JP2018100464A - ナノファイバー - Google Patents

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さよ子 高松
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【課題】繊維内部に含まれるゲル状異物の量が少ないナノファイバーを提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂からなり、平均単繊維直径が50〜1000nmで、かつゲル化率が0.1%未満であるナノファイバー。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維内部に含まれるゲル状異物の量が少ないナノファイバーに関するものである。
ポリエステルやポリアミドを代表とする合成繊維は、繊維径や形状、物性の原糸設計が比較的容易であり、しかも寸法安定性にも優れていることから、一般衣料用途のみならず、産業資材用途として広く用いられている。
特に近年では、保温性向上医療や発熱性向上衣料のような機能性衣料や、低圧損高集塵フィルター、電子回路基盤印刷用スクリーン紗など、既存の合成繊維にとっては新規な用途へも使用され始めており、合成繊維の高機能化に対する期待は高まりを見せている。
そのような高機能繊維の一例として、1000nm以下の繊維径を有するナノファイバーの開発が進められている。ナノファイバーの特長としては、繊維径の細化による柔軟性(ソフト感)の向上、比表面積の増大、糸条内空隙の微細化が挙げられ、それらの特長により得られる高吸水・高吸湿性、高摩擦特性、良好なワイピング性能などを活かすことによって、スポーツ資材、産業用フィルター、或いはハードディスク用精密研磨布などへの用途展開がなされている。
上記ナノファイバーを製造する方法の一つとして、例えば特許文献1に示す海島型複合繊維の海成分を除去し、島成分からなるナノファイバーを得る方法が知られている。
そして、上記海島型複合繊維の溶融紡糸工程においては、高温の溶融ポリマーが配管や紡糸口金内を通過するため、ポリマーの熱劣化が避けられず、この熱劣化により繊維中にゲル状異物が発生するが、特に、海島型複合繊維から製造されたナノファイバーの場合、このような異物の存在は、海島型複合繊維の紡糸性及び均一な海島形成性にも影響を及ぼし、得られたナノファイバーは、ハードディスク用精密研磨布用には適用できない場合があるとう問題があった。
このような問題を解決するため、特許文献2にはゲル化率を0.1〜3%の範囲に制御し、ゲル状異物の発生を防止したナノファイバーが開示されているが、例えばハードディスク用研磨布に求められる精度は年々高まっており、ゲル状異物の発生が可及的に抑制されたナノファイバーの需要が高まっている。
特開2007−100243号公報 特開2014−189934号公報
本発明の課題は、かかる従来技術における問題点を解消し、繊維内部に含まれるゲル状異物の量が少ないナノファイバーを提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、ナノファイバー製造用海島型複合繊維の溶融紡糸工程における熱履歴を制御することにより、ゲル状異物の発生が抑制されることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明によれば、熱可塑性樹脂からなり、平均単繊維直径が50〜1000nmで、かつゲル化率が0.1%未満であることを特徴とするナノファイバー、が提供される。
本発明によれば、繊維内部に含まれるゲル状異物の量が少なく、超精密研磨布用途にも好適に使用できるナノファイバーが提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のナノファイバーを構成する熱可塑性樹脂は、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系等の樹脂である。ポリエステル系樹脂としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、更にはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、アルキレングリコール成分から選ばれた少なくとも一種のグリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルのほか、ポリ乳酸も例示できる。
さらに、上記以外の第3成分が共重合された共重合ポリエステルを使用することもできる。特に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分としたポリエステルはアルカリ水溶液に対する溶解性や分解性が高いため、海島型複合繊維の海成分ポリマーとして好適に用いることができる。
また、ポリアミド系樹脂としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸やε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムを主たる原料とするポリアミドのほか、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等を主たるジアミン成分とする共重合ポリアミドを挙げることができる。さらに、上記以外の第3成分が共重合された変性ポリアミドを使用しても構わない。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが例示でき、さらにはポリスチレンも熱可塑性樹脂の対象となる。
