JP2018098835A - 電気機械変換器 - Google Patents

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【課題】可動部材を小型にしても出力が低下しにくい電気機械変換器を提供する。【解決手段】帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器は、回転軸の周りに回転可能な円板状の回転部材であって、回転軸を中心とする円形領域が導電性材料で構成され、少なくとも一方の面の円形領域内に回転方向に間隔を空けて複数の溝部が形成された回転部材と、回転部材の一方の面に対向して配置された対向基板と、回転部材の一方の面における円形領域よりも外周側の円環領域に、回転方向に間隔を空けて形成された第1の帯電部と、回転部材を挟んで対向基板とは反対側に配置され、回転部材の円形領域の全体を覆うように一体的に形成された第2の帯電部と、回転部材の円環領域および円形領域に対向するように、対向基板上に回転方向に間隔を空けて形成された複数の対向電極とを有する。【選択図】図2

Description

本発明は、電気機械変換器に関する。
半永久的に電荷を保持するエレクトレットを帯電部として利用し、帯電部とそれに対向する対向電極との間の静電的な相互作用により電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器が知られている。こうした電気機械変換器では、一般に、可動部材と固定基板の一方に帯電部が、他方に対向電極がそれぞれ配置され、帯電部と対向電極は、可動部材の移動方向にパターン化されている。
例えば、特許文献1には、エレクトレットと、第一対向電極と、第二対向電極とを備え、エレクトレットは、厚さ方向に沿った分極方向が第一の方向となる第一の領域と、厚さ方向に沿った分極方向が第一の方向と反対の第二の方向となる第二の領域とを有し、第一の領域と第二の領域とは、厚さ方向と直交する表面である主面と平行な方向である主面方向に沿って互いに隣接するように設けられ、第一対向電極と第二対向電極とは、エレクトレットの両面にそれぞれ設けられている静電誘導型機械電気変換素子が記載されている。
特許文献2には、表面に電荷を保持し、連続して繋がって形成されたエレクトレット膜が配置された第1の基板と、エレクトレット膜と対向する表面に集電電極が配置された第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置され、第1の基板および第2の基板に対し所定の方向に移動可能に支持された導電性を有する可動基板とを備える微小電気機械発電器が記載されている。この微小電気機械発電器では、可動基板は、第1の基板側から第2の基板側に向けて貫通し、エレクトレット膜から放射される電界を通す開口部を有し、可動基板が移動することにより、開口部から集電電極に放射される電界の有無が生じ、電界の有無により、集電電極に電荷が励起したり放電したりすることによって発電する。
特開2013−115921号公報 国際公開第2013/088645号
帯電部と対向電極が可動部材の移動方向にパターン化された電気機械変換器では、特に可動部材の大きさを小さくすると、個々の帯電部および対向電極の幅(パターン幅)も小さくなる。帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用により発生する駆動力(発生力)または電力は、パターン幅の減少に伴い急激に低下するため、小型の電気機械変換器(可動部材)では十分な出力が得られないという不具合がある。
そこで、本発明は、可動部材を小型にしても出力が低下しにくい電気機械変換器を提供することを目的とする。
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、回転軸の周りに回転可能な円板状の回転部材であって、回転軸を中心とする円形領域が導電性材料で構成され、少なくとも一方の面の円形領域内に回転方向に間隔を空けて複数の溝部が形成された回転部材と、回転部材の一方の面に対向して配置された対向基板と、回転部材の一方の面における円形領域よりも外周側の円環領域に、回転方向に間隔を空けて形成された第1の帯電部と、回転部材を挟んで対向基板とは反対側に配置され、回転部材の円形領域の全体を覆うように一体的に形成された第2の帯電部と、回転部材の円環領域および円形領域に対向するように、対向基板上に回転方向に間隔を空けて形成された複数の対向電極とを有する電気機械変換器が提供される。
上記の電気機械変換器では、回転部材の対向基板とは反対側の面における円形領域は、凹凸が形成されていない平坦面であり、第2の帯電部は、回転部材の対向基板とは反対側の面における円形領域に配置されていることが好ましい。
