JP2018076565A - 酸化鉄で被覆された鉄製品用の防錆油組成物 - Google Patents

酸化鉄で被覆された鉄製品用の防錆油組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化鉄で被覆された鉄製品に防錆油組成物を塗布するための新たな技術を提供することを目的とする。【解決手段】金属スルホネートと脂肪酸金属塩とエステル化合物とを含む防錆剤と、40℃での動粘度が2〜50mm2/sである第1基油と、40℃での動粘度が300〜600mm2/sである第2基油と、有機溶剤と、を含む防錆油組成物であって、防錆油組成物全体に対して、前記防錆剤の割合が15〜30質量%、前記第1基油の割合が2〜10質量%、前記第2基油の割合が28〜50質量%であることを特徴とする、酸化鉄で被覆された鉄製品用防錆油組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、鉄製品用防錆油組成物、及び、有機被膜付き鉄製品に関する。
鉄が酸化して錆びることは、一般的に知られている事項である。そのため、鉄鋼からなる鉄製品の表面に、錆の発生を防ぐための防錆剤を含む防錆油組成物を、塗布することが行われている。
防錆油組成物に含まれる防錆剤としては、脂肪酸アミン塩、金属スルホネート、アミン類、カルボン酸塩、エステル化合物、サルコシン誘導体、パラフィンワックス、酸化ワックス塩、ホウ素化合物など、数多くの種類のものが知られている。また、通常、防錆油組成物には、防錆剤に加えて、鉱油や合成油を主成分とした基油が含まれている。
例えば、特許文献1には、基油として鉱油を用い、防錆剤としてジノニルナフタレンスルホネートNa塩、エチレンジアミンスルホネート及びペンタエリスリトールのラノリン脂肪酸エステルをそれぞれ2質量%で用いた防錆油組成物が記載されている。
特許文献2には、鉱油又は合成油からなる複数種類の基油を用い、防錆剤としてカルシウムスルホネートを4.7質量%、ソルビタンモノオレートを1質量%、ペンタエリスリトールのラノリン脂肪酸エステルを2質量%で用いた防錆油組成物が記載されている。
特許文献3には、基油として鉱油を用い、防錆剤としてトリメチロールプロパンエステルを4質量%、過塩基性カルシウムスルホネートを3質量%、中性カルシウムスルホネートを3質量%で用いた防錆油組成物が記載されている。
特許文献4には、基油として鉱油を用い、防錆剤としてバリウムジノニルナフタレンスルホネートを13質量%、ソルビタンモノイソステアレートを7質量%で用いた防錆油組成物が記載されている。
特許第4728157号 特許第5550492号 特開2007−153962号公報 特開平07−118685号公報
さて、鉄鋼からなる鉄製品を高温で熱処理することで、鉄製品の特性を好適に制御し得ることが知られている。例えば、鉄鋼の一種である炭素鋼をオーステナイト化するために例えば820〜900℃のオーステナイト化温度に加熱して、その後、230〜500℃の溶融塩浴にて急冷させるとのオーステンパ処理が知られている。オーステンパ処理の他には、加熱後の冷却の態様を変化させた、マルクエンチ処理、マルテンパ処理、オースフォーミング処理なども知られている。ここで、熱処理後の高温状態の鉄製品が大気に触れると、その表面が酸化して、黒皮と呼ばれる酸化鉄の被膜が鉄製品の表面に形成される。そのため、従来は、熱処理後の鉄製品の表面に形成された黒皮を、化学処理又は物理処理にて除去した後に、防錆油組成物を鉄製品の表面に直接塗布していた。
しかしながら、黒皮を除去する工程を行うことに因り、工程数が多くなるため、従来の防錆油組成物の塗布方法は必ずしも効率的とはいえなかった。また、熱処理から冷却に至る工程のすべてで、大気を遮断する設備を導入することも設備設計面や設備投資面からみて、困難であった。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、酸化鉄で被覆された鉄製品に防錆油組成物を塗布するための新たな技術を提供することを目的とする。
本発明者は、黒皮を除去するのではなく、黒皮自体を鉄製品の酸化防止膜として活用することを指向した。そして、本発明者の鋭意検討の結果、特定の3種類の防錆剤と特定の2種類の基油とを含む防錆油組成物が、黒皮で被覆された鉄製品に対して、優れた防錆効果を奏することを発見した。かかる発見に基づき、本発明者は本発明を完成させた。
本発明の酸化鉄で被覆された鉄製品用防錆油組成物は、
金属スルホネートと脂肪酸金属塩とエステル化合物とを含む防錆剤と、40℃での動粘度が2〜50mm/sである第1基油と、40℃での動粘度が300〜600mm/sである第2基油と、有機溶剤と、を含む防錆油組成物であって、
防錆油組成物全体に対して、前記防錆剤の割合が15〜30質量%、前記第1基油の割合が2〜10質量%、前記第2基油の割合が28〜50質量%であることを特徴とする。
また、本発明の有機被膜付き鉄製品は、酸化鉄で被覆された鉄製品の表面に、本発明の防錆油組成物から有機溶剤を除去して成る有機被膜を有することを特徴とする。以下、本発明の有機被膜付き鉄製品の説明において、本発明の有機被膜付き鉄製品のうち、酸化鉄及び有機被膜で被覆されていない部分を、鉄製品本体ということがあり、また、酸化鉄のみで被覆されている鉄製品を鉄製品中間体ということがある。