上記の熱可塑性樹脂には、酸化チタンなどの艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、耐熱、着色顔料等として、無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて添加しても構わない。
本発明のナノファイバーの平均単繊維直径は50〜1000nmであることが必要である。ナノファイバーの単繊維直径が1000nmを越えると、ソフト感やスクラッチ性(低攻撃性)が得られなくなり、さらには比表面積増大に伴う高摩擦力や高ワイピング性、空隙率増大に伴う吸着性の向上が達成できなくなる。より優れたスクラッチ性やワイピング効果を得るためには、単繊維直径が900nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは800nm以下、より好ましくは750nm以下である。ナノファイバーの単繊維直径は細いほど上記効果が発現するが、細化に伴って破断強度が低下し実使用に不適となってしまうことから、50nm以上とすることが必要である。
本発明においては、上記ナノファイバーを製造する方法として、海島型複合繊維の海成分を除去し、島成分からなるナノファイバーを得る方法が好ましく例示できる。
上記海島型複合繊維に用いる島成分および海成分の好ましい組み合わせを例示すると、海成分の溶解除去剤がアルカリ水溶液の場合は、海成分が共重合ポリエステル樹脂かつ島成分がホモポリエステル樹脂、海成分が脂肪族ポリエステル樹脂かつ島成分がポリアミド系樹脂、海成分が脂肪族ポリエステル樹脂かつ島成分が芳香族ジカルボン酸からなるポリエステル樹脂などである。
また、海成分の溶解除去剤が酸水溶液の場合は、海成分がポリアミド系樹脂かつ島成分がポリエステル系樹脂などである。溶解除去剤がトルエンやトリクロロエチレンのような有機溶媒の場合は、海成分がポリスチレンかつ島成分がポリエステル系樹脂、海成分がポリスチレンかつ島成分がポリアミド系樹脂などでも良い。また、ポリビニルアルコールは熱水に可溶であるので、海島型複合繊維の海成分ポリマーとして好適に用いることができる。上記海島型複合繊維において、海成分の島成分に対する溶解速度比(海/島)が200以上であることが好ましい。
ナノファイバーを構成する島成分にはブレンドポリマーを使用することもできる。ブレンド成分が溶解除去剤に可溶である場合には、表面にボイド(窪み)やスリットが形成されたナノファイバーを得ることもでき、表面積増大による吸着性のさらなる向上に加え、吸水性・保水性の付与も期待できる。
本発明のナノファイバーを得るための海島型複合繊維は、島成分数が500以上であることが好ましい。
上記海島型複合繊維は、海島型複合繊維用紡糸口金を用い、易溶解性重合体からなる海成分と、難溶解性ポリマーからなり、かつ前記易溶解性ポリマーよりも低い溶融粘度を有する島成分とを溶融し、押出す工程と、この押し出された海島型複合繊維を400〜3000m/分の紡糸速度で引き取る工程とを含む方法により製造できる。
本発明のナノファイバーを得るには、海島型複合繊維の製造に際し、島成分ポリマーの樹脂チップ中のチップ粉含有率を可及的に低下させておくことが重要である。
つまり、チップ粉は使用する樹脂チップよりも結晶化度が高く、高融点になる傾向がある。従って、工程内に混入したチップ粉は完全には溶融せず、ゲル状の異物として繊維内に含まれることとなるからである。
ゲル状異物が含まれる部分は樹脂のみからなる部分よりも繊維の強度が劣るため、糸切れや毛羽立ち、繊維脱落の要因になるので、紡糸工程からチップ粉を排除することが重要となる。加えて、繊維径よりもサイズの大きなチップ粉が混入した場合、繊維中で節のように存在し、繊維長手方向の繊維径の均一性が保たれないことから、ワイピングクロスに使用した際の拭き取り性能(以下、ワイピング性と称す)の低下の要因にもなる。
チップ粉含有率を可及的に低下させておくことで、耐摩耗性に優れたナノファイバーを得ることができる。
チップ粉含有率を可及的に低下させておくための方法について以下に記載する。
まず初めに、未乾燥チップを純水で洗浄し、チップ製造工程で発生したチップカット屑を除去する。この際、使用する純水の量が少なすぎるとチップ同士が擦れて新たな粉の発生源になるので、使用する純水の量はチップの見かけ体積に対して等量以上とすることが好ましい。また、超音波処理は微細なチップ屑まで効果的に除去することが可能であるため、洗浄工程に導入するのが好ましい。
続いて、チップを含んだ洗浄水をフィルターで濾過し、チップのみを掬い上げる。濾過フィルターの目開きは、チップを捕捉できる程度の大きさであればよく、チップサイズの50〜99%の目開きのステンレス製メッシュ等が好ましく用いられる。目開きを50%以上とすることで未乾燥チップに付着していた屑まで捕捉されることを防止することができ、一方、目開きを99%以下とすることでチップ自体がフィルターを通過するのを防ぐことができる。
上記の方法で水洗した未乾燥チップは、静置式乾燥機で乾燥を行うのがよい。静置式乾燥機で乾燥することにより、チップ同士の擦れや乾燥機内壁への接触に起因するチップ粉の発生を抑制することができる。
上記の方法で得られた乾燥チップを紡糸機に供給する際には、チップ同士の擦れや管壁との接触を最小化するべく、チップ供給部から溶融紡糸機に至るまでの経路(配管長)は極力短くするのが好ましい。具体的には、プレッシャーメルター型溶融紡糸機の場合は、熱板から配管長で4〜5m以内の位置からチップを供給し、エクストルーダー型溶融紡糸機の場合は、スクリューへのチップ導入部から配管長で4〜5m以内の位置からチップを供給することが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例における各物性は下記方法により求めたものである。
