JPS6323413B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、圧縮ゴム層に横方向短繊維群を特に
波形状に配向埋設したローエツジタイプの伝動用
Ｖベルトに関し、従来の短繊維を配向したローエ
ツジＶベルトに比し、ベルト側面の耐摩耗性を向
上せしめると共に騒音を防止することを目的とす
るものである。

圧縮ゴム層中に短繊維群を横方向に配向埋設し
たローエツジタイプのＶベルトは、従来公知であ
るが、従来のかかるＶベルトは一般に第１図に示
す如く圧縮ゴム層５中に短繊維群６がベルト長手
方向に対して真横に配向されており、従つてベル
ト横方向の剛性が大きく耐側圧性は良好である
が、一面、ベルト側面に露出されている短繊維６
の露出面積が小さいためベルト側面のゴム部の摩
耗が激しく、かつ横方向の良好な剛性に反しベル
ト屈曲性はさ程良好ではなく、特に繰り返しベン
デイングに対しベルト側面に亀裂を生じ易く、早
期破損の原因になるばかりでなく、更にベルト駆
動時におけるベルトのプーリよりの引抜きが困難
なため特に高速回転時において騒音を発生すると
いう欠点があつた。

本発明は、前記欠点に鑑み、これを解消すべく
種々検討した結果、到達するに至つたもので、特
に圧縮ゴム層に配向せる横方向の短繊維群を更に
波形状に配向せしめて短繊維群のベルト側面への
露出面積を大きくすると共にベルトをプーリに巻
掛けた際プーリと直接接触しないベルト部分、即
ち通常ライドアウトと呼ばれる部分を垂直に形成
せしめたことをその特徴とするものである。

以下、更に前記本発明の各特徴について具体的
に添付図面にもとづいて順次説明する。

第２図は、本発明に係るＶベルトの部分斜視図
であり、図中２，３はNR（天然ゴム），SBR（ス
チレン・ブタジエンゴム），CR（クロロプレンゴ
ム），或はBR（ブタジエンゴム）などの単一材又
はこれらを適宜混合してなる上下の接着ゴム層
で、上部接着ゴム層３の上には経緯綿糸よりなる
ゴム付バイアス帆布４が１〜複数層、通常は１〜
３層積層貼着され、又前記接着ゴム層２，３中に
はポリエステル，脂肪族ポリアミド，ケブラ（商
品名、芳香族ポリアミド），或はガラス繊維のよ
うな低伸度高強力のロープ抗張体１が並列状に埋
設されている。この抗張体埋設部はベルトをＶプ
ーリに巻掛けた際、プーリ上に出てプーリと直接
接触しない通常、ライドアウトと云われる部位に
相当する部分で、このライドアウト部Ｒは垂直に
形成されており、ベルト屈曲時の逃げ代となつて
作用する。又、前記のベルト上面に被覆するゴム
付帆布４は通常は経緯綿糸よりなるバイアス帆布
が使用されるが、ベルト上面の伸縮性を考慮して
第３図の如きウーリー加工した捲縮ナイロン経糸
４ａと通常のナイロン緯糸４ｂで織成した伸縮性
帆布４を捲縮ナイロン経糸４ａをベルト長手方向
に平行なる如く位置させて積層貼着することもあ
る。次に、５は前記接着ゴム層２，３と同材質よ
りなる圧縮ゴム層で、本発明Ｖベルトの最も特徴
をなす部分であり、この圧縮ゴム層５中に２〜20
mm長さの各種短繊維群６がゴム100重量部に対し
て７〜30重量部横方向に波形状を呈して埋設さ
れ、しかもこの短繊維群６は圧縮ゴム層５の両側
面附近に高密度に配向され、同ゴム層両側面に沿
つて垂直方向に短繊維群６が多数露出された状態
を呈している。このように短繊維群６を波形状に
配向して短繊維群６のベルト側面への露出面積を
大きくしたことは第１図の短繊維群を真横に配向
したＶベルトに比しベルト長手方向の屈曲性，ベ
ルト側面の耐摩耗性，繰り返しベンデイングに対
するベルト側面の耐亀裂性を向上せしめると共に
高速回転時における騒音を防止する上に有効であ
り、自動車用，農機具用，洗濯機用をはじめ特に
事務気用の小サイズベルトとして好適である。

