JP2018091611A - 内面螺旋溝付管および熱交換器と内面螺旋溝付管の製造方法 - Google Patents

内面螺旋溝付管および熱交換器と内面螺旋溝付管の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】大きな捻り角の内面螺旋溝を、アルミニウム合金からなる管材に形成した熱交換器の伝熱管で、ヘアピン曲げ部分を形成したとしても、き裂や破断を生じることのない内面螺旋溝付管を提供する。【解決手段】管本体10Aの内周面10bに、長さ方向に連通する複数の捻り流路を設けたアルミニウム製の内面螺旋溝付管10であって、前記管本体10Aのの内周面10bに、長さ方向に延在する螺旋状のウエルドラインWLが形成されたことを特徴とする。【選択図】図3

Description

本願発明は、熱特性および拡管性に優れた内面螺旋溝付管および熱交換器と内面螺旋溝付管の製造方法に関する。
エアコンや給湯器用などのフィンチューブタイプの熱交換器には、アルミニウムフィン材に冷媒を通すための伝熱管が設けられている。伝熱管は、冷媒との熱交換効率を高めるために内面に連続した螺旋溝が設けられた内面螺旋溝付管が主流となっている。
従来、伝熱管には主に銅合金が使用されてきた。しかしながら、軽量化、低コスト化およびリサイクル性改善への要求からアルミニウム合金からなる伝熱管の開発要求が高まっている。
銅合金からなる内面螺旋溝付管(伝熱管)の製造方法として、管の内面に捻り溝を転造する溝転造法が知られている。しかしながら、アルミニウム合金からなる伝熱管では、耐圧性を高めるため底肉厚を厚くする必要があり、溝転造法での製造が困難であった。
また、溝転造法では溝プラグと管内面の摩擦によりアルミニウム滓が発生し、その除去に苦慮するといった問題もあった。このため、アルミニウム合金からなる内面螺旋溝付管を製造するには、溝転造法に代わる新たな製造方法が求められていた。
以下の特許文献1には、巻き取りドラムと巻き戻しドラムうち何れか一方をクレードルで支持し、ドラム間で搬送される管材に一方のドラムの周りを回転するフライヤによって捻りを付与するアルミニウム合金製の内面螺旋溝付管の製造装置が開示されている。
特開昭62−240108号公報
特許文献1に記載の内面螺旋溝付管の製造装置では、フライヤの回転に伴い管材に捻り応力のみを付与するために、管材に座屈が生じやすい。このため、特許文献1に記載の内面螺旋溝付管の製造装置では、アルミニウム合金の管材を加工しようとしても10°以下の小さな捻りしか付与できないという問題があった。
また、アルミニウム合金からなる内面螺旋溝付管を熱交換器の伝熱管に適用する場合、複数並設したフィンを貫通するように伝熱管を蛇行させて設け、必要に応じ伝熱管を拡管してフィンと伝熱管を接合している。このため、伝熱管は部分的に小さな曲率半径でヘアピン曲げ加工されることとなるが、近年では熱交換器の小型化が進められているので、伝熱管のヘアピン曲げ部分のピッチが小さくなり、伝熱管のヘアピン曲げ部分にしわや偏平部分発生の危険があり、場合によってはき裂や破断を生じるおそれがあった。
このため本願出願人は、大きな捻り角の内面螺旋溝をアルミニウム合金からなる管材に形成できる技術を開発中であり、熱交換器の伝熱管として利用し、ヘアピン曲げ部分を形成したとしても、き裂や破断を生じることのない内面螺旋溝付管を提供することを本願発明の目的とする。
本願発明の一態様である内面螺旋溝付管は、内面に長さ方向に沿う複数の螺旋溝が周方向に間隔をおいて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付管であって、前記複数の螺旋溝がいずれも同一の捻り角で管本体の長さ方向に螺旋状に形成されるとともに、前記管本体の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が形成されたことを特徴とする。
本発明において、前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることが好ましい。
本発明において、前記集合組織がCu方位{112}{111}の集積とGoss方位{011}{100}の集積がなされた集合組織であることが好ましい。
本発明において、前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}{111}の集積度合いが、引抜管のCu方位{112}{111}の集積度合いよりも小さくされたことが好ましい。
本発明において、前記管本体の外周面に螺旋状のウエルドラインが形成され、前記ウエルドラインが長さ方向に沿って間欠的に螺旋状に形成されたことが好ましい。
本発明において、前記間欠的に形成されたウエルドラインの長さが5mm以下であることが好ましい。
本発明において、外周面に螺旋状のダイスマークが形成されており、前記ダイスマークの最大深さが35μm以下であることが好ましい。
本発明において、外周面における螺旋状の前記ダイスマークの捻り角が、前記螺旋状の前記フィンの捻り角より、1.0°以上大きいことが好ましい。
本発明の熱交換器は、先の何れかに記載の内面螺旋溝付管と、前記内面螺旋溝付管に結合された放熱板と、を備えたことを特徴とする。
本発明の製造方法は、内周面に長さ方向に沿って直線的に延びる複数のフィンを有し、外周面に長さ方向に沿って直線的に延びるダイスマークを有するアルミニウム製の素管を押出により成形する押出成形工程と、前記素管に引抜きとともに捻り角が5°以上の捻りを付与する捻り引抜き工程と、前記引抜き工程の後に縮径率が10%以上の引抜きを行う空引き工程を施すことによって、前記素管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を形成することを特徴とする。
本発明において、前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることが好ましい。
本願発明によれば、大きな捻り角の内面螺旋溝をアルミニウム合金からなる管材に備えた内面螺旋溝付管であって、熱交換器の伝熱管として利用し、ヘアピン曲げ部分を形成したとしても、き裂や破断を生じることのない内面螺旋溝付管とそれを備えた熱交換器を提供できる。
実施形態の熱交換器の正面図である。 実施形態の熱交換器の部分斜視図である。 実施形態の内面螺旋溝付管の横断面図である。 実施形態の内面螺旋溝付管の縦断面図である。 実施形態の内面螺旋溝付管の側面図であり、(a)はウエルドラインの一例を示す図、(b)はダイスマークの一例を示す図である。 実施形態の製造方法における素管(直線溝付管)の縦断面図である。 実施形態の製造方法における素管(直線溝付管)の斜視図である。 実施形態の製造方法において捻り工程を行う製造装置を示す正面図である。 図8における矢印IX方向から見た浮き枠の平面図である。 内面螺旋溝付管外周部のレーザー顕微鏡による撮影画像であり、(a)はウエルドラインが残留した部分であり、(b)はウエルドラインが消失した部分である。 実施例で得られた内面螺旋溝付管の結晶方位を解析するための(200)不完全極点図である。 実施例で得られた内面螺旋溝付管の結晶方位を解析するための(220)不完全極点図である。 実施例で得られた内面螺旋溝付管の結晶方位を解析するための(111)不完全極点図である。 図11に示す極点図をRD−TD方向に20°補正した後の(200)極点図である。 図12に示す極点図をRD−TD方向に20°補正した後の(220)極点図である。 図13に示す極点図をRD−TD方向に20°補正した後の(111)極点図である。 比較例として作成した直線溝付引抜管の結晶方位を解析するための(200)不完全極点図である。 比較例として作成した直線溝付引抜管の結晶方位を解析するための(220)不完全極点図である。 比較例として作成した直線溝付引抜管の結晶方位を解析するための(111)不完全極点図である。 実施例で得られた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を0゜、25゜、45゜。90゜毎に示す説明図である。 実施例で得られた内面螺旋溝付管の0゜、25゜、45゜。90゜の場合毎の結晶方位分布関数に、20°補正を加えた結晶方位分布関数を示す説明図である。 比較例として得られた直線溝付管の0゜、25゜、45゜。90゜の場合毎の結晶方位分布関数を示す説明図である。 (a)はダイスマークの一例の画像であり、(b)は係るダイスマークの深さの測定グラフである。 (a)はダイスマークの一例の画像であり、(b)は係るダイスマークの深さの測定グラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
[熱交換器]
図1および図2は、本発明に係る第1実施形態の内面螺旋溝付管からなる伝熱管81を備えた熱交換器80の概略図である。
この実施形態の熱交換器80は、冷媒を通過させるチューブとして伝熱管81を蛇行させて設け、この伝熱管81の周囲に複数のアルミニウム製の放熱板82を平行に配設した構造である。伝熱管81は、平行に配設した放熱板82を個々に貫通するように設けた複数の挿通孔を通過するように設けられている。
熱交換器80において伝熱管81は、放熱板82を直線状に貫通する複数のU字状の主管81Aと、隣接する主管81Aの隣り合う端部開口同士をU字形のエルボ管81Bで接続してなる。また、放熱板82を貫通している伝熱管81の一方の端部側に冷媒の入口部87aが形成され、伝熱管81の他方の端部側に冷媒の出口部87bが形成されることで熱交換器80が構成されている。伝熱管81においてU字状に折曲された部分がヘアピン曲げ部分とされ、エルボ管81BにおいてU字状に折曲された部分がヘアピン曲げ部分とされる。
[内面螺旋溝付管(伝熱管)]
次に上述の熱交換器80に用いられる主管81Aとエルボ管81Bを構成する内面螺旋溝付管(伝熱管)10について具体的に説明する。
図3は第1実施形態の内面螺旋溝付管10の一部を断面とした斜視図であり、図4は縦断面図、図5は側面図である。
