[オレフィン重合用触媒]
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記成分(A)と、前記成分(B)と、前記成分(C)とを含む。本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記成分(A)から(C)を含むため、オレフィンの重合において、高い触媒活性で数多くの長鎖分岐を有するオレフィン重合体、特にエチレン系重合体を効率よく製造できると推測される。数多くの長鎖分岐を有するオレフィン重合体は、流動性が高く、成形加工性に優れる。なお、該オレフィン重合用触媒が成分(A)を含まない場合、得られるオレフィン重合体の長鎖分岐の数が減少する。一方、該オレフィン重合用触媒が成分(B)を含まない場合、触媒活性が低下する。
本発明において、「重合」という用語は、オレフィンの単独重合のみならず、二種以上のオレフィンの共重合を包含した意味で用いられることがある。また、「重合体」という用語は、単独重合体のみならず、共重合体を包含した意味で用いられることがある。
(成分(A))
成分(A)は、下記式(I)で表される架橋型メタロセン化合物である。
式(I)中、R1〜R8は一価の基であり、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、互いに同一でも異なっていてもよいが、全てが同時に水素原子ではなく、隣接する基が互いに結合して環を形成していてもよい。
一価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭素と水素からなるアルキル基、炭素数3〜20の炭素と水素からなるシクロアルキル基、炭素数2〜20の炭素と水素からなるアルケニル基、炭素数6〜20の炭素と水素からなるアリール基、炭素数7〜20の炭素と水素からなるアリールアルキル基が好ましい。前記炭素数1〜20の炭素と水素からなるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル(イコシル)基などが挙げられる。前記炭素数3〜20の炭素と水素からなるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。前記炭素数2〜20の炭素と水素からなるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。前記炭素数6〜20の炭素と水素からなるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、α−またはβ−ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジルフェニル基、ピレニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、アセアントリレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、ビフェニリル基などが挙げられる。前記炭素数7〜20の炭素と水素からなるアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数3〜20の炭素と水素からなるアルキル基が好ましく、炭素数3〜8の炭素と水素からなるアルキル基がより好ましい。
一価のハロゲン含有基としては、ハロゲン原子、前記一価の炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基、例えばトリフルオロメチル基などが挙げられる。
一価の酸素含有基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
一価の窒素含有基としては、ジメチルアミノ基などが挙げられる。
一価のホウ素含有基としてはボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などが挙げられる。
一価のイオウ含有基としては、チオール基、スルホン酸基などが挙げられる。
一価のリン含有基としては、フェニルホスフィン基などが挙げられる。
一価のケイ素含有基としては、シリル基、メチルシリル基、ジメチルシリル基、ジイソプロピルシリル基、メチル−t−ブチルシリル基、ジシクロヘキシルシリル基、メチルシクロヘキシルシリル基、メチルフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、メチルナフチルシリル基、ジナフチルシリル基、シクロジメチレンシリル基、シクロトリメチレンシリル基、シクロテトラメチレンシリル基、シクロペンタメチレンシリル基、シクロヘキサメチレンシリル基、シクロヘプタメチレンシリル基などが挙げられる。
一価のゲルマニウム含有基、一価のスズ含有基としては、前記一価のケイ素含有基において、ケイ素をゲルマニウムまたはスズに変換した基などが挙げられる。
隣接する基が互いに結合して環を形成する場合の例としては、テトラヒドロインデニル基、2−メチルテトラヒドロインデニル基、2,2,4−トリメチルテトラヒドロインデニル基、4−フェニルテトラヒドロインデニル基、4−シクロヘキシルテトラヒドロインデニル基、2−メチル−4−フェニルテトラヒドロインデニル基、2−メチル−4−シクロヘキシルテトラヒドロインデニル基などが挙げられる。該環は脂肪族環であることができる。
R1〜R8としては、好ましくは、水素原子、炭化水素基またはハロゲン含有基であり、より好ましくは、R1〜R8の少なくとも1つが炭化水素基であり、さらに好ましくは、R1〜R8の少なくとも1つが炭素数1〜15の炭化水素基であり、残りが炭化水素基または水素原子であり、最も好ましくは、R1〜R8の少なくとも1つが炭素数3〜8の炭化水素基であり、残りが炭化水素基または水素原子である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
式(I)中、Q1は二価の基であり、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基である。
二価の炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキリデン基が挙げられる。炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。炭素数1〜20の置換アルキレン基としては、イソプロピリデン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジプロピルメチレン基、ジイソプロピルメチレン基、ジブチルメチレン基、メチルエチルメチレン基、メチルブチルメチレン基、メチル−t−ブチルメチレン基、ジヘキシルメチレン基、ジシクロヘキシルメチレン基、メチルシクロヘキシルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、ジトリルメチレン基、メチルナフチルメチレン基、ジナフチルメチレン基、1−メチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基などが挙げられる。炭素数1〜20のシクロアルキレン基としては、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン基、ノルボルニリデン基、アダマンチリデン基、テトラヒドロナフチリデン基、ジヒドロインダニリデン基などが挙げられる。炭素数1〜20のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが挙げられる。
