以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態によって製造される結合ベルト100(ラップド結合Vベルト100)の一部を示す斜視図であって、一部を断面で示す図である。図1においては、環状に延びる結合ベルト100の周方向に対して垂直な断面が図示されている。尚、結合ベルト100は、V字状の断面を有するとともに、表面が被覆された環状の加硫ゴムベルト部101を複数有する結合ベルトであり、ラップド結合Vベルトと称されてもよい。
結合ベルト100は、内周側の角部が切除された円環状のゴム層の周囲表面に外被布106が被覆された環状の未加硫ゴムベルト11が切除、加硫、切断等の加工がされて生成されたものである。結合ベルト100は、未加硫ゴムベルト11が加硫された状態の加硫ゴムベルト部101と、補強布102と、を備えて構成されている。結合ベルト100は、複数の環状の加硫ゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結されたベルトとして構成されている。そして、結合ベルト100は、複数の加硫ゴムベルト部101が補強布102で連結されていることで結合した状態のベルトとして構成されている。
尚、図1においては、2つの環状の加硫ゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結されて結合した結合ベルト100の形態を例示している。図1においては、2つの加硫ゴムベルト部101が補強布102で連結されて結合した結合ベルトを例示しているが、本実施形態によって製造される結合ベルトの製造方法が適用される結合ベルトの種類は、この通りでなくてもよい、例えば、3つ以上の加硫ゴムベルト部101が補強布102で連結されて結合した結合ベルト100に関して、本実施形態によって製造される結合ベルトの製造方法が適用されてもよい。
結合ベルト100の2つの加硫ゴムベルト部101は、同様に構成されている。そして、各加硫ゴムベルト部101は、ゴム層としての圧縮ゴム層103及び伸張ゴム層104と、心線105と、外被布106とを備えて構成されている。
環状に設けられた加硫ゴムベルト部101の本体部分は、積層構造を有しており、加硫ゴムベルト部101の内周側から外周側に向かって、圧縮ゴム層103、心線105、伸張ゴム層104が、順次積層されている。よって、加硫ゴムベルト部101においては、圧縮ゴム層103と伸張ゴム層104との間において、心線105が埋設されている。心線105は、加硫ゴムベルト部101の周方向に沿って延びるように配置されている。そして、心線105は、加硫ゴムベルト部101の周方向に垂直な断面において、加硫ゴムベルト部101の幅方向に沿って所定の間隔で配列されている。尚、加硫ゴムベルト部101の周方向は結合ベルト100の周方向と同方向であり、ゴムベルト部101の幅方向は結合ベルト100の幅方向と同方向である。
また、加硫ゴムベルト部101は、未加硫ゴムベルト11の状態のときに、側面の内周側の角部が切除されるスカイブ処理がなされており、その周方向に対して垂直な断面の形状がV字状の断面形状となっている。より具体的には、加硫ゴムベルト部101の断面形状は、加硫ゴムベルト部101の外周側から内周側に向かって幅方向の寸法が小さくなる台形状に構成されている。
また、加硫ゴムベルト部101は、環状に設けられた無端状の本体部分の周囲表面の外周側以外の部分において、周方向の全長に亘って外被布106で被覆されて構成されている。即ち、加硫ゴムベルト部101は、加硫ゴムベルト部101の側面と内周側の面が外被布106によって被覆されている。
補強布102は、結合ベルト100において、複数の加硫ゴムベルト部101をそれらの外周側である背面側で一体に結合する背面布として設けられている。結合ベルト100においては、補強布102が設けられていることで、複数の加硫ゴムベルト部101が一体のベルト要素としての強度を発揮できるように構成されている。また、補強布102は、環状の布部分として構成され、伸張ゴム層104、及び外被布106の切断された端面に加硫によって一体的に結合されている。これにより補強布102は、並列に並んだ状態の複数の環状の加硫ゴムベルト部101をそれらの外周側で連結して結合している。
図2は、本発明の実施形態に係る結合ベルト100の製造方法の全体工程の一例を示すチャート図である。図2に示すように、結合ベルト100の製造方法は、ゴムベルト作製工程S101、ゴムベルト切除工程S102、加硫工程S103、結合ベルト生成工程S104を備えて構成されている。
ゴムベルト作製工程S101は、未加硫ゴム層と心線とを有する未加硫のラップドVベルトを形成する工程として構成されている。ゴムベルト作製工程S101は、ゴム層形成工程S105、スカイブ工程S106、外被布被覆工程S107を備えて構成されている。
