JP2018092764A - 二次電池 - Google Patents

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浩司 部田
Koji Heta
浩司 部田
橋本 達也
Tatsuya Hashimoto
達也 橋本
福本 友祐
Yusuke Fukumoto
友祐 福本
章浩 落合
Akihiro Ochiai
章浩 落合
島村 治成
Harunari Shimamura
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Abstract

【課題】サイクル特性が向上した二次電池を提供すること【解決手段】本開示の二次電池は、負極、正極、負極と正極との間に介在するセパレータ、および、電解液を備える。セパレータは、フィルム状の多孔質基材と、多孔質基材の両面に積層された不織布層と、不織布層の多孔質基材と反対側の表面に固着され、該表面から突出するセルロース繊維と、を含む。不織布層の厚みは2μm以上である。セルロース繊維の長さは5μm以上である。セルロース繊維が不織布層の表面を覆う面積の、不織布層の表面全体の面積に対する比率は、40%以上である。【選択図】図1

Description

本開示は、二次電池に関する。
二次電池の負極と正極との間に配置されるセパレータとしては、多孔質フィルム、不織布、紙、またはそれらの積層体などが用いられている。例えば、特開2014−149985号公報(特許文献1)には、二次電池のセパレータとして、ナノファイバーからなる不織布とセルロースを原料とする紙とを積層してなる積層不織布を用いることが開示されている。
特開2014−149985号公報
図5を参照して、従来は、図5(a)に示す初期の状態から、充電(特に急速充電または大電流充電)によって電極(負極1および正極2)が膨張すると、図5(b)に示すように、セパレータ3が圧縮されて(図中の黒矢印)、電解液が浸み出す(図中の白矢印)。このように、セパレータ3が押し潰されると、セパレータ3の孔の閉塞または変形が生じ、セパレータ3での電解液の保持量およびイオン透過性が低下して、電池の抵抗は増加する。
また、充電後の放電によって電極が収縮すると、図5(b)に示す状態から図5(c)に示す状態となり、セパレータ3と電極とが乖離して空間3aが発生する。空間3aには、電解液の泡等が入り込んで、電解液が侵入し難くなる場合がある。これにより、電極とセパレータ3との間において電解液が不足すれば、電池の抵抗は増加する。このように、充放電サイクルによって、電池の特性が悪化する場合があった。
上記の課題に鑑み、本開示の目的は、サイクル特性が向上した二次電池を提供することである。
〔1〕 本開示の二次電池は、負極、正極、前記負極と前記正極との間に介在するセパレータ、および、電解液を備える。前記セパレータは、多孔質基材と、該多孔質基材の両面に積層された不織布層と、前記不織布層の前記多孔質基材と反対側の表面に固着され、該表面から突出するセルロース繊維と、を含む。前記不織布層の厚み(A)は2μm以上である。前記セルロース繊維の長さ(B)は5μm以上である。前記セルロース繊維が前記不織布層の表面を覆う面積の、前記不織布層の表面全体の面積に対する比率(R)は、40%以上である。
従来は、充放電サイクルによって、セパレータの孔の閉塞等、または、電極とセパレータとの間における電界液の不足が生じ、電池の抵抗が増加する場合があった。
これに対して、本開示の二次電池では、セルロース繊維が電極の膨張および収縮に追従する。すなわち、図2(a)に示されるように、電極(負極1または正極2)が膨張したときはセルロース繊維33が縮み、図2(b)に示されるように、電極が収縮したときはセルロース繊維が伸びる。
これにより、多孔質基材および不織布層の圧縮力による変形が抑制され、多孔質基材の孔および不織布層の空隙の閉塞または変形が抑制される。また、電極とセパレータとの乖離を抑制し、セルロース繊維が電解液を保持できるため、セパレータと電極との間での電解液の不足を抑制できる。本開示の二次電池では、このようにして、充放電サイクルによる抵抗上昇が抑制される。したがって、本開示の二次電池は、サイクル特性が向上している。
