JP2018100241A - バイオセルロース及び有鞘細菌由来のマイクロチューブの複合シート - Google Patents

バイオセルロース及び有鞘細菌由来のマイクロチューブの複合シート Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、化粧活性成分の経皮送達が改善された、化粧活性成分を含むバイオセルロース含有シートを提供することである。【解決手段】本発明は、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シートに関する。本発明の複合シートは、シートが化粧活性成分を含む場合、改善された化粧活性成分の経皮送達を有しうる。したがって、本発明の複合シートを使用して、バイオセルロースの良好な特徴、たとえば、皮膚又は唇上での高接着力、化粧活性成分を大量に保持する能力、及び快適な使用感を維持しながら、化粧活性成分を皮膚又は唇内に効率的に送達できる化粧用シートを提供できる。【選択図】なし

Description

本発明は、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シート並びに複合シートを含む化粧用シート及び化粧用シートを使用する化粧方法に関する。
バイオセルロースは、微生物セルロース又はバクテリアセルロースとしても知られており、コマガタエイバクター・キシリヌス(Komagataeibacter xylinus)[以前はグルコンアセトバクター・キシリヌス(Gluconacetobacter xylinus)という名称だった]を含む微生物により産生されるβ-1,4-グリコシド結合を有するグルコースのポリマーを指す。コマガタエイバクター・キシリヌスにより産生されるバイオセルロースは、通常は、培養培地の表面に線維性の不織フィルムとして形成される。バイオセルロースは、その固有の特性、たとえば高純度、含水量、延性及び機械的強度ゆえに、複数の分野、たとえば医用材料(欧州特許第1,438,975号、欧州特許第0,396,344号又は国際公開第01/61026号)、電子材料(米国特許出願公開第2008/220333号)、音響(欧州特許第0,457,474号、米国特許第5,274,199号又は特開平6-284495号)並びに特殊紙及び化粧品(特開平10-077302号、特開平9-838803号又は仏国特許出願公開第2,924,342号)等に適用できる。
たとえば、化粧品の分野に関して、仏国特許出願公開第2,924,340号は、バイオセルロースが指のメンテナンス及び化粧品のために使用されることを開示する。仏国特許出願公開第2,924,342号は、バイオセルロースが唇のケア及び化粧品のために使用されることを開示する。特開2009-051829号は、バイオセルロースフィルム及び化粧用粉末の組合せを開示する。仏国特許出願公開第2,916,948号は、バイオセルロースフィルムから主に構成される持続性香料を開示する。仏国特許出願公開第2,916,971号は、腫れた目のためのバイオセルロースペーストを提供する。
近年、バイオセルロースが、皮膚及び唇上に十分な時間良好に接着し、実質的な量の化粧料成分を保持し、快適な使用感を提供することが可能であるという特徴を有する事実に注目し、バイオセルロースを含む化粧用シートが開発された(たとえば、国際公開第13/094077号)。
しかしながら、バイオセルロース中に含まれる化粧活性成分(cosmetic active ingredient)を経皮的に送達するバイオセルロースの能力を改善する技術は存在しない。
欧州特許第1,438,975号 欧州特許第0,396,344号 国際公開第01/61026号 米国特許出願公開第2008/220333号 欧州特許第0,457,474号 米国特許第5,274,199号 特開平6-284495号 特開平10-077302号 特開平9-838803号 仏国特許出願公開第2,924,342号 仏国特許出願公開第2,924,340号 特開2009-051829号 仏国特許出願公開第2,916,948号 仏国特許出願公開第2,916,971号 国際公開第13/094077号
本発明の目的は、化粧活性成分の経皮送達が改善された、化粧活性成分を含むバイオセルロース含有シートを提供することである。
本発明の上の目的は、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シートにより達成できる。
バイオセルロースは、好ましくは、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、リゾビウム(Rhizobium)属、サルシナ(Sarcina)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、コマガタエイバクター(Komagataeibacter)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、バチルス(Bacillus)属、及びアセトバクター(Acetobacter)属からなる群から選択される微生物菌株に由来する。より好ましくは、微生物菌株は、コマガタエイバクター属に属し、最も好ましくは、コマガタエイバクター属の微生物菌株は、コマガタエイバクター・キシリヌスである。
有鞘細菌は、好ましくは、チオスリックス(Thiothrix)属に属し、より好ましくは、チオスリックス・フルクトシボランス(Thiothrix fructosivorans)である。
マイクロチューブは、デオキシ糖で修飾された(β1→4)結合グルコサミノグルカンを含んでいてもよい。好ましくは、マイクロチューブは、L-Fuc及びD-Rha4Nからなるデオキシ糖ダイマー側鎖を有する糖ポリマー[D-Glc-(β1→4)-D-GlcN(Ac)]nを含み、側鎖はD-Glcにコンジュゲートされ、nは10から5000、好ましくは15から3000、より好ましくは20から1500であり、糖ポリマーは任意選択で置換される。