ゴム層形成工程S105においては、まず、未加硫ゴム(即ち、加硫が行われていない状態のゴム)のシートが、圧延によって形成される。そして、圧延によって形成された未加硫ゴムのシートが、所定の長さに切断される。所定の長さに切断された未加硫ゴムのシートは、円筒状或いは円柱状に設けられて回転自在に支持された巻き付け用の型として構成された回転ドラム(図示省略)に対して、巻き付けられる。回転ドラムの外周に巻き付けられた未加硫ゴムのシートは、その端部同士が接合され、筒状に成形される。筒状に成形された未加硫ゴムのシートが、結合ベルト100の各未加硫ゴムベルト部101における圧縮ゴム層103の素材となる。
そして、回転ドラムの外周に筒状の未加硫ゴムの成形体(図示省略)が形成されると、次いで、前述の心線105が、周方向に沿って巻き付けられる。心線105は、筒状の未加硫ゴムの成形体に対して、幅方向に沿って所定のピッチでずらされながら、周方向に沿ってスパイラル状に巻き付けられる。尚、筒状の未加硫ゴムの成形体の幅方向は、上記の回転ドラムの軸方向と平行な方向として構成される。心線105は、筒状の未加硫ゴムの成形体に対して、幅方向のほぼ全長に亘って、巻き付けられる。
筒状の未加硫ゴムの成形体の外周への心線105の巻き付けが終了すると、次いで、心線105の上から、圧延によって形成された未加硫ゴムのシートが巻き付けられる。心線105の上から巻き付けられた未加硫ゴムのシートは、その端部同士が接合され、筒状に成形される。心線105の外周側に巻き付けられた筒状の未加硫ゴムのシートが、結合ベルト100の各ゴムベルト部101における伸張ゴム層104の素材となる。
図3は、未加硫のゴム層が積層された環状の未加硫ゴム輪状体10を示す斜視図である。上述したゴム層形成工程S105によって未加硫スリーブ(図示省略)が形成されると、次いで、未加硫スリーブを周方向に切断して環状の未加硫ゴム輪状体10を形成する。環状の未加硫ゴム輪状体10は、矩形断面で環状に延びる未加硫ゴムの輪状体として構成され、その内周側から外周側に向かって、圧縮ゴム層103の素材の未加硫ゴム層、心線105、伸張ゴム層104の素材の未加硫ゴム層が、順次積層されて構成されている。
図4は、図3に示す未加硫ゴム輪状体の周方向に垂直な方向における断面を示す図であって、スカイブ処理を施した状態を示す断面図である。図5は、未加硫ゴム輪状体の内周側の角部がスカイブされ、外被布106が被覆された状態の未加硫ゴムベルト11を示す断面図である。尚、圧縮ゴム層103、及び伸張ゴム層104に対応する未加硫のゴム層の相当部分に対しては、図4及び図5、並びに、後述の図6及び図8において、同じ符号を付して示している。スカイブ工程S106は、図4に示すように、未加硫ゴムベルト11の両側面における内周側の両角部を周方向に亘って削るように切除することでスカイブ(skive)し、未加硫ゴムベルト11の断面形状を変更する工程として構成されている。スカイブ工程S106においては、未加硫ゴムベルト11の内周側の未加硫ゴム層における内周側の両角部が周方向に亘って削られるように切除される。これにより、スカイブ工程S106の処理が施される前の状態で矩形状の断面だった未加硫ゴムベルト11の断面の形状は、スカイブ工程S106の処理が施された後の状態においては、図4に示すように、矩形状の部分と台形状の部分とが組み合わされた断面の形状となる。
外被布被覆工程S107は、スカイブ工程S106の処理が終了した環状の未加硫ゴムベルト11を外被布106で被覆する工程として構成されている。外被布被覆工程S107においては、図5に示すように、環状の未加硫ゴムベルト11の周囲表面の全体が周方向の全長に亘って外被布106で被覆される。これにより、未加硫ゴムベルト11が外被布106で被覆されて構成された未加硫ゴムベルト11(未加硫のラップドVベルト)が形成される。
図6は、図5に示す未加硫ゴムベルト11の外周側の部分を切除するゴムベルト切除工程S102を示す断面図である。ゴムベルト切除工程S102は、外被布106で被覆された未加硫ゴムベルト11の外周側の部分を周方向に亘って切除し、未加硫ゴムベルト11からゴム層を露出させる工程として構成されている。ゴムベルト切除工程S102において、未加硫ゴムベルト11は、一対のプーリに巻き掛けられて周方向に回転走行される。未加硫ゴムベルト11は、未加硫ゴムベルト11の外周側の部分が、ワイヤー走行機構12によって切除される。また、ワイヤー走行機構12は、走行状態の未加硫ゴムベルト11に接近移動するための移動機構を有している。
ワイヤー走行機構12は、ワイヤー14と、一対のボビン13、13を備えている。ワイヤー走行機構12は、ワイヤー14の張力を付与した部分を直線状に走行させる機構として構成されている。本実施形態におけるゴムベルト切除工程S102においては、一対のボビン13、13の間を往復走行する張力が付与された1本のワイヤー14によって切除される。より具体的には、未加硫ゴムベルト11は、一対のプーリに巻き掛けられて走行した状態で、走行する未加硫ゴムベルト11の外周側に接近するワイヤー14によって切除される。