(1)平均単繊維直径
繊維群を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。糸条から単繊維50本をランダムに選出し、それらの測定値から平均繊維直径を算出した。
(2)ゲル化率
ナノファイバーに付着した油剤を洗浄、除去した後、該ナノファイバーを溶解可能な溶剤中でナノファイバーを完全に溶解させる。続いて溶液を目開き10μmのろ紙にて濾過し、ろ紙を乾燥させた後、ろ紙上の捕捉物量を秤量する。
ゲル化率は以下の式により算出した。
ゲル化率=(ろ紙上の補足物の重量/溶解させた繊維の重量)×100
(3)ナノファイバー製造用海島型複合繊維の紡糸性
ナノファイバーの製造に使用した海島複合繊維における毛羽の発生状況を以下の基準で評価した。
〇:紡糸して上がった製品に毛羽は発生なく、断糸無。
△:紡糸中に断糸1〜2回/日で、製品には毛羽は見えないが、毛羽発生の可能性がある。
×:紡糸して上がった製品に毛羽がある。
(4)ナノファイバー製造用海島型複合繊維の海島形成の均一性
ナノファイバーの製造に使用した海島型複合繊維の断面形状を光学顕微鏡で撮影し、以下の評価を行った。
〇:海島の形が崩れておらず、島の形が正常であり、融着がない。
×;海島の形に崩れや、形成に剥離があり、融着がある。
[実施例1〜12及び比較例1〜4]
表1に記載の島成分用ポリマー及び海成分用ポリマーを加熱溶融し、海島型複合繊維紡糸用口金に供して、280℃の紡糸温度で溶融吐出し、表1に記載の巻取り速度で、巻取りローラー上に巻き取った。得られた未延伸繊維束を、表2に記載の延伸温度でローラー延伸した。
但し、実施例10においては、温度80℃の温水バス中において、22倍に流動延伸した後、温度90℃で2.3倍にローラー延伸した。
次に延伸された繊維束に温度150℃の熱処理を施し、巻き取った。このとき、実施例1〜10においては、得られる繊維束のヤーンカウントが22dtex/10fになるように、紡糸吐出流量、及び延伸倍率を調整した。得られた、海島型複合繊維の評価結果を表1に示す。
Figure 2018100464
PET1:280℃における溶融粘度が120Pa.sポイズのポリエチレンテレフタレート。
PET2:280℃における溶融粘度が125Pa.sであり、かつ酸化チタン含有量が0.3重量%のポリエチレンテレフタレート。
PET3:270℃における溶融粘度が60Pa.sのポリエチレンテレフタレート。
NY−6:280℃における溶融粘度が140Pa.sポイズである、ナイロン6。
改質PET1:280℃における溶融粘度が175Pa.sポイズの5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と、数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート。
改質PET2:280℃における溶融粘度が75Pa.sの5−ナトリウムスルホイソフタル酸2モル%と、数平均分子量4000のポリエチレングリコール10重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート。
改質PET3:280℃における溶融粘度が200Pa.sであり、かつ数平均分子量4000のポリエチレングリコール3重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート。
改質PET4:280℃における溶融粘度が155Pa.sであり、かつ5−ナトリウムスルホイソフタル酸8モル%と、数平均分子量4000のポリエチレングリコール30重量%とを共重合したポリエチレンテレフタレート。
改質PET5:280℃における溶融粘度が135Pa.sであり、かつ5−ナトリウムスルホイソフタル酸9モル%と、数平均分子量4000のポリエチレングリコール3重量%とを共重合したポリエチレンテレフタレート。
ポリ乳酸:270℃における溶融粘度が175Pa.sポイズであり、かつD体純度が99%のポリ乳酸。
改質PBT:270℃における溶融粘度が80Pa.sである、5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%と、数平均分子量4000のポリエチレングリコール50重量%を共重合したポリブチレンテレフタレート。
ポリスチレン:270℃における溶融粘度が100Pa.sポイズのポリスチレン。
Figure 2018100464

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂からなり、平均単繊維直径が50〜1000nmで、かつゲル化率が0.1%未満であることを特徴とするナノファイバー。
  2. 熱可塑性樹脂がポリエステルである請求項1に記載のナノファイバー。
  3. 熱可塑性樹脂がポリアミドである請求項1に記載のナノファイバー。
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005095686A1 (ja) * 2004-03-30 2005-10-13 Teijin Fibers Limited 海島型複合繊維及びその製造方法
JP2014189934A (ja) * 2013-03-28 2014-10-06 Toray Ind Inc ナノファイバー

Patent Citations (2)

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