JP2018087263A - 固体状錯体化合物の製造方法、固体状チタン触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法およびオレフィン重合体の製造方法 - Google Patents

固体状錯体化合物の製造方法、固体状チタン触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法およびオレフィン重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】固体状錯体化合物のアルコール含有量を、容易にオレフィン重合に好適な範囲に調整することができる固体状錯体化合物の製造方法を提供する。【解決手段】下記式(I)MgXaRsb・(RtOH)n・・・(I)で表される原料錯体と、炭化水素溶媒とを含む液に、液温25〜80℃で不活性ガスを連続的に接触させる工程を含む、下記式(II)MgXaRsb・(RtOH)m・・・(II)で表される固体状錯体化合物(S)の製造方法。(前記式(I)及び(II)中、Xはハロゲン原子であり、Rsはヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rtはヘテロ原子を含んでもよい炭素水素基であり、m及びnは正の実数であり、mは2.0≦m≦3.3を満たし、mとnは0.45≦m/n≦0.99を満たし、aは0≦a≦2を満たし、bは0≦b≦2を満たし、aとbの和は2である。)【選択図】なし

Description

本発明は、固体状錯体化合物の製造方法、固体状チタン触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法およびオレフィン重合体の製造方法に関する。
従来から、エチレン、α−オレフィンの単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体などのオレフィン重合体を製造するために用いられる触媒として、活性状態のハロゲン化マグネシウムに担持されたチタン化合物を含む触媒が知られている(以下、重合とは共重合を包含して用いることがある。)。
このようなオレフィン重合用触媒としては、チーグラー−ナッタ触媒と称される、四塩化チタンや三塩化チタンを含む触媒や、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体からなる固体状チタン触媒成分と有機金属化合物からなる触媒等が広く知られている。
後者の触媒は、エチレンの他、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィンの重合に高い活性を示す。また、得られるα−オレフィン重合体は高い立体規則性を有することがある(特許文献1、2等)。
また、特許文献1、2では、担体であるハロゲン化マグネシウムとアルコールからなる固体状錯体化合物を乾燥する工程が開示されている。一方、特許文献3には、この種の固体状錯体化合物を液状炭化水素の様な不活性媒体の存在下に扱うことにより、高い活性を示すオレフィン重合用触媒を得ることができることが開示されている。
特開昭55−29591号公報 特開昭57−63310号公報 特開2004−2742号公報
特許文献1、2に開示されている固体状錯体化合物は、乾燥工程などを介して、非液状の環境にさらされることがある。この際、条件によってはマグネシウム化合物と錯体を形成するアルコールを一部除去して、固体状錯体化合物の性状や性能を変化、改良(例えば多孔質化等)させることにより、該固体状錯体化合物を含むオレフィン重合用触媒の性能を向上させることができると考えられる。
一方で、特許文献3などに開示された懸濁系の態様では、懸濁媒体が前記固体状錯体化合物を保護しているためか、得られるオレフィン重合用触媒の重合活性は相対的に高いことが開示されているが、上記の様なアルコールの一部除去は比較的困難と言わざるを得ない。即ち、担体を懸濁系においた態様では、固体状錯体化合物の性状や性能を制御するのには制約がある。
そこで、本発明の目的は、固体状錯体化合物のアルコール含有量を、容易にオレフィン重合に好適な範囲に調整することができる固体状錯体化合物の製造方法を提供することである。また、高活性で、かつ、微粉含有量が少ないオレフィン重合体が得られる、オレフィン重合用触媒およびオレフィン重合体の製造方法を提供することである。
本発明は、以下の[1]〜[8]に関する。
[1]下記式(I)
MgX ・(ROH)・・・(I)
で表される原料錯体と、炭化水素溶媒とを含む液に、液温25〜80℃で不活性ガスを連続的に接触させる工程を含む、
下記式(II)
MgX ・(ROH)・・・(II)
で表される固体状錯体化合物(S)の製造方法。
(前記式(I)及び(II)中、Xはハロゲン原子であり、Rはヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素水素基であり、m及びnは正の実数であり、mは2.0≦m≦3.3を満たし、mとnは0.45≦m/n≦0.99を満たし、aは0≦a≦2を満たし、bは0≦b≦2を満たし、aとbの和は2である。)。
[2]前記不活性ガスを連続的に接触させる方法が、前記不活性ガスを液中にバブリングさせる方法である[1]に記載の固体状錯体化合物(S)の製造方法。
[3]前記不活性ガスの供給速度が前記液1リットル当たり5〜300リットル/時間であり、前記不活性ガスの供給時間が1〜60時間である、[1]または[2]に記載の固体状錯体化合物(S)の製造方法。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の方法により固体状錯体化合物(S)を製造する工程と、
前記固体状錯体化合物(S)と、Ti(OR)4−gで表されるチタン化合物(Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4(前記式(II)においてaが0の場合、g=4を除く)を満たす)とを接触させる工程と、
を含む、チタン、マグネシウム及びハロゲンを含む固体状チタン触媒成分(I)の製造方法。
[5]前記固体状錯体化合物(S)と、前記チタン化合物とを接触させる工程において、さらに電子供与体を接触させる[4]に記載の固体状チタン触媒成分(I)の製造方法。
[6][4]または[5]に記載の方法により固体状チタン触媒成分(I)を製造する工程と、
前記固体状チタン触媒成分(I)と、第1族元素、第2族元素及び第13族元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む有機金属化合物(II)と、を混合する工程と、
を含む、オレフィン重合用触媒の製造方法。
[7]前記固体状チタン触媒成分(I)と、前記有機金属化合物(II)とを混合する工程において、さらに電子供与体(III)を混合する[6]に記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
[8][6]または[7]に記載の方法によりオレフィン重合用触媒を製造し、該オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うオレフィン重合体の製造方法。
本発明に係る固体状錯体化合物(S)の製造方法によれば、固体状錯体化合物(S)のアルコール含有量を、容易にオレフィン重合に好適な範囲に調整することができる。また、本発明に係る固体状チタン触媒成分(I)の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法によれば、高活性で、かつ、微粉含有量が少ないオレフィン重合体が得られるオレフィン重合用触媒を提供することができる。また、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法によれば、高活性で、かつ、微粉含有量が少ないオレフィン重合体が得られる。
以下、本発明に係る固体状錯体化合物(S)の製造方法、固体状チタン触媒成分(I)の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法、およびオレフィン重合体の製造方法についてさらに詳細に説明する。
[固体状錯体化合物(S)の製造方法]
本発明に係る固体状錯体化合物(S)の製造方法は、下記式(I)
MgX ・(ROH)・・・(I)
で表される原料錯体と、炭化水素溶媒とを含む液に、液温25〜80℃で不活性ガスを連続的に接触させる工程を含む。得られる固体状錯体化合物(S)は、下記式(II)
MgX ・(ROH)・・・(II)
で表される。前記式(I)及び(II)中、Xはハロゲン原子であり、Rはヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素水素基である。m及びnは正の実数であり、mは2.0≦m≦3.3を満たし、mとnは0.45≦m/n≦0.99を満たし、aは0≦a≦2を満たし、bは0≦b≦2を満たし、aとbの和は2である。Mg、O、Hは、それぞれマグネシウム、酸素、水素を表す。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、炭化水素溶媒中で懸濁状態にある固体状錯体化合物の原料錯体に、所定の液温にて不活性ガスを接触させることにより、該錯体中のアルコールを適切に除去できることを見出し、本発明を完成した。前記原料錯体は、例えば対応するマグネシウム化合物とアルコールとを接触させることによって得ることができる。
(マグネシウム化合物)
前記原料錯体の原料として用いられるマグネシウム化合物としては、MgX で表される化合物を好適に用いることができる。ここで、Xはハロゲン原子、Rはヘテロ原子含有炭化水素基を示す。Rとして好ましくはアルコキシ基やカルボキシレート基が挙げられる。また、aは0≦a≦2を満たし、bは0≦b≦2を満たし、aとbの和は2である。
マグネシウム化合物として具体的には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、フェノキシ塩化マグネシウムなどのアルコキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウムなどのアリーロキシマグネシウム;ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。これらのマグネシウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらのマグネシウム化合物は、他の金属との錯化合物、複化合物または他の金属化合物との混合物であってもよい。これらの中ではハロゲン化マグネシウム化合物が好ましく、塩化マグネシウムがより好ましい。