一対のボビン13、13の間を走行するワイヤー14は、プーリに巻き掛けられた未加硫ゴムベルト11の走行方向と垂直な方向と平行になるように配置される。そして、走行する未加硫ゴムベルト11は、ワイヤー14が押し付けられることで外周側の部分が切除される。尚、ワイヤー14は、1本の長尺の連続したものとして構成されている。ワイヤー14には、例えば、炭素鋼製の金属線であるピアノ線として構成された芯線を有するとともに、この芯線の表面にダイヤモンド砥粒が電着により固定されたダイヤモンドワイヤーを使用してもよい。
一対のボビン13、13は、それぞれ円盤状の部材として設けられ、1本の連続したワイヤーの両端部がそれぞれ巻き付けられており張力が保たれた状態で同期して回転する。また、一対のボビン13、13は、ワイヤー14が巻き付けられる凹み溝(図示省略)が外周の全周に亘って設けられている。一対のボビン13、13は、それぞれ円盤状のボビンを回転自在に軸支する回転軸15、15を有している。一対のボビン13、13には、ワイヤー14の両端部がそれぞれ固定されている。
ワイヤー走行機構12によって外周側の部分が切除された未加硫ゴムベルト11は、切断面において伸張ゴム層104が露出した状態となる。即ち、未加硫ゴムベルト11は、内周面及び両側面が外被布106に被覆された状態のままであり、外周側の部分が、外被布106に被覆されていない伸張ゴム層104が露出した状態となる。ゴムベルト切除工程S102が終了すると、ゴムベルト切除工程S102で生成された未加硫ゴムベルト11を加硫する加硫工程S103が行われる。
図7は、未加硫ゴムベルト11を加硫する加硫工程S103において、外周側の部分を切除した未加硫ゴムベルト11を金型16に設置した状態を模式的に示す図である。図8は、図7に示す金型16の一部を拡大して示す断面図である。加硫工程S103は、ゴム層が露出した未加硫ゴムベルト11を並列に複数並べた状態で未加硫ゴムベルト11の外周側に補強布102を配置して加硫することにより、後述する筒状のベルトスリーブ22を作製する工程として構成されている。
図7を参照して、前述の外被布106が被覆され外周側の部分が切除された未加硫ゴムベルト11(以下、切除後の未加硫ゴムベルト11とも称する。)は、一対の伸張プーリ17、17に巻き掛けられる。また、一対の伸張プーリ17、17の間には、切除後の未加硫ゴムベルト11、及び未加硫ゴムベルト11加硫する金型16が開閉自在に設置されている。
一対の伸張プーリ17、17は、それぞれ回転自在に軸支されており、一方側が駆動モータ(図示省略)の動力によって回転駆動される。一対の伸張プーリ17、17は、巻き掛けられた切除後の未加硫ゴムベルト11を回転動作可能に保持する。また、一対の伸張プーリ17、17は、補強布102が配置された切除後の未加硫ゴムベルト11を巻き掛けたり、取り外したりする際において互いに近接及び離間させることができるように、少なくとも一方側が可動可能に設けられている。即ち、一対の伸張プーリ17、17の一方側が、他方側に対して相対変位可能なように設けられている。
金型16は、補強布102が配置された切除後の未加硫ゴムベルト11を一対の伸張プーリ17、17に巻き掛けられた状態で加硫するためのものである。金型16は、図8に示すように、内周側金型19と、外周側金型20と、を有している。内周側金型19には、補強布102が配置された切除後の未加硫ゴムベルト11を加硫する際の熱源となる熱源部18が設けられている。尚、熱源部18は、外周側金型20においても設けられていてもよい。
内周側金型19は、一対の伸張プーリ17、17に巻き掛けられた状態の切除後の未加硫ゴムベルト11の内周側に配置されている。内周側金型19には、加硫前において、切除後の未加硫ゴムベルト11の内周側が嵌められる直線状の溝部21を有している。
外周側金型20は、図7、及び図8に示すように、一対の伸張プーリ17、17に巻き掛けられた切除後の未加硫ゴムベルト11の外周側に配置されている。即ち、外周側金型20は、未加硫ゴムベルト11の外周側に配置された補強布102の外側に配置されている。切除後の未加硫ゴムベルト11は、内周側金型19の溝部21に配置される。そして、内周側金型19に配置された切除後の未加硫ゴムベルト11の外周側に補強布102が配置される。尚、補強布102は、未加硫ゴムが含浸されたものであってもよい。
図9は、未加硫ゴムベルト11補強布102が配置された未加硫ゴムベルト11が加硫されている状態を模式的に示す図である。図10は、図9に示す金型16の一部を拡大して示す断面図である。加硫に先立って、まず、伸張ゴム層104が露出した未加硫ゴムベルト11が並列に複数並べられ、未加硫ゴムベルト11の外周側に補強布102が配置される。
