ψα,ψβ、及び推定一次磁束ψsの振幅|ψs|を求める。式(1−3)及び(1−4)におけるψα|t=0、ψβ|t=0は、それぞれ推定一次磁束ψα,ψβの初期値である。式(1−3)及び(1−4)におけるRaは、3相誘導機102の固定子抵抗である。本実施形態では、式(1−3)及び(1−4)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成されている。本実施形態では、推定一次磁束ψsは、指令軸電圧(指令電圧ベクトル)vα *,vβ *を積分又は不完全積分することによって得られる。
Figure 2018102120
推定一次磁束ψsの特定の際に、指令電圧ベクトル(指令軸電圧vαβ *)に代えて、検出された3相誘導機102の電圧ベクトル(2相電圧vαβ)を用いることもできる。すなわち、式(1−3)の「vα *」を「vα」に置き換え、式(1−4)の「vβ *」を「vβ」に置き換えることができる。具体的には、一次磁束推定部108は、3相誘導機102に印加されている電圧ベクトルの検出値を3相2相変換させて得た2相電圧(2相電圧vαβ)を用いて推定一次磁束ψsを特定するものであってもよい。
(トルク推定部109)
トルク推定部109は、検出された固定子電流ベクトルia(軸電流iα,iβ)と、現在の制御サイクルにおいて推定された一次磁束ベクトルである推定一次磁束ψα,ψβとから、現在の制御サイクルにおけるトルクを推定する(推定トルクTeを特定する)。具体的には、トルク推定部109は、式(1−6)を用いて、推定トルクTeを求める。式(1−6)におけるNpは、3相誘導機102の極対数である。
Figure 2018102120
(速度・位相推定部110)
速度・位相推定部110は、推定一次磁束ψs(推定一次磁束ψα,ψβ)から一次磁束ベクトルの位相を推定する(推定位相θsを特定する)。具体的に、速度・位相推定部110は、式(1−7)により、推定位相θsを求める。また、速度・位相推定部110は、現在の制御サイクルにおいて求めた推定位相θs(n)と、前回の制御サイクルにおいて求めた推定位相θs(n−1)とを用いて、式(1−8)により、3相誘導機102の一次磁束の角速度ω1fを推定する。つまり、速度・位相推定部110は、推定位相θsの時間差分を用いて、角速度ω1fを推定する。速度・位相推定部110は、公知の位相推定器である。ここで、Tsは各制御サイクルの周期(制御周期)を意味する。nは、n番目の制御サイクルであることを示す。nは整数である。
Figure 2018102120
本実施形態では、速度・位相推定部110は、速度推定部(速度特定部)と位相推定部(位相特定部)とを含んでいる。これらは、組み合わされて単一の推定部を構成していてもよく別個独立に設けられていてもよい。
(二次磁束推定部115)
二次磁束推定部115は、検出された固定子電流ベクトルia(軸電流iα,iβ)と、現在の制御サイクルにおいて推定された一次磁束ベクトルである推定一次磁束ψα,ψβとから、現在の制御サイクルにおける正規化二次磁束ベクトルを推定する(推定正規化二次磁束ψ2nを特定する)。正規化二次磁束ベクトルは、二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである。具体的には、二次磁束推定部115は、式(1−9)を用いて、推定正規化二次磁束ψ2nを求める。式(1−9)におけるl1taは、3相誘導機102の仮想電機子反作用磁束である。l1tは、固定子総合漏れインダクタンスである。仮想電機子反作用磁束l1ta及び固定子総合漏れインダクタンスの詳細については後述する。
Figure 2018102120
本実施形態では、一次磁束推定部108、二次磁束推定部115及びトルク推定部109は、磁束有効電力成分特定ユニット150を構成している。
(回転子速度推定部129)
回転子速度推定部129は、3相誘導機102の一次磁束ベクトルの回転速度ω1fと、推定正規化二次磁束ψ2nと、推定トルクTeとから、3相誘導機102の回転子の速度を推定する(回転子速度ω2nを特定する)。具体的には、回転子速度推定部129は、式(1−10)を用いて、すべり角速度ωsを求める。次に、回転子速度推定部129は、式(1−11)を用いて、算出したすべり角速度ωsと、一次磁束の回転速度ω1fとから、回転子速度ω2nを求める。式(1−10)におけるR2nは、3相誘導機102の正規化回転子抵抗である。Mは、相互インダクタンスである。R2は、回転子抵抗である。L2は、回転子インダクタンスである。これらの詳細については後述する。なお、式(1−10)の導出方法は、非特許文献1等に記載されている。正規化二次磁束ψ2nのノルムが一定の条件においては推定正規化二次磁束ψ2nの回転速度ω2fに代えて一次磁束ベクトルの回転速度ω1fを利用できることも、非特許文献1に記載のとおりである。
Figure 2018102120
式(1−10)では、すべり角速度ωsの特定に、推定トルクTeと推定正規化二次磁束ψ2nが用いられる。本実施形態によれば、これらは適切に導出される。つまり、本実施形態によれば、すべり角速度ωsが適切に導出される。
式(1−7)〜(1−11)から理解されるように、本実施形態の技術の一部は、一次磁束ベクトルから一次磁束の回転速度を求め、有効電力成分(この例ではトルク)を二次磁束成分で除することによりすべり角速度を求め、これらの差分をとることで回転子速度を推定するという、本発明者らのアイデアに基づくものである。
回転子速度推定部129は、推定トルクTe及び推定正規化二次磁束ψ2nを用いてすべり角速度ωsを特定するすべり角速度推定部(すべり角速度特定部)を含んでいると考えることができる。具体的に、このすべり角速度推定部は、式(1−10)に基づいてすべり角速度ωsを特定する。
(指令トルク特定部121)
指令トルク特定部121は、指令速度ωref *及び回転子速度ω2nから、指令トルクTe *を特定する。具体的に、指令トルク特定部121は、式(1−12)により、指令トルクTe *を求める。式(1−12)におけるKspは比例ゲインである。KsIは積分ゲインである。指令トルク特定部121は、公知のPI補償器である。
Figure 2018102120
(指令振幅特定部122)
指令振幅特定部122は、指令トルクTe *を用いて指令振幅|ψs *|を特定する。指令振幅|ψs *|は、式(1−13)を用いて特定できる。具体的に、式(1−13)でa=1とすれば、指令トルクTe *から、最大トルク/電流制御を実行するための指令振幅|ψs *|を特定できる。また、式(1−13)のaを1以外の適切値に設定することによって、指令トルクTe *から、3相誘導機1における電力損失PLを低減させるのに適した指令振幅|ψs *|を特定することもできる。当然ながら、変換テーブルを作成することもできる。式(1−13)の詳細及び導出方法については後述する。
Figure 2018102120
(トルク偏差特定部111)
トルク偏差特定部111は、指令トルクTe *と推定トルクTeとの偏差(トルク偏差ΔT:Te *−Te)を求める。トルク偏差特定部111としては、公知の演算子を用いることができる。
(指令位相特定部127)
指令位相特定部127は、トルク偏差ΔT及び推定位相θsから、指令位相θs *を特定する。具体的には、指令位相特定部127は、式(1−14)により磁束ベクトルの回転量Δθsを求め、式(1−15)により指令位相θs *を求める。式(1−14)におけるKθPは比例ゲインである。KθIは積分ゲインである。すなわち、指令位相特定部127は、指令位相θs *を、トルク偏差ΔTをゼロに近づけるフィードバック制御(具体的には、比例積分制御)を含む制御によって特定する。この点で、指令位相特定部127は、トルクの補償機構を構成するともいえる。本実施形態では、式(1−14)における演算のために必要となる積分器は、離散系で構成されている。
Figure 2018102120
式(1−10)から理解されるように、誘導機制御部101は、3相誘導機102のすべり角速度ωsを特定する。式(1−11),(1−12)及び(1−14)から理解されるように、そのすべり角速度ωsが、回転子速度ω2n、指令トルクTe *、トルク偏差ΔT及び回転量Δθsに反映される。回転量Δθsは、3相誘導機102の一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量に対応する。これらから、誘導機制御部101は、誘導機制御部101で特定された3相誘導機102のすべり角速度を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定すると言える。そして、(1−15)から理解されるように、誘導機制御部101は、特定された移動量すなわち回転量Δθsを用いて、指令磁束ベクトルの位相である指令位相θs *を特定する。
(指令磁束特定部112)
指令磁束特定部112は、制御サイクル毎に、指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|を用いて、指令磁束ベクトルψs *を特定する。特定された指令磁束ベクトルψs *は、次の制御サイクルにおいて3相誘導機102に印加される一次磁束ベクトルを規定する。具体的に、式(1−16)及び(1−17)を用いて、指令磁束ベクトルψα *,ψβ *を求める。指令磁束ψα *は、指令磁束ベクトルψα *,ψβ *のα軸成分である。指令磁束ψβ *は、指令磁束ベクトルψα *,ψβ *のβ軸成分である。式(1−16)及び式(1−17)等から明らかではあるが、指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|は、それぞれ、指令磁束ベクトルψs *の位相及び振幅である。
Figure 2018102120
(α軸磁束偏差特定部113a、β軸磁束偏差特定部113b)
α軸磁束偏差特定部113aは、指令磁束ψα *と推定一次磁束ψαを取得し、これらの偏差(磁束偏差Δψα:ψα *−ψα)を求める。β軸磁束偏差特定部113bは、指令磁束ψβ *と推定一次磁束ψβを取得し、これらの偏差(磁束偏差Δψβ:ψβ *−ψβ)を求める。磁束偏差特定部113a,113bとしては、公知の演算子を用いることができる。
(指令電圧特定部107)
指令電圧特定部107は、制御サイクル毎に、指令軸電圧(指令電圧ベクトル)vα *,vβ *を特定する。特定された指令軸電圧vα *,vβ *は、次の制御サイクルにおいて3相誘導機102に印加される電圧ベクトルを規定する。具体的には、指令電圧特定部107は、磁束偏差Δψα,Δψβ及び軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα *,vβ *を求める。より具体的には、指令電圧特定部107は、式(1−18)を用いてα軸指令電圧vα *を求め、式(1−19)を用いてβ軸指令電圧vβ *を求める。
Figure 2018102120
(α,β/u,v,w変換部114)
α,β/u,v,w変換部114は、指令軸電圧vα *,vβ *を、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換する。具体的に、α,β/u,v,w変換部114は、式(1−20)により、指令軸電圧vα *,vβ *を指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換して、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を出力する。
Figure 2018102120
(デューティ生成部103)
図1に示すデューティ生成部103は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwを生成する。本実施形態では、デューティ生成部103は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分を、各相のデューティDu,Dv,Dwに変換する。デューティDu,Dv,Dwの生成方法としては、一般的な電圧形PWMインバータに用いられる方法を用いることができる。例えば、デューティDu,Dv,Dwは、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を、直流電源118(図4)の電圧値Vdcの半分の値で除すことにより求めてもよい。この場合、デューティDuは、2×vu */Vdcである。デューティDvは、2×vv */Vdcである。デューティDwは、2×vw */Vdcである。デューティ生成部103は、デューティDu,Dv,Dwを出力する。
(PWMインバータ104)
