JP2015192463A - モータ制御装置及び発電機制御装置 - Google Patents

モータ制御装置及び発電機制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2015192463A
JP2015192463A JP2014065807A JP2014065807A JP2015192463A JP 2015192463 A JP2015192463 A JP 2015192463A JP 2014065807 A JP2014065807 A JP 2014065807A JP 2014065807 A JP2014065807 A JP 2014065807A JP 2015192463 A JP2015192463 A JP 2015192463A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic flux
motor
estimated
command
synchronous motor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014065807A
Other languages
English (en)
Inventor
松山 哲也
Tetsuya Matsuyama
哲也 松山
富樫 仁夫
Hitoo Togashi
仁夫 富樫
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Original Assignee
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd filed Critical Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Priority to JP2014065807A priority Critical patent/JP2015192463A/ja
Publication of JP2015192463A publication Critical patent/JP2015192463A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Control Of Ac Motors In General (AREA)
  • Control Of Motors That Do Not Use Commutators (AREA)

Abstract

【課題】同期モータの脱調を検出するための技術を提供する。
【解決手段】モータ制御装置100は、同期モータ102の磁束であるモータ磁束を推定するモータ磁束推定部108と、モータ磁束を構成する磁束であり、同期モータ102に流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定する電機子反作用磁束推定部151と、推定されたモータ磁束と推定された電機子反作用磁束とを用いて、モータ磁束を構成する磁束であり、同期モータ102の永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定する磁石磁束推定部152と、推定された磁石磁束を用いて、同期モータ102が脱調しているか否かを判定する脱調判定部154と、を備えている。
【選択図】図5

Description

本発明は、モータ制御装置及び発電機制御装置に関する。
従来から、同期モータの駆動方法として、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)が知られている。一般的な直接トルク制御では、まず、インバータに接続された同期モータの相電流及び相電圧を検出する。次に、相電流及び相電圧から、同期モータの電機子鎖交磁束及びモータトルクを求める。次に、求められたトルクと、指令トルクと、指令振幅と、電気子鎖交磁束の位置とから、指令磁束ベクトルを求める。指令トルク及び指令振幅は、例えば、速度制御装置で求められる。次に、指令磁束ベクトルと、電機子鎖交磁束とから、インバータから同期モータに印加されるべき電圧ベクトルを決定する。次に、決定された電圧ベクトルが同期モータに印加されるように、インバータのスイッチングを制御する。
直接トルク制御の駆動アルゴリズムはシンプルである。また、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを省略できる。
非特許文献1には、直接トルク制御を用いたモータ制御装置の一例が記載されている。
井上、他3名,「直接トルク制御による埋込磁石同期モータのトルクリプル低減と弱め磁束制御(Torque ripple reduction, and flux-weakening control for interior permanent magnet synchronous motor based on direct torque control)」,平成18年電気学会全国大会講演論文集,電気学会,平成18年3月,第4分冊,4−106,p.166
同期モータの制御においては、同期モータの脱調を検出し、脱調を防ぐことが重要である。本発明は、同期モータの脱調を検出するための技術を提供することを目的とする。
すなわち、本開示は、
同期モータの磁束であるモータ磁束を推定するモータ磁束推定部と、
前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータに流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定する電機子反作用磁束推定部と、
推定された前記モータ磁束と推定された前記電機子反作用磁束とを用いて、前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータの永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定する磁石磁束推定部と、
推定された前記磁石磁束を用いて、前記同期モータが脱調しているか否かを判定する脱調判定部と、を備えたモータ制御装置を提供する。
上記のモータ制御装置は、同期モータの脱調を検出することに適している。
第1の実施形態のモータ制御装置のブロック図 dq座標系及びαβ座標系を説明するための図 第1の実施形態のモータ制御部のブロック図 第1の実施形態のPWMインバータの構成図 第1の実施形態の脱調検出部のブロック図 検証実験で得られた時系列データを表す図 第1の変形例のモータ制御装置のブロック図 第1の変形例のモータ制御部のブロック図 第1の変形例の脱調検出部のブロック図 同期モータが脱調していないときのベクトル図 同期モータが脱調しているときのベクトル図
直接トルク制御等を用いた位置センサレス運転では、モータ磁束が推定(演算)される。そして、推定されたモータ磁束と指令磁束ベクトルとが一致するように、同期モータが制御される。
同期モータが永久磁石を有している場合、磁石磁束と電機子反作用磁束との合成ベクトルが推定される(推定合成ベクトルが求められる)。そして、推定合成ベクトルが指令磁束ベクトルに一致するように、モータ電流が流れる。モータ電流は、同期モータに流れる電流ベクトルである。電機子反作用磁束は、モータ電流が作る磁束ベクトルである。磁石磁束は、永久磁石が作る磁束ベクトルである。磁石磁束と電機子反作用磁束との合成ベクトルは、上述のモータ磁束である。
