以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の各実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
[第一の実施形態]
図1〜図9を用いて、第一の実施形態に係る電動工具としてのヘッジトリマ10についての説明を行う。ここで、図1は、第一の実施形態に係るヘッジトリマの上面を示す外観図であり、図2は、図1中の符号A−A断面を示す断面図であり、図3は、図1中の符号B−B断面を示す断面図である。また、図4および図5は、第一の実施形態に係るヘッジトリマが本体部と刃体ユニットとに分離された状態を示す図であり、図4が上面側から見た場合の外観斜視図を示し、図5が下面側から見た場合の外観斜視図を示している。また、図6は、第一の実施形態に係るヘッジトリマが本体部と刃体ユニットとに分離された状態での縦断面側面図である。また、図7は、第一の実施形態に係るヘッジトリマの本体部が備える係止部材の部品単体での形状を説明するための外観斜視図であり、分図(a)が上面側から見た場合の外観斜視図を示し、分図(b)が下面側から見た場合の外観斜視図を示している。さらに、図8は、図2中の符号C−C断面を示す断面図であり、図9は、図2中の符号D−D断面を示す断面図である。
なお、第一の実施形態では、説明の便宜のために、ヘッジトリマ10の方向を図1および図2で示すように定義した。すなわち、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10を作業者が把持したときに、作業者から見た場合の方向に基づいて「前、後、上、下、左、右」を決定してある。
第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、図2、図4および図5にて示されるように、駆動源であるモータ12を収納する本体部11と、モータ12からの駆動力を受けて動作する刃体工具22を有する刃体ユニット21と、を備えて構成されており、これら本体部11と刃体ユニット21とは、分離・結合が可能なように着脱自在に構成されている。
本体部11の外郭形状は、図2にて詳細に示されるように、モータ12を収納する前ハウジング部11aと、操作者からの把持を受ける把持部として機能する上ハウジング部11bと、刃体ユニット21の着脱部位となる下ハウジング部11cと、外部電源からの電力を供給するための電気コード15が設置される後ハウジング部11dと、を有して構成されている。上ハウジング部11bには、前ハウジング部11aの内部に設置されるモータ12の運転操作を行うためのトリガスイッチ13が備えられており、操作者がトリガスイッチ13のオン/オフ操作を行うことで、モータ12の起動/停止が実施される。
モータ12は、上下方向に軸線方向を向けたモータ軸14を有している。そして、モータ12が有するモータ軸14の下方側の軸先端部には、駆動歯車14aが形成されている。この駆動歯車14aは、図5に示すように、本体部11の下面側から下方に向けて突出して設けられている。すなわち、駆動歯車14aが突出する部位は、本体部11における刃体ユニット21との着脱部位に相当しており、本体部11に対して刃体ユニット21を装着したときには、本体部11から突出した駆動歯車14aが刃体ユニット21の内部に対して挿入されるように構成されている(図2等参照)。
また、モータ軸14の軸先端部に形成された駆動歯車14aは、ねじれ角を有するハスバ歯車として構成されている。なお、第一の実施形態に係る駆動歯車14aのねじれ方向は、図5に示されるように右ねじれであり、また、ヘッジトリマ10を上面側から見たときに、駆動歯車14aが時計回りに回転するように構成されている。
一方、刃体ユニット21は、図2および図6にて示されるように、本体部11が有する駆動歯車14aに噛み合う従動歯車24aを有するとともに当該従動歯車24aが取り付けられる従動軸24の回転運動に伴って動作する刃体工具22を有して構成されている。
本体部11に対して刃体ユニット21を装着したとき、従動歯車24aは、駆動歯車14aと噛み合うように構成されている。すなわち、従動歯車24aは、駆動歯車14aと同じねじれ角を有する左ねじれのハスバ歯車として構成されている。また、ヘッジトリマ10を上面側から見たときに、駆動歯車14aが時計回りに回転すると、従動歯車24aは反時計回りに回転することとなる。
また、上述した従動歯車24aが取り付けられる従動軸24には、図9に示されるように、偏心カム25が取り付けられている。なお、第一の実施形態の場合、この偏心カム25は、従動軸24に対して上下方向で2つ設置されており、これら2つの偏心カム25が後述する刃体工具22と協働することで、モータ軸14、駆動歯車14a、従動歯車24aおよび従動軸24を経由して伝達されるモータ12の回転運動を、刃体工具22の前後運動へと変換する運動変換機構として機能することができる。
