以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図10は、本発明に係る作業機の側面図を示している。図10では、作業機の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
作業機1は、図10,図11に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。本発明の実施形態において、作業機1の運転席8に着座した運転者の前側(図10の左側)を前方、運転者の後側(図10の右側)を後方、運転者の左側(図10の手前側)を左方、運転者の右側(図10の奥側)を右方として説明する。また、前後の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2に近づく方向である。
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3には運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。走行装置5は、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機が搭載されている。
作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16(第1枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸17(第2枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18(第3枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19(第4枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20(第5枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸21(第6枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前後揺動する。
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材とを接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
左側及び右側の各走行装置5は、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
次に、本発明に係る作業機の油圧システムについて説明する。
図1に示すように、走行系の油圧システムは、走行装置5を駆動するシステムである。走行装置5は、左走行モータ装置(第1走行モータ装置)31Lと、右走行モータ装置(第2走行モータ装置)31Rと、油圧装置34とを有している。走行系の油圧システムは、原動機32と、方向切換弁33と、第1油圧ポンプP1とを備えている。
原動機32は、電気モータ、エンジン等から構成されている。この実施形態では、原動機32はエンジンである。第1油圧ポンプP1は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第1油圧ポンプP1は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。特に、第1油圧ポンプP1は、主に制御に用いる作動油を吐出する。説明の便宜上、作動油を貯留するタンク22のことを作動油タンクということがある。また、第1油圧ポンプP1から吐出した作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
第1油圧ポンプP1の吐出側には、作動油(パイロット油)を流す吐出油路40が設けられている。吐出油路(第1油路)40には、フィルタ35、方向切換弁33、第1走行モータ装置31L及び第2走行モータ装置31Rが設けられている。フィルタ35と方向切換弁33との間には、吐出油路40から分岐したチャージ油路41が設けられている。このチャージ油路41は、油圧装置34に至っている。
方向切換弁33は、第1走行モータ装置31L及び第2走行モータ装置31Rの回転を変更する電磁弁であって、励磁により第1位置33aと第2位置33bとに切り換え可能な二位置切換弁である。方向切換弁33の切換え操作は、図示省略の操作部材等によって行う。
第1走行モータ装置31Lは、機体2の左側に設けられた走行装置5の駆動軸に動力を伝達するモータである。第2走行モータ装置31Rは、機体2の右側に設けられた走行装置の駆動軸に動力を伝達するモータである。
第1走行モータ装置31Lは、HSTモータ(走行モータ)36と、斜板切換シリンダ37と、走行制御弁(油圧切換弁)38とを有している。HSTモータ36は、斜板形可変容量アキシャルモータあって、車速(回転)を1速或いは2速に変更することができるモータである。言い換えれば、HSTモータ36は、作業機1の推進力を変更することができるモータである。
斜板切換シリンダ37は、伸縮によってHSTモータ36の斜板の角度を変更するシリンダである。走行制御弁38は、斜板切換シリンダ37を一方側或いは他方側に伸縮させる弁であって、第1位置38a及び第2位置38bに切り換わる二位置切換弁である。この走行制御弁38の切換え操作は、当該走行制御弁38に接続された上流側に位置する方向切換弁33によって行われる。
以上、第1走行モータ装置31Lによれば、操作部材の操作によって方向切換弁33を第1位置33aにした場合、方向切換弁33と走行制御弁38との間における区間においてパイロット油が抜け、走行制御弁38が第1位置38aに切換えられる。その結果、斜板切換シリンダ37が縮み、HSTモータ36は1速状態になる。また、操作部材の操作によって方向切換弁33を第2位置33bにした場合、方向切換弁33を通じて走行制御弁38にパイロット油が供給され、走行制御弁38が第2位置38bに切換えられる。その結果、斜板切換シリンダ37が延び、HSTモータ36は2速状態になる。
なお、第2走行モータ装置31Rも第1走行モータ装置31Lと同様に作動する。第2走行モータ装置31Rの構成及び作動は、第1走行モータ装置31Lと同様であるため説明を省略する。
油圧装置34は、第1走行モータ装置31L及び第2走行モータ装置31Rを駆動する装置であって、第1走行モータ装置31Lの駆動用の駆動回路(左用駆動回路)34Lと、第2走行モータ装置31Rの駆動用の駆動回路(右用駆動回路)34Rとを有している。
駆動回路34L、34Rは、それぞれHSTポンプ(走行ポンプ)53L、53Rと、変速用油路57h,57iと、第2チャージ油路57jとを有している。変速用油路57h,57iは、HSTポンプ53L,53RとHSTモータ36とを接続する油路である。第2チャージ油路57jは、変速用油路57h,57iに接続され、第1油圧ポンプP1からの作動油を変速用油路57h,57iに補充する油路である。
HSTポンプ53L、53Rは、原動機32の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。HSTポンプ53L,53Rは、パイロット圧が作用する前進用受圧部53aと後進用受圧部53bとを有している、受圧部53a、53bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度を変更することによって、HSTポンプ53L,53Rの出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。
HSTポンプ53L,53Rの出力や作動油の吐出方向の変更は、運転席8の周囲に設けられた操作装置47によって行うことができる。操作装置47は、揺動自在に支持された操作部材54と、複数のパイロット弁(操作弁)55とを有している。