本開示の実施形態に係る二次電池のセパレータの構成の一例を示す概略断面図である。 本開示の実施形態に係る二次電池の効果を説明するための模式図である。 本開示の実施形態に係る二次電池の特徴を説明するための模式図である。 本開示の実施形態に係る二次電池の構成の一例を示す分解斜視図である。 従来の二次電池の課題を説明するための模式図である。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と記される)が説明される。ただし、本開示の発明の範囲は、以下の説明に限定されるべきではない。
<二次電池>
以下では、二次電池の一例として、リチウムイオン二次電池について説明する。ただし、本開示に係る二次電池は、リチウムイオン二次電池に限られず、例えば、ニッケル水素蓄電池、ニカド電池などであってもよい。
図4は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す分解斜視図である。本実施形態の二次電池100は、基本的に、負極1、正極2、負極1と正極2との間に介在するセパレータ3、および、電解液を備える。
二次電池100は、電池ケース5を備える。図4において電池ケース5は、円筒形である。ただし、本実施形態の電池ケース5は、例えば角形(扁平直方体)であってもよい。電池ケース5は、例えば、アルミニウム(Al)合金、ステンレス(SUS)等の金属製である。
電池ケース5には、電極群4および非水電解液(図示されず)が収納されている。電極群4は、負極1、セパレータ3および正極2を含む。すなわち、二次電池100は、負極1、正極2および非水電解液を備える。図4において電極群4は、巻回型の電極群である。電極群4は、帯状のセパレータ3を間に挟んで、帯状の負極1と帯状の正極2とが積層され、さらに巻回されることにより構成される。電極群は、積層型の電極群であってもよい。積層型の電極群は、例えば、矩形状のセパレータを間に挟んで、矩形状の負極と矩形状の正極とが交互に積層されることにより構成される。
《負極》
負極1は、負極合材および集電箔を含む。集電箔は、例えば、銅(Cu)等でよい。集電箔は、例えば、3〜30μm程度の厚さを有してもよい。負極合材は、集電箔の表面に層状に塗着されている。負極合材は、集電箔の表面において、例えば10〜150μm程度の厚さを有してもよい。
負極合材は、負極活物質およびバインダ材等を含有する。負極合材は、例えば、95〜99質量%の負極活物質、および1〜5質量%のバインダを含有する。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素系負極活物質、および、珪素(Si)、錫(Sn)等を含有する合金系負極活物質が挙げられる。負極活物質の平均粒子径は、例えば1〜25μm程度でよい。なお、本明細書の「平均粒子径」は、レーザ回折・散乱法によって測定された体積基準の粒度分布において、積算値50%での粒径(「d50」、「メジアン径」とも称される。)を意味する。
バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)等が挙げられる。バインダは1種単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
《正極》
正極2は、正極合材および集電箔を含む。集電箔は、例えば、Al箔等でよい。集電箔は、例えば、3〜30μm程度の厚さを有してもよい。正極合材は、集電箔の表面に層状に塗着されている。正極合材は、集電箔の表面において、例えば10〜150μm程度の厚さを有してもよい。
正極合材は、正極活物質、導電材およびバインダ等を含有する。正極合材は、例えば、80〜98質量%の正極活物質、1〜15質量%の導電材、および1〜5質量%のバインダを含有する。