二価のケイ素含有基としては、シリレン基、メチルシリレン基、ジメチルシリレン基、ジイソプロピルシリレン基、ジブチルシリレン基、メチルブチルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシクロヘキシルシリレン基、メチルシクロヘキシルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、ジフェニルシリレン基、ジトリルシリレン基、メチルナフチルシリレン基、ジナフチルシリレン基、シクロジメチレンシリレン基、シクロトリメチレンシリレン基、シクロテトラメチレンシリレン基、シクロペンタメチレンシリレン基、シクロヘキサメチレンシリレン基、シクロヘプタメチレンシリレン基などが挙げられる。好ましくは、ジメチルシリレン基、ジブチルシリレン基、ジフェニルシリレン基である。
二価のハロゲン含有基としては、前記二価の炭化水素基および前記二価のケイ素含有基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。例えば、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、4,4,4−トリフルオロブチルメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)シリレン基、4,4,4−トリフルオロブチルメチルシリレン基などが挙げられる。
二価のゲルマニウム含有基、二価のスズ含有基としては、前記二価のケイ素含有基においてケイ素をゲルマニウムまたはスズに変換した基などが挙げられる。
Q1としては、好ましくは、炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキリデン基、ハロゲン含有アルキレン基、ハロゲン含有置換アルキレン基、ハロゲン含有シクロアルキレン基、ハロゲン含有アルキリデン基、ケイ素含有基またはハロゲン含有ケイ素含有基であり、より好ましくは、ケイ素含有基またはハロゲン含有ケイ素含有基であり、さらに好ましくは、ケイ素含有基であり、特に好ましくは、ジアルキルシリレン基である。
式(I)中、Xは一価の基であり、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基としては、前記式(I)のR1〜R8として例示したものと同様のものが挙げられる。Xとしては、好ましくは、ハロゲン原子または炭化水素基であり、より好ましくは、ハロゲン原子である。
式(I)中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
式(I)で表される架橋型メタロセン化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば特開2006−233208号公報、特開2009−143901号公報、特開2009−144148号公報などに記載された方法が挙げられる。
本発明においては、式(I)で表される架橋型メタロセン化合物を単独で用いてもよいし、化学構造の異なる式(I)で表される架橋型メタロセン化合物を二種類以上用いてもよい。また、化学構造が同一である光学異性体を1種単独で用いてもよいし、化学構造が同一である光学異性体混合物(例えば、メソ体混合物またはラセミ体混合物)を用いてもよい。
(成分(B))
成分(B)は、下記式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物である。
式(II)中、R9〜R14は一価の基であり、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、隣接する基が互いに結合して環を形成していてもよい。
一価の炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基が挙げられる。
前記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デカニル基、1−ウンデカニル基、1−ドデカニル基、1−エイコサニル、iso−プロピル基、sec−ブチル基(ブタン−2−イル基)、tert−ブチル基(2−メチルプロパン−2−イル基)、iso−ブチル基(2−メチルプロピル基)、ペンタン−2−イル基、2−メチルブチル基、iso−ペンチル基(3−メチルブチル)、ネオペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2−ジメチルプロピル基)、ペンタン−3−イル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、iso−ヘキシル基(4−メチルペンチル基)、1,1−ジメチルブチル基(2−メチルペンタン−2−イル)、3−メチルペンタン−2−イル基、4−メチルペンタン−2−イル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、テキシル基(2,3−ジメチルブタ−2−イル基)、3−メチルペンタン−3−イル基、3,3−ジメチルブタ−2−イル基、ヘキサン−3−イル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプタン−4−イル基、2,4−ジメチルペンタン−3−イル基、3−エチルペンタン−3−イル基、4,4−ジメチルペンチル基、4−メチルヘプタン−4−イル基、4−プロピルヘプタン−4−イル基、2,3,3−トリメチルブタン−2−イル基、2,3,4−トリメチルペンタン−3−イル基などが挙げられる。
前記炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、n−ブチルシクロペンタジエニル基、n−ブチル−メチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、1−メチルシクロペンチル基、1−アリルシクロペンチル基、1−ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アリルシクロヘキシル基、1−ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1−メチルシクロヘプチル基、1−アリルシクロヘプチル基、1−ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、シクロオクタトリエニル基、1−メチルシクロオクチル基、1−アリルシクロオクチル基、1−ベンジルシクロオクチル基、4−シクロヘキシル−tert−ブチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、ノルボルナジエニル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−(2−メチルアダマンチル)、1−(3−メチルアダマンチル)、1−(4−メチルアダマンチル)、1−(2−フェニルアダマンチル)、1−(3−フェニルアダマンチル)、1−(4−フェニルアダマンチル)、1−(3,5−ジメチルアダマンチル)、1−(3,5,7−トリメチルアダマンチル)、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基、インダセニル基、テトラヒドロインダセニル基、ベンゾインデニル基、アズレニル基などが挙げられる。