上記の電気機械変換器は、対向基板とは反対側において回転部材に対向するように配置された第2の対向基板をさらに有し、第2の帯電部は、第2の対向基板の回転部材との対向面に配置されていることが好ましい。
上記の電気機械変換器では、回転部材の複数の溝部は、回転部材の円形領域を貫通する貫通孔であることが好ましい。
上記の電気機械変換器では、回転部材の対向基板とは反対側の面における円形領域は、凹凸が形成されていない平坦面であり、第2の帯電部は、複数の対向電極の側から見ると回転部材により覆い隠されていることが好ましい。
上記の電気機械変換器は、回転部材の対向基板とは反対側の面における円環領域に、回転方向に間隔を空けて形成された第3の帯電部と、回転部材の円環領域に対向するように、第2の対向基板上に回転方向に間隔を空けて形成された他の複数の対向電極とをさらに有することが好ましい。
上記の電気機械変換器では、回転部材の円環領域には、第1の帯電部が配置されていない部分に複数の貫通孔が形成されていることが好ましい。
上記の電気機械変換器によれば、可動部材を小型にしても、本構成を有しない場合と比べて出力が低下しにくい。
電気機械変換器1の概略構成図である。 アクチュエータ10の斜視図である。 図2のIIIA線およびIIIB線に沿ったアクチュエータ10の切断面を示す図である。 回転部材12の円環領域D1および円形領域D2を示す平面図である。 比較例1のアクチュエータ100の概略構成図である。 比較例2のアクチュエータ100’の概略構成図である。 回転部材120,120’のパターン幅とアクチュエータ100,100’の発生力の大きさとの関係を示すグラフである。 他のアクチュエータ10’の概略構成図である。 他のアクチュエータ10Aの概略構成図である。 他のアクチュエータ10Bの概略構成図である。 電気機械変換器2の概略構成図である。
以下、図面を参照しつつ、電気機械変換器について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
図1は、電気機械変換器1の概略構成図である。図1に示すように、電気機械変換器1は、アクチュエータ10および駆動部20を有する。アクチュエータ10は、回転軸11、回転部材12、固定基板13,14、エレクトレット部15a,15b,16aおよび対向電極17,18,17’,18’を有する。図1では、アクチュエータ10として、図の下から順に、固定基板13の上面131、回転部材12の下面122、回転部材12の上面121および固定基板14の下面142を並べて示している。電気機械変換器1は、駆動部20に入力された電気信号をもとに、エレクトレット部15a,15b,16aと対向電極17,18,17’,18’との間の静電気力を利用して回転部材12を回転させることにより電力から動力を取り出す駆動装置(エレクトレットモータ)である。
図2は、アクチュエータ10の斜視図である。図2では、回転軸11、固定基板13の下面132、回転部材12の下面122および固定基板14の下面142を示している。図2に示すように、アクチュエータ10は、円板状の固定基板14、回転部材12および固定基板13が図の上側からこの順に重ね合わされて構成される。なお、後述する通り、回転部材12の下面122にはエレクトレット部15aが形成されているが、簡単のため、図2ではエレクトレット部15aの図示を省略している。
回転軸11は、回転部材12の回転中心となる軸であり、図2に示すように、回転部材12および固定基板13,14の中心を貫通している。回転軸11の上下端は、軸受けを介して、図示しない電気機械変換器1の筐体に固定されている。
回転部材12は、例えばシリコン(Si)などの導電性の基板材料で構成される。図2に示すように、回転部材12は、その中心で回転軸11に接続しており、固定基板13,14との間で一定の距離を保って回転可能である。回転部材12は、駆動部20に入力された電気信号に応じてエレクトレット部15a,15b,16aと対向電極17,18,17’,18’との間で発生する静電気力により、回転軸11の周りを、円周方向である図2の矢印C方向(時計回りおよび反時計回り)に回転する。例えば、回転部材12の直径は5〜20mm程度であり、厚さは100〜500μm程度である。
回転部材12には、重量を軽くするために、円周方向に沿って等間隔に、かつ回転軸11を中心とする放射状に、略台形状の複数の貫通孔128(溝部の一例)が形成されている。個々の貫通孔128は、回転軸11に近い中央側から回転部材12の外周側まで、回転部材12の径方向のほぼ全体にわたって延びている。なお、図1では、簡単のために、貫通孔128の個数を図2よりも少なく表示している。