次に、図1、図2、図4〜図6を参照して、刃体工具22の構成を説明する。刃体工具22は、刈刃として機能する板状の上ブレード22aと下ブレード22bを備えている。上下ブレード22a,22bは、前後に伸びる長尺部22c,22dと、長尺部22c,22dの両側方に櫛歯状に列設される複数の切断刃22c´,22d´を有している。上ブレード22aの長尺部22cの上方には、金属製の板材を断面視コの字状に成形した上ブレードホルダ31が配置されており、下ブレード22bの長尺部22dの下方には、金属製の板材からなる下ブレードホルダ32が配置されている。上ブレードホルダ31と下ブレードホルダ32の間には、筒状のガイドスペーサ33が配置されている。上下ブレード22a,22bの長尺部22c,22dにはガイドスペーサ33が遊嵌する不図示の長孔が形成されている。刃体工具22は、ガイドスペーサ33が不図示の長孔に遊嵌した状態で、上方より、上ブレードホルダ31、上ブレード22a、下ブレード22b、下ブレードホルダ32の順に重ねた状態で、下側からネジ34を挿嵌し、上方でナット35を締め付けることで、上ブレードホルダ31と下ブレードホルダ32がガイドスペーサ33を介して連結されるとともに、上ブレードホルダ31と下ブレードホルダ32の間で上ブレード22aと下ブレード22bが前後方向に移動可能に配置される。このため、ガイドスペーサ33で規定される上ブレードホルダ31と下ブレードホルダ32の間の距離は、上ブレード22aと下ブレード22bの厚さの合計よりわずかに大きく設定されている。また、図9に示すように、上ブレード22aと下ブレード22bの後部には、上述した2つの偏心カム25のそれぞれが挿入設置される長円形のカム溝22a´,22b´が形成されている。さらに、下ブレードホルダ32の後部は、刃体ユニット21の下面に固定されている。
上述の構成において、トリガスイッチ13のオン操作によりモータ12が駆動すると、2つの偏心カム25がそれぞれの位相を変えて回転運動することとなる。すると、2つの偏心カム25と2つのカム溝22a´,22b´の作用によって、上ブレード22aと下ブレード22bが互いに180度の位相差で前後に往復運動を行うこととなる。刃体工具22によるこのような動作によって、切断刃22c´,22d´の間に進入した草木等を切断することが可能となる。
なお、刃体ユニット21には、中央部位から前方に向けて補助ハンドル28が設置されるとともに、補助ハンドル28の前方にガード部材29が設置されている。補助ハンドル28を使用することで操作者の操作性を向上させるとともに、ガード部材29の設置によって、刃体工具22方向から飛翔してくる切り粉等から操作者を適切に保護することが可能となっている。
以上、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10の基本構成についての説明を行った。第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、上述した構成を備えることにより、以下に記す様々な有意な効果を発揮することとなる。
すなわち、上述したように、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10では、本体部11に配置される駆動歯車14aと、刃体ユニット21に配置される従動歯車24aとの噛み合い部において、本体部11に対する刃体ユニット21の着脱を行う構成が採用されている。つまり、第一の実施形態では、減速機構として機能する従動歯車24aは、刃体ユニット21に対して設置されている。かかる構成は、刃体ユニット21ごとに従動歯車24aを変更することができることを示している。つまり、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10によれば、刃体工具22の種類に応じて従動歯車24aの歯数を任意に変更することができるので、様々な刃体工具に応じて最適な歯車減速比を容易に選定することが可能となる。
また、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10では、従来技術のようにクラッチ板を装備する必要が無いので、装置重量の増加を低減した装置設計が可能である。また、コストアップ要因となるクラッチ板が不要であることから、製造コストの削減効果も得ることができる。
また、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10では、本体部11に対して刃体ユニット21が取り付けられたときに、モータ軸14に対して従動軸24がオフセットして配置されている。つまり、モータ軸14の中心軸線に対して従動軸24の中心軸線がずれて構成されており、さらに、モータ軸14の中心軸線に対して従動軸24の中心軸線が後方にずれて設けられている。かかる構成は、本体部11を構成する下ハウジング部11cの内部において従動軸24を省スペースで収納することに寄与しており、本体部11のコンパクト化を実現している。また、従動軸24をモータ軸14の中心軸線に対して後方にずらして設けることにより、刃体ユニット内において従動軸24を両持ち支持構造とすることが可能となっている。具体的には、図2に示すように、第一の実施形態に係る従動軸24は、上方がハット形状をしたカップリング軸受26によって軸支されるとともに、下方が下ブレードホルダに形成された孔27によって軸支されている。この従動軸24の構成は、モータ12の回転運動を刃体工具22の前後運動へと変換する運動変換機構として機能する従動軸24にとって非常に有利に働くものであり、運動変換を安定かつスムーズに行う効果を発揮するとともに、従動軸24の強度と安全率の向上によって、装置寿命の向上効果も得られることとなる。