そして、図9及び図10を参照して、加硫の際、内周側金型19は、補強布102とともに切除後の未加硫ゴムベルト11が配置された後、外周側金型20が型締めされる。補強布102が配置された切除後の未加硫ゴムベルト11は、図9及び図10に示すように、内周側金型19及び外周側金型20に型締めされた領域の一部のみが加硫される。金型16に型締めされなかった伸張プーリ近傍の切除後の未加硫ゴムベルト11の領域については、金型16を一旦開けた後、一対の伸張プーリ17、17によって回転動作させ、再度金型16を型締めした上で加硫を行う。加硫工程S103では、このように、金型16の開閉と補強布が配置された未加硫ゴムベルト11の回転動作を繰り返すことで全体を加硫する。
図11は、加硫後における筒状のベルトスリーブ22を示す斜視図である。加硫後の筒状のベルトスリーブ22は、図11に示すように、筒状に形成されており、複数の加硫ゴムベルト部101同士が所定の寸法の間隔を介して隣り合った状態で補強布によって連結されている。
加硫工程S103により筒状のベルトスリーブが形成されると、次いで、結合ベルト生成工程S104が行われる。結合ベルト生成工程S104においては、加硫工程S103において作製された筒状のベルトスリーブ22の補強布102が周方向に切断されて、少なくとも2つの環状の加硫ゴムベルト部101が結合された状態の結合ベルト100がベルトスリーブ22から切り出される。
図12(a)は、図11に示すベルトスリーブ22の周方向と垂直な方向における断面を模式的に示す断面図であって、2つの加硫ゴムベルト部101ごとに結合ベルトを切り出す場合について示す図である。図12(b)は、同様に、3つの加硫ゴムベルト部101ごとに結合ベルトを切り出す場合について示す図である。図12(a)及び(b)を参照して、筒状のベルトスリーブ22が周方向に切断されることで、筒状のベルトスリーブ22から結合ベルト100が切り出される。図12(a)及び(b)においては、筒状のベルトスリーブ22の補強布102が周方向に沿って切断される際の切断ライン23が破線で示されている。図12(a)においては、筒状のベルトスリーブ22から、2つの加硫ゴムベルト部101が結合された結合ベルトが切り出される場合について示している。図12(b)においては、筒状のベルトスリーブ22から、3つの加硫ゴムベルト部101が結合された結合ベルトが切り出される場合について示している。
図13は、図11に示す筒状のベルトスリーブ22を走行させるスリーブ走行機構24と、走行する筒状のベルトスリーブ22から結合ベルト100を切り出すワイヤー走行機構27とについて模式的に示す図である。
加硫後の筒状のベルトスリーブ22が周方向に走行するスリーブ走行機構24は、駆動ロール25、従動ロール26、等を備えて構成されている。そして、スリーブ走行機構24は、駆動ロール25及び従動ロール26として構成された回転体の外周の少なくとも一部に加硫後の筒状のベルトスリーブ22が巻き掛けられた状態で、上記の回転体を回転させ、加硫後の筒状のベルトスリーブ22を周方向に走行させる機構として構成されている。尚、スリーブ走行機構24を走行する加硫後の筒状ベルトスリーブを切断するワイヤ−走行装置27については、前述のワイヤー走行機構12と同一の機構であるため説明を省略する。
駆動ロール25、及び従動ロール26は、回転軸28周りに回転する回転体として構成されている。駆動ロール25は、駆動モータ(図示省略)から駆動トルクが入力されることで、回転駆動されるように構成されている。従動ロール26は、回転軸28周りに回転自在に支持されている。即ち、従動ロール26には、筒状のベルトスリーブを介して駆動ロール25に入力された駆動トルクが伝達されて回転する。
駆動ロール25、及び従動ロール26の外周側には、周方向に延びる複数の溝が設けられており、加硫後の筒状のベルトスリーブ22における複数の加硫ゴムベルト部101のそれぞれが嵌め込まれるように構成されている。溝の深さは、加硫ゴムベルト部101の高さよりも低く設定されているため、加硫ゴムベルト部101が駆動ロール25及び従動ロール26に嵌め込まれた状態において、補強布102と駆動ロール25及び従動ロール26の間には隙間が構成される。このため、加硫後の筒状のベルトスリーブ22は、切断される際において、ワイヤー14が駆動ロール25及び従動ロール26に接触することなく、安全、且つ確実に切断される。
結合ベルト生成工程S104においては、スリーブ走行機構24、及び、ゴムベルト切除工程S102で用いられるのと同様のワイヤー走行機構27を用いて、筒状のベルトスリーブ22から結合ベルト100が切り出される。結合ベルト生成工程S104においては、筒状のベルトスリーブ22が、スリーブ走行機構24の駆動ロール25、及び従動ロール26に巻き掛けられ走行した状態で走行する。そして、筒状のベルトスリーブ22の補強布102が、一対のボビン13、13の間を往復走行する張力が付与された1本のワイヤー14によって切断される。一対のボビン13、13の間を走行するワイヤー14は、ベルトスリーブ22における従動ロール26に巻き掛けられた部分の接線方向に平行な方向に配置される。そして、ワイヤー走行機構12と同様に、走行する筒状のベルトスリーブ22の補強布102に、ワイヤー14が押し付けられることで結合ベルトが切り出される。