内面螺旋溝付管10は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いることができる。内面螺旋溝付管10にアルミニウム合金を用いる場合は、そのアルミニウム合金に特に制限はなく、JISで規定される1050、1100、1200等の純アルミニウム系、あるいは、これらにMnを添加した3003に代表される3000系のアルミニウム合金等を適用できる。また、これら以外にJISに規定されている5000系〜7000系のアルミニウム合金のいずれかを用いて内面螺旋溝付管10を構成しても良く、JISに規定されていないアルミニウム合金を用いても良いのは勿論である。なお、本明細書において「アルミニウム」とは、アルミニウム合金および純アルミニウムからなるものを包含する概念とする。
内面螺旋溝付管10は、横断面の外形状が円形の管本体10Aからなる。管本体10Aの外周面10aの直径は、例えば小型の熱交換器対応の場合、4mm以上15mm以下である。管本体10Aの内周面10bには、長さ方向に沿って螺旋状に形成された複数のフィン3が設けられている。フィン3の間には、フィン3の先端と比較して内径が大きく形成された螺旋溝4が形成されている。
本実施形態において、フィン3は、例えば管本体10Aの内周方向に30個〜60個設けられている。フィン3の高さ(すなわち半径方向の寸法)は、0.1mm以上0.4mm以下である。また、管本体10Aの底肉厚c(すなわち、螺旋溝4の底部に対応する管本体10Aの厚さ)は、0.2mm以上0.8mm以下である。フィン3の頂角(フィン3の側面同士のなす角)は、10°〜30°である。螺旋状に形成されたフィン3の捻り角θ1(捻り角)は、5°以上45°以下である。
図3に示すように、管本体10Aの外周面10aには、周方向に沿って等間隔で並ぶ4つのウエルドラインWLが設けられている。また、図5(a)に示すように、ウエルドラインWLは、管本体10Aの外周面10aに螺旋状に形成されている。ウエルドラインWLは、押出加工を行う際に素材同士が合流して溶着した部分である。ウエルドラインWLは、外周面10aから内周面10b側に向かう深さ方向に延在されている。
なお、ウエルドラインWLの数は、4つに限られない。ウエルドラインWLは、押出加工において装置内に収容したビレットを複数の流路に分けて圧送し合流させた部分に形成される。したがって、押出装置内の流路の数に応じてウエルドラインWLの数が決まる。
本実施形態において、螺旋状に形成されたウエルドラインWLの捻り角θ2は、10°以上45°以下である。 後段において説明するように、本実施形態の内面螺旋溝付管10は、直線状のフィン3と直線状のウエルドラインWLとを備える素管10B(図6参照)に捻り加工を付与することにより形成されている。
内面螺旋溝付管10の内部には、例えば12MPa以上の高圧の冷媒が流れる。したがって、内面螺旋溝付管10には、内部圧に対する十分な耐圧強度が求められる。本実施形態の内面螺旋溝付管10によれば、ウエルドラインWLは、螺旋状に形成されていることにより、耐圧強度が高められている。内面螺旋溝付管10の内部圧が高まると内面螺旋溝付管10の内周面10bには、内面螺旋溝付管10を径方向外側に押し広げる応力が加わる。このため、内面螺旋溝付管10において、内部圧の高まりに起因する亀裂は、長手方向に沿って形成されやすい。また、一方で、ウエルドラインWLは、他の部位と比較して組織が異なるため亀裂の起点となり易い。本実施形態によれば、ウエルドラインWLが、螺旋状に形成されているために、内部圧の高まった場合であってもウエルドラインWLに沿って亀裂が生じ難い。このため、耐圧性に優れた内面螺旋溝付管10を提供できる。
内面螺旋溝付管10のウエルドラインWLは、捻り角θ2の螺旋を描く。したがって、螺旋状に形成されたウエルドラインWLが、内圧の高まりに応じて亀裂が生じようとする方向である内面螺旋溝付管10の長さ方向に対して、十分に傾斜して延びる。これによりウエルドラインWLに沿って亀裂が生じることをより効果的に抑制できる。
本実施形態において、螺旋状のウエルドラインWLは、長さ方向に沿って間欠的に形成されている。すなわち、ウエルドラインWLには、部分的に途切れた部分が形成される。上述したように、ウエルドラインWLは、押出加工を行った際の素材同士の溶着部分である。このため、内面螺旋溝付管10は、ウエルドラインWLの組織は、他の部分と異なる組織となる。本実施形態の内面螺旋溝付管10は、後段に説明するように、押出加工で形成した素管に対して引抜きと捻りを繰り返して付与して製造される。ウエルドラインWLは、複数回の加工が付与されることで周囲の組織と混ざり合い、境界が曖昧となる。これにより、ウエルドラインWLは、部分的に消失し、間欠的となる。
本実施形態によれば、ウエルドラインWLが間欠的に形成されている。また、ウエルドラインWLが消失している部分は、周囲の組織と混ざって均一化されている。このために、ウエルドラインWLに沿う内面螺旋溝付管10の強度を高めることができる。これにより、耐圧性の高い内面螺旋溝付管10を提供できる。
また、ウエルドラインWLは、形成時に固溶成分が析出するため優先的に腐食しやすいと言われている。本実施形態によれば、ウエルドラインWLが長さ方向に沿って間欠的に形成されているため、腐食部分が連続的に延びることがなく、腐食に伴う耐圧性の低下を抑制できる。
間欠的に形成されたそれぞれのウエルドラインWLの長さは、5mm以下であることが好ましい。それぞれのウエルドラインWLの長さをそれぞれ5mm以下とすることで、ウエルドラインWLによる耐圧性低下を効果的に抑制できる。
内面螺旋溝付管10を、10%硝酸水溶液に20秒浸漬させてエッチングすると、ウエルドラインWLは、表面上に白いスジ状に浮き上がる。また、白いスジ状の部位は、溶着部であるために他の部位に比べてエッチングのされ方に違いがあり、細かいピットを生じている。この状態で、ウエルドラインWLでは、光が散乱されスジ状の部位として識別できる。
図10は、後述する製造装置により製造した内面螺旋溝付管10において外周部のレーザー顕微鏡による撮影画像であり、図10(a)はウエルドラインが残留した部分であり、図10(b)はウエルドラインが消失した部分である。図10に示すように、エッチングすることにより内面螺旋溝付管の外周部の細かいピットが顕在化する。図10(a)に示すように、外周面をレーザー顕微鏡により観察すると、ウエルドラインには、径が10μm以上のピットが形成されている。一方で、図10(b)に示すように、ウエルドライン消失部では、径が10μm以上のピットがわずかしか形成されていない。
本明細書において、レーザー顕微鏡による観察視野180μm×250μmの範囲の観察において、径が10μm以上のピットが30個以上含まれる部分をウエルドラインWLと定義するものとする。したがって、径が10μm以上のピットの数が30個未満である部分では、ウエルドラインWLが消失しているとみなす。
本実施形態の内面螺旋溝付管10においてフィン3は捻り角θ1の螺旋状に形成されている。一方で、図5に示すように、ウエルドラインWLは、捻り角θ2の螺旋状に形成されている。αを内面螺旋溝付管10内周長とし、βを内面螺旋溝付管10の底肉厚としたときフィン3の捻り角θ1とウエルドラインWLの捻り角θ2は、以下の関係を満たす。
上記式によれば、ウエルドラインWLの捻り角θ2は、上記の式から、フィン3の捻り角θ1より大きくなる。これは、フィン3の捻り角θ1およびウエルドラインWLの捻り角θ2の基準となる面の外周面と内周面が、肉厚差に起因して異なっていることに由来する。
捻り角θ2は、例えば、図5に示すように内面螺旋溝付管10を側面視した場合、ウエルドラインWLが描く螺旋を観察し、その直線部分を抽出して内面螺旋溝付管10の中心軸線の平行線との交差角として把握される。
また、本実施形態によれば、内面螺旋溝付管10の内周面10bに長さ方向に沿って螺旋状に形成された複数のフィン3が設けられている。内周面10bに螺旋状のフィン3を形成することにより、内面螺旋溝付管10とその内部を流れる冷媒液との熱交換効率を高めることができる。螺旋状のフィン3を備えた内面螺旋溝付管10は、押出加工により長さ方向に直線状に延びるフィンを形成した素管10Bに捻りを付与することで形成できる。また、捻りを付与することにより、ウエルドラインWLを螺旋状に形成することができ、内圧に対する耐圧性の優れた内面螺旋溝付管10を提供することができる。
図5(b)に示すように、内面螺旋溝付管10の外周面10aには、螺旋状のダイスマークDMが形成されている。ダイスマークDMは、押出加工により成形された部材の周面に押出方向に沿って形成される線状の凹部である。ダイスマークDMは、押出金型やベアリング面の傷等の影響により形成される。本実施形態の内面螺旋溝付管10は、押出加工した素管に引き抜きながら捻りを加えることで製造されている。このため、押出加工により線状に形成されたダイスマークDMは、捻りの付与とともに螺旋状となる。
なお、図5(b)のダイスマークDMは、分かり易さのために1本のダイスマークDMが連続的に形成されているように図示されている。実際のダイスマークは、図23(a)および図24(a)に写真として示すように、長さ方向に沿って間欠的に形成されている。また、内面螺旋溝付管10の外周面の周方向に沿って複数のダイスマークDMが螺旋状かつ並行に延びている。
なお、本明細書においてダイスマークという用語は、押出工程により形成された凹部のみならず、係る凹部を有する素管に捻りを付与した後の伝熱管の凹部についても用いる。捻りが付与された後の管材の凹部は、厳密にはダイスマークに起因する凹部である。しかしながら、本明細書において分かり易さのため、これらを含む概念をダイスマークと呼ぶ。ダイスマークDMの捻り角はウエルドラインWLの捻り角と同じくθ2になるように形成されている。よって、上述の式の関係はダイスマークDMにおいても成立する。
捻りが付与された後のダイスマークDMの最大深さは、35μm以下である。上述したように、内面螺旋溝付管10は、熱交換器80(図1、図2参照)として使用される際に、ヘアピン状に屈曲される曲げ加工が施される。このような曲げ加工において、ダイスマークDMは、内面螺旋溝付管10の破損の起点となり易い。本実施形態によれば、ダイスマークDMの最大深さを35μm以下とすることによって、内面螺旋溝付管10の強度を高め、曲げ加工などの追加加工に対して破損し難い内面螺旋溝付管10を提供できる。
ダイスマーク深さ計測方法について説明する。