また、前記マグネシウム化合物は、他の物質から誘導されたもの、例えばグリニャール試薬のような有機マグネシウム化合物と、ハロゲン化チタン、ハロゲン化珪素、ハロゲン化アルコールなどとを接触させて得られるものであってもよい。
(アルコール)
前記原料錯体の原料として用いられるアルコールとしては、ROHで表される化合物を好適に用いることができる。ここで、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を示す。Rとして具体的には、炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基、これらの置換基にさらにアルコキシ基が置換した炭化水素基が挙げられる。
アルコールとして具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、2−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノールなどの脂肪族アルコール;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどの脂環族アルコール;ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコールなどの芳香族アルコール;n−ブチルセルソルブなどのアルコキシ基を有する脂肪族アルコールなどを挙げることができる。これらのアルコールは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの中でも、前記マグネシウム化合物を可溶化できるアルコールが、後述する原料錯体および固体状錯体化合物(S)の粒子形状として、球状のものを形成させることができるため好ましい。このようなアルコールとしては、炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の脂肪族アルコールが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールが挙げられる。好ましくはエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールであり、より好ましくはエタノールである。
(原料錯体)
前記マグネシウム化合物と前記アルコールとを接触させて、前記原料錯体を得る方法は、公知の方法を制限無く用いることができる。例えば、特許文献1に記載のように、マグネシウム化合物とアルコールからなる溶液や溶融物と、炭化水素溶媒との懸濁液を得て、これをエマルション化させた後に冷却することにより原料錯体の粒子を得ることができる。
前記原料錯体は、前記式(I)で示されるMgX ・(ROH)の構造を有する。このうち、X、RおよびRは上述したマグネシウム化合物、アルコールで規定したものと同様である。nは、好ましくは2.4〜5.0であり、より好ましくは2.6〜4.0であり、さらに好ましくは2.8〜3.5であり、特に好ましくは2.8〜3.4である。nの値は、マグネシウム化合物に対して接触させるアルコールの量や、接触させる条件等によって適宜変更させることができる。nの値が前記範囲内であることにより、比較的良好な収率で、かつ、粒度分布の狭い粒子を安定して製造することができる。勿論、適宜分級などを行って、さらに粒度分布の狭い粒子を得ることも可能である。なお、原料錯体中のMgやアルコールの定量は、常法を用いて行うことが可能である。例えば、後述するように、Mg量はICP−AES法、アルコール量はガスクロマトグラフィーで測定することができる。
前記原料錯体を調製する際のマグネシウム化合物およびアルコールの使用量については、その種類、接触条件などによっても異なるが、マグネシウム化合物は、アルコールの単位容積あたり、好ましくは0.1〜20モル/リットル、より好ましくは0.5〜5モル/リットルの量で用いられる。また、必要に応じて前記原料錯体に対して不活性な媒体を併用することもできる。前記媒体としては、ヘプタン、オクタン、デカンなどの公知の炭化水素化合物が好ましい例として挙げられる。
(不活性ガスの接触)
本発明に係る方法では、前記原料錯体と、炭化水素溶媒とを含む液(以下、原料錯体スラリーとも示す)を、実質的にスラリー状態を保ったまま、液温25〜80℃で、不活性ガスを連続的に接触させる。この工程により前記式(II)で表される固体状錯体化合物(S)が得られる。前記式(II)におけるX、R、Rは、上述したマグネシウム化合物、アルコールで規定したものと同様である。
本発明に係る方法では、前記原料錯体と、炭化水素溶媒とを含む液に、液温25〜80℃で不活性ガスを連続的に接触させることにより、固体状錯体化合物(S)のアルコール含有量に相当するm値を容易に調整することができる。すなわち、本発明に係る方法では、m値は2.0〜3.3であり、好ましくは2.1〜3.0であり、より好ましくは2.2〜2.8であり、さらに好ましくは2.3〜2.5である。また、前記式(I)で表される原料錯体のn値と、前記式(II)で表される固体状錯体化合物(S)のm値とが、0.45≦m/n≦0.99の関係を満たす。m/nは、好ましくは0.60≦m/n≦0.95であり、より好ましくは0.70≦m/n≦0.93であり、さらに好ましくは0.85≦m/n≦0.90である。m/nの値が前記範囲内であることにより、高活性で、かつ、微粉含有量が少ないオレフィン重合体粒子が得られる。
前記原料錯体と、炭化水素溶媒とを含む液に、液温25〜80℃で不活性ガスを連続的に接触させることにより、m値を調整できること、即ち、固体状錯体化合物(S)のアルコール含有量を調整できる理由は定かではないが、本発明者らは以下のような仮説を考えている。
原料錯体スラリー中では、アルコールの一部が炭化水素溶媒中に溶出したり原料錯体中に戻ったりする、所謂平衡状態にある。該スラリー中に不活性ガスを供給することにより、炭化水素溶媒中で錯体に取り込まれず単独で存在するアルコールが不活性ガスと同伴して除去されるため、結果として原料錯体中のマグネシウム化合物に対するアルコール量が低減すると考えられる。
この際、前記スラリーの温度によっては、原料錯体が全体的に膨潤するような態様になることがある。この場合、アルコールが炭化水素溶媒中により溶出し易くなるため、アルコール含有量の調整を効率的に行うことができると考えられる。ここで、前記温度とアルコール含有量との関係は、アルコールの炭化水素溶媒への溶解度と、アルコールの蒸気圧とが関係すると考えられる。
さらに、上述の通りアルコールの原料錯体に対する遊離と吸着はある割合で起こっていると考えられるため、この工程が繰り返される際に、後述する固体状チタン触媒成分(I)を形成させるのに好ましい固体状錯体化合物(S)が形成されると推測される。換言すると、特許文献1、2等に記載の乾燥法や減圧法などにより原料錯体に存在するアルコール含有量の制御を行う場合、遊離のみが起こるか、著しく遊離に偏るため、得られる固体状錯体化合物の構造、具体的には細孔構造等が不均一になる可能性がある。一方、本発明では上述の通り、アルコールの原料錯体に対する遊離と吸着が平衡状態にあることで穏やかにアルコールが原料錯体から抜けていくため、得られる固体状錯体化合物(S)の構造が均一化し、好適な活性種が生じる箇所が増えると考えられる。
前記不活性ガスを連続的に接触させる方法は、前記不活性ガスを液中にバブリングさせる方法であることが好ましい。特に、フィードノズルを介して原料錯体スラリーに不活性ガスを供給する場合、スラリーが入った反応器の最下部付近から不活性ガスを供給してバブリングさせることが好ましい。
本発明において不活性ガスを連続的に接触させるとは、30秒以上連続的に不活性ガスを供給することで、不活性ガスを連続的に接触させる方法のことを指す。勿論、連続的な不活性ガスの供給を間欠的に行うことも可能である。不活性ガスを間欠的に供給する場合の待ち時間は特に制限されないが、1秒以上、10時間以下であることが好ましい。なお、前記待ち時間が短い場合、実質的に連続的に供給することに相当する。一方、前記待ち時間が長すぎると生産性が低下することに加え、後述する反応温度によっては得られる固体状錯体化合物(S)が凝集するなどの変質を起こす場合がある。
前記不活性ガスを原料錯体に接触させる温度は25〜80℃である。該温度は、原料錯体の炭化水素溶媒懸濁液の温度である。該温度は、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜70℃、さらに好ましくは50〜60℃である。前記温度が30℃未満の場合、m値(アルコール含有量)の調整が困難になる。また、水などの不純物が系内に蓄積し、固体状錯体化合物(S)の変質を招く可能性がある。一方、前記温度が80℃を超えると、錯体自体が変質して固体状錯体化合物(S)の粒子が変形したり凝集したりする場合がある。なお、温度の異なる供給工程を二工程以上組み合わせて実施することも可能である。その場合、低温および高温の順序は特に制限されない。
前記不活性ガスの供給速度は、原料錯体スラリー1リットル当たり、好ましくは5〜300リットル/時間、より好ましくは5〜25リットル/時間、さらに好ましくは7〜20リットル/時間である。また前記不活性ガスの供給時間は、好ましくは1〜60時間、より好ましくは3〜40時間、さらに好ましくは3〜20時間、特に好ましくは5〜15時間である。前記供給速度が5リットル/時間以上、前記供給時間が1時間以上であることにより、m値(アルコール含有量)をより好適に調整することができる。また、前記供給速度が300リットル/時間以下、前記供給時間が60時間以下であることにより、固体状錯体化合物(S)の組成分布が十分に均一となり、品質管理が容易となる。また、不活性ガスにわずかに不純物が含まれているような場合にも、固体状錯体化合物(S)の変質が起こりにくい。
前記原料錯体スラリーのスラリー濃度は特に制限はないが、流動性や固体状錯体化合物(S)の保護的な機能を考慮すると、10〜200グラム/リットルが好ましく、30〜150グラム/リットルがより好ましい。