同期モータが正常に制御されている場合(脱調していない場合)におけるこれらのベクトルを図10に示す。Ψsはモータ磁束(推定合成ベクトル)に対応する。Ψaは、磁石磁束に対応する。Liaは、電機子反作用磁束に対応する。iaは、モータ電流に対応する。この例では最大トルク/電流制御(MTPA制御)を行っているため、モータ電流iaは、d軸電流idを含まずq軸電流iqのみを含んでいる。
想定外の外乱により、同期モータは脱調することがある。つまり、ステータに印加する回転磁界と、同期モータのロータの回転とがずれることがある。具体的に、同期モータの負荷が突発的に変動すると、同期モータは脱調し得る。同期モータが脱調すると、通常は、同期モータの回転数は低下する。同期モータの平均トルクが低下するためである。回転数は、やがてゼロとなる。
本発明者らは、同期モータの脱調を、演算により検出することを検討した。回転数がゼロであるときには、図10を用いて説明した推定合成ベクトルΨsと指令磁束ベクトルとは一致せず、この不一致を演算により検出することにより同期モータの脱調を検出できるとも思われる。しかし、実際は、回転数がゼロであっても、推定合成ベクトルΨsと指令磁束ベクトルとは一致する。このことについて、以下で詳細に説明する。
すなわち、同期モータが脱調し、同期モータの回転数がゼロであるときには、磁石磁束がステータの巻線を鎖交することがない。巻線では電圧が誘起されないので、モータ制御装置によるフィードバック制御に磁石磁束が反映されない。この場合には、推定合成ベクトルから磁石磁束分が欠落し、推定合成ベクトルと指令磁束ベクトルとの間にこの欠落分の相違が生じるようにも思われる。しかし、モータ制御装置は、同期モータの回転数がゼロである場合も、推定合成ベクトルが指令磁束ベクトルに一致した状態を維持しようとする。このために、モータ制御装置は、磁石磁束分が補われるような電機子反作用磁束が生成されるように、モータ電流を流そうとする。そのようなモータ電流を流すことができる能力を有する機器が使用されている場合には、実際にそのようなモータ電流が流れる。
この場合には、図11のベクトル図に示すように、MTPA制御において本来的に流れるべきq軸iq電流のみならず、d軸電流idをも含むモータ電流iaが流れる。モータ電流iaによって、図10の電機子反作用磁束Liaに相当する電機子反作用磁束Liqのみならず、図10の磁石磁束Ψaに相当する磁束Lidが生成される。つまり、図10の磁石磁束Ψa相当分が、電機子反作用磁束Lidでカバーされることとなる。結果として、推定合成ベクトルは維持される。
上述の説明から明らかであるように、推定合成ベクトルが指令磁束ベクトルに一致しているか否かを判定することでは、演算上の磁石磁束の位相と実際の磁石磁束の位相とにずれがあること(同期ずれがあること)を検出することは難しい。つまり、この判定方法では、脱調が発生していることを検出することは難しい。同期モータが正常に回転していると誤認され、誤認に基づいた同期モータの制御が継続されてしまうと、システム全体の信頼性が損なわれる。説明は省略するが、MTPA制御以外の制御を行う場合にも同様の問題が生じ得る。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。
すなわち、本開示の第1態様は、
同期モータの磁束であるモータ磁束を推定するモータ磁束推定部と、
前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータに流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定する電機子反作用磁束推定部と、
推定された前記モータ磁束と推定された前記電機子反作用磁束とを用いて、前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータの永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定する磁石磁束推定部と、
推定された前記磁石磁束を用いて、前記同期モータが脱調しているか否かを判定する脱調判定部と、を備えたモータ制御装置を提供する。
第1態様のモータ制御装置は、同期モータの脱調を確実に検出できる。また、このモータ制御装置は、位置センサ、過電流センサ等のセンサを使用することなく、同期モータの脱調を検出できる。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、前記脱調判定部は、推定された前記磁石磁束と、前記同期モータの永久磁石が作る磁束の振幅として与えられた磁束パラメータとを用いて、前記同期モータが脱調しているか否かを判定する、モータ制御装置を提供する。
本開示の第3態様は、第2態様に加え、前記脱調判定部は、推定された前記磁石磁束の振幅が、前記磁束パラメータと0より大きく1より小さい係数との積よりも小さい場合に、前記同期モータが脱調していると判定する、モータ制御装置を提供する。
本開示の第4態様は、第1〜第3態様のいずれか1つに加え、前記電機子反作用磁束推定部は、前記同期モータのインダクタンスと、前記同期モータに流れる電流とを用いて、前記電機子反作用磁束を推定する、モータ制御装置を提供する。
第2〜第4態様によれば、簡易な構成で同期モータが脱調しているか否かを判定できる。
本開示の第5態様は、第4態様に加え、前記電機子反作用磁束推定部は、前記同期モータのインダクタンスの値として、d軸インダクタンスの値、d軸インダクタンスよりも大きくq軸インダクタンスよりも小さい値、又はd軸インダクタンスよりも小さくq軸インダクタンスよりも大きい値を用いる、モータ制御装置を提供する。
第5態様のモータ制御装置は、埋込磁石同期モータ等の磁気的突極性を有するモータの制御に有利である。
本開示の第6態様は、第1〜第5態様のいずれか1つに加え、当該モータ制御装置は、前記同期モータの前記モータ磁束の振幅及びモータトルクが指令振幅及び指令トルクに追従するように、インバータを用いて前記同期モータに電圧ベクトルを印加する、モータ制御装置を提供する。
第6態様によれば、モータ磁束及びモータトルクを精度よく制御できる。
本開示の第7態様は、第6態様に加え、
当該モータ制御装置は、
前記同期モータにおける3相交流座標上の相電流を、2相座標上の軸電流に変換する3相2相座標変換部と、
前記軸電流と、推定された前記モータ磁束とから、前記モータトルクを推定するトルク演算部と、
前記指令トルクと推定された前記モータトルクとの間のトルク偏差と、推定された前記モータ磁束の位相と、前記指令振幅とから、前記モータ磁束が追従するべき指令磁束ベクトルを特定する磁束指令演算部と、
前記指令磁束ベクトルと推定された前記モータ磁束との間の磁束偏差から、前記同期モータに印加されるべき前記電圧ベクトルに対応する前記2相座標上の軸電圧を特定する電圧指令演算部と、をさらに備え、
前記モータ磁束推定部は、前記軸電流と、前記軸電圧とから、前記モータ磁束を推定する、モータ制御装置を提供する。
第7態様のモータ制御装置は、簡便に構成できる。なお、ソフトウエアにより第7態様のモータ制御装置を実現する場合、モータ制御装置の各構成要素は明確には区別されない。この点は、以下で説明するモータ制御装置のその他の各構成要素についても同様である。
本開示の第8態様は、
同期発電機の磁束である発電機磁束を推定する発電機磁束推定部と、
前記発電機磁束を構成する磁束であり、前記同期発電機に流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定する電機子反作用磁束推定部と、
