[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図2(A)は、本発明の第1実施形態にかかる平ベルト1の断面図である。図2(B)は、平ベルト1が複数の巻掛対象としてのプーリ100(101〜104)に巻かれた状態を示す側面図である。
図2(A)および図2(B)を参照して、本発明の平ベルトの用途として、動力伝達用途、バケット等による物品搬送用途、圧搾用途等を例示することができる。平ベルト1は、無端環状に形成されており、本実施形態(第1実施形態)では、シームレスベルトである。すなわち、平ベルト1は、ジョイントを用いて無端状に形成されているのではない。なお、平ベルト1は、ジョイントによって無端環状に連結された構成であってもよい。
本実施形態の平ベルト1は、高負荷(大きな張力が作用する使用条件)であっても、低負荷であっても使用可能である。また、平ベルト1は、高回転環境でも、低回転環境でも使用可能である。
平ベルト1は、当該平ベルト1の厚み方向R1(ベルト厚み方向R1)における表面2および裏面3の双方が、プーリ100(101,102,103,104)に接触可能に構成されている。本実施形態では、平ベルト1の表面2が、プーリ104に接触する例が示されている。また、平ベルト1の裏面3が、プーリ101,102,103に接触する例が示されている。なお、平ベルト1は、表面2および裏面3の何れか一方のみがプーリ100(巻掛対象)に接触するように用いられてもよい。
平ベルト1は、当該平ベルト1の周方向C1と直交する断面における断面形状が、平ベルト1の幅方向W1に細長い扁平の矩形状に形成されている。平ベルト1の両側面(幅方向W1の端面)は、動力伝達に用いられることは、通常意図されていない。また、本実施形態では、平ベルト1が無端環状である形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。本発明の平ベルトは、環状ではない有端の形状(直線形状等)に形成されていてもよい。
平ベルト1は、複数のゴム層10(11,12)と、ゴム層10に重ねられた複数の芯体シート層20(21,22,23)と、を有している。そして、平ベルト1の厚み方向R1の内側(裏面3側)から外側(表面2側)に向けて、ゴム層10と、芯体シート層20と、が交互に重ねられている。なお、本実施形態では、ゴム層10と、芯体シート層20と、が交互に重ねられているけれども、この通りでなくてもよい。例えば、芯体シート層20が複数、互いに直接接触するように重ね合わされていてもよい。
なお、本実施形態では、平ベルト1の幅方向W1、厚み方向R1、および、周方向C1を単に、「幅方向W1」、「厚み方向R1」、および、「周方向C1」という場合がある。
ゴム層10(11,12)は、平ベルト1の長さと同じ周方向長さを有する長尺状のゴム層である。ゴム層10は、複数設けられており、本実施形態では、2つのゴム層11,12が設けられている。なお、ゴム層11,12を総称していう場合、ゴム層10という。各ゴム層10は、長手方向(周方向C1)に垂直な断面形状が、図2(A)に示すような、幅方向W1に長い扁平な矩形形状に形成されている。ゴム層10の材料として、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)などを例示できる。
芯体シート層20は、平ベルト1のうち当該平ベルト1に作用する張力を主に受ける部分として設けられている。換言すれば、芯体シート層20は、平ベルト1の破断を防止する補強部材として機能する。
本実施形態では、芯体シート層20は、厚み方向R1に複数設けられており、本実施形態では、3つの芯体シート層21,22,23が設けられている。なお、芯体シート層21,22,23を総称していう場合、芯体シート層20という。芯体シート層20は、全体として平ベルト1の長さと同じ周方向長さを有する長尺状の繊維シート層である。各芯体シート層20は、長手方向(周方向C1)に垂直な断面形状が、図2(A)に示すような、幅方向W1に細長い扁平な矩形形状に形成されている。芯体シート層20は、平ベルト1において幅方向W1の全域に亘って配置されている。このように、芯体シート層20は、平ベルト1の幅方向W1に扁平な形状に形成されており、当該幅方向W1の全域に亘ってバランスよく張力を受けることができる。
本実施形態では、芯体シート層20の数が、ゴム層10の数よりも1つ多い。そして、厚み方向R1における平ベルト1の表面2および裏面3の双方が、芯体シート層20によって形成されている。より具体的には、本実施形態では、厚み方向R1に沿って、芯体シート層21、ゴム層11、芯体シート層22、ゴム層12、芯体シート層23の順に、芯体シート層20とゴム層10とが積層されている。厚み方向R1に隣り合う芯体シート層20とゴム層10とは、直接接触している。
本実施形態では、各芯体シート層20の厚みT20は、ゴム層10の厚みT10と同じに設定されている。なお、芯体シート層20の層数および厚みT20は、平ベルト1に要求される引張強度等に応じて適宜設定される。なお、T20>T10であってもよいし、T20<T10であってもよい。幅方向W1において、各芯体シート層20の長さは、各ゴム層10の長さと同じに設定されている。
各芯体シート層20は、シート材25によって形成されている。シート材25は、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、および、アラミド繊維などを用いて形成された、繊維質材である。シート材25は、細長いリボン状に形成されている。シート材25の幅W25は、シート材25の厚みT25よりも大きく設定されている。シート材25は、幅方向W1に細長い矩形状に形成されている。厚みT25に対する幅W25の割合は、1より大きく、例えば、5程度でもよいし、10程度でもよい。
なお、シート材25を、ゴム層10を介することなく厚み方向R1に複数重ねる(複数plyにする)ことで、芯体シート層20の厚みをシート材25の厚みT25よりも大きくしてもよい。各芯体シート層20のシート材25は、ゴム層10との接着力を高めるために接着処理を施されてもよい。このような接着処理として、RFL(Resorcin Formalin Latex)処理、ゴム糊または含浸樹脂等による接着処理を例示できる。
シート材25の厚みT25として、0.03mm〜2.0mmを例示することができる。また、シート材25の幅W25として、10mm〜50mmを例示することができる。
各芯体シート層20において、シート材25は、ゴム層10に対して螺旋状に巻かれており、幅方向W1において平ベルト1の少なくとも一部(本実施形態では全域)に亘って配置されている。
なお、各芯体シート層20は、シート材25が周方向C1に沿って真っ直ぐに延びる帯状に形成されているとともに、複数のシート材25が幅方向W1に複数並べられることで、形成されてもよい。この場合も、シート材25は、幅方向W1において平ベルト1の少なくとも一部または全域)に亘って配置される。
図2(A)に示すように、周方向C1と直交する切断面(以下、単に切断面ともいう。)において、各芯体シート層20では、シート材25は、幅方向W1に並んでいる。各芯体シート層20において、シート材25のうち幅方向W1に隣接する部分(端縁25a)同士が、厚み方向R1に互いに重なることを避けるようにシート材25が配置されている。
なお、幅方向W1に隣接するシート材25の一部(端縁25a)同士が厚み方向R1に互いに重なるようにしてシート材25が対応するゴム層11,12に巻かれてもよい。この場合、シート材25が巻かれるピッチは、シート材25の幅W25よりも小さく設定される。
本実施形態では、各芯体シート層20において、シート材25のうち、幅方向W1に互いに隣接する部分の端縁25a同士が、所定の突き合わせ位置B25で突き合わされている。この突き合わせ位置B25は、螺旋状に延びている。そして、切断面において、突き合わせ位置B25は、シート材25の幅W25と同じピッチP25で幅方向W1に等間隔に配置されている。すなわち、各芯体シート層20において、幅方向W1におけるシート材25のピッチP25は、シート材25の幅W25と同じに設定されている。
また、ゴム層10を介して厚み方向R1に隣接するシート材25間において、突き合わせ位置B25が幅方向W1にずらされている。本実施形態では、芯体シート層22における突き合わせ位置B252と、芯体シート層21における突き合わせ位置B251とが、幅方向W1にずらされている。同様に、芯体シート層22における突き合わせ位置B252と、芯体シート層23における突き合わせ位置B253とが、幅方向W1にずらされている。