前記不活性ガスは、オレフィン重合用触媒を取り扱う際に用いられる公知の不活性ガスであれば、特に制限はない。具体的にはヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガスの他、メタン、エタン、プロパンなどの炭化水素ガスや窒素など、後述するチタン化合物や有機金属化合物(II)と実質的に反応しないガスであれば特に制限なく用いることができる。これらの不活性ガスは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも反応性が低く安価で大量に調達しやすく、炭化水素溶媒に対して実質的に溶解しない窒素が好ましい。
前記原料錯体と不活性ガスを接触させる際には、前記原料錯体スラリーを反応器中で攪拌させたり振動させたりして、原料錯体が動き易い状態にしておくことが好ましい。このような状態としておくことで、より均質な固体状錯体化合物(S)を得ることができる場合がある。
本発明に係る方法により得られる固体状錯体化合物(S)の平均粒径(体積統計値でのメジアン径(d50))は、好ましくは30〜300μm、より好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは30〜100μm、特に好ましくは30〜80μmである。前記平均粒径の範囲を満たすことにより、微粉含有量が少ないオレフィン重合体粒子が得られる。
[固体状チタン触媒成分(I)の製造方法]
本発明に係る、チタン、マグネシウム及びハロゲンを含む固体状チタン触媒成分(I)の製造方法は、前記方法により固体状錯体化合物(S)を製造する工程と、前記固体状錯体化合物(S)と、Ti(OR)4−gで表されるチタン化合物(Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4(前記式(II)においてaが0の場合、g=4を除く)を満たす)とを接触させる工程と、を含む。
前記チタン化合物において、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。Rとしては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、gは0≦g≦4の範囲を満たす実数であるが、前記式(II)においてaが0の場合、gが4である態様は除く。この理由は、固体状チタン触媒成分(I)はハロゲン原子を必須の構成成分として有することに起因する。すなわち、固体状錯体化合物(S)中にハロゲン原子が含まれない場合(aが0の場合)には、チタン化合物に必ずハロゲン原子が含まれることを示している。
チタン化合物としては、具体的には、TiCl、TiBrなどのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(O−isoC)Brなどのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCClなどのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OCBrなどのモノハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(O−2−エチルヘキシル)などのテトラアルコキシチタンなどを挙げることができる。これらの中でも、テトラハロゲン化チタンが好ましく、四塩化チタン(TiCl)がより好ましい。これらのチタン化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記固体状錯体化合物(S)と、前記チタン化合物とを接触させる工程において、さらに電子供与体を接触させることが、高い触媒活性を維持したまま、得られる重合体の立体規則性を高めることができる観点から好ましい。該電子供与体としては、例えば、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、アミン、シラン化合物、燐酸エステルなどの公知物質を特に制限なく用いることができる。これらの中でも脂環式多価カルボン酸エステル、複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物、および芳香族カルボン酸エステルが好ましい例として挙げられる。以下、それぞれの化合物群について説明する。
(脂環式多価カルボン酸エステル)
本発明において電子供与体として用いることができる脂環式多価カルボン酸エステルは、R(COORまたはR(OCORで表される構造を有することができる。R(COORで表される化合物は、脂環族多価カルボン酸(R(COOH))にアルコール(ROH)を反応させることにより得られる。また、R(OCORで表される化合物は、脂環族多価アルコール(R(OH))にカルボン酸(RCOOH)を反応させることにより得られる。ここで、Rは炭素原子数5〜20の脂環族炭化水素、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基、pは2または3をそれぞれ示す。
として具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、および、これらの脂環族炭化水素にさらに炭素原子数1〜10の炭化水素基が置換した構造が挙げられる。これらの中でも、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンが好ましい。また、これらの脂環族炭化水素にさらに炭素原子数1〜5の炭化水素基が置換した構造も好ましい。
は、好ましくは炭素原子数1〜10、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは4〜8、特に好ましくは4〜6の1価の炭化水素基である。具体的には、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
前記脂環式多価カルボン酸エステルのうち、R(OCORで表される化合物としては、具体的には、シクロヘキシル−1,2−ジヘキサノエート、シクロヘキシル−1,2−ジオクタノエート、シクロヘキシル−1,2−ジデカノエート、シクロヘキシル−1,2−ジドデカノエート、シクロヘキシル−1,2−ジヘプタノエート、3,6−ジメチルシクロヘキシル−1,2−ジオクタネート、3,6−ジメチルシクロヘキシル−1,2−デセネート、3,6−ジメチルシクロヘキシル−1,2−ドデセネート、3−メチル−6−プロピルシクロヘキシル−1,2−ジオクタネート、3−メチル−6−プロピルシクロヘキシル−1,2−ジデセネート、3−メチル−6−プロピルシクロヘキシル−1,2−ジドデセネート等を好ましい例として挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、前記脂環式多価カルボン酸エステルのうち、R(COORで表される化合物としては、具体的には、下記式(1)で示される化合物が好ましい。
Figure 2018087263
前記式(1)において、nは5〜10の整数、好ましくは5〜7の整数、より好ましくは6である。また、CおよびCは、炭素原子を表す。RおよびRはそれぞれ独立にCOORまたはRであり、RおよびRの少なくとも1つはCOORである。
環状骨格中の単結合は二重結合に置き換えられていてもよいが、すべてが単結合であることが好ましい。また、二重結合が存在する場合、その位置は環状骨格中の、C−C結合およびRがRである場合のC−C結合以外のいずれかの単結合が二重結合に置き換えられていることが好ましい。
は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは4〜8、特に好ましくは4〜6の1価の炭化水素基である。該炭化水素基としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられる。これらの中でも、分子量分布が広いオレフィン重合体を製造しやすい観点から、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基が好ましく、n−ブチル基、イソブチル基がより好ましい。
複数個あるRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、ハロゲン含有基またはケイ素含有基の原子または基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。これらの中でも、水素原子以外のRとしては、炭素原子数1〜20の炭化水素基が好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基、オクチル基などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基が好ましい。
また、Rは互いに結合して環を形成していてもよく、Rが互いに結合して形成される環の骨格中に二重結合が含まれていてもよい。該環の骨格中に、COORが結合したCを2つ以上含む場合は、該環の骨格をなす炭素原子の数は5〜10である。このような環の骨格としては、ノルボルナン骨格、テトラシクロドデセン骨格などが挙げられる。また複数個あるRは、カルボン酸エステル基、アルコキシ基、シロキシ基、アルデヒド基やアセチル基などのカルボニル構造含有基であってもよく、これらの置換基は、炭化水素基を1個以上含むことが好ましい。
前記式(1)で示される脂環式多価カルボン酸エステルは、Rの少なくとも1つが水素原子以外の置換基である脂環族多価カルボン酸エステル(a)であることが好ましい。このような脂環族多価カルボン酸エステル(a)としては、国際公開第2006/77945号パンフレット、国際公開第2006/77946号パンフレット、国際公開第2009/69483号パンフレットに記載の脂環族多価カルボン酸エステルと類似の基本骨格を有する化合物である。
脂環族多価カルボン酸エステル(a)としては、例えば、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、4−メチルシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、5−メチルシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、5−メチルシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、3,4−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、