図1及び図4に示すように、PWMインバータ104は、スイッチング素子119a,119b,119c,119d,119e,119f及び還流ダイオード120a,120b,120c,120d,120e,120fが対になった変換回路、ベースドライバ116、平滑コンデンサ117及び直流電源118を含む。直流電源118は、ダイオードブリッジ等によって整流された出力を表す。
PWMインバータ104は、PWM制御によって3相誘導機102に電圧ベクトルを印加する。具体的には、3相誘導機102への給電は、スイッチング素子119a〜119fを介して、直流電源118から行われる。より具体的には、まず、デューティDu,Dv,Dwがベースドライバ116に入力される。次に、デューティDu,Dv,Dwがスイッチング素子119a〜119fを電気的に駆動するためのドライブ信号に変換される。次に、ドライブ信号に従って各スイッチング素子119a〜119fが動作する。
本実施形態では、PWMインバータ104は、スイッチング素子119a〜119fを用いた3相スイッチング回路である。スイッチング素子119a〜119fとしては、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。
本実施形態の誘導機制御装置100は、PMWインバータ104を用いて、電圧ベクトルを3相誘導機102に印加する。具体的には、誘導機制御装置100は、PMWインバータ104を用いて、前の制御サイクルにおいて特定された現在の制御サイクル用の指令電圧ベクトルを平均値とする電圧ベクトルを3相誘導機102に印加する。
(3相誘導機102)
図1に示す3相誘導機102は、誘導機制御装置100の制御対象である。3相誘導機102は、電動機であってもよく発電機であってもよい。3相誘導機102には、PWMインバータ104によって、電圧ベクトルが印加される。「3相誘導機102に電圧ベクトルが印加される」とは、3相誘導機102における3相交流座標上の3相(U相、V相、W相)の各々に電圧が印加されることを指す。本実施形態では、3相(U相、V相、W相)の各々が、相対的に高電圧を有する高電圧相と、相対的に低電圧を有する低電圧相との2種類から選択されるいずれかとなるように、3相誘導機102が制御される。
本実施形態における3相誘導機102は、かご型誘導機である。
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態によれば、式(1−6)によって、推定トルクTeを特定することができる。式(1−3)、(1−4)及び(1−9)に示すように、指令軸電圧vα *,vβ *を用いて一次磁束ψsを特定し、一次磁束ψs及び仮想電機子反作用磁束l1taを用いて推定正規化二次磁束ψ2nを特定することができる。式(1−10)に示すように、推定トルクTe及び推定正規化二次磁束ψ2nを用いてすべり角速度ωsを特定することができる。そして、式(1−11)に示すように、すべり角速度ωs及び一次磁束ベクトルψsの回転速度ω1fを用いて回転子速度ω2nを特定することができる。このようにすれば、直接トルク制御に基づいた誘導機制御装置において、回転子速度ω2nを特定することが可能となり、速度制御系のシステム構築が可能となる。また、推定正規化二次磁束ψ2nから求めたω2fではなく一次磁束ベクトルψsから求めたω1fを用いて回転子速度ω2nを特定することには、検出電流のノイズの影響を受け難いというメリットがある。
[数式の導出]
以下、一部の数式の導出について説明する。誘導機の一般座標系(より具体的には、任意の速度ωrで回転するγδ一般座標系)での数学モデルは非特許文献1より式(2−1)、(2−2)、(2−3)で表され、ψ2nd=Mnid、ψ2nq=0を考慮すると、dq座標系では式(2−5)、(2−6)、(2−7)のように表せる。また、式(2−4A)及び式(2−4B)の関係が成り立つ。Mは相互インダクタンス、L1は固定子インダクタンス、L2は回転子インダクタンス、Raは固定子抵抗、R2は回転子抵抗、Mnは正規化相互インダクタンス、R2nは正規化回転子抵抗、l1tは固定子総合漏れインダクタンス、W2は回転子逆時定数(回転子時定数の逆数)、ψ2は回転子磁束(二次磁束)、ψ2nは正規化回転子磁束(正規化二次磁束)、vは固定子電圧、iは固定子電流、ω1は固定子磁束回転速度、ω2nは回転子速度、Npは極対数、Tはトルク、Iは2×2単位行列、Jは2×2交代行列であり、D(s,ωr)はD因子であり、sは微分演算子d/dtである。二次磁束ψ2と正規化二次磁束ψ2nとは、振幅が異なるが、方向が同じある。これらは、本質的に二次(ロータ)側に生じる磁束として定義される。
Figure 2018102120
(最大トルク/電流制御への適用)
トルク/電流が最大になるのは、式(2−9)が最大のときであり、id=iqのときである。
Figure 2018102120
(二次銅損を含めた銅損を最小化する制御への適用)
上述のようにid=iqとして最大トルク/電流制御を実施すれば、同一トルクを得るための一次電流を最小にすることができるので、一次側の銅損は最小になる。しかし、誘導機のように、二次電流による二次側の銅損(二次銅損)が存在する場合、トルク/電流(=比率rm)が最大になる動作点と銅損が最小になる動作点とは一致しない(トルク/電流を最大にする場合に比べて、銅損を最小にした方が、高効率となる)。二次銅損を考慮した銅損が最小となるように、誘導機を制御することもできる。すなわち、二次銅損を考慮した銅損の最小化を図るためのd軸電流とq軸電流の関係は、式(2−10)で表される。従って、角度θmをπ/4radの代わりに式(2−11)とすることによって、銅損(一次銅損+二次銅損)が最小になるように制御することができる。
Figure 2018102120
誘導機のトルクTと一次磁束ベクトルの振幅|ψs|との関係式について説明する。一次磁束ベクトルの振幅|ψs|は式(2−12)で計算できる。式(2−7)と式(2−10)を用いて式(2−12)のd軸電流とq軸電流を消去すると、式(2−13)のトルクTと一次磁束の振幅|ψs|との関係式が得られる。式(2−13)のaは式(2−14)で得られる定数である。Tを指令トルクTe *に、|ψs|を指令振幅|ψs *|にそれぞれ置き換えることで、指令トルクTe *と指令振幅|ψs *|との関係式である式(1−13)が導かれる。
Figure 2018102120
式(1−13)及び(2−14)のa及びθmについて、さらに説明する。上述の説明から明らかであるように、式(1−13)は、一次銅損と二次銅損の合計を最小化する制御(銅損最小化制御)のための、指令振幅|ψS *|と指令トルクTe *との関係式である。最大トルク/電流制御は、二次銅損がゼロであるとみなした場合の銅損最小化制御であると言える。二次銅損をゼロとみなすことは、式(2−14)の正規化回転子抵抗R2nをゼロとみなすことに対応する。すなわち、最大トルク/電流制御を行う場合、aを1とし、角度θmを45degとすればよい。
二次銅損をゼロとみなさない場合、正規化回転子抵抗R2nは正の値をとるため、aは1よりも大きい値となり、π/4radよりも大きい角度となる。例えば、正規化回転子抵抗R2nが固定子抵抗Raの5倍である場合、aは√6となり、角度θmは約68degとなる。
(一次磁束と正規化二次磁束の関係)
定常状態においては、式(2−5)に基づいて、一次磁束に関する式(2−15)と、正規化二次磁束に関する式(2−16)とが導かれる。一次磁束と正規化二次磁束との間では式(2−17)の関係が成立する。図5のベクトル図に、この関係を示す。ψsは固定子磁束(一次磁束)である。
Figure 2018102120
式(2−17)及び図5から、一次磁束ψsは正規化二次磁束ψ2nと仮想電機子反作用磁束l1taからなることが分かる。式(2−17)を変形することにより、式(1−9)が導かれる。本実施形態に係る直接トルク制御では、一次磁束推定部108により一次磁束ベクトルを特定する。この一次磁束ベクトルを式(1−9)の右辺に代入することにより、正規化二次磁束ψ2nを特定することができる。
(有効電力推定部を用いた変形例)
上記の実施形態の誘導機制御装置100は、トルク推定部109を有しており、トルク推定部109は推定トルクTeを特定する。変形例では、トルク推定部109に代えて、有効電力推定部(有効電力特定部)が用いられ、有効電力推定部は有効電力を特定する。
この変形例では、有効電力推定部は、検出された固定子電流ベクトルia(軸電流iα,iβ)と、現在の制御サイクルにおいて推定された磁束ベクトルである推定一次磁束ψα,ψβとから、現在の制御サイクルにおける有効電力を推定する(推定有効電力Peを特定する)。具体的には、トルク推定部109は、式(1−21A)を用いて、推定有効電力Peを求める。また、トルク推定部109は、式(1−21B)を用いて推定有効電力Peを求めるものであってもよい。式(1−21B)において、指令電圧ベクトル(指令軸電圧vαβ *)に代えて、検出された3相誘導機102の電圧ベクトル(2相電圧vαβ)を用いることもできる。すなわち、有効電力推定部は、3相誘導機102に印加されている電圧ベクトルの検出値を3相2相変換させて得た2相電圧(2相電圧vαβ)を用いて推定有効電力Peを特定するものであってもよい。
Figure 2018102120
この変形例では、一次磁束推定部108、二次磁束推定部115及び有効電力推定部は、磁束有効電力成分特定ユニット150を構成している。
この変形例では、回転子速度推定部129は、式(1−10)に代えて、式(1−22)を用いる。
Figure 2018102120
トルク推定部109に代えて有効電力推定部を用いる技術は、後述の実施形態2〜4にも適用され得る。また、詳細は省略するが、有効電力成分として、有効電力又はトルクに代えて、有効電力若しくはトルクに比例する値を用いることもできる。つまり、磁束有効電力成分特定ユニット150は、有効電力又はトルクを特定する代わりに、有効電力若しくはトルクに比例する値を特定するものであってもよい。例えば、トルクのX倍の値を有効電力成分として用いる場合、式(1−10)のトルクTeをその値に置き換えつつ、分母をX倍すればよい。有効電力のY倍の値を有効電力成分として用いる場合、式(1−22)の有効電力Peをその値に置き換えつつ、分母をY倍すればよい。この点は、後述の実施形態2〜4についても同様である。なお、以下では、トルク推定部(トルク特定部)109、有効電力推定部(有効電力特定部)又はトルク若しくは有効電力に比例する値を特定する推定部(特定部)を、有効電力成分特定部と称することがある。
(実施形態2)
以下、実施形態2の誘導機制御装置200について説明する。なお、実施形態2では、実施形態1と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図6に示すように、本実施形態の誘導機制御部201は、位相調整部151を有している。
(位相調整部151)
位相調整部151は、式(3−1)に従って推定一次磁束ψα,ψβの位相を△θb遅らせて、仮想的な磁束(第2の一次磁束ベクトル)ψα_b,ψβ_bを得る。式(3−1)のψαβは、推定一次磁束ψα,ψβをベクトル表記により表したものである。ψαβは、ψsと同じである。式(3−1)のψαβ_bは、ψαβの位相を△θb遅らせたものである。以下では、ψαβ_bのα軸成分をψα_bと記載し、ψαβ_bのβ軸成分をψβ_bと記載することがある。
Figure 2018102120
実施形態2では、トルク推定部109は、仮想的な磁束ψαβ_bを用いてトルクを推定する。つまり、トルク推定部109は、式(1−6)のψα及びψβをψα_b及びψβ_bに変更した式すなわち式(3−2)に従って動作する。二次磁束推定部115は、仮想的な磁束ψαβ_bを用いて推定正規化二次磁束ψ2nを特定する。つまり、二次磁束推定部115は、式(1−9)のψα及びψβをψα_b及びψβ_bに変更した式すなわち式(3−3)に従って動作する。
Figure 2018102120