切断面において、突き合わせ位置B252は、厚み方向R1に隣接する一対の突き合わせ位置B251,B253の中央に配置されていてもよいし、一対の突き合わせ位置B251,B253の何れか一方寄りに配置されていてもよい。なお、幅方向W1における突き合わせ位置B251〜B253は、互いに揃えられていてもよいし、ずらされていてもよい。本実施形態では、突き合わせ位置B251と突き合わせ位置B253は、幅方向W1に互いにずらされている。
本実施形態では、突き合わせ位置B251,B252,B253は、平ベルト1において厚み方向R1の内側から外側に向かうに従い、順次、幅方向W1の一方側に配置されるように設定されている。より具体的には、厚み方向R1に互いに隣接する突き合わせ位置B251,B252,B253のグループG1において、突き合わせ位置B251から幅方向W1の一方側(図1(A)では右側)に進んだ箇所に突き合わせ位置B252が設定されており、さらに、突き合わせ位置B252から幅方向W1の一方側(図1(A)では右側)に進んだ箇所に突き合わせ位置B253が設定されている。そして、グループG1において、突き合わせ位置B251,B252間の幅方向W1の間隔W12と、突き合わせ位置B252,B253間の幅方向W1の間隔W23と、が同じに設定されている。なお、間隔W12と間隔W23とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
シート材25は、たとえば、図3(A)の平面図に示すように、繊維が主に一方向に向けて延びるように構成された一方向シート26を用いて形成されている場合がある。一方向シート26は、シート材25の長手方向(螺旋方向)に沿って延びている。一方向シート26は、このように、実質的に一方向に延びており、より高い張力に耐えることが可能に構成されている。なお、一方向シート26において、幅方向W1に近接する繊維同士がジョイント26aなどのジョイント部材によってジョイントされていてもよい。シート材25がこのような一方向シート26で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材25は、厚みT25が約0.193mm〜0.572mmで、且つ、引張強度が2060(N/mm2)以上に設定されることがある。また、シート材25が一方向シート26で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材25は、厚みT25が約0.169mm〜0.504mmで、且つ、引張強度が2350(N/mm2)以上に設定されることがある。
また、シート材25が一方向シート26で且つ炭素繊維で形成される場合がある。たとえば、シート材25が一方向シート26で且つ高強度炭素繊維で形成される場合があり、この場合、シート材25は、厚みT25が約0.111mm〜0.333mmで、且つ、引張強度が3400(N/mm2)以上に設定されることがある。また、シート材25が一方向シート26で且つ中弾性炭素繊維で形成される場合があり、この場合、シート材25は、厚みT25が約0.165mm〜0.248mmで、且つ、引張強度が2900(N/mm2)以上に設定されることがある。
なお、シート材25は、たとえば、図3(B)の平面図に示すように、繊維が二方向に向けて延びるように構成された二方向シート27を用いて形成されていてもよい。二方向シート27は、所定の第1方向D1に延びる繊維31およびこの第1方向D1に対して直交する第2方向D2に延びる繊維32を含む、二方向繊維シート材である。そして、第2方向D2に離隔して並ぶ複数の繊維31に、第1方向D1に離隔して並ぶ複数の繊維32が織り込まれている。二方向シート27は、このように、実質的に二方向の方向性を有しており、繊維31,32の組み合わせにより、より高い張力に耐えることが可能に構成されている。
第1方向D1は、周方向C1に対して平行であってもよいし、周方向C1に対して傾斜(直交である場合を含む)していてもよい。シート材25として二方向シート27が用いられる場合、第1方向D1は、例えば、周方向C1に対して45度の傾斜角度であってもよい。周方向C1に対する第1方向D1の角度(ゼロを含む)によって、平ベルト1の引張強度等を適宜設定できる。
シート材25が二方向シート27で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材25は、厚みT25が約0.048mm〜0.24mmで、且つ、引張強度が2060(N/mm2)以上に設定されることがある。また、シート材25が二方向シート27で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材25は、厚みT25が約0.031mm〜0.193mmで、且つ、引張強度が2060(N/mm2)以上に設定されることがある。上記の説明から明かなように、シート材25が一方向シート26で且つアラミド繊維で形成された場合に比べ、シート材25が二方向シート27で且つアラミド繊維で形成された場合、同じ引張強度であっても、シート材25の厚みT25を数分の一にできる。これにより、平ベルト1の引張強度を高くしつつ、平ベルト1の厚みをより小さくできるので、平ベルト1の可撓性をより高くできる。
また、シート材25が二方向シート27で且つ炭素繊維で形成された場合、シート材25は、厚みT25が約0.0566mm〜0.0833mmで、且つ、引張強度が2900(N/mm2)以上に設定されることがある。上記の説明から明かなように、シート材25が一方向シート26で且つ炭素繊維で形成された場合に比べ、シート材25が二方向シート27で且つ炭素繊維で形成された場合、同じ引張強度であっても、シート材25の厚みを約三分の一にできる。これにより、平ベルト1の引張強度を高くしつつ、平ベルト1の厚みをより小さくできるので、平ベルト1の可撓性をより高くできる。
また、シート材25は、ポリエチレン繊維で形成されてもよい。高伸度繊維シートとしてのポリエチレン繊維として、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、PEN(ポリエチレンナフタレート)繊維を例示できる。シート材25がPET繊維で形成された場合、シート材25は、耐力600(kN/m)以上または900(kN/m)以上、引張強度740(N/mm2)、弾性率10±1(kN/mm2)、破断伸度7%以上、目付量1161(g/m2)または1742(g/m2)、厚さ0.841mmまたは1.262mmに設定される場合がある。シート材25がPEN繊維で形成された場合、シート材25は、耐力600(kN/m)以上または900(kN/m)以上、引張強度790(N/mm2)、弾性率15±2(kN/mm2)、破断伸度5%以上、目付量1158(g/m2)または1737(g/m2)、厚さ0.848mmまたは1.272mmに設定される場合がある。
図3(C)は、ひずみと応力との関係を示す図である。図3(C)に示されているように、シート材25がアラミド繊維で形成された場合、応力に対するひずみを比較的小さな値にできる。よって、シート材25がアラミド繊維で形成された場合、平ベルト1をより高張力負荷の下で使用できる。また、シート材25がPEN繊維で形成された場合、応力に対するひずみを比較的確保することができる。よって、シート材25がPEN樹脂で形成された場合、平ベルト1を、伸びに起因する破断を生じ難くできる。また、シート材25がPET繊維で形成された場合、応力に対するひずみをより多く確保することができる。よって、シート材25がPET樹脂で形成された場合、平ベルト1を、伸びに起因する破断をより生じ難くできる。
次に、平ベルト1の製造方法を説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る平ベルト1の成形工程の一例を説明するためのフローチャートである。図5〜図10は、本発明の第1実施形態に係るベルト成形装置40の概念的な構成を示す斜視図、および、このベルト成形装置40によって形成される平ベルト1についての主要部を示す断面図である。なお、以下では、ベルト成形装置40を単に成形装置40という場合がある。また、フローチャートを用いて説明する場合、フローチャート以外の図も参照しながら説明する。