マイクロチューブの壁の厚さは、10から50nmであってもよく、その直径は、1から5μmであってもよい。
本発明はまた、
(a)培地中で有鞘細菌を培養し、マイクロチューブを産生する工程、
(b)工程(a)で得られたマイクロチューブを短縮する工程、及び
(c)工程(b)で得られた短縮マイクロチューブの存在下でバイオセルロース産生微生物菌株を培養し、前記マイクロチューブと結合したバイオセルロースを産生する工程
を含む、本発明の複合シートを産生するための方法に関する。
好ましくは、工程(b)におけるマイクロチューブの短縮は、超音波処理工程により達成される。
本発明の複合シートを産生するための方法は、有鞘細菌をメッシュシートとともに培養することによりマイクロチューブ付着メッシュシートを提供する工程を更に含んでいてもよく、工程(c)は、マイクロチューブ付着メッシュシートとともに実施されて、マイクロチューブ付着メッシュシートに、マイクロチューブが結合してバイオセルロースを沈着(deposit)させて、底部にマイクロチューブが豊富に存在する複合シートを産生させてもよい。
好ましくは、工程(c)を反復して実施して、多層複合シートを得る。
本発明はまた、本発明の複合シートを含む化粧用シートに関し、化粧用シートは、少なくとも1つの化粧活性成分を更に含んでいてもよい。
本発明はまた、本発明の複合シートをケラチン物質、たとえば皮膚又は唇に適用する工程を含む、皮膚又は唇のケア又はメイクアップのための化粧方法に関する。
本発明はまた、少なくとも1つの本発明の化粧用シートを含むパッケージに関していてもよい。
マイクロチューブ付着メッシュシートを調製するために使用される、ステンレス製のチューブの縁を有するメッシュシートの図である。 3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオン、カフェイン、ミノキシジル、及び4-(テトラヒドロ-2h-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオールのより多くの累積放出が、バイオセルロースのみを含む比較シートと比較して、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シートにおいて観察されたことを示すグラフである。 3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオン及びオキシベンゾンのより多くの累積放出が、バイオセルロースのみを含む比較シートと比較して、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シートにおいて観察されたことを示すグラフである。
鋭意検討の結果、本発明者らは、バイオセルロース及び有鞘細菌により形成されるソフトマイクロチューブを組み合わせることにより得られる複合シートが、バイオセルロースの特性を改変でき、とりわけ、シートが化粧活性成分を含む場合に、化粧活性成分の経皮送達を改善できることを見出した。
したがって、本発明の複合シートを使用して、バイオセルロースの良好な特徴、たとえば、皮膚又は唇上での高接着力、化粧活性成分を大量に保持する能力、及び快適な使用感を維持しながら、化粧活性成分を皮膚又は唇内に効率的に送達できる化粧用シートを提供できる。
したがって、本発明の一態様は、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シートである。
本発明の別の一態様は、本発明の複合シートを含む化粧用シートである。
少なくとも1種の化粧活性成分を更に含む本発明の化粧用シートは、化粧活性成分タイプに応じて所望の化粧効果を提供できる。
本発明の別の態様は、有鞘細菌由来マイクロチューブの存在下でバイオセルロース産生微生物菌株を培養する工程を含む、本発明の複合シートを産生するための方法である。この方法は、バイオセルロースが有鞘細菌由来マイクロチューブに絡まった本発明の複合シートを提供できる。
本発明の別の態様は、本発明の化粧用シートを皮膚又は唇に適用する工程を含む、皮膚又は唇のケア又はメイクアップのための化粧方法である。
以下では、本発明によるバイオセルロース、マイクロチューブ、複合シート、化粧用シート、及び化粧方法をそれぞれ、詳細に説明する。
[バイオセルロース]
本発明の複合シートは、少なくとも1種の微生物により産生された少なくとも1種のセルロースを含む。微生物により産生されたセルロースはバイオセルロースと呼ばれ、「微生物セルロース」又は「バクテリアセルロース」とも呼ばれる。単一のタイプのバイオセルロースを本発明のために使用できる。他方、2つ以上のタイプのバイオセルロースを本発明のために一緒に使用できる。
好ましくは、本発明の複合シートにおいて、バイオセルロースは、有鞘細菌により形成されるソフトマイクロチューブに絡まっていてもよい。したがって、本発明の複合シートは、バイオセルロースが有鞘細菌由来マイクロチューブと結合した構造を有していてもよい。
微生物(microorganism)として、バイオセルロースを産生できる限り、任意の微生物(microbe)を使用できる。単一のタイプの微生物を使用しても、又は2つ以上のタイプの微生物を一緒に使用してもよい。