正極活物質としては、例えば、リチウム含有金属酸化物、リチウム含有リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、一般式LiNiaCob2(ただし式中、a+b=1、0<a<1、0<b<1である。)で表される化合物、LiMnO2、LiMn24、一般式LiNiaCobMnc2(ただし式中、a+b+c=1、0<a<1、0<b<1、0<c<1である。)で表される化合物、LiFePO4などが挙げられる。ここで、一般式LiNiaCobMnc2で表される化合物としては、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32などが挙げられる。リチウム含有リン酸塩としては、例えば、LiFePO等が挙げられる。正極活物質の平均粒子径は、例えば1〜25μm程度でよい。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、サーマルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックが挙げられる。導電材により、電子伝導性の向上が期待される。
バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PAA等が挙げられる。
《セパレータ》
セパレータ3は、負極1と正極2との間に介在する。セパレータ3は、電気絶縁性であり、負極1と正極2とを電気的に隔離する。セパレータ3は、例えば、3〜30μm程度の厚さを有する。
また、セパレータ3は、内部に複数の細孔(空隙)を有し、電解液を保持し、電解液中のイオンを透過させることが可能である。このように、セパレータ3は、少なくとも一部に多孔質な構造を備える。ただし、ここでの多孔質な構造は、電解液を保持でき、イオンが透過可能な構造であれば、どのような構造であってもよい。
図1を参照して、本実施形態で用いられるセパレータ3は、フィルム状の多孔質基材31と、多孔質基材31の両面に積層された2つの不織布層32と、セルロース繊維33と、を含む。セルロース繊維33は、各々の不織布層32の多孔質基材31と反対側の表面に固着されており、該表面から突出している。
なお、図1において、セルロース繊維33は、一端が不織布層32の空隙に埋め込まれた状態となって固定されている。ただし、このような態様に限られず、セルロース繊維33の一端が不織布層32の表面に固着(接着等)されているような態様であってもよい。
多孔質基材は、フィルム状であり、電解液を保持し、イオンが透過できるような多孔質構造を有している。多孔質基材は、不織布よりも空隙率が小さいことが好ましく、例えば、水銀圧入法によって測定された空隙率が40〜60体積%程度である。
多孔質基材31の材質は特に限定されないが、機械的な強度と化学的な安定性を有する材料を用いることが好ましい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系材料からなる多孔質フィルムが挙げられす。多孔質基材31は、このような多孔質フィルムの1つからなる単層構造を有していてもよく、複数の多孔質フィルムからなる多層構造を有してもよい。
なお、多孔質基材31は、その表面に多孔質の耐熱層を備えてもよい。耐熱層は、例えば、アルミナ、チタニア、ポリイミド等の耐熱材料(無機粒子)を含んでいる。
図3を参照して、不織布層32の厚み(A)(多孔質基材31の両面に形成された2つの不織布層32の各々の厚み)は、2μm以上である。ここで、「多孔質基材の厚み」は、厚さ方向の断面において測定することができる。測定には、光学顕微鏡あるいはSEM等が使用され得る。厚さは10箇所以上で測定される。10箇所以上の算術平均が測定結果として採用される。また、「不織布層の厚み」も、同様に厚み方向の断面において測定することができる。
不織布層32の厚み(A)が、1μm以下である場合は、セルロース繊維33と不織布層32との固着が不十分になり、サイクル時の膨張および収縮によって、セルロース繊維33が不織布層32から脱落し、不織布層32と電極との間が乖離した結果、従来と同様にサイクル後の抵抗上昇が大きくなる。
なお、Aは8μm未満であることが好ましい。Aが8μm以上である場合は、セパレータ全体の厚みが厚くなり、正極と負極との間の距離が長くなるため、初期抵抗が大きくなるからである。
また、セルロース繊維33の長さ(B)は、5μm以上である。本明細書において、「セルロース繊維の長さ」とは、不織布層から突出する部分のセルロース繊維の長さであり、不織布層に植え込まれた部分の長さは含まれない。また、「セルロース繊維の長さ」は、「多孔質基材の厚み」と同様に、厚み方向の断面において測定することができる。