3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−ヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−6−ペンチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、4−メチルシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、4−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、5−メチルシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、5−メチルシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、3,4−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,4−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,4−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3,4−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−ヘキシルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5−ジヘキシルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−5−ペンチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、
3−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、4−メチルシクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、4−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、5−メチルシクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、5−メチルシクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、3,4−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,4−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,4−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3,4−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−ヘキシルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,7−ジヘキシルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−7−ペンチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−メチルシクロオクタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロデカン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ビニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジシクロヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸ジイソブチル、テトラシクロドデカン−2,3−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、3,6−ジメチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3,6−ジヘキシル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−6−ペンチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、などを挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
上記のような多価エステル構造を持つ化合物には、例えば前記式(1)における複数のCOOR基に由来するシス、トランス等の異性体が存在する。どの構造であっても本発明の目的に合致する効果が得られるが、よりトランス体の含有率が高い方が好ましい。
前記脂環族多価カルボン酸エステル(a)としては、下記式(1−1)〜(1−6)で表される化合物が好ましい。
Figure 2018087263
Figure 2018087263
Figure 2018087263
Figure 2018087263
Figure 2018087263
Figure 2018087263
前記式(1−1)〜(1−6)中の、RおよびRは前記式(1)と同様である。前記式(1−1)〜(1−3)において、環状骨格中の単結合(ただしC−C結合およびC−C結合を除く。)は、二重結合に置き換えられていてもよい。前記式(1−4)〜(1−6)において、環状骨格中の単結合(ただしC−C結合を除く。)は、二重結合に置き換えられていてもよい。前記式(1−3)および(1−6)においてnは7〜10の整数である。
前記脂環族多価カルボン酸エステル(a)としては、特に下記式(1a)で表される化合物が好ましい。
Figure 2018087263
前記式(1a)中の、n、RおよびRは前記式(1)での定義と同様である。前記式(1a)において、環状骨格中の単結合(ただしC−C結合およびC−C結合を除く。)は、二重結合に置き換えられていてもよい。
前記式(1a)で表される化合物としては、具体的には、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−5−エチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−5−エチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−5−エチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3,5−ジエチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,5−ジエチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,5−ジエチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−7−エチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−7−エチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−7−エチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3,7−ジエチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,7−ジエチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,7−ジエチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、などが挙げられる。
これらの化合物の中では、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチルが好ましい。これらの化合物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの化合物は、Diels Alder反応を利用して製造できる。
上記のようなジエステル構造を持つ脂環族多価カルボン酸エステル(a)には、シス、トランス等の異性体が存在し、どの構造であっても本発明の目的に合致する効果が得られるが、よりトランス体の含有率が高い方が好ましい。シス体およびトランス体のうちのトランス体の割合は、好ましくは51%以上であり、より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、特に好ましくは65%以上である。一方、該割合は、好ましくは99%以下であり、より好ましくは90%以下であり、さらに好ましくは85%以下であり、特に好ましくは79%以下である。
また、前記式(1)で示される脂環式多価カルボン酸エステルは、複数個あるRがすべて水素原子である脂環族多価カルボン酸エステル(b)であることが好ましい。このような脂環族多価カルボン酸エステル(b)としては、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、シクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロオクタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロデカン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−プロピル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、4−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジデシル、4−シクロヘプテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘプテン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、5−シクロオクテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、6−シクロデセン−1,2−ジカルボン酸ジエチルなどが挙げられる。これらの化合物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