ワイヤー走行機構27は、未加硫ゴムベルト11の外周側の部分の切断で用いられるワイヤー走行機構12と同様に構成され、一対のボビン13、13の間でワイヤー14を走行させるように構成される。
前述のようにスリーブ走行機構24を走行する加硫後の筒状のベルトスリーブ22の補強布が、一対のボビン13、13の間を往復走行するワイヤー14によって周方向に沿って切断されることによって結合ベルトが切り出される。
ワイヤー走行機構27によって切断された結合ベルト100は、駆動ロール25及び従動ロール26から取外されて、一連の結合ベルト100の製造工程が終了する。
[実施例]
次に、実施例として、本実施形態に係る結合ベルトの製造方法によって結合ベルト(以下、実施例に係る結合ベルトと称する。)100を製造した。また、比較例として、本実施形態とは異なる製造方法によって結合ベルト(以下、比較例に係る結合ベルトと称する。)110を製造した。そして、実施例に係る結合ベルト100及び比較例に係る結合ベルト110を用いて評価試験を行った。評価試験では、後述するプーリ機構30に実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110を走行させて、走行前と走行後の状態における補強布102の接着強度と、ゴム硬度の変化量を比較することで評価を行った。接着強度の評価では、走行前と走行後の接着強度に基づいて残存した接着強度を残存率として算出し評価を行った。また、ゴム硬度の評価では、走行前と走行後のゴム硬度の差を比較することで評価を行った。
図14(a)は、実施例に係る結合ベルト100を示す図であって、図14(b)は、比較例に係る結合ベルト110を示す図である。
実施例に係る結合ベルト100は、図14(a)に示すように、3つの加硫ゴムベルト部101と、3つの加硫ゴムベルト部101を外周側で連結する補強布102と、を備えて構成されている。実施例に係る結合ベルト100の加硫ゴムベルト部101は、圧縮ゴム層103と、伸張ゴム層104と、心線105と、外被布106と、で構成されている。実施例に係る結合ベルト100は、本実施形態に係る製造方法によって製造されており、外周側の部分を周方向に亘って切除した未加硫ゴムベルト11に補強布102が配置されて加硫されている。
一方、比較例に係る結合ベルト110は、図14(b)に示すように、3つのラップドゴムベルト部111と、3つのラップドゴムベルト部111を外周側において連結する補強布112と、を備えて構成されている。比較例に係る結合ベルト110のラップドゴムベルト部111は、圧縮ゴム層113と、伸張ゴム層114と、心線115と、外被布116と、で構成されている。
比較例に係る結合ベルト110は、本実施形態に係る結合ベルトの製造方法において行ったような未加硫ゴムベルト11の外周側の部分の切除を行わないで作製した。即ち、比較例に係る結合ベルト110は、図14(b)に示すように、表面全体を外被布116によって被覆された3つの環状のラップドゴムベルト部111が補強布112によって連結されたラップド結合Vベルトである。比較例に係る結合ベルト110を製造する際においては、ゴムベルト切除工程S102が含まれない点で上述の実施形態に係る製造方法と異なる。即ち、比較例に係る結合ベルト110のラップドゴムベルト部111は、実施例に係る結合ベルト100とは異なり、伸張ゴム層114及び外被布116が切除されない状態で構成されている。
図15は、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110のゴム組成物について一覧にして示す表である。図15において、各組成物の配合量は質量部で表している。図15においては、実施例に係る結合ベルト100の圧縮ゴム層103、伸張ゴム層104、補強布102、及び外被布106、の素材となる各組成物を示している。即ち、未加硫状態における実施例に係る結合ベルト100は、素材としてクロロプレンゴム、酸化マグネシウム、ステアリン酸、老化防止剤、カーボンブラック、可塑剤、加硫促進剤、及び酸化亜鉛を配合した。
尚、図15においては、未加硫状態における実施例に係る結合ベルト100を構成する素材として、圧縮ゴム層103及び伸張ゴム層104の間に配置される接着ゴム層のゴム組成物についても示した。また、未加硫状態における実施例に係る結合ベルト100の外被布106の素材として、フリクションゴムのゴム組成物について示した。更に、未加硫状態における実施例に係る結合ベルト100の補強布102の素材として、フリクションゴムのゴム組成物、及び積層ゴムのゴム組成物について示した。また、未加硫状態における比較例に係る結合ベルト110のゴム組成物及び配合割合は、未加硫状態における実施例に係る結合ベルト100と同じである。