セルロース繊維33の長さ(B)が5μm未満である場合は、膨張および収縮に追従できるセルロース繊維の長さが不足し、サイクル後の抵抗上昇が大きくなる。
なお、Bは20μm未満であることが好ましい。Bが20μm以上である場合は、セパレータ全体の厚みが厚くなり、正極と負極との間の距離が長くなるため、初期抵抗が大きくなるからである。
また、セルロース繊維33が不織布層32の表面を覆う面積の、不織布層32の表面(セルロース繊維33が固着された一方の主面)全体の面積に対する比率(R)は、40%以上である。ここで、「セルロース繊維が不織布層の表面を覆う面積」とは、断面SEMの10箇所以上の平均値を意味する。
Rが40%未満である場合、電極の膨張および収縮への追従性が乏しくなり、サイクル後の抵抗上昇が大きくなる。
なお、Rは80%以下であることが好ましい。Rが80%超である場合、セパレータ全体の空隙率が低下するため、初期抵抗が大きくなるからである。
なお、少なくとも一部のセルロース繊維33は、不織布層32に固着された側とは反対側の一端が、電極(負極1または正極2)に固着されていることが好ましい。これにより、充放電サイクル時の電極の膨張および収縮にセルロース繊維33が追従することが、より確実に可能となる。なお、セルロース繊維の一端は、例えば、−OH基などの官能基によって、電極に固着することができる。
《電解液》
電解液は、電極群4内の空隙に含浸されている。ここで、電極群4内の空隙とは、電極(負極および正極)内の空隙、セパレータ内の空隙(多孔質基材および不織布内の空隙、セルロース繊維間の空隙など)、電極群内での電極間および電極とセパレータとの間の隙間などを意味する。
リチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、例えば、リチウム塩および非プロトン性溶媒を含む非水電解液が挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、Li[N(FSO]、Li[N(CFSO]、Li[B(C](通称「LiBOB」)、LiPO等が挙げられる。リチウム塩は、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。非水電解液において、リチウム塩は、例えば、0.5〜2.0mоl/L程度の濃度を有してもよい。
溶媒に溶解(または分散)したリチウム塩は、一部または全部が解離する。これによりリチウムイオンが発生する。リチウム塩の解離度が高い程、充放電に寄与するリチウムイオンが多くなり、大電流充放電特性が向上すると考えられる。リチウム塩の解離度は、比誘電率が高い溶媒の使用により高めることができる。
比誘電率が高い溶媒としては、非プロトン性溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒は、電気化学的に安定であること、粘度が低いこと、融点が低いこと、沸点が高いこと等も求められる。これらの観点から、非プロトン性溶媒は、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルの混合物であることが望ましい。環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの混合比は、例えば、「環状炭酸エステル:鎖状炭酸エステル=1:3〜3:1(体積比)」程度である。
環状炭酸エステルとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等が挙げられる。さらに、不飽和結合を持つ環状炭酸エステルとして、ビニレンカーボネート(VC)等、フッ素原子を含有する環状炭酸エステルとして、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等も挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等が挙げられる。
なお、本開示の二次電池に用いられる電解液は、非水系の電解液に限られず、水系の電解液を用いてもよい。例えば、二次電池がニッケル水素蓄電池またはニカド電池である場合は、アルカリ水溶液などの水系電解液を用いてもよい。