しかして、前述した伝動用Ｖベルトの量産可能
な製造方法としては内側より短繊維群を配向した
厚みの大きな未加硫圧縮ゴムシート，下部接着ゴ
ムシート，抗張体ロープ，上部接着ゴムシート及
び帆布を順次積層せる無端状幅広のベルト成型体
を、外面円周方向に複数本のＶ形突条を形成しか
つ加熱源を備えたドラム状金型に巻掛け、該金型
上で前記ベルト成型体を加圧，加熱した後、得ら
れた無端状加硫ベルト成型体を輪切状に切断して
複数本のＶベルトを製造する方法が普通、適用さ
れる。

以下本発明に係る上述の伝動用Ｖベルトの製造
に関し添付図面を参照しつつ更に具体的に説明す
る。

先ず本発明のＶベルトの製造は、例えば第４図
に示す如き円筒状割型ドラムＤの外周面に各種短
繊維群６が７〜30重量部配向された一定厚みの未
加硫圧縮ゴムシート５を短繊維群６が円筒ドラム
Ｄの円周方向に対して直角になるように無端状に
巻付け、次いで厚みの薄い未加硫下部接着ゴムシ
ート２を巻付ける。そして、次にこの接着ゴムシ
ート２の上に抗張体ロープ１を巻付けるが、この
巻付けは抗張体ロープの配列状態に影響を及ぼす
ため圧縮ゴム５と接着ゴムシート２の積層体表面
を平滑で、特に積層シート厚みは全体を均一にす
る必要がある。次いで、上記巻付けを終つた接着
ゴムシート２上にイソシアネート系及びRFL（レ
ゾルシン・ホルマリン・ラテツクス）液でその表
面を接着処理し、かつ熱延伸処理を施したポリエ
ステル繊維，ポリアミド繊維，ケブラー（商品
名、芳香族ポリアミド），或はガラス繊維などの
ロープ抗張体１を一定張力下でスパイラル状に巻
付け、更に上部接着ゴムシート３、最後に経緯綿
糸よりなるゴム付バイアス帆布４を１〜３層巻付
けることによつて成型工程が完了する。

ここでベルト上面の伸縮性を更に向上せしめる
べくバイアス帆布に代えて第３図の如きウーリー
加工した捲縮ナイロン経糸４ａと通常のナイロン
緯糸４ｂで織成された伸縮性帆布を使用する場合
もあるが、この時は捲縮ナイロン経糸４ａを円筒
ドラムＤの円周方向に巻付ける必要があり、又帆
布４にフリクシヨンするゴムは、接着ゴム層２，
３及び圧縮ゴム層５と同材質のNR，SBR，CR
などの単一材若しくはこれらを適宜ブレンドした
ゴムを使用する。

以上のような各操作を経た後、円筒状割型ドラ
ムＤを折りたたんで又はエキスパンダードラムを
縮めてベルト成型体を取外し第５図の如き幅広の
円筒状未加硫ベルト成型体７とする。

かくして得られた未加硫ベルト成型体７は、次
の第２工程に移行し加硫成型に付される。第６図
〜第９図は加硫工程の態様を示すもので、第６図
は本発明Ｖベルトの加硫態様の概要を示す側面
図、第７図は加硫前の部分横断面図、第８図は加
硫中の態様を示す部分横断面図、第９図は加硫完
了の態様を示す部分横断面図である。