アグロバクテリウム属、リゾビウム属、サルシナ属、シュードモナス属、アクモバクター属、アルカリゲネス属、エンテロバクター属、アゾトバクター属、コマガタエイバクター属、キサントモナス属、バチルス属、アセトバクター属等の少なくとも1種の微生物菌株を使用することが好ましい。コマガタエイバクター属のなかでもコマガタエイバクター・キシリヌス又はコマガタエイバクター・ハンセニイ(Komagataeibacter hansenii)、キサントモナス属のなかでもキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、及びバチルス属のなかでもバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)(納豆菌(B. subtilis var natto))が、より好ましい。コマガタエイバクター・キシリヌスが最も好ましい。
バイオセルロースは、バイオセルロースを産生できる少なくとも1種の微生物、たとえば上に列挙したものを培養することにより産生できる。
微生物を培養する方法は限定されない。たとえば、静置培養法又は撹拌培養法を用いてもよい。静置培養法では、バイオセルロースを産生できる微生物を培養培地上に播種し、たとえば10から40℃、好ましくは25から40℃の温度で、たとえば1から60日、好ましくは1から10日の期間、インキュベートできる。
本発明の好ましい一実施形態によれば、本発明の複合シートを得るために、微生物を有鞘細菌由来マイクロチューブの存在下で培養できる。
好ましくは、微生物により産生されたセルロースは、培養培地の表面に蓄積してセルロース膜を形成し、セルロース膜の厚さは、微生物の培養が進行するにつれて増加する。したがって、セルロース膜は、シートの形態でありうる。有鞘細菌により形成されたマイクロチューブを含む培地の存在下で、静置培養法を用いることが好ましい。なぜなら、セルロース膜又はシートの回収は容易だからである。
微生物を培養するための条件も限定されない。たとえば、バイオセルロースを産生できる微生物を増加させうる限り、任意のタイプの培養培地を使用できる。培養培地は、炭素、窒素等の原料を、無機塩、アミノ酸、ビタミン等とともに含むことが典型的である。植物、たとえば穀物(たとえば、コメ及びコムギ)、野菜(たとえば、キャベツ及びタマネギ)、及び果物(たとえば、オレンジ及びパイナップル)由来の成分を含む培養培地を使用することが好ましい。なぜなら、得られるバイオセルロースの臭いが少なく、培養培地を安全に扱うことができるからである。培養培地のpHは、微生物のタイプに応じて調整できる。培養培地のpHは、2から9であることが可能である。しかしながら、培養培地のpHは、2.5から7、より好ましくは3から5であることが好ましい。なぜなら、培養培地中の腐生細菌の増殖を制御できるからである。
バイオセルロースは、セルロースミクロフィブリルを含んでいてもよい。セルロースミクロフィブリルは、0.1から500nm、好ましくは1から300nm、より好ましくは5から250nmの直径を有していてもよい。セルロースミクロフィブリルは、網状構造を形成でき、ミクロフィブリルは互いに絡み合う。バイオセルロースの強度を鑑みると、網状構造は密であることが好ましい。
綿織布若しくは不織布シート又は紙シートのセルロース繊維は、ミクロンオーダー、たとえば10から100μmの直径を有していてもよい。他方、バイオセルロースのセルロースミクロフィブリルは、ナノオーダーの直径を有するくらい非常に微細であってもよい。たとえば、K.キシリヌスにより産生されるバイオセルロースミクロフィブリルの直径は約10nmであり、その束は10から100nmであってもよい。したがって、バイオセルロースの肉眼での外観は、綿織布若しくは不織布シート又は紙シートの外観と類似しない。むしろ、バイオセルロースは寒天又はゼラチンのように見える。したがって、食品の分野において、バイオセルロースは「ナタデココ」の材料として周知である。
培養培地から得られたばかりのバイオセルロースを水で洗浄することが好ましい。なぜなら、それは、培養培地中の成分又は培養培地中の微生物に由来する有機酸を含みうるからである。特に、コマガタエイバクター属から得られるバイオセルロースは、酢酸を含みうる。したがって、バイオセルロースをアルカリ、たとえば水酸化ナトリウム水性溶液で処理することが可能である。しかしながら、安全上の理由から、バイオセルロースを水で、水のpHが中性の範囲になるまで洗浄することが好ましい。
本発明によれば、上のとおり得られたバイオセルロースは、本発明の複合シートのための材料として使用できる。
バイオセルロースは、水を含有しうる。したがって、本発明の複合シートは、好ましくは水を含有しうる。水を含む本発明の複合シートは、より良好な保湿又は水和効果を有しうる。
加えて、バイオセルロースは、独特な触感、たとえば冷たく湿った感触を有する。したがって、本発明の複合シートは、バイオセルロースによる独特な触感に基づく快適な使用感を提供できる。
バイオセルロースは、典型的には、半透明又は不透明であり、一般に青白い色を有する。たとえば、望ましくない皮膚の着色を避けるために、バイオセルロースは人工色をわずかにしか有しないか、又は一切有しないことが好ましい。
[有鞘細菌由来マイクロチューブ]
本発明の複合シートは、有鞘細菌により産生される少なくとも1種のマイクロチューブを含む。
「有鞘細菌」という用語は、鞘を形成できる細菌を意味するものと理解され、鞘形成細菌とも呼ばれうる。
有鞘細菌として、糖ポリマーから構成される鞘を形成できる限り、任意の微生物を使用できる。鞘はマイクロチューブ構造を有し、したがって、「鞘」及び「マイクロチューブ」という用語は、本発明の文脈において互換的である。鞘及びマイクロチューブは、一連の細胞を封入し、細菌自体の外被として役立つ。