図5(A)および図5(B)は、それぞれ、成形装置40を用いた芯体シート層21の巻き掛け工程(ステップS3)を示す斜視図および断面図である。図6(A)および図6(B)は、それぞれ、成形装置40を用いたゴムシート50(51)の巻き掛け工程(ステップS4)を示す斜視図および断面図である。図7(A)および図7(B)は、それぞれ、成形装置40を用いた芯体シート層22の巻き掛け工程(ステップS5)を示す斜視図および断面図である。図8(A)および図8(B)は、それぞれ、成形装置40を用いたゴムシート50(52)の巻き掛け工程(ステップS6)を示す斜視図および断面図である。図9(A)および図9(B)は、それぞれ、成形装置40を用いた芯体シート層23の巻き掛け工程(ステップS7)を示す斜視図および断面図である。図10は、未加硫スリーブ60のカット工程(ステップS9)を示す断面図である。
ステップS5,S7は、本発明の「芯体シート層形成ステップ」の一例である。
図4を参照して、平ベルト1が製造される際には、まず、ゴム層11,12となる未加硫のゴムシート50(51,52)が準備される(ステップS1)。次にシート材25が準備される(ステップS2)。
次に、図5(A)および図5(B)に示すように、成形装置40に備えられ円筒形状に形成されたモールド41の外周にシート材25を巻き掛けることで、芯体シート層21を形成する芯体シート層形成工程が行われる(ステップS3)。モールド41は、図示しない電動モータ等によって回転駆動される。ステップS3の芯体シート層形成工程では、シート材用ボビン42に巻かれたシート材25が、モールド41の回転に伴ってシート材用ボビン42から繰り出される。そして、シート材用ボビン42から繰り出されたシート材25は、モールド41に螺旋状に巻かれる。この際、シート材25が巻かれるピッチP25は、シート材25の幅W25と同じに設定されている。また、シート材25は、例えば、モールド41の軸方向の一端(右端)から他端(左端)に向かうように螺旋状に巻かれる。
次に、図6(A)および図6(B)に示すように、ゴム層11を形成することになるゴムシート50(51)の巻き掛け工程が行われる(ステップS4)。具体的には、未加硫のゴムシート51を、芯体シート層21を形成することとなるシート材25の外周に円形状に巻く。ゴムシート51は、例えば、ゴム層10の厚みと略同じ厚みを有し、且つモールド41の幅と略同じ幅を有する帯状のシートである。このゴムシート51が、芯体シート層21を形成することとなるシート材25に巻かれる。モールド41によってこのゴムシート51は、円形状に保持される。
次に、図7(A)および図7(B)に示すように、未加硫のゴムシート51の外周にシート材25を巻き付けることで、ゴムシート51に芯体シート層22を形成する芯体シート層形成工程が行われる(ステップS5)。ステップS5の芯体シート層形成工程では、シート材用ボビン42に巻かれたシート材25が、モールド41の回転に伴ってシート材用ボビン42から繰り出される。そして、シート材用ボビン42から繰り出されたシート材25は、ゴムシート51に螺旋状に巻かれる。この際、シート材25が巻かれるピッチP25は、シート材25の幅W25と同じに設定されている。また、シート材25は、モールド41の軸方向の他端(左端)から一端(右端)に向かうように螺旋状に巻かれる。
次に、図8(A)および図8(B)に示すように、ゴム層12を形成することとなるゴムシート52の巻き掛け工程が行われる(ステップS6)。具体的には、ゴムシート52を、芯体シート層22を形成することとなるシート材25の外周に円形状に巻く。ゴムシート52は、例えば、ゴム層10の厚みと略同じ厚みを有し、且つモールド41の幅と略同じ幅を有する帯状のシートである。このゴムシート52が、芯体シート層22を形成することとなるシート材25に巻かれる。
次に、図9(A)および図9(B)に示すように、未加硫のゴムシート52の外周にシート材25を巻き付けることで、ゴムシート52に芯体シート層23を形成する芯体シート層形成工程が行われる(ステップS7)。ステップS7の芯体シート層形成工程では、シート材用ボビン42に巻かれたシート材25が、モールド41の回転に伴ってシート材用ボビン42から繰り出される。そして、シート材用ボビン42から繰り出されたシート材25は、ゴムシート52に螺旋状に巻かれる。この際、シート材25が巻かれるピッチP25は、シート材25の幅W25と同じに設定されている。また、シート材25は、モールド41の軸方向の一端(右端)から他端(左端)に向かうように螺旋状に巻かれる。
このように、複数層の芯体シート層としての芯体シート層21,22,23が形成される。さらに、芯体シート層20の積層方向(厚み方向R1に相当)に隣接する芯体シート層20(芯体シート層22,21と芯体シート層22,23)は、ゴムシート50(51,52)に対する巻き方向が互いに逆向きに設定されている。本実施形態では、芯体シート層22の形成時におけるシート材25の巻き方向(進行方向)は、巻き方向D22(図7参照)である。一方、芯体シート層22に隣接する芯体シート層21(23)の形成時におけるシート材25の巻き方向(進行方向)は、巻き方向D21(図5参照)、巻き方向D23(図9参照)である。上記の構成により、未加硫ゴムシート51,52および芯体シート層21,22,23を含む未加硫スリーブ60が完成する。未加硫スリーブ60の幅として、600mm〜1200mmを例示することができる。
次に、未加硫スリーブ60は、加硫処理が行われる(ステップS8)。これにより、未加硫スリーブ60のゴム部分が加硫されるとともに、芯体シート層21,22,23と、ゴムシート51,52とが接合して一体となる。すなわち、ゴムシート51,52がそれぞれゴム層11,12となる。その結果、加硫状態のベルトスリーブが形成される。
次に、カット工程が行われる(ステップS9、図10参照)。カット工程では、モールドから脱型したベルトスリーブを成形装置40の2本の軸(一方の軸43を図10に図示)に懸架して回転させた状態で、ベルトスリーブの幅方向に沿って所定間隔毎に、カッター(図示せず)で切り込み、所定の幅の平ベルト1が完成する。
以上説明したように、本実施形態によると、平ベルト1は、ゴム層10と、芯体シート層20と、を有し、シート材25の幅W25は、シート材25の厚みT25よりも大きく設定されている。この構成によると、芯体シート層20において、シート材25を幅方向W1のより広い範囲に配置できる。これにより、平ベルト1の単位幅当たりの引張強度をより高くできる。その結果、平ベルト1の引張強度を十分な値にしつつ、平ベルト1の厚みをより薄くできる。また、平ベルト1の剛性を高めることで平ベルト1の強度を確保する構成ではないので、平ベルト1について、より薄くしつつ、より可撓性を高くできる。その結果、平ベルト1が複数のプーリ100等の巻掛対象に巻かれた状態で駆動される際における、しなやかな曲げ変形を実現できるので、平ベルト1を多数のプーリ100に巻かれた状態での駆動に適したものにできる。そして、平ベルト1は、小径のプーリ100に巻き付けられたときにも、このプーリ100の曲面に馴染むことができるので、曲率半径の小さな曲げ変形を実現できる。また、平ベルト1の可撓性を高くできるので、平ベルト1に作用する張力が低い場合でも、プーリ100と平ベルト1との接触角度(プーリ100の回転軸回りにおけるプーリ100と平ベルト1との接触面の角度範囲)を高くできる。その結果、低張力でも平ベルト1をプーリ100に十分な長さで巻き付けることができ、プーリ100とのスリップを生じ難くできる。さらに、平ベルト1は、引張強度および可撓性の双方を高くできるので、高負荷且つ低回転速度の運転条件にも適している。よって、平ベルト1を広い使用条件に対応させることができる。さらに、ゴム層10(ゴムシート50)を周方向C1の全域に配置することで、ゴム層10を加硫等によって無端状に形成できる。その結果、平ベルト1において、ジョイント治具の使用を必須としなくて済む。さらに、平ベルト1の可撓性を高くできる結果、プーリ100へのゴム層10の粘着を抑制できる。さらに、シート材25が幅方向W1に広く分布しているので、平ベルト1の引っ張りに対する伸びの割合を低くできる。その結果、平ベルト1の伸びに起因する平ベルト1の張力の低下をより確実に抑制できる。さらに、プーリ100に巻かれたときにおける平ベルト1のしなやなか曲げを実現できる。その結果、平ベルト1の駆動時における平ベルト1の振れをより確実に抑制できる。さらに、平ベルト1は、幅広のシート材25によって強度を高くされているので、平ベルト1がプーリ100からの外力を受けて塑性変形することを抑制できる。その上、幅広のシート材25は、ゴム層10との接触面積を多く確保できるので、当該ゴム層10との結合強度をより高くできる。さらに、例えば、複数本の平ベルト1がプーリ100に巻き掛けられた状態で圧搾物を圧搾する場合、各平ベルト1の何れもが、高強度の芯体シート層20によって形成されている。このため、圧搾物の厚みのバラツキに起因して平ベルト1間で張力に差異が生じた場合でも、芯体シート層20の剥離および切断を抑制できる。その結果、高張力下においても張力低下を抑制できる。その結果、心線剥離等の損傷が平ベルト1に生じることをより確実に抑制できる。以上の次第で、本実施形態によると、多数のプーリ100等の巻掛対象に巻かれた状態での駆動に適しており、曲率半径の小さな曲げ変形を実現でき、低張力でもプーリ100に十分な長さに亘って巻き付けられることができ、幅広い使用条件に対応でき、ジョイント治具の使用を必須とせず、プーリ100へのゴムの粘着を抑制でき、ベルト駆動時の伸び(張力低下)を小さくでき、ベルト駆動時の振れを抑制でき、平ベルト1の塑性変形を抑制でき、高張力の条件下においても張力低下が小さく、且つ、平ベルト1の損傷を抑制できる、平ベルト1を実現できる。