本発明によれば、酸化鉄で被覆された鉄製品に防錆油組成物を塗布するための新たな技術を提供できる。
第1基油及び第2基油を混合した混合油を分析したクロマトグラムである。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の酸化鉄で被覆された鉄製品用防錆油組成物(以下、単に「本発明の防錆油組成物」ということがある。)は、
金属スルホネートと脂肪酸金属塩とエステル化合物とを含む防錆剤と、40℃での動粘度が2〜50mm/sである第1基油と、40℃での動粘度が300〜600mm/sである第2基油と、有機溶剤と、を含む防錆油組成物であって、
防錆油組成物全体に対して、前記防錆剤の割合が15〜30質量%、前記第1基油の割合が2〜10質量%、前記第2基油の割合が28〜50質量%であることを特徴とする。
本発明の防錆油組成物は、金属スルホネートと脂肪酸金属塩とエステル化合物との3種類の防錆剤を含有する。3種類の防錆剤は、いずれも極性基と親油性基を有している。本発明の有機被膜付き鉄製品の有機被膜において、3種類の防錆剤の極性基は、鉄製品本体及び/又は酸化鉄に吸着及び/又は結合する役割を果たしていると考えられる。酸化鉄である黒皮はその表面が凹凸状態であることが知られている。本発明の有機被膜付き鉄製品においては、防錆剤が黒皮表面の窪みの奥部まで侵入して、防錆剤の極性基が黒皮の奥部と強固に吸着及び/又は結合することが期待される。また、3種類の防錆剤の有する親油性基は、基油に対する親和性向上との役割を果たしていると考えられる。
なお、本発明の防錆油組成物及び本発明の有機被膜付き鉄製品における「酸化鉄」とは、黒皮又は黒錆と呼ばれるものであって、四酸化三鉄であるFeを意味する。
金属スルホネートとしては、防錆剤として用いられる公知の金属スルホネートを採用すればよい。化学構造の観点からは、金属スルホネートは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と有機スルホン酸との塩を意味する。金属スルホネートとしては単独の化合物を採用してもよいし、複数の化合物が混合した混合物を採用してもよい。金属スルホネートのアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウムを例示でき、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム及びバリウムを例示できる。
金属スルホネートにおける有機スルホン酸としては、鉱油を原料とした鉱油スルホン酸やアルキル芳香族スルホン酸を例示できる。鉱油スルホン酸はアルキル芳香族スルホン酸を包含する有機スルホン酸である。アルキル芳香族スルホン酸は、例えば、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン酸化することによって製造することができる。鉱油スルホン酸としては、鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン酸化したものや、パラフィン製造時などに副生する石油スルホン酸を採用しても良い。
アルキル芳香族スルホン酸における芳香族としては、ベンゼン、ナフタレンを例示できる。
アルキル芳香族スルホン酸におけるアルキルとしては、直鎖状アルキルでもよいし、分岐鎖状アルキルでもよい。アルキル基の炭素数として、1〜30を例示でき、2〜24が好ましく、6〜18がより好ましい。芳香族に結合するアルキルの数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、2がさらに好ましい。具体的なアルキルとして、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、オクタデシルを例示できる。
具体的な金属スルホネートとしては、鉱油スルホン酸バリウム塩、ジアルキルナフタレンスルホン酸バリウム、ジアルキルナフタレンスルホン酸カルシウム、ジアルキルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸バリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを例示できる。
脂肪酸金属塩としては、防錆剤として用いられる公知の脂肪酸金属塩を採用すればよい。化学構造の観点からは、脂肪酸金属塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と脂肪酸との塩を意味する。脂肪酸金属塩としては単独の化合物を採用してもよいし、複数の化合物が混合した混合物を採用してもよい。脂肪酸金属塩のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム及びカリウムを例示でき、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム及びバリウムを例示できる。
脂肪酸金属塩における脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、セロチン酸などの単独の化合物や、アビエチン酸、ロジン酸、ラノリン脂肪酸などの混合物を例示できる。脂肪酸の炭素鎖の炭素数としては、8〜30が好ましく、10〜24がより好ましい。脂肪酸の炭素鎖は飽和又は不飽和の鎖状であり、また、炭素鎖には水酸基などの置換基が存在していてもよい。