図1に示すように、操作部材54は、操作弁55に支持され、左右方向(機体幅方向)又は前後方向に揺動する操作レバーである。即ち、操作部材54は、中立位置Nを基準とすると、中立位置Nから右方及び左方に操作可能であると共に、中立位置Nから前方及び後方に操作可能である。言い換えれば、操作部材54は、中立位置Nを基準に少なくとも4方向に揺動することが可能である。尚、説明の便宜上、前方及び後方の双方向、即ち、前後方向のことを第1方向という。また、右方及び左方の双方向、即ち、左右方向(機体幅方向)のことを第2方向ということがある。
また、複数の操作弁55は、共通、即ち、1本の操作部材54によって操作される。複数の操作弁55は、操作部材54の揺動に基づいて作動する。複数の操作弁55には、吐出油路40が接続され、当該吐出油路40を介して、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。複数の操作弁55は、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55Dである。
操作弁55Aは、前後方向(第1方向)のうち、操作レバー54を前方(一方)に揺動した場合(前操作した場合)に、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Bは、前後方向(第1方向)のうち、操作レバー54を後方(他方)に揺動した場合(後操作した場合)に、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。左右方向(第2方向)のうち、操作弁55Cは、操作レバー54を右方(一方)に揺動した場合(右操作した場合)に、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Dは、左右方向(第2方向)のうち、操作レバー54を、左方(他方)に揺動した場合(左操作した場合)に、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。
複数の操作弁55と、走行系の油圧装置34(走行ポンプ53L,53R)とは、走行油路(第2油路)45によって接続されている。言い換えれば、走行ポンプ53L,53Rは、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁55D)から出力した作動油によって作動可能な油圧機器である。走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dと、第5走行油路45eとを有している。第1走行油路45aは、走行ポンプ53Lの前進用受圧部53aに接続された油路である。第2走行油路45bは、走行ポンプ53Lの後進用受圧部53bに接続された油路である。第3走行油路45cは、走行ポンプ53Rの前進用受圧部53aに接続された油路である。第4走行油路45dは、走行ポンプ53Rの後進用受圧部53bに接続された油路である。第5走行油路45eは、操作弁55、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dを接続する油路である。第5走行油路45eは、複数のシャトル弁46を有するブリッジ部45e1と、ブリッジ部45e1の合流部と操作弁55とを接続する連結路45e2とを含んでいる。
操作レバー54を前方(図1では矢示A1方向)に揺動させると、操作弁55Aが操作されて該操作弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第3走行油路45cを介して走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用する。これにより、走行モータ36の出力軸が操作レバー54の揺動量に比例した速度で正転(前進回転)して作業機1が前方に
直進する。
また、操作レバー54を後方(図1では矢示A2方向)に揺動させると、操作弁55Bが操作されて該操作弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2走行油路45bを介して走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用すると共に第4走行油路45dを介して走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、走行モータ36の出力軸が操作レバー54の揺動量に比例した速度で逆転(後進回転)して作業機1が後方に直進する。
また、操作レバー54を右方(図1では矢示A3方向)に揺動させると、操作弁55Cが操作されて該操作弁55Cからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第4走行油路45dを介して走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、左側の走行モータ36の出力軸が正転し且つ右側の走行モータ36の出力軸が逆転して作業機1が右側に旋回する。
また、操作レバー54を左方(図1では矢示A4方向)に揺動させると、操作弁55Dが操作されて該操作弁55Dからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第3走行油路45cを介して走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用すると共に第2走行油路45bを介して走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用する。これにより、左側の走行モータ36の出力軸が逆転し且つ右側の走行モータ36の出力軸が正転して作業機1が左側に旋回する。
また、操作レバー54を斜め方向に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、左方の走行モータ36及び右側の走行モータ36の出力軸の回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
すなわち、操作レバー54を左斜め前方に揺動操作すると該操作レバー54の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回し、操作レバー54を右斜め前方に揺動操作すると該操作レバー54の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回し、操作レバー54を左斜め後方に揺動操作すると該操作レバー54の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回し、操作レバー54を右斜め後方に揺動操作すると該操作レバー54の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する。
図2に示すように、作業系の油圧システムは、ブーム10、バケット11、予備アタッチメント等を作動させるシステムであって、複数の制御弁56と、作業系油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)P2を備えている。
第2油圧ポンプP2は、第1油圧ポンプP1とは異なる位置に設置されたポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第2油圧ポンプP2は、作動油タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。特に、第2油圧ポンプP2は、主に油圧アクチュエータを作動させる作動油を吐出する。
第2油圧ポンプP2の吐出側には、メイン油路(油路)39が設けられている。このメイン油路39には、複数の制御弁56が接続されている。制御弁56は、パイロット油のパイロット圧によって作動油の流す方向を切換可能な弁である。