前記炭素数2〜20のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ−1−エン−1−イル基)、iso−プロペニル基(プロパ−1−エン−2−イル基)、アレニル基(プロパ−1,2−ジエン−1−イル基)、ブタ−3−エン−1−イル基、クロチル基(ブタ−2−エン−1−イル基)、ブタ−3−エン−2−イル基、メタリル基(2−メチルアリル基)、エリトレニル基(ブタ−1,3−ジエニル基)、ペンタ−4−エン−1−イル基、ペンタ−3−エン−1−イル基、ペンタ−2−エン−1−イル基、iso−ペンテニル基(3−メチルブタ−3−エン−1−イル基)、2−メチルブタ−3−エン−1−イル基、ペンタ−4−エン−2−イル基、プレニル基(3−メチル−ブタ−2−エン−1−イル基)、2−メチル−ブタ−2−エン−1−イル基、ペンタ−3−エン−2−イル基、2−メチル−ブタ−3−エン−2−イル基、ペンタ−1−エン−3−イル基、ペンタ−2,4−ジエン−1−イル基、ペンタ−1,3−ジエン−1−イル基、ペンタ−1,4−ジエン−3−イル基、iso−プレニル基(2−メチル−ブタ−1,3−ジエン−1−イル基)、ペンタ−2,4−ジエン−2−イル基、ヘキサ−5−エン−1−イル基、ヘキサ−4−エン−1−イル基、ヘキサ−3−エン−1−イル基、ヘキサ−2−エン−1−イル基、4−メチル−ペンタ−4−エン−1−イル基、3−メチル−ペンタ−4−エン−1−イル基、2−メチル−ペンタ−4−エン−1−イル基、ヘキサ−5−エン−2−イル基、4−メチル−ペンタ−3−エン−1−イル基、3−メチル−ペンタ−3−エン−1−イル基、2,3−ジメチル−ブタ−2−エン−1−イル基、2−メチルペンタ−4−エン−2−イル基、3−エチルペンタ−1−エン−3−イル基、ヘキサ−3,5−ジエン−1−イル基、ヘキサ−2,4−ジエン−1−イル基、4−メチルペンタ−1,3−ジエン−1−イル基、2,3−ジメチル−ブタ−1,3−ジエン−1−イル基、ヘキサ−1,3,5−トリエン−1−イル基、2−(シクロペンタジエニル)プロパン−2−イル基、2−(シクロペンタジエニル)エチル基などが挙げられる。
前記炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル)、メシチル基(2,4,6−トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso−プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6−テトラメチルフェニル基)、2,6−ジ−iso−プロピルフェニル基、2,4,6−トリ−iso−プロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、アリルフェニル基、(ブタ−3−エン−1−イル)フェニル基、(ブタ−2−エン−1−イル)フェニル基、メタリルフェニル基、プレニルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ter−フェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などが挙げられる。
前記炭素数7〜20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、クミニル基(4−iso−プロピルベンジル基)、2,4,6−トリ−iso−プロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、1−フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)、クミル基(2−フェニルプロパン−2−イル基)、2−(4−メチルフェニル)プロパン−2−イル基、2−(3,5−ジメチルフェニル)プロパン−2−イル基、2−(4−tert−ブチルフェニル)プロパン−2−イル基、2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロパン−2−イル基、3−フェニルペンタン−3−イル基、4−フェニルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル基、1,1−ジフェニルエチル基、1,1−ジフェニルプロピル基、1,1−ジフェニル−ブタ−3−エン−1−イル基、1,1,2−トリフェニルエチル基、トリチル基(トリフェニルメチル基)、2−フェニルエチル基、スチリル基(2−フェニルビニル基)、2−(2−メチルフェニル)エチル基、2−(4−メチルフェニル)エチル基、2−(2,4,6−トリメチルフェニル)エチル基、2−(3,5−ジメチルフェニル)エチル基、2−(2,4,6−トリ−iso−プロピルフェニル)エチル基、2−(4−tert−ブチルフェニル)エチル基、2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル基、2−メチル−1−フェニルプロパン−2−イル基、3−フェニルプロピル基、2−シンナミル基(3−フェニルアリル基)、ネオフィル基(2−メチル−2−フェニルプロピル基)、3−メチル−3−フェニルブチル基、2−メチル−4−フェニルブタン−2−イル基、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2−(1−インデニル)プロパン−2−イル基、2−(1−インデニル)エチル基、2−(テトラヒドロ−1−インダセニル)プロパン−2−イル基、2−(テトラヒドロ−1−インダセニル)エチル基、2−(1−ベンゾインデニル)プロパン−2−イル基、2−(1−ベンゾインデニル)エチル基、2−(9−フルオレニル)プロパン−2−イル基、2−(9−フルオレニル)エチル基、2−(1−アズレニル)プロパン−2−イル基、2−(1−アズレニル)エチル基などが挙げられる。
前記炭素数1〜20のアルキル基の中でも、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基(ブタン−2−イル基)、tert−ブチル基(2−メチルプロパン−2−イル基)、iso−ブチル基(2−メチルプロピル基)、iso−ペンチル基(3−メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、tert−ペンチル基(1,1−ジメチルプロピル基)、ペンタン−3−イル基、iso−ヘキシル基(4−メチルペンチル基)、1,1−ジメチルブチル基(2−メチルペンタン−2−イル基)、3,3−ジメチルブチル基、テキシル基(2,3−ジメチルブタ−2−イル基)、3−メチルペンタン−3−イル基、ヘプタン−4−イル基、2,4−ジメチルペンタン−3−イル基、3−エチルペンタン−3−イル基、4,4−ジメチルペンチル基、4−メチルヘプタン−4−イル基、4−プロピルヘプタン−4−イル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、iso−プロピル基、tert−ブチル(2−メチルプロパン−2−イル)基である。該アルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜8がより好ましい。