《二次電池の用途》
上記のように、本実施形態の二次電池は、サイクル特性に優れる。したがって、本実施形態の二次電池は、例えば、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の動力電源として特に好適である。ただし、本実施形態の二次電池の用途は、こうした車載用途に限られず、あらゆる用途に適用可能である。
<二次電池の製造方法>
負極1、正極2および電解液等は、従来公知の方法で製造され得る。以下、セパレータの製造について説明する。
本実施形態のセパレータの製造方法は、多孔質基材の両面に積層された不織布層にセルロース繊維が固着されてなるセパレータを製造できるような方法であれば特に限定されない。このような製造方法の一例としては、不織布層32の表層(多孔質基材31と反対側の表層)に、セルロース繊維(繊維状セルロース)の分散液(懸濁液)等を塗布して、部分的に不織布層32に含浸させ、その後に乾燥する方法が挙げられる。これにより、不織布層32の表層にセルロース繊維が植え込まれ、セルロース繊維33が不織布層32の表面(多孔質基材31と反対側の表面)に固着され、該表面からセルロース繊維が突出する状態となる。
具体的には、まず、セルロース繊維を分散媒(例えば、水、水およびエタノールの混合溶媒、NMPなど)中に加えて攪拌混合することで、セルロース繊維の分散液を作製する。
この分散液を、グラビアコーター等を用いて、多孔質基材の両面に積層された不織布層に塗布する。これにより、セルロース繊維の分散液を不織布層の表層に部分的に含浸させることができる。その後、乾燥により分散液中の分散媒を除去する。なお、乾燥は、セパレータが収縮しないような温度(例えば、50〜75℃)で実施した。
このようにして、多孔質基材の両面に積層された不織布層にセルロース繊維の一部が植え込まれてなる、シート状のセパレータを作製することができる。
なお、上述のとおり、本明細書において、「セルロース繊維の長さ」(B)とは、不織布層から突出する部分のセルロース繊維の長さであり、不織布層に植え込まれた部分の長さは含まれない。
セルロース繊維33の長さ(B)を制御する方法としては、例えば、塗布されるセルロース繊維の分散液の厚み(塗工厚)を調整する方法が挙げられる。
塗工厚の調整は、例えば、ダイコーターによってセルロース繊維の分散液を塗布する場合は、ダイコーターのキャップの種類を選択することで、塗工厚を調整することができる。また、グラビアコーターを用いてセルロース繊維の分散液を塗布する場合は、グラビアコーターの版(シリンダ)の表面積(容積)を変更することで、塗工厚を調整することができる。セルロース繊維の長さを長くしたい場合は、版の表面積を広く(容積を大きく)すればよく、セルロース繊維の長さを短くしたい場合は、版の表面積を狭く(容積を小さく)すればよい。また、グラビアセルの形状、深さ、塗工液(セルロース繊維の分散液)の固形分濃度などによっても、塗工厚を調整することができる。
R(セルロース繊維による面積被覆率)を制御する方法としては、塗料の固形分濃度を調整する方法が挙げられる。Rを上げる場合は、塗料の固形分濃度を高くすればよく、Rを下げる場合は、固形分濃度を低くすればよい。なお、固形分濃度が変更されると、塗料の粘度等も変わるが、それに応じて乾燥条件等の塗工条件は適宜変更すればよい。
上記のようにして作製されたセパレータ3は、従来公知の方法により、負極1および正極2の間に配置され、負極1、正極2およびセパレータ3を含む電極群4が構成され得る。電極群4は、電池ケース5に収納される。その後、非水電解液が電池ケース5に注入され、電池ケース5が密閉される。以上より、二次電池100(リチウムイオン二次電池)が製造される。
<二次電池の製造>
以下のようにして、実施例および比較例に係る二次電池(リチウムイオン二次電池)が製造された。
《実施例1〜9および比較例1〜3》
(負極の作製)
負極活物質としての天然黒鉛(D50=10μm)、SBR(バインダ)およびCMC(バインダ)を所定組成比(質量比で98:1:1)となるように混合し、水(溶媒)を加えて混練することにより、各成分が分散したスラリー(負極合材スラリー)を調製した。