図2に示すように、複数の制御弁56は、第1制御弁56A、第2制御弁56B、第3制御弁56Cである。第1制御弁56Aは、ブームを制御する油圧シリンダ(ブームシリンダ)14を制御する弁である。第2制御弁56Bは、バケットを制御する油圧シリンダ(バケットシリンダ)15を制御する弁である。第3制御弁56Cは、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等の予備アタッチメントに装着された予備油圧アクチュエータを制御する弁である。
第1制御弁56A、第2制御弁56Bは、それぞれパイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。第1制御弁56A、第2制御弁56Bは、パイロット圧によって、中立位置、中立位置とは異なる第1位置、中立位置及び第1位置とは異なる第2位置に切り換わる。
第1制御弁56Aには、油路を介してブームシリンダ14が接続され、第2制御弁56Bには、油路を介してバケットシリンダ15が接続されている。
ブーム10、バケット11の操作は、運転席8の周囲に設けられた操作装置48によって行うことができる。操作装置48は、揺動自在に支持された操作部材58と、複数のパイロット弁(操作弁)59とを有している。操作部材58は、操作弁59に支持され、左右の方向(機体幅方向)又は前後の方向に揺動する操作レバーである。また、複数の操作弁59は、操作部材(操作レバー)58の揺動に基づいて作動する。複数の操作弁59には、吐出油路40が接続され、当該吐出油路40を介して、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。
複数の操作弁59は、操作弁59A、操作弁59B、操作弁59C及び操作弁59Dである。
操作弁59Aは、操作レバー58を前方に揺動した場合(前操作した場合)に、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁59Bは、操作レバー58を後方に揺動した場合(後操作した場合)に、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁59Cは、操作レバー58を右方に揺動した場合(右操作した場合)に、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁59Dは、操作レバー58を、左方に揺動した場合(左操作した場合)に、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。
複数の操作弁59(操作弁59A、操作弁59B、操作弁59C、操作弁59D)は、作業油路43に接続されている。作業油路43は、第1作業油路43aと、第2作業油路43b、第3作業油路43c、第4作業油路43dとを有している。第1作業油路43aは、第1制御弁56A及び操作弁59Aに接続される油路である。第2作業油路43bは、第1制御弁56A及び操作弁59Bに接続される油路である。第3作業油路43cは、第2制御弁56B及び操作弁59Cに接続される油路である。第4作業油路43dは、第2制御弁56B及び操作弁59Dに接続される油路である。
操作レバー58を前方に傾動させると、下降用パイロット弁(操作弁)59Aが操作されて当該下降用操作弁59Aから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第1制御弁56Aの受圧部に作用し、ブームシリンダ14が収縮して、ブーム10は下降する。
操作レバー58を後方に傾動させると、上昇用パイロット弁(操作弁)59Bが操作されて当該上昇用操作弁59Bから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第1制御弁56Aの受圧部に作用し、ブームシリンダ14が伸長して、ブーム10は上昇する。
操作レバー58を右方に傾動させると、バケットダンプ用のパイロット弁(操作弁)59Cが操作されて当該操作弁59Cから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第2制御弁56Bの受圧部に作用し、バケットシリンダ15は伸長して、バケット11がダンプ動作する。
操作レバー58を左方に傾動させると、バケットスクイ用のパイロット弁(操作弁)59Dが操作され当該操作弁59Dから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第2制御弁56Bの受圧部に作用し、バケットシリンダ15は収縮して、バケット11がスクイ動作する。
第3制御弁56Cは、パイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。第3制御弁56Cは、パイロット圧によって、第1位置62a、第2位置62b、第3位置(中立位置)62cに切り換わる。即ち、第3制御弁56Cは、第1位置62a、第2位置62b及び第3位置62cに切り換わることによって、予備油圧アクチュエータへ向かう作動油の方向、流量及び圧力を制御する。
第3制御弁56Cには、給排油路83が接続されている。給排油路83の一端は、第3制御弁56Cの給排ポートに接続され、給排油路83の中途部は、接続部材50に接続され、給排油路83の他端部は、予備油圧アクチュエータに接続される。給排油路83は、上述した第1管材及び第2管材等で構成される。
詳しくは、給排油路83は、第3制御弁56Cの第1給排ポートと接続部材50の第1ポートとを接続する第1給排油路83aを含んでいる。また、給排油路83は、第3制御弁56Cの第2給排ポートと接続部材50の第2ポートとを接続する第2給排油路83bとを含んでいる。つまり、第3制御弁56Cを操作することによって、第3制御弁56Cから第1給排油路83aに向けて作動油を流したり、第3制御弁56Cから第2給排油路83bに向けて作動油を流すことができる。
第3制御弁56Cは、複数の比例弁60によって操作される。比例弁60は、励磁によって開度が変更可能な電磁弁である。複数の比例弁60は、第1比例弁60Aと、第2比例弁60Bである。第1比例弁60A及び第2比例弁60Bには、吐出油路40が接続されている。比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)と、第3制御弁56Cとは、油路86により接続されている。
油路86は、比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)を介してパイロット油を第3制御弁56Cに流す油路である。油路86は、鋼管、パイプ、ホース等の管材で構成されている。油路86は、第1比例弁60Aと第3制御弁56Cの受圧部61aとを接続する第1制御油路86aと、第2比例弁60Bと第3制御弁56Cの受圧部61bとを接続する第2制御油路86bとを含んでいる。
したがって、第1比例弁60Aを開くと、パイロット油は第1制御油路86aを介して第3制御弁56Cの受圧部61aに作用し、当該第1比例弁60Aの開度によって受圧部61aに付与(作用)するパイロット圧が決まる。受圧部61aに付与されたパイロット圧が所定値以上になると、スプールの移動によって、第3制御弁56Cは、第3位置(中立位置)62cから第1位置62aに切り換わる。また、第2比例弁60Bを開くと、パイロット油は第2制御油路86bを介して第3制御弁56Cの受圧部61bに作用し、当該第2比例弁60Bの開度によって受圧部61bに付与(作用)するパイロット圧が決まる。受圧部61bに付与されたパイロット圧が所定値以上になると、スプールの移動によって、第3制御弁56Cは、第3位置(中立位置)62cから第2位置62bに切り換わる。
比例弁60(第1比例弁60Aと、第2比例弁60B)の励磁等は、制御装置(第1制
御装置)90で行う。制御装置90は、CPU等から構成されている。制御装置90には、運転席8の周囲に設けられたスイッチ96が接続されている。スイッチ96は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。スイッチの操作は、制御装置90に入力される。スイッチ96の操作によって、第1比例弁60A、又は、第2比例弁60Bが開閉する。したがって、制御装置90の制御によって、予備アクチュエータを作動させることができる。
