JP2017123753A - モータ制御装置及び発電機制御装置 - Google Patents

モータ制御装置及び発電機制御装置 Download PDF

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Junki Yoshimoto
淳貴 吉本
松山 哲也
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哲也 松山
富樫 仁夫
Hitoo Togashi
仁夫 富樫
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Abstract

【課題】モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えることを防止しつつモータ電流ベクトルの振幅が電流制限値を超えることを防止する制御を高精度に行う。【解決手段】振幅特定部140は、指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する。振幅特定部140は、指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、指令電圧ベクトルの振幅と電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、電圧偏差をゼロに近づける指令振幅を特定する。トルク制限部125は、磁束情報を用いてモータ電流ベクトルの振幅を電流制限値に追従させるモータトルクであるトルク制限値を特定し、トルク制限部125に与えられた指令トルクがトルク制限値よりも大きい場合には指令トルクをトルク制限値に修正する。【選択図】図3

Description

本開示は、モータ制御装置及び発電機制御装置に関する。
従来から、3相モータの駆動方法として、種々の方法が知られている。駆動方法の一例として、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)が挙げられる。直接トルク制御は、モータ制御装置及びインバータを用いて実現される。非特許文献1には、モータ電圧(端子電圧)が電圧制限値を超えないようにするための指令磁束の計算手法、モータ電流が電流制限値を越えないようにするためのトルク制限値の計算手法等が記載されている。
特開2009−291072号公報
井上征則、森本茂雄、真田雅之、「永久磁石同期モータを駆動する直接トルク制御のためのトルクと磁束の指令値作成法とトルク制御器のワインドアップ対策(A reference value calculation scheme for torque and flux and an anti-windup implementation of torque controller for direct torque control of permanent magnet synchronous motor)」電気学会論文誌D,130巻,6号,p.777−784(2010年)
非特許文献1に記載されている手法では、モータ電圧が電圧制限値を超えないようにするための制御の精度を十分に確保できなかったり、モータ電流が電流制限値を越えないようにするための制御の精度を十分に確保できなかったりする場合がある。本開示は、これらの精度の確保に適した技術に関する。
すなわち、本開示は、
PWMインバータを用いて3相モータに電圧ベクトルを印加し、前記3相モータのモータ磁束ベクトル及びモータトルクをそれぞれ指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させるモータ制御装置であって、
前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する振幅特定部であって、前記電圧ベクトルが追従するべき指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記電圧偏差をゼロに近づける前記指令振幅を特定する振幅特定部と、
前記指令電圧ベクトルと前記3相モータのモータ電流ベクトルとを用いて前記モータ磁束ベクトルを推定するモータ磁束推定部と、
前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、推定された前記モータ磁束ベクトルの振幅又は前記指令振幅と、推定された前記モータ磁束ベクトル又は前記指令磁束ベクトルと、前記モータ電流ベクトルと、電流制限値とを用いて前記モータ電流ベクトルの振幅を前記電流制限値に追従させる前記モータトルクであるトルク制限値を特定し、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値以下である場合には前記指令トルクを修正せず、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値よりも大きい場合には前記指令トルクを前記トルク制限値に修正するトルク制限部と、を備えたモータ制御装置を提供する。
本開示のモータ制御装置は、モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えないようにするための制御の精度と、モータ電流ベクトルの振幅が電流制限値を越えないようにするための制御の精度とを確保するのに適している。
第1の実施形態のモータ制御装置のブロック図 dq座標系及びαβ座標系を説明するための図 第1の実施形態のモータ制御部のブロック図 インバータの構成図 第1の実施形態の修正振幅特定部のブロック図 第1の実施形態の切替部の動作を説明するためのフロー図 変形例1−1Aのモータ制御部のブロック図 変形例1−1Bのモータ制御部のブロック図 変形例1−1Aの修正振幅特定部のブロック図 変形例1−1Bの修正振幅特定部のブロック図 変形例1−2のモータ制御部のブロック図 従来のモータ制御部のブロック図
本発明者らは、モータ制御装置の改善に際し、図10に示すようなモータ制御部903を検討した。モータ制御部903は、速度制御系で直接トルク制御を実現するための構成を有している。モータ制御部903では、u,w/α,β変換部906によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。モータ磁束推定部908によって、軸指令電圧vα *,vβ *及び軸電流iα,iβから、モータ磁束ベクトルが推定される(推定磁束Ψsが求められる)。推定磁束Ψsのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定磁束Ψα、推定磁束Ψβと記載する。軸指令電圧vα *,vβ *は、モータ電圧ベクトルが追従するべきベクトルを表す。位相推定部910によって、推定磁束Ψsから、3相モータのモータ磁束ベクトルの位相θsが推定される。速度推定部911によって、位相θsから、モータの速度が推定される(推定速度ωrが求められる)。トルク推定部914によって、推定磁束Ψs及び軸電流iα,iβから、モータトルクが推定される(推定トルクTeが求められる)。指令トルク特定部924によって、現在の推定速度ωrが指令速度ωref *に一致するように、指令トルク(第一の指令トルク)Te *が生成される。トルク制限部925によって、第一の指令トルクTe *、推定磁束Ψs及び軸電流iα,iβから、第二の指令トルクTe **が生成される。振幅特定部915によって、第二の指令トルクTe **から、第一の指令振幅|Ψs *|が生成される。電圧制限部919において、第一の指令振幅|Ψs *|、軸電流iα,iβ及び推定磁束Ψsの位相θsから、第二の振幅指令|Ψs **|が生成される。トルク偏差演算部921によって、推定トルクTeと第二の指令トルクTe **との間の偏差(トルク偏差ΔT=Te **−Te)が求められる。位置特定部990によって、位相θs及びトルク偏差ΔTから、指令磁束ベクトルΨs *の位相(指令位相)θs *が特定される。指令磁束特定部912によって、第二の指令振幅|Ψs **|及び指令位相θs *から、指令磁束ベクトルΨs *が求められる。指令磁束ベクトルΨs *のα軸成分及びβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束Ψα *、β軸指令磁束Ψβ *と記載する。α軸磁束偏差演算部913aによって、α軸指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαとの間の偏差(磁束偏差ΔΨα=Ψα *−Ψα)が求められる。β軸磁束偏差演算部913bによって、β軸指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβとの間の偏差(磁束偏差ΔΨβ=Ψβ *−Ψβ)が求められる。指令電圧特定部907によって、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及び軸電流iα,iβから、軸指令電圧vα *,vβ *が求められる。α,β/u,v,w変換部909によって、軸指令電圧vα *,vβ *が指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に基づいてインバータのスイッチングがなされる。なお、異なる座標系で表されているものの、軸指令電圧vα *,vβ *と指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *とは実体的には同じである。このため、軸指令電圧vα *,vβ *を、指令電圧ベクトルvα *,vβ *を呼ぶこともできる。
具体的に、トルク制限部925は、第一の指令トルクTe *、推定磁束Ψs及び軸電流iα,iβから、式(P−1)及び(P−2)に基づいて、トルク制限値Tlimを計算する。トルク制限部925は、第一の指令トルクTe *がトルク制限値Tlim *よりも大きい場合、第二の指令トルクTe **としてトルク制限値Tlim *を出力する。一方、第一の指令トルクTe *がトルク制限値Tlim *以下である場合、第二の指令トルクTe **として第一の指令トルクTe *を出力する。式(P−1)のIamは、電流制限値を意味する。式(P−2)のPnは、モータの極対数である。誤差がゼロであれば、トルク制限部925が式(P−1)及び(P−2)に基づいて動作することによって、モータ電流ベクトルの振幅を電流制限値Iamを一致させ、モータトルクをトルク制限値Tlim *に一致させることができる。
Figure 2017123753
また、具体的に、電圧制限部919は、第一の指令振幅|Ψs *|、軸電流iα,iβ及び推定磁束Ψsの位相θsから、式(P−3)及び(P−4)に基づいて、磁束制限値|Ψs_lim *|を計算する。電圧制限部919は、第一の指令振幅|Ψs *|が磁束制限値|Ψs_lim *|よりも大きい場合、第二の振幅指令|Ψs **|として|Ψs_lim *|を出力する。一方、第一の指令振幅|Ψs *|が磁束制限値|Ψs_lim *|以下である場合、第二の振幅指令|Ψs **|として第一の指令振幅|Ψs *|を出力する。電圧制限部919は、式(P−3)のωとして、推定速度ωrを用いる。式(P−3)のRaは、モータの電機子巻線の一相当たりの抵抗値である。Raは、抵抗パラメータと呼ばれることがある。Vamは、電圧制限値である。誤差がゼロであれば、電圧制限部919が式(P−3)及び(P−4)に基づいて動作することによって、モータ電圧ベクトルの振幅を電圧制限値Vamに一致させ、モータ磁束ベクトルの振幅を磁束制限値|Ψs_lim *|に一致させることができる。なお、モータ電圧ベクトルの振幅(大きさ)を電圧制限値以下に抑えるための制御は、弱め磁束制御と呼ばれている。電圧制限部919は、フィードフォワードで弱め磁束制御を実現する。