そしてこれらの図において、Ｍは円筒状回転金
型で、その外面円周方向に複数本のＶ溝Ｇを刻設
することにより相対的に形成された帯状突起Ｆを
Ｖ溝Ｇと交互に設けると共に金型Ｍには加熱源機
構Ｓ例えば金型の内部にスチームを導入して内部
からベルトを加硫せしめるスチーム導入機構を備
えている。しかしてこのような構成よりなる金型
Ｍの突条Ｆ上に前記第１工程で得られた未加硫ベ
ルト成型体７をのせて巻掛けると共に他方を表面
フラツトなプーリＴに巻掛けて両者の間で緊張す
る。一方、Ｂは金型Ｍに近接して配設された加硫
機構で例えば無端のスチールバンドで、複数個の
プーリP₁，P₂，P₃間に巻掛けられ、スチールバ
ンドＢの一部は金型Ｍにベルト成型体７を押圧し
ながら、プーリ群中の一駆動プーリP₁によりベ
ルト成型体７と共に伴走する。尚、Ｈはベルト成
型体７をスチールバンド側より加熱する熱源、例
えばパイプヒーターである。そして第６図に示す
ように未加硫成型体７を金型Ｍ及びプーリＴに巻
掛け、内部の加熱源発生機構たるスチーム導入機
構Ｓより７〜８Kg／cm²のスチームを導入し、金型
Ｍに連結されている電動機構（図示せず）により
金型Ｍを矢印方向に低速で回転駆動すると、加圧
用スチールバンドＢは緊張状態にあり、ベルト成
型体７はスチールバンドＢの内側に設けられたパ
イプヒーターＨと金型Ｍ内のスチームによつて加
熱，加圧されることになる。このとき、金型Ｍと
プーリＴ間に巻掛けられたベルト成型体７は、最
初は第７図に示すようにフラツトで、かつ圧縮ゴ
ム層５中に配向された短繊維群６は真横方向に配
向された状態にあるが、加圧用スチールバンドＢ
部に移行するにつれ、パイプヒーターＨならびに
スチーム導入機構Ｓより金型Ｍ内に導入されたス
チームによる加熱によつてベルト成型体７の未加
硫圧縮ゴムシート５は流動状態を呈し、緊張され
たスチールバンドＢの押圧力と相俟つて矢印方
向、即ち金型Ｍの中心部方向に向かつて押圧され
る。従つてベルト成型体７は第８図に示す如く金
型Ｍの突条Ｆが圧縮ゴム５中に喰い込んで圧縮ゴ
ムの一部がＶ溝Ｇ中に充填され、同時に真横方向
に配向されていた短繊維群６も次第に応力を受け
て波形状を呈し、更に引続き矢印方向に押圧力が
加わることにより第９図の如き短繊維群６が完全
な波形状を呈してＶ溝Ｇ中に充填され、Ｖベルト
上面を連結した加硫ベルト成型体７′が形成され
る。

叙上のように未加硫ベルト成型体７は金型Ｍ上
で加熱緊張したスチールバンドＢと共に矢印方向
に徐々に移動して成型加硫され、未加硫ベルト成
型体７を１回転せしめることにより加硫が完了す
る。この加硫完了後プーリＴならびにスチールバ
ンドＢを夫々弛めて加硫ベルト成型体７′を金型
Ｍから取外せば第１０図の如き内周面に複数本の
Ｖ形突条を備えた幅広の円筒状加硫ベルト成型体
７′が得られる。

次に、最終作業の第３工程に移り、取り出され
た加硫ベルト成型体７′は公知の方法で所定幅に
Ｖ形突条の連結部を垂直に輪状に切断され、第２
図に示す如き複数本のＶベルトを得ることができ
る。

以上は圧縮ゴム層５中に横方向波形状に短繊維
群６を配向した単独のローエツジタイプのＶベル
トとその製造方法について述べたが、前記製造方
法は第３工程の連結部切断工程を省略することに
より、第１１図の如き短繊維群６を横方向波形状
に配向した複数本のＶベルト上面を連結一体化し
た所謂バンデツドベルト（多リブベルト）を製造
することもできる。