尚、クロロプレンゴムとしてDENKA株式会社製PM−40を使用した。また、酸化マグネシウムとして協和化学工業株式会社製キョーワマグ30、ステアリン酸として日油株式会社製ステアリン酸つばきを使用した。また、老化防止剤として精工工業株式会社製ノンフレックスOD−3、カーボンブラックとして東海カーボン株式会社製シースト3を使用した。また、可塑剤としてADEKA株式会社製RS−700、加硫促進剤として大内新興化学工業株式会社製ノクセラーTT、酸化亜鉛として正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種を使用した。
実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110の外被布106、116には、ポリエステル繊維と綿との質量比が50対50で構成される織布(図示省略)が埋設されている。織布は、120度の広角織りで織られており、繊度は20番手の経糸と20番手の緯糸を使用した。また、経糸及び緯糸の糸密度は75本/50mm、目付量は1平方メートルあたり280gに設定されている。尚、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110の外被布106、116の作製では、表面速度が異なる一対のロールにゴム組成物が織布とともに供給された。このとき、織布の織り目にゴム組成物を表裏1回ずつ擦り込むフリクション処理を行った。
実施例に係る結合ベルト100の補強布102の作製では、フリクション処理が行われた外被布106の成形体に積層ゴムを積層して、表面速度が同じ一対のロールに供給された。尚、補強布102の織布には、外被布106に使用した織布と同様のものを使用した。
実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110の心線105、115には、平均線径が1.289mmのポリエステル繊維の撚りコードを使用した。
[評価方法]
次に、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110を用いて行った評価方法について説明する。評価においては、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に張力を付与した状態で走行させることができるプーリ機構30を用いて評価試験を行った。
図16は、評価試験において使用したプーリ機構30について模式的に示す表である。図17は、評価試験において使用したプーリ機構30に関する各設定条件等について一覧にして示す表である。評価試験では、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110をそれぞれプーリ機構30において走行させた後、屈曲疲労による接着強度の低下とゴム硬度の変化について比較した。評価試験においては、実施例に係る結合ベルト100を3つ比較例に係る結合ベルト110を3つ使用した。
図17を参照して、評価試験で使用した実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110は、JIS規格で定めるA形のものを使用し、ベルトサイズが1.778mのものを使用した。補強布102によって連結される実施例に係る加硫ゴムベルト部101は3つであり、比較例に係るラップドゴムベルト部111は3つである。
図16を参照して、プーリ機構30は、駆動プーリ31と、従動プーリ32と、張力プーリ33と、揺動軸34と、を備えている。駆動プーリ31は、評価試験において、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に回転力を付与する。駆動プーリ31は、支持軸(図示省略)によって回転自在に支持されている。駆動プーリ31の外周面には周方向に延びる溝が形成されている。駆動プーリ31の外周面に形成された溝は軸心方向と平行な断面においてV字状に形成されている。駆動プーリ31の周方向に延びる断面V字状の溝は、軸心方向に3つ並列して並んで配置されている。評価試験における駆動プーリ31の回転数は、3200rpmに設定されており、駆動プーリ31の外径は0.12mに設定されている。
従動プーリ32は、駆動プーリ31とともに実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110を周方向に走行可能に支持する回転体として設けられている。従動プーリ32は、支持軸(図示省略)によって回転自在に支持されている。従動プーリ32は、その軸心が駆動プーリ31の軸心と平行になるように配置されている。従動プーリ32の外周面には、駆動プーリ31と同様の周方向に延びる断面V字状の溝が形成されている。実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110は、駆動プーリ31と従動プーリ32の外周面に形成されたV字状の溝に内周側が嵌った状態で周方向に回転走行する。尚、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110は、回転走行時に外周側から張力が付与されると駆動プーリ31及び従動プーリ32の外周側の溝に深く嵌まるように構成されている。従動プーリ32の外径は、0.13mに設定されている。