また、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10では、上述したように、モータ軸14の軸先端部に形成された駆動歯車14aと従動歯車24aは、ねじれ角を有するハスバ歯車として構成されている。そして、第一の実施形態に係る駆動歯車14aのねじれ方向については、図5に示されるように右ねじれであり、また、ヘッジトリマ10を上面側から見たときに、駆動歯車14aが時計回りに回転するように構成されている。一方、第一の実施形態に係る従動歯車24aのねじれ方向については、図5に示された駆動歯車14aに対応するように左ねじれであり、また、ヘッジトリマ10を上面側から見たときに、駆動歯車14aが時計回りに回転すると、従動歯車24aは反時計回りに回転するように構成されている。かかる構成は、従動歯車24aを本体部11側に引き寄せる方向に軸力が働く作用を及ぼすものである。このように、本体部11の駆動歯車14aおよび刃体ユニット21の従動歯車24aのねじれ角と回転方向について、従動歯車24aを本体部11側(上側)に引き寄せる方向に軸力が働く作用を及ぼすように設定することにより、刃体ユニット21が本体部11に引き寄せられることになるので、刃体ユニット21が本体部11から不意に脱落することを好適に予防することが可能となる。
さらに、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、本体部11に対して刃体ユニット21を好適に取り付けるための構成を有している。この取り付け機構について、さらに説明を行う。
まず、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、本体部11に対して刃体ユニット21を安定して取り付けるための位置決め機構を有している。具体的には、図5に示すように、本体部11の下面側からは駆動歯車14aが下方に向けて突出しているが、この駆動歯車14aの周囲には、円形をした円形凸状部51が形成されている。また、この円形凸状部51の後方には、2本の円柱凸状部52が形成されている。一方、図4に示すように、前記した円形凸状部51と2本の円柱凸状部52とに対応する刃体ユニット21の上面の位置には、円形凸状部51を嵌め込むための円形凹状部41と2本の円柱凸状部52を嵌め込むための2つの小円形凹状部42が形成されている。したがって、本体部11に対して刃体ユニット21を取り付けると、円形凸状部51と円形凹状部41が嵌合状態となるとともに、2本の円柱凸状部52と2つの小円形凹状部42が嵌合状態となり、本体部11と刃体ユニット21とは3点支持の状態となり、前後左右方向での位置ずれが防止されることとなる。
さらに、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、本体部11に対する刃体ユニット21の取り付け状態を保持するための位置保持機構を有している。具体的には、図4〜図7に示すように、本体部11における刃体ユニット21との着脱部位には、スライド移動可能に配設された係止部材61が設置されている。この係止部材61は、図7にてより詳細に示されるように、プレート状の部材として構成される係止部材本体部61aと、この係止部材本体部61aの下面側の四隅から下方に向けて突出形成される略L字形状をした4つの係止爪61bと、係止部材本体部61aの後方の上面側から上方に向けて突出して形成される操作部61cとを有して構成されている。そして、この係止部材61は、図6にてより詳細に示されるように、本体部11の下面側に対して設置されており、本体部11の下方部位を形成する下ハウジング部11cの内部を貫通して設置されている。そして、係止部材61が有する操作部61cは、下ハウジング部11cの上面に表出するように配置されており、上ハウジング部11bと下ハウジング部11cとで囲まれることで形成される把持空間部S側から操作可能となるように構成されている。また、係止部材61が有する係止部材本体部61aと下ハウジング部11cの下面側の間には、弾性体としてのコイルバネ62が設置されている。このコイルバネ62から及ぼされる弾性力の作用によって、係止部材61は、常に本体部11の前方に向けて付勢されることとなる。
一方、刃体ユニット21における本体部11との着脱部位には、上述した4つの係止爪61bのそれぞれが係止可能な4つの係止部としての係止孔71が設けられている(図4参照)。なお、この4つの係止孔71は、略L字形状をした4つの係止爪61bが挿入されたときには、4つの係止爪61bを係止できるように略L字形状からなる溝形状を有して構成されている(図3参照)。