上記のようなジエステル構造を持つ化合物には、シス、トランス等の異性体が存在するが、どの構造であっても本発明の目的に合致する効果が得られる。シス体およびトランス体のうちのトランス体の割合は、好ましくは51%以上であり、より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、特に好ましくは65%以上である。一方、該割合は、好ましくは99%以下であり、より好ましくは90%以下であり、さらに好ましくは85%以下であり、特に好ましくは79%以下である。
前記脂環族多価カルボン酸エステル(b)としては、特に下記式(2a)で表されるシクロアルカン−1,2−ジカルボン酸ジエステル構造を有する化合物が好ましい。
Figure 2018087263
前記式(2a)中の、n、Rは前記式(1)での定義と同様である。前記式(2a)において、環状骨格中の単結合(ただしC−C結合およびC−C結合を除く。)は、二重結合に置き換えられていてもよい。
前記式(2a)で表される化合物としては、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジヘプチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジへプチルが好ましい。これらの中でも、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシルがより好ましい。その理由は、触媒性能だけでなく、これらの化合物がDiels Alder反応を利用して比較的安価に製造できるためである。これらの化合物は、各々単独で用いてもよく、各2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物)
本発明において電子供与体として用いることができる、複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物(以下、「ポリエーテル化合物」ということがある)としては、エーテル結合間に存在する原子が、炭素、ケイ素、酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素、またはこれらから選択される2種以上の原子である化合物などを挙げることができる。これらのうちエーテル結合間の原子に比較的嵩高い置換基が結合しており、2個以上のエーテル結合間に存在する原子に複数の炭素原子が含まれる化合物が好ましい。例えば、下記式(3)で表されるポリエーテル化合物が好ましい。
Figure 2018087263
前記式(3)において、mは1〜10の整数、好ましくは3〜10の整数、より好ましくは3〜5の整数である。R11、R12、R31〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素、水素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基である。R11、R12について、好ましくは炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数2〜6の炭化水素基である。R31〜R36について、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基である。R11、R12について、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。好ましくは、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基である。R31〜R36について、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基が挙げられる。好ましくは水素原子、メチル基である。任意のR11、R12、R31〜R36(好ましくはR11、R12)は、共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよく、主鎖中に炭素以外の原子が含まれていてもよい。
上記のような2個以上のエーテル結合を有する化合物としては、具体的には、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−t−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,3−ジシクロヘキシル−1,4−ジエトキシブタン、2,3−ジイソプロピル−1,4−ジエトキシブタン、2,4−ジイソプロピル−1,5−ジメトキシペンタン、2,4−ジイソブチル−1,5−ジメトキシペンタン、2,4−ジイソアミル−1,5−ジメトキシペンタン、3−メトキシメチルテトラヒドロフラン、3−メトキシメチルジオキサン、1,2−ジイソブトキシプロパン、1,2−ジイソブトキシエタン、1,3−ジイソアミロキシエタン、1,3−ジイソアミロキシプロパン、1,3−ジイソネオペンチロキシエタン、1,3−ジネオペンチロキシプロパン、2,2−テトラメチレン−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ペンタメチレン−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ヘキサメチレン−1,3−ジメトキシプロパン、1,2−ビス(メトキシメチル)シクロヘキサン、2−シクロヘキシル−2−エトキシメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、2−イソプロピル−2−イソアミル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、2−シクロヘキシル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、2−イソプロピル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、2−イソブチル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、2−シクロヘキシル−2−エトキシメチル−1,3−ジエトキシシクロヘキサン、2−シクロヘキシル−2−エトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、2−イソプロピル−2−エトキシメチル−1,3−ジエトキシシクロヘキサン、2−イソプロピル−2−エトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、2−イソブチル−2−エトキシメチル−1,3−ジエトキシシクロヘキサン、2−イソブチル−2−エトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン等を例示することができる。
これらの化合物のうち、1,3−ジエーテル類が好ましく、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパンがより好ましい。これらの化合物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(芳香族カルボン酸エステル)
本発明において電子供与体として用いることができる芳香族カルボン酸エステルとしては、特許文献2、特許文献3などに開示されている公知の化合物を制限なく例示することができる。好ましくは、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジn−ブチル、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジデシルなどのフタル酸エステル類である。これらの化合物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明に係る固体状チタン触媒成分(I)の製造方法には、マグネシウム化合物およびチタン化合物が用いられる。マグネシウム化合物としては、前記固体状錯体化合物(S)を必須成分とするが、本発明の効果を損なわない範囲で、他の公知のマグネシウム化合物を併用しても良い。他のマグネシウム化合物の好ましい含有率は、固体状錯体化合物(S)(炭化水素溶媒は除く)100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。他のマグネシウム化合物としては、前述したマグネシウム化合物を挙げることができる。
本発明に係る固体状チタン触媒成分(I)の製造方法では、前記固体状錯体化合物(S)と、前記チタン化合物とを接触させれば公知の方法を制限無く使用することができる。具体的な好ましい方法としては、例えば下記(P−1)〜(P−3)の方法を挙げることができる。
(P−1)前記固体状錯体化合物(S)のスラリーと、液状の前記チタン化合物と、好ましくは上述した電子供与体1種以上とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させる方法。
(P−2)前記固体状錯体化合物(S)のスラリーと、液状の前記チタン化合物と、好ましくは上述した電子供与体1種以上とを、複数回に分けて接触させる方法。
(P−3)前記固体状錯体化合物(S)のスラリーと、液状の前記チタン化合物と、好ましくは上述した電子供与体1種以上とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させ、且つ複数回に分けて接触させる方法。
前記固体状錯体化合物(S)と、前記チタン化合物とを接触させる際の反応温度は、好ましくは−30℃〜150℃、より好ましくは−25℃〜130℃、さらに好ましくは−25〜120℃の範囲である。