好適な脂肪酸金属塩としては、ラノリン脂肪酸カルシウム塩、ラノリン脂肪酸マグネシウム塩、ラノリン脂肪酸バリウム塩を例示できる。
エステル化合物としては、防錆剤として用いられる公知のエステル化合物を採用すればよく、化学構造の観点からは、カルボン酸とアルコールの反応生成物を意味する。エステル化合物としては単独の化合物を採用してもよいし、複数の化合物が混合した混合物を採用してもよい。
エステル化合物におけるカルボン酸部分としては、脂肪酸金属塩における脂肪酸として説明した化学構造が好適である。また、エステル化合物におけるアルコール部分としては、モノアルコールでもよいし、複数の水酸基を有する多価アルコールでもよい。エステル化合物におけるアルコール部分が多価アルコールの場合、アルコールのすべての水酸基がカルボン酸と反応したエステル化合物を採用してもよいが、アルコールの複数の水酸基の一部がカルボン酸と反応した部分エステル化合物を採用するのが好ましい。
多価アルコールの水酸基の数は、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜6である。また、多価アルコールの炭素数は、好ましくは2〜20、より好ましくは3〜10である。多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタンを例示できる。
具体的なエステル化合物としては、多価アルコールの脂肪酸エステル化合物、酸化ワックスのエステル化合物、ラノリン脂肪酸エステルを例示できる。なお、ラノリン脂肪酸エステルとは、ラノリンアルコールと脂肪酸のエステル、及び、ラノリン酸とモノアルコール若しくは多価アルコールのエステルを包含するものである。
本発明の防錆油組成物においては、3種類の防錆剤が共存することで、防錆効果が著しく顕著に発揮される。また、本発明の防錆油組成物においては、防錆油組成物全体に対して、3種類の防錆剤を合計した割合が15〜30質量%である。防錆剤の割合が低すぎる防錆油組成物では、防錆効果が低減するおそれがあり、他方、防錆剤の割合が高すぎる防錆油組成物では、溶解度の関係から防錆剤が析出するおそれがある。
防錆油組成物全体に対する金属スルホネートの割合をX質量%、脂肪酸金属塩の割合をY質量%、エステル化合物の割合をZ質量%とした場合に、X、Y及びZが以下のすべての条件を満足するのが好ましい。
3≦X<15、3≦Y<15、3≦Z<15、15≦X+Y+Z≦30
X、Y、Zの好適な範囲として、以下の条件をそれぞれ独立に例示できる。
4≦X≦13、4≦X≦9、6≦X≦13、6≦X≦9;
4≦Y≦13、4≦Y≦9、6≦Y≦13、6≦Y≦9;
4≦Z≦13、4≦Z≦9、6≦Z≦13、6≦Z≦9;
18≦X+Y+Z≦27、20≦X+Y+Z≦25、21≦X+Y+Z≦24
本発明の防錆油組成物においては、40℃での動粘度が2〜50mm/sである第1基油と、40℃での動粘度が300〜600mm/sである第2基油とを基油として併用する。なお、本明細書における「40℃での動粘度」とは、JIS K 2283に記載された動粘度試験方法で測定した値を意味する。基油は、本発明の有機被膜付き鉄製品の有機被膜において、鉄製品本体及び/又は酸化鉄が大気中の酸素や水分と接触することを防ぐバリア機能を果たしている。
第1基油は、比較的低粘度であるので、防錆剤との親和性に優れている。そのため、第1基油は、本発明の防錆油組成物においては、防錆剤を溶解するための溶媒となる。さらに、第1基油は、本発明の有機被膜付き鉄製品の有機被膜においては、鉄製品本体及び/又は酸化鉄に吸着した防錆剤の親油性の部分を保持しつつ、防錆剤と第2基油との界面を繋ぐ中間層としての役割を果たしていると考えられる。
第1基油の動粘度は2〜50mm/sの範囲内であり、2〜30mm/sの範囲内が好ましく、2〜20mm/sの範囲内がより好ましく、3〜20mm/sの範囲内がさらに好ましく、4〜10mm/sの範囲内が特に好ましい。第1基油として動粘度が高すぎる基油を用いると、そのような基油は防錆剤との親和性に劣るため、防錆剤を溶解する機能及び鉄製品本体及び/又は酸化鉄に吸着した防錆剤の親油性の部分を保持する機能が満足に発揮できないと考えられる。他方、第1基油として動粘度が低すぎる基油を用いると、そのような基油は常温での揮発性が高いため、本発明の有機被膜付き鉄製品の有機被膜に留まることが困難となる。
防錆油組成物全体に対して、第1基油の割合は2〜10質量%の範囲内であり、3〜7質量%の範囲内が好ましく、4〜6質量%の範囲内がより好ましい。第1基油の割合が低すぎると、第1基油に期待される役割の効果が減少する。他方、第1基油の割合が高すぎると、相対的に防錆剤や第2基油の割合が低くなるため不具合が生じる。
第2基油は、本発明の有機被膜付き鉄製品の有機被膜において、バリア機能を主に果たしていると考えられる。比較的高粘度の第2基油が、本発明の有機被膜付き鉄製品の有機被膜の最も外側に位置することで、酸素や水分の浸入を効果的に抑制することができる。
第2基油の動粘度は300〜600mm/sの範囲内であり、400〜600mm/sの範囲内が好ましく、450〜550mm/sの範囲内がより好ましい。第2基油として動粘度が高すぎる基油を用いると、本発明の防錆油組成物の粘度が高くなるため、鉄製品への塗布に支障が生じるおそれがある。他方、第2基油として動粘度が低すぎる基油を用いると、そのような基油は流動性が比較的高いため、バリア機能が減少すると考えられる。
