JP2018091611A - 内面螺旋溝付管および熱交換器と内面螺旋溝付管の製造方法 - Google Patents
内面螺旋溝付管および熱交換器と内面螺旋溝付管の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
従来、伝熱管には主に銅合金が使用されてきた。しかしながら、軽量化、低コスト化およびリサイクル性改善への要求からアルミニウム合金からなる伝熱管の開発要求が高まっている。
銅合金からなる内面螺旋溝付管(伝熱管)の製造方法として、管の内面に捻り溝を転造する溝転造法が知られている。しかしながら、アルミニウム合金からなる伝熱管では、耐圧性を高めるため底肉厚を厚くする必要があり、溝転造法での製造が困難であった。
また、溝転造法では溝プラグと管内面の摩擦によりアルミニウム滓が発生し、その除去に苦慮するといった問題もあった。このため、アルミニウム合金からなる内面螺旋溝付管を製造するには、溝転造法に代わる新たな製造方法が求められていた。
以下の特許文献1には、巻き取りドラムと巻き戻しドラムうち何れか一方をクレードルで支持し、ドラム間で搬送される管材に一方のドラムの周りを回転するフライヤによって捻りを付与するアルミニウム合金製の内面螺旋溝付管の製造装置が開示されている。
また、アルミニウム合金からなる内面螺旋溝付管を熱交換器の伝熱管に適用する場合、複数並設したフィンを貫通するように伝熱管を蛇行させて設け、必要に応じ伝熱管を拡管してフィンと伝熱管を接合している。このため、伝熱管は部分的に小さな曲率半径でヘアピン曲げ加工されることとなるが、近年では熱交換器の小型化が進められているので、伝熱管のヘアピン曲げ部分のピッチが小さくなり、伝熱管のヘアピン曲げ部分にしわや偏平部分発生の危険があり、場合によってはき裂や破断を生じるおそれがあった。
本発明において、前記集合組織がCu方位{112}{111}の集積とGoss方位{011}{100}の集積がなされた集合組織であることが好ましい。
本発明において、前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}{111}の集積度合いが、引抜管のCu方位{112}{111}の集積度合いよりも小さくされたことが好ましい。
本発明において、前記間欠的に形成されたウエルドラインの長さが5mm以下であることが好ましい。
本発明において、外周面に螺旋状のダイスマークが形成されており、前記ダイスマークの最大深さが35μm以下であることが好ましい。
本発明において、外周面における螺旋状の前記ダイスマークの捻り角が、前記螺旋状の前記フィンの捻り角より、1.0°以上大きいことが好ましい。
本発明の熱交換器は、先の何れかに記載の内面螺旋溝付管と、前記内面螺旋溝付管に結合された放熱板と、を備えたことを特徴とする。
本発明において、前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることが好ましい。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
図1および図2は、本発明に係る第1実施形態の内面螺旋溝付管からなる伝熱管81を備えた熱交換器80の概略図である。
この実施形態の熱交換器80は、冷媒を通過させるチューブとして伝熱管81を蛇行させて設け、この伝熱管81の周囲に複数のアルミニウム製の放熱板82を平行に配設した構造である。伝熱管81は、平行に配設した放熱板82を個々に貫通するように設けた複数の挿通孔を通過するように設けられている。
次に上述の熱交換器80に用いられる主管81Aとエルボ管81Bを構成する内面螺旋溝付管(伝熱管)10について具体的に説明する。
図3は第1実施形態の内面螺旋溝付管10の一部を断面とした斜視図であり、図4は縦断面図、図5は側面図である。
なお、ウエルドラインWLの数は、4つに限られない。ウエルドラインWLは、押出加工において装置内に収容したビレットを複数の流路に分けて圧送し合流させた部分に形成される。したがって、押出装置内の流路の数に応じてウエルドラインWLの数が決まる。
また、ウエルドラインWLは、形成時に固溶成分が析出するため優先的に腐食しやすいと言われている。本実施形態によれば、ウエルドラインWLが長さ方向に沿って間欠的に形成されているため、腐食部分が連続的に延びることがなく、腐食に伴う耐圧性の低下を抑制できる。
図10は、後述する製造装置により製造した内面螺旋溝付管10において外周部のレーザー顕微鏡による撮影画像であり、図10(a)はウエルドラインが残留した部分であり、図10(b)はウエルドラインが消失した部分である。図10に示すように、エッチングすることにより内面螺旋溝付管の外周部の細かいピットが顕在化する。図10(a)に示すように、外周面をレーザー顕微鏡により観察すると、ウエルドラインには、径が10μm以上のピットが形成されている。一方で、図10(b)に示すように、ウエルドライン消失部では、径が10μm以上のピットがわずかしか形成されていない。