本実施形態では、一次磁束推定部108、位相調整部151、二次磁束推定部115及びトルク推定部109は、磁束有効電力成分特定ユニット250を構成している。トルク推定部109が有効電力推定部に変更された磁束有効電力成分特定ユニット250も構成され得る。その場合、有効電力推定部は、式(1−21A)のψα及びψβをψα_b及びψβ_bに変更した式に従って動作し得る。また、その場合、有効電力推定部は、式(1−21B)のvα *及びvβ *をvα_b *及びvβ_b *に変更した式に従って動作するものであってもよい。ここで、仮想的な電圧vαβ_b *は、電圧ベクトル(指令電圧ベクトル)vαβ *の位相を△θb遅らせたベクトルであり、vα_b *及びvβ_b *は、それぞれvαβ_b *のα成分及びβ成分である。vαβ *の位相を遅らせたvαβ_b *を特定する第2位相調整部を、位相調整部(第1位相調整部)151とは別途設けることができる。また、詳細は省略するが、トルク推定部109がトルク若しくは有効電力に比例する値を特定する推定部に変更された磁束有効電力成分特定ユニット250も構成され得る。その場合にも、位相を△θb遅らせる技術は採用され得る。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、トルク推定部109及び二次磁束推定部115において、推定一次磁束ψαβではなく仮想的な磁束ψαβ_bが用いられる。これにより、回転子速度ω2nが高い場合(離散化誤差の影響が大きくなる高速回転時)であっても、制御に用いられる磁束を電流検出のタイミングに適合させることができる。このため、より正確に誘導機のトルク(又は有効電力等)及び正規化二次磁束ベクトルを推定でき、より正確にすべり角速度を推定でき、より正確に回転子速度を推定できる。また、より正確なトルク制御を行うことができる。
なお、有効電力成分特定部及び二次磁束推定部115の一方で推定一次磁束ψαβを用い、他方で仮想的な磁束ψαβ_bを用いることもできる。また、二次磁束推定部115で推定一次磁束ψαβを用い、有効電力成分特定部(有効電力特定部)において仮想的な電圧vαβ_b *を用いることもできる。これらの点は、後述する実施形態3でも同様であり、実施形態9及び10でも同様である。
(本実施形態の技術説明)
本実施形態の誘導機制御部201は、離散系で制御がなされていることに由来する誤差を小さくすることに適している。以下、この点について説明する。
誘導機制御部201は、図7に示すタイムチャートに従って動作する。誘導機制御部201は、周期Tsの各制御サイクル[k−1]、[k]、[k+1]・・・用に1つの指令電圧ベクトルを特定する(kは整数である)。タイムチャートの1段目の黒丸は、検出された固定子電流ベクトルiaの振幅を表す。2段目は、次の制御サイクルにおける指令電圧ベクトルを特定する制御を表す。3段目の線分は、指令電圧ベクトルの振幅を表す。4段目の三角波は、PWMインバータ104の動作を規定するPWMキャリア信号(三角波カウンタ)を表す。なお、検出された固定子電流ベクトルiaの振幅は、(iα 2+iβ 21/2である。指令電圧ベクトルの振幅は、(vα *2+vβ *21/2である。
制御サイクル[k+1]の開始時点において、固定子電流ベクトルiaが検出される。制御サイクル[k]において制御サイクル[k+1]用の指令電圧ベクトルが特定される。制御サイクル[k+1]用の指令電圧ベクトルvα *,vβ *は、制御サイクル[k+1]において3相誘導機102に印加される電圧ベクトルを規定するベクトルを意味する。この例では、制御サイクル[k+1]において、制御サイクル[k+1]用の指令電圧ベクトルvα *,vβ *を平均値とする電圧ベクトルが3相誘導機102に印加されるように、PWMインバータ104が動作する。この例では、PWMキャリア信号の周期は、制御サイクルの周期Tsと同じである。
図7に示す離散系の制御を行う場合、各制御サイクル用の指令電圧ベクトルを、各制御サイクルの中心時点(基準時点;図7において縦方向に延びる点線に対応)の指令電圧ベクトルと考えることができる。このように考えたとき、制御サイクル[k]において特定された制御サイクル[k+1]の基準時点における指令電圧ベクトルから、制御サイクル[k+1]における推定一次磁束ψsが特定されると考えることができる。制御サイクル[k+1]の基準時点における指令電圧ベクトルから特定されるため、制御サイクル[k+1]における推定一次磁束は、制御サイクル[k+1]の基準時点において実際に誘導機に印加されている磁束ベクトルを推定したものと考えることができる。しかしながら、制御サイクル[k+1]における固定子電流ベクトルia(軸電流iα,iβ)は、電流検出時点において実際に誘導機を流れる固定子電流ベクトルに対応するものである。図7の例では、電流検出時点は、制御サイクル[k+1]の基準時点ではなく、制御サイクル[k+1]の開始時点である。これらの時点には、半周期分のずれ(1/2×Tsのずれ)がある。このため、図8に示すように、固定子電流ベクトルiaの位相は、基準時点における固定子電流ベクトルia’の位相よりもωTs/2rad遅れている(ωは、固定子電流ベクトルの回転速度(単位:rad/秒)であり、一次磁束ベクトルの回転速度ω1fと同じである)。つまり、制御サイクル[k+1]における推定一次磁束ψsの位相に対する固定子電流ベクトルiaの位相の進み角は、実際の誘導機における進み角よりもωTs/2rad小さい。このことは、制御サイクル[k+1]における推定一次磁束ψs及び固定子電流ベクトルia(軸電流iα,iβ)を用いても、トルク及び推定正規化二次磁束ψ2nは厳密な意味では正確には特定されないことを意味する(式(1−6)及び(1−9)参照)。この不正確さは、誘導機の電気角速度が高いとき(つまり、回転数が高いとき)に顕在化する。
また、図を用いた説明は省略するが、制御サイクルの開始時点において検出された固定子電流ベクトルが、該開始時点よりも前の時点において誘導機を流れる固定子電流ベクトルを表すと考えるべき場合もある。例えば、電流センサを構成するアナログ回路における位相遅れを無視できない場合がこの場合に該当する。また、制御サイクルの開始時点以外の時点において固定子電流ベクトルが検出される場合にも、同様の問題が生じうる。
これを考慮し、実施形態2では、位相調整部151が、推定一次磁束ψα,ψβの位相を遅らせることによって仮想的な磁束ψα_b,ψβ_bを特定する。そして、トルク推定部109及び二次磁束推定部115は、式(1−6)及び式(1−9)のψα及びψβのψα_b及びψβ_bに変更した式を用いて、推定トルクTe及び正規化二次磁束ψ2nを特定する。位相の調整量△θbを適切に設定することにより、適切に仮想的な磁束ψα_b,ψβ_bを特定することができ、推定トルクTe及び正規化二次磁束ψ2nが正確に特定される。
上述の説明から理解されるように、図7の例では、推定一次磁束ψαβは、現在の制御サイクルの中心時点における3相誘導機102の磁束ベクトルに対応すると考えることができる。固定子電流ベクトルia(軸電流iα,iβ)は、現在の制御サイクルの中心時点よりも期間te前の時点における3相誘導機102の固定子電流ベクトル(期間te前の時点において3相誘導機102を流れる固定子電流ベクトル)を表すものである、と表現することができる。ただし、期間teは非ゼロである。仮想的な磁束ψαβ_bの位相に対する固定子電流ベクトルの位相の進み角は、推定一次磁束ψαβの位相に対する固定子電流ベクトルの位相の進み角よりも角度Δθb大きい。角度Δθbは、ゼロよりも大きく、固定子電流ベクトルの位相の変化速度と期間teとの積の2倍よりも小さい。この範囲にある角度Δθbは、実際の3相誘導機102における一次磁束ベクトルの位相に対する固定子電流ベクトルの進み角を正確に反映させたものとすることに適している。角度Δθbを、固定子電流ベクトルの位相の変化速度と期間teとの積とすることもできる。このようにすることは、トルクと正規化二次磁束の推定を正確に行い、結果的に、回転子速度推定部129におけるすべり角速度ωsを特定する観点から特に有利である。なお、後述の実施形態3のように負荷電流ベクトルを用いた制御を行う場合には、固定子電流ベクトルの位相の変化速度に代えて、負荷電流ベクトルの位相の変化速度を用いることもできる。
なお、期間teは、誘導機制御装置の仕様から定まる既知の定数である。場合によっては、誘導機制御装置の試運転を行い、期間teを特定することも可能である。一例では、期間teは、現在の制御サイクルの中心時点と固定子電流ベクトルiaの検出時点(固定子電流ベクトルの検出値が得られる時点)との時間差である。固定子電流ベクトルの位相の変化速度は、3相誘導機102の一次磁束の回転速度ω1fと同じである。固定子電流ベクトルの位相の変化速度と期間teとを用いれば、ゼロよりも大きく固定子電流ベクトルの位相の変化速度と期間teとの積の2倍よりも小さいΔθb(又は、固定子電流ベクトルの位相の変化速度と期間teとの積であるΔθb)を容易に計算することができる。
図7の例では、期間teは、周期Tsの1/2倍である。ただし、期間teはこれに限定されない。例えば、期間teが、ゼロよりも大きく周期Tsの1/2倍よりも小さいこともあり得る。期間teは、周期Tsの1/2倍よりも大きく周期Tsの3/2倍以下であり得る。また、シングルシャント方式を用いる場合等には、期間teが、周期Tsの−1/2倍よりも大きくゼロよりも小さいこともあり得る。
周期Tsを用いて角度Δθbの範囲の例を表すこともできる。一例では、角度Δθbは、ゼロよりも大きく固定子電流ベクトルの位相の変化速度と周期Tsとの積の1/2倍以下の範囲にある。別例では、角度Δθbは、固定子電流ベクトルの位相の変化速度と周期Tsとの積の1/2倍よりも大きく固定子電流ベクトルの位相の変化速度と周期Tsとの積の3/2倍以下の範囲にある。更なる別例では、角度Δθbは、固定子電流ベクトルの位相の変化速度と周期Tsとの積の−1/2倍よりも大きくゼロよりも小さい範囲にある。
本実施形態では、固定子電流ベクトルの位相の変化速度の絶対値が大きければ大きいほど、角度Δθbの絶対値を大きくする。このように角度Δθbを設定することは、3相誘導機102の回転数が低い場合と高い場合の両方において、トルクと正規化二次磁束の推定を正確に行うことに適している。
角度Δθbの範囲及び期間teの範囲に関する上述の説明は、仮想的な磁束ψαβ_bのみならず、仮想的な電圧vαβ_b *(vα_b *及びvβ_b *)についても適用される。
(実施形態3)
以下、実施形態3の誘導機制御装置300について説明する。なお、実施形態3では、実施形態2と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図9に示すように、本実施形態の誘導機制御部301は、負荷電流特定部152を有している。
(負荷電流特定部152)
負荷電流特定部152は、検出された固定子電流ベクトルia(軸電流iαβ)と、指令電圧ベクトル(指令軸電圧)vαβ *と、鉄損抵抗Rcと、を用いて、負荷電流ベクトルiLαβを特定する。負荷電流ベクトルiLαβは、3相誘導機102の固定子から回転子へ伝達されるエネルギーに対する固定子鉄損の割合に応じて変化するベクトルである。
具体的には、負荷電流特定部152は、式(4−1)及び(4−2)を用いて、負荷電流ベクトルiLαβ(負荷電流i,i)を特定する。式(4−1)及び(4−2)におけるRaは、3相誘導機102の1相当たりの固定子抵抗である。Rcは、3相誘導機102の1相あたりの鉄損抵抗である。式(4−3)に示すように、鉄損抵抗は、一次磁束の回転速度ω1fに依存した式で表される。本実施形態では、鉄損抵抗Rcは、一次磁束ベクトルの角速度が大きくなればなるほど大きくなる。式(4−3)におけるRc0は、渦電流損を示す調整用の抵抗値である。Rc1は、ヒステリシス損を示す調整用の抵抗値である。これらの抵抗値Rc0及びRc1は、鉄損抵抗を同定する際に用いられる。式(4−1)〜(4−3)から理解されるように、本実施形態の負荷電流特定部152は、一次磁束ベクトルの回転速度ω1fに応じて変化する鉄損抵抗Rcと、固定子電流ベクトルiαβと、指令電圧ベクトル(指令軸電圧vαβ *)とから、負荷電流ベクトルiLαβを特定する。
Figure 2018102120
一次磁束ベクトルの回転速度に代えて、同角速度と同じである別の物理量の角速度を用いることもできる。要するに、鉄損抵抗は、推定された一次磁束ベクトルの角速度と同じである基準速度を用いて特定され得る。基準角速度としては、一次磁束ベクトルの回転速度、推定正規化二次磁束ψ2nの回転速度、指令電圧ベクトルの回転速度及び固定子電流ベクトルiαβの回転速度が例示される。本実施形態の負荷電流ベクトルiLαβは、基準角速度、固定子電流ベクトルiαβ及び指令電圧ベクトル(指令軸電圧vαβ *)の関数である。
負荷電流ベクトルiLαβの特定の際に、指令電圧ベクトル(指令軸電圧vαβ *)に代えて、検出された3相誘導機102の電圧ベクトル(2相電圧vαβ)を用いることもできる。すなわち、式(4−1)の「vα *」を「vα」に置き換え、式(4−2)の「vβ *」を「vβ」に置き換えることができる。具体的には、負荷電流特定部152は、3相誘導機102に印加されている電圧ベクトルの検出値を3相2相変換させて得た2相電圧(2相電圧vαβ)を用いて負荷電流iLαβを特定するものであってもよい。