この負極合材スラリーを、銅箔(負極集電体、厚さ10μm)の両面に、片面の塗工質量(溶媒を除く乾燥後の質量)が18mg/cmとなるように塗工した。その後、100℃の熱風乾燥炉により各スラリーを乾燥させ、厚み方向に圧縮することで、シート状の負極(厚み:90μm)を作製した。なお、この負極は、幅方向の片側に負極集電体が露出した未塗工部を有するものである。
(正極の作製)
正極活物質としてのリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3、D50=10μm)、アセチレンブラック(導電材)、および、PVDF(バインダ)を、質量比で94:4:2となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて混練することにより、各成分が分散したスラリー(正極合材スラリー)を得た。
この正極合材スラリーを、正極集電体としてのAl箔(厚さ15μm)の両面に、片面の塗工質量(溶媒を除く乾燥後の質量)が30mg/cmとなるように塗工し、乾燥して、該Al箔上に正極合材層を形成した。続いて、ロール圧延機を用いて正極合材層およびAl箔を圧延することにより、シート状の正極(厚み:80μm)を得た。この正極は、幅方向の片側に正極集電体が露出した未塗工部を有するものである。
(セパレータの作製)
多孔質基材(PE製、厚み12μm、空孔率45%)の両面に不織布(セルロース製)を圧着した。なお、実施例1〜9および比較例1〜3の各々における不織布の厚み(A)は、表1の「A」の欄に示すとおりである。ここで、不織布の厚み(A)は、断面SEMによって測定した平均値である。なお、表1には、各々10個のセパレータのAの値の平均値を示す。
また、セルロース繊維(繊維状セルロース)に水を加えて攪拌混合し、セルロース繊維の分散液を調製した。この分散液をグラビアコーター等を用いて含浸させた後、乾燥することで、多孔質基材の両面に積層された不織布層にセルロース繊維が植え込まれてなる、シート状のセパレータを作製した。なお、乾燥は、セパレータが収縮しないように、70℃の温度で実施した。
実施例1〜9および比較例1〜3の各々におけるセルロース繊維の長さ(B)は、表1の「B」の欄に示すとおりである。ここで、セルロース繊維の長さ(B)は、断面SEMによって測定した平均値である。なお、表1には、各々10個のセパレータについて測定されたBの値の平均値を示す。
また、実施例1〜9および比較例1〜3の各々における、セルロース繊維が不織布層の表面を覆う面積の、不織布層の表面全体の面積に対する比率(すなわち、繊維状セルロースによる面積被覆率)(R)は、表1の「R」の欄に示すとおりである。ここで、繊維状セルロースによる面積被覆率(R)は、断面SEMによって測定した値である。なお、表1には、各々10個のセパレータのRの値の平均値を示す。
なお、BおよびRについては、セルロース繊維の分散液を塗布する際に、不織布とグラビアコータ等との間のギャップを調整したり、塗料(セルロース繊維の分散液)の濃度を調整したりすること等によって、調整した。
(電解液の調製)
ECとDMCとDECとを、体積比でEC:DMC:DEC=3:4:3となるように混合して非プロトン性溶媒を得た。次に、該非プロトン性溶媒に、1.0M(1.0mol/L)のLiPFを溶解させることにより、電解液(非水電解質)を調製した。
(二次電池の作製)
次に、上記のように作製した材料を用いて、二次電池を作製した。
上記正極および上記負極を、上記セパレータを挟んで、楕円柱状に巻回した後、常温下にて平板により加圧して、扁平状の電極群(タブレス電極群)を構成した。
この電極群を、円筒型のアルミニウム製の外装ケース(直径18mm、高さ650mm)に挿入し、負極集電体および正極集電体の各々の露出部の端部を負極集電端子および正極集電端子に電気的に接続し、さらに、負極集電端子および正極集電端子の各々を、外装ケースに設けられた負極端子および正極端子に電気的に接続した。
次に、上記の電解液(非水電解質)を外装ケースに設けられた注入孔から外装ケース内に注入し、該注入孔を封止した。
以上のようにして、実施例1〜9および比較例1〜3の二次電池(図4に示されるような円筒型リチウムイオン二次電池)を作製した。なお、この二次電池の電池定格容量は、500mAhである