本実施形態の内面螺旋溝付管10においてフィン3は捻り角θ1の螺旋状に形成されている。一方で、図5に示すように、ウエルドラインWLは、捻り角θ2の螺旋状に形成されている。αを内面螺旋溝付管10内周長とし、βを内面螺旋溝付管10の底肉厚としたときフィン3の捻り角θ1とウエルドラインWLの捻り角θ2は、以下の関係を満たす。
捻り角θ2は、例えば、図5に示すように内面螺旋溝付管10を側面視した場合、ウエルドラインWLが描く螺旋を観察し、その直線部分を抽出して内面螺旋溝付管10の中心軸線の平行線との交差角として把握される。
なお、図5(b)のダイスマークDMは、分かり易さのために1本のダイスマークDMが連続的に形成されているように図示されている。実際のダイスマークは、図23(a)および図24(a)に写真として示すように、長さ方向に沿って間欠的に形成されている。また、内面螺旋溝付管10の外周面の周方向に沿って複数のダイスマークDMが螺旋状かつ並行に延びている。
なお、本明細書においてダイスマークという用語は、押出工程により形成された凹部のみならず、係る凹部を有する素管に捻りを付与した後の伝熱管の凹部についても用いる。捻りが付与された後の管材の凹部は、厳密にはダイスマークに起因する凹部である。しかしながら、本明細書において分かり易さのため、これらを含む概念をダイスマークと呼ぶ。ダイスマークDMの捻り角はウエルドラインWLの捻り角と同じくθ2になるように形成されている。よって、上述の式の関係はダイスマークDMにおいても成立する。
ダイスマーク深さ計測は、例えば、株式会社キーエンス製走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)を用いて表面形状の測定を行うことができる。また、計測解析では、解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いてダイスマーク深さを計測できる。
まず走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)のステージに試料を置き、観察倍率50倍のもと、フォーカスを合わせた後に、観察高さ上下限範囲100μmとして、0.5μmピッチで表面形状の測定を行う。
次に解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いて得られた画像上のダイスマーク深さを計測する。計測前の前処理として、管表面の円弧を平坦にする傾き補正を行った。前処理を行った表面形状から、管円周方向に平行になるように直線を3点引き、得られた粗さ曲線から、最大谷深さ(Rv)、最大高さ(Rz)を求め、ダイスマーク深さの計測では、最大断面高さ(Rt)として計測を行う。
解析アプリケーションでは「表面粗さの定義」(JISB0601:2001)に基づいて、JISB0601−2001およびJIS 0601−1994で定義されている粗さパラメータで表面粗さ解析を実施した。
図23(b)に、図23(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。同様に、図24(b)に、図24(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。なお、図23および図24に例示するダイスマークDMを有する内面螺旋溝付管は、図8に示す製造装置で製造された本実施形態の内面螺旋溝付管10の一例である。
アルミニウムまたはアルミニウム合金は多結晶体であり、通常個々の結晶粒の方向はランダムであるが、多結晶体が塑性変形を受けた場合に結晶粒の方位が特定の方向に集合し易くなる場合があり、この特定の方向を優先方位と称し、優先方位を有する多結晶体のことを集合組織を有する材料と呼称することができる。塑性加工による集合組織の形成は、特定の結晶面と結晶方向でのすべりに起因した結晶回転の結果として知られている。
本実施形態の内面螺旋溝付管10は後述する如く図6に示す構造の素管(直線溝付管)10Bに対し、後述する製造装置Aを用いて捻り引抜き加工を施して得られる。
即ち、ダイスを用いた引抜きと同時に素管10Bに捻り加工を行うことで内面螺旋溝付管10が得られる。
このため、素管10Bの管壁には、引抜きと捻りに起因する所定の塑性加工が施される結果、管壁の特定の方向に集合組織が発達した金属組織を有する内面螺旋溝付管10が得られる。
例えば、X線反射法におけるX線回折条件として、Cu管球、40kV−40mAを用い、α角度:20〜90゜(Step:5.0゜)の条件で求めることができ、測定面として、引抜き方向をRD、走査方向をTD、管の半径方向をNDと規定することができる。
これらの極点図に対しそれらのRD−TD方向に捻り角に対応する20°の補正を加えた極点図を図14、図15、図16にそれぞれ示す。
また、これら実施例試料に対し、後述する製造装置Aを用いて捻りを略し、引抜きのみを施して得た比較例試料の(200)極点図、(220)極点図、(111)極点図を図17、図18、図19に示す。
図11〜図13に示す極点図では主な特徴を確認できないが、20°補正後の図14〜図16に示す極点図は図17〜図19に示す引抜き管の極点図に類似したパターンを示すことがわかる。