固定基板13は、例えばガラスエポキシ基板などの周知の基板材料で構成された平坦な基板である。固定基板13は、対向基板の一例であり、図2に示すように、回転部材12の下面122(一方の面)に対向して、回転部材12の下側に配置されている。
固定基板14は、例えばガラス基板またはシリコン基板で構成された平坦な基板である。固定基板14は、第2の対向基板の一例であり、図2に示すように、固定基板13とは反対側において、回転部材12の上面121に対向して回転部材12の上側に配置されている。すなわち、固定基板14は、回転部材12を挟んで固定基板13とは反対側に、回転部材12との間に間隔を空けて配置されている。なお、回転軸11が固定基板13,14の中心を貫通しているが、固定基板13,14は、回転部材12とは異なり、電気機械変換器1の筐体に対して固定されている。
図3(A)および図3(B)は、それぞれ、図2のIIIA線およびIIIB線に沿ったアクチュエータ10の切断面を示す図である。また、図4は、回転部材12の円環領域D1および円形領域D2を示す平面図である。図3(A)および図3(B)では、図の横方向が回転部材12および固定基板13,14の円周方向(図2の矢印C方向)に相当するように変形して図示している。
エレクトレット部15aは、第1の帯電部の一例であり、例えば負電荷を保持し、図1および図3(A)に示すように、略台形の複数の部分領域で構成される。エレクトレット部15aは、回転部材12の下面122上であって、回転軸11を中心とし回転部材12の半径のほぼ1/2を半径とする円C1よりも外周側に、円周方向(回転方向)に間隔を空けて形成されている。図4に示すように、円C1よりも中央側の部分が回転部材12の円形領域D2であり、円形領域D2よりも外周側の部分が回転部材12の円環領域D1である。エレクトレット部15aは、円環領域D1における貫通孔128以外の部分に形成されており、円環領域D1では、エレクトレット部15aと貫通孔128が回転部材12の円周方向に交互に配置されている。円形領域D2にはエレクトレット部15aは配置されておらず、円形領域D2における貫通孔128以外の部分は、平坦部127である。
エレクトレット部15bは、第2の帯電部の一例であり、例えば負電荷を保持し、図1および図3(B)に示すように、固定基板14の下面142(回転部材12の上面121との対向面)の中央側に形成されている。すなわち、エレクトレット部15bは、回転部材12とは別部材であり回転部材12を挟んで固定基板13とは反対側に配置された固定基板14において、対向電極17,18とは直接対向しない位置に配置されている。また、エレクトレット部15bは、固定基板14上において、回転軸11を中心とする、回転部材12の円形領域D2とほぼ同じ大きさの円形領域を覆い尽くすように形成されている。言い換えると、エレクトレット部15bは、円周方向に間隔が空いた複数の部分領域には分かれておらず、回転部材12の円形領域D2の全体を覆うように、一体的に(ベタで)形成されている。
エレクトレット部16aは、第3の帯電部の一例であり、例えば負電荷を保持し、図1および図3(A)に示すように、略台形の複数の部分領域で構成される。エレクトレット部16aは、回転部材12の上面121(固定基板13とは反対側の面)における円環領域D1に、円周方向に間隔を空けて形成されている。エレクトレット部15aと同様に、エレクトレット部16aは、回転部材12の円形領域D2には配置されておらず、円環領域D1における貫通孔128以外の部分に形成されている。上面121においても、円環領域D1では、エレクトレット部16aと貫通孔128が回転部材12の円周方向に交互に配置されており、円形領域D2では、貫通孔128以外の部分は平坦部127である。
対向電極17,18は、図1、図3(A)および図3(B)に示すように、固定基板13の上面131(回転部材12の下面122との対向面)において、円周方向に交互に、かつ回転軸11を中心とする放射状に形成されている。対向電極17,18はそれぞれ略台形の複数の電極で構成され、これらの電極は、回転部材12の円環領域D1および円形領域D2に対向して、回転軸11に近い中央側から外周側まで、固定基板13の径方向のほぼ全体にわたって延びている。このため、対向電極17,18は、回転部材12の円環領域D1および円形領域D2の両方に対向するように配置されている。また、対向電極17同士および対向電極18同士は、回転部材12の回転方向に間隔を空けて形成され、かつ等間隔に配置されている。
対向電極17’,18’は、図1および図3(A)に示すように、固定基板14の下面142(回転部材12の上面121との対向面)における外周側に、円周方向に交互に、かつ回転軸11を中心とする放射状に形成されている。対向電極17’,18’もそれぞれ略台形の複数の電極で構成され、これらの電極は、回転部材12の円環領域D1のみに対向するように配置されている。また、対向電極17’同士および対向電極18’同士も、回転部材12の回転方向に間隔を空けて形成され、かつ等間隔に配置されている。