また、平ベルト1によると、曲げ変形に対する十分な柔軟性を有していることから、小径のプーリ100であっても、十分な巻き付け面積を確保できるので、高い伝達効率を実現できる。
また、平ベルト1によると、シート材25の材質、積層数によって、平ベルト1の強度および伸度を選択することが可能である。よって、負荷、回転数の走行条件に適合した芯体シート層20を選択することができる。
また、平ベルト1によると、芯体に心線または帆布を使用した平ベルトの厚み以下で高強度を得られるため、耐衝撃性の向上が可能である。
また、平ベルト1によると、二方向シート27の第1方向D1および第2方向D2の双方を周方向C1に対して傾斜させる(バイアスさせる)ことで、第1方向D1を周方向C1と平行にした場合と比べて、曲げ変形に対する柔軟性をより高くできる。
また、平ベルト1によると、シート状の薄いシート材25によって芯体シート層20が形成されている。これにより、シート材25のラインに乱れが生じることを抑制できる。その結果、平ベルト1における走行安定性を優れたものにできる。よって平ベルト1のタテ振れ、ヨコ振れをより小さくできる。このように、平ベルト1の振れを小さくできることで、振れが小さくなると平ベルト1がプーリ100から外れることを抑制できるとともに、平ベルト1の転覆(平ベルト1が例えばフランジ付平プーリ内でひっくり返る)ことをより確実に抑制できる。
また、平ベルト1によると、高い伝動能力を得るために平ベルト1の張力を高めると、平ベルトは、プーリ100中央のクラウンで変形を生じ、摩耗や強度低下により平ベルト1の早期寿命を迎えてしまう傾向にある。しかしながら、平ベルト1は、繊維シートの効果によりクラウンによる変形が小さく、応力が分散されるので摩耗や強度低下し難く、その結果、寿命をより長くできる。
また、平ベルト1によると、芯体シート層20を薄くできる結果、平ベルト1のトータルの厚みT1が薄くなる。その結果、平ベルト1の屈曲による発熱を低くできる。これにより、ゴムの粘着をより発生し難くできる。
また、本実施形態によると、平ベルト1は、マントル41またはドラムを使った成形方法である。よって、エンドレスベルトであり、その結果、ジョイント冶具を使わずに済む。
また、平ベルト1によると、平ベルト1の幅方向W1の全域に芯体シート層20が設けられていることにより、平ベルト1の破断強度が高くされている。これにより、平ベルト1を貫通するボルト(バケットボルト)が設けられた場合でも、このボルトの引き抜きに必要な力を十分に高くできる。
また、平ベルト1によると、ゴム層10と芯体シート層20とが交互に配置されることで、薄くて可撓性に優れ、且つ、引張強度の高い平ベルト1を実現できる。
また、平ベルト1によると、平ベルト1の表面2および裏面3の双方が、芯体シート層20によって形成されている。この構成によると、平ベルト1のうち芯体シート層20がプーリ100に接触し、このプーリ100との間で動力を伝達できる。この構成であれば、プーリ100にゴム層10が接触しないので、プーリ100に平ベルト1のゴムが粘着することをより確実に抑制できる。
また、平ベルト1によると、各芯体シート層20において、シート材25のうち幅方向W1に隣接する端縁25a同士が厚み方向R1に互いに重なることを避けるようにシート材25が配置されている。この構成によると、幅方向W1に隣接するシート材25を、幅方向W1に沿って一列に並べることができる。これにより、幅方向W1に隣接するシート材25の一方が他方に乗り上げることを防止できる。これにより、芯体シート層20を、幅方向W1に沿ってより均等に配置できる。よって、平ベルト1に作用する張力を、芯体シート層20によって幅方向W1に関してより均等に受けることができる。これにより、平ベルト1内で受ける張力の偏りを抑制できる。その結果、平ベルト1の寿命をより長くできる。
例えば、従来の構成、すなわち、ゴムシートの間にワイヤー状の心線が配置されることで形成されたベルトスリーブを裁断した結果得られた平ベルトでは、細い心線をゴム層となるゴムシートに巻き付ける際に、心線の位置が設計上の位置からずれやすい。このため、ゴムシートの幅方向における心線の位置にずれが生じ易い。その結果、ベルトスリーブを所定幅毎にカットすることで形成された1本の未加硫ベルト内において、心線の位置にばらつきが生じる。さらに、複数の未加硫ベルト間において、心線の有効本数(切断面における心線の本数)にばらつきが生じる。このようなばらつきの原因として、心線を巻くときのピッチのばらつき、心線径のばらつき、および、ゴムシートに対する心線の蛇行が挙げられる。その結果、平ベルトの引張強度にばらつきが生じる。一方、平ベルト1によると、このような課題が生じずに済む。
また、平ベルト1によると、幅方向W1におけるシート材25のピッチP25は、シート材25の幅W25と同じに設定されている。この構成によると、幅方向W1に隣接するシート材25同士が幅方向W1に隙間無い状態で配置される。これにより、平ベルト1の厚みを増すこと無く、平ベルト1の引張強度をより高くできる。また、平ベルト1の種類の違い(平ベルト1の厚み、幅等の違い)にかかわらず、平ベルト1の幅方向W1の全域に亘ってシート材25を配置することができる。これにより、平ベルト1の種類に応じてシート材25のピッチP25を変更する作業が不要となる。その結果、平ベルト1の種類に応じてシート材25のピッチP25を変更する際の作業ミスに起因する、ピッチP25の不適切な設定などのミスを防止できる。これにより、平ベルト1の製造時における手間の低減と、不良品の発生の低減とを実現できる。
また、平ベルト1によると、芯体シート層20は、厚み方向R1に複数設けられ、各芯体シート層20において、シート材25のうち幅方向W1に互いに隣接する部分の端縁25a同士が所定の突き合わせ位置B25で突き合わされている。そして、厚み方向R1に隣接するシート材25間において、突き合わせ位置B25が幅方向W1にずらされている。この構成によると、シート材25がより安定した姿勢でゴム層10と重ね合わされることになる。これにより、平ベルト1の使用時において、芯体シート層20の各部がより均等に張力を受けることができる。よって、平ベルト1の寿命をより長くできる。
また、平ベルト1によると、シート材25は、2方向繊維シート材27を用いて形成されている場合がある。この場合、第1方向D1は、周方向C1に対して平行であるか、または、傾斜している。この構成によると、平ベルト1の周方向C1に対する、2方向シート材27の繊維の一方の進行方向を設定することで、平ベルト1に必要な引張強度を設定できる。さらに、第1方向D1および第2方向D2を周方向C1に対して傾斜させることで、シート材25の伸縮性をより高くできる。これにより、平ベルト1の破断による寿命到来を抑制できる。
また、本実施形態によると、平ベルト1の製造時において、芯体シート層20の積層方向(厚み方向R1)に隣接する芯体シート層22,21;22,23は、ゴムシート50に対する巻き方向が互いに逆向きに設定されている。この構成によると、周方向C1に対するシート材25の向きが偏ることを抑制できる。これにより、平ベルト1の駆動時において、シート材25が受ける張力を幅方向W1においてより均等にできる。その結果、平ベルト1の使用時において、芯体シート層20の各部がより均等に張力を受けることができる。よって、平ベルト1の振れをより確実に抑制できる。