このことから、補正値20°が内面螺旋溝付管の捻り角と一致することから、内面螺旋溝付管の集合組織の結晶方位は引抜き管に比べ、その引抜き方向に20°の捻れを生じていることがわかった。
これらの対比から、内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数では、極点図同様に20°の補正を加えることで、引抜き管と同様の結晶方位図を得ることができた。
集合組織について面心立方晶に観察される代表的な優先方位の位置から、引抜き管、内面螺旋溝付管ともに圧延集合組織であるCu方位{112}<111>の集積を認めることができた。
次に、Goss方位{011}<100>の集積が認められた。
また、これらの集積の度合いは、引抜き管に比べて内面螺旋溝付管の方が弱い傾向を示していることがわかる。
これらの分析から、内面螺旋溝付管の集合組織は、Cu方位、Goss方位が優先的に配向した集合組織を示していることがわかり、集合組織の方位は、RD(引抜き方位)に対し、RD−TD方向に捻り角に依存した20゜の傾きを有した集合組織であると判断できる。
このため、内面螺旋溝付管10を熱交換器80の伝熱管81、エルボ管81Bとして利用し、小さな曲率半径でヘアピン曲げ加工したとしても、曲げ部分にしわや偏平部分が発生し難く、き裂や破断を生じ難い伝熱管81、エルボ管81Bを提供できる特徴がある。
以下、本願発明に係る内面螺旋溝付管10の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。内面螺旋溝付管10の製造方法は、押出成形工程と捻り引抜き工程をこの順で含む。
まず、押出成形工程について説明する。
図6は、押出成形工程により成形された素管(直線溝付管)10Bの縦断面図であり、図7は、素管10Bの斜視図である。
アルミニウム材料からなるビレットを押出成形することにより、図7に示すように、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝4Bが周方向に間隔をおいて形成された素管10Bを製造(直線溝付管押出工程)する。押出成型工程により成形された素管10Bには、素管10Bの長さ方向に直線状に延びる4つのウエルドラインWLが形成される。4つのウエルドラインWLは、素管10Bの周方向に沿って等間隔(90°間隔)に位置する。
次に、捻り引抜き工程について説明する。
捻り引抜き工程は、引抜きを行いながら上述の素管10Bに捻りを付与することで、ウエルドラインWL、フィン3Bおよび直線溝4Bを螺旋状とする工程である。
本明細書において、「前段」および「後段」とは、管材の加工順序に沿った前後関係(すなわち、上流および下流)を意味し、装置内の各部位の配置を意味するものではない。
管材は内面螺旋溝付管の製造装置において、前段(上流)側から後段(下流)側に搬送される。前段に配置される部位は、必ずしも前方に配置されるとは限らず、後段に配置される部位は、必ずしも後方に配置されるとは限らない。
図8は、直線溝付管(素管)10Bに2回の捻り引抜きを付与して内面螺旋溝付管(伝熱管)10を製造する製造装置Aを示す正面図である。まず、製造装置Aについて説明した後に、製造装置Aを用いた捻り引抜き工程について説明する。
公転機構30は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを含む回転シャフト35と、駆動部39と、前方スタンド37Aと、後方スタンド37Bと、を有している。
公転機構30は、回転シャフト35並びに、回転シャフト35に固定された第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および公転フライヤ23を回転させる。
また、公転機構30は、回転シャフト35と同軸上に位置し回転シャフト35に支持される浮き枠34の静止状態を維持する。これにより、浮き枠34に支持された巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1の静止状態を維持する。
駆動モータ39cは、直動シャフト39fを回転させる。直動シャフト39fは、前方スタンド37Aおよび後方スタンド37Bの下部において前後方向に延びている。
前方シャフト35Aの前方の端部35Abは、前方スタンド37Aを貫通した先端にプーリ39bが取り付けられている。プーリ39bは、ベルト39aを介し直動シャフト39fと連動する。同様に、後方シャフト35Bの後方の端部35Bbは、後方スタンド37Bを貫通した先端にプーリ39eが取り付けられ、ベルト39dを介し直動シャフト39fと連動する。これにより、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、公転回転中心軸Cを中心に同期回転する。
浮き枠34は、回転シャフト35の前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの互いに向かい合う端部35Aa、35Baに軸受34aを介し支持されている。また、浮き枠34は、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を支持する。