回転軸11を中心とする同一円周上では、対向電極17,18,17’,18’の幅はそれぞれ同じであり、その大きさは、回転部材12における貫通孔128とエレクトレット部15a,16aの幅と同じかほぼ同じであることが好ましい。また、エレクトレット部15aを構成する部分領域、エレクトレット部16aを構成する部分領域、対向電極17、対向電極18、対向電極17’および対向電極18’の個数は、すべて同じであることが好ましい。
駆動部20は、アクチュエータ10を駆動するための回路であり、クロック21および比較器22,23を有する。駆動部20は、アクチュエータ10の駆動時に、極性が交互に切り替わる交番電圧を対向電極17,18,17’,18’に印加する。具体的には、駆動部20は、一方の対向電極17,17’にエレクトレット部15a,15b,16aの帯電と同じ符号の電圧を印加し、他方の対向電極18,18’には対向電極17,17’とは逆符号の電圧を印加して、それらの電圧の符号を交互に反転させる。駆動部20は、このように交番電圧を印加して、エレクトレット部15a,15b,16aが作る電界と対向電極17,18,17’,18’が作る電界との相互作用により静電気力を発生させ、それにより回転部材12を回転させる。
図1に示すように、クロック21の出力は比較器22,23の入力に接続され、比較器22の出力は対向電極17,17’に、比較器23の出力は対向電極18,18’に、それぞれ電気配線を介して接続されている。比較器22,23は、それぞれクロック21からの入力信号の電位と接地電位とを比較し、その結果を2値で出力するが、比較器22,23の出力信号は互いに逆の符号である。クロック21からの入力信号がHのときには、対向電極17,17’は+V、対向電極18,18’は−Vの電位になり、入力信号がLのときには、対向電極17,17’は−V、対向電極18,18’は+Vの電位になる。
アクチュエータ10では、回転部材12の外周側において、下面122側にはエレクトレット部15aと対向電極17,18の組が対向して配置され、上面121側にはエレクトレット部16aと対向電極17’,18’の組が対向して配置されている。駆動部20が交番電圧を対向電極17,18,17’,18’に印加することにより、回転部材12の外周側において、エレクトレット部15aと対向電極17,18との間、およびエレクトレット部16aと対向電極17’,18’との間に連続して静電気力が発生するため、円周方向の駆動力が得られる。
また、回転部材12が導電性部材で構成されているため、固定基板14上のエレクトレット部15bが作る電界が回転部材12の円形領域D2に伝わり、円形領域D2の上面と下面は同電位になる。回転部材12には貫通孔128による凹凸パターンが形成されているため、円周方向の位置に応じて回転部材12の下面122と対向電極17,18との間の距離が異なり、その距離に応じて対向電極17,18に作用する電界の強さが変化する。このため、固定基板14にエレクトレット部15bが配置されていても、回転部材12の下面122に放射状のパターンでエレクトレットが形成されているのと同様の状態が実現される。したがって、駆動部20が交番電圧を対向電極17,18に印加することにより、回転部材12の中央側においても、回転部材12の平坦部127と対向電極17,18との間に連続して静電気力が発生するため、円周方向の駆動力が得られる。
なお、回転部材12の中央側において静電気力を発生させるためには、回転部材12の円形領域D2が導電性材料で構成されていればよい。このため、回転部材12の円環領域D1と円形領域D2の材質はそれぞれ異なっていてもよく、その場合、円環領域D1の材質は必ずしも導電性のものでなくてもよい。また、円形領域D2は、金属材料で構成してもよく、平坦部127および貫通孔128を有する形状に絶縁体を加工し、その表面全体を導電性部材で被覆して作製してもよい。
図5(A)および図5(B)は、比較例1のアクチュエータ100の概略構成図である。アクチュエータ100は、回転軸110、回転部材120、固定基板130,140、エレクトレット部150,160および対向電極170,180を有する。アクチュエータ100は、アクチュエータ10と同様に、円板状の回転部材120が2枚の固定基板130,140に挟まれて構成される。回転部材120は、その中心を通る回転軸110(図2の回転軸11に相当)の周りに回転可能である。図5(A)は、図の下から順に、固定基板130の上面131、回転部材120の下面122、回転部材120の上面121および固定基板140の下面142を並べて示す。図5(B)は、円周方向に沿って回転部材120およびその上下の固定基板130,140を切断したときの切断面を示す。