《比較例4》
セルロース繊維の分散液の代わりに、水溶性セルロースの水溶液を用いて、不織布層の表面を被覆した(すなわち、水溶性セルロースで最外層を形成した)点以外は、実施例1と同様にして、比較例4の二次電池を作製した。
《比較例5》
セルロース繊維の分散液の代わりに、ポリイミドの水分散液を用いて、不織布層の表面を被覆した(すなわち、ポリイミドで最外層を形成した)点以外は、実施例1と同様にして、比較例5の二次電池を作製した。
《比較例6》
セルロース繊維の分散液の代わりに、変性ポリオレフィンの水溶液を用いて、不織布層の表面を被覆した(すなわち、変性ポリオレフィンで最外層を形成した)点以外は、実施例1と同様にして、比較例6の二次電池を作製した。
《比較例7》
両面に不織布層が積層された多孔質基材の代わりに、不織布(セルロース製、厚み20μm)を用いた点以外は、実施例1と同様にして、比較例7の二次電池を作製した。なお、該不織布の両面には、セルロース繊維が固着されている。
《比較例8》
セパレータとして、従来のPP製多孔質フィルム、PE製多孔質フィルム、および、PP製多孔質フィルムがこの順で積層されてなる多層フィルムを用いた点以外は、実施例1と同様にして、比較例8の二次電池を作製した。
<評価>
以下のようにして各例に係る二次電池100が評価された。以下では、電流の大きさが「C」により表現される。ここでの「1C」は、1時間の充電で、SOC(State Of Charge)が0%から100%になる電流の大きさと定義される。
《電池抵抗の測定》
25℃環境下において、充電により二次電池のSOCを60%に調整し、その二次電池を10Cの電流で10秒間放電させる。放電時の電圧降下量を測定し、電圧降下量と、放電時の電流との関係から、電池抵抗が算出される。なお、実施例および比較例の各々について、各々10個の二次電池に対して電池抵抗を測定し、平均値を求めた。初期(サイクル前)の電池抵抗の測定結果を表1の「初期抵抗」の欄に示す。
《サイクル特性の評価》
25℃環境下において、電池のサイクル特性が評価された。二次電池に対して、以下の「CC充電→休止→CC放電→休止」が1サイクルと定義され、当該サイクルが3000回繰り返された。ここで「CC(Constant Current)」は定電流方式を示している。
(サイクル条件)
CC充電:電流=10C,終止電圧=4.3V
休止:80秒間
CC放電:電流=3C, 終止電圧=2.5V
休止:400秒間
サイクル後の電池抵抗を初期抵抗と同様に測定した。初期抵抗に対するサイクル後の電池抵抗の比率を表1の「サイクル後抵抗比率」の欄に示す。なお、サイクル後の抵抗比率が低い程、サイクル後の抵抗上昇が抑制され、サイクル特性に優れていることを意味する。サイクル後抵抗比率は、110%以下であることが望ましい。
《高温保存試験》
25℃環境下でSOCが100%に調整された二次電池を、60℃の条件下化で100日間保存した。保存後、二次電池の容量を測定した。具体的には、電池抵抗の測定と同じ条件で、放電時の電圧降下量と電流から放電容量を算出し、電池の容量とした。そして、保存後の容量の測定値について、あらかじめ同様の方法で測定しておいた初期(保存前)の二次電池の容量に対する比率(保存後容量維持率)を算出した。各実施例および比較例について、各々50個の電池の保存後容量維持率を求め、その平均値を表1の「保存後容量維持率」の欄に示す。
Figure 2018092764
実施例1〜9の結果より、多孔質基材の両面に不織布層を積層し、該不織布層をセルロース繊維で被覆してなるセパレータを用いた二次電池では、サイクル後の抵抗比率が小さく、サイクル後の抵抗上昇が抑制されていることが分かる。
なお、セルロース繊維の長さ(B)が最も短い実施例3と、セルロース繊維による面積被覆率(R)が最も低い実施例6では、初期抵抗が特に低くなった。また、セルロース繊維による面積被覆率(R)が最も高い実施例5では、保存後容量維持率が最も高くなった。
また、実施例1〜9の結果と比較例1の結果との比較から、不織布層の厚み(A)が2μm以上である場合に、サイクル後の抵抗上昇が抑制され、かつ初期抵抗の増加も抑制できることが分かる。
