以下、本発明の実施の形態にかかる往復動工具の一例であるセーバソー1について図1乃至図6に基づき説明する。まず、セーバソー1の構成について図1乃至図6に基づき説明する。なお、以下においては、特に言及しない限り、セーバソー1が組み立てられた状態を基準に説明する。
セーバソー1は、木材、鋼材、パイプ等(被切断材)を切断するための電動式の往復動切断工具である。図1及び図2に示されているように、セーバソー1は、ハウジング2と、ギヤケース3と、モータ4と、制御基板5と、コントロール部6と、ギヤ部7と、プランジャ8と、ブレード装着部9と、ベース部10と、保持部11とを備えている。図1は、セーバソー1の外観を示す右側面図である。図2は、セーバソー1の内部構造を示す断面側面図である。
以降の説明においては、図1に示されている「上」を上方向、「下」を下方向、「前」を前方向、「後」を後方向と定義する。また、セーバソー1を後から見た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。
ハウジング2は、セーバソー1の外郭をなしており、モータハウジング21と、ハンドルハウジング22と、フロントカバー23と、第1防振機構24と、第2防振機構25とを有している。ハウジング2は、本発明における「ハウジング」の一例である。
モータハウジング21は前後方向に延びており、モータ4と、制御基板5とを収容している。モータハウジング21の右側面には、梯子や足場に掛けることが可能なフック21Aが設けられている。また、モータハウジング21の下端には、電池パックQを接続可能な電池パック接続部21Bが設けられている。
ハンドルハウジング22は、側面視略コ字状をなしており、モータハウジング21の後方に位置している。ハンドルハウジング22は、作業時に作業者によって把持される把持部22Aを有している。把持部22Aは上下方向に延在し、把持部22Aの前部上部には、モータ4の始動及び停止を制御するための手動操作可能なトリガ22Bが設けられている。
図1乃至図3に示されているように、フロントカバー23は、モータハウジング21の前端から前方に延び、前方に向かうに従って縮径する略円筒形状をなしている。フロントカバー23は、例えば摩擦係数の大きい樹脂等の絶縁性及び断熱性の高い弾性部材からなる。フロントカバーの右側面には、矩形状の開口部が形成されたブレード着脱機構挿通部23Aが設けられ、左側面には、左右方向に貫通孔が形成された突出量調整機構挿通部23Bが設けられている。また、フロントカバー23は、ギヤケース3の抜け落ち防止のために、その内面から半径方向内方に突出する複数の突起を有している。図3は、セーバソー1のフロントカバー23、ギヤケース3、ブレード着脱機構92、ベース部10及び保持部11の組立構造を示す分解斜視図である。
図2に示されている第1防振機構24は、切断作業時のプランジャ8及びブレード装着部9の往復動に伴う振動を抑制する機構である。第1防振機構24は、モータハウジング21とハンドルハウジング22とを前後方向において相対移動可能にハンドルハウジング22の前部とモータハウジング21の上部とを接続している。
第2防振機構25は、切断作業時のプランジャ8及びブレード装着部9の往復動に伴う振動がハンドルハウジング22を把持する作業者に伝わることを抑制する機構である。第2防振機構25は、モータハウジング21とハンドルハウジング22とを前後方向において相対移動可能にハンドルハウジング22の下部とモータハウジング21の後部上部とを接続している。
図2に示されているように、ギヤケース3は、モータハウジング21の前端から前方に延び、前方に向かうに従って縮径する略円筒形状をなしている。図3に示されているように、ギヤケース3は、ギヤケース3の上下方向の略中央を通り且つ上下方向に直交する分割面(仮想面)で分割可能に形成される。ギヤケース3は、上側部分である上ケース31と、下側部分である下ケース32とを有している。上ケース31は、図3中に示されているネジ1Bを含む複数のネジによって下ケース32に固定されている。また、ギヤケース3は、フロントカバー23に収容され、図3中に示されているネジ1Cを含む複数のネジによってフロントカバー23に固定されている。ギヤケース3は、本発明における「ギヤケース」の一例である。