推定された前記発電機磁束と推定された前記電機子反作用磁束とを用いて、前記発電機磁束を構成する磁束であり、前記同期発電機の永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定する磁石磁束推定部と、
推定された前記磁石磁束を用いて、前記同期発電機が脱調しているか否かを判定する脱調判定部と、
を備えた、発電機制御装置を提供する。
本開示の第9態様は、
同期モータの磁束であるモータ磁束を推定するステップと、
前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータに流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定するステップと、
推定された前記モータ磁束と推定された前記電機子反作用磁束とを用いて、前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータの永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定するステップと、
推定された前記磁石磁束を用いて、前記同期モータが脱調しているか否かを判定するステップと、を含むモータ制御方法を提供する。
本開示の第10態様は、
同期発電機の磁束である発電機磁束を推定するステップと、
前記発電機磁束を構成する磁束であり、前記同期発電機に流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定するステップと、
推定された前記発電機磁束と推定された前記電機子反作用磁束とを用いて、前記発電機磁束を構成する磁束であり、前記同期発電機の永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定するステップと、
推定された前記磁石磁束を用いて、前記同期発電機が脱調しているか否かを判定するステップと、を含む発電機制御方法を提供する。
第8態様〜第10態様によれば、第1態様により得られる効果と同様の効果が得られる。
モータ制御装置に関する技術は、発電機制御装置に適用できる。発電機制御装置に関する技術は、モータ制御装置に適用できる。両方の場合において、制御の態様はよく似ているためである。同期モータと発電機とでは、同期モータ/発電機を流れる電流の位相が逆となる等の相違があるが、当業者であればこれらの相違を考慮しつつ両制御装置を構成できる。
モータ制御装置及び発電機制御装置に関する技術は、モータ制御方法及び発電機制御方法に適用できる。モータ制御方法及び発電機制御方法に関する技術は、モータ制御装置及び発電機制御装置に適用できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、モータ制御装置100は、第1電流センサ105a、第2電流センサ105b、モータ制御部101及びデューティ生成部103を含んでいる。モータ制御装置100は、PWMインバータ104及び同期モータ102に接続される。
モータ制御部101は、同期モータ102の位置センサレス運転を実行するように構成されている。位置センサレス運転は、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを用いない運転である。本実施形態の位置センサレス運転では、推定されたモータ磁束の位相を用いてモータ磁束を制御する。モータ磁束は、同期モータ102に印加されている3相交流座標上の電機子鎖交磁束と、この電機子鎖交磁束を座標変換することにより得た磁束の両方を含む概念である。本明細書では、「振幅」は、単に大きさ(絶対値)を指す場合がある。
モータ制御装置100の一部又は全部の要素は、DSP(Digital Signal Processor)又はマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供され得る。DSP又はマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路及び通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、モータ制御装置100の一部又は全部の要素は、論理回路によって構成されていてもよい。
(モータ制御装置100を用いた制御の概要)
図1を参照しながら、モータ制御装置100を用いた制御の概要を説明する。電流センサ105a,105bによって、相電流iu,iwが検出される。モータ制御部101によって、指令回転数ωref *及び相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が生成される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分は、それぞれ3相交流座標上のU相電圧、V相電圧及びW相電圧に対応する。デューティ生成部103によって、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwが生成される。PWMインバータ104によって、デューティDu,Dv,Dwから、同期モータ102に印加するべき電圧ベクトルvu,vv,vwが生成される。指令回転数ωref *は、上位制御装置からモータ制御装置100に与えられる。指令回転数ωref *は、同期モータ102の回転数が追従するべき回転数を表す。このような制御により、同期モータ102は、回転数が指令回転数ωref *に追従するように制御される。
以下では、α−β座標(2相座標)に基づいてモータ制御装置100を説明することがある。また、d−q座標(第2の2相座標)に基づいてモータ制御装置100を説明することもある。図2に、α−β座標及びd−q座標を示す。α−β座標は、固定座標である。α−β座標は、静止座標とも交流座標とも称される。α軸は、U軸(図2では省略)と同一方向に延びる軸として設定される。d−q座標は、回転座標である。θは、U軸からみたd軸の進み角である。θは、ロータ位置とも称される。
(モータ制御部101について)
図3に示すように、モータ制御部101は、u,w/α,β変換部(3相2相座標変換部)106、電圧指令演算部107、モータ磁束推定部108、トルク演算部109、速度・位置演算部110、トルク指令演算部121、トルク偏差演算部111、振幅指令生成部122、磁束指令演算部112、α軸磁束偏差演算部113a、β軸磁束偏差演算部113b、α,β/u,v,w変換部(2相3相座標変換部)114及び脱調検出部115を含んでいる。