したがって、図4〜図6で示す状態、すなわち、本体部11と刃体ユニット21とが分離された状態から、刃体ユニット21に向けて本体部11を真っ直ぐに降下させると、まず、4つの係止爪61bは、4つの係止孔71の前方位置の平面(すなわち、刃体ユニット21の上面)に接触することとなる。ここで、図3にてより詳細に示されるように、4つの係止爪61bの先端部下方側は傾斜部61b´を有して構成されており、4つの係止孔71の前方側入口も傾斜面71´を有して構成されているので、これら傾斜部61b´および傾斜面71´の作用によって、係止部材61には、コイルバネ62から及ぼされる弾性力に抗した後方に向けたスライド移動のための力が及ぼされることとなる。すると、係止部材61は、コイルバネ62の及ぼす弾性力に抗する方向に力を受けて後方に向けてスライド移動するので、4つの係止爪61bが4つの係止孔71に挿入されることとなる。すると、4つの係止孔71は、略L字形状をした4つの係止爪61bが挿入されたときには、4つの係止爪61bを係止できるように略L字形状からなる溝形状を有して構成されているので、コイルバネ62の弾性力に抗する力が解除され、係止部材61は、コイルバネ62の及ぼす弾性力を受けることで係止方向(ヘッジトリマ10の前方方向)に付勢され、図3で示すような本体部11と刃体ユニット21との連結状態が実現されることとなる。つまり、4つの係止爪61bと4つの係止孔71の作用によって、本体部11と刃体ユニット21とが上下方向で分離不能なように連結されるとともに、円形凸状部51と円形凹状部41、および2本の円柱凸状部52と2つの小円形凹状部42の嵌合作用により、本体部11と刃体ユニット21とが3点支持されて前後左右方向での位置ずれが防止された状態で連結されることとなる。
なお、本体部11と刃体ユニット21とが連結された状態から、本体部11と刃体ユニット21とを分離する際には、把持空間部S側から操作可能な操作部61cを後方に移動させることで、4つの係止爪61bと4つの係止孔71との係止状態が解除されるので、刃体ユニット21から本体部11を上方に向けて引き上げることで、本体部11と刃体ユニット21との分離が可能となる。すなわち、第一の実施形態によれば、本体部11と刃体ユニット21との取り付け作業は、ワンアクションで実現することができ、また、本体部11と刃体ユニット21との取り外し作業は、ツーアクションで実現することができるので、従来技術では手間のかかっていた刃体ユニット21の取り付け取り外し作業を非常に容易に行うことが可能となる。
また、第一の実施形態では、係止部材61が有する4つの係止爪61bが、本体部11と刃体ユニット21との動力伝達部位である駆動歯車14aと従動歯車24aとの噛み合い位置から前後に離間した位置の左右のそれぞれに配置されているので、かかる構成も、本体部11と刃体ユニット21との安定した連結状態の実現に寄与している。
さらに、係止部材61が有する操作部61cについては、上ハウジング部11bと下ハウジング部11cとで囲まれることで形成される把持空間部S側から操作可能となるように構成されているので、例えば、異物等が当たることで操作部61cが誤動作することなどを好適に防止することが可能となっている。
なお、本体部11と刃体ユニット21とを連結する際、駆動歯車14aと従動歯車24aとの噛み合いは、歯面同士が倣うことで自動的に達成されることが確認されており、たとえ歯の端面同士が当接した場合であっても、駆動歯車14aと従動歯車24aがわずかに移動し合うことで歯の端面の当接状態が解消され、スムーズな連結動作が可能な事が確認されている。
ちなみに、本体部11には、トリガスイッチ13用のスイッチ装置13aの他に、下ハウジング部11cの後方位置に安全装置用のスイッチ装置13bが設置されている。このスイッチ装置13bは、本体部11に対して刃体ユニット21を連結したときに、刃体ユニット21の後方に形成された安全装置用凸部55がスイッチ装置13bのスイッチ接片を押すことでスイッチオンとなり、このスイッチオンによりヘッジトリマ10の動作が初めて可能となるように構成されている。つまり、本体部11と刃体ユニット21とを分離したときには、安全装置用のスイッチ装置13bはオフ状態となるので、万一トリガスイッチ13を操作したとしてもヘッジトリマ10は動作することが無い。このように、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10は、高い安全性を備えた装置であるということがいえる。
以上、本発明に係る電動工具がヘッジトリマ10として構成される場合の実施形態を説明した。しかし、本発明の電動工具は、あらゆる形態の電動工具に適用可能であり、上述した第一の実施形態に係る本体部11に対して別の形態の刃体ユニットを設置することで、別の種類の電動工具として用いることができる。そこで次に、第二の実施形態として、本発明に係る電動工具がレシプロソーとして構成される場合の実施形態例を説明することとする。
[第二の実施形態]