たとえば、鞘形成細菌は、プロテオバクテリア(Proteobacteria)門、バクテロイデス(Bacteroides)門、及びシアノバクテリア(Cyanobacteria)門に属していてもよく、上のものから選択される少なくとも1種の細菌を、本発明のために使用できる。それらの中でも、チオスリックス属、スフェロチルス(Sphaerotilus)属、レプトスリックス(Leptothrix)属、及びハリスコメノバクター(Haliscomenobacter)属の少なくとも1種の有鞘細菌を使用することが好ましい。チオスリックス属、たとえばT.ニベア(T. nivea)、T.フルクトシボランス、T.カルジフォンチス(T. caldifontis)、及びT.ラクストリス(T. lacustris)が特に好ましい。それらのなかでも、T.フルクトシボランス(ATCC 49749)が最も好ましい。
単一のタイプの微生物を使用しても、又は2つ以上のタイプの微生物を一緒に使用してもよい。
典型的には、鞘の壁は、厚さ5から100nm、好ましくは厚さ10から50nm、たとえば厚さ約20nmであってもよい。典型的には、その長さは、数mm、たとえば1から3mmであってもよい。典型的には、その直径は、0.5から10μm、好ましくは1から5μm、たとえば約2μmであってもよい。
有鞘細菌は固有の糖ポリマーを産生でき、鞘(マイクロチューブ)は糖ポリマー、たとえばデオキシ糖で修飾された(β1→4)結合グルコサミノグルカンから構築できる。好ましくは、鞘は、T.フルクトシボランスに由来してもよく、L-Fuc及びD-Rha4Nからなるデオキシ糖ダイマー側鎖を有する糖ポリマー[D-Glc-(β1→4)-D-GlcN(Ac)]nの集合体であってもよく、側鎖は、D-Glcにコンジュゲートされ、nは、10から5000、好ましくは15から3000、より好ましくは20から1500である。上の糖ポリマーの化学構造は、以下のとおりである。
上の糖ポリマーは、置換を有していてもよい。たとえば、N-アセチル化D-GlcNは部分的であってもよく、D-Rha4NはN-L-ラシル化(N-L-lacylated)されていてもよい。
マイクロチューブは、少なくとも1種の有鞘細菌、たとえば上に列挙したものを培養することにより産生できる。
有鞘細菌を培養する方法は限定されない。たとえば、有鞘細菌は、上の「バイオセルロース」の項に記載のものと類似した方法で培養できる。
有鞘細菌を培養するための条件も限定されない。たとえば、有鞘細菌を増加させうる限り、任意のタイプの培養培地を使用できる。培養培地は、炭素、窒素等の原料を、無機塩、アミノ酸、ビタミン等とともに含むことが典型的である。培養培地のpHは、有鞘細菌のタイプに応じて調整できる。
好ましくは、培地中で有鞘細菌により産生されるマイクロチューブは、フィルター、たとえばガラスフィルター上で採取でき、洗浄できる。たとえば、洗浄工程は、水を使用して実施できる。洗浄されたマイクロチューブは、たとえばバッファー、培地等において懸濁できる。懸濁されたマイクロチューブを短縮し、鞘の両端を開放させることが好ましい。好ましくは、マイクロチューブの短縮は、懸濁されたマイクロチューブを超音波処理に供することにより達成できる。
本発明の好ましい一実施形態によれば、バイオセルロースを産生可能な微生物を短縮マイクロチューブの存在下で培養することにより、マイクロチューブがバイオセルロースと絡まって結合した本発明の複合シートが得られる。この培養工程の反復は、多層複合シートを提供できる。
本発明はまた、バイオセルロースを含むシートの、少なくとも1種の化粧活性成分を経皮的に送達する能力を改善するための、バイオセルロースを含むシートにおけるマイクロチューブの使用に関し、シートが化粧活性成分を含む。
[複合シート]
本発明の複合シートは、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む。マイクロチューブは、好ましくは、たとえば超音波処理によって短縮されている。
典型的には、本発明の複合シートは、マイクロチューブがバイオセルロースと絡まって結合した構造を有していてもよい。したがって、本発明の複合シートにおいて、バイオセルロースは、マイクロチューブと結合していてもよい。
本発明の複合シートは、
(a)培地中で有鞘細菌を培養し、マイクロチューブを産生する工程、
(b)工程(a)で得られたマイクロチューブを短縮する工程、及び
(c)工程(b)で得られた短縮マイクロチューブの存在下でバイオセルロース産生微生物菌株を培養し、前記マイクロチューブと結合したバイオセルロースを産生する工程
を実施することにより産生できる。
本発明の好ましい一実施形態によれば、工程(b)のマイクロチューブの短縮は、超音波処理により達成できる。好ましくは、工程(c)は、本発明の多層複合シートを得るために反復して実施できる。
工程(c)は、有鞘細菌により産生されたマイクロチューブが付着するメッシュシートを有する容器内で実施できる。当該工程により、底部にマイクロチューブが豊富な本発明の複合シートを提供できる。マイクロチューブ付着メッシュシートを調製するために、任意のメッシュシートを使用できる。たとえば、メッシュシートは、チューブ、たとえばステンレス製のチューブを曲げ、ハンドルを有するループを作り、円形メッシュシートをループに取り付けることにより調製できる。図1は、ステンレス製の縁を有するメッシュシートの調製方法を示す図である。有鞘細菌がメッシュシートとともに培養されるとき、マイクロチューブがメッシュシートに付着する。更に、培養中に凝集体(flocs)が培養液中に現れ、培養流体をメッシュシートに通すことにより、それらをマイクロチューブ付着メッシュシートで捕捉できる。このことにより、メッシュシートのマイクロチューブをより豊富にすることができる。
[化粧用シート]
本発明の化粧用シートは、バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シートを、好ましくは化粧用シートの基材層のための材料として含む。