図2及び図3に示されているように、上ケース31は、収容部31Aと、開口部上部31Bとを有している。下ケース32は、収容部32Aと、開口部下部32Bとを有している。
収容部31Aの内面及び収容部32Aの内面は、セーバソー1が組み立てられた状態において、ギヤ部7及びプランジャ8を収容する収容空間3aを提供している。また、上ケース31及び下ケース32(ギヤケース3)は、メタル3A、メタル3B、ベアリング3C及びシール部3D等を介して、ギヤケース3に対して上下方向及び左右方向に移動不能にギヤ部7及びプランジャ8を支持している。シール部3Dは、収容部31A及び収容部32Aの前端部に位置し、作業時に発生する粉塵が収容空間3a内に侵入するのを防止するように構成されている。
開口部上部31Bは、収容部31Aの前端から前方に延びている。図4に示されているように、開口部上部31Bは、シャフト当接壁31Cを有している。シャフト当接壁31Cは、開口部上部31Bの後部に設けられ、前後方向に直交する当接面31Dを有している。図4は、セーバソー1のギヤケース3の内部構造を示す斜視図である。
図3に示されているように、開口部下部32Bは、収容部32Aの前端から前方に延びている。開口部下部32Bは、仕切壁32Cと、薄板32Dとを有している。また、開口部下部の左側面32Fには、フロントカバー23の突出量調整機構挿通部23Bと前後方向及び上下方向において略同一の位置に挿通孔32aが形成されている。
図2及び図3に示されているように、仕切壁32Cは、下ケース32の収容部32Aの前端から前方に延びている。仕切壁32Cの前部及び前後方向における略中央部には、上下方向に延びるネジ孔が形成されている。
薄板32Dは、前後方向に延びており、前部及び前後方向の略中央部には、仕切壁32Cのネジ孔と連通する貫通孔が形成されている。薄板32Dは、貫通孔を介してネジ3E、3Fがネジ孔に螺合されることによってギヤケース3に対して移動不能に固定されている。
図5に示されているように、仕切壁32Cの下方には、前後方向に延びるベース規制壁32Eと、左右方向に延びるシャフト挿通孔32bと、前後方向に延びる保持ピン挿通孔32c及びネジ孔32dとが形成されている。シャフト挿通孔32bは、前後方向及び上下方向において、挿通孔32aと略同位置に位置している。シャフト挿通孔32bは、開口部下部32Bの前部に形成され、ベース規制壁32Eを左右方向に貫通している。保持ピン挿通孔32cは、開口部下部32Bの前部右部に形成され、シャフト挿通孔32bと連通している。ネジ孔32dは、開口部下部32Bの前部左部に形成されている。図5は、セーバソー1の水平断面図であり、突出量調整機構10Bのシャフト10Fの中心を通る断面が示されている。
図2に示されているモータ4は、DCブラシレスモータであり、前後方向に延びる回転軸部41を有している。回転軸部41は、ベアリング41A及びベアリング41Bを介してハウジング2及びギヤケース3に回転可能に支持されている。回転軸部41の前端部には、ピニオン42が設けられている。ピニオン42の後方には、回転軸部41と同軸回転するファン43が固定されている。モータ4は、本発明における「モータ」の一例である。
制御基板5は、前面視略環形状をなしており、モータ4の後方に設けられている。制御基板5上には、モータ4の回転軸部41の位置検出のためのホール素子51及びモータ4を制御するための6個のFET52が設けられている。
コントロール部6は、コントロールボックス61と、パネル62とを有している。
コントロールボックス61は、略直方体状であって、モータハウジング21内に配置されている。コントロールボックス61は、ユーザのトリガ22Bに対する操作及びホール素子51から出力される信号に応じて駆動信号を6個のFET52に選択的に出力し、モータ4の回転方向及び回転速度等を制御する制御基板部を収容している。制御基板部は、例えば、マイコン及び駆動信号出力回路等によって構成されている。