Figure 2017123753
モータ制御部903において弱め磁束制御が行われている状況(弱め磁束制御に基づきモータ電圧ベクトルの振幅の上昇が抑えられている状況)では、モータ電圧ベクトルの振幅は電圧制限値に保たれるとも思われる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、種々の誤差(例えば、抵抗値Ra等のパラメータ誤差)が原因で、モータ電圧ベクトルの振幅は電圧制限値Vamからずれた値に保たれる。別の言い方をすると、磁束制限値|Ψs_lim *|が、モータ電圧ベクトルの振幅を電圧制限値Vamに一致させるための振幅からずれる。このため、モータ磁束ベクトルの振幅も、モータ電圧ベクトルの大きさを電圧制限値Vamに一致させるための振幅からずれる。トルク制限値Tlim *はモータ磁束ベクトルを用いて特定されるため、モータ磁束ベクトルの振幅にずれがあると、トルク制限値Tlim *が、モータ電流ベクトルの振幅を電流制限値Iamに一致させるためのトルクからずれる。このため、モータ電流ベクトルの振幅が、電流制限値Iamに一致しない。以上の理由で、モータ制御部903では、モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値Vamを超えることを防止しつつモータ電流ベクトルの振幅が電流制限値Iamを超えることを防止する制御を高精度に行うことは容易ではない。このため、モータ電圧ベクトルの振幅が過度に大きくなったり、モータ電流ベクトルの振幅が過度に大きくなったりするおそれがある。このことは、線形領域でインバータを動作させようとしているにも関わらずインバータが過変調領域で動作してモータが脱調したり、モータが過度に発熱して焼損したりする原因となる。非特許文献1の技術にも、同じ問題点がある。
本発明者らは、モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えることを防止しつつモータ電流ベクトルの振幅が電流制限値を超えることを防止する制御を改善することを目指した。そして、電圧制限部919のように計算によって(フィードフォワードによって)弱め磁束制御を行うよりも、フィードバック制御によって弱め磁束制御を行った方が、モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えることを防止しつつモータ電流ベクトルの振幅が電流制限値を超えることを防止する制御を高精度に行い易いことを見出した。
すなわち、本開示の第1態様は、
PWMインバータを用いて3相モータに電圧ベクトルを印加し、前記3相モータのモータ磁束ベクトル及びモータトルクをそれぞれ指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させるモータ制御装置であって、
前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する振幅特定部であって、前記電圧ベクトルが追従するべき指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記電圧偏差をゼロに近づける前記指令振幅を特定する振幅特定部と、
前記指令電圧ベクトルと前記3相モータのモータ電流ベクトルとを用いて前記モータ磁束ベクトルを推定するモータ磁束推定部と、
前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、推定された前記モータ磁束ベクトルの振幅又は前記指令振幅と、推定された前記モータ磁束ベクトル又は前記指令磁束ベクトルと、前記モータ電流ベクトルと、電流制限値とを用いて前記モータ電流ベクトルの振幅を前記電流制限値に追従させる前記モータトルクであるトルク制限値を特定し、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値以下である場合には前記指令トルクを修正せず、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値よりも大きい場合には前記指令トルクを前記トルク制限値に修正するトルク制限部と、を備えたモータ制御装置を提供する。
第1態様では、モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値よりも大きい場合(第1の場合)に、指令電圧ベクトルの振幅と電圧制限値との間の電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、電圧偏差をゼロに近づける指令振幅を特定する。このようにすれば、フィードフォワード制御を実行する場合よりも高い精度でモータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値に一致し易い。また、これらを一致させるための指令振幅も正確に特定され易い。指令振幅が正確であれば、指令磁束ベクトルも正確になり易く、モータ磁束ベクトル及びその振幅は適切になり易い。そのような磁束情報を用いてトルク制限値は計算されるため、トルク制限値は正確に特定され易い。このため、高い精度でモータ電流ベクトルの振幅が電流制限値に一致し易い。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、
前記モータ電流ベクトル及び推定された前記モータ磁束ベクトルから前記モータトルクを推定するトルク推定部と、
前記指令磁束ベクトルの位相である指令位相を特定する位置特定部であって、前記トルク制限部から出力された前記指令トルクと推定された前記モータトルクとの間の偏差であるトルク偏差をゼロに近づけるトルクフィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記トルク偏差をゼロに近づける前記指令位相を特定する位置特定部と、
前記指令振幅及び前記指令位相から前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、を備えたモータ制御装置を提供する。
上述のように、第1態様によれば、トルク制限値が正確に特定され易い。第2態様によれば、そのトルク制限値を、指令位相に反映させることができる。従って、第2態様によれば、指令位相が正確に特定され易い。また、上述のように指令振幅も正確に特定され易いので、指令磁束ベクトルも正確になり易い。
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様に加え、
前記振幅特定部は、
前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
前記第1の場合において、前記電圧フィードバック制御を含む制御によって修正振幅を特定する修正振幅特定部と、
前記仮振幅に前記修正振幅を加算して前記指令振幅を特定する補正部とを有するモータ制御装置を提供する。
第3態様のモータ制御装置は、シンプルである。
本開示の第4態様は、第3態様に加え、
前記第1の場合において、前記修正振幅特定部は、ゼロよりも小さい前記修正振幅を特定するモータ制御装置を提供する。
第4態様によれば、減磁作用が得られるように仮振幅が補正される。
本開示の第5態様は、第3態様又は第4態様に加え、
前記修正振幅特定部は、電圧偏差補償部を有し、
前記第1の場合において、前記電圧偏差補償部は、前記修正振幅を操作量とする前記電圧フィードバック制御を実行することによって前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づけるモータ制御装置を提供する。
第5態様の構成は、第7の態様の構成よりもシンプルである。
本開示の第6態様は、第5態様に加え、
前記修正振幅特定部は、第1モードと第2モードとを切り替える切替部を有し、
前記第1モードは、前記修正振幅を操作量とする前記電圧フィードバック制御を前記電圧偏差補償部が実行することによって、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づけるモードであり、
前記第2モードは、定数を前記修正振幅とするモードであり、
前記切替部は、前記第1の場合には前記第1モードを選択し、前記指令電圧ベクトルの振幅が前記電圧制限値以下である第2の場合には前記第2モードを選択するモータ制御装置を提供する。
第6態様の構成は、第8態様の構成よりもシンプルである。第6態様のモータ制御装置では、モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値以下である場合に弱め磁束制御以外の制御を行うことができる。また、第6態様によれば、弱め磁束制御と他の制御とを適切なタイミングでスムーズに切り替えることが可能となる。
本開示の第7態様は、第3態様又は第4態様に加え、
前記修正振幅特定部は、電圧偏差補償部と内積補償部とを有し、
前記第1の場合において、前記電圧偏差補償部は、第1の指令誤差パラメータを操作量とする前記電圧フィードバック制御を実行することによって前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づけ、
前記第1の場合において、前記内積補償部は、前記修正振幅を操作量とする第1のフィードバック制御を実行することによって、(a)推定された前記モータ磁束ベクトルと前記3相モータのモータ電流ベクトルとの第1内積、又は、(b)前記3相モータの推定された磁石磁束ベクトルと前記モータ電流ベクトルとの第2内積である誤差パラメータと前記第1の指令誤差パラメータとの間の偏差をゼロに近づけるモータ制御装置を提供する。
本開示の第8態様は、第7態様に加え、
前記修正振幅特定部は、第1モードと第2モードとを切り替える切替部を有し、
前記第1モードは、前記第1の指令誤差パラメータを操作量とする前記電圧フィードバック制御を前記電圧偏差補償部が実行することによって、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づけ、前記修正振幅を操作量とする前記第1のフィードバック制御を前記内積補償部が実行することによって、前記第1の前記指令誤差パラメータと前記誤差パラメータとの間の偏差をゼロに近づけるモードであり、
前記第2モードは、前記修正振幅を操作量とする第2のフィードバック制御を前記内積補償部が実行することによって、定数である第2の指令誤差パラメータと前記誤差パラメータとの間の偏差をゼロに近づけるモードであり、
前記切替部は、前記第1の場合には前記第1モードを選択し、前記指令電圧ベクトルの振幅が前記電圧制限値以下である第2の場合には前記第2モードを選択するモータ制御装置を提供する。
第7態様及び第8態様のモータ制御装置では、モータ電圧ベクトルの振幅が電圧制限値以下である第2の場合(第2モード)における制御の自由度が高い。具体的には、第1内積又は第2内積が近づくべき定数を適切に設定することによって、種々の制御を行うことができる。第1内積又は第2内積は仮振幅を補正をするための有効な指標であるため、第2の場合において、目的に応じたフィードバック制御が実施されうる。また、第8態様によれば、弱め磁束制御と他の制御とを適切なタイミングでスムーズに切り替えることが可能となる。
本開示の第9態様は、第8態様に加え、
前記誤差パラメータは前記第2内積であり、