防錆油組成物全体に対して、第2基油の割合は28〜50質量%の範囲内であり、30〜45質量%の範囲内が好ましく、35〜45質量%の範囲内がより好ましい。第2基油の割合が低すぎると、第2基油に期待される役割の効果が減少する。他方、第2基油の割合が高すぎると、相対的に防錆剤や第1基油の割合が低くなるため不具合が生じる。
防錆油組成物全体に対して、第1基油の割合と第2基油の割合との合計は30〜60質量%の範囲内であり、35〜55質量%の範囲内が好ましく、40〜50質量%の範囲内がより好ましい。また、第1基油と第2基油との40℃での動粘度の差が大きい方が好ましい。当該差の範囲として、350〜550mm/s、400〜550mm/s、450〜550mm/s、480〜500mm/sを例示できる。
上述のとおり、本発明の防錆油組成物においては、動粘度の範囲が大きく異なる2種類の基油を含む。ここで、基油の動粘度と基油の分子量には相関関係があるといえる。したがって、本発明の防錆油組成物のうち第1基油及び第2基油についての分子量分布を測定した分析チャートには、比較的低分子量の領域に第1基油に由来するピークが観察され、そして、比較的高分子量の領域に第2基油に由来するピークが観察される。また、第1基油の動粘度と第2基油の動粘度との差が大きいと、第1基油及び第2基油についての分子量分布測定における分析チャートにおいて、第1基油に由来するピークの検出位置と第2基油に由来するピークの検出位置との差も大きく観察される。本発明の有機被膜付き鉄製品における有機被膜についても同様である。
第1基油及び第2基油の分子量分布測定方法としては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などのクロマトグラフィー、又は、高速原子衝撃−質量分析法(FAB−MS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−質量分析法(MALDI−MS)、エレクトロスプレーイオン化−質量分析法(ESI−MS)、若しくは、大気圧化学イオン化−質量分析法(APCI−MS)などの質量分析法を例示できるが、汎用性の点から、紫外光度計又は示差屈折計を検出器としたGPCが好ましい。
当然ではあるが、ある防錆油組成物又はある有機被膜が第1基油及び第2基油を含むか否かは、各種のクロマトグラフィーや各種の質量分析法などの分析により判断可能である。具体的に説明すると、ある防錆油組成物が本発明の防錆油組成物で規定する第1基油及び第2基油を含むか否かは、例えば、本発明の防錆油組成物とある防錆油組成物とを、同一の条件で分子量分布測定し、得られた分析チャートを比較することで判断できる。
第1基油及び第2基油は、鉱油や合成油を主成分としたものであって、防錆油組成物の基油として使用し得るものを、40℃での動粘度で区別して採用すればよい。第1基油及び第2基油と、後述する有機溶剤との区別の点では、第1基油及び第2基油は、常温での蒸気圧が1気圧未満であって、通常、常温で蒸発しないと認識されるものを採用すればよい。
鉱油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストックを例示することができる。また、鉱油としては、水素化精製、溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化分解、硫酸洗浄、白土処理などの精製を行ったものが好ましい。
合成油としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、ポリブテン、ポリオールエステル、二塩基酸エステルポリマー、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエーテルなどのポリマー、又は、これらのポリマーの構成成分のモノマーを組み合わせた共重合体を例示できる。
第1基油及び第2基油は、JIS K 2256で規定するアニリン点での規定も可能である。アニリン点とは、アニリンと試料との等量体積混合物が、均一な溶液として存在する最低温度を意味する。本明細書における「アニリン点」とは、JIS K 2256に記載された試験方法で測定した値を意味する。
第1基油のアニリン点としては、70〜100℃の範囲内が好ましく、70〜90℃の範囲内がより好ましく、75〜85℃の範囲内がさらに好ましい。第2基油のアニリン点としては、120〜150℃の範囲内が好ましく、125〜145℃の範囲内がより好ましく、130〜140℃の範囲内がさらに好ましい。第1基油及び第2基油の混合物である基油全体のアニリン点としては、110〜130℃の範囲内が好ましく、110〜120℃の範囲内がより好ましく、115〜120℃の範囲内がさらに好ましい。一般に、基油の粘度が低い方が、アニリン点も低くなる。
以上のとおり、本発明の防錆油組成物には、特定の3種類の防錆剤と特定の2種類の基油とが、好適な割合で含まれている。本発明の防錆油組成物は、酸化鉄で被覆されていない鉄製品に対してはもちろん、酸化鉄で被覆された鉄製品に対してさえも、優れた防錆効果を発揮する。好適な本発明の防錆油組成物の一態様は、酸化鉄で被覆された鉄製品に対する防錆効果に特に優れる。すなわち、好適な本発明の防錆油組成物の一態様は、(前記防錆油組成物で処理した、酸化鉄で被覆されていない鉄製品の錆発生時間)に対する(前記防錆油組成物で処理した、酸化鉄で被覆された鉄製品の錆発生時間)の比が1以上となる。なお、ここでの「錆」とは、あらかじめ形成されていた黒皮なるFeではなく、赤錆なるFe及び/又はFeOOHを意味する。