前記炭素数3〜20のシクロアルキル基の中でも、好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、1−メチルシクロペンチル基、1−アリルシクロペンチル基、1−ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アリルシクロヘキシル基、1−ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1−メチルシクロヘプチル基、1−アリルシクロヘプチル基、1−ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、4−シクロヘキシル−tert−ブチル基、ノルボルニル基、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−イル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、1−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基である。
前記炭素数2〜20のアルケニル基の中でも、好ましくは、ビニル基、アリル基、ブタ−3−エン−1−イル基、クロチル基(ブタ−2−エン−1−イル基)、メタリル基(2−メチルアリル基)、ペンタ−4−エン−1−イル基、プレニル基(3−メチル−ブタ−2−エン−1−イル基)、ペンタ−1,4−ジエン−3−イル基、ヘキサ−5−エン−1−イル基、2−メチルペンタ−4−エン−2−イル基、2−(シクロペンタジエニル)プロパン−2−イル基、2−(シクロペンタジエニル)エチル基であり、より好ましくは、ビニル基、アリル基、ブタ−3−エン−1−イル基、ペンタ−4−エン−1−イル基、プレニル基(3−メチル−ブタ−2−エン−1−イル基)、ヘキサ−5−エン−1−イル基である。
前記炭素数6〜20のアリール基の中でも、好ましくは、フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6−トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso−プロピルフェニル基)、2,6−ジ−iso−プロピルフェニル基、2,4,6−トリ−iso−プロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、アリルフェニル基、プレニルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ter−フェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基であり、より好ましくは、フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6−トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso−プロピルフェニル基)、2,6−ジ−iso−プロピルフェニル基、2,4,6−トリ−iso−プロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、アリルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基である。
前記炭素数7〜20のアリールアルキル基の中でも、好ましくは、ベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、クミニル基(4−iso−プロピルベンジル基)、2,4,6−トリ−iso−プロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)、クミル基(2−フェニルプロパン−2−イル基)、1,1−ジフェニルエチル基、トリチル基(トリフェニルメチル基)、2−フェニルエチル基、2−(4−メチルフェニル)エチル基、2−(2,4,6−トリメチルフェニル)エチル基、2−(3,5−ジメチルフェニル)エチル基、2−(2,4,6−トリ−iso−プロピルフェニル)エチル基、2−(4−tert−ブチルフェニル)エチル基、2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル基、スチリル基(2−フェニルビニル基)、2−メチル−1−フェニルプロパン−2−イル基、3−フェニルプロピル基、2−シンナミル基(3−フェニルアリル基)、ネオフィル基(2−メチル−2−フェニルプロピル基)、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2−(1−インデニル)プロパン−2−イル基、2−(1−インデニル)エチル基、2−(9−フルオレニル)プロパン−2−イル基、2−(9−フルオレニル)エチル基であり、より好ましくは、ベンジル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)、クミル基(2−フェニルプロパン−2−イル基)、1,1−ジフェニルエチル基、トリチル基(トリフェニルメチル基)、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、2−シンナミル基(3−フェニルアリル基)である。
R9〜R14のうち、隣接する置換基が互いに結合して環を形成する場合には、シクロペンタジエニル環部分に縮環する5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素基および複素環を形成してもよい。該環は好ましくは5又は6員環である。母核のシクロペンタジエニル部分と併せた構造として、例えば、置換シクロペンタピロール環、置換シクロペンタインドール環、置換シクロペンタチオフェン環、置換シクロペンタベンゾチオフェン環、置換インデン環、置換ベンゾインデン環、置換テトラヒドロインデン環、置換アズレン環、置換ジヒドロアズレン環、置換テトラヒドロアズレン環、置換ヘキサヒドロアズレン環などが挙げられ、好ましくは置換インデン環、置換テトラヒドロインデン環である。
式(II)中、Q2およびQ3は二価の基であり、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