ダイスマーク深さ計測は、例えば、株式会社キーエンス製走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)を用いて表面形状の測定を行うことができる。また、計測解析では、解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いてダイスマーク深さを計測できる。
まず走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)のステージに試料を置き、観察倍率50倍のもと、フォーカスを合わせた後に、観察高さ上下限範囲100μmとして、0.5μmピッチで表面形状の測定を行う。
次に解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いて得られた画像上のダイスマーク深さを計測する。計測前の前処理として、管表面の円弧を平坦にする傾き補正を行った。前処理を行った表面形状から、管円周方向に平行になるように直線を3点引き、得られた粗さ曲線から、最大谷深さ(Rv)、最大高さ(Rz)を求め、ダイスマーク深さの計測では、最大断面高さ(Rt)として計測を行う。
解析アプリケーションでは「表面粗さの定義」(JISB0601:2001)に基づいて、JISB0601−2001およびJIS 0601−1994で定義されている粗さパラメータで表面粗さ解析を実施した。
図23(b)に、図23(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。同様に、図24(b)に、図24(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。なお、図23および図24に例示するダイスマークDMを有する内面螺旋溝付管は、図8に示す製造装置で製造された本実施形態の内面螺旋溝付管10の一例である。
本実施形態の内面螺旋溝付管10において管本体10Aの管壁には集合組織が形成されている。
アルミニウムまたはアルミニウム合金は多結晶体であり、通常個々の結晶粒の方向はランダムであるが、多結晶体が塑性変形を受けた場合に結晶粒の方位が特定の方向に集合し易くなる場合があり、この特定の方向を優先方位と称し、優先方位を有する多結晶体のことを集合組織を有する材料と呼称することができる。塑性加工による集合組織の形成は、特定の結晶面と結晶方向でのすべりに起因した結晶回転の結果として知られている。
本実施形態の内面螺旋溝付管10は後述する如く図6に示す構造の素管(直線溝付管)10Bに対し、後述する製造装置Aを用いて捻り引抜き加工を施して得られる。
即ち、ダイスを用いた引抜きと同時に素管10Bに捻り加工を行うことで内面螺旋溝付管10が得られる。
このため、素管10Bの管壁には、引抜きと捻りに起因する所定の塑性加工が施される結果、管壁の特定の方向に集合組織が発達した金属組織を有する内面螺旋溝付管10が得られる。
この集合組織の方位を特定するには、一例として、内面螺旋溝付管10を適当な長さに切断し、管壁を切り開いて平板状の試料とした上で、この試料の外表面(管壁の外表面)に対しX線反射法を用いて(200)、(220)、(111)不完全極点図を測定し、解析ソフト(Standard ODF)を用いて、Bunge法により解析し、結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)の測定を行って把握することができる。
例えば、X線反射法におけるX線回折条件として、Cu管球、40kV−40mAを用い、α角度:20〜90゜(Step:5.0゜)の条件で求めることができ、測定面として、引抜き方向をRD、走査方向をTD、管の半径方向をNDと規定することができる。
図11は後述する製造装置Aを用い、実施例において20°の捻り角を付与するように製造された内面螺旋溝付管の(200)不完全極点図、図12は(220)不完全極点図、図13は(111)不完全極点図の一例を示す。
これらの極点図に対しそれらのRD−TD方向に捻り角に対応する20°の補正を加えた極点図を図14、図15、図16にそれぞれ示す。
また、これら実施例試料に対し、後述する製造装置Aを用いて捻りを略し、引抜きのみを施して得た比較例試料の(200)極点図、(220)極点図、(111)極点図を図17、図18、図19に示す。
図11〜図13に示す極点図では主な特徴を確認できないが、20°補正後の図14〜図16に示す極点図は図17〜図19に示す引抜き管の極点図に類似したパターンを示すことがわかる。
このことから、補正値20°が内面螺旋溝付管の捻り角と一致することから、内面螺旋溝付管の集合組織の結晶方位は引抜き管に比べ、その引抜き方向に20°の捻れを生じていることがわかった。
また、図11〜図13に示す不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図20に示し、図14〜図16に示す20°補正後の不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図21に示し、図17〜図19に示す不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図22に示す。
これらの対比から、内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数では、極点図同様に20°の補正を加えることで、引抜き管と同様の結晶方位図を得ることができた。
集合組織について面心立方晶に観察される代表的な優先方位の位置から、引抜き管、内面螺旋溝付管ともに圧延集合組織であるCu方位{112}<111>の集積を認めることができた。
次に、Goss方位{011}<100>の集積が認められた。
また、これらの集積の度合いは、引抜き管に比べて内面螺旋溝付管の方が弱い傾向を示していることがわかる。
これらの分析から、内面螺旋溝付管の集合組織は、Cu方位、Goss方位が優先的に配向した集合組織を示していることがわかり、集合組織の方位は、RD(引抜き方位)に対し、RD−TD方向に捻り角に依存した20゜の傾きを有した集合組織であると判断できる。
以上説明のように内面螺旋溝付管10は、その管壁に捻り角に依存する集合組織を有しているが、引抜き管よりも集合組織の発達が弱いため、引抜き管よりも集合組織の発達を弱くすることができる。集合組織の発達の強い引抜き管よりも集合組織の発達の弱い捻り引抜き管とするならば、その内面螺旋溝付管は管壁の伸びの異方性、強度の異方性を弱くしていることとなり、集合組織の発達の強い引抜き管より集合組織の発達の弱い内面螺旋溝付管10の方がヘアピン曲げの部分にクラック発生や座屈発生を抑制できる特徴を有する。
このため、内面螺旋溝付管10を熱交換器80の伝熱管81、エルボ管81Bとして利用し、小さな曲率半径でヘアピン曲げ加工したとしても、曲げ部分にしわや偏平部分が発生し難く、き裂や破断を生じ難い伝熱管81、エルボ管81Bを提供できる特徴がある。
[製造方法]
以下、本願発明に係る内面螺旋溝付管10の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。内面螺旋溝付管10の製造方法は、押出成形工程と捻り引抜き工程をこの順で含む。
<押出成形工程>
まず、押出成形工程について説明する。
図6は、押出成形工程により成形された素管(直線溝付管)10Bの縦断面図であり、図7は、素管10Bの斜視図である。
アルミニウム材料からなるビレットを押出成形することにより、図7に示すように、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝4Bが周方向に間隔をおいて形成された素管10Bを製造(直線溝付管押出工程)する。押出成型工程により成形された素管10Bには、素管10Bの長さ方向に直線状に延びる4つのウエルドラインWLが形成される。4つのウエルドラインWLは、素管10Bの周方向に沿って等間隔(90°間隔)に位置する。
<捻り引抜き工程>
次に、捻り引抜き工程について説明する。
捻り引抜き工程は、引抜きを行いながら上述の素管10Bに捻りを付与することで、ウエルドラインWL、フィン3Bおよび直線溝4Bを螺旋状とする工程である。
なお、本明細書において、捻り引抜きを付与する前の管材(すなわち上述の素管10B)を「直線溝付管」と呼ぶ。また、捻り引抜きを付与した後の管材を「内面螺旋溝付管」と呼ぶ。また、直線溝付管から内面螺旋溝付管に至る過程において、内面螺旋溝付管と比較して半分程度の捻り引抜きが付与された中間形成品を「中間捻り管」と呼ぶ。更に、本明細書の「管材」とは、直線溝付管、中間捻り管および内面螺旋溝付管の上位概念であり、製造工程の段階を問わず、加工対象となる管を意味する。
本明細書において、「前段」および「後段」とは、管材の加工順序に沿った前後関係(すなわち、上流および下流)を意味し、装置内の各部位の配置を意味するものではない。
管材は内面螺旋溝付管の製造装置において、前段(上流)側から後段(下流)側に搬送される。前段に配置される部位は、必ずしも前方に配置されるとは限らず、後段に配置される部位は、必ずしも後方に配置されるとは限らない。
<捻り引抜き工程を行う製造装置>
図8は、直線溝付管(素管)10Bに2回の捻り引抜きを付与して内面螺旋溝付管(伝熱管)10を製造する製造装置Aを示す正面図である。まず、製造装置Aについて説明した後に、製造装置Aを用いた捻り引抜き工程について説明する。
製造装置Aは、公転機構30と、浮き枠34と、巻き出しボビン(第1のボビン)11と、第1のガイドキャプスタン18と、第1の引抜きダイス1と、第1の公転キャプスタン21と、公転フライヤ23と、第2の公転キャプスタン22と、第2の引抜きダイス2と、第2のガイドキャプスタン61と、巻き取りボビン(第2のボビン)71と、を備える。以下、各部の詳細について説明する。
(公転機構)
公転機構30は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを含む回転シャフト35と、駆動部39と、前方スタンド37Aと、後方スタンド37Bと、を有している。