パネル62は、コントロールボックス61から後上方へと延出している。パネル62の延出方向の端面には、作業者が視認可能な表示部が設けられており、作業者は表示部に表示されたバッテリー残量表示や切断速度表示等を確認しながら、トリガ22Bを操作することが可能である。
図2に示されているように、ギヤ部7は、モータ4とプランジャ8との間に介在し、モータ4の回転軸部41の回転運動を前後方向の往復動に変換する機構である。ギヤ部7は、傘歯ギヤ71と、運動変換ピン72とを有している。ギヤ部7は、本発明における「運動変換機構」の一例である。
傘歯ギヤ71は、ギヤケース3(収容空間3a)に収容され、モータ4のピニオン42と噛合している。傘歯ギヤ71は、モータ4の回転軸部41の回転軸と直交する上下方向の回転軸を有している。
運動変換ピン72は、上下方向に延びる略円柱形状をなしている。運動変換ピン72の下部は、傘歯ギヤ71の回転軸に対して偏心した位置に圧入により固定されている。運動変換ピン72の上部は、傘歯ギヤ71の上面から上方に突出している。
プランジャ8は、前後方向に延びる略円柱形状をなしており、ギヤケース3(収容空間3a)内において、前後方向に往復動可能に支持されている。プランジャ8には、ピンガイド81が設けられている。また、プランジャ8は、前後方向において、ピンガイド81と一体に移動する。前後方向は、本発明における「所定の方向」の一例である。プランジャ8は、本発明における「出力部」の一例である。
ピンガイド81は、プランジャ8の後部に設けられ、ピンガイド81の下部には左右方向に延びるとともに上方に窪むガイド溝81aが形成されている。ガイド溝81aの前後方向の幅は、運動変換ピン72の直径よりも僅かに大きく構成され、運動変換ピン72の上部がニードルベアリングを介してガイド溝81aに収容されている。運動変換ピン72は、ピンガイド81に対して前後方向の移動が規制され、左右方向の移動が許容されている。
ブレード装着部9は、プランジャ8の前端部に設けられ、前端にブレードPを装着可能に構成されている。ブレード装着部9は、ブレードホルダ部91と、ブレード着脱機構92とを有している。ブレード装着部9は、本発明における「先端工具装着部」の一例である。ブレードPは、本発明における「先端工具」の一例である。プランジャ8の前端部は、本発明における「出力部の一端部」の一例である。
ブレードホルダ部91は、略円筒形状をなしており、スプリング93によって前面視における反時計回り方向に付勢されている。ブレードホルダ部91は、当該前面視における反時計回り方向に付勢された状態においてブレードPを着脱不可能に保持する。ブレードホルダ部91は、その外周に図示せぬ爪部が設けられており、当該図示せぬ爪部を介して前面視における時計回り方向に回転させられることによって、ブレードPを着脱可能(取付け可能)な状態に切替わる。
図1及び図3に示されているように、ブレード着脱機構92は、セーバソー1の前部の右側面に位置し、ブレードホルダ部91(ブレード装着部9)にブレードPを着脱可能な状態と着脱不可能な状態とのいずれかに切替可能に構成されている。図3に示されているように、ブレード着脱機構92は、本体部92Aと、前後方向に延びるシャフト92Bと、バネ92Cとを有している。ブレード着脱機構92は、本発明における「先端工具着脱機構」の一例である。
本体部92Aは、その前後方向の中央を通り且つ前後方向に直交する仮想面に関して対称に構成されている。本体部92Aは、着脱レバー92Dと、シャフト挿通部92Eと、係合部92Fとを有している。
図1に示されているように、着脱レバー92Dは、ブレードPを着脱する際に作業者が操作する部分であり、右側面視略矩形状をなしている。また、着脱レバー92Dは、作業者が操作可能なようにフロントカバー23の表面に露出している。着脱レバー92Dは、本発明における「着脱レバー」の一例である。
図3に示されているように、シャフト挿通部92Eは、本体部92Aの下部に位置し、本体部92Aの前後方向の中央を通り且つ前後方向に直交する仮想面に関して対称に2箇所設けられている。シャフト挿通部92Eは、前後方向に延びる挿通孔92aを有している。挿通孔92aには、シャフト92Bが挿通されている。本実施の形態においては、本体部92Aは、シャフト92Bの軸心を中心として、回転可能に構成されている。また、バネ92Cは、前面視における時計回り方向に本体部92Aを付勢している。