張力プーリ33は、駆動プーリ31及び従動プーリ32間を周方向に走行する実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に張力を付与するために設けられている。張力プーリ33は、図16に示すように、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に対して近接及び離間可能な状態で後述する揺動軸34によって支持されている。張力プーリ33は、その軸心が駆動プーリ31及び従動プーリ32の軸心と平行になるように配置されている。張力プーリ33は、円柱状に形成されており、外周面において溝を有しない、いわゆる平プーリとして構成されている。張力プーリ33の外径は0.07mに設定されている。実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に張力を付与した状態において、張力プーリ33によって結合ベルト100、110に付与される張力プーリ負荷荷重は215.7Nに設定されている。
揺動軸34は、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に張力を付与するために張力プーリ33を揺動自在に支持する部材である。揺動軸34の一端側は揺動自在に支持されている。そして、揺動軸34の他端側は張力プーリ34を回転自在に支持する。揺動軸34によって支持される張力プーリ33は、駆動プーリ31及び従動プーリ32間を走行する実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に対して近接及び離間可能に構成されている。
図16において一点鎖線で示すように張力プーリ33が実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110から離間した状態で保持されているときは、結合ベルト100、110は、駆動プーリ31及び従動プーリ32の溝に浅く嵌まる。このとき、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110から駆動プーリ31が受ける駆動プーリ仕事率は、4.8KWである。
一方、図16において実線で示すように張力プーリ33が、実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に張力が付与された状態で保持されているときは、結合ベルト100、110は、駆動プーリ31及び従動プーリ32の溝に深く嵌まる。このように実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110に張力プーリ33から張力が付与されているときにおいて、結合ベルト100、110から駆動プーリ31が受ける負荷時駆動プーリ仕事率は、14.3KWである。
張力プーリ33による結合ベルト100、110への張力の付与は120秒行われた。そして、張力の付与が120秒行われた後、60秒間離間した状態で保持された。張力プーリ33による張力の付与は、繰り返し行われ、本実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110については、それぞれ1000回ずつ行われた。
[評価結果]
図18は、接着強度に関する耐久試験の結果について一覧にして示す表である。実施例に係る結合ベルト100はそれぞれ、残存率が83%、87%、88%と、比較例の55%、62%、66%の結果よりも残存率が高かった。つまり、実施例に係る結合ベルト100は、比較例に係る結合ベルト110よりも接着強度の低下が抑制され、耐久性の低下を抑制することができた。
図19は、ゴム硬度の測定による耐久性試験の結果について一覧にして示す表である。図19においては、プーリ機構30上を走行させた実施例及び比較例に係る結合ベルト100、110の走行前と走行後のゴム硬度の変化を示している。実施例に係る結合ベルト100のゴム硬度の変化量は、3、4、4と、比較例に係る結合ベルト110のゴム硬度の変化量6、7、8よりも低かった。つまり、実施例に係る結合ベルト100は、比較例に係る結合ベルト110よりも屈曲性が改善されることで熱の発生が抑制され、ゴム硬度の上昇が抑制されたと判断される。この結果から、実施例に係る結合ベルト100は、比較例に係る結合ベルト110よりもゴム硬度上昇による破損の発生を抑制することができ、長寿命化が実現できる。
この方法によれば、円環状のゴム層の周囲表面に外被布106が被覆された環状の未加硫ゴムベルト11を作製した上で、外周側の部分を周方向に亘って切除した未加硫ゴムベルト11に補強布102を配置して加硫する。このため、既に外被布106が巻き掛けられた状態の未加硫ゴムベルト11を金型16に配置すればよいため、従来と同様、外被布106を配置した上で、更に未加硫状態のゴム層を金型16に配置するという手間が発生しない。その結果、加硫の際において、生産効率が向上し、製品の不良率を低下させることができる。