前記定数はゼロであるモータ制御装置を提供する。
第9態様のモータ制御装置では、第1の場合において弱め磁束制御を実行し、第2の場合において最大トルク/電流制御(MTPA)を実行することができる。
本開示の第10態様は、
PWMコンバータを用いて3相発電機に電圧ベクトルを印加し、前記3相発電機の発電機磁束ベクトル及び発電機トルクをそれぞれ指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる発電機制御装置であって、
前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する振幅特定部であって、前記電圧ベクトルが追従するべき指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記電圧偏差をゼロに近づける前記指令振幅を特定する振幅特定部と、
前記指令電圧ベクトルと前記3相発電機の発電機電流ベクトルとを用いて前記発電機磁束ベクトルを推定する発電機磁束推定部と、
前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、推定された前記発電機磁束ベクトルの振幅又は前記指令振幅と、推定された前記発電機磁束ベクトル又は前記指令磁束ベクトルと、前記発電機電流ベクトルと、電流制限値とを用いて前記発電機電流ベクトルの振幅を前記電流制限値に追従させる前記発電機トルクであるトルク制限値を特定し、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値以下である場合には前記指令トルクを修正せず、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値よりも大きい場合には前記指令トルクを前記トルク制限値に修正するトルク制限部と、を備えた発電機制御装置を提供する。
第10態様によれば、第1態様のモータ制御装置と同様の効果を奏する発電機制御装置を提供することができる。なお、モータ制御装置に関する技術は発電機制御装置に適用でき、発電機制御装置に関する技術はモータ制御装置に適用できる。また、第1態様の特徴と第10態様の特徴を兼ね備えた電動機を提供することも可能である。すなわち、力行駆動及び回生駆動の両方を行う電動機であって第1態様及び第10態様と同様に動作しこれらの態様と同様の効果を奏する電動機を提供することも可能である。
本開示の第11態様は、
PWMインバータを用いて3相モータに電圧ベクトルを印加し、前記3相モータのモータ磁束ベクトル及びモータトルクをそれぞれ指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させるモータ制御方法であって、
前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する振幅特定ステップであって、前記電圧ベクトルが追従するべき指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記電圧偏差をゼロに近づける前記指令振幅を特定する振幅特定ステップと、
前記指令電圧ベクトルと前記3相モータのモータ電流ベクトルとを用いて前記モータ磁束ベクトルを推定するモータ磁束推定ステップと、
前記指令トルクを修正するトルク制限ステップであって、推定された前記モータ磁束ベクトルの振幅又は前記指令振幅と、推定された前記モータ磁束ベクトル又は前記指令磁束ベクトルと、前記モータ電流ベクトルと、電流制限値とを用いて前記モータ電流ベクトルの振幅を前記電流制限値に追従させる前記モータトルクであるトルク制限値を特定し、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値以下である場合には前記指令トルクを修正せず、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値よりも大きい場合には前記指令トルクを前記トルク制限値に修正するトルク制限ステップと、を備えたモータ制御方法を提供する。
本開示の第12態様は、
PWMコンバータを用いて3相発電機に電圧ベクトルを印加し、前記3相発電機の発電機磁束ベクトル及び発電機トルクをそれぞれ指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる発電機制御方法であって、
前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する振幅特定ステップであって、前記電圧ベクトルが追従するべき指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記電圧偏差をゼロに近づける前記指令振幅を特定する振幅特定ステップと、
前記指令電圧ベクトルと前記3相発電機の発電機電流ベクトルとを用いて前記発電機磁束ベクトルを推定する発電機磁束推定ステップと、
前記指令トルクを修正するトルク制限ステップであって、推定された前記発電機磁束ベクトルの振幅又は前記指令振幅と、推定された前記発電機磁束ベクトル又は前記指令磁束ベクトルと、前記発電機電流ベクトルと、電流制限値とを用いて前記発電機電流ベクトルの振幅を前記電流制限値に追従させる前記発電機トルクであるトルク制限値を特定し、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値以下である場合には前記指令トルクを修正せず、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値よりも大きい場合には前記指令トルクを前記トルク制限値に修正するトルク制限ステップと、を備えた発電機制御方法を提供する。
第11態様及び12態様によれば、第1態様及び第10態様の効果と同様の効果が得られる。
モータ制御装置及び発電機制御装置に関する技術は、モータ制御方法及び発電機制御方法に適用できる。モータ制御方法及び発電機制御方法に関する技術は、モータ制御装置及び発電機制御装置に適用できる。
本開示の第13態様は、第11態様のモータ制御方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラムを提供する。
本開示の第14態様は、第12態様の発電機制御方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラムを提供する。
本開示の第15態様は、第13態様及び/又は第14態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリを提供する。
本開示の第16態様は、第13態様及び/又は第14態様のコンピュータプログラムを実行するプロセッサを提供する。
本開示の第17態様は、
第13態様及び/又は第14態様のコンピュータプログラムが格納された、コンピュータによる読み取りが可能なメモリと、
前記コンピュータプログラムを実行するプロセッサと、を備えた制御システムを提供する。
本明細書では、電流、電圧、磁束等に関するベクトルが、3相交流座標(U−V−W座標)、α−β座標、d−q座標、dm−qm座標等を用いて表現されている。ただし、本明細書の技術は、M−T座標等の他の座標を用いて説明することもできる。すなわち、以下では、便宜上特定の座標を用いた制御例を説明するが、本明細書はその制御例のみならず別の座標を用いた制御例も開示していると考えるべきである。モータ磁束ベクトルは、3相モータに印加されている3相交流座標上の電機子鎖交磁束と、この電機子鎖交磁束を座標変換することにより得た磁束の両方を含む概念である。指令磁束ベクトル、モータ電圧ベクトル、第1の指令電圧ベクトル、第2の指令電圧ベクトル、モータ電流ベクトル等についても同様である。本明細書では、「振幅」は、単に大きさ(絶対値)を指す場合がある。また、特に断りがない場合は、「速度」は、3相モータの回転子の角速度(単位:rad/s)を表す。
以下、本開示に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、モータ制御装置100は、第1電流センサ105a、第2電流センサ105b、モータ制御部103及びデューティ生成部104を含んでいる。モータ制御装置100は、インバータ101及び3相モータ102に接続される。
モータ制御部103は、3相モータ102の位置センサレス運転を実行するように構成されている。位置センサレス運転は、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを用いない運転である。
モータ制御装置100は、DSP(Digital Signal Processor)又はマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供される要素を含んでいてもよい。DSP又はマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路及び通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、モータ制御装置100は、論理回路によって構成された要素を含んでいてもよい。
(モータ制御装置100を用いた制御の概要)
図1を参照しながら、モータ制御装置100を用いた制御の概要を説明する。電流センサ105a,105bによって、相電流iu,iwが検出される。モータ制御部103によって、指令速度ωref *及び相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が生成される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分は、それぞれ3相交流座標上のU相電圧vu *、V相電圧vv *及びW相電圧vw *に対応する。デューティ生成部104によって、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwが生成される。インバータ101によって、デューティDu,Dv,Dwから、3相モータ102に印加するべきモータ電圧ベクトルvu,vv,vwが生成される。指令速度ωref *は、上位制御装置からモータ制御装置100に与えられる。指令速度ωref *は、3相モータ102の速度が追従するべき速度を表す。
以下では、α−β座標(2相座標)に基づいてモータ制御装置100を説明することがある。図2に、α−β座標、U−V−W座標及びd−q座標を示す。α−β座標は、固定座標である。α−β座標は、静止座標とも交流座標とも称される。α軸は、U軸と同一方向に延びる軸として設定される。また、d軸はロータの回転子と一致する軸として定義されており、その位置をθで定義している。また、d軸から90度進んだ位置をq軸として定義している。
(モータ制御部103)
図3に示すように、モータ制御部103は、u,w/α,β変換部(3相2相座標変換部)106、モータ磁束推定部108、位相推定部110、速度推定部111、トルク推定部(トルク推定器)114、指令トルク特定部124、トルク制限部125、トルク偏差演算部121、位置特定部190、振幅特定部140、指令磁束特定部112、α軸磁束偏差演算部113a、β軸磁束偏差演算部113b、指令電圧特定部107、α,β/u,v,w変換部(2相3相座標変換部)109を含んでいる。振幅特定部140は、仮設定部126、修正振幅特定部123及び加算部(補正部)127を含んでいる。