「基材層」という用語はここで、化粧用シートの支持体を意味し、基材層は、化粧用シート自体でありうる、又はその上に1つ又は複数の追加層を有しうることに留意すべきである。基材の固体含有量の80質量%、好ましくは90質量%、より好ましくは100質量%が、本発明の複合シートに由来することが可能である。
本発明の化粧用シートの形状は限定されない。したがって、本発明の化粧用シートは、フェイスマスクシート、ネックマスクシート、デコルテマスクシート、唇用シート等として使用できる。好ましくは、本発明の化粧用シートは、顔面の全体又は顔面の一部を含む、顔面のために使用される。
本発明の化粧用シートは、少なくとも1種の化粧料成分を含んでいてもよい。好ましくは、本発明の化粧用シートは、化粧品、好ましくは液体化粧品、たとえば化粧水又は乳液を含んでいてもよい。
化粧品は、活性化粧料成分(active cosmetic ingredient)を含んでいてもよく、これは水溶性であっても脂溶性であってもよい。本明細書において使用される「活性化粧料成分」という用語は、化粧活性特性、たとえば抗酸化、ホワイトニング及び抗菌効果を有する化合物を意味する。本明細書において使用される「水溶性」成分という用語は、分子状態で水性相中に完全に溶解又はコロイド形態(たとえばミセル形態)で水性相中に分散可能な任意の剤を意味するものと理解される。本明細書において使用される「脂溶性」成分という用語は、分子状態で油相中に完全に溶解又はコロイド形態(たとえばミセル形態)で油相中に分散可能な任意の剤を意味するものと理解される。
水溶性活性化粧料成分は、以下の化合物から選択できる:アスコルビン酸及びその生物学的に適合性の塩、酵素、抗生物質、引き締め剤、α-ヒドロキシ酸及びそれらの塩、水酸化ポリ酸、スクロース及びそれらの誘導体、尿素、アミノ酸、オリゴペプチド、水溶性植物抽出物及び酵母抽出物、タンパク質加水分解物、ヒアルロン酸、ムコ多糖、ビタミンB2、B6、H、PP、パンテノール、葉酸、アセチルサリチル酸、アラントイン、グリチルレチン酸、コウジ酸、ヒドロキノン、3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオン、カフェイン、ミノキシジル、及び4-(テトラヒドロ-2h-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオール。
3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン-2,5-ジオンは、以下の化学構造を有する:
脂溶性活性化粧料成分は、以下の化合物から選択できる:d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール、l-α-トコフェロール、dl-α-酢酸トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンF及びビタミンFのグリセリド、ビタミンD、ビタミンD2、ビタミンD3、レチノール、レチノールエステル、パルミチン酸レチノール、プロピオン酸レチノール、β-カロテン、d-パンテノール、ファルネソール、並びに酢酸ファルネシル、必須脂肪酸に富むホホバ油及びクロフサスグリ油、角質溶解剤、たとえばサリチル酸、その塩及びエステル、n-オクタノイル-5サリチル酸及びそのエステル、α-ヒドロキシ酸アルキルエステル、たとえばクエン酸、乳酸、グリコール酸、アジアチン酸、マデカシン酸、アジアチコシド、ツボクサの全抽出物、β-グリチルレチン酸、α-ビサボロール、並びにセラミド、たとえば2-オレオイルアミノ-1,3オクタデカン、フィタントリオール、ミルクスフィンゴミエリン、ポリ不飽和必須脂肪酸に富む海洋由来のリン脂質、及びエトキシキン、ローズマリー抽出物、メリッサ抽出物、ケルセチン、乾燥微細藻類の抽出物、ステロイド系抗炎症剤、並びに脂溶性UV遮蔽剤、たとえばオキシベンゾン。
上述の脂溶性活性化粧料成分は、可溶化状態で、単独で又は組み合わせて使用される油中に組み込まれていてもよく、そのなかでも以下のものが挙げられる:
動物、植物又は鉱物由来の油、特に脂肪酸及びポリオールのエステル、特に液状トリグリセリドにより形成される動物又は植物油、たとえば、ヒマワリ、トウモロコシ、ダイズ、ペポカボチャ、ゴマ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオナッツ、アンズ、アーモンド、又はアボカド油、魚油、グリセロールトリカプロカプリレート、又は式R1COOR2の植物若しくは動物油(式中、R1が、7個から19個の炭素原子を有する高級脂肪酸の残りの部分を表し、R2が、3個から20個の炭素原子を含有する分枝状炭化水素鎖を表す)、たとえば、パーセリン油、コムギ胚芽、カロフィラム、ゴマ、コリアンダー及びサフラワー油、パッションフラワー油、スイートブライアー(rosa mosqueta)油、マカデミア油、(ブドウ、クロフサスグリ、オレンジ又はキウイフルーツ種子から作られた)果実種子油、セイヨウアブラナ、コプラ、ピーナッツ、オナガー(onager)、パーム、ヒマ(castor)、アマニ、ホホバ、チーア及びオリーブ油、穀物胚芽油、たとえばコムギ胚芽油、フスマ油、コメ油、及びカリテ油、アセチルグリセリド、アルコール又はポリアルコールのオクタノエート、デカノエート又はリシノレート、脂肪酸のトリグリセリド、グリセリド、パラフィン油、ワセリン油及びペルヒドロスクワレン、脂肪アルコール(ステアリルアルコール、セチルアルコール)及び脂肪酸(ステアリン酸)並びにこれらのエステル、ポリアルキル(C1〜C20)シロキサン、特にトリメチルシリル末端基を有するもの、好ましくは粘度が0.06m2/秒未満のもの、なかでも直鎖状ポリジメチルシロキサン及びアルキルメチルポリシロキサン、たとえばセチルジメチコン(CTFA名)が挙げられる。