巻き出しボビン11には、直線溝4Bが形成された素管10B(図6参照)が巻き付けられている。巻き出しボビン11は、素管10Bを巻き出して後段に供給する。
巻き出しボビン11は、ボビン支持シャフト12に着脱可能に取り付けられている。
第1のガイドキャプスタン18は、円盤形状を有している。第1のガイドキャプスタン18には、巻き出しボビン11から繰り出された直線溝付管10Bが1周巻き掛けられる。第1のガイドキャプスタン18の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第1のガイドキャプスタン18は、素管10Bを第1の方向D1に沿って公転回転中心軸C上に誘導する。
第1のガイドキャプスタン18は、自転回転自在に浮き枠34に支持されている。また第1のガイドキャプスタン18の外周には、自転回転自在のガイドローラ18bが並んで配置されている。本実施形態の第1のガイドキャプスタン18は、自身が自転回転するとともにガイドローラ18bが転動するが、何れか一方が回転すれば、直線溝付管10Bをスムーズに搬送できる。なお、図8において、ガイドローラ18bの図示は省略されている。
第1の引抜きダイス1は、素管10B(管材5)を縮径する。第1の引抜きダイス1は、浮き枠34に固定されている。第1の引抜きダイス1は、第1の方向D1を引抜き方向とする。第1の引抜きダイス1の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。また、第1の方向D1は、公転回転中心軸Cと平行である。
第1の引抜きダイス1には、浮き枠34に固定された潤滑油供給装置9Aにより潤滑油が供給される。これにより第1の引抜きダイス1における引抜力を軽減できる。
第1の引抜きダイス1を通過した管材5は、浮き枠34の前方壁34bに設けられた貫通孔を介して、前方シャフト35Aの内部に導入される。
第1の公転キャプスタン21は、円盤形状を有している。第1の公転キャプスタン21は、中空の前方シャフト35Aの内外を径方向に貫通する横孔35Acに配置されている。第1の公転キャプスタン21は、円盤の中心を回転軸J21として、回転シャフト35(前方シャフト35A)の外周部に固定された支持体21aに自転回転が自在な状態で支持されている。
第1の公転キャプスタン21には、公転回転中心軸C上の第1の方向D1に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第1の公転キャプスタン21は、管材5を巻き掛けて前方シャフト35Aの内部から外部に引き出して公転フライヤ23に誘導する。
公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で、管材5の管路を反転させる。公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1に搬送される管材5を反転させ、搬送方向を第2の引抜きダイス2の引抜き方向である第2の方向D2に向ける。より具体的には、公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22に管材5を誘導する。
ガイドローラ23aは、公転回転中心軸Cに対し外側に湾曲する弓形状を形成して並んでいる。ガイドローラ23a自身が転動して管材5をスムーズに搬送する。公転フライヤ23は、公転回転中心軸Cを中心として、浮き枠34並びに浮き枠34内に支持された第1の引抜きダイス1および巻き出しボビン11の周りを回転する。
また、図8において、管材5がガイドローラ23aの外側を通過する場合を例示した。
しかしながら、公転フライヤ23の回転速度が速い場合には、管材5が遠心力により公転フライヤから脱線するおそれがある。このような場合は、管材5の外側に更にガイドローラ23aを設けることが好ましい。
公転フライヤ23と同等の重量を有し前方シャフト35Aから後方シャフト35Bに延びて公転フライヤ23と同期回転するダミーフライヤを複数設けてもよい。これにより、回転シャフト35の回転を安定させることができる。
第2の公転キャプスタン22は、第1の公転キャプスタン21と同様に、円盤形状を有する。第2の公転キャプスタン22は、後方シャフト35Bの端部35Bbの先端に設けられた支持体22aに自転回転が自在な状態で支持されている。また、第2の公転キャプスタン22の外周には、自転回転自在のガイドローラ22cが並んで配置されている。本実施形態の第2の公転キャプスタン22は、自身が自転回転するとともにガイドローラ22cが転動するが、何れか一方が回転すれば、管材5をスムーズに搬送できる。
第2の公転キャプスタン22には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第2の公転キャプスタン22は、巻き掛けられた管材を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に繰り出す。