モータ制御部103では、u,w/α,β変換部106によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。軸電流iα,iβは、3相モータ102のα−β座標上におけるα軸電流iα及びβ軸電流iβをまとめて記載したものである。モータ磁束推定部108によって、軸指令電圧vα *,vβ *及び軸電流iα,iβから、モータ磁束ベクトルが推定される(推定磁束Ψsが求められる)。軸指令電圧vα *,vβ *は、3相モータ102のα−β座標上におけるα軸指令電圧vα *及びβ軸指令電圧vβ *をまとめて記載したものである。推定磁束Ψsのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定磁束Ψα、推定磁束Ψβと記載する。トルク推定部114によって、推定磁束Ψs及び軸電流iα,iβから推定トルクTeが特定される。位相推定部110及び速度推定部111によって、推定磁束Ψsから推定磁束Ψsの位相θs及び推定速度ωrが特定される。指令トルク特定部124によって、指令速度ωref *及び推定速度ωrから指令トルク(第一の指令トルク)Te *が特定される。トルク制限部125によって、第一の指令トルクTe *、推定磁束Ψs及び軸電流iα,iβから、第二の指令トルクTe **が生成される。トルク制限部125は、モータトルクを制限する役割を担う。トルク偏差演算部121によって、第二の指令トルクTe **と推定トルクTeの偏差(トルク偏差ΔT=Te **−Te)が求められる。位置特定部190によって、位相θs及びトルク偏差ΔTから指令磁束ベクトルΨs *の位相(指令位相)θs *が特定される。修正振幅特定部123によって、電圧制限値Vam及び軸指令電圧vα *,vβ *から、修正振幅ΔΨが求められる。仮設定部126によって、第二の指令トルクTe **から仮振幅|Ψs_MTPA *|が特定される。加算部127によって、仮振幅|Ψs_MTPA *|及び修正振幅ΔΨから指令磁束ベクトルΨs *の振幅|Ψs *|(指令振幅|Ψs *|)が生成される。修正振幅特定部123及び加算部127は、モータ電圧ベクトルの振幅を制限する役割(弱め磁束制御を行う役割)を担う。指令磁束特定部112によって、指令振幅|Ψs *|及び指令位相θs *から、指令磁束ベクトルΨs *が求められる。指令磁束ベクトルΨs *のα軸成分及びβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束Ψα *、β軸指令磁束Ψβ *と記載する。α軸磁束偏差演算部113aによって、α軸指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαとの間の偏差(磁束偏差)ΔΨαが求められる。β軸磁束偏差演算部113bによって、β軸指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβとの間の偏差(磁束偏差)ΔΨβが求められる。指令電圧特定部107によって、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及び軸電流iα,iβから、軸指令電圧vα *,vβ *が求められる。α,β/u,v,w変換部109によって、軸指令電圧vα *,vβ *が指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *は、インバータ101の動作を規定するPWMデューティDu,Dv,Dwの生成に用いられる電圧ベクトルである。
このような制御により、インバータ101を介して3相モータ102に電圧ベクトルが印加される。3相モータ102の速度が指令速度ωref *に追従する。3相モータ102のモータ磁束ベクトル及びモータトルクが指令磁束ベクトルΨs *及び指令トルクTe *に追従する。弱め磁束制御が実行されているときに、高い精度で指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *の振幅(電圧指令値=√(vα *^2+vβ *^2))及びモータ電圧ベクトルの振幅を電圧制限値Vamに一致させ、高い精度でモータ電流の振幅を制限し、高い精度でモータトルクを制限することができる。
本明細書では、軸電流iα,iβは、実際に3相モータ102を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。推定磁束Ψs、修正振幅ΔΨ、推定トルクTe、電圧制限値Vam、指令速度ωref *、指令トルクTe *,Te **、指令磁束ベクトルΨs *、指令電圧ベクトルvα *,vβ *、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *等も同様である。
異なる座標系で表されているものの、軸指令電圧vα *,vβ *と指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *とは実体的には同じである。このため、以下の説明では、軸指令電圧vα *,vβ *を、指令電圧ベクトルvα *,vβ *を呼ぶことがある。また、軸電流iα,iβ及び相電流iu,iwを、モータ電流ベクトルiα,iβ及びモータ電流ベクトルiu,iwと呼ぶこともある。
本実施形態の制御に関する各構成要素について、以下で説明する。
(デューティ生成部104)
図1に示すデューティ生成部104は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwを生成する。本実施形態では、デューティ生成部104は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分を、各相のデューティDu,Dv,Dwに変換する。デューティDu,Dv,Dwの生成方法としては、一般的な電圧形PWMインバータに用いられる方法を用いることができる。例えば、デューティDu,Dv,Dwは、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を、直流電源118(図4)の電圧値Vdcの半分の値で除すことにより求めてもよい。この場合、デューティDuは、2×vu */Vdcである。デューティDvは、2×vv */Vdcである。デューティDwは、2×vw */Vdcである。デューティ生成部104は、デューティDu,Dv,Dwを出力する。
(インバータ101)
インバータ101はPWMインバータである。図4に示すように、本実施形態のインバータ101は、スイッチング素子119a,119b,119c,119d,119e,119f及び還流ダイオード120a,120b,120c,120d,120e,120fが対になった変換回路、ベースドライバ116、平滑コンデンサ117及び直流電源118を含む。直流電源118は、ダイオードブリッジ等によって整流された出力を表す。直流電源118の電圧Vdcは、DCリンク電圧Vdcと呼ばれることがある。なお、本明細書では、変換回路及び平滑コンデンサ117を併せた構成をインバータと記載する。
インバータ101は、PWM制御によって3相モータ102に電圧ベクトルを印加する。具体的には、3相モータ102への給電は、スイッチング素子119a〜119fを介して、直流電源118から行われる。より具体的には、まず、デューティDu,Dv,Dwがベースドライバ116に入力される。次に、デューティDu,Dv,Dwがスイッチング素子119a〜119fを電気的に駆動するためのドライブ信号に変換される。次に、ドライブ信号に従って各スイッチング素子119a〜119fが動作する。
本実施形態では、インバータ101は、スイッチング素子119a〜119fを用いた3相スイッチング回路である。スイッチング素子119a〜119fとしては、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。
(3相モータ102)
図1に示す3相モータ102は、モータ制御装置100の制御対象である。3相モータ102には、インバータ101によって、モータ電圧ベクトルが印加される。「3相モータ102にモータ電圧ベクトルが印加される」とは、3相モータ102における3相交流座標上の3相(U相、V相、W相)の各々に電圧が印加されることを指す。本実施形態では、3相(U相、V相、W相)の各々が、相対的に高電圧を有する高電圧相と、相対的に低電圧を有する低電圧相との2種類から選択されるいずれかとなるように、3相モータ102が制御される。
本実施形態における3相モータ102は、同期モータである。詳細には、本実施形態における3相モータ102は、永久磁石同期モータである。3相モータ102は、SPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)であっても、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)であってもよい。SPMSMでは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが同じである。IPMSMは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する突極性(一般には、Lq>Ldの逆突極性)を有する。IPMSMは、マグネットトルクに加えてリラクタンストルクも利用できる。このため、IPMSMの駆動効率は極めて高い。
(第1電流センサ105a、第2電流センサ105b)
図1に示す第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bとして、公知の電流センサを用いることができる。本実施形態では、第1電流センサ105aは、u相を流れる相電流iuを測定するように設けられている。第2電流センサ105bは、w相を流れる相電流iwを測定するように設けられている。ただし、第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bは、u相及びw相の2相以外の組み合わせの2相の電流を測定するように設けられていてもよい。電流センサ105a,105bの具体例は、カレントトランス及びシャント抵抗である。
(u,w/α,β変換部106)
図3に示すu,w/α,β変換部106は、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換する。具体的に、u,w/α,β変換部106は、式(1)及び(2)により、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換して、軸電流iα,iβを出力する。
Figure 2017123753
Figure 2017123753
(モータ磁束推定部108)
モータ磁束推定部108は、モータ電流ベクトル(軸電流)iα,iβ及び指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *から、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)を求める。具体的に、モータ磁束推定部108は、式(3)及び(4)を用いて、推定磁束Ψα,Ψβを求める。式(3)及び(4)におけるΨα|t=0、Ψβ|t=0は、それぞれ推定磁束Ψα,Ψβの初期値である。式(3)及び(4)におけるRは、3相モータ102の巻線抵抗である。モータ磁束推定部108は、完全積分器であってもよく不完全積分器であってもよい。モータ磁束推定部108がDSP、マイクロコンピュータ等のディジタル制御装置に組み込まれている場合は、式(3)及び(4)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成され得る。この場合の典型例では、1制御周期前における推定磁束Ψα,Ψβに、現在の制御周期に由来する値を加減算する。