また、前記固体状錯体化合物(S)と、前記チタン化合物との接触は、必要に応じて公知の媒体の存在下にて行うこともできる。該媒体としては、やや極性を有するトルエンなどの芳香族炭化水素や、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンなどの公知の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素化合物等が挙げられる。これらの中でも脂肪族炭化水素が好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明に係る固体状チタン触媒成分(I)の製造方法において、ハロゲン/チタン(原子比)(すなわち、ハロゲン原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100が好ましく、4〜90がより好ましい。電子供与体/チタン(モル比)(すなわち、電子供与体のモル数/チタン原子のモル数)は、0.01〜100が好ましく、0.2〜10がより好ましい。マグネシウム/チタン(原子比)(すなわち、マグネシウム原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
また、電子供与体として、前述した脂環族多価カルボン酸エステル(a)および(b)、ポリエーテル化合物、並びに芳香族カルボン酸エステルの少なくとも一種を含む場合であって、さらにアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、アミン類等を含む場合、これらの含有量は、前記電子供与体の合計100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
固体状チタン触媒成分(I)のより詳細な調製条件としては、本発明に係る固体状錯体化合物(S)を使用する以外は、例えばEP585869A1(欧州特許出願公開第0585869号明細書)や特開平5−170843号公報等に記載の条件を好ましく用いることができる。
本発明に係る方法により製造された固体状チタン触媒成分(I)(特に電子供与体を含む)を用いてプロピレンなどのオレフィンの重合反応を行うと、高触媒活性で高い立体規則性を有する重合体が得られる。また、少量の水素添加によって分子量およびMFRの調節が可能となり、立体規則性の低下を抑えることが可能となり、分子量調節と立体規則性とをより高いレベルで両立することができる。さらに、微粉含有量が少ないオレフィン重合体粒子が得られる。
[オレフィン重合用触媒の製造方法]
本発明に係るオレフィン重合用触媒の製造方法は、前記方法により固体状チタン触媒成分(I)を製造する工程と、前記固体状チタン触媒成分(I)と、第1族元素、第2族元素及び第13族元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む有機金属化合物(II)と、を混合する工程と、を含む。また、前記固体状チタン触媒成分(I)と、前記有機金属化合物(II)とを混合する工程において、さらに電子供与体(III)を混合することが好ましい。
(有機金属化合物(II))
前記有機金属化合物(II)としては、例えば、有機アルミニウム化合物などの第13族元素を含む化合物、第1族元素とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族元素を含む有機金属化合物などを用いることができる。これらの中でも有機アルミニウム化合物が好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。有機金属化合物(II)としては、具体的には、EP585869A1等の公知の文献に記載された有機金属化合物触媒成分を好ましい例として挙げることができる。
(電子供与体(III))
電子供与体(III)としては、好ましくは有機ケイ素化合物が挙げられる。有機ケイ素化合物としては、例えば下記式(4)で表される化合物を例示できる。
Si(OR’)4−n・・・(4)
前記式(4)中、RおよびR’は炭化水素基であり、nは0<n<4の整数である。
前記式(4)で示される有機ケイ素化合物としては、具体的には、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシランなどが挙げられる。
これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、前記有機ケイ素化合物としては、下記式(5)で表されるシラン化合物も好ましい。
Si(OR(NR)・・・(5)
前記式(5)中、Rは炭素原子数1〜6の炭化水素基である。Rとしては、炭素原子数1〜6の不飽和または飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜6の炭化水素基である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でもエチル基が特に好ましい。
前記式(5)中、Rは炭素原子数1〜12の炭化水素基または水素である。Rとしては、炭素原子数1〜12の不飽和または飽和脂肪族炭化水素基、あるいは水素などが挙げられる。Rの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中でもエチル基が特に好ましい。
前記式(5)中、Rは炭素原子数1〜12の炭化水素基である。Rとしては、炭素原子数1〜12の不飽和または飽和脂肪族炭化水素基、あるいは水素などが挙げられる。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中でもエチル基が特に好ましい。
前記式(5)で表される化合物の具体例としては、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリn−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、t−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、エチル−iso−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシランが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、前記有機ケイ素化合物の他の例としては、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
RNSi(OR・・・(6)
前記式(6)中、RNは、環状アミノ基である。RNとしては、例えば、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ基、オクタメチレンイミノ基等が挙げられる。
前記式(6)で表される化合物としては、具体的には、(パーヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、オクタメチレンイミノトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらの有機ケイ素化合物は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
また、前記電子供与体(III)としては、芳香族カルボン酸エステルおよび/または複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物であるポリエーテル化合物も好ましい。ポリエーテル化合物としては1,3−ジエーテル類が好ましく、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパンがより好ましい。これらの化合物は、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
なお、本発明に係る方法により製造されるオレフィン重合用触媒は、前記各成分以外に必要に応じてオレフィン重合に有用な他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、シリカなどの担体、帯電防止剤、粒子凝集剤、保存安定剤などが挙げられる。オレフィン重合用触媒は、これらを一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
[オレフィン重合体の製造方法]
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、前記方法によりオレフィン重合用触媒を製造し、該オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行う。なお、本発明において「重合」には、ホモ重合の他、ランダム共重合、ブロック共重合などの共重合の意味が含まれることがある。
本発明に係る方法では、前記オレフィン重合用触媒の存在下にα−オレフィンを予備重合(prepolymerization)させて予備重合触媒を得て、該予備重合触媒の存在下で本重合(polymerization)を行うことも可能である。例えば、オレフィン重合用触媒1g当り好ましくは0.1〜1000g、より好ましくは0.3〜500g、さらに好ましくは1〜200gの量でα−オレフィンを予備重合させることにより行われる。
予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりも高い濃度の触媒を用いることができる。予備重合における前記固体状チタン触媒成分(I)の濃度は、液状媒体1リットル当り、チタン原子換算で好ましくは0.001〜200ミリモル、より好ましくは0.01〜50ミリモル、さらに好ましくは0.1〜20ミリモルの範囲とすることができる。予備重合における前記有機金属化合物(II)の量は、固体状チタン触媒成分(I)1g当り好ましくは0.1〜1000g、より好ましくは0.3〜500gの重合体が生成するような量であることができる。前記有機金属化合物(II)の量は、具体的には、固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、好ましくは0.1〜300モル、より好ましくは0.5〜100モル、さらに好ましくは1〜50モルであることができる。