部分的にフッ素化された炭化水素油、又は過フッ素化油、特にペルフルオロポリエーテル及びペルフルオロアルカンもまた挙げられる。
油相、すなわち化粧品中に分散した油滴は、組成物の総質量に対して0.1質量%から30質量%の範囲内の割合で存在していてもよい。好ましくは、このパーセンテージは、5質量%から25質量%の範囲内であってもよい。
化粧品は、化粧品中で一般に使用される他の活性化粧料成分を含んでいてもよい。使用されるそのような活性化粧料成分のなかでも、抗酸化クレンジング剤、フリーラジカル捕捉剤、保湿剤、脱色素剤、脂肪調節剤、抗アクネ剤、抗フケ剤、抗老化剤、柔軟剤、抗しわ剤、角質溶解剤、抗炎症剤、フレッシュナー、ヒーリング剤、血管保護剤、抗菌剤、抗真菌剤、制汗剤、デオドラント、皮膚コンディショナー、麻酔剤、免疫調節剤、栄養剤、及び皮脂吸収剤(たとえばオルガソル)又は水分吸収剤が挙げられる。
本発明の化粧用シートは、本発明の複合シートを含む基材層からなっていてもよく、又は基材層及びその上の1つ若しくは複数の追加層を含んでいてもよい。
本発明の化粧用シートが本発明の複合シートを含む基材層からなる場合、基材層が、上の任意選択及び/又は追加の化粧料成分を含有していてもよい。
他方、本発明の化粧用シートが、本発明の複合シートを含む基材層に加えて少なくとも1つの追加層を含む場合、追加層及び/又は基材層が、上の任意選択及び/又は追加の化粧料成分を含有していてもよい。
追加層の材料は限定されず、したがって、追加層を調製するために任意の材料を使用できる。2種以上の異なる材料を使用できる。
追加層の材料は、天然繊維、たとえば綿、パルプ、竹及び紙セルロース繊維、半天然繊維、たとえばビスコースレーヨン繊維、並びに合成繊維、たとえばポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維及びポリプロピレン繊維でできた織布又は不織布であってもよい。上の繊維から選択される2種以上を組み合わせて使用できる。
代わりに、追加層の材料は、合成ポリマー、たとえばポリエチレン及びポリビニルアルコール、半合成ポリマー、たとえばアルギン酸塩、天然ポリマー、たとえば多糖類(たとえばカラギーナン及びキサンタンガム)、ムコ多糖類(たとえばヒアルロン酸及びヒアルロン酸ナトリウム)、ポリペプチド(たとえばγ-ポリグルタミン酸)、及びタンパク質(たとえばゼラチン及びコラーゲン)から選択される少なくとも1種でできたフィルム又はシートであってもよい。フィルム又はシートは、ゲル又はゼリーの形態であってもよく、これは、透明、半透明又は不透明であってもよい。上の物質から選択される2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の化粧用シートが複数の追加層を含む場合、各追加層の材料は、互いに同一であっても異なっていてもよい。たとえば、追加層は、合成ポリマー、半合成ポリマー及び/又は天然ポリマーでできた上のフィルム又はシートを、上の織布又は不織布上に積層させることにより調製できる。
本発明の化粧用シートは、パッケージを調製するよう容器内に含有されてもよい。容器は、好ましくは、任意の材料、好ましくはプラスチック又は金属フィルムでできたバッグ又は袋であってもよい。アルミニウムホイル、特に積層アルミニウムホイルが、バッグ又は袋の材料としてより好ましい。したがって、本発明はまた、本発明の化粧用シートを含むパッケージに関する。
[化粧方法]
本発明の化粧用シートは、ケラチン物質を美化又は処理するための化粧方法のために使用できる。本明細書のケラチン物質は、ケラチンを主要構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、及び唇、好ましくは皮膚及び唇が含まれる。
本発明の化粧方法は、本発明の化粧用シートをケラチン物質、たとえば皮膚又は唇に、そのケア又はメイクアップのために適用する工程を含む。
本発明の化粧方法を実施することにより、バイオセルロースのみを含む化粧用シートと比較して、本発明の化粧用シートに含まれるより多くの化粧活性成分を、化粧活性成分が水溶性、又は脂溶性にかかわらず、ケラチン物質、たとえば皮膚又は唇へと送達できる。
本発明を、実施例によってより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例が、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
調製方法
i)マイクロチューブ含有培地を調製する手順
チオスリックス・フルクトシボランス株I(ATCC 49749)を、200mLのMSVP培地[0.24gの(NH4)2SO4、0.06gのMgSO4・7H2O、0.06gのCaCl2・2H2O、75.6mgのNa2HPO4・12H2O、2.78mgのFeSO4・7H2O、397.1mgのHEPES、0.6gのピルビン酸、及び微量のビタミン/リットル]を含有する500mLエルレンマイヤーフラスコ中で、3〜5日間、25℃で静置培養した。
2Lの培養物からのT.フルクトシボランスのフィラメントを、ガラスフィルター(φ47mm DP-70、Advantec社)上で採取し、続いて蒸留水ですすいだ。
洗浄したフィラメントを、ガラスフィルターの表面から擦り落とし、50mLのグルコース-マンニトール培地(5gのポリペプトン、5gの酵母抽出物、5gのマンニトール、5gのグルコース、及び1gのMgSO4・7H2O/リットル)を用いて懸濁させた。
懸濁液を短期間(1〜5分)超音波処理し、フィラメントを短縮して懸濁液を安定化させ、T.フルクトシボランス由来マイクロチューブの産生をもたらした。
懸濁液の600nmでのODは、グルコース-マンニトール培地で希釈することにより約0.3に調整した。