さて、図1に示すように、作業機1は、上述した制御装置90の他に、原動機32を制御する制御装置92を備えている。例えば、原動機32がエンジンである場合には、制御装置92は、エンジン制御装置である。説明の便宜上、原動機32がエンジンであるとして説明をする。また、制御装置90のことを「第1制御装置90」といい、制御装置92のことを「第2制御装置92」といい説明を進める。
第2制御装置92には、目標のエンジン回転数(エンジンの目標回転数という)を指令する指令部材93が接続されている。指令部材93は、ペダル部93aと、ペダル部93aの操作量を検出するセンサ93bとを有している。ペダル部93aは、揺動自在に支持されたアクセルレバー、或いは、揺動自在に支持されたアクセルペダルである。センサ93bで検出された操作量は、第2制御装置92に入力される。センサ93bで検出された操作量が、エンジンの目標回転数である。また、第2制御装置92には、実際のエンジン回転数(エンジンの実回転数という)を検出するセンサ(測定装置)94が接続されている。
第2制御装置92のエンジン制御は、一般的なものであって、例えば、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が示された制御信号をインジェクタに出力する。また、第2制御装置92は、燃料噴射圧等が示された信号を、サプライポンプやコモンレールに出力する。即ち、第2制御装置92は、エンジンの実回転数がエンジンの目標回転数になるように、インジェクタ、サプライポンプ及びコモンレールを制御する。
第1制御装置90は、比例弁60等の制御の他に、エンジンストールを防止する制御(アンチストール制御)を行う。具体的には、第1制御装置90には、吐出油路40に設けられた作動弁(第2作動弁)44が接続されている。この実施形態では、作動弁44は、電磁比例弁(比例弁)である。第1制御装置90は、エンジンの目標回転数とエンジンの実回転数との差であるエンジンのドロップ量に基づいて、比例弁44の開度を変更することによって、エンジンストールを防止する。第1制御装置90は、エンジンの実回転数及びエンジンの目標回転数が取得可能である。なお、作動弁44は、切換弁で構成しても、絞り部で構成してもよい。
図3は、エンジン回転数と、走行一次圧と、制御線L1、L2の関係を示している。走行一次圧とは、吐出油路(第1油路)40において、比例弁44から操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁D)に至る区間における作動油の圧力(パイロット圧)である。即ち、操作レバー54に設けられた操作弁55に入る作動油の一次圧である。制御線L1は、ドロップ量が所定未満である場合のエンジン回転数と、走行一次圧との関係を示している。制御線L2は、ドロップ量が所定以上である場合のエンジン回転数と、走行一次圧との関係を示している。
第1制御装置90は、ドロップ量が所定未満である場合、エンジンの実回転数と走行一次圧との関係が、制御線L1に一致するように、比例弁44の開度を調整する。また、第1制御装置90は、ドロップ量が所定以上である場合、エンジンの実回転数と走行一次圧との関係が、制御線L2に一致するように、比例弁44の開度を調整する。制御線L2では、所定のエンジン回転数に対する走行一次圧が、制御線L1の走行一次圧よりも低い。即ち、同一のエンジン回転数に着目した場合、制御線L2の走行一次圧が、制御線L1の走行一次圧よりも低い。したがって、制御線L2に基づく制御によって、操作弁55に入る作動油の圧力(パイロット圧)が低く抑えられる。その結果、HSTポンプ(走行ポンプ)53のHSTポンプ66の斜板角が調整され、エンジン32に作用する負荷が減少し、エンジン32のストールを防止することができる。なお、図3では、1本の制御線L2を示しているが、制御線L2は複数であってもよい。例えば、エンジン回転数毎に制御線L2が設定されていてもよい。また、制御線L1及び制御線L2を示すデータ、或いは、関数等の制御パラメータ等は、第1制御装置90が有していることが好ましい。
さて、油圧システムには、走行油路(第2油路)45の作動油の圧力を低減(減圧)することが可能な回路が設けられている。図1に示すように、走行油路(第2油路)45には、排出油路71が接続されている。
詳しくは、排出油路71は、第1排出油路71aと、第2排出油路71bと、第3排出油路71cと、第4排出油路71dと、第5排出油路71eとを有している。
第1排出油路71aは、第1走行油路45aの中途部から分岐する油路である。第2排出油路71bは、第2走行油路45bの中途部から分岐する油路である。第3排出油路71cは、第3走行油路45cの中途部から分岐する油路である。第4走行油路45dは、第4走行油路45dの中途部から分岐する油路である。第5排出油路71eは、第1排出油路71a、第2排出油路71b、第3排出油路71c及び第4排出油路71dを接続する油路であって、作動油タンク22にも接続されている。第5排出油路71eの中途部には、作動弁(第1作動弁)72が接続されている。
第1排出油路71a、第2排出油路71b、第3排出油路71c、第4走行油路51dのそれぞれには、逆止弁73が設けられている。ここで、第2油路45(第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45d)と、排出油路71(第1排出油路71a、第2排出油路71b、第3排出油路71c、第4走行油路51d)との接続部を「C1」とする。この場合、逆止弁73は、接続部C1から第5排出油路71eに向けて作動油が流れることを許容し且つ第5排出油路71eから接続部C1に向けて作動油が流れることを阻止する弁である。
走行油路(第2油路)45には、操作弁55から排出油路71に至る作動油の流量を低下させる絞り部74が設けられている。絞り部74は、第1絞り部74a、第2絞り部74b、第3絞り部74c、第4絞り部74dを含んでいる。第1絞り部74aは、第1走行油路45aにおいて、第1排出油路71aに接続する接続部C1の上流(操作弁55側)に設けられた絞りである。第2絞り部74bは、第2走行油路45bにおいて、第2排出油路71bに接続する接続部C1の上流に設けられた絞りである。第3絞り部74cは、第3走行油路45cにおいて、第3排出油路71cに接続する接続部C1の上流に設けられた絞りである。第4絞り部74dは、第4走行油路45dにおいて、第4排出油路71dに接続する接続部C1の上流に設けられた絞りである。
作動弁72は、ソレノイドを励磁することによって設定圧が変更可能な可変リリーフ弁である。可変リリーフ弁72の設定圧を所定圧よりも小さくする(設定圧を第2油路45における作動油の圧力よりも小さくする)と、可変リリーフ弁72が作動する(開放する)。そのため、第2油路45(第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45d)の作動油が、第5排出油路71eに流れて可変リリーフ弁72を通過して、作動油タンク22に排出することが可能である。一方で、可変リリーフ弁72の設定圧を大きくする(設定圧を第2油路45における作動油の圧力よりも大きくする)と、可変リリーフ弁72は作動しない(閉鎖のまま)。そのため、第2油路45の作動油は、第5排出油路71eに流れず、第2油路45の作動油の圧力によって走行ポンプ53L、53Rを作動させることができる。
可変リリーフ弁72の設定圧の変更は、制御装置90によって行う。制御装置90には、作動油の温度を検出する検出装置(第1測定装置)91が接続されている。第1検出装置91は、例えば、作動油タンク22内の作動油の温度や第1油圧ポンプP1から吐出した作動油等の温度を測定する。例えば、第1測定装置91は、第1油圧ポンプP1の吸込口に繋がるホース又は配管に設けられている。なお、第1検出装置91は、第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2の吸込口の分岐前や分岐後に設けられていてもよい。また、第1検出装置91の設置場所は上述した場所に限定されない。