二価の炭素数1〜20の炭化水素基としては、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキリデン基が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。置換アルキレン基としては、イソプロピリデン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジプロピルメチレン基、ジイソプロピルメチレン基、ジブチルメチレン基、メチルエチルメチレン基、メチルブチルメチレン基、メチルブタ−3−エンメチレン基、メチル−t−ブチルメチレン基、ジヘキシルメチレン基、ジシクロヘキシルメチレン基、メチルシクロヘキシルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、フェニルメチレン基、フェニルブタ−3−エンメチレン基、ジフェニルメチレン基、ジトリルメチレン基、メチルナフチルメチレン基、ジナフチルメチレン基、ベンジルフェニルメチレン基、ジベンジルメチレン基、1−メチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン基、ノルボルニリデン基、アダマンチリデン基、テトラヒドロナフチリデン基、ジヒドロインダニリデン基などが挙げられる。アルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが挙げられる。
二価のケイ素含有基としては、シリレン基、メチルシリレン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジイソプロピルシリレン基、ジブチルシリレン基、メチルブチルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシクロヘキシルシリレン基、メチルシクロヘキシルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、ジフェニルシリレン基、ジトリルシリレン基、メチルナフチルシリレン基、ジナフチルシリレン基、シクロジメチレンシリレン基、シクロトリメチレンシリレン基、シクロテトラメチレンシリレン基、シクロペンタメチレンシリレン基、シクロヘキサメチレンシリレン基、シクロヘプタメチレンシリレン基、テトラメチルジシリレン基などが挙げられる。好ましくは、ジメチルシリレン基、ジブチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、シクロジメチレンシリレン基、シクロトリメチレンシリレン基、シクロテトラメチレンシリレン基、シクロペンタメチレンシリレン基、テトラメチルジシリレン基である。
二価のハロゲン含有基としては、前記アルキレン基、前記置換アルキレン基、前記シクロアルキレン基、前記アルキリデン基、前記ケイ素含有基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。例えば、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、4,4,4−トリフルオロブチルメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)シリレン基、4,4,4−トリフルオロブチルメチルシリレン基などが挙げられる。
二価のゲルマニウム含有基、二価のスズ含有基としては、前記ケイ素含有基においてケイ素をゲルマニウムまたはスズに変換した基などが挙げられる。
Q2はR9およびR12と、Q3はR11およびR14と、互いに結合してそれぞれ独立にQ2またはQ3を含む飽和5員環、あるいは2環式飽和5員環を形成してもよく、前記環が複数存在する場合には、前記環は互いに同一でも異なっていてもよい。この場合の構造として、シクロペンタン環母骨格、オクタヒドロインデン環母骨格、オクタヒドロペンタレン環母骨格などが挙げられる。
Q2およびQ3としては、好ましくは、炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、ケイ素含有基であり、より好ましくは、ケイ素含有基であり、さらに好ましくは、ジアルキルシリレン基である。また、Q2およびQ3が同一であることが好ましい。
式(II)中、Xは一価の基であり、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子である。該アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系二価誘導体基である。Xは互いに同一でも異なっていてもよい。
Xにおいて、ハロゲン原子としては、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、好ましくは塩素または臭素である。
Xにおいて、一価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基(ブタン−2−イル基)、tert−ブチル基(2−メチルプロパン−2−イル基)、iso−ブチル基(2−メチルプロピル基)、ペンタン−2−イル基、2−メチルブチル基、iso−ペンチル基(3−メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2−ジメチルプロピル基)、iso−ヘキシル基(4−メチルペンチル基)、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、テキシル基(2,3−ジメチルブタ−2−イル基)、4,4−ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ−1−エン−1−イル基)、iso−プロペニル基(プロパ−1−エン−2−イル基)、アレニル基(プロパ−1,2−ジエン−1−イル基)、ブタ−3−エン−1−イル基、クロチル基(ブタ−2−エン−1−イル基)、ブタ−3−エン−2−イル基、メタリル基(2−メチルアリル基)、エリトレニル基(ブタ−1,3−ジエニル基)、ペンタ−4−エン−1−イル基、ペンタ−3−エン−1−イル基、ペンタ−2−エン−1−イル基、iso−ペンテニル基(3−メチルブタ−3−エン−1−イル基)、2−メチルブタ−3−エン−1−イル基、ペンタ−4−エン−2−イル基、プレニル基(3−メチルブタ−2−エン−1−イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基または不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ−2−イン−1−イル基、プロパルギル基(プロパ−1−イン−1−イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基または不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、クミニル基(4−iso−プロピルベンジル基)、2,4,6−トリ−iso−プロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル基、1−フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)などの芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基あるいは不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6−トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso−プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6−テトラメチルフェニル基)、2,6−ジ−iso−プロピルフェニル基、2,4,6−トリ−iso−プロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ter−フェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換(アリール)基;などを挙げることができる。