本発明の防錆油組成物には、有機溶剤が含まれる。有機溶剤は、本発明の防錆油組成物の塗布性向上の目的で添加される。本明細書で有機溶剤とは、常温での蒸気圧が1気圧以上、すなわち101kPa以上であって、常温で蒸発し得るものを意味する。
有機溶剤としては、炭化水素系溶剤として市販されているものを採用すればよい。具体的な有機溶剤としては、オレフィンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー、ブテンオリゴマー、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、1−ドデセンオリゴマー、並びに、これらの水素化物を例示できる。また、有機溶剤として、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、鉱油、ミネラルスピリットなどを採用してもよい。
本発明の防錆油組成物における有機溶剤の割合は、20〜45質量%の範囲内、25〜40質量%の範囲内を例示できる。
本発明の防錆油組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、安定化剤、消泡剤などの公知の添加剤を添加することができる。本発明の防錆油組成物において、金属スルホネート、脂肪酸金属塩、エステル化合物、第1基油、第2基油及び有機溶剤の合計の割合は、本発明の防錆油組成物全体に対して、98〜100質量%が好ましく、99〜100質量%がより好ましく、99.5〜100質量%がさらに好ましい。
本発明の防錆油組成物の製造方法の一例を説明する。撹拌混合機にて、3種類の防錆剤、第1基油及び第2基油を混合及び加熱して、3種類の防錆剤を基油に溶解させた溶解液を得る。当該溶解液を冷却した後に、有機溶剤を添加して、さらに混合することで、本発明の防錆油組成物を製造できる。
次に、本発明の有機被膜付き鉄製品について説明する。本発明の有機被膜付き鉄製品は、酸化鉄で被覆された鉄製品の表面に、本発明の防錆油組成物から有機溶剤を除去して成る有機被膜を有することを特徴とする。
鉄製品とは、鉄鋼を材料とした製品、中間製品および部品を意味する。鉄鋼の代表例として、炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼を例示できる。炭素鋼としては、炭素含有量が0.3%未満の低炭素鋼、炭素含有量が0.3%〜0.7%の中炭素鋼、炭素含有量が0.7%超の高炭素鋼を例示できる。
本発明の有機被膜付き鉄製品においては、鉄製品本体の表面に、黒皮と呼ばれる四酸化三鉄が存在し、かつ、黒皮及び/又は鉄製品本体の表面に、有機被膜が存在する。鉄製品本体は、黒皮及び有機被膜で被覆されていることになるので、両者のバリア機能に因り、鉄製品本体に対する錆の発生を効果的に抑制できる。有機被膜においては、防錆剤の割合が高い領域、第1基油の割合が高い領域、第2基油の割合が高い領域が、この順番で、黒皮及び/又は鉄製品本体の表面側から順に存在していると推定される。
有機被膜全体に対する、防錆剤の割合は20〜44質量%が好ましい。
有機被膜全体に対する金属スルホネートの割合をXfilm質量%、脂肪酸金属塩の割合をYfilm質量%、エステル化合物の割合をZfilm質量%とした場合に、Xfilm、Yfilm及びZfilmが以下のすべての条件を満足するのが好ましい。
4≦Xfilm<20、4≦Yfilm<20、4≦Zfilm<20、20≦Xfilm+Yfilm+Zfilm≦44
film、Yfilm、Zfilmの好適な範囲として、以下の条件をそれぞれ独立に例示できる。
6≦Xfilm≦19、6≦Xfilm≦13、9≦Xfilm≦19、9≦Xfilm≦13;
6≦Yfilm≦19、6≦Yfilm≦13、9≦Yfilm≦19、9≦Yfilm≦13;
6≦Zfilm≦19、6≦Zfilm≦13、9≦Zfilm≦19、9≦Zfilm≦13;
27≦Xfilm+Yfilm+Zfilm≦40、30≦Xfilm+Yfilm+Zfilm≦37、31≦Xfilm+Yfilm+Zfilm≦36
有機被膜全体に対する、第1基油の割合は3〜15質量%の範囲内が好ましく、3〜10質量%の範囲内がより好ましく、4〜10質量%の範囲内がさらに好ましく、6〜9質量%の範囲内が特に好ましい。有機被膜全体に対する、第2基油の割合は41〜74質量%の範囲内が好ましく、44〜67質量%の範囲内がより好ましく、52〜67質量%の範囲内がさらに好ましい。
有機被膜全体に対する、第1基油の割合と第2基油の割合との合計は44〜80質量%の範囲内が好ましく、56〜78質量%の範囲内がより好ましく、59〜76質量%の範囲内がさらに好ましい。有機被膜において、金属スルホネート、脂肪酸金属塩、エステル化合物、第1基油及び第2基油の合計の割合は、有機被膜全体に対して、98〜100質量%が好ましく、99〜100質量%がより好ましく、99.5〜100質量%がさらに好ましい。
本発明の有機被膜付き鉄製品の製造方法の一態様について説明する。
本発明の有機被膜付き鉄製品の製造方法は、