また、本実施形態によると、シート材25をマントル41に巻き付ける前の状態において、シート材25をシート材用ボビン42で保持しておくことができる。これにより、シート材用ボビン42と、シート材用ボビン42から繰り出された後にテンション(張力)機構と、を含む簡易な構成のシート巻き付け機構を設けることで、シート材25をマントル41に巻き付けることが可能になる。これにより、従来の構成、すなわち、心線をゴムシートに巻き付ける構成で必要な、複雑な構成のテンション装置が不要となる。
例えば、シート材25に代えて心線を用いて未加硫スリーブを形成する場合、未加硫スリーブの形成に用いられる心線の成形途中における心線ジョイント(心線を構成する繊維の撚り本数に応じた、位置をずらしたジョイント)を設ける手間が必要である。これに対し、本実施形態によると、心線に代えてシート材25が用いられているので、上記のジョイントの手間がなく、その結果、平ベルト1の生産性をより向上できる。
また、本実施形態によると、平ベルト1の形成に心線を用いないので、心線が巻かれた重いボビンを移動させたり、心線をテンション装置にセットする作業が不要である。よって、作業員による重作業をより少なくできる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図11(A)は、本発明の第2実施形態にかかる平ベルト71の断面図である。図11(B)は、平ベルト71が複数の巻掛対象としてのプーリ100(101〜104)に巻かれた状態を示す側面図である。
図11(A)および図11(B)を参照して、平ベルト71は、無端環状に形成されており、本実施形態(第2実施形態)では、シームレスベルトである。すなわち、平ベルト71は、ジョイントを用いて無端状に形成されているのではない。なお、平ベルト71は、ジョイントによって無端環状に連結された構成であってもよい。
本実施形態の平ベルト71は、高負荷(大きな張力が作用する使用条件)であっても、低負荷であっても使用可能である。また、平ベルト70は、高回転環境でも、低回転環境でも使用可能である。
平ベルト71は、当該平ベルト71の厚み方向R1(ベルト厚み方向R1)における表面72および裏面73の双方が、プーリ100(101,102,103,104)に接触可能に構成されている。本実施形態では、平ベルト71の表面72が、プーリ104に接触する例が示されている。また、平ベルト71の裏面73が、プーリ101,102,103に接触する例が示されている。なお、平ベルト71は、表面72および裏面73の何れか一方のみがプーリ100(巻掛対象)に接触するように用いられてもよい。
平ベルト71は、当該平ベルト71の周方向C1と直交する断面における断面形状が、平ベルト71の幅方向W1に細長い扁平の矩形状に形成されている。平ベルト71の両側面(幅方向W1の端面)は、動力伝達に用いられることは、通常意図されていない。また、本実施形態では、平ベルト71が無端環状である形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。本発明の平ベルトは、環状ではない有端の形状(直線形状等)に形成されていてもよい。
平ベルト71は、複数のゴム層80(81,82)と、ゴム層80が両側に重ねられた芯体シート層90と、を有している。そして、平ベルト71の厚み方向R1の内側(裏面73側)から外側(表面72側)に向けて、ゴム層81と、芯体シート層90と、ゴム層82とが、この順番で重ねられている。
なお、本実施形態では、平ベルト71の幅方向W1、厚み方向R1、および、周方向C1を単に、「幅方向W1」、「厚み方向R1」、および、「周方向C1」という場合がある。
ゴム層80(81,82)は、平ベルト71の長さと同じ周方向長さを有する長尺状のゴム層である。ゴム層80は、複数設けられており、本実施形態では、2つのゴム層81,82が設けられている。なお、ゴム層81,82を総称していう場合、ゴム層80という。各ゴム層80は、長手方向(周方向C1)に垂直な断面形状が、図11(A)に示すような、幅方向W1に長い扁平な矩形形状に形成されている。ゴム層80の材料として、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)などを例示できる。
芯体シート層90は、平ベルト71のうち当該平ベルト71に作用する張力を主に受ける部分として設けられている。換言すれば、芯体シート層90は、平ベルト71の破断を防止する補強部材として機能する。
本実施形態では、芯体シート層90は、1つ設けられている。芯体シート層90は、全体として平ベルト71の長さと同じ周方向長さを有する長尺状の繊維シート層である。芯体シート層90は、長手方向(周方向C1)に垂直な断面形状が、図11(A)に示すような、幅方向W1に細長い扁平な矩形形状に形成されている。芯体シート層90は、平ベルト71において幅方向W1の全域に亘って配置されている。このように、芯体シート層90は、平ベルト71の幅方向W1に扁平な形状に形成されており、当該幅方向W1の全域に亘ってバランスよく張力を受けることができる。
本実施形態では、芯体シート層90の数が、ゴム層80の数よりも1つ少ない。そして、厚み方向R1における平ベルト71の表面72および裏面73の双方が、ゴム層80によって形成されている。より具体的には、本実施形態では、厚み方向R1に沿って、ゴム層81、芯体シート層90、ゴム層82の順に、ゴム層80と芯体シート層90とが積層されている。厚み方向R1に隣り合う芯体シート層90とゴム層80とは、直接接触している。
本実施形態では、芯体シート層90の厚みT90は、ゴム層80の厚みT80よりも大きく設定されている(即ち、T90>T80に設定されている)。なお、芯体シート層90の厚みT90は、平ベルト71に要求される引張強度等に応じて適宜設定される。なお、T80≧T90であってもよい。幅方向W1において、芯体シート層90の長さは、ゴム層80の長さと同じに設定されている。
芯体シート層90は、第1実施形態のシート材25と同様に構成されたシート材91によって形成されている。シート材91は、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、および、アラミド繊維などを用いて形成された、繊維質材である。シート材91は、細長いリボン状に形成されている。シート材91の幅W91は、シート材91の厚みT91よりも大きく設定されている。シート材91は、幅方向W1に細長い矩形状に形成されている。厚みT91に対する幅W91の割合は、1より大きく、例えば、5程度でもよいし、10程度でもよい。
芯体シート層90は、ベルト厚み方向に複数重ねられたシート材91を有している。本実施形態では、シート材90がベルト厚み方向R1に4枚重ねで重ねられた(4plyに重ねられた)芯体シート層90を例示している。シート材91が、ゴム層80を介することなく厚み方向R1に複数重ねられる(複数plyにされる)ことで、芯体シート層90の厚みがシート材91の厚みT91よりも大きく設定されている。芯体シート層90のシート材91は、お互いの間での接着力及びゴム層10との接着力を高めるために接着処理が施されてもよい。このような接着処理として、RFL(Resorcin Formalin Latex)処理、ゴム糊または含浸樹脂等による接着処理を例示できる。
シート材91の厚みT91として、0.03mm〜2.0mmを例示することができる。また、シート材91の幅W91として、10mm〜50mmを例示することができる。
芯体シート層90において、シート材91は、ゴム層81に対して又は内側に巻かれたシート材91に対して螺旋状に巻かれており、幅方向W1において平ベルト71の少なくとも一部(本実施形態では全域)に亘って配置されている。
なお、芯体シート層90は、シート材91が周方向C1に沿って真っ直ぐに延びる帯状に形成されているとともに、複数のシート材91が幅方向W1に複数並べられることで、形成されてもよい。この場合も、シート材91は、幅方向W1において平ベルト1の少なくとも一部または全域)に亘って配置される。
図11(A)に示すように、周方向C1と直交する切断面(以下、単に切断面ともいう。)において、芯体シート層90では、シート材91は、幅方向W1及び厚み方向R1に並んでいる。芯体シート層90において、シート材91のうち幅方向W1に隣接する部分(端縁91a)同士が、厚み方向R1に互いに重なることを避けるようにシート材91が配置されている。