以上の如く本発明は圧縮ゴム層内に短繊維を横
方向波形状に、かつ両側面において高密度となる
ように配向し、かつベルト側面上部に垂直なライ
ドアウトを形成した特殊構成のＶベルトは下記の
如き数多くの特長を有している。

(1) 圧縮ゴム層に横方向の短繊維群が波形状に配
向されているためベルト長手方向の屈曲性が良
好である。

(2) 圧縮ゴム層両側面附近に短繊維群が高密度に
配向され、同時に短繊維群の両側面への露出面
積が大きいためベルト側面の耐摩耗性、繰返し
ベンデイングに対するベルト側面の耐亀裂性が
良好である。

(3) 短繊維群のベルト側面への露出面積が存きい
ためベルトとプーリの滑りが良くなり、ベルト
の引抜きが容易で高速回転時の騒音を防止でき
る。

(4) 駆動中のベルト発熱によるベルト側面の粘着
性を減少せしめベルト寿命を向上できる。

(5) ベルト側面上部に垂直なライドアウトを形成
しているためベルト屈曲時の逃げ代となつて屈
曲性を向上することができる。

(6) 製法が簡単であるため工数を増加せず、コス
ト安である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の短繊維入りローエツジＶベルト
の部分斜視図、第２図は本発明による短繊維入り
ローエツジＶベルトの部分斜視図、第３図は本発
明Ｖベルトに使用する伸縮性帆布の平面図、第４
図は本発明Ｖベルトの製造法に好適な製造工程で
の成型態様（第１工程）を示す横断面図、第５図
は第４図によつて得られた未加硫ベルト成型体の
斜視図、第６図は本発明Ｖベルトの製造に好適な
製造工程での加硫態様（第２工程）を示す概要側
面図、第７図は第６図に示す加硫工程における加
硫開始時の部分横断面図、第８図は同じく第６図
に示す加硫工程における加硫途中の部分横断拡大
図、第９図は同じく第６図に示す加硫工程におけ
る加硫完了時の部分横断拡大図、第１０図は加硫
ベルト成型体の斜視図、第１１図は本発明のベル
トの他の構成態様を示す伝動用ベルトの部分斜視
図である。 １……ロープ抗張体、２，３……接着ゴム層、
４……ゴム付帆布、４ａ……経糸、４ｂ……緯
糸、５……圧縮ゴム層、６……短繊維群、７……
未加硫ベルト成型体、７′……加硫ベルト成型体、
Ｂ……スチールバンド、Ｄ……円筒ドラム、Ｍ…
…金型、Ｇ……Ｖ溝、Ｆ……帯状突起（突条）、
Ｈ……ヒーター、Ｔ……プーリ、P₁，P₂，P₃…
…プーリ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 低伸度高強力のロープ抗張体を並列状に埋設
   せしめた接着ゴム層の上面に１ないし複数層のゴ
   ム付帆布を積層貼着し、一方、前記抗張体埋設接
   着ゴム層下面の圧縮ゴム層に横方向短繊維群を波
   形状に配向埋設して該短繊維群の圧縮ゴム層の両
   側面部におけるベルト側面への露出面積を実質的
   に大ならしめる共にベルトライドアウト部を垂直
   に形成してなることを特徴とする伝動用Ｖベル
   ト。 ２ ゴム付帆布が経緯綿糸よりなるバイアス帆布
   である特許請求の範囲第１項記載の伝動用Ｖベル
   ト。 ３ ゴム付帆布がウーリー加工された捲縮ナイロ
   ン経糸と通常のナイロン緯糸で織成された伸縮性
   帆布である特許請求の範囲第１項記載の伝動用Ｖ
   ベルト。 ４ 圧縮ゴム層中の横方向に配向せる短繊維群の
   混入量がゴム100重量部に対して７〜30重量部で
   ある特許請求の範囲第１項，第２項又は第３項記
   載の伝動用Ｖベルト。