係合部92Fは、前後方向に延びる板状をなしている。係合部92Fは、その左端に金属製の爪部92Gを有している。爪部92Gは、ブレードホルダ部91の図示せぬ爪の下方に位置している。
図2に示されているように、ベース部10は、ギヤケース3の前部に設けられている。
ベース部10は、ベース10Aと、突出量調整機構10Bとを有している。
ベース10Aは、切断作業時にセーバソー1を被切断材に対して安定させる部分であり、前方に向かってギヤケース3から突出している。より詳細には、ベース10Aは、プランジャ8の後端部から前端部に向かう方向においてギヤケース3から突出している。ベース10Aは、延出部10Cと、被切断材に当接させる当接部10Dとを有している。プランジャ8の後端部は、本発明における「出力部の他端部」の一例である。
延出部10Cは、前後方向に延び、その前端部を当接部10Dの下部に固定されている。延出部10Cは、その左右方向の中央を通り且つ左右方向に直交する仮想面に関して対称に構成されている。延出部10Cの後部には、略半円状の切欠きが複数形成されている。延出部10Cの後部は、上下方向において、下ケース32のベース規制壁32Eと略同位置に位置している。また、延出部10Cの後部において、延出部10Cの右側部分の左端面と延出部10Cの左側部分の右端面との間の距離と、ベース規制壁32Eの左右方向の長さは略同一に構成されている。そして、延出部10Cの後部において、延出部10Cの右側部分と左側部分との間にベース規制壁32Eが位置することによって、ベース10Aの上下方向に延びる軸心を中心とする回転が規制されている。
突出量調整機構10Bは、ベース10Aのギヤケースからの突出量を調整可能に構成されている。ここで、ギヤケース3の前端からベース10Aの前端までの距離をベース10Aの突出量と定義する。突出量調整機構10Bは、調整レバー10Eと、シャフト10Fとを有している。突出量は、本発明における「突出量」の一例である。突出量調整機構10Bは、本発明における「突出量調整機構」の一例である。
図3に示されているように、調整レバー10Eは、前後方向に延び、ベース10Aのギヤケース3からの突出量を調整する際に作業者が操作する部分である。また、調整レバー10Eは、作業者が操作可能なようにフロントカバー23の表面に露出している。調整レバー10Eは、本発明における「調整レバー」の一例である。
図5に示されているように、シャフト10Fは、左右方向に延びる略円柱形状をなしている。シャフト10Fは、調整レバー10Eと一体に形成されている。調整レバー10E及びシャフト10Fは、シャフト10Fの中心を通る軸心を中心に一体に回転することが可能である。シャフト10Fは、下ケース32のシャフト挿通孔32bに挿通されている。シャフト10Fの曲率半径は、ベース10Aの延出部10Cの半円状の切欠きの曲率半径と略同一に構成され、調整レバー10Eに外力が働いていない状態において、シャフト10Fの外周が延出部10Cの半円状の切欠きと当接することによってベース10Aはギヤケース3に対して移動不能に保持される。シャフト10Fの右部には、シャフト10Fの周方向に延びる当接面10Hが規定されている。当接面10Hの右方及び左方には、シャフト10Fの周方向に延び左右方向に直交する当接面10I及び当接面10Jが規定されている。シャフト10Fは、調整レバー10Eに対して外力が働いていない状態において前後方向に直交する面10Gを有している。
面10Gは、ベース規制壁32Eの左右方向の中央を通り且つ左右方向に直交する仮想面に関して対称に構成されている。また、面10Gは、ベース10Aの延出部10Cと左右方向において略同位置に位置している。調整レバー10Eに対して外力が働いていない状態において面10Gからシャフト10Fの右端までの距離は、ベース10Aの延出部10Cの略半円状の切欠きの深さと略同一に構成されている。