第2の引抜きダイス2は、第2の公転キャプスタン22の後段に配置される。第2の引抜きダイス2は、反対の第2の方向D2を引抜き方向とする。第2の方向D2は、公転回転中心軸Cと平行な方向である。第2の方向D2は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1と反対である。管材5は、第2の方向D2に沿って第2の引抜きダイス2を通過する。第2の引抜きダイス2は、第2の引抜きダイス2は、地面Gに対して静止している。第2の引抜きダイス2の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。
第2の引抜きダイス2における縮径および捻り付与により、管材5は、中間捻り管10Cから内面螺旋溝付管10となる。
第2のガイドキャプスタン61は、円盤形状を有している。第2のガイドキャプスタン61の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第2のガイドキャプスタン61には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。
巻き取りボビン71は、内面螺旋溝付管10の管路の終端に設けられ、内面螺旋溝付管10を回収する。巻き取りボビン71の前段には、誘導部72が設けられている。誘導部72は、トラバース機能を有し内面螺旋溝付管10を巻き取りボビン71に整列巻きさせる。
上述した製造装置Aを用いて、内面螺旋溝付管10を製造する方法について説明する。
まず、予備工程として、素管(直線溝付管)10Bを巻き出しボビン11にコイル状に巻き付ける。更に、巻き出しボビン11を製造装置Aの浮き枠34にセットする。また、巻き出しボビン11から素管10B(管材5)を繰り出して、予め素管10Bの管路をセットする。具体的には、素管10Bを、第1のガイドキャプスタン18、第1の引抜きダイス1、第1の公転キャプスタン21、公転フライヤ23、第2の公転キャプスタン22、第2の引抜きダイス2、第2のガイドキャプスタン61、巻き取りボビン71の順に、通過させて、セットする。
まず、巻き出しボビン11から素管10B(管材5)を順次繰り出していく。
次に、巻き出しボビン11から繰り出された素管10Bを、第1のガイドキャプスタン18に巻き掛ける。第1のガイドキャプスタン18は、素管10Bを公転回転中心軸C上に位置する第1の引抜きダイス1のダイス孔に誘導する(第1の誘導工程)。
加工域の長さと、限界捻り角(座屈を生じないで捻ることができる最大捻り角)の関係には、相関関係があり、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても管材5に座屈が生じにくい。第1のガイドキャプスタン18を設けることで、第1の引抜きダイス1の前段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。また、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との距離を近づけることで加工域を短く設定し、座屈を生じさせずに管材5に大きな捻り、例えば10〜45゜の捻りを付与できる。
一方で、縮径率が大きくなり過ぎると加工限界で破断を生じ易くなるので、40%以下とするのが好ましい。
また、第2の捻り引抜き工程により集合組織の発達が進行し、目的の捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が発達する。
なお、第1の引抜きダイス1において、大きな縮径(例えば縮径率30%以上の縮径)を行うと管材5が加工硬化するために、第2の引抜きダイス2での大きな縮径を行うことが困難になる。したがって、第1の引抜きダイス1の縮径率と第2の引抜きダイス2の縮径率との合計は、4%以上50%以下とすることが好ましい。
<空引き工程>
次に、管材5を仕上げ引抜きダイス70に通過させる(仕上げ引抜き工程)。管材5は、仕上げ引抜きダイス70を通過することで、表面が整形されるとともに肉厚の偏肉が低減される。また、管材5に若干のつぶれ等の変形が生じていた場合でも、この仕上げ引抜き工程を経ることにより、その変形も修正して、所定の真円度の管材5とすることができる。なお、仕上げ引抜きダイス70の引抜き荷重に対して管材5を搬送させる力は、巻き取りボビン71に設けられた駆動モータ74により付与される。
次に、管材5は、巻き取りボビン71に巻き付けられ回収される。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により、管材5の搬送速度と同期して回転することで、管材5を弛みなく巻き取ることができる。
以上の工程を経て、製造装置Aを用いて、内面螺旋溝付管10を製造できる。
また、本実施形態の捻り工程によれば複数回の捻りを繰り返す。これにより、押出成形工程で形成されたウエルドラインWLは、周囲の組織と混ざり合って境界が曖昧となる。これにより、ウエルドラインWLを部分的に消失させて間欠的に形成でき、結果として耐圧性能の高い内面螺旋溝付管10を製造できる。
<O材化工程>
次に、O材化工程について説明する。