なお、比較例1の結果については、Aが1μm以下である場合は、セルロース繊維と不織布層との密着が不十分になり、サイクル時の膨張および収縮によって、セルロース繊維と不織布層とが乖離し、不織布層と電極との間が乖離した結果、従来と同様にサイクル後の抵抗上昇が大きくなったと考えられる。一方、実施例7の結果については、Aが8μm以上である場合は、セパレータ全体の厚みが厚くなり、正極と負極との間の距離が長くなるため、初期抵抗が大きくなったと考えられる。
また、実施例1〜9の結果と比較例2の結果との比較から、セルロース繊維の長さ(B)が、5μm以上である場合に、上記の効果が奏されることが分かる。
なお、比較例2の結果については、Bが5μm未満である場合は、膨張および収縮に追従できるセルロース繊維の長さが不足し、サイクル後の抵抗上昇が大きくなったと考えられる。一方、実施例8の結果については、Bが20μm以上である場合は、セパレータ全体の厚みが厚くなり、正極と負極との間の距離が長くなるため、初期抵抗が大きくなったと考えられる。
また、実施例1〜9の結果と比較例3の結果との比較から、セルロース繊維による不織布層に対する面積被覆率(R)が40%以上である場合に、上記の効果が奏されることが分かる。
なお、比較例3の結果については、Rが40%未満である場合、電極の膨張および収縮への追従性が乏しくなり、サイクル後の抵抗上昇が大きくなったと考えられる。一方、実施例9の結果については、Rが80%超である場合、セパレータ全体の空隙率が低下するため、初期抵抗が大きくなったと考えられる。
また、比較例4および6の結果から、セルロース繊維の代わりに水溶性セルロースや変性ポレオレフィンを用いた場合は、サイクル特性が改善しないことが分かる。水溶性セルロースや変性ポリオレフィンの繊維では、セパレータ(不織布層)の表面を密に被覆してしまい、抵抗が上昇したためであると考えられる。これに対して、実施例のようにセルロース繊維を用いた場合は、セパレータ表面が密に被覆されず、初期抵抗を増加させずに、サイクル後の抵抗上昇を抑制できたと考えられる。
また、比較例5の結果については、ポリイミドは硬い材質であるため、サイクル時の電極の膨張および収縮に追従できず、サイクル後の抵抗上昇を抑制できなかったと考えられる。これに対して、実施例のように柔軟な材質であるセルロース繊維を用いた場合は、セルロース繊維がセパレータ表面を密に被覆しないため、初期抵抗を増加させずに、サイクル後の抵抗上昇を抑制できたと考えられる。
また、比較例7では、保存後の容量維持率が大幅に低下した。この結果から、不織布層が積層された多孔質基材を不織布の単層に代えたセパレータを用いた場合、強度が不足するとともに、ガーレー数が小さくなるため、短絡が発生し、保存後の容量維持率が低下したと考えられる。
また、多孔質基質のみからなるセパレータを用いた比較例8では、サイクル後の抵抗上昇は抑制されなかった。この結果から、多孔質基質のみからなるセパレータを用いた場合は、充放電サイクルによって、セパレータの孔の閉塞等、または、電極とセパレータとの間における電解液の不足が生じ、電池の抵抗が増加するため、サイクル後の抵抗上昇を抑制することが難しいと考えられる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 負極、2 正極、3 セパレータ、3a 空間、31 多孔質基材、32 不織布層、33 セルロース繊維、4 電極群、5 電池ケース、100 電池。

Claims (1)

  1. 負極、正極、前記負極と前記正極との間に介在するセパレータ、および、電解液を備え、
    前記セパレータは、フィルム状の多孔質基材と、該多孔質基材の両面に積層された不織布層と、前記不織布層の前記多孔質基材と反対側の表面に固着され、該表面から突出するセルロース繊維と、を含み、
    前記不織布層の厚みは2μm以上であり、
    前記セルロース繊維の長さは5μm以上であり、
    前記セルロース繊維が前記不織布層の表面を覆う面積の、前記不織布層の表面全体の面積に対する比率は、40%以上である、二次電池。
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