公転機構30は、回転シャフト35並びに、回転シャフト35に固定された第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および公転フライヤ23を回転させる。
また、公転機構30は、回転シャフト35と同軸上に位置し回転シャフト35に支持される浮き枠34の静止状態を維持する。これにより、浮き枠34に支持された巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1の静止状態を維持する。
前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、ともに内部が中空の円筒形状を有する。前方シャフト35Aと後方シャフト35Bは、ともに公転回転中心軸C(第1引抜ダイスのパスライン)を中心軸とする同軸上に配置されている。前方シャフト35Aは、前方スタンド37Aに軸受36を介し回転自在に支持され、前方スタンド37Aから後方(後方スタンド37B側)に向かって延びている。同様に、後方シャフト35Bは、後方スタンド37Bに軸受を介し回転自在に支持され、後方スタンド37Bから前方(前方スタンド37A側)に向かって延びている。前方シャフト35Aと後方シャフト35Bとの間には、浮き枠34が架け渡されている。
駆動部39は、駆動モータ39cと直動シャフト39fとベルト39a、39d、プーリ39b、39eとを有している。駆動部39は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを回転させる。
駆動モータ39cは、直動シャフト39fを回転させる。直動シャフト39fは、前方スタンド37Aおよび後方スタンド37Bの下部において前後方向に延びている。
前方シャフト35Aの前方の端部35Abは、前方スタンド37Aを貫通した先端にプーリ39bが取り付けられている。プーリ39bは、ベルト39aを介し直動シャフト39fと連動する。同様に、後方シャフト35Bの後方の端部35Bbは、後方スタンド37Bを貫通した先端にプーリ39eが取り付けられ、ベルト39dを介し直動シャフト39fと連動する。これにより、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、公転回転中心軸Cを中心に同期回転する。
回転シャフト35(前方シャフト35Aおよび後方シャフト35B)には、第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および公転フライヤ23が固定されている。回転シャフト35が回転することで、回転シャフト35に固定されたこれらの部材は、公転回転中心軸Cを中心に公転回転する。
(浮き枠)
浮き枠34は、回転シャフト35の前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの互いに向かい合う端部35Aa、35Baに軸受34aを介し支持されている。また、浮き枠34は、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を支持する。
図9は、図8における矢印IX方向から見た浮き枠34の平面図である。図8、図9に示すように、浮き枠34は、上下に開口する箱形状を有する。浮き枠34は、前後に対向する前方壁34bおよび後方壁34cと、左右に対向するとともに前後方向に延びる一対の支持壁34dと、を有する。
前方壁34bおよび後方壁34cには貫通孔が設けられ、それぞれ前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの端部35Aa、35Baが挿入されている。端部35Aa、35Baと前方壁34bおよび後方壁34cの貫通孔との間には、軸受34aが介在する。これにより、浮き枠34には、回転シャフト35(前方シャフト35Aおよび後方シャフト35B)の回転が伝達され難い。浮き枠34は、回転シャフト35が回転状態にあっても地面Gに対する静止状態を保つ。なお、公転回転中心軸Cに対し浮き枠34の重心を偏らせる錘を設けて浮き枠34の静止状態を安定させてもよい。
図9に示すように、一対の支持壁34dは、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を左右方向(図9紙面中の上下方向)両側に配置されている。一対の支持壁34dは、巻き出しボビン11を保持するボビン支持シャフト12および第1のガイドキャプスタン18の回転軸J18を回転可能に支持する。また、支持壁34dは、図示略のダイス支持体を介し第1の引抜きダイス1を支持する。
(巻き出しボビン)
巻き出しボビン11には、直線溝4Bが形成された素管10B(図6参照)が巻き付けられている。巻き出しボビン11は、素管10Bを巻き出して後段に供給する。
巻き出しボビン11は、ボビン支持シャフト12に着脱可能に取り付けられている。
図9に示すように、ボビン支持シャフト12は、回転シャフト35と直交する方向に延びている。また、ボビン支持シャフト12は、浮き枠34に自転回転可能に支持されている。なお、ここで自転回転とは、ボビン支持シャフト12自身の中心軸を中心として回転することを意味する。ボビン支持シャフト12は、巻き出しボビン11を保持し、巻き出しボビン11の供給方向に自転回転することで、巻き出しボビン11からの素管10Bの繰り出しを補助する。
巻き出しボビン11は、巻き付けられた素管10B全て供給した際に取り外され、他の巻き出しボビンに交換される。取り外された空の巻き出しボビン11は、素管10Bを形成する押出装置に取り付けられ、再び直線溝付管10Bが巻き付けられる。巻き出しボビン11は、浮き枠34に支持され公転回転しない。したがって、巻き出しボビン11に直線溝付管10Bが乱巻されていても支障なく供給を行うことができ、巻き直しを行うことなく使用できる。また、巻き出しボビン11の重量により製造装置Aにおいて直線溝付管10Bに捻りを付与するための公転回転の回転数は制限されない。したがって、巻き出しボビン11に長尺の直線溝付管10Bが巻き付けることができる。これにより、長尺の素管10Bに対して、捻りを付与することができ、製造効率を高めることができる。
ボビン支持シャフト12には、ブレーキ部15が設けられている。ブレーキ部15は、浮き枠34に対するボビン支持シャフト12の自転回転に制動力を与える。すなわち、ブレーキ部15は、巻き出しボビン11の巻き出し方向の回転を規制する。ブレーキ部15による制動力により、巻き出し方向に搬送される直線溝付管10Bには、後方張力が付加される。ブレーキ部15としては、例えば、制動力としてのトルク調節が可能なパウダーブレーキ又はバンドブレーキを採用できる。
(第1のガイドキャプスタン)
第1のガイドキャプスタン18は、円盤形状を有している。第1のガイドキャプスタン18には、巻き出しボビン11から繰り出された直線溝付管10Bが1周巻き掛けられる。第1のガイドキャプスタン18の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第1のガイドキャプスタン18は、素管10Bを第1の方向D1に沿って公転回転中心軸C上に誘導する。
第1のガイドキャプスタン18は、自転回転自在に浮き枠34に支持されている。また第1のガイドキャプスタン18の外周には、自転回転自在のガイドローラ18bが並んで配置されている。本実施形態の第1のガイドキャプスタン18は、自身が自転回転するとともにガイドローラ18bが転動するが、何れか一方が回転すれば、直線溝付管10Bをスムーズに搬送できる。なお、図8において、ガイドローラ18bの図示は省略されている。
図7に示すように、第1のガイドキャプスタン18と巻き出しボビン11との間には、管路誘導部18aが設けられている。管路誘導部18aは、例えば直線溝付管10Bを囲むように配置された複数のガイドローラである。管路誘導部18aは、巻き出しボビン11から供給される素管10Bを第1のガイドキャプスタン18に誘導する。
なお、第1のガイドキャプスタン18に代えて、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との間にトラバース機能を有する誘導管を設けてもよい。誘導管を設ける場合には、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との距離を短くすることができ、工場内のスペースを有効活用できる。
(第1の引抜きダイス)
第1の引抜きダイス1は、素管10B(管材5)を縮径する。第1の引抜きダイス1は、浮き枠34に固定されている。第1の引抜きダイス1は、第1の方向D1を引抜き方向とする。第1の引抜きダイス1の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。また、第1の方向D1は、公転回転中心軸Cと平行である。
第1の引抜きダイス1には、浮き枠34に固定された潤滑油供給装置9Aにより潤滑油が供給される。これにより第1の引抜きダイス1における引抜力を軽減できる。
第1の引抜きダイス1を通過した管材5は、浮き枠34の前方壁34bに設けられた貫通孔を介して、前方シャフト35Aの内部に導入される。
(第1の公転キャプスタン)
第1の公転キャプスタン21は、円盤形状を有している。第1の公転キャプスタン21は、中空の前方シャフト35Aの内外を径方向に貫通する横孔35Acに配置されている。第1の公転キャプスタン21は、円盤の中心を回転軸J21として、回転シャフト35(前方シャフト35A)の外周部に固定された支持体21aに自転回転が自在な状態で支持されている。
第1の公転キャプスタン21は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。
第1の公転キャプスタン21には、公転回転中心軸C上の第1の方向D1に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第1の公転キャプスタン21は、管材5を巻き掛けて前方シャフト35Aの内部から外部に引き出して公転フライヤ23に誘導する。
第1の公転キャプスタン21は、公転回転中心軸Cの周りを前方シャフト35Aとともに公転回転する。公転回転中心軸Cは、第1の公転キャプスタン21の自転回転の回転軸J21と直交する方向に延びている。管材は、第1の公転キャプスタン21と第1の引抜きダイス1との間で捻りが付与される。これにより、管材5は、直線溝付管10Bから中間捻り管10Cとなる。