O材化工程は、捻り工程の後に行われる。O材化工程は、管材5に焼きなまし処理を施す熱処理工程である。O材化工程を行うことによって、アルミ材料の歪みを除去し、内部応力を除去できる。
これらにより、ウエルドラインWLを螺旋状に且つ間欠的に形成することによる耐圧性の向上の効果と、螺旋状のフィン3による熱交換率の向上の効果と、を同時に達成する内面螺旋溝付管10を製造できる。また、捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を発達させることができるので、小さな曲率でヘアピン曲げを施してもき裂や破断を生じ難い内面螺旋溝付管10を製造できる。
内面螺旋溝付管10は、フィン3の捻り角θ1を大きくすることで熱交換効率を高めることができる。また、内面螺旋溝付管10は、肉厚を薄くすることで、軽量化するとともに材料費を低減して安価とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、軽量、安価かつ熱交換効率の高い内面螺旋溝付管10を製造できる。
本実施形態の捻り工程は、少なくとも2回の捻り引抜き工程を経て管材5に捻りを付与するものである。このため、各段階の捻り引抜き工程で付与する捻り角を積み上げて大きな捻り角を付与することができる。
以上の説明の工程により、図3〜図5に示す構成の内面螺旋溝付管10を製造することができる。
各サンプルに対して、外径、最大底肉厚と最小底肉厚の差、外周面における捻り角、捻り角比ρ、ダイスマークDMについて螺旋ピッチに対する1周分の長さの比、ダイスマークDMの深さ、偏平率が異なる。各サンプルの各パラメータは、後段の表1にまとめる。
なお、各サンプルとしては、スリムフィンタイプの伝熱管を用いた。
各サンプルの伝熱管を曲率半径(R=15)でヘアピン状に180°曲げる曲げ加工を行った。各条件n=20で評価し、1つでも伝熱管の外周面に亀裂が観察されたものを×とし、亀裂が観察されなかったものを〇とした。
評価結果を表1にまとめる。
ウエルドラインの健全性を確かめる試験として、頂角60度円錐(材質SS400)をパイプに押し込む方法で拡管試験を行う。パイプは長さ40mm切り出し、端面は旋盤を使用して平滑に仕上げた。拡管試験時には円錐のパイプと接触する面には牛脂を刷毛にて塗り付け、焼き付き発生による結果のバラツキを抑えた。
以上の条件において、伝熱管に割れが生じた時点での拡管荷重(伝熱管の長さ方向に沿って円錐に加えた力)および押込み量を測定した。
なお、各サンプルとしては、スリムフィンタイプの伝熱管を用いた。
表1のサンプル1から一部を切り出し、管壁を切り開いてプレス装置で軽く圧を加えて平板状の試料(40mmL×29mmW×0.5mmt)に加工した上で、この試料の外表面(管壁の外表面)に対しX線反射法を用いて(200)、(220)、(111)不完全極点図を測定した。
例えば、X線反射法におけるX線回折条件として、Cu管球、40kV−40mAを用い、α角度:20〜90゜(Step:5.0゜)の条件で求めることができ、測定面として、引抜き方向をRD、走査方向をTD、管の半径方向をNDと規定する。
これら極点図に対しそれらのRD−TD方向に捻り角に対応する20°の補正(捻り角と同じ傾きの補正)を加えた極点図を図14、図15、図16にそれぞれ示す。
また、これら実施例試料に対し、製造装置Aを第1の引抜きダイスと第2の引抜きダイスを通過する場合に捻りを略し、引抜きのみを施して得たサンプルNo.4(引抜き管)の(200)極点図、(220)極点図、(111)極点図を図17、図18、図19に示す。
図11〜図13に示す極点図では主な特徴を確認できないが、20°補正後の図14〜図16に示す極点図は図17〜図19に示す引抜き管の極点図に類似したパターンを示すことがわかる。
このことから、補正値20°が内面螺旋溝付管の捻り角と一致することから、内面螺旋溝付管の集合組織の結晶方位は引抜き管に比べ、その引抜き方向に20°の捻れを生じていることがわかった。
図11〜図13に示すサンプルの不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図20に示し、図14〜図16に示す20°補正後のサンプルの不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図21に示し、図17〜図19に示す引抜き管の不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図22に示す。
図20と図21の対比から、図20に示す内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数では、図21に示すように極点図同様に20°の補正を加えることで、図22に示す引抜き管の結晶方位分布関数と同様の結晶方位図を得ることができた。
次に、これらのサンプルにおいて、Goss方位{011}<100>の集積が認められた。
また、これらの集積の度合いは、図22に示す引抜き管に比べて内面螺旋溝付管の方が弱い傾向を示していることがわかる。