本実施形態では、芯体シート層90において、シート材91のうち、幅方向W1に互いに隣接する部分の端縁91a同士が、所定の突き合わせ位置B91で突き合わされている。この突き合わせ位置B91は、螺旋状に延びている。そして、切断面において、突き合わせ位置B91は、シート材91の幅W91と同じピッチP91で幅方向W1に等間隔に配置されている。すなわち、芯体シート層90において、幅方向W1におけるシート材91のピッチP91は、シート材91の幅W91と同じに設定されている。
また、厚み方向R1に隣接するシート材91間において、突き合わせ位置B91が幅方向W1にずらされている。本実施形態では、ゴム層81から1層目のシート材91における突き合わせ位置B911と、ゴム層81から2層目のシート材91における突き合わせ位置B912とが、幅方向W1にずらされている。そして、ゴム層81から2層目のシート材91における突き合わせ位置B912と、ゴム層81から3層目のシート材91における突き合わせ位置B913とが、幅方向W1にずらされている。更に、ゴム層81から3層目のシート材91における突き合わせ位置B913と、ゴム層81から4層目のシート材91における突き合わせ位置B914とが、幅方向W1にずらされている。なお、幅方向W1における突き合わせ位置B911〜B914は、互いに揃えられていてもよいし、ずらされていてもよい。
シート材91は、たとえば、第1実施形態のシート材25と同様に、図3(A)の平面図に示すような、繊維が主に一方向に向けて延びるように構成された一方向シート26を用いて形成されている場合がある。一方向シート26は、シート材91の長手方向(螺旋方向)に沿って延びている。一方向シート26は、このように、実質的に一方向に延びており、より高い張力に耐えることが可能に構成されている。なお、一方向シート26において、幅方向W1に近接する繊維同士がジョイント26aなどのジョイント部材によってジョイントされていてもよい。シート材91がこのような一方向シート26で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材91は、厚みT91が約0.193mm〜0.572mmで、且つ、引張強度が2060(N/mm2)以上に設定されることがある。また、シート材91が一方向シート26で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材91は、厚みT91が約0.169mm〜0.504mmで、且つ、引張強度が2350(N/mm2)以上に設定されることがある。
また、シート材91が一方向シート26で且つ炭素繊維で形成される場合がある。たとえば、シート材91が一方向シート26で且つ高強度炭素繊維で形成される場合があり、この場合、シート材91は、厚みT91が約0.111mm〜0.333mmで、且つ、引張強度が3400(N/mm2)以上に設定されることがある。また、シート材91が一方向シート26で且つ中弾性炭素繊維で形成される場合があり、この場合、シート材91は、厚みT91が約0.165mm〜0.248mmで、且つ、引張強度が2900(N/mm2)以上に設定されることがある。
なお、シート材91は、たとえば、第1実施形態のシート材25と同様に、図3(B)の平面図に示すような、繊維が二方向に向けて延びるように構成された二方向シート27を用いて形成されていてもよい。二方向シート27は、所定の第1方向D1に延びる繊維31およびこの第1方向D1に対して直交する第2方向D2に延びる繊維32を含む、二方向繊維シート材である。そして、第2方向D2に離隔して並ぶ複数の繊維31に、第1方向D1に離隔して並ぶ複数の繊維32が織り込まれている。二方向シート27は、このように、実質的に二方向の方向性を有しており、繊維31,32の組み合わせにより、より高い張力に耐えることが可能に構成されている。
第1方向D1は、周方向C1に対して平行であってもよいし、周方向C1に対して傾斜(直交である場合を含む)していてもよい。シート材91として二方向シート27が用いられる場合、第1方向D1は、例えば、周方向C1に対して45度の傾斜角度であってもよい。周方向C1に対する第1方向D1の角度(ゼロを含む)によって、平ベルト1の引張強度等を適宜設定できる。
シート材91が二方向シート27で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材25は、厚みT91が約0.048mm〜0.24mmで、且つ、引張強度が2060(N/mm2)以上に設定されることがある。また、シート材91が二方向シート27で且つアラミド繊維で形成された場合、シート材91は、厚みT91が約0.031mm〜0.193mmで、且つ、引張強度が2060(N/mm2)以上に設定されることがある。上記の説明から明かなように、シート材91が一方向シート26で且つアラミド繊維で形成された場合に比べ、シート材91が二方向シート27で且つアラミド繊維で形成された場合、同じ引張強度であっても、シート材91の厚みT91を数分の一にできる。これにより、平ベルト71の引張強度を高くしつつ、平ベルト71の厚みをより小さくできるので、平ベルト71の可撓性をより高くできる。
また、シート材91が二方向シート27で且つ炭素繊維で形成された場合、シート材91は、厚みT91が約0.0566mm〜0.0833mmで、且つ、引張強度が2900(N/mm2)以上に設定されることがある。上記の説明から明かなように、シート材91が一方向シート26で且つ炭素繊維で形成された場合に比べ、シート材91が二方向シート27で且つ炭素繊維で形成された場合、同じ引張強度であっても、シート材91の厚みを約三分の一にできる。これにより、平ベルト71の引張強度を高くしつつ、平ベルト71の厚みをより小さくできるので、平ベルト71の可撓性をより高くできる。
また、シート材91は、ポリエチレン繊維で形成されてもよい。高伸度繊維シートとしてのポリエチレン繊維として、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、PEN(ポリエチレンナフタレート)繊維を例示できる。シート材91がPET繊維で形成された場合、シート材91は、耐力600(kN/m)以上または900(kN/m)以上、引張強度740(N/mm2)、弾性率10±1(kN/mm2)、破断伸度7%以上、目付量1161(g/m2)または1742(g/m2)、厚さ0.841mmまたは1.262mmに設定される場合がある。シート材91がPEN繊維で形成された場合、シート材91は、耐力600(kN/m)以上または900(kN/m)以上、引張強度790(N/mm2)、弾性率15±2(kN/mm2)、破断伸度5%以上、目付量1158(g/m2)または1737(g/m2)、厚さ0.848mmまたは1.272mmに設定される場合がある。
平ベルト71の製造方法は、第1実施形態の平ベルト1の製造方法と同様に構成される。しかし、平ベルト71の製造方法は、芯体シート巻き掛け工程が1回のみ行われる点において、第1実施形態の平ベルト1の製造方法と異なっている。
平ベルト71が製造される際には、まず、ゴム層80を形成することになる未加硫のゴムシートが準備され、次に、シート材91が準備される。そして、第1実施形態と同様に、ベルト成形装置40が用いられ、ベルと成形装置40のモールド41の外周に、ゴム層81を形成することになる未加硫のゴムシートが巻き掛けられる。更に、その外周に、シート材91が螺旋状に巻き掛けられる。シート材91は、4重(4ply)に巻き掛けられ、芯体シート層90が形成される。そして、芯体シート層91の更に外周に、ゴム層82を形成することになる未加硫のゴムシートが巻き掛けられる。
上記により、内周側のゴムシートと外周側のゴムシートとの間に芯体シート層90が挟まれて構成された円筒状の未加硫スリーブが形成される。未加硫スリーブが形成されると、この未加硫スリーブの加硫処理が行われる。これにより、芯体シート層90とゴムシートとが一体となる。即ち、内周側のゴムシート及び外周側のゴムシートが、それぞれ、ゴム層81及びゴム層82となる。その結果、加硫状態のベルトスリーブが形成される。加硫状態のベルトスリーブが形成されると、次いで、カット工程が行われる。カット工程では、ベルトスリーブをベルトスリーブの幅方向に沿って所定間隔毎に、カッターで切り込み、所定の幅の平ベルト71が完成する。