第1の公転キャプスタン21とともに、前方シャフト35Aには駆動モータ20が設けられている。駆動モータ20は、第1の公転キャプスタン21を管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。これにより、第1の公転キャプスタン21は、管材5に第1の引抜きダイス1を通過するための前方張力を付与する。
第1の公転キャプスタン21および駆動モータ20は、前方シャフト35Aの公転回転中心軸Cに重心が位置するように公転回転中心軸Cに対して互いに対称の位置に配置されることが好ましい。これにより、前方シャフト35Aの回転のバランスを安定させることができる。なお、第1の公転キャプスタン21と駆動モータ20の重量差が大きい場合は、錘を設けて重心を安定させてもよい。
(公転フライヤ)
公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で、管材5の管路を反転させる。公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1に搬送される管材5を反転させ、搬送方向を第2の引抜きダイス2の引抜き方向である第2の方向D2に向ける。より具体的には、公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22に管材5を誘導する。
公転フライヤ23は、複数のガイドローラ23aとガイドローラ23aを支持するガイドローラ支持体(図示略)とを有する。ここでは、煩雑さを解消するためガイドローラ支持体の図示を省略するが、ガイドローラ支持体は、回転シャフト35に支持されている。ただし、フライヤの構造についてガイドローラは必須ではなく、単に管が通過するための板状の構造で、それに通過させるためのリングを取り付けた形状のものでも良い。このリングは板形状の部材に設けられても良い。このリングの一部はこの板形状の部材の一部で構成されてもよい。板形状の部材はガイドローラ支持体と同様に回転シャフト35に支持されてもよい。
ガイドローラ23aは、公転回転中心軸Cに対し外側に湾曲する弓形状を形成して並んでいる。ガイドローラ23a自身が転動して管材5をスムーズに搬送する。公転フライヤ23は、公転回転中心軸Cを中心として、浮き枠34並びに浮き枠34内に支持された第1の引抜きダイス1および巻き出しボビン11の周りを回転する。
公転フライヤ23の一端は、公転回転中心軸Cに対し第1の公転キャプスタン21の外側に位置している。また、公転フライヤ23の他端は、中空の後方シャフト35Bの内外を径方向に貫通する横孔35Bcを通過して後方シャフト35Bの内部に延びている。公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21に巻き掛けられて外側に繰り出された管材5を後方シャフト35B側に誘導する。また、公転フライヤ23は、管材5を後方シャフト35Bの内部において、第2の方向D2に沿って公転回転中心軸C上に繰り出す。
なお、本実施形態の公転フライヤ23は、ガイドローラ23aにより管材5を搬送するものであるとして説明した。しかしながら公転フライヤ23を、弓状に形成した帯板から形成して、管材5を帯板の一面を滑動させて搬送してもよい。
また、図8において、管材5がガイドローラ23aの外側を通過する場合を例示した。
しかしながら、公転フライヤ23の回転速度が速い場合には、管材5が遠心力により公転フライヤから脱線するおそれがある。このような場合は、管材5の外側に更にガイドローラ23aを設けることが好ましい。
公転フライヤ23と同等の重量を有し前方シャフト35Aから後方シャフト35Bに延びて公転フライヤ23と同期回転するダミーフライヤを複数設けてもよい。これにより、回転シャフト35の回転を安定させることができる。
(第2の公転キャプスタン)
第2の公転キャプスタン22は、第1の公転キャプスタン21と同様に、円盤形状を有する。第2の公転キャプスタン22は、後方シャフト35Bの端部35Bbの先端に設けられた支持体22aに自転回転が自在な状態で支持されている。また、第2の公転キャプスタン22の外周には、自転回転自在のガイドローラ22cが並んで配置されている。本実施形態の第2の公転キャプスタン22は、自身が自転回転するとともにガイドローラ22cが転動するが、何れか一方が回転すれば、管材5をスムーズに搬送できる。
第2の公転キャプスタン22は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。
第2の公転キャプスタン22には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第2の公転キャプスタン22は、巻き掛けられた管材を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に繰り出す。
第2の公転キャプスタン22は、公転回転中心軸Cの周りを後方シャフト35Bとともに公転回転する。公転回転中心軸Cは、第2の公転キャプスタン22の自転回転の回転軸J22と直交する方向に延びている。第2の公転キャプスタン22から繰り出された管材5は、第2の引抜きダイス2において縮径される。第2の引抜きダイス2は、地面Gに対し静止しているため、第2の公転キャプスタン22と第2の引抜きダイス2との間で、管材5に捻りを付与できる。これにより、管材5は、中間捻り管10Cから内面螺旋溝付管10となる。
第2の公転キャプスタン22を支持する支持体22aは、公転回転中心軸Cに対し第2の公転キャプスタン22と対称の位置に錘22bを支持する。錘22bは、後方シャフト35Bの回転のバランスを安定させる。
(第2の引抜きダイス)
第2の引抜きダイス2は、第2の公転キャプスタン22の後段に配置される。第2の引抜きダイス2は、反対の第2の方向D2を引抜き方向とする。第2の方向D2は、公転回転中心軸Cと平行な方向である。第2の方向D2は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1と反対である。管材5は、第2の方向D2に沿って第2の引抜きダイス2を通過する。第2の引抜きダイス2は、第2の引抜きダイス2は、地面Gに対して静止している。第2の引抜きダイス2の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。
第2の引抜きダイス2は、例えば図示略のダイス支持体を介して架台62に支持されている。また、第2の引抜きダイス2には、架台62に取り付けられた潤滑油供給装置9Bにより潤滑油が供給される。これにより第2の引抜きダイス2における引抜力を軽減できる。
第2の引抜きダイス2における縮径および捻り付与により、管材5は、中間捻り管10Cから内面螺旋溝付管10となる。
(第2のガイドキャプスタン)
第2のガイドキャプスタン61は、円盤形状を有している。第2のガイドキャプスタン61の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第2のガイドキャプスタン61には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。
第2のガイドキャプスタン61は、回転軸J61を中心に架台62に回転可能に支持されている。また、第2のガイドキャプスタン61の回転軸J61は、駆動モータ63と駆動ベルト等を介し接続されている。第2のガイドキャプスタン61は、駆動モータ63により、内面螺旋溝付管10の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。なお、駆動モータ63は、トルク制御可能なトルクモータを用いることが好ましい。
第2のガイドキャプスタン61が駆動することによって管材5には、前方張力が付与される。これにより管材5は、第2の引抜きダイス2における加工に必要な引抜き応力が付与され前方に搬送される。
(巻き取りボビン)
巻き取りボビン71は、内面螺旋溝付管10の管路の終端に設けられ、内面螺旋溝付管10を回収する。巻き取りボビン71の前段には、誘導部72が設けられている。誘導部72は、トラバース機能を有し内面螺旋溝付管10を巻き取りボビン71に整列巻きさせる。
巻き取りボビン71は、ボビン支持シャフト73に着脱可能に取り付けられている。ボビン支持シャフト73は、架台75に支持され、駆動モータ74に駆動ベルト等を介し接続されている。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により駆動回転され、管材5を弛ませることなく巻き取る。巻き取りボビン71は、内面螺旋溝付管10が十分に巻き付けられた場合に取り外され、他の巻き取りボビン71に付け替えられる。
<捻り引抜き工程>
上述した製造装置Aを用いて、内面螺旋溝付管10を製造する方法について説明する。
まず、予備工程として、素管(直線溝付管)10Bを巻き出しボビン11にコイル状に巻き付ける。更に、巻き出しボビン11を製造装置Aの浮き枠34にセットする。また、巻き出しボビン11から素管10B(管材5)を繰り出して、予め素管10Bの管路をセットする。具体的には、素管10Bを、第1のガイドキャプスタン18、第1の引抜きダイス1、第1の公転キャプスタン21、公転フライヤ23、第2の公転キャプスタン22、第2の引抜きダイス2、第2のガイドキャプスタン61、巻き取りボビン71の順に、通過させて、セットする。
内面螺旋溝付管10の製造工程において、管材の搬送経路に沿って説明する。
まず、巻き出しボビン11から素管10B(管材5)を順次繰り出していく。
次に、巻き出しボビン11から繰り出された素管10Bを、第1のガイドキャプスタン18に巻き掛ける。第1のガイドキャプスタン18は、素管10Bを公転回転中心軸C上に位置する第1の引抜きダイス1のダイス孔に誘導する(第1の誘導工程)。
次に、素管10Bを第1の引抜きダイス1に通過させる。更に、第1の引抜きダイス1の後段で管材5を第1の公転キャプスタン21に巻き掛けて前記回転軸の周りを回転させる。これにより、素管10Bを縮径するとともに捻りを付与する(第1の捻り引抜き工程)。