Figure 2017123753
Figure 2017123753
(トルク推定部114)
トルク推定部114は、モータ電流ベクトル及び推定されたモータ電流ベクトルからモータトルクを推定する。本実施形態では、トルク推定部114は、モータ電流ベクトル(軸電流)iα,iβ及び推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)から推定トルクTeを求める。具体的に、トルク推定部114は、式(5)を用いて、推定トルクTeを求める。式(5)におけるPnは、3相モータ102の極対数である。
Figure 2017123753
(位相推定部110)
位相推定部110は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)から推定磁束Ψsの位相θsを求める。具体的に、位相推定部110は、式(6)により、推定磁束Ψsの位相θsを求める。
Figure 2017123753
(速度推定部111)
速度推定部111は、現在の制御周期において求めた位相θs(n)と、前回の制御周期において求めた位相θs(n−1)とを用いて、式(7)により、推定速度ωrを求める。速度推定部111は、公知の位相推定器である。ここで、Tsは本制御における制御周期(サンプリング周期)を意味する。nは、タイムステップである。
Figure 2017123753
(指令トルク特定部124)
指令トルク特定部124は、指令速度ωref *及び推定速度ωrから、指令トルク(第1の指令トルク)Te *を求める。具体的に、指令トルク特定部124は、式(8)により、第1の指令トルクTe *を求める。式(8)におけるKsPは比例ゲインである。KsIは積分ゲインである。sはラプラス演算子である。指令トルク特定部124は、公知のPI補償器である。
Figure 2017123753
(トルク制限部125)
トルク制限部125は、指令トルクを第一の指令トルクTe *から第二の指令トルクTe **に修正する。具体的には、トルク制限部125は、第一の指令トルクTe *、推定磁束Ψs及びモータ電流ベクトル(軸電流)iα,iβから、第二の指令トルクTe **を特定する。より具体的には、トルク制限部125は、式(9)及び(10)に基づいて、トルク制限値Tlimを計算する。トルク制限部125は、第一の指令トルクTe *がトルク制限値Tlim *よりも大きい場合、第二の指令トルクTe **としてトルク制限値Tlim *を出力する。一方、第一の指令トルクTe *がトルク制限値Tlim *以下である場合、第二の指令トルクTe **として第一の指令トルクTe *を出力する。式(9)のIamは、電流制限値を意味する。式(10)のPnは、3相モータ102の極対数である。トルク制限部125は、式(9)及び(10)に基づいて動作することによって、モータ電流ベクトルの振幅を電流制限値Iamを一致させ、高い精度でモータトルクをトルク制限値Tlim *に一致させることができる。なお、式(9)及び(10)のTrは、無効トルクである。式(10)から理解されるように、無効トルクTrは、磁束ベクトルの電流ベクトルとの内積を用いることによって、具体的にはこの内積に極対数Pnを乗じることによって、計算できる。無効トルクTrは、3相モータ102のインダクタンスに蓄えられる磁気エネルギーに相当する量であり、無効電力に対応する量である。無効トルクTrの詳細については、非特許文献1等の公知の文献を参照されたい。
Figure 2017123753
なお、式(9)の|Ψs|(=√(Ψα^2+Ψβ^2))は、モータ磁束推定部108由来のものである。つまり、推定されたモータ磁束ベクトルの振幅である。ただし、推定されたモータ磁束ベクトルの振幅に代えて、指令振幅|Ψs *|(=√(Ψα *^2+Ψβ *^2))を用いてもよい。また、式(10)のΨα及びΨβも、モータ磁束推定部108由来のものである。つまり、推定されたモータ磁束ベクトルである。ただし、推定されたモータ磁束ベクトルに代えて、指令磁束ベクトルΨs *(Ψα *及びΨβ *)を用いてもよい。
要するに、トルク制限部125は、推定されたモータ磁束ベクトルの振幅|Ψs|又は指令振幅|Ψs *|と、推定されたモータ磁束ベクトルΨs又は指令磁束ベクトルΨs *と、モータ電流ベクトルと、電流制限値Iamとを用いてモータ電流ベクトルの振幅を電流制限値Iamに追従させるモータトルクであるトルク制限値Tlim *を特定する。トルク制限部125は、トルク制限部125に与えられた指令トルクがトルク制限値Tlim *以下である場合には指令トルクを修正せず、トルク制限部125に与えられた指令トルクがトルク制限値Tlim *よりも大きい場合には指令トルクをトルク制限値Tlim *に修正する。
(トルク偏差演算部121)
トルク偏差演算部121は、第二の指令トルクTe **と推定トルクTeとの偏差(トルク偏差ΔT=Te *−Te)を求める。トルク偏差演算部121としては、公知の演算子を用いることができる。
(位置特定部190)
位置特定部190は、位相θs及びトルク偏差ΔTから指令磁束ベクトルΨs *の位相(指令位相)θs *を特定する。具体的には、トルク偏差ΔTを用いてモータ磁束ベクトルの位相が移動するべき制御周期毎の移動量(回転量)Δθsを特定し、特定された移動量Δθsと推定されたモータ磁束ベクトルの位相θsとを用いて指令磁束ベクトルの指令位相θs *を特定する。より具体的には、式(11)により、モータ磁束ベクトルの移動量Δθsを求める。式(12)を用いて、指令位相θs *を求める。式(11)におけるKθPは比例ゲインである。KθIは積分ゲインである。位置特定部190は、トルク偏差ΔTをゼロに近づける。この点で、位置特定部190は、トルクの補償機構を構成するともいえる。要するに、本実施形態の位置特定部190は、トルク制限部125から出力された指令トルク(第二の指令トルクTe **)と、推定されたモータトルク(推定トルクTe)との間の偏差であるトルク偏差ΔTをゼロに近づけるトルクフィードバック制御を含む制御を実行することによって、トルク偏差ΔTをゼロに近づける指令位相θs *を特定する。位置特定部190がDSP、マイクロコンピュータ等のディジタル制御装置に組み込まれている場合は、式(12)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成されうる。
Figure 2017123753
Figure 2017123753
(修正振幅特定部123)
修正振幅特定部123は、電圧制限値Vam及び指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *から修正振幅ΔΨを求める。修正振幅特定部123は、図5に示すように、振幅演算部128と、電圧偏差演算部129と、電圧偏差補償部130と、定数部131と、切替部132とを含んでいる。
振幅演算部128は、指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *から指令電圧ベクトルの振幅(大きさ)Vaを求める。具体的には、振幅演算部128は、式(13)により、振幅Vaを計算する。式(13)から理解されるように、本実施形態では、振幅Vaは、指令電圧ベクトルの各成分(vα *及びvβ *)の二乗和平方根として計算される。
Figure 2017123753
電圧偏差演算部129は、電圧制限値Vamと指令電圧ベクトルの振幅Vaを取得し、これらの偏差(電圧偏差ΔV=Vam−Va)を求める。電圧偏差演算部129としては、公知の演算子を用いることができる。
電圧偏差補償部130は、電圧偏差ΔVから第1の修正振幅ΔΨ1を求める。具体的には、電圧偏差補償部130は、式(14)及び(15)により、第1の修正振幅ΔΨ1を計算する。式(14)におけるK1Pは、比例ゲインである。K1Iは、積分ゲインである。電圧偏差補償部130は、公知のPI補償器である。電圧偏差補償部130として、PI補償器以外の補償器を用いることもできる。
Figure 2017123753
Figure 2017123753
定数部131は、切替部132が取得可能な定数を有している。本実施形態では、定数はゼロである。
切替部132は、図6のフロー図に従って動作する。図6のステップS101は、切替部132が指令電圧ベクトルの振幅Vaが電圧制限値Vamよりも大きいか否かを判断するステップである。振幅Vaが電圧制限値Vamよりも大きいと判断されると、ステップS102に進む。振幅Vaが電圧制限値Vam以下であると判断されると、ステップS103に進む。ステップS102では、切替部132が修正振幅ΔΨとして第1の修正振幅ΔΨ1を選択する。ステップS103では、切替部132が修正振幅ΔΨとしてゼロを選択する。
(仮設定部126)
仮設定部126は、第2の指令トルクTe **から仮振幅を特定する。仮設定部126は、ルックアップテーブル、計算式(近似式)が格納された演算子等を用いて構成できる。ルックアップテーブルを用いる場合、第2の指令トルクTe **と仮振幅との対応関係を表すルックアップテーブルを事前に準備することができる。演算子における計算式も、事前に準備できる。このようなルックアップテーブル及び計算式は、予め行った測定データ又は理論に基づいて設定できる。
本実施形態では、弱め磁束制御を行わない場合(切替部132が修正振幅ΔΨとしてゼロを選択する場合)において、最大トルク/電流制御(MTPA)が実行されるように仮設定部126が構成されている。MTPAは、最小の電流で最大のトルクを発生させるための制御である。本実施形態では、MTPA用の仮振幅を仮振幅|Ψs_MTPA *|又はMTPA指令振幅|Ψs_MTPA *|と呼ぶことがある。仮振幅|Ψs_MTPA *|は、以下の考え方に基づいて設定される。3相モータ102として磁気的突極性を有さないモータを用いる場合、モータ磁束ベクトルの振幅|Ψs|及びモータトルクTは、式(16A)及び(16B)で概算される。|Ψa|は、磁束パラメータである。磁束パラメータ|Ψa|は、3相モータ102における永久磁石が作る磁石磁束ベクトル(界磁磁束ベクトルとも呼ばれる)の振幅として与えられた定数である。Lは、3相モータ102の電機子巻線の一相当たりのインダクタンスである。iqはq軸電流である。Pnは、モータの極対数である。式(16A)及び(16B)から、式(16C)が導かれる。Tを第2の指令トルクTe **に、|Ψs|を仮振幅|Ψs_MTPA *|にそれぞれ置き換えることで、第2の指令トルクTe **と仮振幅|Ψs_MTPA *|との関係式が導かれる。この関係式を用いれば、第2の指令トルクTe **から仮振幅|Ψs_MTPA *|を求めることができる。当然ながら、変換テーブルを作成することもできる。3相モータ102として磁気的突極性を有するモータを用いる場合、モータ磁束ベクトルの振幅|Ψs|及びモータトルクTは、式(16D)及び(16E)で概算される。Ldは、d軸インダクタンスである。Lqは、q軸インダクタンスである。idはd軸電流である。d軸電流id及びq軸電流iqは、式(16F)の関係を概ね満たす。式(16D)、(16E)及び(16F)によって、変数id,iqを用いることなくモータトルクTからモータ磁束ベクトルの振幅|Ψs|を特定可能な変換テーブルが得られる。Tを第2の指令トルクTe **に、|Ψs|を仮振幅|Ψs_MTPA *|にそれぞれ置き換えることで、第2の指令トルクTe **から仮振幅|Ψs_MTPA *|を特定することができる。MTPAに関しては、公知の文献『武田洋次、森本茂雄、松井信行、本田幸夫、「埋込磁石同期モータの設計と制御」、株式会社オーム社、2001年10月25日発行』、等が参考になる。