図4に示されているように、保持部11は、ギヤケース3に固定されギヤケース3を介してブレード着脱機構92及び突出量調整機構10Bを保持するように構成されている。保持部11は、ギヤケース3の前端に位置し、本体部11A、保持壁部11Bと、保持ピン11Cと、腕部11Dと、被固定部11Eとを有している。保持部11は、本発明における「位置決め部」の一例である。
図4及び図5に示されているように、本体部11Aは、左右方向に延びており、上下方向に直交する上面11Fと、前後方向に直交する当接面11Gとを有している。
図4及び図6に示されているように、保持壁部11Bは、本体部11Aの右上部から右上方へ延出し、前後方向に直交する当接面11Hを有している。当接面11Hと上ケース31の当接面31Dとの間の距離は、ブレード着脱機構92のシャフト92Bの長さと略同一に構成されている。すなわち、シャフト92Bは、ギヤケース3に対して、前後方向に移動不能である。言い換えると、保持壁部11Bは、ブレード着脱機構92(シャフト92B)をギヤケース3に対して前後方向に移動不能に保持している。図6は、セーバソー1の水平断面図であり、ブレード着脱機構92のシャフト92Bの中心を通る断面が示されている。保持壁部11Bは、本発明における「壁部」の一例である。
図4及び図5に示されているように、保持ピン11Cは、本体部11Aの左部から後方へと延びる略円柱形状をなしており、下ケース32の保持ピン挿通孔32cに挿通されている。保持ピン11Cは、基部11Iと、先端部11Jとを有している。先端部11Jは、前後方向に直交する当接面11Kと、左右方向に直行する面11Lと、面11Mとを有している。当接面11Kと突出量調整機構10Bの当接面10Hとは当接している。また、面11Lと突出量調整機構10Bのシャフト10Fの当接面10Iとは左右方向において対向し、面11Mと突出量調整機構10Bの面10Gとは左右方向において対向している。すなわち、保持ピン11Cは、ギヤケース3を介して突出量調整機構をギヤケース3に対して前後方向に移動不能且つ左右方向に移動不能に保持している。また、面11Lと面11Mとの間の距離は、基部11Iの直径よりも短く構成されている。保持ピン11Cは、本発明における「ピン」の一例である。
上記より、保持部11は、ギヤケース3に固定された状態で、ブレード着脱機構92及び突出量調整機構10Bを保持している。
図4及び図5に示されているように、被固定部11Eは、本体部11Aの左部から左方に延出し、上下方向に直交する上面11Nと、前後方向に直交する当接面11Oとを有している。左右方向及び上下方向の略中央には、貫通孔11aが形成されている。貫通孔11aと下ケース32のネジ孔32dとは上下方向及び左右方向において略同位置に位置し、貫通孔11aを介してネジ1Aをネジ孔32dにネジ込むことによって保持部11は、ギヤケース3に対して移動不能に固定されている。すなわち、保持部11は、一本のネジ1Aによってギヤケース3に固定されている。ネジ1Aは、本発明における「一本のネジ」の一例である。
図4及び図6に示されているように、腕部11Dは、被固定部11Eの左上部から左上方へと延出し、前後方向に直交する当接面11Pと、左右方向に直交する側面11Qとを有している。
ここで、上述した保持部11の各面の位置関係について説明する。図4乃至図6に示されているように、本体部11Aの当接面11Gと、保持壁部11Bの当接面11Hと、腕部11Dの当接面11Pと、被固定部11Eの当接面11Oとは、略面一に構成されており、当接面11G、当接面11H、当接面11P及び当接面11Oは、下ケース32の前端面と当接している。また、本体部11Aの上面11Fと、被固定部11Eの上面11Nと、下ケース32の仕切壁32Cの上面とは、略面一に構成されている。さらに、腕部11Dの側面11Qと、下ケース32の左側面32Fとは略面一に構成されている。
ここからは、本実施の形態におけるセーバソー1を用いた被切断材(例えば、金属パイプ)の切断作業及び切断作業時のセーバソー1の動作について説明する。