実施形態3では、トルク推定部109は、負荷電流ベクトルiLαβを用いてトルクを推定する。つまり、トルク推定部109は、式(3−2)のiα及びiβをi及びiに変更した式すなわち式(4−4)に従って動作する。二次磁束推定部115は、負荷電流ベクトルiLαβを用いて推定正規化二次磁束ψ2nを特定する。つまり、二次磁束推定部115は、式(3−3)のiα及びiβをi及びiに変更した式すなわち式(4−5)に従って動作する。
Figure 2018102120
本実施形態では、一次磁束推定部108、位相調整部151、負荷電流特定部152、二次磁束推定部115及びトルク推定部109は、磁束有効電力成分特定ユニット350を構成している。トルク推定部109が有効電力推定部に変更された磁束有効電力成分特定ユニット350も構成され得る。その場合、有効電力推定部は、式(1−21A)のψα及びψβをψα_b及びψβ_bに変更しさらにiα及びiβをi及びiに変更した式に従って動作し得る。また、その場合、有効電力推定部は、式(1−21B)のvα *及びvβ *をvα_b *及びvβ_b *に変更しさらにiα及びiβをi及びiに変更した式に従って動作するものであってもよい。また、詳細は省略するが、トルク推定部109がトルク若しくは有効電力に比例する値を特定する推定部に変更された磁束有効電力成分特定ユニット350も構成され得る。その場合にも、位相を△θb遅らせる技術及びi及びiを用いる技術は採用され得る。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、トルク推定部109及び二次磁束推定部115において、固定子電流ベクトルiαβではなく負荷電流ベクトルiLαβが用いられる。これにより、回転子速度ω2nが高く鉄損の影響が大きくなる状況であっても、鉄損による影響を避けつつ誘導機のトルク(又は有効電力)及び正規化二次磁束ベクトルを推定できる。このため、より正確に誘導機のトルク(又は有効電力)及び正規化二次磁束ベクトルを推定でき、より正確にすべり角速度を推定でき、より正確に回転子速度を推定できる。また、より正確なトルク制御を行うことができる。
なお、有効電力成分特定部及び二次磁束推定部115の一方で固定子電流ベクトルiαβを用い、他方で負荷電流ベクトルiLαβを用いることもできる。この点は、後述する実施形態4でも同様であり、実施形態10及び11でも同様である。
(本実施形態の技術説明)
以下、負荷電流について、更に説明する。3相誘導機102の特性は、図10に示す等価回路により説明され得る。固定子損失回路653は、固定子の損失を表現するものである。固定子負荷回路654は、固定子側からみた損失のない負荷を表現するものである。vαβは、3相誘導機102に印加される電圧ベクトル(2相電圧)である。iαβは3相誘導機102の固定子を流れる電流(回転子電流)である。iRαβは、鉄損抵抗Rcを流れる等価的な電流(鉄損電流)である。vLαβは、負荷に印加される負荷電圧である。固定子損失回路653及び固定子負荷回路654から構成されるベクトル等価回路について、式(5−1)〜(5−3)が成立する。
Figure 2018102120
式(5−1)〜(5−3)から、式(4−1)及び(4−2)が導かれる。また、詳細な説明は省略するが、式(4−3)に示すように鉄損抵抗RcをRc0、Rc1及びω1fを用いて表現することは、渦電流損は一次磁束ベクトル(鎖交磁束ベクトル)の振幅の2乗と角速度の2乗の積に比例し、ヒステリシス損は一次磁束ベクトルの振幅の2乗と角速度の積に比例するという理論とも整合する。なお、当業者であれば、理論が制御に適切に反映されるようにRc0及びRc1を決定することができる。
誘導機においては、固定子と回転子は電磁的に結合している。固定子に印加された電気エネルギーは、この電磁結合により回転子に伝達される。図10を用いて説明すると、固定子負荷回路654に流れ込む負荷電流iLαβが、回転子へのエネルギー伝達に寄与する。本発明者らの検討によれば、固定子電流iαβを鉄損電流iRαβと負荷電流iLαβとに分離し、負荷電流iLαβを用いて内積演算をすれば、回転子へのエネルギー伝達に寄与しない鉄損の影響を避けつつ、精度のよい制御が可能となる。
負荷電流及びこれに関連する事項の理解には、特許文献2が役立つので参照されたい。
なお、負荷電流iLαβを用いて指令軸電圧vαβ *を特定することもできる。しかし、本実施形態の指令電圧特定部107は、2相電流iαβを用いて指令軸電圧vαβ *を特定する。図10、式(1−18)及び(1−19)から理解されるように、このようにすれば、2相電圧vαβ *を、2相電流iαβ及び固定子抵抗Raに基づく電圧降下と、磁束の時間微分とにより容易に特定できるというメリットがある。
(実施形態4)
図11に示すように、実施形態3の位相調整部151を省略することもできる。図11に示す実施形態4に係る誘導機制御装置400の誘導機制御部401では、トルク推定部109は、式(4−4)のψα_b及びψβ_bをψα及びψβに変更した式すなわち式(4−6)を用いて、推定トルクTeを特定する。二次磁束推定部115は、式(4−5)のψα_b及びψβ_bをψα及びψβに変更した式すなわち式(4−7)を用いて、正規化二次磁束ψ2nを特定する。
Figure 2018102120
実施形態4では、一次磁束推定部108、負荷電流特定部152、二次磁束推定部115及びトルク推定部109は、磁束有効電力成分特定ユニット450を構成している。トルク推定部109が有効電力推定部に変更された磁束有効電力成分特定ユニット450も構成され得る。その場合、有効電力推定部は、式(1−21A)のiα及びiβをi及びiに変更した式に従って動作し得る。また、その場合、有効電力推定部は、式(1−21B)のiα及びiβをi及びiに変更した式に従って動作するものであってもよい。また、詳細は省略するが、トルク推定部109がトルク若しくは有効電力に比例する値を特定する推定部に変更された磁束有効電力成分特定ユニット450も構成され得る。
(実施形態5−11及びその変形例に関する本発明者らによる知見)
特許文献3には、回転機の磁束ベクトルを制御する技術が記載されている。特許文献3には、特許文献3の技術によれば回転機の速度が低い場合の制御性能低下が防止され得ると記載されている。
具体的には、特許文献3の技術では、指令速度を用いて、回転機の磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定する。特定された移動量を用いて、指令磁束ベクトルの位相を特定する。この位相を用いて、指令磁束ベクトルを特定する。そして、指令磁束ベクトルを用いて、回転機を制御する。本明細書では、このような制御を、簡易磁束ベクトル制御と称することがある。
ところで、誘導機には、すべり角速度がある。すべり角速度は、[すべり角速度]=[一次磁束ベクトルの回転速度]−[回転子速度]で与えられる。すべり角速度は、負荷トルクによって影響されるものであり、定数ではない。
本発明者らの検討によれば、特許文献3の技術には、回転機として誘導機を用いる場合において改善の余地がある。具体的には、この場合には、上記の移動量を、誘導機のすべり角速度を用いて特定することにより、誘導機の回転子速度の制御精度が改善される。
非特許文献1には、誘導機の電流ベクトルを制御しつつ誘導機の回転子速度を推定する技術が記載されている。この技術によれば、正規化二次磁束ベクトルをオブザーバで推定することで、回転子速度を求め、すべり角速度を推定できる。しかし、この技術は、電流ベクトルを制御しない場合には利用できない。このため、この技術は、特許文献3の簡易磁束ベクトル制御に適用できない。
そこで、実施形態5−11及びその変形例は、特に、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合において、誘導機のすべり角速度を推定可能な技術を提供することを目的とする。
実施形態5−11及びその変形例に係る技術によれば、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合において、誘導機のすべり角速度を推定できる。また、簡易磁束ベクトル制御により誘導機を駆動する場合において、誘導機の回転子速度を適切に制御することができる。
(実施形態5)
実施形態5の誘導機制御装置500は、簡易磁束ベクトル制御により回転子速度を制御できるように構成されている。以下、実施形態5の誘導機制御装置500について説明する。なお、実施形態5では、実施形態1と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図12に示すように、本実施形態の誘導機制御部501は、実施形態1の速度・位相推定部110、回転子速度推定部129、指令トルク特定部121、指令振幅特定部122、トルク偏差特定部111及び指令位相特定部127を有しない。その代わりに、誘導機制御部501は、指令振幅特定部522と、すべり角速度推定部(すべり角速度特定部)529と、位相推定部(位相特定部)510と、指令位相特定部527と、を有している。
誘導機制御部501では、u,w/α,β変換部106によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。一次磁束推定部108によって、指令軸電圧vα *,vβ *及び軸電流iα,iβから、3相誘導機102の一次磁束ベクトルの推定値である推定一次磁束ψs(ψα,ψβ)が特定される。位相推定部510によって、推定一次磁束ψα,ψβから、3相誘導機102の一次磁束ベクトルの位相が推定される(推定位相θsが特定される)。トルク推定部109によって、推定一次磁束ψα,ψβ及び軸電流iα,iβから、3相誘導機102のトルクが推定される(推定トルクTeが特定される)。二次磁束推定部115によって、推定一次磁束ψα,ψβ及び軸電流iα,iβから、正規化二次磁束ベクトルの推定値である推定正規化二次磁束ψ2n(ψ2nα,ψ2nβ)が特定される。すべり角速度推定部529によって、推定トルクTe及び推定正規化二次磁束ψ2nα,ψ2nβからすべり角速度が推定される(推定すべり角速度ωsが特定される)。指令振幅特定部522によって、所望の磁束振幅となるような指令振幅|ψs *|が特定される。指令位相特定部527によって、3相誘導機102の回転子速度の指令速度ωref *、推定すべり角速度ωs、推定トルクTe及び推定位相θsから、指令位相θs *が特定される。指令磁束特定部112によって、指令位相θs *及び指令振幅|ψs *|から、指令磁束ベクトルψs *(ψα *,ψβ *)が特定される。α軸磁束偏差特定部113aによって、α軸指令磁束ψα *と推定一次磁束ψαとの偏差(磁束偏差Δψα=ψα *−ψα)が求められる。β軸磁束偏差特定部113bによって、β軸指令磁束ψβ *と推定磁束ψβとの偏差(磁束偏差Δψβ=ψβ *−ψβ)が求められる。指令電圧特定部107によって、磁束偏差Δψα,Δψβ及び軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα *,vβ *が特定される。α,β/u,v,w変換部114によって、指令軸電圧vα *,vβ *が、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。
このような制御(フィードバック制御)により、3相誘導機102の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルψs *に追従する(3相誘導機102の一次磁束ベクトルの振幅が指令振幅|ψs *|に追従する)ように、PWMインバータ104を介して3相誘導機102に電圧ベクトルが印加される。その結果、3相誘導機102の回転子速度ω2nが指令速度ωref *に追従する。
本実施形態の制御に関する各構成要素について、以下で説明する。
(位相推定部510)
位相推定部510は、推定一次磁束ψs(推定一次磁束ψα,ψβ)から一次磁束ベクトルの位相を推定する(推定位相θsを特定する)。具体的に、位相推定部510は、上述の式(1−7)により、推定位相θsを求める。位相推定部510は、速度・位相推定部110の位相推定部と同様に動作する。
(すべり角速度推定部529)
すべり角速度推定部529は、推定正規化二次磁束ψ2nと、推定トルクTeとから、3相誘導機102の回転子のすべり角速度を推定する(推定すべり角速度ωsを特定する)。具体的には、すべり角速度推定部529は、上述の式(1−10)を用いて、すべり角速度ωsを求める。すべり角速度推定部529は、速度・位相推定部110のすべり角速度推定部と同様に動作する。
(指令振幅特定部522)