Figure 2017123753
本実施形態では、仮設定部126は、第1の指令トルクTe *ではなく第2の指令トルクTe **からMTPA指令振幅|Ψs_MTPA *|を生成する。従って、弱め磁束制御が行われない状況においては、トルク制限部125が第2の指令トルクTe **をトルク制限値Tlimに制限している場合も、そうでない場合も、第2の指令トルクTe **に応じたMTPA指令振幅|Ψs_MTPA *|を適切に特定することができる。
なお、当然ではあるが、仮設定部126でMTPA用ではない仮振幅を特定することもできる。
(加算部127)
加算部(補正部)127は、仮振幅|Ψs_MTPA *|に修正振幅ΔΨを加算して、指令振幅|Ψs *|を特定する。加算部127としては、公知の演算子を用いることができる。
上述のように、修正振幅特定部123、仮設定部126及び加算部(補正部)127によって、振幅特定部140が構成される。振幅特定部140の動作は、以下のようにまとめることができる。すなわち、振幅特定部140は、指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する。具体的に、振幅特定部140は、指令電圧ベクトルの振幅Vaが電圧制限値Vamを超えた第1の場合において、指令電圧ベクトルの振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、電圧偏差をゼロに近づける指令振幅|Ψs *|を特定する。具体的には、振幅特定部140は、仮設定部126を用いて指令磁束ベクトルの仮振幅|Ψs_MTPA *|を設定し、第1の場合において修正振幅特定部123を用いて電圧フィードバック制御を含む制御によって修正振幅ΔΨを特定し、補正部127を用いて仮振幅|Ψs_MTPA *|に修正振幅ΔΨを加算して指令振幅|Ψs *|を特定する。より具体的には、第1の場合において、修正振幅特定部123の電圧偏差補償部130は、修正振幅ΔΨを操作量とする電圧フィードバック制御を実行することによって、指令電圧ベクトルの振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差をゼロに近づける(より具体的には、ゼロに収束させる)。なお、第1の場合においては、修正振幅特定部123は、ゼロよりも小さい修正振幅ΔΨを特定する。改めて断るまでもないが、電圧フィードバック制御は、電圧を用いたフィードバック制御である。フィードバック制御は、日本工業規格JIS Z8116(1994)に規定されているように、フィードバックによって制御量を目標値と比較し、それらを一致させるように操作量を生成する制御である。本実施形態の電圧フィードバック制御では、制御量は指令電圧ベクトルのの振幅(振幅Va)であり、目標値は電圧制限値Vamであり、操作量は修正振幅ΔΨである。
また、切替部132については、以下のように説明することができる。すなわち、切替部132は、第1モードと第2モードとを切り替えるように構成されている。第1モードは、修正振幅ΔΨを操作量とする電圧フィードバック制御を電圧偏差補償部130が実行することによって、指令電圧ベクトルの振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差をゼロに近づける(より具体的には、ゼロに収束させる)モードである。第2モードは、定数を修正振幅ΔΨとするモードである。そして、切替部132は、第1の場合には第1モードを選択し、指令電圧ベクトルの振幅Vaが電圧制限値Vam以下である第2の場合には第2モードを選択する。
本実施形態の切替部132によれば、弱め磁束制御(第1モード)と別の制御(第2モード)とを切り替えることができる。具体的には、当該別の制御は、MTPAである。本実施形態では定数部131にゼロが格納されているので、第2モードでは指令振幅|Ψs *|は、|Ψs *|=|Ψs_MTPA *|+0=|Ψs_MTPA *|となるためである。
(指令磁束特定部112)
指令磁束特定部112は、指令振幅|Ψs *|及び指令位相θs *から、指令磁束ベクトルΨs *(指令磁束Ψα *,Ψβ *)を特定する。具体的には、式(17)及び(18)を用いて、指令磁束Ψα *,Ψβ *を求める。
Figure 2017123753
Figure 2017123753
(α軸磁束偏差演算部113a、β軸磁束偏差演算部113b)
α軸磁束偏差演算部113aは、指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαを取得し、これらの偏差(磁束偏差ΔΨα=Ψα *−Ψα)を求める。β軸磁束偏差演算部113bは、指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβを取得し、これらの偏差(磁束偏差ΔΨβ=Ψβ *−Ψβ)を求める。磁束偏差演算部113a,113bとしては、公知の演算子を用いることができる。
(指令電圧特定部107)
指令電圧特定部107は、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及びモータ電流ベクトル(軸電流)iα,iβから、第1の指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *を特定する。具体的に、指令電圧特定部107は、式(19)を用いて、α軸指令電圧vα *を求める。また、指令電圧特定部107は、式(20)を用いて、β軸指令電圧vβ *を求める。
Figure 2017123753
Figure 2017123753
(α,β/u,v,w変換部109)
α,β/u,v,w変換部109は、指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *を、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換する。具体的に、α,β/u,v,w変換部109は、式(21)により、指令電圧ベクトルvα *,vβ *を指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換して、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を出力する。
Figure 2017123753
(本実施形態の効果)
非特許文献1に記載されている技術では、指令振幅を数式で与えることによってフィードフォワードで弱め磁束制御を実行していた。上述の通り、非特許文献1に記載されている弱め磁束制御は精度が高いとは言えない。これに対し、本実施形態の振幅特定部140では、指令電圧ベクトルの振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、電圧偏差をゼロに近づける指令振幅|Ψs *|を特定する。フィードバック制御であるが故に、抵抗パラメータの誤差(非特許文献1の式(2)には抵抗パラメータRaが含まれていることに留意されたい)、速度推定の誤差等が存在しても、振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差が高い精度でゼロに近づく。
また、振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差をゼロにする磁束制限値|Ψs_lim *|が高い精度で生成される。つまり、磁束制限値|Ψs_lim *|の誤差を小さくすることができる。従ってモータ磁束ベクトルの振幅の適切な値からの誤差を小さくすることができる。式(9)及び(10)から理解されるように、本実施形態のトルク制限部125は、モータ電流ベクトルの振幅を電流制限値Iamを一致させ、モータトルクをトルク制限値Tlim *に一致させる制御を行う際に、磁束の情報を用いる。その磁束の情報の誤差を小さくすることができるため、弱め磁束制御を行っているときにおいて、高精度にモータ電流ベクトルの振幅を電流制限値Iamを一致させ、高精度にモータトルクをトルク制限値Tlim *に一致させることができる。
また、本実施形態によれば、適切なタイミングでスムーズにモードが切り替わる。すなわち、指令電圧ベクトルの振幅Vaが電圧制限値Vamよりも大きい第1の場合には弱め磁束制御が実施される(第1モード)。振幅Vaが電圧制限値Vam以下である第2の場合には、MTPAが実施される(第2モード)。
第1の実施形態のモータ制御装置100によれば、3相モータ102の速度が指令速度ωref *と高い精度で一致する。モータ制御装置100は、冷凍空調装置における圧縮機の駆動時等に好適に利用されうる。
(変形例1−1A)
以下、変形例1−1Aのモータ制御装置について説明する。なお、変形例1−1Aでは、第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図7Aに示すように、変形例1−1Aのモータ制御部203aは、振幅特定部140に代えて、振幅特定部240aを有している。振幅特定部240aは、修正振幅特定部123に代えて修正振幅特定部223aを有している。
(修正振幅特定部223a)
修正振幅特定部223aは、3相モータ102のモータ電流ベクトル(軸電流)iα,iβ、推定磁束Ψα,Ψβ、電圧制限値Vam及び指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *から修正振幅ΔΨを求める。修正振幅特定部223aは、図8Aに示すように、修正振幅特定部123の構成要素に加え、誤差パラメータ演算部231aと、誤差パラメータ偏差演算部232と、内積補償部233とを有している。
修正振幅特定部223aは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する場合でも、一致する場合においても、同じ動作を実施する。具体的には、インダクタンス差がある場合において、インダクタンスLとして、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスとの間の値を用いることができる。また、磁気的突極性が大きくない場合は、L=Ldと取り扱っても差し支えがない。つまり、インダクタンスの値として、d軸インダクタンスの値、d軸インダクタンスよりも大きくq軸インダクタンスよりも小さい値、又はd軸インダクタンスよりも小さくq軸インダクタンスよりも大きい値を用いることができる。
特許文献1は、上記のようにインダクタンスLを設定する上で参考になる。特許文献1には、dm−qm座標系に関する技術が記載されている。dm−qm座標系は、埋込磁石構造の永久磁石同期モータ等の磁気的突極性を有するモータを、磁気的突極性を有していない永久磁石同期モータと同様に扱うことを可能とする。dm−qm座標系を用い、dm軸電流(制御座標系ではγ軸電流)をゼロにすることによって、最大トルク制御(最大トルク/電流制御)を行うことができる。3相モータ102が磁気的突極性を有する場合、d軸電流をdm軸電流に、磁石磁束ベクトルΨaを拡張鎖交磁束ベクトルΦexmに、インダクタンスLを仮想インダクタンスLmに、それぞれ置き換えることができる。dm軸電流、拡張鎖交磁束ベクトルΦexm及び仮想インダクタンスLmの詳細については、特許文献1(数式36及び段落0182〜0183等)を参照することができる。なお、Lmは、Ld≦Lm<Lqを満たす。また、インダクタンス差がない場合においては、dm−qm座標系と、一般的なd−q座標系とは一致し、Lm=Ld=Lqとすればよい。すなわち、インダクタンス差がある場合についての考え方は、インダクタンス差がない場合の考え方を包含することになる。