これらの分析から、内面螺旋溝付管の集合組織は、Cu方位、Goss方位が優先的に配向した集合組織を示していることがわかり、集合組織の方位は、RD(引抜き方位)に対し、RD−TD方向に捻り角に依存した20°の傾きを有した集合組織であると判断できる。
また、表1に示す耐圧性評価においてNo.1のサンプル(内面螺旋溝付管)とNo.9〜No.10のサンプル(直線溝付管)を対比すると、内面螺旋溝付管の方が直線溝付管よりも耐圧性の面で優れていることもわかった。
このことは、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を内面螺旋溝付管の捻り角20°に依存した傾斜をもつように生成することで内面螺旋溝付管の強度も向上できることを意味している。
内面螺旋溝付管のCu方位集積度とGoss方位集積度が、直線溝付管の引抜き管のCu方位集積度とGoss方位の集積度よりも低くなり、集合組織の集積度合いが低いと言うことは、引抜き管の組織に比べ、内面螺旋溝付管の組織の異方性を緩和できていることと同義となり、このためへピン曲げなどの加工による破断を抑制できたと考えられる。
そのため、内面螺旋溝付管の組織の異方性を低減でき、限界引抜き量を向上させた結果、高い捻り角の内面螺旋溝とフィンを形成できると同時に、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を内面螺旋溝付管の捻り角20゜に依存した傾斜をもつように生成できると推定できる。
本発明において、前記集合組織がCu方位{112}<111>の集積とGoss方位{011}<100>の集積がなされた集合組織であることが好ましい。
本発明において、前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}<111>の集積度合いが、引抜管のCu方位{112}<111>の集積度合いよりも小さくされたことが好ましい。
Claims (11)
- 内面に長さ方向に沿う複数の螺旋溝が周方向に間隔をおいて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付管であって、前記複数の螺旋溝がいずれも同一の捻り角で管本体の長さ方向に螺旋状に形成されるとともに、前記管本体の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が形成されたことを特徴とする内面螺旋溝付管。
- 前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付管。
- 前記集合組織がCu方位{112}{111}の集積とGoss方位{011}{100}の集積がなされた集合組織であることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付管。
- 前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}{111}の集積度合いが、引抜管のCu方位{112}{111}の集積度合いよりも小さくされたことを特徴とする請求項3に記載の内面螺旋溝付管。
- 前記管本体の外周面に螺旋状のウエルドラインが形成され、前記ウエルドラインが長さ方向に沿って間欠的に螺旋状に形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管。
- 前記間欠的に形成されたウエルドラインの長さが5mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の内面螺旋溝付管。
- 外周面に螺旋状のダイスマークが形成されており、前記ダイスマークの最大深さが35μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の内面螺旋溝付管。
- 外周面における螺旋状の前記ダイスマークの捻り角が、前記螺旋状の前記フィンの捻り角より、1.0°以上大きいことを特徴とする請求項7に記載の内面螺旋溝付管。
- 請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の内面螺旋溝付管と、前記内面螺旋溝付管に結合された放熱板と、を備えたことを特徴とする熱交換器。
- 内周面に長さ方向に沿って直線的に延びる複数のフィンを有し、外周面に長さ方向に沿って直線的に延びるダイスマークを有するアルミニウム製の素管を押出により成形する押出成形工程と、
前記素管に引抜きとともに捻り角が5°以上の捻りを付与する捻り引抜き工程と、
前記引抜き工程の後に縮径率が10%以上の引抜きを行う空引き工程を施すことによって、前記素管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織 を形成することを特徴とする内面螺旋溝付管の製造方法。 - 前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることを特徴とする請求項10に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
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