第1の捻り引抜き工程において、素管10Bには第1の公転キャプスタン21を駆動する駆動モータ20により、前方張力が付与される。また、同時に素管10Bには巻き出しボビン11のブレーキ部15により後方張力が付与される。このため、素管10Bに適度な張力を付与することが可能となり、素管10Bに座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
管材5は、第1の引抜きダイス1に通された後に、公転回転する第1の公転キャプスタン21に巻き掛けられる。管材5は、第1の引抜きダイス1により縮径されるとともに、第1の公転キャプスタン21により捻りを付与される。これにより、管材5の内部の直線状の流路管7Aに捻りが付与され内面螺旋溝付管10が形成される。第1の捻り引抜き工程により素管10Bは、中間捻り管10Cとなる。中間捻り管10Cは、内面螺旋溝付管10の製造工程における中間段階の管材であり、内面螺旋溝付管10の内面螺旋溝より浅い捻り角の螺旋溝が形成された状態である。
第1の捻り引抜き工程において、管材5には、捻りが付与されると同時に引抜きダイスによる縮径が行われる。すなわち、管材5は、捻りと縮径との同時加工による複合応力が付与させる。複合応力下においては、捻り加工のみを行う場合と比較して管材5の降伏応力が小さくなり、管材5の座屈応力に達する前に、管材5に大きな捻りを付与できる。これにより、管材5の座屈の発生を抑制しつつ大きな捻りを付与できる。また、この捻り引抜き工程により管材5の管壁の集合組織がある程度発達する。
第1の引抜きダイス1の前段には、第1のガイドキャプスタン18が設けられており管材5の回転が規制されている。すなわち、管材5は、第1の引抜きダイス1の前段で、捻り方向の変形が拘束されている。管材5には、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との間で捻りが付与される。すなわち、第1の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との間に制限される。
加工域の長さと、限界捻り角(座屈を生じないで捻ることができる最大捻り角)の関係には、相関関係があり、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても管材5に座屈が生じにくい。第1のガイドキャプスタン18を設けることで、第1の引抜きダイス1の前段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。また、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との距離を近づけることで加工域を短く設定し、座屈を生じさせずに管材5に大きな捻り、例えば10〜45゜の捻りを付与できる。
第1の引抜きダイス1による管材5の縮径率は、2%以上とすることが好ましい。限界捻り角と縮径率の間には相関が認められ、引抜き時の縮径率を大きくするにつれて限界捻り角が大きくなる傾向が認められる。すなわち、縮径率が小さ過ぎる場合は引抜きによる効果が乏しく、大きな捻り角を得ることが難しいので、2%以上とするのが好ましい。なお、同様の理由から縮径率を5%以上とすることがより好ましい。
一方で、縮径率が大きくなり過ぎると加工限界で破断を生じ易くなるので、40%以下とするのが好ましい。
次に、公転フライヤ23に管材5を巻き掛けて、管材5の搬送方向を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に向ける。更に、第2の公転キャプスタン22に管材5を巻き掛けて、管材5を第2の引抜きダイス2に導入する(第2の誘導工程)。これにより、管材5の搬送方向は、第1の方向D1から第2の方向D2に反転し、第2の引抜きダイス2の中心に合わせられる。公転フライヤ23は、浮き枠34の周りを公転回転中心軸Cを中心として回転する。なお、第1の公転キャプスタン21、公転フライヤ23および第2の公転キャプスタン22は、公転回転中心軸Cを中心として同期回転する。したがって、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22の間で、管材5は相対的に回転せず捻りが付与されない。
次に、第2の公転キャプスタン22とともに回転する管材5を第2の引抜きダイス2に通過させる。これにより、管材5を縮径するとともに捻りを付与し、内面螺旋溝の捻り角を更に大きくする(第2の捻り引抜き工程)。この第2の捻り引抜き工程により中間捻り管10Cは、内面螺旋溝付管10となる。
第2の捻り引抜き工程において、管材5には第2のガイドキャプスタン61を駆動する駆動モータ63により、前方張力が付与される。駆動モータ63としては、トルク制御可能なトルクモータを用いた場合、第2のガイドキャプスタン61は、管材5に付与する前方張力を調整できる。第2のガイドキャプスタン61により前方張力を調整することで、第2の捻り引抜き工程において管材5に適度な張力を付与することが可能となる。これにより、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
管材5は、公転回転する第2の公転キャプスタン22に巻き掛けられた後に第2の引抜きダイス2を通過する。管材5は、第2の引抜きダイス2により縮径されるとともに、第2の公転キャプスタン22により管材5に捻りを付与される。これにより、管材5の流路管に更に大きな捻りが付与され、螺旋溝の捻り角が大きくなる。第2の捻り引抜き工程により中間捻り管10Cは、内面螺旋溝付管10となる。
第2の引抜きダイス2の前段では、第2の公転キャプスタン22に管材5が巻き掛けられている。第2の引抜きダイス2の後段では、第2のガイドキャプスタン61が設けられ管材5の回転が規制されている。すなわち、管材5は第2の引抜きダイス2の前後で、捻り方向の変形が拘束されており、第2の公転キャプスタン22と第2のガイドキャプスタン61との間で、管材5に捻りと引抜きが付与される。すなわち、第2の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第2の公転キャプスタン22と第2の引抜きダイス2との間に制限される。上述したように、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても座屈が生じにくい。第2のガイドキャプスタン61を設けることで、第2の引抜きダイス2の後段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。
なお、本実施形態において、第2の公転キャプスタン22は、後方スタンド37Bの後方(第2の引抜きダイス2側)に設けられているが、第2の公転キャプスタン22は、前方スタンド37Aと後方スタンド37Bとの間に位置していてもよい。しかしながら、第2の公転キャプスタン22を、後方スタンド37Bに対し後方に配置して第2の引抜きダイス2に近づけることで、第2の捻り引抜き工程における加工域を短くすることができる。これにより、座屈の発生をより効果的に抑制できる。
第2の捻り引抜き工程において、第1の捻り引抜き工程と同様に、捻りと縮径とが行われて、管材5には複合応力が付与させる。これにより、管材5の座屈応力に達する前に、管材に座屈の発生を抑制しつつ大きな捻り、例えば10〜45゜の捻り角を付与できる。
また、第2の捻り引抜き工程により集合組織の発達が進行し、目的の捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が発達する。
第2の引抜きダイス2による管材5の縮径率は、第1の捻り引抜き工程と同様に、2%以上(より好ましくは5%以上)25%以下とすることが好ましい。
なお、第1の引抜きダイス1において、大きな縮径(例えば縮径率30%以上の縮径)を行うと管材5が加工硬化するために、第2の引抜きダイス2での大きな縮径を行うことが困難になる。したがって、第1の引抜きダイス1の縮径率と第2の引抜きダイス2の縮径率との合計は、4%以上50%以下とすることが好ましい。
<空引き工程>
次に、管材5を仕上げ引抜きダイス70に通過させる(仕上げ引抜き工程)。管材5は、仕上げ引抜きダイス70を通過することで、表面が整形されるとともに肉厚の偏肉が低減される。また、管材5に若干のつぶれ等の変形が生じていた場合でも、この仕上げ引抜き工程を経ることにより、その変形も修正して、所定の真円度の管材5とすることができる。なお、仕上げ引抜きダイス70の引抜き荷重に対して管材5を搬送させる力は、巻き取りボビン71に設けられた駆動モータ74により付与される。
また、捻り引抜き工程(第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程)の後段で、空引き工程を行うことで、表面性状および形状が安定した内面螺旋溝付管10を製造できる。空引き工程における管材5の縮径率は、25%以下とすることが好ましい。さらに、第1の引抜き工程、第2の引抜き工程および空引き工程の縮径率の合計は、30%以上とすることが好ましい。
<回収工程>
次に、管材5は、巻き取りボビン71に巻き付けられ回収される。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により、管材5の搬送速度と同期して回転することで、管材5を弛みなく巻き取ることができる。
以上の工程を経て、製造装置Aを用いて、内面螺旋溝付管10を製造できる。
本実施形態の捻り工程によれば押出成形工程において直線溝付管10Bに形成された直線状のウエルドラインWLが螺旋状となる。これにより、内圧の上昇に対して亀裂が生じにくいウエルドラインWLを形成することができる。
また、本実施形態の捻り工程によれば複数回の捻りを繰り返す。これにより、押出成形工程で形成されたウエルドラインWLは、周囲の組織と混ざり合って境界が曖昧となる。これにより、ウエルドラインWLを部分的に消失させて間欠的に形成でき、結果として耐圧性能の高い内面螺旋溝付管10を製造できる。
<O材化工程>
次に、O材化工程について説明する。
O材化工程は、捻り工程の後に行われる。O材化工程は、管材5に焼きなまし処理を施す熱処理工程である。O材化工程を行うことによって、アルミ材料の歪みを除去し、内部応力を除去できる。