図5(A)および図5(B)に示すように、回転部材120には、上面にエレクトレット部160が、下面にエレクトレット部150が、それぞれ円周方向に等間隔、かつ回転軸110を中心として放射状に配置されている。エレクトレット部150,160は、アクチュエータ10のエレクトレット部15a,16aとは異なり、回転軸110に近い中央側から外周側まで、回転部材120の径方向のほぼ全体にわたって延びている。また、回転部材120では、重量を軽くするために、エレクトレット部150,160が形成されていない部分に、円周方向に沿って等間隔に、略台形状の複数の貫通孔(スリット)128が形成されている。
アクチュエータ100では、回転部材120の上下に配置された固定基板130,140の両方において、対向電極170,180が、円周方向に交互に、かつ回転軸110を中心とする放射状に形成されている。対向電極170,180も、回転軸110に近い中央側から外周側まで、固定基板130,140の径方向のほぼ全体にわたって延びている。このため、アクチュエータ100では、回転部材120の下面側にエレクトレット部150と対向電極170,180の組が、回転部材120の上面側にエレクトレット部160と対向電極170,180の組が、それぞれ対向して配置されている。すなわち、比較例1のアクチュエータ100は、アクチュエータ10の外周側と同じ構成を有する。
図6(A)および図6(B)は、比較例2のアクチュエータ100’の概略構成図である。アクチュエータ100’は、回転軸110、回転部材120’、固定基板130,140’、エレクトレット部150’および対向電極170,180を有する。図6(A)は、図の下から順に、固定基板130の上面131、回転部材120’の下面122、回転部材120’の上面121および固定基板140’の下面142を並べて示す。図6(B)は、円周方向に沿って回転部材120’およびその上下の固定基板130,140’を切断したときの切断面を示す。回転部材120’、固定基板130,140’および対向電極170,180はアクチュエータ100のものと同様であるが、アクチュエータ100’は、エレクトレット部および対向電極の形成位置がアクチュエータ100とは異なる。
アクチュエータ100’では、対向電極170,180は固定基板140’には形成されておらず、固定基板130のみに形成されている。アクチュエータ100’の対向電極170,180も、回転部材120’の回転軸110に近い中央側から外周側まで、固定基板130の径方向のほぼ全体にわたって延びている。また、アクチュエータ100’では、エレクトレット部150’は、回転部材120’には形成されておらず、固定基板140’の下面142において、対向電極170,180の形成位置に対応する領域全体を覆うように、一体的に(ベタで)形成されている。すなわち、比較例2のアクチュエータ100’は、アクチュエータ10の中央側と同じ構成を有する。
図7は、回転部材120,120’のパターン幅とアクチュエータ100,100’の発生力の大きさとの関係を示すグラフである。グラフの横軸は、回転部材120,120’のパターン幅d(単位μm)である。パターン幅dは、アクチュエータ100では、回転軸110を中心とする円周上におけるエレクトレット部150,160の幅に、アクチュエータ100’では、回転軸110を中心とする円周上における貫通孔128以外の部分である平坦部127(スポーク部分)の幅に、それぞれ相当する。また、グラフの縦軸は、特定のパターン幅で配置された平坦部127またはエレクトレット部150,160と対向電極170,180との間の静電的な相互作用により発生する回転方向の駆動力(発生力)の大きさF(単位mN/m)である。
図7では、アクチュエータ100,100’の両方とも、回転部材120,120’の最下面と固定基板130の上面との間の距離を70μmとした場合の結果を示している。曲線aはアクチュエータ100’についてのグラフであり、曲線bはアクチュエータ100についてのグラフである。パターン幅が700〜1100μmの範囲では、得られる発生力は、アクチュエータ100’よりもアクチュエータ100の方が大きい。一方、パターン幅が100〜700μmの範囲では、得られる発生力は、アクチュエータ100’の方がアクチュエータ100よりも大きい。これは、パターン幅が狭い範囲では、固定基板140’上にエレクトレット部150’をベタで形成した方が、円周方向に交互に貫通孔128とエレクトレット部150,160とを配置した場合と比べてエレクトレットの総量が多くなるためであると考えられる。