還元雰囲気下、鉄製品本体を熱処理してオーステナイト化する第1工程、
第1工程後の鉄製品本体を酸素雰囲気下に供し、鉄製品本体の表面に酸化鉄の被膜を形成させる第2工程、
第2工程を経た鉄製品中間体を冷却する第3工程、
第3工程を経た鉄製品中間体を、本発明の防錆油組成物で処理する第4工程、
を含むことを特徴とする。
第1工程は、鉄製品本体を加熱装置内で一定時間熱処理する工程である。熱処理により、鉄製品本体の全体がオーステナイトとなる。熱処理時には鉄製品本体が非常に酸化されやすいので、水素やCHなどの還元性ガスで充填された還元雰囲気下で熱処理が実施される。具体的な加熱温度としては、800〜1000℃の範囲内を挙げることができる。
第2工程は、第1工程後の鉄製品本体を酸素雰囲気下に供し、鉄製品本体の表面に酸化鉄の被膜を形成させる工程である。第1工程から第3工程に至るすべての工程について、還元雰囲気下で行うことや、大気を遮断した設備内で行うことは、現実的に困難である。そのため、通常、第1工程から第3工程に至るまでの間に、鉄製品本体は酸素雰囲気下に供されることとなり、その結果、鉄製品本体の表面が酸化されて、酸化鉄の被膜が形成される。
第3工程は、第2工程を経た鉄製品中間体を冷却する工程である。第3工程としては、オーステンパ処理、マルクエンチ処理、マルテンパ処理、オースフォーミング処理などが該当する。具体的なオーステンパ処理について以下、説明する。第2工程を経た高温の鉄製品中間体を230〜500℃の溶融塩浴に投入することで急冷させ、そして、当該温度を一定時間保持する。このオーステンパ処理により、鉄製品本体のオーステナイトがベイナイトに変換される。溶融塩として用いられる塩としては、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸バリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム、及び、これらの混合物を例示できる。オーステンパ処理後には、鉄製品中間体から塩を除去するために、水を用いた洗浄が実施される。
第4工程は、第3工程を経た鉄製品中間体を、本発明の防錆油組成物で処理する工程である。具体的な処理方法としては、鉄製品中間体を本発明の防錆油組成物に浸漬させる方法、鉄製品中間体に本発明の防錆油組成物を吹き付ける方法、鉄製品中間体に本発明の防錆油組成物を塗る方法を例示できる。その後、鉄製品中間体を被覆する本発明の防錆油組成物から有機溶剤を除去して、有機被膜を形成させる。有機溶剤を除去する方法としては、常温で放置する方法でもよいし、加熱及び/又は減圧条件下で乾燥する方法でもよく、また、乾燥した気体を吹き付ける方法でもよい。
本発明の有機被膜付き鉄製品においては、黒皮、及び、特定の3種類の防錆剤と特定の2種類の基油とを特定の割合で含む有機被膜の存在に因り、錆の発生が効果的に抑制される。
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲はこれら実施例に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
(実施例1)
防錆剤として、金属スルホネートである鉱油スルホン酸バリウム塩、脂肪酸金属塩であるラノリン脂肪酸カルシウム塩、エステル化合物であるラノリン脂肪酸エステルを準備した。また、第1基油として40℃での動粘度が9mm/sの鉱油、第2基油として40℃での動粘度が500mm/sの鉱油を準備した。さらに、有機溶剤として、常温での蒸気圧が1気圧以上の鉱油を準備した。
金属スルホネート7.5質量部、脂肪酸金属塩7.5質量部、エステル化合物7.5質量部、第1基油5.5質量部、第2基油44.5質量部を混合し、防錆剤が溶解するまで混合物を加熱した。混合物を冷却し、有機溶剤27.5質量部を添加して、実施例1の防錆油組成物とした。
非酸化性雰囲気下、鉄製品本体を850℃で20分間加熱した。加熱後の鉄製品本体を、大気中を通過させて、330℃の亜硝酸ナトリウム塩中に投入し、40分間冷却した(オーステンパ処理)。その後、水洗して、表面が酸化鉄で被覆された鉄製品中間体を得た。なお、鉄製品本体の表面が酸化鉄で被覆されたのは、850℃加熱後の大気通過中に鉄製品本体の表面が大気中の酸素と接触したことに因る。
表面が酸化鉄で被覆された鉄製品中間体を、実施例1の防錆油組成物に浸漬した。当該鉄製品中間体を実施例1の防錆油組成物から取り出して、常温で静置乾燥することにより、鉄製品中間体に付着する防錆油組成物から有機溶剤を揮発により除去した。このような手順で、実施例1の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例2)
第1基油を4.5質量部、第2基油を35.5質量部、有機溶剤を37.5質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の防錆油組成物、及び、実施例2の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例3)
金属スルホネートを5質量部、脂肪酸金属塩を5質量部、エステル化合物を12.5質量部用いた以外は、実施例2と同様の方法で、実施例3の防錆油組成物、及び、実施例3の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例4)