前記炭化水素基の中でも、好ましくは、メチル基、iso−ブチル基(2−メチルプロピル基)、ネオペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2−ジメチルプロピル基)、ベンジル基、フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6−トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso−プロピルフェニル基)である。
Xにおいて、一価のハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ヘキサクロロアンチモン酸アニオンなどを挙げることができる。前記ハロゲン含有基の中でも、好ましくは、ペンタフルオロフェニル基である。
Xにおいて、一価のケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−iso−プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、トリメチルシリルメチル基などを挙げることができる。前記ケイ素含有基の中でも、好ましくは、トリメチルシリルメチル基である。
Xにおいて、一価の酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、アリルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジ−iso−プロピルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリ−iso−プロピルフェノキシ基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、過塩素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオンなどを挙げることができる。前記酸素含有基の中でも、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、tert−ブトキシ基である。
Xにおいて、一価の硫黄含有基としては、例えば、メシル基(メタンスルフォニル基)、フェニルスルホニル基、トシル基(p−トルエンスルホニル基)、トリフリル基(トリフルオロメタンスルホニル基)、ノナフリル基(ノナフルオロブタンスルホニル基)、メシラート基(メタンスルホナート基)、トシラート基(p−トルエンスルホナート基)、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホナート基)、ノナフラート基(ノナフルオロブタンスルホナート基)などを挙げることができる。前記硫黄含有基の中でも、好ましくは、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホナート基)である。
Xにおいて、一価の窒素含有基としては、例えば、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基などを挙げることができる。前記窒素含有基の中でも、好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基である。
Xにおいて、一価のリン含有基としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸アニオンなどを挙げることができる。
Xにおいて、一価のホウ素含有基としては、例えば、テトラフルオロホウ酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、(メチル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、(ベンジル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、テトラキス((3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸アニオン、BR4(Rは水素原子、アルキル基、あるいは置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子を示す)を挙げることができる。
Xにおいて、一価のアルミニウム含有基としては、例えば、(M−ハロゲン原子−アルミニウム原子−炭化水素基)四員環、あるいは(M−炭化水素基−アルミニウム原子−炭化水素基)四員環を形成可能な、AlR4(Rは水素原子、アルキル基、または置換基を有してもよいアリール基もしくはハロゲン原子を示す)を挙げることができる。
Xにおいて、一価の共役ジエン系二価誘導体基としては、例えば、1,3−ブタジエニル基、イソプレニル基(2−メチル−1,3−ブタジエニル基)、ピペリレニル基(1,3−ペンタジエニル基)、2,4−ヘキサジエニル基、1,4−ジフェニル−1,3−ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基などの、メタロシクロペンテン基を挙げることができる。
Xにおいて、孤立電子対で配位可能な中性配位子(L1)としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、トリエチルアミン、ジエチルアミンなどのアミン類、ピリジン、ピコリン、ルチジン、オキサゾリン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、チオフェンなどの複素環式化合物、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィンなどの有機リン化合物を挙げることができる。
Xとしては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基または酸素含有基であり、より好ましくは、ハロゲン原子である。
式(II)中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法によって製造可能である。代表的な合成経路の一例を以下に示すが、本願発明の態様はこれらによって限定されるわけではない。
まず、出発物質である、置換シクロペンタジエン化合物が架橋された化合物は、置換シクロペンタジエン化合物を原料として用いて、公知の方法によって製造可能である。例えば、「Organometallics 1991,10,3739.」、国際公開第2004/066689号、特開2009−143901号公報、特開2002−308893号公報、国際公開第2012/077289号、国際公開第2013/031779号などに記載された方法が挙げられる。