円板状の回転部材に貫通孔やエレクトレット部のパターンを放射状に形成すると、円板の中央側ではパターン幅が狭く、外周側に向かうほどパターン幅が広くなる。このため、図7の結果に鑑みて、アクチュエータ10では、パターン幅が広い外周側を比較例1のアクチュエータ100と同じ構成とし、パターン幅が狭い中央側を比較例2のアクチュエータ100’と同じ構成としている。このような組合せの構成により、アクチュエータ10では、パターン幅が100〜700μmの範囲(中央側)ではアクチュエータ100よりも発生力が大きく、パターン幅が700〜1100μmの範囲(外周側)ではアクチュエータ100’よりも発生力が大きくなる。したがって、アクチュエータ10では、回転部材12を小型にしてもアクチュエータ100と比べて出力が低下しにくく、電気機械変換器の小型化に適している。
また、アクチュエータ10では、パターン幅が狭い中央側において平坦な固定基板14上にエレクトレット部15bがベタで配置されているため、回転軸110に近い中心付近まで放射状のパターンでエレクトレット部150,160を配置した場合と比べて、エレクトレットの形成が容易である。また、アクチュエータ10では、アクチュエータ100と比べて回転軸の方向の発生力が小さいので、その分、回転軸と軸受けとの間に生じる摩擦力も少なく済む。
図8は、他のアクチュエータ10’の概略構成図である。アクチュエータ10’は、アクチュエータ10のエレクトレット部16aおよび対向電極17’,18’が省略されている点のみがアクチュエータ10とは異なり、その他の点ではアクチュエータ10と同じ構成を有する。図8では、アクチュエータ10’として、図の下から順に、固定基板13の上面131、回転部材12の下面122、回転部材12の上面121および固定基板14の下面142を並べて示している。図8に示すように、アクチュエータ10のエレクトレット部16aおよび対向電極17’,18’は省略可能であり、アクチュエータ10’の方が構造が単純になる。ただし、アクチュエータ10の方が、エレクトレット部16aと対向電極17’,18’の組がある分だけ、回転方向の発生力が大きくなる。
図9(A)〜図9(C)は、他のアクチュエータ10Aの概略構成図である。図9(A)は、アクチュエータ10Aの回転部材12Aの上面121および下面122を示す。また、図9(B)および図9(C)は、図3(A)および図3(B)と同様に、それぞれ、回転部材12Aの円環領域D1および円形領域D2おける円周方向に沿ったアクチュエータ10Aの切断面を示す。アクチュエータ10Aは、回転部材の形状のみがアクチュエータ10とは異なり、その他の点ではアクチュエータ10と同一の構成を有する。円環領域D1および円形領域D2の定義も、アクチュエータ10でのものと同じである。
図9(A)に示すように、回転部材12Aの下面122における円環領域D1および円形領域D2には、複数の凹部125(溝部の一例)および凸部126が、円周方向に交互に、かつ回転軸11を中心とする放射状に形成されている。一方、回転部材12の上面121における円環領域D1および円形領域D2は、凹凸が形成されていない平坦部127である。すなわち、回転部材12には、下側の固定基板13との対向面のみに、凹凸(溝部)が形成されている。図9(B)および図9(C)に示すように、凹部125は固定基板13に対して窪んだ部分であり、凸部126は固定基板13に向けて突出した部分であり、凹部125同士および凸部126同士は、円周方向に間隔を空けて形成されている。凹部125同士および凸部126同士はそれぞれ等間隔に配置されており、回転軸11を中心とする同一円周上では、凹部125と凸部126の幅は同じである。
回転部材12Aは、例えば、円板状のシリコン基板の片面に対して深掘りエッチングまたはブラスト加工などを行って、凹部125の部分を削り取ることで作製される。あるいは、回転部材12Aは、平坦な円板状の部材と、凸部126のパターンが形成された部材とを別々に用意し、それらを貼り合わせて作製してもよい。
図9(A)および図9(B)に示すように、アクチュエータ10Aでは、エレクトレット部15aは、回転部材12の下面122側の円環領域D1における凸部126の上に形成されている。また、エレクトレット部16aは、回転部材12の上面121側の円環領域D1において、下面122側のエレクトレット部15aに対応する位置に形成されている。なお、アクチュエータ10Aでも、固定基板13における対向電極17,18の配置、および固定基板14におけるエレクトレット部15bおよび対向電極17’,18’の配置は、アクチュエータ10のものと同じである。アクチュエータ10Aでは、回転部材12Aに貫通孔が形成されていないため、エレクトレット部15bは、対向電極17,18の側から見ると、回転部材12により覆い隠されている。