指令振幅特定部522は、推定トルクTeを用いて指令振幅|ψs *|を特定する。具体的には、指令振幅特定部522は、3相誘導機102の運転状態に合わせて指令振幅|ψs *|を特定する。例えば、指令振幅|ψs *|は、上述の式(1−13)の指令トルクTe *を推定トルクTeに置き換えた式を用いて特定できる。具体的に、この置き換え後の式でa=1とすれば、推定トルクTeから、最大トルク/電流制御を実行するための指令振幅|ψs *|を特定できる。また、この置き換え後の式のaを1以外の適切値に設定することによって、推定トルクTeから、3相誘導機102における電力損失PLを低減させるのに適した指令振幅|ψs *|を特定することもできる。当然ながら、変換テーブルを作成することもできる。
(指令位相特定部527a)
図13Aに、指令位相特定部527の一例である指令位相特定部527aを示す。指令位相特定部527aは、指令速度ωref *と、すべり角速度ωsと、推定トルクTeと、推定位相θsとから、指令位相θs *を特定する。図13Aに示すように、指令位相特定部527aは、すべり加算部540と、乗算部541と、ハイパスフィルタ544と、符号反転部545と、PI補償部546と、移動量加算部542と、位相加算部543とを有している。
(すべり加算部540)
すべり加算部540は、指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算することによって一次磁束の指令角速度(指令一次角速度)ω1f *求める。
(乗算部541)
乗算部541は、指令一次角速度ω1f *に制御周期Tsを乗ずることによって移動量ω1f *sを求める。
(ハイパスフィルタ544)
ハイパスフィルタ544は、推定トルクTeの振動成分(トルク振動成分)THのみを特定(抽出)する。
(符号反転部545)
符号反転部545は、トルク振動成分THに−1を乗ずることによって振動成分−THを求める。
ハイパスフィルタ544及び符号反転部545の動作は、式(6−1)によって表現される。gはカットオフ周波数であり、単位は[rad/s]である。sはラプラス演算子である。
Figure 2018102120
(PI補償部546)
PI補償部546は、振動成分−THを取得し、これがゼロとなるように補正量Δω1f *sを特定する。具体的には、式(6−2)に示すように、振動成分−THを入力とした比例・積分演算を実施することにより補正量Δω1f *sを求める。
Figure 2018102120
(移動量加算部542)
移動量加算部542は、補正量Δω1f *sを用いて移動量ω1f *sを補正する。具体的には、移動量ω1f *sに補正量Δω1f *sを加算することによって、補正された移動量Δθを求める。
(位相加算演算部543)
位相加算部543は、移動量Δθと推定位相θsを加算することで、指令位相θs *を求める。
まとめると、指令位相特定部527aは、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算したものである指令一次角速度ω1f *と、推定トルクTeと、用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、指令位相特定部527aは、特定された移動量Δθと、推定位相θsと、を用いて、指令位相θs *を特定する。
このように、誘導機制御部101等と同様、誘導機制御部501は、誘導機制御部501で特定された3相誘導機102のすべり角速度を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、誘導機制御部501は、特定された移動量Δθを用いて、指令磁束ベクトルの位相である指令位相θs *を特定する。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、推定された一次磁束ベクトルと、電流ベクトルとから、有効電力成分(この例ではトルク)を推定する。推定された有効電力成分と、二次磁束成分とから、すべり角速度ωsを推定する。回転子速度の指令速度ωref *に推定されたすべり角速度ωsを加算することにより、指令一次角速度ω1f *を求める。指令一次角速度ω1f *を用いて移動量Δθを特定する。移動量Δθを用いて、指令磁束ベクトルψs *を特定する。指令磁束ベクトルψs *に一致するように、一次磁束ベクトルを制御する。一次磁束ベクトルが推定される。このような動作が繰り返される。このようにすれば、3相誘導機102の負荷が大きく、一次磁束角速度と回転子速度が大きく乖離した場合においても、指令速度ωref *と回転子速度を精度よく一致させることが可能となる。また、指令一次角速度ω1f *と一次磁束角速度を精度よく一致させることが可能となる。本実施形態は、誘導機を所望の回転速度で駆動する観点から有利である。
(有効電力推定部を用いた変形例)
実施形態5の変形例では、トルク推定部109に代えて、実施形態1の変形例で説明した有効電力推定部が用いられる。この変形例では、一次磁束推定部108、二次磁束推定部115及び有効電力推定部は、磁束有効電力成分特定ユニット150を構成している。この変形例では、すべり角速度推定部529は、式(1−10)に代えて、式(1−22)を用いる。
トルク推定部109に代えて有効電力推定部を用いる技術は、後述の変形例及び実施形態6〜11にも適用され得る。また、先の実施形態と同様、有効電力成分として、有効電力又はトルクに代えて、有効電力若しくはトルクに比例する値を用いることもできる。つまり、磁束有効電力成分特定ユニット150は、有効電力又はトルクを特定する代わりに、有効電力若しくはトルクに比例する値を特定するものであってもよい。この点は、後述の変形例及び実施形態6〜11についても同様である。
(指令位相特定部527の第1の変形例)
図13Aの指令位相特定部527aに代えて、図13Bに示す指令位相特定部527bを用いてもよい。指令位相特定部527bは、指令速度ωref *と、すべり角速度ωsと、推定トルクTeと、推定位相θsとから、指令位相θs *を特定する。図13Bに示すように、指令位相特定部527bは、指令位相特定部527aのハイパスフィルタ544及び符号反転部545に代えて、ローパスフィルタ548及び減算部549を有している。
(ローパスフィルタ548)
ローパスフィルタ548は、推定トルクTeから定常成分TLを抽出する。
(減算部549)
減算部549は、定常成分TLから推定トルクTeを減じることにより、振動成分−THを求める。
まとめると、指令位相特定部527bは、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算したものである指令一次角速度ω1f *と、推定トルクTeと、を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、指令位相特定部527bは、特定された移動量Δθと、推定位相θsと、を用いて、指令位相θs *を特定する。
第1の変形例では、指令位相特定部527bにおいて、振動成分−TH(誘導機トルクの振動成分THに−1を乗じたもの)を推定する。図13A及び13Bから理解されるように、図13Aの指令位相特定部527aの出力と13Bの指令位相特定部527bの出力は同じである。従って、指令位相特定部527bによれば、位相特定部527aと同じ効果が得られる。
(指令位相特定部527の第2の変形例)
図13Bの指令位相特定部527bに代えて、図13Cに示す指令位相特定部527cを用いてもよい。指令位相特定部527cは、指令速度ωref *と、すべり角速度ωsと、推定トルクTeと、推定位相θsとから、指令位相θs *を特定する。図13Cに示すように、指令位相特定部527cは、ローパスフィルタ548と減算部549との間にトルクリミッタ550が設けられている点で、指令位相特定部527bとは相違する。
(トルクリミッタ550)
トルクリミッタ550は、式(6−3)及び(6−4)を用いて、トルク制限値Tlimを求める。定常成分TLがトルク制限値Tlim以下である場合、トルクリミッタ550は、定常成分TLを減算部549に与える。この場合、指令位相特定部527cで特定される指令位相θs *は、指令位相特定部527bで特定される指令位相θs *と同じとなる。一方、定常成分TLがトルク制限値Tlimよりも大きい場合、トルクリミッタ550は、トルク制限値Tlimを減算部549に与える。Iamは電流制限値を意味する。第2の変形例では、電流制限値Iamは、固定値である。Pnは、3相誘導機102の極対数である。電流制限値Iam及びトルク制限値Tlimの詳細については、非特許文献3を参照されたい。
Figure 2018102120
まとめると、指令位相特定部527cは、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算したものである指令一次角速度ω1f *と、推定トルクTeと、を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、指令位相特定部527cは、特定された移動量Δθと、推定位相θsと、を用いて、指令位相θs *を特定する。
本変形例によれば、誘導機トルクが制限トルクTlimを超えないようにする構成を、容易に実現することができる。
(指令位相特定部527の第3の変形例)
図13Aの指令位相特定部527aに代えて、図13Dに示す指令位相特定部527dを用いてもよい。指令位相特定部527dは、指令速度ωref *と、すべり角速度ωsと、推定トルクTeと、推定位相θsとから、指令位相θs *を特定する。図13Dに示すように、指令位相特定部527dは、乗算部541、符号反転部545、PI補償部546及び移動量加算部542を有さない。その代わりに、指令位相特定部527dは、速度偏差演算部552、乗算部553及びゲイン乗算部554を有している。
(ゲイン乗算部554)
ゲイン乗算部554は、トルク振動成分THにゲインK1を乗じて速度振動成分K1Hを特定する。
ハイパスフィルタ544及びゲイン乗算部554の動作は、式(6−5)によって表現される。gはカットオフ周波数であり、単位は[rad/s]である。sはラプラス演算子である。
Figure 2018102120
(速度偏差演算部552)
速度偏差演算部552は、指令一次角速度ω1f *と速度振動成分K1Hの速度偏差(補正された指令一次角速度)ω1f *−K1Hを演算する。
(乗算部553)
乗算部553は、速度偏差ω1f *−K1Hに制御周期TSを乗ずることによって移動量Δθを求める。
まとめると、指令位相特定部527dは、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算したものである指令一次角速度ω1f *と、推定トルクTeと、を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、指令位相特定部527dは、特定された移動量Δθと、推定位相θsと、を用いて、指令位相θs *を特定する。
図13D及び図13Aから理解されるように、指令位相特定部527dの動作と指令位相特定部527aの動作とはよく似ている。ゲイン乗算部554でトルク振動成分THにゲインK1を乗じ、速度偏差演算部552で−1を乗じ、乗算部553で制御周期TSを乗じて得られる演算結果(図13D)と、符号反転部545でトルク振動成分THに−1を乗じ、PI補償部546においてその機能一部として比例制御を行って得られる演算結果(図13A)と、は対応するためである。ただし、指令位相特定部527aでは振動成分−THを入力とした積分制御(PI補償部546の機能の一部)を行う点が、指令位相特定部527dと相違する。なお、指令位相特定部527aのPI補償部546に代えてP補償部を用いたりI補償部を用いたりすることもできる。
(実施形態6)
以下、実施形態6の誘導機制御装置600について説明する。なお、実施形態6では、実施形態5の図13Aの例と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図14に示すように、本実施形態の誘導機制御部601は、位相推定部510を有しない。また、誘導機制御部601は、指令位相特定部527に代えて、指令位相特定部627を有している。
指令位相特定部627は、指令速度ωref *と、すべり角速度ωsとから、指令位相θs *を特定する。図15に示すように、指令位相特定部627は、指令位相特定部527aのすべり加算部540に加え、積分器641を有している。
積分器641は、指令一次角速度ω1f *を積分することによって指令位相θs *を求める。本実施形態では、指令位相特定部627はディジタル制御装置に組み込まれており、積分器641は離散系で構成されている。従って、本実施形態の指令位相特定部627は、指令一次角速度ω1f *を用いて一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された移動量を用いて指令磁束ベクトルψs *の位相θs *を特定すると言える。具体的に、指令位相特定部627は、移動量を積算することによって指令磁束ベクトルψs *の位相θs *を特定すると言える。ディジタル制御装置としては、DSP、マイクロコンピュータが例示される。