本実施形態の製造方法によれば、直線溝付管10Bに直接的に捻りと引抜きを付与することで、ウエルドラインWLと螺旋溝及びフィン3を同時に螺旋状且つ間欠的に形成することが可能となる。また、目的の捻り角に依存した傾斜角の集合組織を発達させることができる。
これらにより、ウエルドラインWLを螺旋状に且つ間欠的に形成することによる耐圧性の向上の効果と、螺旋状のフィン3による熱交換率の向上の効果と、を同時に達成する内面螺旋溝付管10を製造できる。また、捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を発達させることができるので、小さな曲率でヘアピン曲げを施してもき裂や破断を生じ難い内面螺旋溝付管10を製造できる。
本実施形態の製造方法によれば、押出加工により成形された素管10Bに捻りと引抜加工を付与した後に熱処理(O材化工程)を行なうことで、押出で素管10Bに生じたウエルドラインWLの拡散接合をより強固にして接合強度を高めることができる。
本実施形態の製造方法によれば、各工程(第1の引抜き工程、第2の引抜き工程および空引き工程)の合計の縮径率が30%以上である。縮径率を30%以上とすることで、大きな捻りを付与できる。また、本実施形態の製造方法によれば、各工程の縮径率は、25%以下である。各工程の縮径率が25%以下であることで、加工硬化を抑制し後工程での縮径をスムーズに行うことができる。
本実施形態の捻り工程は、上述の工程を経て形成された内面螺旋溝付管10に対して、再び第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程を行い、更に大きな捻り角を付与してもよい。この場合には、上述の工程を経た内面螺旋溝付管10に対して熱処理(焼きなまし)を行い、O材化する。更に巻き出しボビン11に巻き付けて、この巻き出しボビン11を適当な縮径率を有する第1の引抜きダイスおよび第2の引抜きダイスを有する製造装置Aに取り付ける。更に、製造装置Aにより上述の工程と同様の工程(第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程)を経ることで、更に大きな捻り角を付与した内面螺旋溝付管10を製造できる。
本実施形態の捻り工程によれば、捻りと同時に縮径を行っているため、出発材と最終製品の外径および断面積が異なる。また、管材5に捻りと縮径の複合応力を付与する為に、捻り加工に必要なせん断応力を低減させることが可能となり、管材5の座屈応力に達する前に、管材5に大きな捻りを付与できる。したがって、捻り角θ1の大きな螺旋溝4とフィン3を有するとともに、底肉厚が薄い内面螺旋溝付管10を、座屈を生じさせることなく製造することができる。また、捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を発達させた内面螺旋溝付管10であって、ヘアピン曲げに強い内面螺旋溝付管10を製造することができる。
内面螺旋溝付管10は、フィン3の捻り角θ1を大きくすることで熱交換効率を高めることができる。また、内面螺旋溝付管10は、肉厚を薄くすることで、軽量化するとともに材料費を低減して安価とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、軽量、安価かつ熱交換効率の高い内面螺旋溝付管10を製造できる。
本実施形態の捻り工程によれば、直線溝付管10Bに対して捻りを付与するとともに、縮径を行うため、座屈発生を抑制しつつ大きな捻り角を付与できる。なお、本実施形態において、最終品である内面螺旋溝付管10の外径に対し、素材となる直線溝付管10Bの外径は1.1倍以上である。
本実施形態の捻り工程によれば、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で第1の公転キャプスタン21により、管材5に捻りを付与している。更に、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との引抜き方向が反転している。これにより、第1の捻り引抜き工程と、第2の捻り引抜き工程における、捻り方向を一致させて、管材5に捻りを付与できる。また、管材5の管路の始端である巻き出しボビン11と管路の終端である巻き取りボビン71を公転回転させる必要がない。ラインの速度は、回転速度に依存するため、重量物である巻き出しボビン11又は巻き取りボビン71を回転させない本実施形態の捻り工程では、回転速度を容易に高めることができる。すなわち、本実施形態によれば容易にライン速度を高速化できる。
更に、本実施形態において、巻き出しボビン11を公転回転させることがないため、巻き出しボビン11に長尺の直線溝付管10B(管材5)を巻き付けることができる。このため、本実施形態の捻り工程によれば、巻き出しボビン11を付け替えることがなく、一気通貫で長尺の管材5に捻りを付与することができる。すなわち、本実施形態によれば内面螺旋溝付管10の大量生産が容易となる。
本実施形態の捻り工程は、少なくとも2回の捻り引抜き工程を経て管材5に捻りを付与するものである。このため、各段階の捻り引抜き工程で付与する捻り角を積み上げて大きな捻り角を付与することができる。
本実施形態の捻り工程によれば、第1の捻り引抜き工程および前記第2の捻り引抜き工程において、管材5に前方張力と後方張力が付与される。前方張力は、第2のガイドキャプスタン61により管材5に付与され、後方張力は、巻き出しボビン11を制動するブレーキ部15によって管材5に付与される。これにより、加工対象の管材5に適切な張力を安定して付与することができる。管材5の管路に弛みが無く、直線溝付管10Bが芯ずれせずに引抜きダイスに入るため、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
本実施形態に係る第1の引抜きダイス1および第2の引抜きダイス2において、ダイス孔の中心は、公転回転中心軸C上に位置している。これにより、ダイス孔を通過する管材5をダイス孔に対して直線的に配置できるため、管材5を均一に縮径して、捻り付与時の座屈を抑制できる。なお、第1の引抜きダイス1および第2の引抜きダイス2において、管材5が正常に縮径できる範囲であれば、公転回転中心軸Cに対するダイス孔の位置ズレは許容される。
なお、本実施形態においては、巻き出しボビン11が浮き枠34に支持され、巻き取りボビン71が地面Gに設置されているものとして説明した。しかしながら、巻き出しボビン11と巻き取りボビン71のうち何れが浮き枠34に支持されていてもよい。すなわち、図8において、巻き出しボビン11と巻き取りボビン71とを入れ替えて配置してもよい。この場合には、管材5の搬送経路が反転する。また、第1の引抜きダイス1および第2の引抜きダイス2が入れ替えて配置されるとともに、搬送方向に沿ってそれぞれの引抜きダイス1、2の引抜き方向を反転させて配置する。更に、引抜きダイス1、2の前後に位置するキャプスタンにおいて、引抜きダイスの後段に位置するキャプスタンを管材の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動させ、引抜きダイスにおける引抜力に抗する前方張力を与える。
以上の説明の工程により、図3〜図5に示す構成の内面螺旋溝付管10を製造することができる。
上述の実施形態に記載の製造装置Aを用いた製造方法に従い、内面に螺旋状のフィンが形成され、外周面に螺旋状のウエルドラインWLが形成された内面螺旋溝付管(条数58、外径6〜7.2mm、底肉厚0.45〜0.55mm、フィン高さ0.25mm、フィンの頂角11゜、捻り角最大25゜のサンプル(サンプルNo.1〜No.6)を作製した。
各サンプルに対して、外径、最大底肉厚と最小底肉厚の差、外周面における捻り角、捻り角比ρ、ダイスマークDMについて螺旋ピッチに対する1周分の長さの比、ダイスマークDMの深さ、偏平率が異なる。各サンプルの各パラメータは、後段の表1にまとめる。
なお、各サンプルとしては、スリムフィンタイプの伝熱管を用いた。
(ヘアピン曲げに対する強度測定)
各サンプルの伝熱管を曲率半径(R=15)でヘアピン状に180°曲げる曲げ加工を行った。各条件n=20で評価し、1つでも伝熱管の外周面に亀裂が観察されたものを×とし、亀裂が観察されなかったものを〇とした。
評価結果を表1にまとめる。
表1に示す結果から、十分な捻り角で捻りを付与した伝熱管において、ヘアピン曲げ加工で破損が生じにくくなることが確認された。
(拡管性評価)
ウエルドラインの健全性を確かめる試験として、頂角60度円錐(材質SS400)をパイプに押し込む方法で拡管試験を行う。パイプは長さ40mm切り出し、端面は旋盤を使用して平滑に仕上げた。拡管試験時には円錐のパイプと接触する面には牛脂を刷毛にて塗り付け、焼き付き発生による結果のバラツキを抑えた。
以上の条件において、伝熱管に割れが生じた時点での拡管荷重(伝熱管の長さ方向に沿って円錐に加えた力)および押込み量を測定した。
なお、各サンプルとしては、スリムフィンタイプの伝熱管を用いた。
表2に示すように、ウエルドラインを螺旋状とした場合には、直線状の場合と比較して、拡管荷重および押込み量が大きくなっていた。より具体的には、ウエルドラインを螺旋状とした場合には、拡管荷重を10KN以上とすることができ、押込み量を3mm以上とすることができた。
「集合組織の解析」
表1のサンプル1から一部を切り出し、管壁を切り開いてプレス装置で軽く圧を加えて平板状の試料(40mmL×29mmW×0.5mmt)に加工した上で、この試料の外表面(管壁の外表面)に対しX線反射法を用いて(200)、(220)、(111)不完全極点図を測定した。
例えば、X線反射法におけるX線回折条件として、Cu管球、40kV−40mAを用い、α角度:20〜90゜(Step:5.0゜)の条件で求めることができ、測定面として、引抜き方向をRD、走査方向をTD、管の半径方向をNDと規定する。
図11はこのサンプルの(200)不完全極点図、図12は(220)不完全極点図、図13は(111)不完全極点図を示す。
これら極点図に対しそれらのRD−TD方向に捻り角に対応する20°の補正(捻り角と同じ傾きの補正)を加えた極点図を図14、図15、図16にそれぞれ示す。