モータ制御部101では、u,w/α,β変換部(3相2相座標変換部)106によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。軸電流iα,iβは、同期モータ102のα−β座標上におけるα軸電流iα及びβ軸電流iβをまとめて記載したものである。モータ磁束推定部108によって、軸電流iα,iβ及び指令軸電圧(軸電圧)vα *,vβ *から、モータ磁束が推定される(推定磁束Ψsが求められる)。推定磁束Ψsのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定磁束Ψα,Ψβと記載する。速度・位置演算部110によって、推定磁束Ψsから、同期モータ102の回転数及びモータ磁束の位相が推定される(推定回転数ωr及び推定磁束Ψsの位相θsが求められる)。トルク演算部109によって、推定磁束Ψs及び軸電流iα,iβから、モータトルクが推定される(推定トルクTeが求められる)。トルク指令演算部121によって、推定回転数ωr及び指令回転数ωref *から、指令トルクTe *が生成される。指令トルクTe *は、モータトルクが追従するべきトルクを表す。振幅指令生成部122によって、指令トルクTe *から指令振幅|Ψs *|が生成される。トルク偏差演算部111によって、推定トルクTeと指令トルクTe *との偏差(トルク偏差)ΔTが求められる。磁束指令演算部112によって、指令振幅|Ψs *|、トルク偏差ΔT及び位相θsから、指令磁束ベクトルΨs *が求められる。指令磁束ベクトルΨs *のα軸成分及びβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束Ψα *、β軸指令磁束Ψβ *と記載する。α軸磁束偏差演算部113aによって、α軸指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαとの偏差(磁束偏差)ΔΨαが求められる。β軸磁束偏差演算部113bによって、β軸指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβとの偏差(磁束偏差)ΔΨβが求められる。電圧指令演算部107によって、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及び軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα *,vβ *が求められる。指令軸電圧vα *,vβ *は、同期モータ102のα−β座標上におけるα軸指令電圧vα *及びβ軸指令電圧vβ *をまとめて記載したものである。α,β/u,v,w変換部114によって、指令軸電圧vα *,vβ *が、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。また、脱調検出部115によって、推定磁束Ψα,Ψβ及び軸電流iα,iβから、同期モータ102の脱調を検出できる。
このような制御(フィードバック制御)により、同期モータ102の回転数が指令回転数ωref *に追従し、モータトルクが指令トルクTe *に追従し、モータ磁束が指令磁束ベクトルΨs *に追従する(モータ磁束の振幅が指令振幅|Ψs *|に追従する)ように、PWMインバータ104を介して同期モータ102に電圧ベクトルが印加される。
本明細書では、軸電流iα,iβは、実際に同期モータ102を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。指令軸電圧vα *,vβ *、推定磁束Ψs、位相θs、推定トルクTe、指令トルクTe *、指令回転数ωref *、指令振幅|Ψs *|、指令磁束ベクトルΨs *、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *等も同様である。
本実施形態の制御に関する各構成要素について、以下で説明する。
(第1電流センサ105a、第2電流センサ105b)
図1に示す第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bとして、公知の電流センサを用いることができる。本実施形態では、第1電流センサ105aは、u相を流れる相電流iuを測定するように設けられている。第2電流センサ105bは、w相を流れる相電流iwを測定するように設けられている。ただし、第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bは、u相及びw相の2相以外の組み合わせの2相の電流を測定するように設けられていてもよい。
(u,w/α,β変換部106)
図3に示すu,w/α,β変換部106は、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換する。具体的に、u,w/α,β変換部106は、式(1)及び(2)により、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換して、軸電流iα,iβを出力する。
Figure 2015192463
Figure 2015192463
(モータ磁束推定部108)
モータ磁束推定部108は、軸電流iα,iβ及び指令軸電圧vα *,vβ *から、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)を求める。具体的に、モータ磁束推定部108は、式(3)、(4)及び(5)を用いて、推定磁束Ψα,Ψβ、及び推定磁束Ψsの絶対値|Ψs|を求める。式(3)及び(4)におけるΨα|t=0、Ψβ|t=0は、それぞれ推定磁束Ψα,Ψβの初期値である。式(3)及び(4)におけるRは、同期モータ102の巻線抵抗である。モータ磁束推定部108がDSP、マイクロコンピュータ等のディジタル制御装置に組み込まれている場合は、式(3)及び(4)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成され得る。この場合の典型例では、1制御周期前における推定磁束Ψα,Ψβに、現在の制御周期に由来する値を加減算する。
Figure 2015192463
Figure 2015192463
Figure 2015192463
(トルク演算部109)
トルク演算部109は、軸電流iα,iβ及び推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)から推定トルクTeを求める。具体的に、トルク演算部109は、式(6)を用いて、推定トルクTeを求める。式(6)におけるPnは、同期モータ102の極対数である。
Figure 2015192463
(速度・位置演算部110)
速度・位置演算部110は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)から推定磁束Ψsの位相θsを求める。具体的に、速度・位置演算部110は、式(7)により、推定磁束Ψsの位相θsを求める。また、速度・位置演算部110は、現在の制御周期において求めた位相θs(n)と、前回の制御周期において求めた位相θs(n−1)とを用いて、式(8)により、推定回転数ωrを求める。速度・位置演算部110は、公知の位相推定器である。ここで、Tsは本制御における制御周期(サンプリング周期)を意味する。nは、タイムステップである。
Figure 2015192463
Figure 2015192463
(トルク指令演算部121)
トルク指令演算部121は、指令回転数ωref *及び推定回転数ωrから、指令トルクTe *を求める。具体的に、トルク指令演算部121は、式(9)により、指令トルクTe *を求める。式(9)におけるKsPは比例ゲインである。KsIは積分ゲインである。トルク指令演算部121は、公知のPI補償器である。
Figure 2015192463
(振幅指令生成部122)
振幅指令生成部122は、指令トルクTe *から、指令振幅|Ψs *|を求める。振幅指令生成部122は、ルックアップテーブル、計算式(近似式)が格納された演算子等を用いて構成できる。ルックアップテーブルを用いる場合、指令トルクTe *と指令振幅|Ψs *|との対応関係を表すルックアップテーブルを事前に準備することができる。演算子における計算式も、事前に準備できる。このようなルックアップテーブル及び計算式は、予め行った測定データ又は理論に基づいて設定できる。指令振幅|Ψs *|の具体的な特定方法は、公知の文献(武田洋次、森本茂雄、松井信行、本田幸夫、「埋込磁石同期モータの設計と制御」、株式会社オーム社、2001年10月25日発行、等)を参照することにより理解され得る。本実施形態では、最小の電流で最大のトルクを発生できる最大トルク/電流制御(MTPA)を満たすトルクと磁束との関係を利用する。本実施形態における振幅指令生成部122は、磁束パラメータ|Ψa|を用いて指令振幅|Ψs *|を求める。磁束パラメータ|Ψa|は、同期モータ102における永久磁石が作る磁石磁束の振幅として与えられた定数である。