まとめると、指令位相特定部627は、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算したものである指令一次角速度ω1f *を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、指令位相特定部627は、特定された移動量Δθを用いて、指令位相θs *を特定する。
(実施形態7)
以下、実施形態7の誘導機制御装置700について説明する。なお、実施形態7では、実施形態5の図13Dの例と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図16に示すように、本実施形態の誘導機制御部701は、位相推定部510を有さない。また、誘導機制御部701は、指令位相特定部527dに代えて、指令位相特定部727を有している。
指令位相特定部727は、指令速度ωref *と、すべり角速度ωsと、推定トルクTeとから、指令位相θs *を特定する。図17に示すように、指令位相特定部727は、乗算部553及び位相加算部543に代えて、積分器641を有している。
積分器641は、速度偏差(補正された指令一次角速度)ω1f *−K1Hを積分することによって指令位相θs *を求める。実施形態7の積分器641は、入力が異なることを除いて、実施形態6の積分器641と同様に動作する。
まとめると、指令位相特定部727は、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算したものである指令一次角速度ω1f *と、推定トルクTeと、を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、指令位相特定部727は、特定された移動量Δθを用いて、指令位相θs *を特定する。
(実施形態8)
以下、実施形態8の誘導機制御装置800について説明する。なお、実施形態8では、実施形態5の図13Aの例と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図18に示すように、本実施形態の誘導機制御部801は、指令位相特定部527に代えて、指令位相特定部827を有している。
指令位相特定部827は、指令速度ωref *と、すべり角速度ωsと、推定位相θsとから、指令位相θs *を特定する。図19に示すように、指令位相特定部827では、指令位相特定部527aのハイパスフィルタ544、符号反転部545、PI補償部546及び移動量加算部542が省略されている。
実施形態8では、乗算部541の出力を、移動量Δθとして扱う。つまり、実施形態8の移動量Δθは、実施形態5の移動量ω1f *sに対応する。
位相加算部543は、移動量Δθと推定位相θsを加算することで、指令位相θs *を求める。実施形態8の位相加算部543は、入力が異なることを除いて、図13Aの位相加算部543と同様に動作する。
まとめると、指令位相特定部827は、3相誘導機102の回転子速度が追従するべき指令速度ωref *にすべり角速度ωsを加算したものである指令一次角速度ω1f *を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量Δθを特定する。そして、指令位相特定部827は、特定された移動量Δθと、推定位相θsと、を用いて、指令位相θs *を特定する。
(実施形態9〜11)
実施形態9の誘導機制御装置900では、図12に示す実施形態5の誘導機制御部501が、図20に示す誘導機制御部901に置き換えられている。誘導機制御部901では、誘導機制御部501の磁束有効電力成分特定ユニット150が、図6に示す実施形態2の磁束有効電力成分特定ユニット250に置き換えられている。
実施形態10の誘導機制御装置1000では、図12に示す実施形態5の誘導機制御部501が、図21に示す誘導機制御部1001に置き換えられている。誘導機制御部1001では、誘導機制御部501の磁束有効電力成分特定ユニット150が、図9に示す実施形態3の磁束有効電力成分特定ユニット350に置き換えられている。
実施形態11の誘導機制御装置1100では、図12に示す実施形態5の誘導機制御部501が、図22に示す誘導機制御部1101に置き換えられている。誘導機制御部1101では、誘導機制御部501の磁束有効電力成分特定ユニット150が、図11に示す実施形態4の磁束有効電力成分特定ユニット450に置き換えられている。
磁束有効電力成分特定ユニット250,350及び450は、図14,16及び18に示す実施形態6,7及び8の誘導機制御部601,701及び801にも適用可能である。
以上のように、実施形態1〜11に係る誘導機制御装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100)は、3相誘導機(102)の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータ(104)を用いて3相誘導機に電圧ベクトルを印加する。誘導機制御装置は、磁束有効電力成分特定ユニット(150,250,350,450)を備えている。磁束有効電力成分特定ユニットは、電圧ベクトル(vα *,vβ *)と、検出された3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトル(iα,iβ)と、を用いて、3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)と、3相誘導機の(i)有効電力(Pe)、(ii)トルク(Te)又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する。誘導機制御装置は、有効電力成分と、第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、3相誘導機のすべり角速度を特定する。このような誘導機制御装置によれば、誘導機の電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合において、3相誘導機のすべり角速を推定できる。なお、念のために断っておくが、本開示に係る技術は、電流ベクトルを制御する場合にも利用可能である。
実施形態1〜4に係る誘導機制御装置(100,200,300,400)では、磁束有効電力成分特定ユニット(150,250,350,450)は、電圧ベクトル(vα *,vβ *)と、検出電流ベクトル(iα,iβ)と、を用いて、一次磁束ベクトル(ψα,ψβ)を特定する。誘導機制御装置は、位相特定部(速度・位相推定部110)と、回転子速度特定部(129)と、を備えている。位相特定部は、磁束有効電力成分特定ユニットによって特定された一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相(θs)を特定する。回転子速度特定部は、第1の一次磁束ベクトルの位相の時間差分を用いて特定された第1の一次磁束ベクトルの回転速度(ω1f)と、有効電力成分と、第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)と、を用いて、3相誘導機の回転子速度(ω2n)を特定する。このような誘導機制御装置によれば、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合に回転子速度を推定することができる。このような誘導機制御装置によれば、負荷が大きい場合等、すべり角速度が大きい場合(一次磁束角速度と回転子速度が大きく乖離している場合)においても、回転子速度を推定することができる。このような技術は、例えば、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)とともに用いられ得る。
実施形態1〜4に係る誘導機制御装置(100,200,300,400)は、3相誘導機(102)の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータ(104)を用いて3相誘導機に電圧ベクトルを印加する。誘導機制御装置は、磁束有効電力成分特定ユニット(150,250,350,450)と、位相特定部(速度・位相推定部110)と、回転子速度特定部(129)と、を備えている。磁束有効電力成分特定ユニットは、電圧ベクトル(vα *,vβ *)と、検出された3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトル(iα,iβ)と、を用いて、一次磁束ベクトル(ψα,ψβ)と、3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)と、3相誘導機の(i)有効電力(Pe)、(ii)トルク(Te)又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する。位相特定部は、磁束有効電力成分特定ユニットによって特定された一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相(θs)を特定する。回転子速度特定部は、上記位相の時間差分を用いて特定された第1の一次磁束ベクトルの回転速度(ω1f)と、有効電力成分と、第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、3相誘導機の回転子速度(ω2n)を特定する。
実施形態1〜4に係る誘導機制御装置(100,200,300,400)は、回転子速度が指令速度に追従するように構成されている。誘導機制御装置は、指令トルク特定部(121)と、指令振幅特定部(122)と、を備えている。指令トルク特定部は、回転子速度(ω2n)を指令速度(ωref *)に追従させる場合に3相誘導機(102)のトルクが追従するべき指令トルク(Te *)を特定する。指令振幅特定部は、指令トルクを用いて指令磁束ベクトルの振幅(|ψs *|)を特定する。
実施形態1〜4に係る誘導機制御装置(100,200,300,400)は、回転子速度が指令速度に追従するように構成されている。有効電力成分は、3相誘導機(102)のトルクである。誘導機制御装置は、指令トルク特定部(121)と、指令位相特定部(127)と、を備えている。指令トルク特定部は、回転子速度(ω2n)を指令速度(ωref *)に追従させる場合に3相誘導機(102)のトルクが追従するべき指令トルク(Te *)を特定する。指令位相特定部は、磁束有効電力成分特定ユニット(150,250,350,450)で特定されたトルク(Te)と指令トルク(Te *)との偏差であるトルク偏差(ΔT)をゼロに近づけるフィードバック制御によって磁束ベクトルの回転量(Δθs)を求め、第1の一次磁束ベクトルの位相(θs)に回転量を加算することによって、指令磁束ベクトルの位相(θs *)を特定する。
実施形態1〜11に係る誘導機制御装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100)は、すべり角速度特定部を備えている。すべり角速度特定部は、有効電力成分と、第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)と、を用いて、3相誘導機(102)のすべり角速度(ωs)を特定する。このような誘導機制御装置によれば、電流ベクトルを制御せず磁束ベクトルを制御する場合にすべり角速度を推定することができる。このような誘導機制御装置によれば、負荷が大きい場合等においても、すべり角速度を推定することができる。
実施形態5〜11に係る誘導機制御装置(500,600,700,800,900,1000,1100)は、指令位相特定部(527,627,727,827)を備えている。指令位相特定部は、3相誘導機(102)の回転子速度(ω2n)が追従するべき指令速度(ωref *)にすべり角速度(ωs)を加算したものである指令一次角速度(ω1f *)を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量(Δθ)を特定する。指令位相特定部は、特定された移動量を用いて、指令磁束ベクトルの位相(指令位相θs *)を特定する。
実施形態5〜11に係る誘導機制御装置(500,600,700,800,900,1000,1100)は、指令振幅特定部(522)を備えている。有効電力成分は、3相誘導機(102)のトルクである。指令振幅特定部は、磁束有効電力成分特定ユニット(150,250,350,450)で特定されたトルク(Te)を用いて指令磁束ベクトルの振幅(指令振幅|ψs *|)を特定する。