置換シクロペンタジエン化合物を隣接位で二重に架橋した前駆体化合物(配位子)は、前記置換シクロペンタジエン化合物が架橋された化合物を原料として用いて、公知の方法によって製造可能である。例えば、前記置換シクロペンタジエン化合物が架橋された化合物の製造方法として挙げた方法に加え、「Organometallics 1991,10,1787.」、国際公開第1995/009172号、特開平11−322774号公報などに記載された方法が挙げられる。
目的とする式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物は、前記前駆体化合物(配位子)を用いて、公知の方法によって製造可能である。例えば、前記前駆体化合物(配位子)の製造方法として挙げた方法に加え、「Organometallics 1993,12,1931.」、「Organometallics 2001,20,3035.」、米国特許第5972822号、特開平10−109996号公報、「J.Organomet.Chem.1997,527,297.」、特開2002−88092号公報、「Organometallics 2012,31,4340.」、国際公開第2004/029062号などに記載された方法が挙げられる。
式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物およびその前駆体化合物(配位子)は、架橋部分を挟んで中心金属と結合するシクロペンタジエニル環部分の面が2方向存在する(表面と裏面)。故に、一方のシクロペンタジエニル環に分子内対称鏡像面が存在しない。架橋部分を挟んで中心金属と結合している2つのシクロペンタジエニル環部分が同一である場合には、ラセミ体とメソ体の2種類の構造異性体が存在する。一方、2つのシクロペンタジエニル環部分が互いに異なる場合には、疑似ラセミ体と疑似メソ体の2種類の構造異性体が存在する。また、前記式(II)中のQ2およびQ3で示される二つの架橋部分がそれぞれ異なる場合や、Q2およびQ3に架橋置換基としての対称性がない場合にも、構造異性体が存在する。
これらの構造異性体混合物の精製、ラセミ体および疑似ラセミ体の分取、ならびにラセミ体および疑似ラセミ体の選択的な製造は、公知の方法によって実施できる。例えば、式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物の製造方法として挙げた方法が挙げられる。
以下に、式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物の具体例を示すが、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。なお、式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラセミ体または疑似ラセミ体を用いてもよく、構造異性体混合物を用いてもよく、これらの組み合わせを用いてもよい。
便宜上、式(II)で表される二重架橋型メタロセン化合物のMX2(金属部分)を除いたリガンド構造を、シクロペンタジエニル環部分、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y)、シクロペンタジエニル環部分置換基(W)、シクロペンタジエニル環部分置換基(V)、および架橋部分の構造、の5つに分ける。
シクロペンタジエニル環部分の略称をα、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y)の略称をβ、シクロペンタジエニル環部分置換基(W)の略称をγ、シクロペンタジエニル環部分置換基(V)の略称をδ、架橋部分の略称をεとして、具体例を以下に示す。
α−10、α−11およびα−12において、Cpは、もう一方のシクロペンタジエニル環が結合していることを示し、その結合部位の隣接位にて、α−10、α−11およびα−12に示される架橋部位によって結合されることを表す。
金属部分MX2の具体的な例示としては、TiF2、TiCl2、TiBr2、TiI2、Ti(Me)2、Ti(Bn)2、Ti(Allyl)2、Ti(CH2−tBu)2、Ti(η4−1,3−ブタジエニル)、Ti(η4−1,3−ペンタジエニル)、Ti(η4−2,4−ヘキサジエニル)、Ti(η4−1,4−ジフェニル−1,3−ペンタジエニル)、Ti(CH2−Si(Me)3)2、Ti(OMe)2、Ti(OiPr)2、Ti(NMe2)2、Ti(OMs)2、Ti(OTs)2、Ti(OTf)2、ZrF2、ZrCl2、ZrBr2、ZrI2、Zr(Me)2、Zr(Bn)2、Zr(Allyl)2、Zr(CH2−tBu)2、Zr(η4−1,3−ブタジエニル)、Zr(η4−1,3−ペンタジエニル)、Zr(η4−2,4−ヘキサジエニル)、Zr(η4−1,4−ジフェニル−1,3−ペンタジエニル)、Zr(CH2−Si(Me)3)2、Zr(OMe)2、Zr(OiPr)2、Zr(NMe2)2、Zr(OMs)2、Zr(OTs)2、Zr(OTf)2、HfF2、HfCl2、HfBr2、HfI2、Hf(Me)2、Hf(Bn)2、Hf(Allyl)2、Hf(CH2−tBu)2、Hf(η4−1,3−ブタジエニル)、Hf(η4−1,3−ペンタジエニル)、Hf(η4−2,4−ヘキサジエニル)、Hf(η4−1,4−ジフェニル−1,3−ペンタジエニル)、Hf(CH2−Si(Me)3)2、Hf(OMe)2、Hf(OiPr)2、Hf(NMe2)2、Hf(OMs)2、Hf(OTs)2、Hf(OTf)2などが挙げられる。Meはメチル基、Bnはベンジル基、tBuはtert−ブチル基、Si(Me)3はトリメチルシリル基、OMeはメトキシ基、OiPrはiso−プロポキシ基、NMe2はジメチルアミノ基、OMsはメタンスルホナート基、OTsはp−トルエンスルホナート基、OTfはトリフルオロメタンスルホナート基である。
例えば、シクロペンタジエニル環部分がα−4、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y3)がβ−23、シクロペンタジエニル環部分置換基(W)がγ−1、架橋部分がε−27、金属部分MX2がZrMe2である場合、成分(B)は下記式[VI]で示される構造を有する。
また、金属部分MX2と結合している2つの置換シクロペンタジエニル環部分と架橋構造が、共に同じではなく、それぞれ異なっていてもよい。例えば、一方のシクロペンタジエニル環部分がα−1、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y1)〜(Y3)がβ−1、もう一方のシクロペンタジエニル環部分がα−1、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y1)および(Y3)がβ−5、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y2)がβ−1、一方の架橋部分がε−31、もう一方の架橋部分がε−2、金属部分MX2がHf(NMe2)2である場合、成分(B)は下記式[VII]で示される構造を有する。