(トルク偏差演算部111)
トルク偏差演算部111は、指令トルクTe *と推定トルクTeとの偏差(トルク偏差ΔT:Te *−Te)を求める。トルク偏差演算部111としては、公知の演算子を用いることができる。
(磁束指令演算部112)
磁束指令演算部112は、指令振幅|Ψs *|、トルク偏差ΔT及び位相θsから、指令磁束ベクトルΨs *(指令磁束Ψα *,Ψβ *)を求める。具体的には、式(10)により、モータ磁束の回転量Δθsを求める。式(11)を用いて、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を求める。式(12)及び(13)を用いて、指令磁束Ψα *,Ψβ *を求める。式(10)におけるKθPは比例ゲインである。KθIは積分ゲインである。磁束指令演算部112は、トルク偏差ΔTをゼロに近づける。この点で、磁束指令演算部112は、トルクの補償機構を構成するともいえる。磁束指令演算部112がDSP、マイクロコンピュータ等のディジタル制御装置に組み込まれている場合は、式(10)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成され得る。
Figure 2015192463
Figure 2015192463
Figure 2015192463
Figure 2015192463
(α軸磁束偏差演算部113a、β軸磁束偏差演算部113b)
α軸磁束偏差演算部113aは、指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαを取得し、これらの偏差(磁束偏差ΔΨα:Ψα *−Ψα)を求める。β軸磁束偏差演算部113bは、指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβを取得し、これらの偏差(磁束偏差ΔΨβ:Ψβ *−Ψβ)を求める。磁束偏差演算部113a,113bとしては、公知の演算子を用いることができる。
(電圧指令演算部107)
電圧指令演算部107は、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及び軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα *,vβ *を求める。具体的に、電圧指令演算部107は、式(14)を用いて、α軸指令電圧vα *を求める。また、電圧指令演算部107は、式(15)を用いて、β軸指令電圧vβ *を求める。
Figure 2015192463
Figure 2015192463
(α,β/u,v,w変換部114)
α,β/u,v,w変換部114は、指令軸電圧vα *,vβ *を、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換する。具体的に、α,β/u,v,w変換部114は、式(16)により、指令軸電圧vα *,vβ *を指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換して、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を出力する。
Figure 2015192463
(デューティ生成部103)
図1に示すデューティ生成部103は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwを生成する。本実施形態では、デューティ生成部103は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分を、各相のデューティDu,Dv,Dwに変換する。デューティDu,Dv,Dwの生成方法としては、一般的な電圧形PWMインバータに用いられる方法を用いることができる。例えば、デューティDu,Dv,Dwは、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を、直流電源118(図4)の電圧値Vdcの半分の値で除すことにより求めてもよい。この場合、デューティDuは、2×vu */Vdcである。デューティDvは、2×vv */Vdcである。デューティDwは、2×vw */Vdcである。デューティ生成部103は、デューティDu,Dv,Dwを出力する。
(PWMインバータ104)
図1及び4に示すように、PWMインバータ104は、スイッチング素子119a,119b,119c,119d,119e,119f及び還流ダイオード120a,120b,120c,120d,120e,120fが対になった変換回路、ベースドライバ116、平滑コンデンサ117及び直流電源118を含む。直流電源118は、ダイオードブリッジ等によって整流された出力を表す。なお、本明細書では、変換回路及び平滑コンデンサ117を併せた構成をインバータと記載する。
PWMインバータ104は、PWM制御によって同期モータ102に電圧ベクトルを印加する。具体的には、同期モータ102への給電は、スイッチング素子119a〜119fを介して、直流電源118から行われる。より具体的には、まず、デューティDu,Dv,Dwがベースドライバ116に入力される。次に、デューティDu,Dv,Dwがスイッチング素子119a〜119fを電気的に駆動するためのドライブ信号に変換される。次に、ドライブ信号に従って各スイッチング素子119a〜119fが動作する。
本実施形態では、PWMインバータ104は、スイッチング素子119a〜119fを用いた3相スイッチング回路である。スイッチング素子119a〜119fとしては、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。
(同期モータ102)
図1に示す同期モータ102は、モータ制御装置100の制御対象である。同期モータ102には、PWMインバータ104によって、電圧ベクトルが印加される。「同期モータ102に電圧ベクトルが印加される」とは、同期モータ102における3相交流座標上の3相(U相、V相、W相)の各々に電圧が印加されることを指す。本実施形態では、3相(U相、V相、W相)の各々が、相対的に高電圧を有する高電圧相と、相対的に低電圧を有する低電圧相との2種類から選択されるいずれかとなるように、同期モータ102が制御される。
本実施形態における同期モータ102は、永久磁石同期モータである。詳細には、同期モータ102は、SPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)である。SPMSMでは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが同じである。
(脱調検出部115)
図3及び5に示す脱調検出部115は、軸電流iα,iβ及び推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)から、同期モータ102が脱調していることを検出できる。脱調検出部115は、電機子反作用磁束推定部151と、磁石磁束推定部152と、振幅演算部153と、脱調判定部154とを有している。