実施形態1〜11に係る誘導機制御装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100)は、誘導機制御装置で特定された3相誘導機(102)のすべり角速度を用いて、一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定する。誘導機制御装置は、特定された移動量を用いて、指令磁束ベクトルの位相を特定する。
実施形態1及び5〜8に係る誘導機制御装置(100,500,600,700,800)では、磁束有効電力成分特定ユニット(150)は、一次磁束特定部(108)と、二次磁束特定部(115)と、有効電力成分特定部(トルク推定部109、有効電力推定部又はトルク若しくは有効電力に比例する値を特定する推定部)と、を有している。磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される一次磁束ベクトル(ψα,ψβ)を第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、一次磁束特定部は、電圧ベクトル(vα *,vβ *)を用いて第1の一次磁束ベクトルを特定する。二次磁束特定部は、検出電流ベクトル(iα,iβ)と、第1の一次磁束ベクトルと、を用いて第2の二次磁束ベクトルを特定する。有効電力成分特定部は、検出電流ベクトルと、第1の一次磁束ベクトル又は電圧ベクトルと、を用いて有効電力成分を特定する。このような誘導機制御装置によれば、シンプルに第2の二次磁束ベクトル及び有効電力成分を特定することができる。つまり、このような誘導機制御装置によれば、シンプルにすべり角速度及び/又は回転子速度を特定することができる。
実施形態2及び9に係る誘導機制御装置(200,900)では、磁束有効電力成分特定ユニット(250)は、一次磁束特定部(108)と、少なくとも1つの位相調整部(位相調整部151及び/又は第2の位相調整部)と、二次磁束特定部(115)と、有効電力成分特定部と、を有している。磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される一次磁束ベクトル(ψα,ψβ)を第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、一次磁束特定部は、電圧ベクトル(vα *,vβ *)を用いて第1の一次磁束ベクトルを特定する。少なくとも1つの位相調整部は、第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の一次磁束ベクトル(ψα_b,ψβ_b)及び電圧ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の電圧ベクトル(vα_b *,vβ_b *)の少なくとも一方を特定する。二次磁束特定部は、検出電流ベクトルと、第1の一次磁束ベクトル又は第2の一次磁束ベクトルと、を用いて、第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)を特定する。有効電力成分特定部は、検出電流ベクトルと、第1の一次磁束ベクトル若しくは第2の一次磁束ベクトル又は電圧ベクトル若しくは第2の電圧ベクトルと、を用いて、有効電力成分を特定する。二次磁束特定部及び有効電力成分特定部の少なくとも一方で、第2の一次磁束ベクトル又は第2の電圧ベクトルが用いられる。このような誘導機制御装置によれば、回転子速度が高い場合であっても、回転子速度及び/又はすべり角速度の特定精度を確保し易い。
実施形態4及び11に係る誘導機制御装置(400,1100)では、磁束有効電力成分特定ユニット(450)は、一次磁束特定部(108)と、負荷電流特定部(152)と、二次磁束特定部(115)と、有効電力成分特定部と、を有している。磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される一次磁束ベクトル(ψα,ψβ)を第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、一次磁束特定部は、電圧ベクトル(vα *,vβ *)を用いて第1の一次磁束ベクトルを特定する。負荷電流特定部は、検出電流ベクトル(iα,iβ)を用いて、固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトル(i,i)を特定する。二次磁束特定部は、検出電流ベクトル又は負荷電流ベクトルと、第1の一次磁束ベクトルと、を用いて、第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)を特定する。有効電力成分特定部は、検出電流ベクトル又は負荷電流ベクトルと、第1の一次磁束ベクトル又は電圧ベクトルと、を用いて、有効電力成分を特定する。二次磁束特定部及び有効電力成分特定部の少なくとも一方で、負荷電流ベクトルが用いられる。このような誘導機制御装置によれば、鉄損の割合が大きい(回転子速度が高い場合等)であっても、回転子速度及び/又はすべり角速度の特定精度を確保し易い。
実施形態3及び10に係る誘導機制御装置(300,1000)では、磁束有効電力成分特定ユニット(350)は、一次磁束特定部(108)と、負荷電流特定部(152)と、少なくとも1つの位相調整部(位相調整部151及び/又は第2の位相調整部)と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有している。磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される一次磁束ベクトル(ψα,ψβ)を第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、一次磁束特定部は、電圧ベクトル(vα *,vβ *)を用いて第1の一次磁束ベクトルを特定する。負荷電流特定部(iα,iβ)は、検出電流ベクトルを用いて、固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトル(i,i)を特定する。少なくとも1つの位相調整部は、第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の一次磁束ベクトル(ψα_b,ψβ_b)及び電圧ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の電圧ベクトル(vα_b *,vβ_b *)の少なくとも一方を特定する。二次磁束特定部は、検出電流ベクトル又は負荷電流ベクトルと、第1の一次磁束ベクトル又は第2の一次磁束ベクトルと、を用いて、第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)を特定する。有効電力成分特定部は、検出電流ベクトル又は負荷電流ベクトルと、第1の一次磁束ベクトル若しくは第2の一次磁束ベクトル又は電圧ベクトル若しくは第2の電圧ベクトルと、を用いて、有効電力成分を特定する。有効電力成分特定部及び二次磁束特定部の少なくとも一方で、第2の一次磁束ベクトル又は第2の電圧ベクトルが用いられる。二次磁束特定部及び有効電力成分特定部の少なくとも一方で、負荷電流ベクトルが用いられる。
実施形態1〜11に係る誘導機制御装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100)では、磁束有効電力成分特定ユニット(150,250,350,450)は、二次磁束特定部を有している。固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルを負荷電流ベクトル(i,i)と定義し、磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される一次磁束ベクトル(ψα,ψβ)を第1の一次磁束ベクトルと定義し、第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルを第2の一次磁束ベクトル(ψα_b,ψβ_b)と定義し、固定子電流ベクトルと固定子総合漏れインダクタンスとの積を第1の積(仮想電機子反作用磁束l1ta)と定義し、負荷電流ベクトルと固定子総合漏れインダクタンスとの積を第2の積(仮想電機子反作用磁束l1tLαβ)と定義したとき、二次磁束特定部は、第1の一次磁束ベクトル又は第2の一次磁束ベクトルから第1の積又は第2の積を差し引くことによって、第2の二次磁束ベクトル(正規化二次磁束ベクトルψ2n)を特定する、誘導機制御装置を提供する。このような誘導機制御装置によれば、適切に第2の二次磁束ベクトルを特定することができる。
本開示に係る技術は、かご型誘導機等の3相誘導機に適用できる。本開示に係る技術が適用された3相誘導機は、冷暖房装置又は給湯機に使用されたヒートポンプ式冷凍装置に適している。また、本開示に係る技術は、ファン、ブロア等の制御装置に適している。
100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100 誘導機制御装置
101,201,301,401,501,601,701,801,901,1001,1101 誘導機制御部
102 3相誘導機
103 デューティ生成部
104 PWMインバータ
105a 第1電流センサ
105b 第2電流センサ
106 u,w/α,β変換部
107 指令電圧特定部
108 一次磁束推定部
109 トルク推定部
110 速度・位相推定部
111 トルク偏差特定部
112 指令磁束特定部
113a α軸磁束偏差特定部
113b β軸磁束偏差特定部
114 α,β/u,v,w変換部
115 二次磁束推定部
116 ベースドライバ
117 平滑コンデンサ
118 直流電源
119a〜119f スイッチング素子
120a〜120f 還流ダイオード
121 指令トルク特定部
122,522 指令振幅特定部
127,527,527a,527b,527c,527d,627,727,827 指令位相特定部
129 回転子速度推定部
150,250,350,450 磁束有効電力成分特定ユニット
151 位相調整部
152 負荷電流特定部
510 位相推定部
529 すべり角速度推定部
540,542,543 加算部
541,553,554 乗算部
544 ハイパスフィルタ
545 符号反転部
546 PI補償部
548 ローパスフィルタ
549 減算部
550 トルクリミッタ
641 積分器
653 固定子損失回路
654 固定子負荷回路

Claims (16)

  1. 3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御装置であって、
    前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する磁束有効電力成分特定ユニットを備え、
    前記誘導機制御装置は、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機のすべり角速度を特定する、誘導機制御装置。
  2. 前記磁束有効電力成分特定ユニットは、前記電圧ベクトルと、前記検出電流ベクトルと、を用いて、前記一次磁束ベクトルを特定し、
    前記誘導機制御装置は、位相特定部と、回転子速度特定部と、を備え、
    前記位相特定部は、前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定された前記一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相を特定し、
    前記回転子速度特定部は、前記第1の一次磁束ベクトルの位相の時間差分を用いて特定された前記第1の一次磁束ベクトルの回転速度と、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の回転子速度を特定する、請求項1に記載の誘導機制御装置。
  3. 3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御装置であって、
    前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記一次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と
    、を特定する磁束有効電力成分特定ユニットと、