図10〜図14を用いて、第二の実施形態に係る電動工具としてのレシプロソー100についての説明を行う。ここで、図10は、第二の実施形態に係るレシプロソーの上面を示す外観図であり、図11は、図10中の符号E−E断面を示す断面図である。また、図12および図13は、第二の実施形態に係るレシプロソーが本体部と刃体ユニットとに分離された状態を示す図であり、図12が上面側から見た場合の外観斜視図を示し、図13が下面側から見た場合の外観斜視図を示している。さらに、図14は、第二の実施形態に係るレシプロソーの動力伝達機構を説明するための図であり、分図(a)が図11中のF−F断面を示し、分図(b)が図11中のG−G断面を示す断面図である。
なお、第二の実施形態では、説明の便宜のために、レシプロソー100の方向を図10および図11で示すように定義した。すなわち、第二の実施形態に係るレシプロソー100を作業者が把持したときに、作業者から見た場合の方向に基づいて「前、後、上、下、左、右」を決定してある。
第二の実施形態に係るレシプロソー100は、図11、図12および図13にて示されるように、駆動源であるモータ12を収納する本体部11と、モータ12からの駆動力を受けて動作する刃体工具122を有する刃体ユニット121と、を備えて構成されており、これら本体部11と刃体ユニット121とは、分離・結合が可能なように着脱自在に構成されている。
ここで、第二の実施形態に係るレシプロソー100が備える本体部11は、上述した第一の実施形態に係るヘッジトリマ10が備える本体部11と全く同じ構成を有するものである。そこで、以下で説明する第二の実施形態では、上述した第一の実施形態と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略することとする。
第二の実施形態に係る刃体ユニット121は、図11にて示されるように、本体部11が有する駆動歯車14aに噛み合う従動歯車124aを有するとともに当該従動歯車124aが取り付けられる従動軸124の回転運動に伴って動作する刃体工具122を有して構成されている。
本体部11に対して刃体ユニット121を装着したとき、従動歯車124aは、駆動歯車14aと噛み合うように構成されている。すなわち、従動歯車124aは、駆動歯車14aと同じねじれ角を有する左ねじれのハスバ歯車として構成されている。また、レシプロソー100を上面側から見たときに、駆動歯車14aが時計回りに回転すると、従動歯車124aは反時計回りに回転することとなる。
また、上述した従動歯車124aが取り付けられる従動軸124には、図11および図14に示されるように、2つの偏心カム(上側偏心カム125aおよび下側偏心カム125b)が取り付けられている。これら2つの偏心カム125a,125bは、従動軸124の軸中心から偏心カム125の中心位置がずれて配置されているとともに、互いに180度位相をずらして配置されている。なお、第二の実施形態の場合、これら2つの偏心カム125a,125bが後述する刃体工具122が有するブレードアーバー122aやカウンターウェイト127と協働することで、モータ軸14、駆動歯車14a、従動歯車124aおよび従動軸124を経由して伝達されるモータ12の回転運動を、刃体工具122の安定した前後運動へと変換する運動変換機構として機能することができる。
すなわち、第二の実施形態に係る刃体ユニット121は、上側偏心カム125aと関係するブレードアーバー122aを備えて構成されている。第二の実施形態において伝達部として機能するブレードアーバー122aは、特に図14に示すように、前後方向に延びて形成された長尺の板材である主要部と、主要部の前側において刃体工具122を取り付けるためのクランプとを有している。ブレードアーバー122aの主要部は、刃体ユニット121の内部で前後方向に伸びるように配置されており、クランプは、刃体ユニット121の前方に突出して配置されている。ブレードアーバー122aの主要部には、長円形状をしたカム溝122bが形成されている。このカム溝122bには、上述した上側偏心カム125aが転動可能な状態で設置されている。また、このブレードアーバー122aのカム溝122bを挟んだ前後位置の左右側面には、刃体ユニット121内の左右に配置された軸受であるアーバーメタル131が配置されており、ブレードアーバー122aは、アーバーメタル131の作用によって刃体ユニット121内での左右方向の動きを規制されている(図11および図14中の分図(a)参照)。アーバーメタル131と接触するブレードアーバー122aの左右側面の形状は、例えば、丸みを帯びた円弧形状を有する突状で形成することができ、かかる形状の採用によって、ブレードアーバー122aが前後方向でスムーズなスライド運動を実施することができるように構成することができる。