電機子反作用磁束推定部151は、同期モータ102のインダクタンスLと軸電流iα,iβとから、電機子反作用磁束を推定する(推定電機子反作用磁束Liaを求める)。推定電機子反作用磁束Liaは、推定磁束Ψsを構成する磁束である。推定電機子反作用磁束Liaは、同期モータ102に流れる電流(モータ電流)が作る磁束である。推定電機子反作用磁束Liaのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定電機子反作用磁束Liα、推定電機子反作用磁束Liβと記載する。図5に示すように、電機子反作用磁束推定部151は、乗算器(乗算部)を用いて、推定電機子反作用磁束Liaを求める。つまり、推定電機子反作用磁束Liα、推定電機子反作用磁束Liβは、インダクタンスLと、軸電流iα,iβとの積である。本実施形態では、同期モータ102は、磁気的突極性を有さない、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが等しいモータである。このため、L=Ld=Lqである。
磁石磁束推定部152は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)及び推定電機子反作用磁束Lia(推定電機子反作用磁束Liα、推定電機子反作用磁束Liβ)から、磁石磁束を推定する(推定磁石磁束Ψaeを求める)。推定磁石磁束Ψaeは、推定磁束Ψsを構成する磁束である。推定磁石磁束Ψaeは、同期モータ102の永久磁束が作る磁束である。推定磁石磁束Ψaeのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定磁石磁束Ψaeα、Ψaeβと記載する。図5に示すように、磁石磁束推定部152は、減算器(減算部)を用いて、推定磁石磁束Ψaeを求める。具体的には、磁石磁束推定部152は、式(17)及び(18)に示すように、推定磁束Ψα,Ψβから推定電機子反作用磁束Liα,Liβを減じることにより推定磁石磁束Ψaeα,Ψaeβを求める。
Figure 2015192463
Figure 2015192463
振幅演算部153は、式(19)を用いて、推定磁石磁束Ψae(推定磁石磁束Ψaeα,Ψaeβ)の振幅|Ψae|を演算する。
Figure 2015192463
脱調判定部154は、推定磁石磁束Ψae(より正確には、推定磁石磁束Ψaeの振幅|Ψae|)と磁束パラメータ|Ψa|とから、同期モータ102が脱調しているか否かを判定する。具体的に、脱調判定部154は、条件式(20)に示すように、推定磁石磁束Ψaeの振幅|Ψae|が磁束パラメータ|Ψa|と係数K1との積よりも小さい場合に、同期モータ102が脱調していると判定する。先に説明したように、磁束パラメータ|Ψa|は、同期モータ102における永久磁石が作る磁石磁束の振幅として与えられた定数である。係数K1は0<K1<1を満たす定数である。一例では、係数K1は、0.3〜0.7の間の値をとる。脱調判定部154は、コンパレータ等で構成され得る。
Figure 2015192463
磁束パラメータ|Ψa|と係数K1との積よりも振幅|Ψae|が小さいことは、同期モータ102が脱調することなく正常に運転されていれば検出されるはずの磁石磁束が検出されていないことを意味する。すなわち、同期モータ102のロータの回転が、ステータに印加する回転磁界に追従していないことを意味する。すなわち、同期モータ102が脱調していることを意味する。
(検証実験)
脱調検出部115を用いて同期モータ102の脱調を検出できることを確認するために検証実験を行った。検証実験の結果を図6を用いて説明する。
検証実験では、上述の実施形態と同様の制御系を構成した。ただし、同期モータのロータの実際の位置(ロータ位相)を特定するために、エンコーダを用いた。式(20)が成立したときに脱調判定フラグが立つように、制御系を構成した。この実証実験では、図6に示すように、推定磁束の位相(推定位相)、ロータ位相、同期モータのステータのU軸巻線を流れる電流(U軸電流)iu、及び脱調判定フラグの時系列データを取得した。
この検証実験では、運転開始から所定の時間経過後に大きな負荷トルクを印加した。この負荷トルクを印加した時刻を、図6では時刻t1と記載している。図6から、時刻t1から、ロータ位相と推定位相とがずれ始めていることが分かる。また、時刻t1よりも後の期間におけるロータ位相は、ほぼ同じ位置でロータが振動していることを表している。これに対し、時刻t1よりも後の期間における推定位相は、同期モータのロータが回転していることを表している。これらは、時刻t1よりも後の期間において、同期モータが脱調していることを示している。そして、時刻t1よりも後の期間において(詳細にはロータの振動の開始時刻よりも後の期間において)、脱調判定フラグが立っている。以上から、上述の実施形態によれば、脱調を適切に検出できることが理解される。なお、この検証実験では、式(20)における係数K1を0.4を設定した。係数K1を0.6に設定した場合も、同期間において脱調判定フラグが立つことが確認された。
なお、図6から、時刻t1よりも後の期間におけるU相電流iuが、時刻t1よりも前の期間におけるU相電流iuよりも大きいことが分かる。これは、磁石磁束相当分を含む電機子反作用磁束が生成されるように、モータ電流が流れているためであると考えられる(図11を用いた説明参照)。そして、そのようなモータ電流が流れるため、実際には同期モータのロータは回転していないにも関わらず、ロータが回転しているときの推定位相によく似た推定位相が取得されたものと考えられる。
同期モータの脱調が検出された場合には、モータ制御装置による制御を停止させること等により同期モータの運転を停止する(例えば、PWMインバータ104のスイッチングを停止する)ことが考えられる。同期モータの運転を一旦停止させた後には、同期モータの運転を再開することができる。これにより、制御系の信頼性と安全性とを確保することができる。
本実施形態によれば、位置センサを要することなく同期モータの脱調を検出できる。このことは、種々の観点から有利である。ただし、このことは、本実施形態において上記のセンサを用いてはならないことを意味するものではない。
(変形例)
以下、本発明における第1の変形例のモータ制御装置について説明する。なお、第1の変形例では、第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略する。
図7に示すように、第1の変形例のモータ制御装置200は、モータ制御部101に代えてモータ制御部201を含んでいる。モータ制御装置200は、PWMインバータ104及び同期モータ202に接続される。図8に示すように、モータ制御部201は、脱調検出部115に代えて脱調検出部215を含んでいる。
(同期モータ202)
本実施形態における同期モータ202は、永久磁石同期モータである。詳細には、同期モータ202は、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。IPMSMは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する突極性(一般には、Lq>Ldの逆突極性)を有する。IPMSMは、マグネットトルクに加えてリラクタンストルクも利用できる。このため、IPMSMの駆動効率は極めて高い。