予備重合では、必要に応じて前記電子供与体(III)を用いることもできる。前記電子供与体(III)の量は、前記固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、好ましくは0.1〜50モル、より好ましくは0.5〜30モル、さらに好ましくは1〜10モルであることができる。
予備重合は、例えば不活性炭化水素溶媒にオレフィンおよび前記触媒成分を加え、温和な条件下にて行うことができる。不活性炭化水素溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロヘプタン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、4−シクロヘプタン、4−シクロヘプタン、メチル4−シクロヘプタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。これらの不活性炭化水素溶媒の中では、脂肪族炭化水素が好ましい。このように不活性炭化水素溶媒を用いる場合、予備重合はバッチ式で行うことが好ましい。一方、オレフィン自体を溶媒として予備重合を行うこともでき、また実質的に溶媒のない状態で予備重合を行うこともできる。この場合には、予備重合を連続的に行うことが好ましい。
予備重合で使用されるオレフィンは、後述する本重合で使用されるオレフィンと同一であっても、異なっていてもよく、具体的には、プロピレンであることが好ましい。予備重合の際の温度は、好ましくは−20〜+100℃、より好ましくは−20〜+80℃、さらに好ましくは0〜+40℃の範囲である。
次に、前記予備重合を経由した後に、または予備重合を経由することなく実施される本重合(polymerization)について説明する。本重合(polymerization)において使用することができる(すなわち、重合される)オレフィンとしては、炭素原子数が3〜20のα−オレフィンが挙げられる。例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの直鎖状オレフィン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができる。これらの中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。また、剛性の高い樹脂において分子量分布の広い重合体のメリットが発現し易い観点から、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンがより好ましい。
これらのα−オレフィンと共に、エチレンや、スチレン、アリルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン等の脂環族ビニル化合物を用いることもできる。さらに、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、イソプレン、ブタジエンなどの共役ジエンや、非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物を、他のオレフィンとして、α−オレフィンとともに重合原料として用いることもできる。これらの化合物は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。前記他のオレフィンの中では、エチレン、芳香族ビニル化合物が好ましい。また、前記他のオレフィンの含有量は、オレフィンの総量100質量%に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
前記予備重合および前記本重合は、バルク重合法、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法、気相重合法のいずれにおいても実施できる。例えば本重合がスラリー重合の反応形態を採る場合、反応溶媒としては、上述の予備重合時に用いられる不活性炭化水素を用いることができる。また、反応温度において液体であるオレフィンを用いることもできる。
前記本重合において、前記固体状チタン触媒成分(I)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、好ましくは0.0001〜0.5ミリモル、より好ましくは0.005〜0.1ミリモルの量で用いられる。また、前記有機金属化合物(II)は、重合系中の予備重合触媒成分中のチタン原子1モルに対し、好ましくは1〜2000モル、より好ましくは5〜500モルとなるような量で用いられる。前記電子供与体(III)は、使用される場合であれば、前記有機金属化合物(II)1モルに対して、好ましくは0.001〜50モル、より好ましくは0.01〜30モル、さらに好ましくは0.05〜20モルの量で用いられる。また、前記本重合を水素の存在下に行えば、得られる重合体の分子量を調節することができ、メルトフローレートの大きい重合体が得られる。
前記本重合において、オレフィンの重合温度は、好ましくは20〜200℃、より好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは50〜90℃である。圧力は、好ましくは常圧〜100kgf/cm(9.8MPa)、より好ましくは2〜50kgf/cm(0.20〜4.9MPa)に設定される。
本発明に係る方法において重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。さらに重合を、反応条件を変えて二段以上に分けて行うこともできる。このような多段重合を行えば、オレフィン重合体の分子量分布をさらに広げることが可能である。
本発明に係る方法により得られるオレフィン重合体は、単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
本発明に係る方法により得られるオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うと(特に電子供与体を含むオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンの重合を行うと)、デカン不溶成分量が70%以上、好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である立体規則性の高いプロピレン系重合体が得られる。また、高活性で微粉含有量が少ないオレフィン重合体粒子が得られる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、プロピレン重合体の嵩比重、メルトフローレート、デカン可溶(不溶)成分量等は下記の方法によって測定した。
(1)嵩密度(BD)
嵩密度(BD)は、JIS K−6721規格に従って測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238E規格に準拠し、測定温度230℃で測定した。
(3)デカン可溶成分量(C10sol.)
ガラス製の測定容器に、プロピレン重合体約3グラム(10−4グラムの単位まで測定した。また、この質量を、下式においてb(グラム)と表した。)、デカン500ml、およびデカンに可溶で且つ後述する減圧乾燥時に実質的に留去される沸点を有する耐熱安定剤を少量装入した。これを、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃まで昇温してプロピレン重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間掛けて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターにて減圧濾過した。濾液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得て、この質量を10−4グラムの単位まで測定した(この質量を、下式においてa(グラム)と表した。)。この操作の後、デカン可溶成分量を下記式によって決定した。
デカン可溶成分含有率=100×(500×a)/(100×b)。
(4)固体状錯体化合物のマグネシウム含有率
固体状錯体化合物のマグネシウム含有率を、高周波プラズマ発光分析(ICP−AES)法で、下記の方法で測定した。なお、高周波プラズマ発光分析装置には島津製作所製ICPS−8100型装置(商品名)を用いた。
(内部標準物質を使用した検量線の作成)
酸化イットリウム(和光純薬社製特級)、Mg標準液(和光純薬社製原子吸光分析用1,000ppm溶液または関東化学社製原子吸光分析用1,000ppm溶液)、および硫酸(和光純薬社製特級)を用い、濃度の明確な酸化イットリウムとMgとを含む溶液を複数種調製した。これをICP−AES測定することで、酸化イットリウムを内部標準物質とするMg濃度測定のための検量線を常法により作成した。
(固体状錯体化合物のマグネシウム含有率の測定)
窒素雰囲気下で、固体状錯体化合物約200mgを0.1mgの単位まで精秤した(この質量を(α)と示す)。これを蒸留水および硫酸に溶解させ、更に酸化イットリウムの溶液を所定量加えた。これを容量(β)のメスフラスコに移して、蒸留水でメスアップして、試料溶液とした。前記試料溶液をICP−AES測定し、前記検量線を利用して、試料溶液のMg濃度を測定した(γ)。これらの結果から、下記式によって固体状錯体化合物中のMg含有率(M)を算出した。
M=(β×γ)/α
なお、固体状チタン触媒成分のチタン含有率、マグネシウム含有率も上記の方法に準じた方法で求めることができる。
(5)固体状錯体化合物のアルコール含有率
固体状錯体化合物のエタノール含有率を、内部標準物質を用いたガスクロマトグラフィーにより測定した。なお、ガスクロマトグラフィーには、島津製作所製GC−2010Plus型装置(商品名)を用いた。カラムにはアジレント社製キャピラリーカラムDB−WAX(商品名、0.25mm×30m、ID:0.5μm)を用いた。測定条件は以下の通りである。検出方式:FID、移動相:ヘリウム、線速:25cm/sec、インジェクション温度:220℃、検出器温度:250℃、カラム温度:45℃で2分間保持後、15℃/分で昇温し、230℃で10分間保持して終了した。
(内部標準物質を使用した分析法における補正係数の決定)