また、第二の実施形態に係る刃体ユニット121は、下側偏心カム125bと関係するカウンターウェイト127を備えて構成されている。このカウンターウェイト127は、前後方向で往復運動するブレードアーバー122aおよびブレードアーバー122aに取り付けられた刃体工具122の重量バランスを取るための部材である。そして、カウンターウェイト127は、図11および図14中の分図(b)に示すように、ブレードアーバー122aの直下に設置された錘部材として構成されており、長円形状をしたカム溝122cが形成されている。このカム溝122cには、上述した下側偏心カム125bが転動可能な状態で設置されている。また、このカウンターウェイト127のカム溝122cを挟んだ前後位置の左右側面には、刃体ユニット121内の左右に配置された軸受であるアーバーメタル131が配置されており、カウンターウェイト127は、アーバーメタル131の作用によって刃体ユニット121内での左右方向の動きを規制されている(図11および図14中の分図(b)参照)。アーバーメタル131と接触するカウンターウェイト127の左右側面の形状についても、上述したブレードアーバー122aと同様に、例えば、丸みを帯びた円弧形状を有する突状で形成することができ、かかる形状の採用によって、カウンターウェイト127が前後方向でスムーズなスライド運動を実施することができるように構成することができる。
以上の構成を備えることにより、トリガスイッチ13のオン操作によりモータ12が駆動すると、モータ12の回転駆動によってモータ軸14が回転し、さらに、駆動歯車14a、従動歯車124aおよび従動軸124を経由して回転駆動力が伝達され、2つの偏心カム(上側偏心カム125aおよび下側偏心カム125b)が回転運動を行うこととなる。すると、上側偏心カム125aによる従動軸124周りでの偏心した回転運動と、上側偏心カム125aとカム溝122bとの摺接作用によって、ブレードアーバー122aが前後方向に往復直線運動を行うこととなる。また、下側偏心カム125bによる従動軸124周りでの偏心した回転運動と、下側偏心カム125bとカム溝122cとの摺接作用によって、カウンターウェイト127が前後方向に往復直線運動を行うこととなる。このとき、2つの偏心カム125a,125bと2つのカム溝122b,122cの作用によって、ブレードアーバー122aとカウンターウェイト127は互いに180度の位相差で前後に往復運動を行うので、刃体ユニット121の重心変動はほぼ一定に保たれることとなる。またこのとき、ブレードアーバー122aとカウンターウェイト127は、アーバーメタル131によって左右方向の動きを規制されているので、ブレードアーバー122aとカウンターウェイト127は、前後方向でのスムーズなスライド運動が可能となっている。そして、ブレードアーバー122aの前方側には、ナイフ形状をした刃体工具122が取り付けられているので、刃体工具122による前後動作によって、壁板や草木等を切断することが可能となる。
なお、図11に示すように、第二の実施形態に係る従動軸124は、上方がハット形状をしたカップリング軸受26によって軸支されるとともに、下方が板状をしたメタルプレート27´によって軸支されている。この従動軸124の構成は、モータ12の回転運動を刃体工具122の前後運動へと変換する運動変換機構として機能する従動軸124にとって非常に有利に働くものであり、運動変換を安定かつスムーズに行う効果を発揮するとともに、従動軸124の強度と安全率の向上によって、装置寿命の向上効果も得られることとなる。
以上、第二の実施形態に係るレシプロソー100の基本構成についての説明を行った。第二の実施形態に係るレシプロソー100は、上述した構成を備えることにより、上述した第一の実施形態に係るヘッジトリマ10と同様の作用効果を発揮することができる。すなわち、第二の実施形態に係るレシプロソー100によれば、刃体工具122の種類に応じて従動歯車124aの歯数を任意に変更することができるので、様々な刃体工具に応じて最適な歯車減速比を容易に選定することが可能である。また、第二の実施形態に係るレシプロソー100では、従来技術のようにクラッチ板を装備する必要が無いので、装置重量の増加を低減した装置設計が可能である。また、コストアップ要因となるクラッチ板が不要であることから、製造コストの削減効果も得ることができる。また、第二の実施形態に係るレシプロソー100では、本体部11に対して刃体ユニット121が取り付けられたときに、モータ軸14に対して従動軸124がオフセットして配置されているので、装置のコンパクト化が実現されている。また、第二の実施形態に係るレシプロソー100では、従動軸124が両持ち支持構造となっているので、運動変換を安定かつスムーズに行うことができるとともに、従動軸124の強度と安全率の向上によって、装置寿命の向上効果を得ることができる。
さらに、第二の実施形態に係るレシプロソー100では、モータ軸14の軸先端部に形成された駆動歯車14aと従動歯車124aは、ねじれ角を有するハスバ歯車として構成されている。そして、第二の実施形態に係る駆動歯車14aのねじれ方向については、図13に示されるように右ねじれであり、また、レシプロソー100を上面側から見たときに、駆動歯車14aが時計回りに回転するように構成されている。一方、第二の実施形態に係る従動歯車124aのねじれ方向については、上述したように、図13に示された駆動歯車14aに対応するように左ねじれであり、また、レシプロソー100を上面側から見たときに、駆動歯車14aが時計回りに回転すると、従動歯車124aは反時計回りに回転するように構成されていた。かかる構成は、従動歯車124aを本体部11側に引き寄せる方向に軸力が働く作用を及ぼすものである。このように、本体部11の駆動歯車14aおよび刃体ユニット121の従動歯車124aのねじれ角と回転方向について、従動歯車124aを本体部11側(上側)に引き寄せる方向に軸力が働く作用を及ぼすように設定することにより、刃体ユニット121が本体部11に引き寄せられることになるので、刃体ユニット121が本体部11から不意に脱落することを好適に予防することが可能となる。