金属スルホネートを12.5質量部、脂肪酸金属塩を5質量部、エステル化合物を5質量部用いた以外は、実施例2と同様の方法で、実施例4の防錆油組成物、及び、実施例4の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例5)
金属スルホネートを5質量部、脂肪酸金属塩を12.5質量部、エステル化合物を5質量部用いた以外は、実施例2と同様の方法で、実施例5の防錆油組成物、及び、実施例5の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例6)
第1基油として40℃での動粘度が5mm/sの鉱油を4.5質量部、第2基油を45.5質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6の防錆油組成物、及び、実施例6の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例7)
第1基油を3.5質量部、第2基油を36.5質量部、有機溶剤を37.5質量部用いた以外は、実施例6と同様の方法で、実施例7の防錆油組成物、及び、実施例7の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例8)
第1基油として40℃での動粘度が46mm/sの鉱油を9質量部、第2基油として40℃での動粘度が430mm/sの鉱油を41.0質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例8の防錆油組成物、及び、実施例8の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(実施例9)
第1基油を7質量部、第2基油を33.0質量部、有機溶剤を37.5質量部用いた以外は、実施例8と同様の方法で、実施例9の防錆油組成物、及び、実施例9の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(比較例1)
40℃での動粘度が100mm/sの鉱油を13質量部、40℃での動粘度が380mm/sの鉱油を37.0質量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の防錆油組成物、及び、比較例1の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(比較例2)
40℃での動粘度が100mm/sの鉱油を10.5質量部、40℃での動粘度が380mm/sの鉱油を29.5質量部、有機溶剤を37.5質量部用いた以外は、比較例1と同様の方法で、比較例2の防錆油組成物、及び、比較例2の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(比較例3)
第1基油として40℃での動粘度が9mm2/sの鉱油を5質量部、第2基油として40℃での動粘度が500mm2/sの鉱油を41.0質量部、金属スルホネートを22.5質量部用いて、脂肪酸金属塩及びエステル化合物を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3の防錆油組成物、及び、比較例3の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(比較例4)
第1基油を5質量部、第2基油を41.0質量部、脂肪酸金属塩を22.5質量部用いて、金属スルホネート及びエステル化合物を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4の防錆油組成物を製造したところ、比較例4の防錆油組成物はゲル化した。そのため、比較例4の有機被膜付き鉄製品の製造は実施しなかった。
(比較例5)
第1基油を5質量部、第2基油を41.0質量部、エステル化合物を22.5質量部用いて、金属スルホネート及び脂肪酸金属塩を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5の防錆油組成物、及び、比較例5の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(参考例1〜9、参考比較例1〜5)
実施例1〜9又は比較例1〜5の防錆油組成物に、表面が酸化鉄で被覆されていない鉄製品、すなわち熱処理及びオーステンパ処理を行っていない鉄製品を浸漬した。当該鉄製品を実施例1〜9又は比較例1〜5の防錆油組成物から取り出して、常温で静置乾燥することにより、鉄製品に付着する防錆油組成物から有機溶剤を揮発により除去した。このような手順で、実施例1〜9又は比較例1〜5に対応する、参考例1〜9又は参考比較例1〜5の有機被膜付き鉄製品を製造した。
(評価1)
実施例1〜9又は比較例1〜5の有機被膜付き鉄製品、及び、参考例1〜9又は参考比較例1〜5の有機被膜付き鉄製品に対して、JIS Z 2371塩水噴霧試験方法における、5%NaCl溶液を噴霧する中性塩水噴霧試験を行った。各有機被膜付き鉄製品を目視で観察し、赤錆が発生した時間を測定した。結果を、実施例1〜9又は比較例1〜5の防錆油組成物の一覧とともに表1に示す。なお、表中の動粘度は、JIS K 2283に記載された動粘度試験方法で測定した値である。