回転部材12Aの下面122には凹部125および凸部126により凹凸パターンが形成されているため、個々の対向電極17,18の上を凹部125が通過するときと、凸部126が通過するときで、対向電極17,18に作用する電界の強さが変化する。このため、アクチュエータ10Aも、対向電極17,18に交番電圧を印加することにより回転部材12Aを回転させることができる。
アクチュエータ10Aでも、パターン幅が狭い中央側ではアクチュエータ100よりも発生力が大きく、パターン幅が広い外周側ではアクチュエータ100’よりも発生力が大きいため、回転部材12Aを小型にしても出力が低下しにくい。また、アクチュエータ10Aでも、アクチュエータ10と同様に、エレクトレット部15bの形成が容易であり、回転軸11と軸受けとの間に生じる摩擦力も少なく済む。なお、アクチュエータ10Aでも、アクチュエータ10’と同様に、エレクトレット部16aおよび対向電極17’,18’は省略可能である。
図10(A)〜図10(C)は、他のアクチュエータ10Bの概略構成図である。図10(A)は、アクチュエータ10Bの回転部材12Aの上面121および下面122を示す。また、図10(B)および図10(C)は、図3(A)および図3(B)と同様に、それぞれ、回転部材12Aの円環領域D1および円形領域D2おける円周方向に沿ったアクチュエータ10Bの切断面を示す。アクチュエータ10Bは、アクチュエータ10の固定基板14、エレクトレット部16aおよび対向電極17’,18’が省略されている点、およびエレクトレット部15bの配置位置のみがアクチュエータ10Aとは異なり、その他の点ではアクチュエータ10Aと同一の構成を有する。円環領域D1および円形領域D2の定義も、アクチュエータ10,10Aでのものと同じである。
アクチュエータ10Bでは、エレクトレット部15bは、回転部材12の上面121における円形領域D2の全体を覆うように、一体的に(ベタで)形成されている。すなわち、アクチュエータ10Bでも、エレクトレット部15bは、対向電極17,18とは直接対向しない位置に配置されており、対向電極17,18の側から見ると、回転部材12により覆い隠されている。
アクチュエータ10Bでも、パターン幅が狭い中央側ではアクチュエータ100よりも発生力が大きく、パターン幅が広い外周側ではアクチュエータ100’よりも発生力が大きいため、回転部材12Aを小型にしても出力が低下しにくい。また、アクチュエータ10Bでも、アクチュエータ10と同様に、エレクトレット部15bの形成が容易であり、回転軸11と軸受けとの間に生じる摩擦力も少なく済む。さらに、アクチュエータ10Bでは、回転部材12Aの上面に直接エレクトレット部15bが形成されているため、回転部材12とエレクトレット部15bとの間が空いているアクチュエータ10,10Aと比べて、回転部材12Aが作る電界が強くなり、その分発生力も強くなる。また、アクチュエータ10Bでは、アクチュエータ10の固定基板14が不要であるため、部材の個数が少なく済み、アクチュエータ自体の厚さも薄くなるという利点がある。
図11は、電気機械変換器2の概略構成図である。図11に示すように、電気機械変換器2は、発電部30および蓄電部40を有する。発電部30は、アクチュエータ10と同様に、回転軸11、回転部材12、固定基板13,14、エレクトレット部15a,15b,16aおよび対向電極17,18,17’,18’を有する。電気機械変換器2は、外部環境の運動エネルギーを用いて回転部材12を回転させ、発電部30内で静電誘導により静電気を発生させることで動力から電力を取り出す発電装置(エレクトレット発電機)である。
回転部材12、固定基板13,14、エレクトレット部15a,15b,16aおよび対向電極17,18,17’,18’は、アクチュエータ10のものと同じである。ただし、例えば発電部30の回転部材12には、重量バランスの偏りを有する図示しない回転錘が取り付けられる。また、電気機械変換器2の対向電極17,18,17’,18’は、それぞれ電気配線を介して蓄電部40に接続されている。発電部30では、例えば電気機械変換器2を携帯する人体の運動または電気機械変換器2が取り付けられた機械などの振動を動力源として、回転錘付きの回転部材12がその円周方向に回転する。
回転部材12が回転すると、それに伴い、回転部材12の外周側におけるエレクトレット部15a,15b,16aと対向電極17,18,17’,18’との間の重なり面積、および中央側における回転部材12の平坦部127と対向電極17,18との間の重なり面積が増減する。例えば、エレクトレット部15a,15b,16aに負電荷が保持されているとすると、エレクトレット部15a,15b,16aおよび回転部材12の円形領域D2が作る電界により対向電極17,18,17’,18’に引き寄せられる正電荷が、回転部材12の回転に伴い増減する。発電部30は、このようにして、対向電極17と対向電極18の間および対向電極17’と対向電極18’の間に交流電流を発生させることにより、静電誘導を利用した発電を行う。