切断作業を行う場合、作業者は、ブレード装着部9のブレードホルダ部91にブレードPを装着する。具体的には、ブレード着脱機構92の着脱レバー92Dを右方に倒すように引操作を行う。本体部92Aがシャフト92Bの軸心を中心として前面視において反時計回り方向に回転するため、係合部92Fの爪部92Gとブレードホルダ部91の図示せぬ爪部とが係合する。この状態から、更に本体部92Aをシャフト92Bの軸心を中心として前面視において反時計回り方向に回転させると、ブレードホルダ部が前面視において時計回り方向に回転するためブレード装着部9にブレードPを着脱可能(取付け可能)な状態に切替わる。次に、作業者は、ブレードPをブレードホルダ部91に取付け、着脱レバー92Dに対する引操作を解除する。この状態において、ブレードホルダ部91は、スプリング93によって前面視における反時計回り方向に付勢され、ブレードPを着脱不可能に保持する。
次に作業者は、被切断材の位置に応じてベースの突出量を調整する。具体的には、突出量調整機構10Bの調整レバー10Eをシャフト10Fの軸心を中心に回転させる。この状態において、シャフト10Fの面10Gが上下方向に直交する位置に位置すると、シャフト10Fの外周と、ベース10Aの延出部10Cの半円状の切欠きとの当接が解消され、ベース10Aはギヤケース3に対して前後方向に移動可能となる。ここで、作業者は、ベースの突出量を調整し、調整レバー10Eを元の位置に戻す。この状態において、シャフト10Fの外周が、ベース10Aの延出部10Cの半円状の切欠きと当接し、ベース10Aはギヤケース3に対して移動不能に保持される。
ここで、被切断材にベース10Aの当接部10Dを押し当てた状態でトリガ22Bに対して引操作を行うと、コントロールボックス61の制御部が6個のFET52を制御し、電池パックQの電力がモータ4へ供給され、モータ4が駆動を開始する。モータ4が駆動を開始すると回転軸部41及びピニオン42が回転し、ピニオン42と噛合する傘歯ギヤ71が上下方向に延びる回転軸を中心として回転する。この傘歯ギヤ71の回転によって、運動変換ピン72が上下方向に垂直な面上において傘歯ギヤ71の回転軸を中心とした周回運動を行う。この運動変換ピン72の周回運動における前後方向の成分のみがピンガイド81に伝達され、プランジャ8、ブレード装着部9及びブレード装着部9に装着されたブレードPが前後方向に往復動し、往復動するブレードPによって図示せぬ被切断材が切断される。
ここからは、図3乃至図6を参照しながら、本実施の形態におけるセーバソー1の組み立て作業について説明する。なお、フロントカバー23、ギヤケース3、ブレード着脱機構92、ベース部10及び保持部11以外の組立方法(組立順序)については、従来技術と同様のため説明を省略する。
まず、ギヤケース3の組み立て工程について説明する。図3に示されているように、上ケース31と下ケース32とを用意する。図3中に図示せぬギヤ部7、プランジャ8及びブレード装着部9等を下ケース32に適切に配置する。この状態において、上ケース31を図3中に示されているネジ1Bを含む複数のネジによって下ケース32に固定する。
次に、組み立て後のギヤケース3をフロントカバー23に固定する工程について説明する。図3に示されているように、フロントカバー23の後方からギヤケース3を挿入する。このときに、フロントカバー23の有する内面から半径方向内方に突出する複数の突起がギヤケース3の外周と当接することによって、突起の先端面とギヤケース3の外周面との間の面圧が上昇し、ギヤケース3がフロントカバー23から抜け落ちることが抑制される。この状態において、ギヤケース3を図3中に示されているネジ1Cを含む複数のネジによってフロントカバー23に固定する。組み立て後のギヤケース3をフロントカバー23に固定する工程は、本発明における「第1工程」の一例である。
次に、ギヤケース3にベース10Aを固定する工程について説明する。図3に示されているように、ギヤケース3をフロントカバー23に固定した後に、ベース10Aの延出部10Cを下ケース32の開口部下部32Bの仕切壁32Cの下面に当接させる。この状態において、薄板32Dを下方から延出部10Cの下面に当接させ、薄板32Dの貫通孔を介して仕切壁32Cのネジ孔にネジ3E、3Fを螺合させることによって、ベース10Aをギヤケース3に対して移動不能に固定する。