安息香酸メチル(和光純薬社製特級)、アセトン(和光純薬社製特級)、およびエタノール(和光純薬社製特級)を用い、それぞれ精秤したエタノールと安息香酸メチルとを含むアセトン溶液を調製した。これをガスクロマトグラフィーで測定することで、安息香酸メチルを内部標準物質とするエタノール濃度測定のための補正係数(δ)を下記式のように定めた。
δ=((E−W)/(E−A))/((I−A)/(I−W))
E−A:ガスクロマトグラムにおけるエタノール由来の面積
I−A:ガスクロマトグラムにおける安息香酸メチルの面積
E−W:エタノールの質量
I−W:安息香酸メチル(内部標準物質)の質量。
(エタノールの含有率測定)
窒素雰囲気下で、固体状錯体化合物約200mgを精秤してガラス容器に採取した(S−W)。これに適量のアセトンを加えて溶解させた。この際、ドライアイスを含むアセトン冷媒でガラス容器を冷却しながら行った。これに、内部標準物質である安息香酸メチルを所定量添加した(I−W−2)。さらに、13質量%アンモニア水を数滴加え、撹拌した後、上層部の固体分を濾別して除去した液を測定試料とした。該測定試料を用い、前記ガスクロマトフラフィーでエタノールの含有率を測定した。エタノールの含有率は、下記式で算出した。
エタノール含有率=(δ×(E−A−2)×(I−W−2))/((I−A−2)×(S−W))
E−A−2:ガスクロマトグラムにおけるエタノール由来の面積
I−A−2:ガスクロマトグラムにおける安息香酸メチルの面積。
(6)m/n値
前記アルコール含有率と該アルコールの分子量との商(Em)、および前記マグネシウム含有率とマグネシウムの原子量である24.305との商(Mm)から、「Em/Mm」の計算を行うことで、m値、n値を算出した。さらにそれらの結果から、m/n値を算出した。
(7)細孔容積
細孔容積は、水銀ポロシメーター(商品名:PoreMaster 60GT、カンタクローム社製)により測定した。得られたデータを装置付属の解析ソフト(商品名:Poremaster for Windows)により解析し、細孔径0.001〜1.0μmの累積値を求めた。
(8)微粉率
微粉率は、プロピレン重合体粒子中の粒径180μm未満の粒子の割合を示す。具体的には、A(g)のポリマーを機械式篩分級装置にて分級した場合の粒径180μm未満の粒子の質量をB(g)としたとき、微粉率は下記式で算出される値である。
微粉率(質量%)=B/A×100。
[実施例1]
内容積2リットルの高速撹拌装置(特殊機化工業製、TKホモミクサーM型(商品名))内を充分窒素置換した。その後、この装置に精製デカン700ml、市販塩化マグネシウム10g、エタノール24.2g、およびレオドールSP−S20(商品名、花王(株)製、ソルビタンジステアレート)3gを入れた。この懸濁液を撹拌しながら昇温し、120℃にて800rpmで30分間撹拌した。次いで、この懸濁液を、沈殿物が生じないように高速撹拌しながら、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め−10℃に冷却された精製デカン1リットルを張り込んである2リットルのガラスフラスコ(攪拌機付)に移した。移液により生成した固体を濾過し、精製n−ヘプタンで充分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した原料錯体を得た。
前記原料錯体とデカンの懸濁物を250rpmで撹拌しながら、乾燥窒素を液中にバブリングさせることで固体状錯体化合物(S−1)を得た。スラリー濃度、温度、時間、乾燥窒素供給速度を表1に示す。得られた固体状錯体化合物(S−1)の一部を分析するためにろ過した後、ヘキサン洗浄および減圧乾燥を行い、組成分析を実施してm値を決定した。得られた固体状錯体化合物(S−1)のマグネシウム含有率、m値、m/n値および細孔容積を表1に示す。
[実施例2]
乾燥窒素を液中にバブリングさせる工程において、表1に示される条件に変更した以外は実施例1と同様にして、固体状錯体化合物(S−2)を得た。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、乾燥窒素を液中にバブリングさせる工程を50℃で20時間実施した後、引き続き55℃に昇温してさらに7時間実施することで、固体状錯体化合物(S−3)を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、乾燥窒素を液中にバブリングさせる工程の代わりに、前記原料錯体をそのまま配置した流動床を備えた反応器中で、乾燥窒素を流通させながら5〜6mmHgに減圧し、温度を3℃/時間で室温から60℃まで昇温した。昇温開始から12時間が経過したところで減圧および乾燥窒素の流通を終了し、固体状錯体化合物(CS−1)を得た。結果を表1に示す。なお、乾燥窒素の供給速度は、0〜100リットル/時間の範囲でm値を見ながら調整した。
Figure 2018087263
[実施例4]
Mg原子に換算して23ミリモル量の、実施例1で得られた固体状錯体化合物(S−1)を、−20℃に保持した四塩化チタン100ml中に攪拌下、全量導入した。この混合液を5時間かけて80℃に昇温し、80℃に達したところで電子供与体(e−1)としてDIBP(フタル酸ジイソブチル)を添加した。さらにこれを40分間かけて120℃に昇温し、120℃を維持したまま60分間同温度にて保持した。反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を100mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び127.5℃で20分間加熱反応を行った。再び熱濾過にて固体部を採取し、100℃デカンおよびヘキサンで、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分(C−1)はデカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。結果を表2に示す。
[実施例5および6、並びに比較例2]
固体状錯体化合物(S−1)の代わりに、固体状錯体化合物(S−2)、(S−3)または(CS−1)を用いた以外は、実施例4と同様にして固体状チタン触媒成分(C−2)、(C−3)または(CC−1)を得た。結果を表2に示す。
Figure 2018087263
[実施例7]
内容積2リットルの攪拌機付き重合装置に、室温で500gのプロピレンおよび水素1NLを加えた。その後、さらにトリエチルアルミニウム0.5ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.1ミリモル、および固体状チタン触媒成分(C−1)をチタン原子換算で0.004ミリモル加えた。これを速やかに70℃まで昇温し、70℃で1時間重合した後、少量のメタノールにて反応を停止させ、プロピレンをパージした。なお、前記固体状チタン触媒成分(C−1)は、使用前に常圧でプロピレンスラリー重合を実施し、予備重合触媒(3g−PP/g−cat.)として使用した。得られたプロピレン重合体(P−1)の粒子を80℃で一晩、減圧乾燥した。重合活性、MFR、BD、C10sol.、微粉率を表3に示す。
[実施例8および9、並びに比較例3]
固体状チタン触媒成分(C−1)の代わりに、固体状チタン触媒成分(C−2)、(C−3)または(CC−1)を用いた以外は、実施例7と同様にしてプロピレン重合体(P−2)、(P−3)または(CP−1)を得た。結果を表3に示す。
Figure 2018087263

Claims (8)

  1. 下記式(I)
    MgX ・(ROH)・・・(I)
    で表される原料錯体と、炭化水素溶媒とを含む液に、液温25〜80℃で不活性ガスを連続的に接触させる工程を含む、
    下記式(II)
    MgX ・(ROH)・・・(II)
    で表される固体状錯体化合物(S)の製造方法。
    (前記式(I)及び(II)中、Xはハロゲン原子であり、Rはヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素水素基であり、m及びnは正の実数であり、mは2.0≦m≦3.3を満たし、mとnは0.45≦m/n≦0.99を満たし、aは0≦a≦2を満たし、bは0≦b≦2を満たし、aとbの和は2である。)
  2. 前記不活性ガスを連続的に接触させる方法が、前記不活性ガスを液中にバブリングさせる方法である請求項1に記載の固体状錯体化合物(S)の製造方法。
  3. 前記不活性ガスの供給速度が前記液1リットル当たり5〜300リットル/時間であり、前記不活性ガスの供給時間が1〜60時間である、請求項1または2に記載の固体状錯体化合物(S)の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により固体状錯体化合物(S)を製造する工程と、
    前記固体状錯体化合物(S)と、Ti(OR)4−gで表されるチタン化合物(Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4(前記式(II)においてaが0の場合、g=4を除く)を満たす)とを接触させる工程と、
    を含む、チタン、マグネシウム及びハロゲンを含む固体状チタン触媒成分(I)の製造方法。
  5. 前記固体状錯体化合物(S)と、前記チタン化合物とを接触させる工程において、さらに電子供与体を接触させる請求項4に記載の固体状チタン触媒成分(I)の製造方法。
  6. 請求項4または5に記載の方法により固体状チタン触媒成分(I)を製造する工程と、
    前記固体状チタン触媒成分(I)と、第1族元素、第2族元素及び第13族元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む有機金属化合物(II)と、を混合する工程と、
    を含む、オレフィン重合用触媒の製造方法。
  7. 前記固体状チタン触媒成分(I)と、前記有機金属化合物(II)とを混合する工程において、さらに電子供与体(III)を混合する請求項6に記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の方法によりオレフィン重合用触媒を製造し、該オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うオレフィン重合体の製造方法。
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