蓄電部40は、整流回路41および二次電池42を有し、回転部材12の回転に応じてエレクトレット部15a,15b,16aと対向電極17,18との間の静電誘導により発生した電力を蓄積する。対向電極17,18,17’,18’からの出力は整流回路41に接続され、整流回路41は二次電池42に接続されている。整流回路41は、4個のダイオードを有するブリッジ式の回路であり、対向電極17,17’と対向電極18,18’の間で生成された電流を整流する。二次電池42は、リチウム二次電池などの充放電可能な電池であり、発電部30によって発電された電力を蓄積し、図示しない駆動対象の回路にその電力を供給する。
発電部30でも、回転部材12のパターン幅を狭くしても、発生する電力の低下が少ないため、回転部材12を小型にしても出力が低下しにくいという効果が得られる。
なお、発電部30でも、エレクトレット部16aおよび対向電極17’,18’は省略可能である。また、回転部材12に替えて、図9(A)〜図9(C)に示した回転部材12Aを用いてもよい。あるいは、発電部30でも、図10(A)〜図10(C)に示したアクチュエータ10Bと同様に固定基板14を省略し、回転部材12の上面121における円形領域D2にエレクトレット部15bをベタで形成してもよい。
1,2 電気機械変換器
10,10’,10A,10B アクチュエータ
11 回転軸
12,12A 回転部材
125 凹部
126 凸部
127 平坦部
128 貫通孔
13,14 固定基板
15a,15b,16a エレクトレット部
17,17’,18,18’ 対向電極
20 駆動部
30 発電部
40 蓄電部

Claims (7)

  1. 帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
    回転軸の周りに回転可能な円板状の回転部材であって、前記回転軸を中心とする円形領域が導電性材料で構成され、少なくとも一方の面の前記円形領域内に回転方向に間隔を空けて複数の溝部が形成された回転部材と、
    前記回転部材の前記一方の面に対向して配置された対向基板と、
    前記回転部材の前記一方の面における前記円形領域よりも外周側の円環領域に、前記回転方向に間隔を空けて形成された第1の帯電部と、
    前記回転部材を挟んで前記対向基板とは反対側に配置され、前記回転部材の前記円形領域の全体を覆うように一体的に形成された第2の帯電部と、
    前記回転部材の前記円環領域および前記円形領域に対向するように、前記対向基板上に前記回転方向に間隔を空けて形成された複数の対向電極と、
    を有することを特徴とする電気機械変換器。
  2. 前記回転部材の前記対向基板とは反対側の面における前記円形領域は、凹凸が形成されていない平坦面であり、
    前記第2の帯電部は、前記回転部材の前記対向基板とは反対側の面における前記円形領域に配置されている、請求項1に記載の電気機械変換器。
  3. 前記対向基板とは反対側において前記回転部材に対向するように配置された第2の対向基板をさらに有し、
    前記第2の帯電部は、前記第2の対向基板の前記回転部材との対向面に配置されている、請求項1に記載の電気機械変換器。
  4. 前記回転部材の前記複数の溝部は、前記回転部材の前記円形領域を貫通する貫通孔である、請求項3に記載の電気機械変換器。
  5. 前記回転部材の前記対向基板とは反対側の面における前記円形領域は、凹凸が形成されていない平坦面であり、
    前記第2の帯電部は、前記複数の対向電極の側から見ると前記回転部材により覆い隠されている、請求項3に記載の電気機械変換器。
  6. 前記回転部材の前記対向基板とは反対側の面における前記円環領域に、前記回転方向に間隔を空けて形成された第3の帯電部と、
    前記回転部材の前記円環領域に対向するように、前記第2の対向基板上に前記回転方向に間隔を空けて形成された他の複数の対向電極と、
    をさらに有する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
  7. 前記回転部材の前記円環領域には、前記第1の帯電部が配置されていない部分に複数の貫通孔が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
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