なお、第二の実施形態に係るレシプロソー100において、本体部11に対して刃体ユニット121を好適に取り付けるための構成は、第一の実施形態に係るヘッジトリマ10の場合と同様である。
すなわち、第二の実施形態に係るレシプロソー100は、本体部11に対して刃体ユニット121を安定して取り付けるための位置決め機構を有している。具体的には、図13に示すように、本体部11の下面側からは駆動歯車14aが下方に向けて突出しているが、この駆動歯車14aの周囲には、円形をした円形凸状部51が形成されている。また、この円形凸状部51の後方には、2本の円柱凸状部52が形成されている。一方、図12に示すように、前記した円形凸状部51と2本の円柱凸状部52とに対応する刃体ユニット121の上面の位置には、円形凸状部51を嵌め込むための円形凹状部141と2本の円柱凸状部52を嵌め込むための2つの小円形凹状部142が形成されている。したがって、本体部11に対して刃体ユニット121を取り付けると、円形凸状部51と円形凹状部141が嵌合状態となるとともに、2本の円柱凸状部52と2つの小円形凹状部142が嵌合状態となり、本体部11と刃体ユニット121とは3点支持の状態となり、前後左右方向での位置ずれが防止されることとなる。
さらに、第二の実施形態に係るレシプロソー100は、本体部11に対する刃体ユニット121の取り付け状態を保持するための位置保持機構を有しており、図12および図13に示すように、本体部11における刃体ユニット121との着脱部位には、スライド移動可能に配設された係止部材61が設置されている。この係止部材61は、プレート状の部材として構成される係止部材本体部61aと、この係止部材本体部61aの下面側の四隅から下方に向けて突出形成される略L字形状をした4つの係止爪61bと、係止部材本体部61aの後方の上面側から上方に向けて突出して形成される操作部61cとを有して構成されている。そして、この係止部材61は、図12および図13にてより詳細に示されるように、本体部11の下面側に対して設置されており、本体部11の下方部位を形成する下ハウジング部11cの内部を貫通して設置されている。そして、係止部材61が有する操作部61cは、下ハウジング部11cの上面に表出するように配置されており、上ハウジング部11bと下ハウジング部11cとで囲まれることで形成される把持空間部S側から操作可能となるように構成されている(図11も併せて参照)。また、係止部材61が有する係止部材本体部61aと下ハウジング部11cの下面側の間には、弾性体としてのコイルバネ62が設置されている。このコイルバネ62から及ぼされる弾性力の作用によって、係止部材61は、常に本体部11の前方に向けて付勢されることとなる。
一方、刃体ユニット121における本体部11との着脱部位には、上述した4つの係止爪61bのそれぞれが係止可能な4つの係止部としての係止孔171が設けられている(図12参照)。なお、この4つの係止孔171は、略L字形状をした4つの係止爪61bが挿入されたときには、4つの係止爪61bを係止できるように略L字形状からなる溝形状を有して構成されている。
したがって、図12および図13で示す状態、すなわち、本体部11と刃体ユニット121とが分離された状態から、刃体ユニット121に向けて本体部11を真っ直ぐに降下させると、まず、4つの係止爪61bは、4つの係止孔171の前方位置の平面(すなわち、刃体ユニット21の上面)に接触することとなる。すると、係止部材61は、コイルバネ62の及ぼす弾性力に抗する方向に力を受けて後方に向けてスライド移動するので、4つの係止爪61bが4つの係止孔171に挿入されることとなる。すると、4つの係止孔171は、略L字形状をした4つの係止爪61bが挿入されたときには、4つの係止爪61bを係止できるように略L字形状からなる溝形状を有して構成されているので、コイルバネ62の弾性力に抗する力が解除され、係止部材61は、コイルバネ62の及ぼす弾性力を受けることで係止方向に付勢され、図11で示すような本体部11と刃体ユニット121との連結状態が実現されることとなる。
なお、本体部11と刃体ユニット121とが連結された状態から、本体部11と刃体ユニット121とを分離する際には、把持空間部S側から操作可能な操作部61cを後方に移動させることで、4つの係止爪61bと4つの係止孔171との係止状態が解除されるので、刃体ユニット121から本体部11を上方に向けて引き上げることで、本体部11と刃体ユニット121との分離が可能となる。すなわち、第二の実施形態によれば、本体部11と刃体ユニット121との取り付け作業は、ワンアクションで実現することができ、また、本体部11と刃体ユニット121との取り外し作業は、ツーアクションで実現することができるので、従来技術では手間のかかっていた刃体ユニット121の取り付け取り外し作業を非常に容易に行うことが可能となる。