d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する場合にも、脱調検出部115を用いた制御のような、インダクタンスを用いた制御が可能である。具体的には、インダクタンスLとして、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスとの間の値を用いることができる。また、磁気的突極性が大きくない場合は、L=Ldと取り扱っても差し支えがない。つまり、インダクタンスの値として、d軸インダクタンスの値、d軸インダクタンスよりも大きくq軸インダクタンスよりも小さい値、又はd軸インダクタンスよりも小さくq軸インダクタンスよりも大きい値を用いることができる。
特許第4972135号は、上記のようにインダクタンスLを設定する上で参考になる。特許第4972135号には、dm−qm座標系に関する技術が記載されている。dm−qm座標系は、埋込磁石構造の永久磁石同期モータ等の磁気的突極性を有するモータを、磁気的突極性を有していない永久磁石同期モータと同様に扱うことを可能とする。具体的に、dm−qm座標系を用い、dm軸電流(制御座標系ではγ軸電流)をゼロにすることによって、最大トルク制御(最大トルク/電流制御)を行うことができる。より具体的には、同期モータ202が磁気的突極性を有する場合、図10を用いて説明したd軸電流(図10ではゼロ)をdm軸電流に、磁石磁束Ψaを拡張鎖交磁束ベクトルΦexmに、インダクタンスLを仮想インダクタンスLmに、それぞれ置き換えることができる。dm軸電流、拡張鎖交磁束ベクトルΦexm及び仮想インダクタンスLmの詳細については、特許第4972135号(数式36及び段落0182〜0183等)を参照されたい。なお、Lmは、Ld≦Lm<Lqを満たす。
(脱調検出部215)
脱調検出部215は、軸電流iα,iβ及び推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)から、同期モータ202が脱調していることを検出できるように構成されている。図9に示すように、脱調検出部215は、電機子反作用磁束推定部251と、磁石磁束推定部252と、振幅演算部253と、脱調判定部254とを有している。
電機子反作用磁束推定部251は、仮想インダクタンス(同期モータ202のインダクタンス)Lmと軸電流iα,iβとから、電機子反作用磁束を推定する(推定電機子反作用磁束Lmaを求める)。推定電機子反作用磁束Lmaのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβと記載する。図9に示すように、電機子反作用磁束推定部251は、乗算器(乗算部)を用いて、推定電機子反作用磁束Lmaを求める。つまり、推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβは、仮想インダクタンスLmと、軸電流iα,iβとの積である。先の説明の通り、仮想インダクタンスLmの値は、d軸インダクタンスの値、d軸インダクタンスよりも大きくq軸インダクタンスよりも小さい値、又はd軸インダクタンスよりも小さくq軸インダクタンスよりも大きい値である。
磁石磁束推定部252は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)及び推定電機子反作用磁束Lma(推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβ)から、磁石磁束を推定する(推定磁石磁束Ψ’aeを求める)。推定磁石磁束Ψ’aeのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定磁石磁束Ψ’aeα、Ψ’aeβと記載する。図9に示すように、磁石磁束推定部252は、減算器(減算部)を用いて、推定磁石磁束Ψ’aeを求める。具体的には、磁石磁束推定部252は、式(21)及び(22)に示すように、推定磁束Ψα,Ψβから推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβを減じることにより推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβを求める。本実施形態における推定磁石磁束Ψ’aeは、特許第4972135号における拡張鎖交磁束ベクトルΦexmと等価である。
Figure 2015192463
Figure 2015192463
振幅演算部253は、式(23)を用いて、推定磁石磁束Ψ’ae(推定磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβ)の振幅|Ψ’ae|を演算する。
Figure 2015192463
脱調判定部254は、推定磁石磁束Ψ’ae(より正確には、推定磁石磁束Ψ’aeの振幅|Ψ’ae|)と磁束パラメータ|Ψa|とから、同期モータ202が脱調しているか否かを判定する。具体的に、脱調判定部254は、条件式(24)に示すように、推定磁石磁束Ψ’aeの振幅|Ψ’ae|が磁束パラメータ|Ψa|と係数K2との積よりも小さい場合に、同期モータ202が脱調していると判定する。係数K2は0<K2<1を満たす定数である。一例では、係数K2は、0.3〜0.7の間の値をとる。脱調判定部254は、コンパレータ等で構成され得る。条件式(24)における|Ψa|に代えてΦexm(拡張鎖交磁束ベクトルΦexm)を用いることもできる。
Figure 2015192463
本発明は、SPMSM、IPMSM等の同期モータに適用できる。それらの同期モータは、冷暖房装置又は給湯機に使用されたヒートポンプ式冷凍装置に適している。
100,200 モータ制御装置
101,201 モータ制御部
102,202 同期モータ
103 デューティ生成部
104 PWMインバータ
105a 第1電流センサ
105b 第2電流センサ
106 u,w/α,β変換部
107 電圧指令演算部
108 モータ磁束推定部
109 トルク演算部
110 速度・位置演算部
111 トルク偏差演算部
112 磁束指令演算部
113a α軸磁束偏差演算部
113b β軸磁束偏差演算部
114 α,β/u,v,w変換部
115,215 脱調検出部
116 ベースドライバ
117 平滑コンデンサ
118 直流電源
119a〜119f スイッチング素子
120a〜120f 還流ダイオード
121 トルク指令演算部
122 振幅指令生成部
151,251 電機子反作用磁束推定部
152,252 磁石磁束推定部
153,253 振幅演算部
154,254 脱調判定部

Claims (8)

  1. 同期モータの磁束であるモータ磁束を推定するモータ磁束推定部と、
    前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータに流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定する電機子反作用磁束推定部と、
    推定された前記モータ磁束と推定された前記電機子反作用磁束とを用いて、前記モータ磁束を構成する磁束であり、前記同期モータの永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定する磁石磁束推定部と、
    推定された前記磁石磁束を用いて、前記同期モータが脱調しているか否かを判定する脱調判定部と、
    を備えた、モータ制御装置。