表1の結果から、実施例1〜9の有機被膜付き鉄製品は、少なくとも600時間は赤錆の発生が観察されなかったことがわかる。また、実施例1〜9の有機被膜付き鉄製品は、参考例1〜9の有機被膜付き鉄製品と比較して、赤錆発生時間を100時間以上延長できたことがわかる。本発明の防錆油組成物が、特に酸化鉄で被覆された鉄製品に対して、効果的に防錆効果を発揮するといえる。第1基油がより低粘度である実施例1〜7の鉄製品の赤錆発生時間は、いずれも800時間を超えており、特に好適といえる。
また、実施例1〜2及び実施例3〜5、並びに比較例3〜5の結果から、金属スルホネート、脂肪酸金属塩及びエステル化合物の3種類の防錆剤を併用することで、防錆効果が著しく顕著になることがわかる。以上の結果から、本発明の防錆油組成物及び本発明の有機被膜付き鉄製品が、優れていることが裏付けられた。
(評価2)
各基油のアニリン点をJIS K 2256に記載された試験方法で測定した。結果を表2に示す。
評価1の結果と併せて考察すると、第1基油のアニリン点としては、75〜85℃の範囲内が特に好ましく、第2基油のアニリン点としては130〜140℃の範囲内が特に好ましく、第1基油及び第2基油の混合物である基油全体のアニリン点としては、115〜120℃の範囲内が特に好ましいといえる。
(評価3)
本発明の防錆油組成物において規定する割合で、第1基油及び第2基油を混合した混合油について、以下のGPC条件で分析した。得られたクロマトグラムを図1に示す。図1のクロマトグラムにおいて、第1基油に由来するピークと第2基油に由来するピークが、互いに分離された状態で観察された。分子量の大きな第2基油が先に溶出し、分子量の小さな第1基油が後に溶出することが確認された。なお、図1のクロマトグラムにおける各ピークの同定は、第1基油及び第2基油のそれぞれについて、同様のGPC条件で分析を行い、第1基油及び第2基油の保持時間(溶出時間)を確認するとの手段で行った。
<GPC条件>
カラム:Shodex GPC KF−801、KF−802及びKF−802.5を連結(いずれも昭和電工株式会社)
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1mL/min.
検出器:紫外光度計

Claims (9)

  1. 金属スルホネートと脂肪酸金属塩とエステル化合物とを含む防錆剤と、40℃での動粘度が2〜50mm/sである第1基油と、40℃での動粘度が300〜600mm/sである第2基油と、有機溶剤と、を含む防錆油組成物であって、
    防錆油組成物全体に対して、前記防錆剤の割合が15〜30質量%、前記第1基油の割合が2〜10質量%、前記第2基油の割合が28〜50質量%であることを特徴とする、酸化鉄で被覆された鉄製品用防錆油組成物。
  2. 防錆油組成物全体に対する金属スルホネートの割合をX質量%、脂肪酸金属塩の割合をY質量%、エステル化合物の割合をZ質量%とした場合に、X、Y及びZが以下のすべての条件を満足する請求項1に記載の防錆油組成物。
    3≦X<15、3≦Y<15、3≦Z<15、15≦X+Y+Z≦30
  3. 前記第1基油の40℃での動粘度が2〜30mm/sである請求項1又は2に記載の防錆油組成物。
  4. (前記防錆油組成物で処理した、酸化鉄で被覆されていない鉄製品の錆発生時間)に対する(前記防錆油組成物で処理した、酸化鉄で被覆された鉄製品の錆発生時間)の比が1以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の防錆油組成物。
  5. 前記防錆油組成物の分子量分布を測定した分析チャートにおいて、第1基油に由来するピークと、第2基油に由来するピークとが観察される請求項1〜4のいずれか1項に記載の防錆油組成物。
  6. 酸化鉄と有機被膜とで被覆された有機被膜付き鉄製品であって、
    前記有機被膜が、請求項1〜5のいずれかに記載の防錆油組成物から有機溶剤を除去して成ることを特徴とする有機被膜付き鉄製品。
  7. 酸化鉄と有機被膜とで被覆された有機被膜付き鉄製品であって、
    前記有機被膜が、金属スルホネートと脂肪酸金属塩とエステル化合物とを含む防錆剤と、40℃での動粘度が2〜50mm/sである第1基油と、40℃での動粘度が300〜600mm/sである第2基油とを含み、
    かつ、前記有機被膜全体に対して、前記防錆剤の割合が20〜44質量%、前記第1基油の割合が3〜15質量%、前記第2基油の割合が41〜74質量%であることを特徴とする有機被膜付き鉄製品。
  8. 前記有機被膜の分子量分布を測定した分析チャートにおいて、第1基油に由来するピークと、第2基油に由来するピークとが観察される請求項6又は7に記載の有機被膜付き鉄製品。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の有機被膜付き鉄製品の製造方法であって、
    還元雰囲気下、鉄製品本体を熱処理してオーステナイト化する第1工程、
    第1工程後の鉄製品本体を酸素雰囲気下に供し、鉄製品本体の表面に酸化鉄の被膜を形成させる第2工程、
    第2工程を経た鉄製品中間体を冷却する第3工程、
    第3工程を経た鉄製品中間体を、請求項1〜5のいずれかに記載の防錆油組成物で処理する第4工程を含む、有機被膜付き鉄製品の製造方法。
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