制御装置90は、第1測定装置91が測定した作動油の温度(油温)が予め定められた所定温度以下である場合、制御信号等を出力して可変リリーフ弁72の設定圧を予め定められた値よりも下げて(操作弁55の一次圧よりも二次圧が低くなるように設定圧を下げる)、当該可変リリーフ弁72を開放する。例えば、油温が所定温度以下であって低温である場合、可変リリーフ弁72の設定圧を最小にする。低温とは、作業機で一般的に用いられる粘性グレード(動粘度)の作動油における粘度が非常に高くなる温度域であって、油路において作動油の圧力が上昇してしまう領域である。例えば、油温が0℃以下、特に、氷点下10℃以下等で作動油の圧力が上昇する。なお、作動弁72(可変リリーフ弁72)の開度は、上述したものに限定されない。例えば、油温が高い場合には、可変リリーフ弁72の設定値を上昇させ当該可変リリーフ弁72が開かない(全閉)にしてもよい。
このように、第1測定装置91で測定した油温が低温である場合に、可変リリーフ弁72の設定圧を低下させているため、操作弁55の二次側(第2油路45)の作動油を循環させて、簡単に暖機を行うことができる。また、作動油の温度が低温である場合は、可変リリーフ弁72の設定圧が低くするため(パイロット圧を制限するため)、作業機1の動作を遅くすることができ、操作のミスを抑制することができる。なお、操作弁55の一次圧及び二次圧を測定する測定装置を設けておき、作動油が低温時には、一次圧>二次圧となるように、可変リリーフ弁72の設定圧を変更してもよい。
また、制御装置90は、第1測定装置91が測定した作動油の温度(油温)が予め定められた所定温度以下(低温)でない場合は、可変リリーフ弁72の設定圧を予め設定された設定圧に戻す。
なお、制御装置90に、外気の温度を測定可能な第2測定装置95を接続してもよい。制御装置90は、第2測定装置95が測定した外気の温度に基づいて、可変リリーフ弁72の設定圧を変更してもよい。外気温とは、例えば、作業機1の周辺の温度や作業機1に搭載した機器の周辺の温度である。具体的には、可変リリーフ弁72は、作動油の温度が予め定められた所定温度以下で且つ、第2測定装置95で測定した外気の温度が予め定められた所定温度以下である場合に開放する。例えば、第2測定装置95で測定した外気温が氷点下であって低温であり、第1測定装置91で測定した油温が低温である場合に、可変リリーフ弁72の設定圧を下げる。
なお、上述した実施形態では、作動弁72を、設定圧の変更が可能な可変リリーフ弁72で構成していたが、作動弁72を電磁比例弁(比例弁)で構成してもよい。この場合も比例弁72は、第1測定装置91が測定した作動油の温度(油温)が予め定められた所定温度以下(低温)である場合は開放し、油温が所定温度以下でない場合は閉鎖(全閉)する。また、第2測定装置95を設けた場合、比例弁72は、作動油の温度が予め定められた所定温度以下で且つ、第2測定装置95で測定した外気の温度が予め定められた所定温度以下である場合に開放し、それ以外の場合は閉鎖する。比例弁72の制御は、可変リリーフ弁72と同様に制御装置90で行うことが好ましい。
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の油圧システムを示している。第2実施形態で示す走行系の油圧システムは、上述した第1実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態と同様の構成の説明は省略する。
図4に示すように、油圧システムには、吐出油路40において、複数の操作弁55と比例弁44との間の区間40Aと、第2油路45とを接続する第3油路100が設けられている。第3油路100は、第1連通油路101と、第2連通油路102とを有している。第1連通油路101は、第1走行油路45aの中途部と、第2走行油路45bの中途部とを連結する油路である。尚、第1連通油路101は、第3走行油路45bの中途部と、第4走行油路45dとを連結する油路であってもよい。
第2連通油路102は、第1連通油路101の中途部と吐出油路40の区間40Aとを接続する油路である。ここで、第1走行油路45aと第1連通油路101とが接続する接続部を「C2」とし、第2走行油路45bと第1連通油路101とが接続する接続部を「C3」とし、第1連通油路101と第2連通油路102とが接続する接続部を「C4」とする。この場合、第1連通油路101において接続部C2と接続部C4との区間、及び、第1連通油路101において接続部C3と接続部C4との区間には、それぞれ逆止弁103a、103bが設けられている。逆止弁103aは、第1走行油路45aから第2連通油路102へ作動油が流れるのを許容し、第2連通油路102から第1走行油路45aへ作動油が流れるのを阻止する。逆止弁103bは、第2走行油路45bから第2連通油路102へ作動油が流れるのを許容し、第2連通油路102から第2走行油路45bへ作動油が流れるのを阻止する。即ち、逆止弁103a、103bは、第2油路45から吐出油路40(区間40A)に作動油が流れるのを許容し、吐出油路40(区間40A)から第2油路45へ流れるのを阻止する。
また、走行油路(第2油路)45には、操作弁55から第3油路100(第1連通油路101)に至る作動油の流量を低下させる絞り部104が設けられている。絞り部104は、第1絞り部104a、第2絞り部104bを含んでいる。第1絞り部104aは、第1走行油路45aの接続部C2の上流(操作弁55側)に設けられた絞りである。第2絞り部104bは、第2走行油路45bの接続部C2の上流に設けられた絞りである。
アンチストール制御を行う場合は、ドロップ量に応じて比例弁44の開度が設定されるため、操作弁55の二次側の圧力(第2油路45の作動油の圧力)を低下する。操作弁55から走行ポンプ53L,53Rまでの経路(第2油路45)が長かったり、或いは、第2油路45に絞り部を設けた場合には、操作弁55の二次側の圧力(第2油路45の作動油の圧力)が低下するまでの時間が長くなり、応答遅れが生じる可能性がある。
以上の作業機の油圧システムでは、操作弁55と比例弁44との間の区間40Aと、第2油路45とを接続する第3油路100と、第3油路100に設けられた逆止弁103とを備えている。そのため、エンジンの回転数が大きく低下する場合、即ち、ドロップ量が大きい場合は、第2油路45の作動油を第3油路100及び比例弁44を介して排出することができる。したがって、上述したような応答遅れが生じることを防止することができる。即ち、エンジンの回転数が大きく低下した場合等は、速やかに第2油路45の作動油の圧力を下げることができ、エンジンストールを防止することができる。
また、第2油路45であって、第3油路100が接続される部分と操作弁55との間に絞り部104が設けた場合であっても、上述したように、速やかに第2油路45の作動油の圧力を下げることができ、エンジンストールを防止することができる。
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態の油圧システムを示している。第3実施形態で示す走行系の油圧システムは、上述した第1実施形態又は第2実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態、第2実施形態と同様の構成の説明は省略する。
図5に示すように、油圧システムは、圧力変更部110を備えている。圧力変更部110は、操作装置(走行操作装置)47の操作態様が異なっている場合に、走行操作装置47から油圧機器へ作用する作動油の圧力を互いに異ならせるものである。例えば、圧力変更部110は、走行操作装置47において、操作部材54を一方向(例えば、前方)に操作した場合に操作弁55から走行ポンプ53L,53R等の油圧機器に作用する作動油の圧力と、操作部材54を他方向(例えば、後方)に操作した場合に操作弁55から走行ポンプ53L,53R等の油圧機器に作用する作動油の圧力とを異ならせる。この実施形態では、説明の便宜上、操作弁55Aを第1操作弁55A、操作弁55Bを第2操作弁55B、操作弁55Cを第3操作弁55C、操作弁55Dを第4操作弁という。