次に、ブレード着脱機構92をフロントカバー23及びギヤケース3に配置する工程について説明する。図3及び図4に示されているように、ギヤケース3をフロントカバー23に固定した後に、ブレード着脱機構92の本体部92Aを爪部92Gが本体部92Aの左下にくるように、フロントカバー23のブレード着脱機構挿通部23Aの開口部に差し込む。この状態において、前方からシャフト92Bをシャフト挿通部92Eに挿通する。
次に、突出量調整機構10Bをフロントカバー23及びギヤケース3に配置する工程について説明する。図3に示されているように、ギヤケース3をフロントカバー23に固定した後に、突出量調整機構10Bのシャフト10Fをフロントカバー23の突出量調整機構挿通部23Bの貫通孔に挿通する。このとき、図5に示されているように、突出量調整機構挿通部23Bの貫通孔と前後方向及び上下方向において略同位置に位置する下ケース32の挿通孔32a及びシャフト挿通孔32bにシャフト10Fが挿通される。ブレード着脱機構92をフロントカバー23及びギヤケース3に配置する工程と突出量調整機構10Bをフロントカバー23及びギヤケース3に配置する工程とは、本発明における「第2工程」の一例である。
次に、保持部11をギヤケース3に固定する工程について説明する。ブレード着脱機構92及び突出量調整機構10Bをフロントカバー23及びギヤケース3に配置した後に、保持部11をギヤケース3に前方から取付ける。保持部11をギヤケース3に固定する工程は、本発明における「第3工程」の一例である。
具体的には、図5に示されているように、まず保持ピン11Cを保持ピン挿通孔32cに挿通する。このときに、保持ピン11Cの先端部11Jの面11Lと面11Mとの間の距離は、基部11Iの直径よりも短く構成されているため、容易に保持ピン11Cを保持ピン挿通孔32cに挿通させることが可能である。
また、図5及び図6に示されているように、保持ピン11Cを保持ピン挿通孔32cに挿通させた状態で、本体部11Aの当接面11G、保持壁部11Bの当接面11H、腕部11Dの当接面11P及び被固定部11Eの当接面11Oを、下ケース32の前端面と当接させる。このときに、本体部11Aの上面11Fと、被固定部11Eの上面11Nと、下ケース32の仕切壁32Cの上面とが、略面一となるようにする。
保持部11の各当接面を下ケース32の前端面に当接させた状態で、ネジ1Aによって保持部11をギヤケース3に固定する。より詳細には、ネジ1Aを保持部11の被固定部11Eの貫通孔11aを介して下ケース32のネジ孔32dにネジ込む。
この状態において、ブレード着脱機構92のシャフト92Bは、その後方において上ケース31の当接面31Dと当接し、その前方において保持壁部11Bの当接面11Hと当接している。すなわち、保持部11(保持壁部11B)は、ブレード着脱機構92(シャフト92B)をギヤケース3に対して前後方向に移動不能に保持している。また、面11Lと突出量調整機構10Bのシャフト10Fの当接面10Iとは左右方向において対向し、面11Mと突出量調整機構10Bの面10Gとは左右方向において対向している。すなわち、保持ピン11Cは、ギヤケース3を介して突出量調整機構をギヤケース3に対して前後方向に移動不能且つ左右方向に移動不能に保持している。上記より、保持部11は、ギヤケース3に固定された状態で、ブレード着脱機構92及び突出量調整機構10Bを保持している。
また、ブレード着脱機構92(着脱レバー92D)及び突出量調整機構10B(調整レバー10E)は、フロントカバー23がギヤケース3を収容している状態で、保持部11をギヤケース3から取り外すことで着脱可能となるように構成されている。
上述のように、本実施の形態によるセーバソー1は、モータ4と、モータ4を収容するハウジング2と、ハウジング2に収容されるギヤケース3と、前後方向に延び、ギヤケース3内において前後方向に往復動可能に支持されたプランジャ8と、ギヤケース3内でモータ4とプランジャ8との間に介在し、モータ4の回転運動を往復動に変換しプランジャ8を往復動させるギヤ部7と、プランジャ8の前端部に設けられ、ブレードPを着脱可能な状態と着脱不可能な状態とのいずれかに切替可能なブレード着脱機構92を有するブレード装着部9と、プランジャ8の前方に位置し、ギヤケース3から前方に突出し、突出量を変更可能なベース10Aと、ベース10Aに接続され、ベース10Aの突出量を調整可能な突出量調整機構10Bと、ギヤケース3に固定され、ブレード着脱機構92と突出量調整機構10Bとを保持する保持部11と、を有し、ブレード着脱機構92は、手動操作可能な着脱レバー92Dを有し、突出量調整機構10Bは、手動操作可能な調整レバー10Eを有し、着脱レバー92D及び調整レバー10Eは、ハウジング2の表面に露出している。