以上説明したように、本実施形態によると、平ベルト71は、ゴム層80と、芯体シート層90と、を有し、シート材91の幅W91は、シート材91の厚みT91よりも大きく設定されている。この構成によると、芯体シート層90において、シート材91を幅方向W1のより広い範囲に配置できる。これにより、平ベルト71の単位幅当たりの引張強度をより高くできる。その結果、平ベルト71の引張強度を十分な値にしつつ、平ベルト71の厚みをより薄くできる。また、平ベルト71の剛性を高めることで平ベルト71の強度を確保する構成ではないので、平ベルト71について、より薄くしつつ、より可撓性を高くできる。その結果、平ベルト71が複数のプーリ100等の巻掛対象に巻かれた状態で駆動される際における、しなやかな曲げ変形を実現できるので、平ベルト71を多数のプーリ100に巻かれた状態での駆動に適したものにできる。そして、平ベルト71は、小径のプーリ100に巻き付けられたときにも、このプーリ100の曲面に馴染むことができるので、曲率半径の小さな曲げ変形を実現できる。また、平ベルト71の可撓性を高くできるので、平ベルト71に作用する張力が低い場合でも、プーリ100と平ベルト71との接触角度(プーリ100の回転軸回りにおけるプーリ100と平ベルト71との接触面の角度範囲)を高くできる。その結果、低張力でも平ベルト71をプーリ100に十分な長さで巻き付けることができ、プーリ100とのスリップを生じ難くできる。さらに、平ベルト71は、引張強度および可撓性の双方を高くできるので、高負荷且つ低回転速度の運転条件にも適している。よって、平ベルト71を広い使用条件に対応させることができる。さらに、ゴム層80を周方向C1の全域に配置することで、ゴム層80を加硫等によって無端状に形成できる。その結果、平ベルト71において、ジョイント治具の使用を必須としなくて済む。さらに、平ベルト71の可撓性を高くできる結果、プーリ100へのゴム層80の粘着を抑制できる。さらに、シート材91が幅方向W1に広く分布しているので、平ベルト71の引っ張りに対する伸びの割合を低くできる。その結果、平ベルト71の伸びに起因する平ベルト71の張力の低下をより確実に抑制できる。さらに、プーリ100に巻かれたときにおける平ベルト71のしなやなか曲げを実現できる。その結果、平ベルト71の駆動時における平ベルト71の振れをより確実に抑制できる。さらに、平ベルト71は、幅広のシート材91によって強度を高くされているので、平ベルト71がプーリ100からの外力を受けて塑性変形することを抑制できる。その上、幅広のシート材91は、ゴム層80との接触面積を多く確保できるので、当該ゴム層80との結合強度をより高くできる。さらに、例えば、複数本の平ベルト71がプーリ100に巻き掛けられた状態で圧搾物を圧搾する場合、各平ベルト71の何れもが、高強度の芯体シート層90によって形成されている。このため、圧搾物の厚みのバラツキに起因して平ベルト71間で張力に差異が生じた場合でも、芯体シート層90の剥離および切断を抑制できる。その結果、高張力下においても張力低下を抑制できる。その結果、心線剥離等の損傷が平ベルト71に生じることをより確実に抑制できる。以上の次第で、本実施形態によると、多数のプーリ100等の巻掛対象に巻かれた状態での駆動に適しており、曲率半径の小さな曲げ変形を実現でき、低張力でもプーリ100に十分な長さに亘って巻き付けられることができ、幅広い使用条件に対応でき、ジョイント治具の使用を必須とせず、プーリ100へのゴムの粘着を抑制でき、ベルト駆動時の伸び(張力低下)を小さくでき、ベルト駆動時の振れを抑制でき、平ベルト71の塑性変形を抑制でき、高張力の条件下においても張力低下が小さく、且つ、平ベルト71の損傷を抑制できる、平ベルト71を実現できる。
また、平ベルト71によると、シート材91がベルト厚み方向に複数重ねられることで、芯体シート層90の厚みをシート材91の厚みよりも容易に大きくすることができる。このため、重ねるシート材91の枚数(即ち、シート材91の積層数)を適宜設定することで、種々の厚みを有する芯体シート層90を容易に形成することができ、また、種々の強度及び伸度の芯体シート層90を容易に形成することができる。
[実施例]
次に、上述した第2実施形態の平ベルト71の実施例について説明する。図12は、実施例及び比較例に係る平ベルトの断面図である。図12(A)は、第2実施形態の実施例に係る平ベルト71の断面図であり、図12(B)は、比較例に係る平ベルト200の断面図である。図12(A)及び図12(B)は、平ベルト(71、200)の周方向に対して垂直な断面を示している。尚、図12(A)及び図12(B)においては、平ベルト(71、200)の方向に関し、厚み方向R1については両端矢印R1で示し、幅方向W1については両端矢印W1で示している。
実施例に係る平ベルト71は、ゴム層80及び芯体シート層91を備えて構成され、ゴム層80として、内周側のゴム層81及び外周側のゴム層82を備えている。
比較例に係る平ベルト200は、内周側のゴム層201、心線202、外周側のゴム層203を備えて構成されている。内周側のゴム層201は、実施例に係る平ベルト71の内周側のゴム層81に対応するゴム層として設けられている。外周側のゴム層203は、実施例に係る平ベルト71の外周側のゴム層82に対応するゴム層として設けられている。心線202は、平ベルト200の周方向に沿って延びる円形断面の心線として設けられ、平ベルト200の幅方向W1に分散して並んで配置されている。
図13は、実施例及び比較例に係る平ベルト(71、200)のゴム層の成分を説明するための図であって、一覧表にして示す図である。実施例に係る平ベルト71の内周側及び外周側のゴム層(81、82)の成分と、比較例に係る平ベルト200の内周側及び外周側のゴム層(201、203)の成分とは、同じ成分であり、図13に示す通りである。
図14は、平ベルト71の実施例に関する実施条件を一覧表にして示す図である。図14に示す通り、平ベルト71の実施例として、実施例1〜8の8種類の実施条件にて平ベルト71の作製を行った。具体的には、シート材91の繊維方向の条件として、「一方向シート」及び「二方向シート」の2種類の条件を設定した。また、シート材91の繊維種の条件として、繊維の方向の各条件に対して、「アラミド繊維」及び「炭素繊維」の2種類の条件を設定した。更に、繊維方向及び繊維種にて特定される各条件に対して、シート材91の厚み(mm)の条件として、異なる2種類の厚みの条件を設定した。また、芯体シート層90において厚み方向R1に重ねられたシート材91の枚数、即ち、シート材91のply数(シート材91の積層数)は、いずれの実施例においても4plyに設定した。尚、図14では、各実施例における芯体シート層90の厚みT90について、合計シート厚み(mm)として記載している。
実施例1〜8の実施条件について、上記の通り設定し、それぞれの実施条件にて、平ベルト71の製作を行った。具体的には、実施例1の平ベルト71として、厚みT91が0.572mmでアラミド繊維の一方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。また、実施例2の平ベルト71として、厚みT91が0.169mmでアラミド繊維の一方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。また、実施例3の平ベルト71として、厚みT91が0.333mmで炭素繊維の一方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。また、実施例4の平ベルト71として、厚みT91が0.111mmで炭素繊維の一方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。また、実施例5の平ベルト71として、厚みT91が0.24mmでアラミド繊維の二方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。また、実施例6の平ベルト71として、厚みT91が0.031mmでアラミド繊維の二方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。また、実施例7の平ベルト71として、厚みT91が0.0833mmで炭素繊維の二方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。また、実施例8の平ベルト71として、厚みT91が0.0566mmで炭素繊維の二方向シートで形成されたシート材91が4ply積層されて構成された芯体シート層90を有する平ベルト71を製作した。