また、第二の実施形態では、係止部材61が有する4つの係止爪61bが、本体部11と刃体ユニット121との動力伝達部位である駆動歯車14aと従動歯車124aとの噛み合い位置から前後に離間した位置の左右のそれぞれに配置したので、本体部11と刃体ユニット121との安定した連結状態が実現されている。
さらに、係止部材61が有する操作部61cについては、上ハウジング部11bと下ハウジング部11cとで囲まれることで形成される把持空間部S側から操作可能となるように構成されているので、例えば異物が当たることで誤動作することなどを好適に防止することが可能となっている。
なお、本体部11と刃体ユニット121とを連結する際、駆動歯車14aと従動歯車124aとの噛み合いは、歯面同士が倣うことで自動的に達成されることが確認されており、たとえ歯の端面同士が当接した場合であっても、駆動歯車14aと従動歯車124aがわずかに移動し合うことで歯の端面の当接状態が解消され、スムーズな連結動作が可能な事が確認されている。
ちなみに、本体部11には、トリガスイッチ13用のスイッチ装置13aの他に、下ハウジング部11cの後方位置に安全装置用のスイッチ装置13bが設置されている。このスイッチ装置13bは、本体部11に対して刃体ユニット121を連結したときに、刃体ユニット121の後方に形成された安全装置用凸部155がスイッチ装置13bのスイッチ接片を押すことでスイッチオンとなり、このスイッチオンによりレシプロソー100の動作が初めて可能となるように構成されている。つまり、本体部11と刃体ユニット121とを分離したときには、安全装置用のスイッチ装置13bはオフ状態となるので、万一トリガスイッチ13を操作したとしてもレシプロソー100は動作することが無い。このように、第二の実施形態に係るレシプロソー100は、高い安全性を備えた装置であるということがいえる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。すなわち、上述した第一および第二の実施形態では、本発明に係る電動工具がヘッジトリマ10やレシプロソー100として構成される場合の実施形態を説明した。しかし、本発明の電動工具は、さらにあらゆる形態の電動工具に適用可能であり、上述した第一および第二の実施形態に係る本体部11に対して別の形態の刃体ユニットを設置することで、別の種類の電動工具として用いることができる。
例えば、上述したヘッジトリマ10やレシプロソー100については、刃体工具22,122が前後方向に往復運動するものであったが、本発明に係る電動工具は、バリカンなどのように刃体工具が左右水平方向に運動する形式のものにも適用が可能である。具体的には、図15〜図18に示すようなバリカン200として、本発明に係る電動工具を構成することもできる。なお、図15〜図18は、本発明が取り得る多様な変形形態の一例を示す図であり、特に、図15は、変形形態に係るバリカンの上面を示す外観図であり、図16は、図15中の符号H−H断面を示す断面図であり、図17は、変形形態に係るバリカンが本体部と刃体ユニットとに分離された状態での縦断面側面図を示している。また、図18は、変形形態に係るバリカンが本体部と刃体ユニットとに分離された状態を示す図であり、特に、下面側から見た場合の外観斜視図を示している。なお、図15〜図18では、上述した第一および第二の実施形態で説明した部材と同一又は類似する部材については、同一符号を付してある。
この変形形態に係るバリカン200において、本体部11は上述した第一および第二の実施形態で説明した本体部11と全く同じ構成を有するものである。一方、刃体ユニット221についても、着脱のための構成を含む基本構成は全く同様である。ただし、この変形形態に係る刃体ユニット221では、従動歯車24aと噛み合う2つ目の減速用歯車として、第二減速歯車223が設置されている。第二減速歯車223の追加設置によって、様々な刃体工具に応じた好適な歯車減速比が実現できることとなる。このように、本発明に係る刃体ユニット221は、刃体工具の種類や使用用途、要求仕様等に応じて歯車の数を任意に変更することができるので、多様な用途に応じた電動工具を安価に提供することが可能となる。
なお、モータ12からの回転運動を左右水平方向の運動に変換する機構については、従来から周知の事項であるので説明は省略するが、図15〜図18にて例示するように、本発明に係る刃体ユニットについては、あらゆる形式・機能を有した多様な工具を適用することが可能であり、本発明によれば、多様な用途の電動工具を必要とするユーザに対して経済的なメリットを提供することが可能である。
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。