これにより、着脱レバー92Dと調整レバー10Eがハウジング2の外部(表面)に露出するため、作業者は、容易にブレードPの着脱及びベース10Aの突出量の調整をすることが可能となる。また、ブレード着脱機構92と突出量調整機構10Bとがともに保持部11によってギヤケース3を介して保持されるため、フロントカバー23をギヤケース3に固定したあとに、ブレード着脱機構92と突出量調整機構10Bを保持することが可能となる。これによって、フロントカバー23をギヤケース3に固定した後に、単一の部品で同時にブレード着脱機構92と突出量調整機構10Bを固定することが可能となるため、容易にセーバソー1の組立をすることが可能となる。さらに、ブレード着脱機構92と突出量調整機構10Bとがともにギヤケース3を介して保持部11によって保持されるため、部品点数を削減することが可能となる。また、突出量調整機構10Bの固定がフロントカバー23を固定したあとに可能となるため、フロントカバー23をギヤケース3に固定する前にシャフト10Fをフロントカバー23の突出量調整機構挿通部23Bの貫通孔に挿通しておく必要がなく、フロントカバー23をギヤケース3に固定する際に突出量調整機構10Bが邪魔になる事が無い。
また、保持部11は、ブレード着脱機構92をギヤケース3に対して前後方向に移動不能に保持する保持壁部11Bと、突出量調整機構10Bをギヤケース3に対して前後方向に移動不能に保持する保持ピン11Cとを有しているため、ブレード着脱機構92と突出量調整機構10Bとがともに保持部11によって保持されるため、容易にセーバソー1の組立をすることが可能となる。また、ブレード着脱機構92と突出量調整機構10Bとがともにギヤケース3を介して保持部11によって保持されるため、部品点数を削減することが可能となる。
また、保持部11は、一本のネジによってギヤケース3に固定されているため、容易に往復動工具の組立をすることが可能となる。
また、保持部11は、フロントカバー23がギヤケース3を収容している状態で、ギヤケース3に固定可能であるため、フロントカバー23にギヤケースを収容した後において、ブレード着脱機構92及び突出量調整機構10Bをギヤケース3に取付けることが可能となる。
上述のように、本実施の形態によるセーバソー1の組み立て方法は、組み立て後のギヤケース3をフロントカバー23に固定する工程と、ギヤケース3をフロントカバー23に固定した後に、ブレード着脱機構92をフロントカバー23及びギヤケース3に配置する工程と突出量調整機構10Bをフロントカバー23及びギヤケース3に配置する工程と、ブレード着脱機構92及び突出量調整機構10Bをフロントカバー23及びギヤケース3に配置した後に、保持部11をギヤケース3に固定する工程とを有しているため、ギヤケース3にブレード着脱機構92及び突出量調整機構10Bを取付けた後にフロントカバー23で被冠する場合と比較して容易にセーバソー1の組立をすることが可能となる。
本発明の実施の形態について説明したが、本発明による往復動工具は、上述した実施の形態に限定されず特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。また、上記の実施の形態においては、往復動するブレード装着部9を備えるセーバソー1を例に説明したが、これに限られず、ギヤケースをカバーで覆いながら先端工具着脱用の操作部材等を複数露出させる構成であれば本発明を適用することができ、例えば、ブレード着脱機構と変速ダイヤルをカバーから露出させるジグソーなどの作業工具についても適用することができる。
また、本実施の形態においては、ブレード着脱機構及び突出量調整機構はそれぞれフロントカバ―の右方と左方から露出していたが、取付位置を逆にしてもよい。