具体的には、圧力変更部110は、第1可変リリーフ弁121と、第2可変リリーフ弁122とを有している。第1可変リリーフ弁121のポート(入力ポート)は、操作部材54を第1方向に操作した場合に作動する操作弁55(第1操作弁55A、第2操作弁55B)のうち、第1操作弁55Aに接続されている。第1操作弁55Aの出力ポートに連結した連結路45d2に、排出油路111が接続され、当該排出油路111に第1可変リリーフ121の入力ポートが接続されている。
第2可変リリーフ弁122は、操作部材54を第1方向に操作した場合に作動する操作弁55(第1操作弁55A、第2操作弁55B)のうち、第2操作弁55Bに接続されている。第2操作弁55Bの出力ポートに連結した連結路45d2に、排出油路112が接続され、当該排出油路112に第2可変リリーフ122の入力ポートが接続されている。
排出油路111と排出油路112とは、第1可変リリーフ弁121及び第2可変リリーフ弁122の下流側で合流している。排出油路111及び排出油路112の合流後の区間には、リリーフ弁123が設けられ、リリーフ弁123の下流側の排出油路111及び排出油路112は作動油タンク22等に接続されている。第1可変リリーフ弁121の受圧部121Aは、流路113を介して第3操作弁55C及び第4操作弁55Dに接続されている。第2可変リリーフ弁122の受圧部122Aは、流路113を介して第3操作弁55C及び第4操作弁55Dに接続されている。流路113の中途部には逆止弁114が設けられている。逆止弁114は、流路113のうち操作弁55Dに接続する流路113aに設けられた逆止弁114aと、流路113のうち操作弁55Dに接続する流路113bに設けられた逆止弁114bとを含んでいる。
例えば、第1方向(機体幅方向)に揺動可能な第1操作弁55Aを一方向(前方)に操作した場合において、第2方向(前後方向)に揺動可能な第3操作弁55C及び第4操作弁55Dを操作したとする。この場合、第3操作弁55C及び第4操作弁55Dの操作により、第1可変リリーフ弁121及び第2可変リリーフ弁122の受圧部に作用する作動油の圧力が変化し、第1可変リリーフ弁121及び第2可変リリーフ弁122の設定圧が下げることが可能である。第1可変リリーフ弁121及び第2可変リリーフ弁122の設定圧が所定以上になると、第1可変リリーフ弁121及び第2可変リリーフ弁122が吹くため、第1操作弁55Aを操作した場合の第2油路45に作用する圧力を変更することができる。つまり、第1操作弁55Aを操作しつつ、第3操作弁55C及び第4操作弁55Dを操作することによって、第1走行油路45a及び第3走行油路45cに作用する作動油の圧力を変更することができるため、作業機1の旋回時の速度を変更することができる。
また、第2操作弁55Bを他方向(後方)に操作しつつ第3操作弁55C及び第4操作弁55Dを操作した場合において、第1可変リリーフ弁121及び第2可変リリーフ弁122の設定圧の変更により、第2操作弁55Bを操作した場合の第2走行油路45b及び第4走行油路45dに作用する圧力を変更することができる。つまり、第2操作弁55Bを操作しつつ、第3操作弁55C及び第4操作弁55Dを操作した場合も作業機1の旋回時の速度を変更することができる。このように、操作部材54を一方向(例えば、左方)に操作した場合に第1操作弁55Aから走行ポンプ53L,53Rに作用する作動油の圧力と、操作部材54を他方向(例えば、後方)に操作した場合に第2操作弁55から走行ポンプ53L,53Rに作用する作動油の圧力とを異ならせているため、直進時から旋回した時の応答性を向上させることができる。
上述した実施形態では、説明の便宜上、操作弁55Aを第1操作弁、操作弁55Bを第2操作弁、操作弁55Cを第3操作弁、操作弁55Dを第4操作弁とし、第1可変リリーフ弁121の入力ポートに接続する弁を第1操作弁、第2可変リリーフ弁122の入力ポートに接続する弁を第2操作弁としていたが、第1操作弁及び第2操作弁は、上述した実施形態に限定されず、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁55Dのいずれであってもよく、全ての組み合わせが適用可能である。また、第3操作弁に第1可変リリーフ弁121の入力ポートに接続し、第4操作弁に第2可変リリーフ弁122を接続するという構成であってもよい。また、圧力変更部110は、第1操作弁又は第2操作弁から油圧機器へ作用する作動油の圧力と、第3操作弁又は第4操作弁から油圧機器へ作用する作動油の圧力とを異ならせるものであってもよい。
[第4実施形態]
図6及び図7は、第4実施形態の油圧システムを示している。第4実施形態で示す油圧システムは、上述した第1実施形態〜第3実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態〜第3実施形態と同様の構成の説明は省略する。上述した実施形態では、1本の操作部材54で作業機1の走行(前進、後進、左走行、右走行)を行っていたが、第4実施形態では、作業機1の走行を複数の操作部材で行う。例えば、運転席8の左側に操作部材(操作レバー)54を配置し、右側に操作部材(操作レバー)58を配置して、これら2本の操作レバー54、58によって、操作弁55を操作してもよい。
図6に示すように、操作装置47は、運転席8の左に設けられ、作業機1の走行に関する操作(走行操作)と作業に関する操作(作業操作)とを行うことが可能である。また、図7に示すように、操作装置48は、運転席8の右に設けられ、作業機1の走行に関する操作(走行操作)と作業に関する操作(作業操作)とを行うことが可能である。以下、説明の便宜上、操作装置47のことを第1操作装置47といい、操作装置48のことを第2操作装置48という。また、操作部材54のことを第1操作部材54、操作部材58のことを第2操作部材48という。
第1操作部材54は、前後方向(第1方向)に動かす第1操作と、機体幅方向(第2方向)に動かす第2操作とを行うことが可能なレバーである。第1操作部材54において、第1操作は走行操作に割り当てられており、第2操作は作業操作に割り当てられている。つまり、第1操作部材54は、走行の操作部材(走行操作部材)と、作業の操作部材(作業操作部材)とを兼用している。なお、第1操作部材54は、少なくとも第1操作と第2操作とを独立して行うことができるものであれば、レバーに限定されない。
第1操作部材54の下部には、複数の操作弁55が設けられている。複数の操作弁55は、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55Dである。操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55Dは、吐出油路40に接続されている。操作弁55A及び操作弁55Bは、第1操作によって作動する弁であり、走行操作に対応する動きをする。操作弁55C及び操作弁55Dは、第2操作によって作動する弁であり、作業操作に対応する動きをする。
第2操作部材58は、前後方向(第1方向)に動かす第1操作と、機体幅方向(第2方向)に動かす第2操作とを行うことが可能なレバーである。第2操作部材58において、第1操作は走行操作に割り当てられており、第2操作は作業操作に割り当てられている。つまり、第2操作部材48は、走行の操作部材(走行操作部材)と、作業の操作部材(作業操作部材)とを兼用している。なお、第2操作部材58は、少なくとも第1操作と第2操作とを独立して行うことができるものであれば、レバーに限定されない。
第2操作部材58の下部には、複数の操作弁59が設けられている。複数の操作弁59は、操作弁59A、操作弁59B、操作弁59C及び操作弁59Dである。操作弁59A、操作弁59B、操作弁59C及び操作弁59Dは、吐出油路40に接続されている。
操作弁59A及び操作弁59Bは、第1操作によって作動する弁であり、走行操作に対応する動きをする。操作弁59C及び操作弁59Dは、第2操作によって作動する弁であり、作業操作に対応する動きをする。