最後に、懸濁液をオートクレーブに供し、マイクロチューブ含有グルコース-マンニトール培地を調製した。
ii)バイオセルロース及びT.フルクトシボランス由来マイクロチューブを含む複合シートを調製する手順
一般的なHPLCステンレス製のチューブを曲げて、ハンドルを有するループ(φ80mm)を作った。両面テープ(NW-15、ニチバン株式会社)を使用して、ループに円形メッシュシート(PET105-HC、SEFER社)を取り付け、ステンレス製のチューブの縁を有するメッシュシートを調製した。図1は、円形メッシュシート及びステンレス製のチューブを組み合わせることにより、ステンレス製のチューブの縁を有するメッシュシートを調製するための方法を示す図である。
T.フルクトシボランスを、メッシュシート及び40mLのMSVP培地を含有するペトリ皿(H60mm、φ90mm)内で、3〜5日間、25℃で静置培養した。ペトリ皿内で、鞘がメッシュシートに付着し、凝集体が培養液中に現れた。鞘を有するメッシュシートを回収し、更に、凝集体含有培養液をメッシュシートに通し、凝集体をメッシュシートで捕捉し、鞘(マイクロチューブ)が付着したメッシュシートを得た。
メッシュシートを、新しいペトリ皿内にセットし、次に、上のi)で調製した15mLのマイクロチューブ含有グルコース-マンニトール培地を添加した。
新しいペトリ皿にコマガタエイバクター・キシリヌスを添加及び接種し、培養物を2〜3日間、30℃で静置インキュベートし、バイオセルロースを産生させた。
更に、5mLの上のi)で調製したマイクロチューブ含有グルコース-マンニトール培地を再度添加し、更に2〜3日間、30℃で培養した。この工程を反復した。
静置流加培養後、皮膜が産生した。ペトリ皿内で皮膜を水で洗浄した(70mL、3回)。洗浄した皮膜を、40mLの0.25M NaOH溶液で、ペトリ皿内で100℃で1時間処理した。皮膜を水で洗浄(70mL、4回)して、メッシュにより支持された複合シートを得、これはバイオセルロース及びT.フルクトシボランス由来マイクロチューブから構成される(本明細書において以下では、この複合シートを「本発明の複合シート」と呼ぶ)。
本発明の複合シートは、底部に鞘が豊富に存在し、各層がT.フルクトシボランス由来マイクロチューブが結合したバイオセルロースを含む多層構造を有する。
対照として、T.フルクトシボランス由来マイクロチューブなしにバイオセルロースを含むシートを調製した。詳細には、MSVP培地及びメッシュシートを含有するが、T.フルクトシボランスで接種されていないペトリ皿を調製し、T.フルクトシボランス由来の鞘を有しないメッシュシートを得た。このメッシュシートを、新しいペトリ皿内にセットし、次に、15mLのグルコース-マンニトール培地を添加した。新しいペトリ皿内でK.キシリヌスの培養を実施した。更に、5mLのグルコース-マンニトール培地を添加し、更に2〜3日間、30℃で培養した。この工程を反復した。培養後、上の洗浄工程を実施し、対照シートを得た(本明細書において以下では、このシートを「比較シート」と呼ぶ)。
メッシュ支持体を有する本発明の複合シート(又は比較シート)のディスク(φ14mm)を、ブランキングパンチ(69-3/14、株式会社ミツトモ製作所)を使用した打抜きにより調製した。
長期保存のため、ディスクを水の存在下でオートクレーブに供し、次に、使用前に無菌保存した。
iii)シートの評価
化粧活性成分を送達する本発明の複合シートの能力を、シートから放出されて皮膚等価物を通過する化粧活性成分の量を測定することにより決定した。
皮膚等価物として、Millipore社から購入したStratM合成膜(バッチ番号K4KA5601)を使用した。予備研究では、使用条件を決定し、実験プロトコールのパラメータを設定した。
StratM合成膜を、サンプリングポイントを備える静置フランツ型拡散セル内にロードした。合成膜は、1.76cm2の適用面積を有していた。合成膜は、0.25%のTween 80を含むNaCl 9g/Lのレセプター液(RF)と接触していた。解析される化学物質の溶解性が拡散の制限要因とならないようRFを選択した。レセプター区画の容量はおよそ5.5mlであり、恒温器により制御された水システムが、合成膜表面を32℃±1℃(ヒトにおける皮膚温度に相当)に保った。
上のii)で調製した本発明の複合シート(又は比較シート)のディスクを、化粧活性成分に1時間含浸させ、メッシュ支持体を除去した。化粧活性成分として、すべて水溶性である3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオン、カフェイン、ミノキシジル、及び4-(テトラヒドロ-2h-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオール、並びに脂溶性であるオキシベンゾンを使用した。鞘が豊富な側面がStratM膜に面するようディスクをStratM膜に適用した。
化粧活性成分を、本発明の複合シート(又は比較シート)から合成膜を通過してRF区画へと放出させた。化粧活性成分の濃度を決定するために、RF区画からのサンプリングを、所定の時間間隔で1mlハミルトンシリンジを用いて400μlを吸引することにより実行した。試料を、適切なねじぶたにより密封された個別の1.5mlガラスバイアル内に、解析まで室温で保持した。各拡散セルについてRF区画の再充填を、各サンプリング後に新鮮なRFを用いて実行した。
各条件を二重に試験し、3つの独立実験で反復した(1条件当たり6セル)。すべての試料を、LC/MS/MS機器を使用して検証された解析方法に従い定量した。適切な希釈を除き、試料調製は実行しなかった。
結果