また、これら実施例試料に対し、製造装置Aを第1の引抜きダイスと第2の引抜きダイスを通過する場合に捻りを略し、引抜きのみを施して得たサンプルNo.4(引抜き管)の(200)極点図、(220)極点図、(111)極点図を図17、図18、図19に示す。
図11〜図13に示す極点図では主な特徴を確認できないが、20°補正後の図14〜図16に示す極点図は図17〜図19に示す引抜き管の極点図に類似したパターンを示すことがわかる。
このことから、補正値20°が内面螺旋溝付管の捻り角と一致することから、内面螺旋溝付管の集合組織の結晶方位は引抜き管に比べ、その引抜き方向に20°の捻れを生じていることがわかった。
次に、解析ソフト(Standard ODF)を用いて、Bunge法により解析し、結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)を求めた。
図11〜図13に示すサンプルの不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図20に示し、図14〜図16に示す20°補正後のサンプルの不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図21に示し、図17〜図19に示す引抜き管の不完全極点図から求めた内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数を図22に示す。
図20と図21の対比から、図20に示す内面螺旋溝付管の結晶方位分布関数では、図21に示すように極点図同様に20°の補正を加えることで、図22に示す引抜き管の結晶方位分布関数と同様の結晶方位図を得ることができた。
これらサンプルの集合組織について面心立方晶に観察される代表的な優先方位の位置から、引抜き管(図22)、内面螺旋溝付管(図20、図21)ともに圧延集合組織であるCu方位{112}<111>の集積を認めることができた。
次に、これらのサンプルにおいて、Goss方位{011}<100>の集積が認められた。
また、これらの集積の度合いは、図22に示す引抜き管に比べて内面螺旋溝付管の方が弱い傾向を示していることがわかる。
これらの分析から、内面螺旋溝付管の集合組織は、Cu方位、Goss方位が優先的に配向した集合組織を示していることがわかり、集合組織の方位は、RD(引抜き方位)に対し、RD−TD方向に捻り角に依存した20°の傾きを有した集合組織であると判断できる。
このことは、第1の引抜きダイスと第2の引抜きダイスを用いた2回の捻り引抜き加工により素管の管壁に優先方向を有する集合組織であって、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を内面螺旋溝付管の捻り角20°に依存した傾斜をもつように生成できたことを意味する。
また、表1に示す耐圧性評価においてNo.1のサンプル(内面螺旋溝付管)とNo.9〜No.10のサンプル(直線溝付管)を対比すると、内面螺旋溝付管の方が直線溝付管よりも耐圧性の面で優れていることもわかった。
このことは、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を内面螺旋溝付管の捻り角20°に依存した傾斜をもつように生成することで内面螺旋溝付管の強度も向上できることを意味している。
このため先のNo.1〜No.6の内面螺旋溝付管であるならば、強度と耐食性に優れた伝熱管を提供でき、熱交換器に伝熱管として利用した場合にヘアピン曲げを施してもき裂や破断し難い伝熱管を提供できることがわかった。
内面螺旋溝付管のCu方位集積度とGoss方位集積度が、直線溝付管の引抜き管のCu方位集積度とGoss方位の集積度よりも低くなり、集合組織の集積度合いが低いと言うことは、引抜き管の組織に比べ、内面螺旋溝付管の組織の異方性を緩和できていることと同義となり、このためへピン曲げなどの加工による破断を抑制できたと考えられる。
従来から、アルミニウム合金の押出材、伸線材は長手方向に延ばされた繊維状集合組織が形成されやすいとされ、その場合、<111>方位または<100>方位を有する結晶面が優先配向されやすいと言われている。この現象は、捻りと引抜きを同時に加えて製造する内面螺旋溝付管において、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を内面螺旋溝付管の捻り角20゜に依存した傾斜をもつように生成できるという今回の結果と合っている。降伏条件一定のもと、内面螺旋溝付管の製造では引抜きと捻りを同時に付加しているので、一方向への力の作用を緩和、分散することができ、必要以上に強い集合組織の形成を抑制できていると思われる。
そのため、内面螺旋溝付管の組織の異方性を低減でき、限界引抜き量を向上させた結果、高い捻り角の内面螺旋溝とフィンを形成できると同時に、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を内面螺旋溝付管の捻り角20゜に依存した傾斜をもつように生成できると推定できる。
以上、本願発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本願発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本願発明は実施形態によって限定されることはない。
本発明によりアルミニウムまたはアルミニウム合金製であって内部に螺旋溝と螺旋フィンを備えた内面螺旋溝付管を提供できるようになる。その結果として、熱交換器の低コスト化、軽量化、高性能化等をもたらす。
A…製造装置1…第1の引抜きダイス、2…第2の引抜きダイス、3…フィン、4…螺旋溝、5…素管(直線溝付管:管材)、10…内面螺旋溝付管(伝熱管)、10A…管本体、10B…素管、10a…外周面、10b…内周面、11…巻き出しボビン、21…第1の公転キャプスタン、22…第2の公転キャプスタン、23…公転フライヤ、30…公転機構、34…浮き枠、35…回転シャフト、71…巻取りボビン、80…熱交換器、81…伝熱管(内面螺旋溝付管)、82…放熱板、b…ウエルドラインの螺旋ピッチ、p…フィンの螺旋ピッチ、θ1…螺旋溝の捻り角、θ2…ウエルドラインの捻り角、WL…ウエルドライン。
本発明において、前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることが好ましい。
本発明において、前記集合組織がCu方位{112}111の集積とGoss方位{011}100の集積がなされた集合組織であることが好ましい。
本発明において、前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}111の集積度合いが、引抜管のCu方位{112}111の集積度合いよりも小さくされたことが好ましい。

Claims (11)

  1. 内面に長さ方向に沿う複数の螺旋溝が周方向に間隔をおいて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付管であって、前記複数の螺旋溝がいずれも同一の捻り角で管本体の長さ方向に螺旋状に形成されるとともに、前記管本体の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が形成されたことを特徴とする内面螺旋溝付管。
  2. 前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付管。
  3. 前記集合組織がCu方位{112}{111}の集積とGoss方位{011}{100}の集積がなされた集合組織であることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付管。
  4. 前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}{111}の集積度合いが、引抜管のCu方位{112}{111}の集積度合いよりも小さくされたことを特徴とする請求項3に記載の内面螺旋溝付管。
  5. 前記管本体の外周面に螺旋状のウエルドラインが形成され、前記ウエルドラインが長さ方向に沿って間欠的に螺旋状に形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管。
  6. 前記間欠的に形成されたウエルドラインの長さが5mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の内面螺旋溝付管。
  7. 外周面に螺旋状のダイスマークが形成されており、前記ダイスマークの最大深さが35μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の内面螺旋溝付管。
  8. 外周面における螺旋状の前記ダイスマークの捻り角が、前記螺旋状の前記フィンの捻り角より、1.0°以上大きいことを特徴とする請求項7に記載の内面螺旋溝付管。
  9. 請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の内面螺旋溝付管と、前記内面螺旋溝付管に結合された放熱板と、を備えたことを特徴とする熱交換器。
  10. 内周面に長さ方向に沿って直線的に延びる複数のフィンを有し、外周面に長さ方向に沿って直線的に延びるダイスマークを有するアルミニウム製の素管を押出により成形する押出成形工程と、
    前記素管に引抜きとともに捻り角が5°以上の捻りを付与する捻り引抜き工程と、
    前記引抜き工程の後に縮径率が10%以上の引抜きを行う空引き工程を施すことによって、前記素管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織 を形成することを特徴とする内面螺旋溝付管の製造方法。
  11. 前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることを特徴とする請求項10に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
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