以上のことから、複数の操作弁のうち、操作弁55A、操作弁55B、操作弁59A、操作弁59Bは、走行操作に対応して作動し、操作弁55C、操作弁55D、操作弁59C、操作弁59Dは、作業操作に対応して作動する。説明の便宜上、操作弁55A、操作弁55B、操作弁59A、操作弁59Bのことを、走行操作弁ということがある。また、操作弁55C、操作弁55D、操作弁59C、操作弁59Dのことを、作業操作弁ということがある。
次に、走行操作弁及び作業操作弁の接続を図6及び図7を用いて説明する。なお、図6及び図7に示した符号(D1、D2、W1、W2)は油路の接続先を示している。
走行操作弁は、走行油路(第2油路)45に接続されている。走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dとを有している。この実施形態では、第1走行油路45aは、走行ポンプ53Lの前進用受圧部53aに接続され且つ操作弁55Aに接続される油路である。第2走行油路45bは、走行ポンプ53Lの後進用受圧部53bに接続され且つ操作弁55Bに接続される油路である。第3走行油路45cは、走行ポンプ53Rの前進用受圧部53aに接続され且つ操作弁59Aに接続される油路である。第4走行油路45dは、走行ポンプ53Rの後進用受圧部53bに接続され且つ操作弁59Bに接続される油路である。
第1操作部材54を前方に傾動させると、操作弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Lの前進用受圧部53aに作用する。第2操作部材58を前方に傾動させると、操作弁59Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Rの前進用受圧部53aに作用する。
第1操作部材54を後方に傾動させると、操作弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Lの後進用受圧部53bに作用する。第2操作部材58を後方に傾動させると、操作弁59Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Rの後進用受圧部53bに作用する。
したがって、第1操作部材54と第2操作部材58とを前方に揺動すると、走行モータ(HSTモータ)36は、第1操作部材54及び第2操作部材58の揺動量に比例した速度で正転し、その結果、作業機1が前方に直進する。第1操作部材54と第2操作部材58とを後方に揺動すると、走行モータ36は、第1操作部材54及び第2操作部材58の揺動量に比例した速度で逆転して、その結果、作業機1が後方に直進する。
また、第1操作部材54と第2操作部材58とのうち、一方を前方に揺動し、他方を後方に揺動すると、左側の走行モータ36と右側の走行モータ36とが異なる方向に回転して、その結果、作業機1が右又は左に旋回する。
以上、第1操作部材54を前後に動かしたり、第2操作部材58を前後に動かすことによって、作業機1を前進、後進、右旋回(右走行)、左旋回(左走行)させる走行操作を行うことができる。
作業操作弁は、作業油路43に接続されている。作業油路43は、第1作業油路43aと、第2作業油路43b、第3作業油路43c、第4作業油路43dとを有している。第1作業油路43aは、第1制御弁56A及び操作弁55Dに接続される油路である。第2作業油路43bは、第1制御弁56A及び操作弁55Cに接続される油路である。第3作業油路43cは、第2制御弁56B及び操作弁59Dに接続される油路である。第4作業油路43dは、第2制御弁56B及び操作弁59Cに接続される油路である。
第1操作部材54を左方に傾動させると、操作弁55Dから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第1制御弁56Aに作用し、ブームシリンダ14が伸長して、ブーム10は上昇する。
第1操作部材54を右方に傾動させると、操作弁55Cから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第1制御弁56Aに作用し、ブームシリンダ14収縮して、ブーム10は下降する。
第2操作部材58を左方に傾動させると、操作弁59Dから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、制御弁56Bに作用し、バケットシリンダ15は収縮して、バケット11がスクイ動作する。
第2操作部材58を右方に傾動させると、操作弁59Cから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第2制御弁56Bに作用し、バケットシリンダ15は伸長して、バケット11がダンプ動作する。
したがって、第1操作部材58を左右に動かしたり、第2操作部材58を左右に動かすことによって、ブーム10の昇降、バケットのダンプ動作或いはスクイ動作等の作業操作を行うことができる。
さて、第4実施形態の油圧システムでは、走行操作弁(操作弁55A、操作弁55B、操作弁59A、操作弁59B)を作動させた場合に、走行装置5の制動状態を解除可能である。以下、説明の便宜上、操作弁55Aのことを第1操作弁55A、操作弁55Bのことを第2操作弁55B、操作弁59Aのことを第3操作弁59A、操作弁59Bのことを第4操作弁55Cという。走行装置5の制動について説明する。
図8A及び図8Bは、操作装置、走行油路、制動装置等の関係を示した図である。
図8Aに示すように、走行油路(第2油路)45には、分岐油路125が接続されている。
詳しくは、分岐油路125は、第1分岐油路125aと、第2分岐油路125bと、第3分岐油路125cと、第4分岐油路125dと、第5分岐油路125eとを有している。
第1分岐油路125aは、第1走行油路45aの中途部から分岐する油路である。第2分岐油路125bは、第2走行油路45bの中途部から分岐する油路である。第3分岐油路125cは、第3走行油路45cの中途部から分岐する油路である。第4走行油路45dは、第4走行油路45dの中途部から分岐する油路である。
第1分岐油路125aと第3分岐油路125cとは第1選択弁131に接続されている。第2分岐油路125bと第4分岐油路125dとは第2選択弁132に接続されている。第1選択弁131と第2選択弁132とは、第3選択弁133が設けられた第5分岐油路125eに接続されている。
第1選択弁(シャトル弁)131は、第1分岐油路125aの作動油(第1操作弁55Aから出力する作動油)の圧力と、第3分岐油路125cの作動油(第3操作弁59Aから出力する作動油)の圧力とのうち、圧力の高い作動油を出力する出力ポート131aを有している。
第2選択弁(シャトル弁)132は、第2分岐油路125bの作動油(第2操作弁55Bから出力する作動油)の圧力と、第4分岐油路125dの作業油(第4操作弁59Bから出力する作動油)の圧力とのうち、圧力の高い作動油を出力する出力ポート132aを有している。
第3選択弁(シャトル弁)133は、第1選択弁131の出力ポート131aから出力した作動油の圧力と、第2選択弁132の出力ポート132aから出力した作動油の圧力のうち、圧力の高い作動油を出力する出力ポート133aを有している。第3選択弁(シャトル弁)133の出力ポート133aには、第4油路134が接続されている。第4油路134には、制動装置140が接続されている。また、第4油路140の中途部には第5油路135が接続されている。第5油路135は、作動油を排出可能な排出油路である。