(誤差パラメータ演算部231a)
誤差パラメータ演算部231aは、仮想インダクタンス(3相モータ102のインダクタンス)Lmとモータ電流ベクトル(軸電流)iα,iβと推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)とから、誤差パラメータεを演算する。具体的には、まず、電機子反作用磁束を推定する(推定電機子反作用磁束Lmaを求める)。推定電機子反作用磁束Lmaのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβと記載する。推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβは、仮想インダクタンスLmと、軸電流iα,iβとの積である。次に、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)及び推定電機子反作用磁束Lma(推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβ)から、磁石磁束ベクトルを推定する(推定磁石磁束Ψ’aeを求める)。推定磁石磁束Ψ’aeのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと記載する。具体的には、式(22)及び(23)に示すように、推定磁束Ψα,Ψβから推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβを減じることにより推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβを求める。次に、推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとから誤差パラメータεを式(24)のように計算する。
Figure 2017123753
Figure 2017123753
Figure 2017123753
(誤差パラメータ偏差演算部232)
誤差パラメータ偏差演算部232は、指令誤差パラメータε*と誤差パラメータεを取得し、これらの偏差(誤差パラメータ偏差Δε:ε*−ε)を求める。誤差パラメータ偏差演算部232としては、公知の演算子を用いることができる。指令誤差パラメータε*は、第1の実施形態の修正振幅ΔΨと同じである。
(内積補償部233)
内積補償部233は、誤差パラメータ偏差Δεを取得し、これがゼロとなるように修正振幅ΔΨを特定する。変形例1−1Aの内積補償部233は、PI補償部である。従って、内積補償部233は、式(25)に示すように、誤差パラメータ偏差Δεを入力とする比例・積分演算を実施することにより修正振幅ΔΨを求める。
Figure 2017123753
振幅特定部240a(修正振幅特定部223a、仮設定部126及び加算部(補正部)127)の動作は、以下のようにまとめることができる。すなわち、振幅特定部240aは、指令電圧ベクトルの振幅Vaが電圧制限値Vamを超えた第1の場合において、指令電圧ベクトルの振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、電圧偏差をゼロに近づける指令振幅|Ψs *|を特定する。具体的には、振幅特定部240aは、仮設定部126を用いて指令磁束ベクトルの仮振幅を設定し、第1の場合において修正振幅特定部223aを用いて電圧フィードバック制御を含む制御によって修正振幅ΔΨを特定し、補正部127を用いて仮振幅|Ψs_MTPA *|に修正振幅ΔΨを加算して指令振幅|Ψs *|を特定する。より具体的には、第1の場合において、電圧偏差補償部130は、第1の指令誤差パラメータε*を操作量とする電圧フィードバック制御を実行することによって、指令電圧ベクトルの振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差をゼロに近づける(より具体的には、ゼロに収束させる)。そして、第1の場合において、内積補償部233は、修正振幅ΔΨを操作量とする第1のフィードバック制御を実行することによって、推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβ(3相モータ102の推定された磁石磁束ベクトル)と軸電流iα,iβ(モータ電流ベクトル)との内積(第2内積)である誤差パラメータεと第1の指令誤差パラメータε*との間の偏差をゼロに近づける(より具体的には、ゼロに収束させる)。
また、切替部132については、以下のように説明することができる。すなわち、切替部132は、第1モードと第2モードとを切り替えるように構成されている。第1モードは、第1の指令誤差パラメータε*を操作量とする電圧フィードバック制御を電圧偏差補償部130が実行することによって、指令電圧ベクトルの振幅Vaと電圧制限値Vamとの間の偏差をゼロに近づけ(より具体的には、ゼロに収束させ)、修正振幅ΔΨを操作量とする第1のフィードバック制御を内積補償部233が実行することによって、第1の指令誤差パラメータε*と誤差パラメータεとの間の偏差をゼロに近づける(より具体的には、ゼロに収束させる)モードである。第2モードは、修正振幅ΔΨを操作量とする第2のフィードバック制御を内積補償部233が実行することによって、定数である第2の指令誤差パラメータε*と誤差パラメータεとの間の偏差をゼロに近づける(より具体的には、ゼロに収束させる)モードである。そして、切替部132は、第1の場合には第1モードを選択し、振幅Vaが電圧制限値Vam以下である第2の場合には第2モードを選択する。
(変形例1−1Aの効果)
変形例1−1Aにおいても、第1の実施形態と同様に、適切なタイミングでモードが切り替わる。すなわち、指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *の振幅Vaが電圧制限値Vamよりも大きい第1の場合には弱め磁束制御が実施される(第1モード)。具体的には、第1の場合には、弱め磁束制御に適合した修正振幅ΔΨが生成される。振幅Vaが電圧制限値Vam以下である第2の場合には、MTPAに適合した修正振幅ΔΨが生成される(第2モード)。
さらに、変形例1−1Aでは、第2の場合において、非常に高い精度でMTPAを実行することができる。以下、この点について説明する。MTPAが成立するには、推定磁石磁束Ψ’aeと軸電流iα,iβとを直交させる必要がある。そこで、変形例1−1Aでは、第2の場合に推定磁石磁束Ψ’aeと軸電流iα,iβとの内積をゼロにするために、指令誤差パラメータε*をゼロに設定している。すなわち、変形例1−1Aでは、仮振幅はMTPAに適した仮振幅|Ψs_MTPA *|であり、第2の場合において、その仮振幅がMTPAに適合した修正振幅ΔΨにより補正されることによって修正振幅ΔΨが生成される。従って、変形例1−1Aによれば、第2の場合において、非常に高い精度でMTPAを行うことが可能となる。すなわち、変形例1−1Aのモータ制御部203aを用いれば、モータ制御部103を用いる場合よりも、3相モータ102を効率よく駆動させることができる。
(変形例1−1B)
以下、変形例1−1Bのモータ制御装置について説明する。なお、変形例1−1Bでは、変形例1−1Aと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図7Bに示すように、変形例1−1Bのモータ制御部203bは、振幅特定部240aに代えて、振幅特定部240bを有している。振幅特定部240bは、修正振幅特定部223aに代えて修正振幅特定部223bを有している。
(修正振幅特定部223b)
図8Bに示すように、修正振幅特定部223bは、変形例1−1Aにおける誤差パラメータ演算部231aに代えて、誤差パラメータ演算部231bを有する。
(誤差パラメータ演算部231b)
誤差パラメータ演算部231bは、仮想インダクタンスLm(3相モータ102のインダクタンス)と軸電流iα,iβと推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)とから、誤差パラメータεを演算する。具体的には、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)と軸電流iα,iβとの内積Ψαα+Ψββを特定する。仮想インダクタンスLmと、軸電流iα,iβとから、仮想インダクタンスと電流の振幅の2乗との積Lm(iα 2+iβ 2)を特定する。内積Ψαα+Ψββから積Lm(iα 2+iβ 2)を減じて差Ψαα+Ψββ−Lm(iα 2+iβ 2)を特定し、誤差パラメータεを得る。誤差パラメータ演算部231bが行う演算は、式(26)により表現される。
Figure 2017123753
変形例1−1Bの修正振幅特定部223bでは、変形例1−1Aの修正振幅特定部223aで用いた式とは異なる式を用いるものの、変形例1−1Aのときと同じ内積(推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとの第2内積)を誤差パラメータεとして特定し、同じ修正振幅ΔΨを特定する。従って、変形例1−1Bのモータ制御部203bを用いれば、モータ制御部203aを用いる場合と同じ効果を得ることができる。なお、本明細書では、「推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとの内積を特定する」は、推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとの内積が結果として特定されるという趣旨の表現であり、計算過程を特定する趣旨の表現ではない。
なお、以下では、修正振幅特定部223aを用いた例を説明することがあるが、これらの例においても、修正振幅特定部223aに代えて修正振幅特定部223bを設けることができる。
(変形例1−2)
以下、変形例1−2のモータ制御装置について説明する。なお、変形例1−2では、変形例1−1Aと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図9に示すように、変形例1−2のモータ制御部203cは、振幅特定部240aに代えて、振幅特定部240cを有している。振幅特定部240cは、仮設定部126に代えて、仮設定部226を有している。
(仮設定部226)
仮設定部226では、指令磁束ベクトルΨs *の仮振幅が設定(特定)される。変形例1−2では、定数である仮振幅が仮設定部226に予め格納されている。変形例1−2では、修正振幅特定部224aを用いるので、仮振幅を定数としても、第2の場合において、MTPAを実現することができる。変形例1−2の仮振幅は、磁束パラメータΨaである。ただし、仮振幅が磁束パラメータΨaに限られるわけではない。変形例1−2の仮振幅を仮振幅|Ψs0 *|と表記する。
変形例1−2によれば、十分な精度で弱め磁束制御及びMTPAを実現できる。また、変形例1−2によれば、変形例1−1Aに比べて、少ない演算量で3相モータ102の制御を行うことができる。