3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオン、カフェイン、ミノキシジル、及び4-(テトラヒドロ-2h-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオールに関して、図2は、7時間経過後に本発明の複合シート(又は比較シート)からRF区画へと放出された累積量のパーセンテージを示す。
図2は、3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオン、カフェイン、ミノキシジル、及び4-(テトラヒドロ-2h-ピラン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジオールのより多くの累積放出が、比較シートと比較して、本発明の複合シートにおいて観察されたことを示す。
更に、オキシベンゾン及び3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオンに関して、図3は、上のパーセンテージの経時的(1時間から7時間まで)な変化を示す。
図3はまた、3-(2,4-ジヒドロキシベンジル)-1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン-2,5-ジオン及びオキシベンゾンのより多くの累積放出が、比較シートと比較して、本発明の複合シートにおいて観察されたことを示す。
これらの結果は、本発明の複合シートが、比較シートと比較して、大量の化粧活性成分を、化粧活性成分が水溶性、又は脂溶性にかかわらず、より効率的に送達できることを実証する。
したがって、本発明の複合シートが化粧用シートにおける使用に適することは明らかである。本発明の化粧用シートは、バイオセルロースの良好な特徴、たとえば皮膚上での高接着力、化粧活性成分を大量に保持する能力、及び快適な使用感を維持しながら、その中に含まれる化粧活性成分を皮膚へと効率的に送達できる。

Claims (16)

  1. バイオセルロース及び有鞘細菌由来マイクロチューブを含む複合シート。
  2. バイオセルロースが、アグロバクテリウム属、リゾビウム属、サルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、エンテロバクター属、アゾトバクター属、コマガタエイバクター属、キサントモナス属、バチルス属、及びアセトバクター属からなる群から選択される微生物菌株に由来する、請求項1に記載の複合シート。
  3. 微生物菌株がコマガタエイバクター属に属する、請求項2に記載の複合シート。
  4. コマガタエイバクター属の微生物菌株がコマガタエイバクター・キシリヌスである、請求項3に記載の複合シート。
  5. 有鞘細菌がチオスリックス属に属する、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合シート。
  6. 有鞘細菌がチオスリックス・フルクトシボランスである、請求項5に記載の複合シート。
  7. マイクロチューブがデオキシ糖で修飾された(β1→4)結合グルコサミノグルカンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合シート。
  8. マイクロチューブが、L-Fuc及びD-Rha4Nからなるデオキシ糖ダイマー側鎖を有する糖ポリマー[D-Glc-(β1→4)-D-GlcN(Ac)]nを含み、側鎖がD-Glcにコンジュゲートされ、nが10から5000、好ましくは15から3000、より好ましくは20から1500であり、糖ポリマーが任意選択で置換される、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合シート。
  9. マイクロチューブの壁の厚さが10から50nmであり、その直径が1から5μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合シート。
  10. (a)培地中で有鞘細菌を培養し、マイクロチューブを産生する工程、
    (b)工程(a)で得られたマイクロチューブを短縮する工程、及び
    (c)工程(b)で得られた短縮マイクロチューブの存在下でバイオセルロース産生微生物菌株を培養し、前記マイクロチューブと結合したバイオセルロースを産生する工程
    を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の複合シートを産生するための方法。
  11. 工程(b)におけるマイクロチューブの短縮が、超音波処理工程により達成される、請求項10に記載の方法。
  12. 有鞘細菌をメッシュシートとともに培養することによりマイクロチューブ付着メッシュシートを提供する工程を更に含み、工程(c)が、マイクロチューブ付着メッシュシートとともに実施されて、マイクロチューブ付着メッシュシートに、マイクロチューブが結合したバイオセルロースを沈着させて、底部にマイクロチューブが豊富に存在する複合シートを産生する、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 工程(c)を反復して実施して、多層複合シートを得る、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 請求項1から9のいずれか一項に記載の複合シートを含む化粧用シート。
  15. 少なくとも1種の化粧活性成分を更に含む、請求項14に記載の化粧用シート。
  16. 請求項1から9のいずれか一項に記載の複合シートをケラチン物質、たとえば皮膚又は唇に適用する工程を含む、皮膚又は唇のケア又はメイクアップのための化粧方法。
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