制動装置140は、走行装置5の制動又は制動の解除を行う装置である。具体的には、制動装置140は、走行モータ36の出力軸に設けられた第1ディスクと、移動可能な第2ディスクと、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ付勢するバネとを備えている。また、制動装置140は、第1ディスク、第2ディスク及びバネを収容する収容部(収容ケース)140aを備えている。この収容部140aであって、第2ディスクが納められている部分には、第4油路134が接続されている。収容部140aの格納部に、パイロット油を供給して格納部内を所定の圧力にすると、第2ディスクが制動とは反対側(バネの付勢方向とは反対側)に移動して、制動装置140による制動を解除することができる。一方、収容部140aの格納部において、パイロット油の圧力が所定以下になると、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ移動し、走行モータ36の制動をすることができる。
したがって、走行操作弁である第1操作弁55A、第2操作弁55B、第3操作弁59A、第4操作弁55Cのいずれかを操作すれば、操作した操作弁から出力した作動油の圧力が、第1選択弁131、第2選択弁132を経て、第4油路134に作用する。そのため、走行操作(前進、後進、旋回)のいずれかを行った場合、第1操作部材54又は第2操作部材58の操作を行った場合に、制動装置140の制動解除を行うことができる。
なお、図8Bに示すように、第4油路134に逆止弁(第1逆止弁)141を設けてもよい。第1逆止弁141は、第3選択弁133から制動装置140へ作動油が流れることを許容し且つ制動装置140から第3選択弁133へ作動油が流れることを阻止する弁である。また、第5油路135に切換弁137を設けてもよい。切換弁137は、切換によって第5油路135の作動油を排出可能な弁であり、第1位置と第2位置とに切り換え可能な二位置切換弁である。切換弁137の切換は、制御装置90等に接続したスイッチ(パーキングスイッチ)145を行うことが好ましい。パーキングスイッチ145は、オン又はオフに切換可能なスイッチであって、パーキングスイッチ145がオンの場合は、制御装置90は、切換弁137のソレノイドを消磁することで、当該切換弁137を第1位置に保持し、第5油路135の作動油を切換弁137を介して、作動油タンク22等に排出する。パーキングスイッチ145がオフの場合は、制御装置90は、切換弁137のソレノイドを励磁することで、当該切換弁137を第2位置に保持し、第5油路135の作動油を作動油タンク22等に排出しない。即ち、切換弁137を第1位置にした場合は、第5油路135及び第4油路134の作動油が作動油タンク22等に排出されるため、制動装置140は制動状態になる。一方、切換弁137を第2位置にした場合は、第5油路135及び第4油路134の作動油が作動油タンク22等に排出されないため、制動装置140は解除状態になる。第4油路134、第5油路135に作動油の流量を低減させる絞り部143を有するバイパス油路144を設けても良い。
なお、図8Cに示すように、第4油路134にパイロットチェック弁150を設けることによって、制動装置140の制動を解除してもよい。具体的には、吐出油路40には、当該吐出油路40から分岐する分岐油路151が設けられている。分岐油路151には、制動装置140が接続されている。また、分岐油路151の中途部には排出油路152が接続され、当該排出油路152にはパイロットチェック弁150が設けられている。パイロットチェック弁150の受圧部150aには第4油路134が接続されている。
図8Cに示す油圧システムでは、走行操作(前進、後進、旋回)のいずれかを行った場合、即ち、第1操作部材54又は第2操作部材58の操作を行った場合には、第4油路134の作動油の圧力が上昇して、上昇した作動油の圧力は、パイロットチェック弁150の受圧部150aに作用する。パイロットチェック弁150の受圧部150aに作動油の圧力が作用すると、当該パイロットチェック弁150は閉鎖する。これにより、分岐油路151の作動油の圧力を制動装置140に作用させることができるため、制動装置140を解除状態にすることができる。一方で、走行操作を行わなかった場合、第4油路134の作動油の圧力は低下し、パイロットチェック弁150は開放する。これにより、パイロットチェック弁150の開放によって、分岐油路151の作動油の圧力は低下するため、制動装置140を制動状態にすることができる。
以上の作業機の油圧システムは、第1選択弁131、第2選択弁132、第3選択弁133、第4油路134及び第4油路134に接続された制動装置140を備えている。そのため、運転席8の左側に配置された操作部材54と、運転席8の右側に配置された操作部材58とを操作することによって、走行装置5を作動させる作業機においても、操作部材54、58を操作するだけで、制動装置140によって走行装置5の制動を解除することができる。例えば、操作部材54、58のいずれかを操作すれば、制動装置140に作動油の圧力を作用させることができるため、簡単に制動の解除を行うことができる。また、操作部材54、58を中立位置にすれば、制動装置140によって走行装置5の制動を簡単に行うことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上述した実施形態では、HSTポンプ(走行ポンプ)66及び走行モータ36の制御(HST制御)は、作動油(パイロット油)によって行っていたがこれに限定されず、例えば、電気的に制御を行ってもよい。即ち、HST制御において、走行ポンプ或いは走行モータ等の斜板制御を電磁比例弁等で行ってもよいし、その他の方法で行ってもよい。上述した実施形態では、作動油を排出する排出油路は作動油タンク22に接続されているが、接続先は限定されず、油圧ポンプの吸込部であっても、その他の部分であってもよい。また、第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、斜板型の可変容量ポンプであってもよく、その他のポンプであってもよい。また、図8に示した操作弁55、59は、操作部材54、58によって電気的に操作量を検出するポテンショメータを備えた比例弁であってもよい。
上述した実施形態では、第1制御装置90が作動弁(比例弁)44の開度を制御することで、エンジンストールを防止していたが、これに代え、可変リリーフ弁72等の作動弁によって、エンジンストールを防止してもよい。即ち、図9(a)に示すように、走行二次圧とエンジン回転数との関係を示す制御線L1、L2を用いて、エンジンストールを防止してもよい。走行二次圧とは、走行油路45(第1走行油路45a、第2走行油路56b、第3走行油路45c、第4走行油路45d)において、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁D)から走行ポンプ(HSTポンプ)53L、53Rに向かう作動油の圧力である。第1制御装置90は、ドロップ量が所定未満である場合、エンジンの実回転数と走行二次圧との関係が、制御線L1に一致するように、作動弁(可変リリーフ弁)72の開度を調整する。また、第1制御装置90は、ドロップ量が所定以上である場合、エンジンの実回転数と走行二次圧との関係が、制御線L2に一致するように、可変リリーフ弁72の開度を調整する。測定装置91が測定した作動油の油温が高温である場合は、可変リリーフ弁72は、図9(a)に示す制御線L1、L2に基づいて開度が変更になる。一方、油温が低温の場合には、可変リリーフ弁72の設定圧が第1制御装置90により変更され、図9(b)のL1a、L2aに示すように、走行二次圧は所定以上とならないように調整することができる。なお、図9(b)に示すように、油温に応じて制御線L1a、L1b、L2a、L2bの値(走行二次圧の上限値)を設定することが好ましい。例えば、油温が低温であって−15℃である場合、制御線L1a、L2aを用いて走行二次圧を設定する。また、油温が低温であって−20℃である場合、制御線L1b、L2bを用いて走行二次圧を設定する。即ち、制御線L1及びL2では、油温が低いほど、走行二次圧を抑制する(低くする)。なお、制御線L1a、L1b、L2a、L2bを設定する際の油温は、上述した数値に限定されない。また、低温時に走行二次圧を設定する制御線の数は、上述した本数に限定されない。このように、低温における所定温度毎に、走行二次圧の上限を設定する複数の制御線を設けることにより、作業機1を走行させながらでも暖機を行うことができる。