変形例1−1A、変形例1−1B及び変形例1−2では、推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとの内積を用いた制御が行われている。具体的に、振幅Vaが電圧制限値Vam以下である第2の場合には、その内積と所定の定数(上記の変形例ではゼロ)との間の偏差をゼロにするフィードバック制御を行っている。より一般的には、上記の変形例では、第2の場合において、推定磁束Ψα,Ψβと軸電流iα,iβから、3相モータ102の無効電力に相関のある物理量を求め、その物理量を所定の値に制御している。すなわち、上記の変形例では、無効電力に相関のある物理量として推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとの内積を用いているのである。
無効電力に相関のある物理量の別の例は、推定磁束Ψs(推定されたモータ磁束ベクトル)と軸電流iα,iβ(3相モータ102のモータ電流ベクトル)との第1内積である。このような第1内積を誤差パラメータεとして用いても、変形例1−1A及び1−1Bと同様の制御が実現されうる。すなわち、第1の場合には、弱め磁束制御を行うことができる。第2の場合には、定数部131に適切な定数を格納すれば、各種制御を行うことができる。
また、修正振幅特定部は、第2の場合において、3相モータ102の無効電力を求め、その無効電力を所定の値に制御するための振幅修正量ΔΨを生成するものであってもよい。この場合、無効電力は、内積Ψαα+Ψββに指令速度ωref *を乗じることで求めることができる。推定磁束Ψsの位相を微分して3相モータ102の速度を推定し、その速度を内積Ψαα+Ψββに乗じることで無効電力を求めることもできる。また、軸電流iα,iβと指令電圧ベクトル(軸指令電圧)vα *,vβ *とから無効電力を求めることもできる。具体的には、無効電力の特定を誤差パラメータ演算部に担当させ、無効電力がとるべき定数を定数部に格納し、内積補償部に代えて無効電力と定数との間の偏差をゼロにするための補償部(PI補償部等)を設けることができる。このような構成においても、第1の場合においては、弱め磁束制御が行われることとなる。
本開示は、3相モータに適用でき、特にSPMSM、IPMSM等の同期モータに適用できる。それらの同期モータは、冷暖房装置又は給湯機に使用されたヒートポンプ式冷凍装置に適している。
100 モータ制御装置
101 インバータ
102 3相モータ
103,203a,203b,203c,903 モータ制御部
104 デューティ生成部
105a 第1電流センサ
105b 第2電流センサ
106,906 u,w/α,β変換部
107,907 指令電圧特定部
108,908 モータ磁束推定部
109,909 α,β/u,v,w変換部
110,910 位相推定部
111,911 速度推定部
112,912 指令磁束特定部
113a,913a α軸磁束偏差演算部
113b,913b β軸磁束偏差演算部
114,914 トルク推定部
116 ベースドライバ
117 平滑コンデンサ
118 直流電源
119a〜119f スイッチング素子
120a〜120f 還流ダイオード
121,921 トルク偏差演算部
123,223a,223b 修正振幅特定部
124,924 指令トルク特定部
125,925 トルク制限部
126,226 仮設定部
127 加算部(補正部)
128 振幅演算部
129 電圧偏差演算部
130 電圧偏差補償部
131 定数部
132 切替部
140,240a,240b,240c,915 振幅特定部
190,990 位置特定部
231a,231b 誤差パラメータ演算部
232 誤差パラメータ偏差演算部
233 内積補償部
919 電圧制限部

Claims (10)

  1. PWMインバータを用いて3相モータに電圧ベクトルを印加し、前記3相モータのモータ磁束ベクトル及びモータトルクをそれぞれ指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させるモータ制御装置であって、
    前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する振幅特定部であって、前記電圧ベクトルが追従するべき指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記電圧偏差をゼロに近づける前記指令振幅を特定する振幅特定部と、
    前記指令電圧ベクトルと前記3相モータのモータ電流ベクトルとを用いて前記モータ磁束ベクトルを推定するモータ磁束推定部と、
    前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、推定された前記モータ磁束ベクトルの振幅又は前記指令振幅と、推定された前記モータ磁束ベクトル又は前記指令磁束ベクトルと、前記モータ電流ベクトルと、電流制限値とを用いて前記モータ電流ベクトルの振幅を前記電流制限値に追従させる前記モータトルクであるトルク制限値を特定し、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値以下である場合には前記指令トルクを修正せず、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値よりも大きい場合には前記指令トルクを前記トルク制限値に修正するトルク制限部と、を備えたモータ制御装置。
  2. 前記モータ電流ベクトル及び推定された前記モータ磁束ベクトルから前記モータトルクを推定するトルク推定部と、
    前記指令磁束ベクトルの位相である指令位相を特定する位置特定部であって、前記トルク制限部から出力された前記指令トルクと推定された前記モータトルクとの間の偏差であるトルク偏差をゼロに近づけるトルクフィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記トルク偏差をゼロに近づける前記指令位相を特定する位置特定部と、
    前記指令振幅及び前記指令位相から前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、を備えた、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記振幅特定部は、
    前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
    前記第1の場合において、前記電圧フィードバック制御を含む制御によって修正振幅を特定する修正振幅特定部と、
    前記仮振幅に前記修正振幅を加算して前記指令振幅を特定する補正部とを有する、請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記第1の場合において、前記修正振幅特定部は、ゼロよりも小さい前記修正振幅を特定する、請求項3に記載のモータ制御装置。
  5. 前記修正振幅特定部は、電圧偏差補償部を有し、
    前記第1の場合において、前記電圧偏差補償部は、前記修正振幅を操作量とする前記電圧フィードバック制御を実行することによって前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づける、請求項3又は4に記載のモータ制御装置。
  6. 前記修正振幅特定部は、第1モードと第2モードとを切り替える切替部を有し、
    前記第1モードは、前記修正振幅を操作量とする前記電圧フィードバック制御を前記電圧偏差補償部が実行することによって、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づけるモードであり、
    前記第2モードは、定数を前記修正振幅とするモードであり、
    前記切替部は、前記第1の場合には前記第1モードを選択し、前記指令電圧ベクトルの振幅が前記電圧制限値以下である第2の場合には前記第2モードを選択する、請求項5に記載のモータ制御装置。
  7. 前記修正振幅特定部は、電圧偏差補償部と内積補償部とを有し、
    前記第1の場合において、前記電圧偏差補償部は、第1の指令誤差パラメータを操作量とする前記電圧フィードバック制御を実行することによって前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づけ、
    前記第1の場合において、前記内積補償部は、前記修正振幅を操作量とする第1のフィードバック制御を実行することによって、(a)推定された前記モータ磁束ベクトルと前記3相モータのモータ電流ベクトルとの第1内積、又は、(b)前記3相モータの推定された磁石磁束ベクトルと前記モータ電流ベクトルとの第2内積である誤差パラメータと前記第1の指令誤差パラメータとの間の偏差をゼロに近づける、請求項3又は4に記載のモータ制御装置。
  8. 前記修正振幅特定部は、第1モードと第2モードとを切り替える切替部を有し、
    前記第1モードは、前記第1の指令誤差パラメータを操作量とする前記電圧フィードバック制御を前記電圧偏差補償部が実行することによって、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差をゼロに近づけ、前記修正振幅を操作量とする前記第1のフィードバック制御を前記内積補償部が実行することによって、前記第1の前記指令誤差パラメータと前記誤差パラメータとの間の偏差をゼロに近づけるモードであり、
    前記第2モードは、前記修正振幅を操作量とする第2のフィードバック制御を前記内積補償部が実行することによって、定数である第2の指令誤差パラメータと前記誤差パラメータとの間の偏差をゼロに近づけるモードであり、
    前記切替部は、前記第1の場合には前記第1モードを選択し、前記指令電圧ベクトルの振幅が前記電圧制限値以下である第2の場合には前記第2モードを選択する、請求項7に記載のモータ制御装置。
  9. 前記誤差パラメータは前記第2内積であり、
    前記定数はゼロである、請求項8に記載のモータ制御装置。
  10. PWMコンバータを用いて3相発電機に電圧ベクトルを印加し、前記3相発電機の発電機磁束ベクトル及び発電機トルクをそれぞれ指令磁束ベクトル及び指令トルクに追従させる発電機制御装置であって、
    前記指令磁束ベクトルの振幅である指令振幅を特定する振幅特定部であって、前記電圧ベクトルが追従するべき指令電圧ベクトルの振幅が電圧制限値を超えた第1の場合において、前記指令電圧ベクトルの振幅と前記電圧制限値との間の偏差である電圧偏差をゼロに近づける電圧フィードバック制御を含む制御を実行することによって、前記電圧偏差をゼロに近づける前記指令振幅を特定する振幅特定部と、
    前記指令電圧ベクトルと前記3相発電機の発電機電流ベクトルとを用いて前記発電機磁束ベクトルを推定する発電機磁束推定部と、
    前記指令トルクを修正するトルク制限部であって、推定された前記発電機磁束ベクトルの振幅又は前記指令振幅と、推定された前記発電機磁束ベクトル又は前記指令磁束ベクトルと、前記発電機電流ベクトルと、電流制限値とを用いて前記発電機電流ベクトルの振幅を前記電流制限値に追従させる前記発電機トルクであるトルク制限値を特定し、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値以下である場合には前記指令トルクを修正せず、前記トルク制限部に与えられた前記指令トルクが前記トルク制限値よりも大きい場合には前記指令トルクを前記トルク制限値に修正するトルク制限部と、を備えた発電機制御装置。
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