一方、比較例に係る平ベルト200の心線202としては、ポリエステル繊維の撚りコードであって平均線径が1.194mmの心線202を用いた。
実施例1〜8に係る平ベルト71及び比較例に係る平ベルト200の評価としては、走行試験装置を用いた耐久性評価を行った。図15(A)は、実施例に係る平ベルト71及び比較例に係る平ベルト200の耐久性評価に用いた平ベルトの走行試験装置300(以下、単に「走行試験装置300」と称する)の構成を模式的に示す側面図である。図15(B)は、走行試験装置300の一部を示す平面図である。
走行試験装置300は、曲率半径の小さな曲げ変形に対応する走行条件、及び高張力の走行条件にて、平ベルト(71、200)が使用される場合を想定して構築された装置である。走行試験装置300は、駆動用プーリ301、駆動プーリ301を回転駆動する電動モータ(図示省略)、従動プーリ302を備えて構成されている。尚、図15(B)においては、駆動プーリ301のみが図示され、従動プーリ302の図示が省略されているが、従動プーリ302も駆動プーリ301と同様に構成されている。駆動プーリ301及び従動プーリ302は、プーリ直径DPが100mmで、プーリ幅DWが70mmで、プーリのクラウン量CPが0.533mmのプーリとして構成されている。尚、プーリのクラウンは、プーリの外周側の平ベルト(71、200)が巻き掛けられる部分であって、プーリの幅方向における中央部分にかけて径方向外側に向かって盛り上がるように構成された部分である。そして、プーリのクラウン量CPは、プーリの幅方向の中央部分における径方向外側への盛り上がり量となる。尚、図15(B)では、プーリのクラウン量CPについては、誇張して模式的に図示している。
走行試験装置300において走行する平ベルト(71、200)は、駆動プーリ301及び従動プーリ302に巻き掛けられた状態で、走行する。駆動プーリ301及び従動プーリ302に巻き掛けられて走行する平ベルト(71、200)の外形寸法については、周方向の長さであるベルト長さ寸法は2000mmに設定し、ベルト幅寸法は50mmに設定した。
走行試験装置300を用いた耐久性評価では、同じ走行条件で実施例1〜8に係る平ベルト71と比較例に係る平ベルト200とをそれぞれ走行させ、耐久時間を確認し、耐久性評価を行った。実施例1〜8に係る平ベルト71及び比較例に係る平ベルト200のいずれの走行試験においても、駆動プーリ301の回転数は、1000rpmに設定し、平ベルト(71、200)に付与する張力は、高張力の設定である80kgfに設定した。また、走行試験装置300を用いた上記の走行試験での耐久性評価における評価項目としては、平ベルト(71、200)においてゴムの摩耗によるスリップの発生或いはベルトの切断の発生のような破損現象が発生するまでに平ベルト(71、200)が走行した時間である耐久時間を確認した。
また、走行試験装置300を用いた上記の走行試験においては、実施例1〜8に係る平ベルト71と比較例に係る平ベルト200とをそれぞれ2つずつ作製し、それぞれ試験を行った。即ち、実施例1〜8に係る平ベルト71の試験においては、実施例1〜8に係る平ベルト71のそれぞれについて試験対象を2つ作成し、試験対象のそれぞれについて試験を行った。同様に、比較例に係る平ベルト200の試験においても、試験対象を2つ作成し、試験対象のそれぞれについて試験を行った。
図16(A)は、実施例1〜8に係る平ベルト71の走行試験結果を示す図であり、図16(B)は、比較例にかかる平ベルト200の走行試験結果を示す図である。尚、図16(A)及び図16(B)に示す耐久時間(破損現象が発生するまでの耐久時間)は、各実施例又は比較例における2つの試験対象についての試験結果の平均値である。
走行試験装置300を用いた上記の走行試験の結果、比較例に係る平ベルト200は、走行開始から65時間で平ベルト200の切断が発生した。一方、走行試験装置300を用いた上記の走行試験の結果、実施例1〜8に係る平ベルト71は、いずれの実施例においても、切断が発生することはなく、内周側のゴム層81の摩耗が生じ、その結果、スリップが大きくなる現象が発生した。また、内周側のゴム層81の摩耗によってスリップが大きくなるまでの時間については、実施例1の場合は347時間、実施例2の場合は242時間、実施例3の場合は361時間、実施例4の場合は258時間、実施例5の場合は312時間、実施例6の場合は186時間、実施例7の場合は212時間、実施例8の場合は202時間、となった。
走行試験装置300を用いた走行試験によって耐久性評価を行った結果、屈曲性に優れるとともに引張強度が高い一方向シート又は二方向シートのシート材91で構成された芯体シート層90を有する実施例1〜8に係る平ベルト71は、心線202を有する比較例に係る平ベルト200に比して、耐久性が大幅に優れていることが確認された。
尚、実施例2、4〜8に係る平ベルト71は、芯体シート層90の厚みT90(合計シート厚み)が、比較例に係る平ベルト200の心線202の線径に比べて小さく設定されている。このため、実施例2、4〜8に係る平ベルト71は、比較例に係る平ベルト200に比べて、平ベルトのトータルの厚みが薄くなる。よって、実施例2、4〜8に係る平ベルト71は、柔軟性及び屈曲疲労性に優れるため、曲げによるゴム層80の劣化を効率よく防ぐことができる。更に、シート材91は高強度のため、疲労による強度低下によって平ベルト71が切断に至るまでの時間としては非常な長時間を要することになり、走行試験装置300を用いた耐久性評価の結果においても確認されたように、平ベルト71は、非常に優れた耐久性を確保することができる。従って、平ベルト71によると、芯体シート層90の厚みT90を薄く設定することでトータルの厚みを薄くして曲げによるゴム層80の劣化を効率よく防ぐことができ、更に、高強度のシート材91によって非常に優れた耐久性を確保することができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は上述の実施の形態に限られず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更してもよい。なお、以下では、上述の実施形態と異なる点について主に説明し、上述の実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
(1)上述の第1実施形態では、平ベルト1の厚み方向R1における平ベルト1の表面2および裏面3の双方が芯体シート層20によって形成されている例を説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図17(A)の断面図に示すように、厚み方向R1における表面2および裏面3の双方がゴム層10によって形成された平ベルト1Aが形成されてもよい。この場合、例えば、ゴム層10(11,12,13)および芯体シート層20(21,22)が設けられ、ゴム層10と芯体シート層20とが交互に積層される。ゴム層13は、ゴム層11,12と同様のゴムで形成されている。
平ベルト1Aによると、厚み方向R1における平ベルト1の表面2および裏面3の双方が、ゴム層10によって形成されている。この構成によると、平ベルト1のうちゴム層10がプーリ100に接触し、このプーリ100との間で動力を伝達する。この構成であれば、プーリ100と平ベルト1との間のスリップをより確実に抑制できる。
(2)なお、図17(A)に示す変形例において、芯体シート層21,22のそれぞれの突き合わせ位置B251,B252が幅方向W1にずらされている形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図17(B)の断面図で示されているように、芯体シート層21,22の突き合わせ位置B251,B252が幅方向W1において揃えられていてもよい。
(3)また、上述の第1実施形態および変形例では、各ゴム層10が、1枚のゴムシート50を切断および加硫することによって形成されている形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、ゴム層10が、断面矩形状のリボン状ゴムをモールド41に所定のピッチで螺旋状またはモールド41の周方向に平行に巻くことで、一層のゴムシートが形成されていてもよい。この場合、リボン状ゴムは、加硫によって1つのゴム層となる