    前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定された前記一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相を特定する位相特定部と、
    前記位相の時間差分を用いて特定された前記第1の一次磁束ベクトルの回転速度と、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の回転子速度を特定する回転子速度特定部と、を備えた、誘導機制御装置。
  4. 前記誘導機制御装置は、前記回転子速度が指令速度に追従するように構成されており、
    前記誘導機制御装置は、指令トルク特定部と、指令振幅特定部と、を備え、
    前記指令トルク特定部は、前記回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相誘導機の前記トルクが追従するべき指令トルクを特定し、
    前記指令振幅特定部は、前記指令トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する、請求項2又は3に記載の誘導機制御装置。
  5. 前記誘導機制御装置は、前記回転子速度が指令速度に追従するように構成されており、
    前記有効電力成分は、前記3相誘導機のトルクであり、
    前記誘導機制御装置は、指令トルク特定部と、指令位相特定部と、を備え、
    前記指令トルク特定部は、前記回転子速度を前記指令速度に追従させる場合に前記3相誘導機の前記トルクが追従するべき指令トルクを特定し、
    前記指令位相特定部は、磁束有効電力成分特定ユニットで特定された前記トルクと前記指令トルクとの偏差であるトルク偏差をゼロに近づけるフィードバック制御によって磁束ベクトルの回転量を求め、前記第1の一次磁束ベクトルの位相に前記回転量を加算することによって、前記指令磁束ベクトルの位相を特定する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の誘導機制御装置。
  6. 前記誘導機制御装置は、すべり角速度特定部を備え、
    前記すべり角速度特定部は、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機のすべり角速度を特定する、請求項1に記載の誘導機制御装置。
  7. 前記誘導機制御装置は、指令位相特定部を備え、
    前記指令位相特定部は、前記3相誘導機の回転子速度が追従するべき指令速度に前記すべり角速度を加算したものである指令一次角速度を用いて、前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、
    前記指令位相特定部は、特定された前記移動量を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相を特定する、請求項6に記載の誘導機制御装置。
  8. 前記誘導機制御装置は、指令振幅特定部を備え、
    前記有効電力成分は、前記3相誘導機のトルクであり、
    前記指令振幅特定部は、磁束有効電力成分特定ユニットで特定された前記トルクを用いて前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する、請求項6又は7に記載の誘導機制御装置。
  9. 前記誘導機制御装置は、前記誘導機制御装置で特定された前記3相誘導機のすべり角速度を用いて、前記一次磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、
    前記誘導機制御装置は、特定された前記移動量を用いて、前記指令磁束ベクトルの位相を特定する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の誘導機制御装置。
  10. 前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
    前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
    前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトルと、を用いて前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
    前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトルと、を用いて前記有効電力成分を特定する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の誘導機制御装置。
  11. 前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、少なくとも1つの位相調整部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
    前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
    前記少なくとも1つの位相調整部は、前記第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の一次磁束ベクトル及び前記電圧ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の電圧ベクトルの少なくとも一方を特定し、
    前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記第2の一次磁束ベクトルと、を用いて、前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
    前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル若しくは前記第2の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトル若しくは前記第2の電圧ベクトルと、を用いて、前記有効電力成分を特定し、
    前記二次磁束特定部及び前記有効電力成分特定部の少なくとも一方で、前記第2の一次磁束ベクトル又は前記第2の電圧ベクトルが用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の誘導機制御装置。
  12. 前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、負荷電流特定部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
    前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
    前記負荷電流特定部は、前記検出電流ベクトルを用いて、前記固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定し、
    前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトルと、を用いて、前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
    前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトルと、を用いて、前記有効電力成分を特定し、
    前記二次磁束特定部及び前記有効電力成分特定部の少なくとも一方で、前記負荷電流ベクトルが用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の誘導機制御装置。
  13. 前記磁束有効電力成分特定ユニットは、一次磁束特定部と、負荷電流特定部と、少なくとも1つの位相調整部と、二次磁束特定部と、有効電力成分特定部と、を有し、
    前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義したとき、前記一次磁束特定部は、前記電圧ベクトルを用いて前記第1の一次磁束ベクトルを特定し、
    前記負荷電流特定部は、前記検出電流ベクトルを用いて、前記固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルである負荷電流ベクトルを特定し、
    前記少なくとも1つの位相調整部は、前記第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の一次磁束ベクトル及び前記電圧ベクトルの位相を遅らせたベクトルである第2の電圧ベクトルの少なくとも一方を特定し、
    前記二次磁束特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記第2の一次磁束ベクトルと、を用いて、前記第2の二次磁束ベクトルを特定し、
    前記有効電力成分特定部は、前記検出電流ベクトル又は前記負荷電流ベクトルと、前記第1の一次磁束ベクトル若しくは前記第2の一次磁束ベクトル又は前記電圧ベクトル若しくは前記第2の電圧ベクトルと、を用いて、前記有効電力成分を特定し、
    前記有効電力成分特定部及び前記二次磁束特定部の少なくとも一方で、前記第2の一次磁束ベクトル又は前記第2の電圧ベクトルが用いられ、
    前記二次磁束特定部及び前記有効電力成分特定部の少なくとも一方で、前記負荷電流ベクトルが用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の誘導機制御装置。
  14. 前記磁束有効電力成分特定ユニットは、二次磁束特定部を有し、
    前記固定子電流ベクトルから鉄損電流ベクトルを差し引いたベクトルを負荷電流ベクトルと定義し、前記磁束有効電力成分特定ユニットによって特定される前記一次磁束ベクトルを第1の一次磁束ベクトルと定義し、前記第1の一次磁束ベクトルの位相を遅らせたベクトルを第2の一次磁束ベクトルと定義し、前記固定子電流ベクトルと固定子総合漏れインダクタンスとの積を第1の積と定義し、前記負荷電流ベクトルと固定子総合漏れインダクタンスとの積を第2の積と定義したとき、前記二次磁束特定部は、前記第1の一次磁束ベクトル又は前記第2の一次磁束ベクトルから前記第1の積又は前記第2の積を差し引くことによって、前記第2の二次磁束ベクトルを特定する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の誘導機制御装置。
  15. 3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御方法であって、
    前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と、を特定する磁束有効電力成分特定ステップを備え、
    前記誘導機制御方法は、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機のすべり角速度を特定する、誘導機制御方法。
  16. 3相誘導機の一次磁束ベクトルが指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相誘導機に電圧ベクトルを印加する誘導機制御方法であって、
    前記電圧ベクトルと、検出された前記3相誘導機の固定子電流ベクトルである検出電流ベクトルと、を用いて、前記一次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の二次磁束ベクトルと同じ向きのベクトルである第2の二次磁束ベクトルと、前記3相誘導機の(i)有効電力、(ii)トルク又は(iii)有効電力若しくはトルクに比例する値である有効電力成分と
    、を特定する磁束有効電力成分特定ステップと、
    前記磁束有効電力成分特定ステップによって特定された前記一次磁束ベクトルである第1の一次磁束ベクトルの位相を特定する位相特定ステップと、
    前記位相の時間差分を用いて特定された前記第1の一次磁束ベクトルの回転速度と、前記有効電力成分と、前記第2の二次磁束ベクトルと、を用いて、前記3相誘導機の回転子速度を特定する回転子速度特定ステップと、を備えた、誘導機制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108988720A (zh) * 2018-08-23 2018-12-11 浙江金轴电气有限公司 一种基于转差自动优化的三相异步电机控制器及控制方法

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