更に、この方法によれば、ゴムベルト切除工程S102において、外被布106で被覆された未加硫ゴムベルト11の外周側の部分を周方向に亘って切除してゴム層を露出させ、加硫工程S103において、ゴム層を露出させた未加硫ゴムベルト11を並列に複数並べた状態で外周側に補強布102を配置して加硫を行う。これにより、未加硫ゴムベルト11から露出するゴム層の部分と補強布102とが加硫によって結合されるため、外被布106と補強布102を接着させた従来のものよりも接着強度を向上させることができる。
従って、生産効率を向上させて不良率を低減させるとともに、結合ベルト100における補強布102の接着強度を向上させることができる結合ベルト100の製造方法が実現できる。
本実施形態によると、未加硫ゴムベルト11の外周側の部分が、ワイヤー14によって切除される。このため、未加硫ゴムベルト11の切除に際して、未加硫ゴムベルト11の切断表面を滑らかにすることができる。また、切除手段としてのワイヤーを用いて未加硫ゴムベルト11を切除するため、例えば、切除手段としてカッター刃を用い、このカッター刃を押し当てて切除するような場合と比較して、切除手段への未加硫ゴムの付着を防止することができる。これにより、切除手段の切除性能の低下を抑制するとともに、持続して未加硫ゴムベルト11を正確に切除することができる。
本実施形態によると、ゴムベルト切除工程S102において、未加硫ゴムベルト11は、一対のボビン13、13の間を走行するワイヤー14によって切除される。これにより、ワイヤー14における同一部分を集中的に用いることなく、長尺のワイヤー14における異なる部分を順番に連続して用いることができる。このため、ワイヤー14におけるそれぞれの部分が切断に用いられる時間が極めて短時間となり、且つ切断後の放熱によるワイヤー14の冷却時間も確保することができる。その結果、ワイヤー14に発生する発熱を抑えることができるとともに未加硫ゴムの付着を更に低減させることができるため、未加硫ゴムベルト11をより正確に切除することができるとともに、生産効率を向上させることができる。
本実施形態によると、結合ベルト生成工程S104においては、加硫工程S103において作製されたベルトスリーブ22の補強布102が、ワイヤー14によって周方向に切断される。このため、ベルトスリーブ22の補強布102を切断するに際して、補強布102の切断表面を滑らかにすることができる。また、ワイヤー14でベルトスリーブ22の補強布102を切断することで、切除手段としてカッター刃を押し当てるような場合と比較して、切断手段の切断対象への接触面積を小さくすることが可能となり、切断対象である補強布を滑らかに切断して正確に切り出すことができる。
本実施形態によると、結合ベルト生成工程S104において、補強布102は、一対のボビン13、13の間を走行するワイヤー14によって切断される。このため、一対のボビン13、13に駆動力を付与することでワイヤー14を高速駆動、連続駆動させることができ、加硫ゴムベルト10が結合された状態の結合ベルト100の補強布102をより滑らかに、且つ正確に切断することができる。
以上、本発明の実施形態の製造方法について説明した。しかしながら、本発明は上述の実施の形態に限られず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更してもよい。
(1)例えば、上述の実施形態では、加硫工程S103において、直線状の溝部21を有する内周側金型19を用いて、金型16の開閉と、一対の伸張プーリ17、17による未加硫ゴムベルト11の回転動作を繰り返すことで周方向の全体を加硫するものとしたが、この通りでなくてもよい。例えば、未加硫ゴムベルト11を収容可能な円環状の溝を有する金型16を用いて一度の操作で全体を加硫するものとしてもよい。
(2)また、例えば、上述の実施形態では、結合ベルト生成工程S107において、一対のボビン13、13の間を往復走行する張力が付与された1本のワイヤー14によって、加硫後の筒状のベルトスリーブ22の補強布102が切断されるが、この通りでなくてもよい。例えば、一対のボビン13、13が2組以上設けられてもよく、これら2組の一対のボビン13、13の間を往復走行する2本のワイヤー14によって、切断されてもよい。また、これら2組の一対のボビン13、13間の間隔を調整して、切断後の補強布102の端部が結合ベルト100から外方にはみ出した状態とならないようにすることが可能である。
(3)また、上述の実施形態によって製造される結合ベルト100は、一対のボビン13、13の間を往復するワイヤー14によって、加硫後の筒状のベルトスリーブ22の補強布102を周方向に切断しているが、この通りでなくてもよい。例えば、ワイヤー走行機構27を所定の間隔をあけて複数並列にもうけることで、一度に複数の結合ベルト100を切り出すように構成したものであってもよい。