  2. 前記脱調判定部は、推定された前記磁石磁束と、前記同期モータの永久磁石が作る磁束の振幅として与えられた磁束パラメータとを用いて、前記同期モータが脱調しているか否かを判定する、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記脱調判定部は、推定された前記磁石磁束の振幅が、前記磁束パラメータと0より大きく1より小さい係数との積よりも小さい場合に、前記同期モータが脱調していると判定する、請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記電機子反作用磁束推定部は、前記同期モータのインダクタンスと、前記電流とを用いて、前記電機子反作用磁束を推定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記電機子反作用磁束推定部は、前記同期モータのインダクタンスの値として、d軸インダクタンスの値、d軸インダクタンスよりも大きくq軸インダクタンスよりも小さい値、又はd軸インダクタンスよりも小さくq軸インダクタンスよりも大きい値を用いる、請求項4に記載のモータ制御装置。
  6. 当該モータ制御装置は、前記同期モータの前記モータ磁束の振幅及びモータトルクが指令振幅及び指令トルクに追従するように、インバータを用いて前記同期モータに電圧ベクトルを印加する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  7. 当該モータ制御装置は、
    前記同期モータにおける3相交流座標上の相電流を、2相座標上の軸電流に変換する3相2相座標変換部と、
    前記軸電流と、推定された前記モータ磁束とから、前記モータトルクを推定するトルク演算部と、
    前記指令トルクと推定された前記モータトルクとの間のトルク偏差と、推定された前記モータ磁束の位相と、前記指令振幅とから、前記モータ磁束が追従するべき指令磁束ベクトルを特定する磁束指令演算部と、
    前記指令磁束ベクトルと推定された前記モータ磁束との間の磁束偏差から、前記同期モータに印加されるべき前記電圧ベクトルに対応する前記2相座標上の軸電圧を特定する電圧指令演算部と、をさらに備え、
    前記モータ磁束推定部は、前記軸電流と、前記軸電圧とから、前記モータ磁束を推定する、請求項6に記載のモータ制御装置。
  8. 同期発電機の磁束である発電機磁束を推定する発電機磁束推定部と、
    前記発電機磁束を構成する磁束であり、前記同期発電機に流れる電流が作る磁束である電機子反作用磁束を推定する電機子反作用磁束推定部と、
    推定された前記発電機磁束と推定された前記電機子反作用磁束とを用いて、前記発電機磁束を構成する磁束であり、前記同期発電機の永久磁石が作る磁束である磁石磁束を推定する磁石磁束推定部と、
    推定された前記磁石磁束を用いて、前記同期発電機が脱調しているか否かを判定する脱調判定部と、
    を備えた、発電機制御装置。
JP2014065807A 2014-03-27 2014-03-27 モータ制御装置及び発電機制御装置 Pending JP2015192463A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014065807A JP2015192463A (ja) 2014-03-27 2014-03-27 モータ制御装置及び発電機制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014065807A JP2015192463A (ja) 2014-03-27 2014-03-27 モータ制御装置及び発電機制御装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015192463A true JP2015192463A (ja) 2015-11-02

Family

ID=54426604

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014065807A Pending JP2015192463A (ja) 2014-03-27 2014-03-27 モータ制御装置及び発電機制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015192463A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018011437A (ja) * 2016-07-13 2018-01-18 三菱電機株式会社 モータ制御装置
WO2019159629A1 (ja) * 2018-02-13 2019-08-22 日本電産株式会社 モータ制御回路、モータシステムおよび脱調検出方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018011437A (ja) * 2016-07-13 2018-01-18 三菱電機株式会社 モータ制御装置
WO2019159629A1 (ja) * 2018-02-13 2019-08-22 日本電産株式会社 モータ制御回路、モータシステムおよび脱調検出方法
CN111788770A (zh) * 2018-02-13 2020-10-16 日本电产株式会社 电动机控制电路、电动机系统以及失调检测方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4989075B2 (ja) 電動機駆動制御装置及び電動機駆動システム
US20140049202A1 (en) Motor control apparatus and motor control method
JP5223109B2 (ja) 永久磁石形同期電動機の制御装置
JP2009124811A (ja) 永久磁石形同期電動機の制御装置
JP2007049843A (ja) 永久磁石同期モータのベクトル制御装置
JP6414771B2 (ja) モータ制御装置及びモータ制御方法
JP2006197789A (ja) 永久磁石型同期モータの制御装置及びその方法
JP6166601B2 (ja) モータ制御装置及び発電機制御装置
JP2010142046A (ja) 電動機の温度推定装置
CN109391186B (zh) 控制装置以及控制方法
JP6473992B2 (ja) モータ制御装置及び発電機制御装置
JP6030511B2 (ja) モータ制御装置、発電機制御装置及びモータ制御方法
JP6541092B2 (ja) 永久磁石同期電動機の制御装置
JP2015192463A (ja) モータ制御装置及び発電機制御装置
JP2017123753A (ja) モータ制御装置及び発電機制御装置
JP2008148437A (ja) 永久磁石型同期モータの制御装置
JP2013146155A (ja) 巻線温度推定装置及び巻線温度推定方法
JP5534991B2 (ja) 同期電動機の制御装置
JP5332301B2 (ja) 永久磁石形同期電動機の制御装置
JP5332305B2 (ja) 永久磁石形同期電動機の制御装置
JP6490540B2 (ja) 回転位置検出装置,空気調和機及び回転位置検出方法
JP2010028981A (ja) 同期モータの回転子位置推定方法および同期モータの制御装置
JP7251424B2 (ja) インバータ装置及びインバータ装置の制御方法
CN107482965B (zh) 同步电动机的控制装置
JP6848680B2 (ja) 同期電動機の制御装置