また、一方のシクロペンタジエニル環部分がα−10、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y2)がβ−1、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y3)がβ−21、もう一方のシクロペンタジエニル環部分がα−7、シクロペンタジエニル環部分置換基(Y3)がβ−1、シクロペンタジエニル環部分置換基(W)がγ−30、シクロペンタジエニル環部分置換基(V3)がδ−2、架橋部分がε−21、金属部分MX2がTi(η4−1,3−ペンタジエニル)である場合、成分(B)は下記式[VIII]で示される構造を有する。
(成分(C))
成分(C)は、(c−1)下記式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物、(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(c−3)前記成分(A)または前記成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物、からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
Ra mAl(ORb)nHpXq (III)
式(III)中、RaおよびRbは、炭素数1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。Xはハロゲン原子を示す。mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たし、かつm+n+p+q=3を満たす。
MaAlRa 4 (IV)
式(IV)中、MaはLi、NaまたはKを示す。Raは水素原子または炭素数1〜15の炭化水素基を示す。
Ra rMbRb sXt (V)
式(V)中、RaおよびRbは、炭素数1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。Mbは、Mg、ZnまたはCdである。Xはハロゲン原子を示す。rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1を満たし、かつr+s+t=2を満たす。
式(III)において、RaおよびRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、炭素数が1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素数が1〜6の炭化水素基がより好ましい。RaおよびRbとしては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられる。RaおよびRbは、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。Xとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。mは0<m≦3を満たし、1≦m≦3を満たすことが好ましく、2≦m≦3を満たすことがより好ましい。nは0≦n<3を満たし、0≦n≦2を満たすことが好ましく、0≦n≦1を満たすことがより好ましい。pは0≦p<3を満たし、0≦p≦2を満たすことが好ましく、0≦p≦1を満たすことがより好ましい。qは0≦p<3を満たし、0≦q≦2を満たすことが好ましく、0≦q≦1を満たすことがより好ましい。なお、m、n、pおよびqは、m+n+p+q=3を満たす。
式(III)で示される有機金属化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジヒドロフェニルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジイソヘキシルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジシクロヘキシルアルミニウムハイドライド、ジ−sec−ヘプチルアルミニウムハイドライド、ジ−sec−ノニルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジイソプロピルアルミニウムメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイドなどのジアルキルアルミニウムアルコキサイドなどが挙げられる。
式(IV)において、Raは、水素原子または炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、水素原子または炭素数が1〜8の炭化水素基が好ましく、水素原子または炭素数が1〜6の炭化水素基がより好ましい。Raとしては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられる。式(IV)で示される化合物の具体例としては、水素化アルミニウムリチウムなどが挙げられる。
式(V)において、RaおよびRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、炭素数が1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素数が1〜6の炭化水素基がより好ましい。RaおよびRbとしては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられる。RaおよびRbは、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。Xとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。rは1≦r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1を満たすことが好ましい。式(V)で示される有機金属化合物の具体例としては、特開2003−171412号公報などに記載されたジアルキル亜鉛化合物などが挙げられ、フェノール化合物などと組合せて用いることもできる。
これらの中でも、(c−1)有機金属化合物としては、式(III)で示される有機金属化合物が好ましい。(c−1)有機金属化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(c−3)前記成分(A)または前記成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物などを用いることができる。
本発明に係るオレフィン重合用触媒では、助触媒成分としてメチルアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示すだけでなく、固体状担体(S)中の活性水素と反応して助触媒成分を含有した固体担体成分を容易に調製できるため、成分(C)は(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物であることが好ましい。
(固体状担体(S))
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、より高い重合活性でより成形加工性に優れるオレフィン系重合体を製造可能な観点から、さらに固体状担体(S)を含むことが好ましい。固体状担体(S)は特に限定されないが、例えば無機化合物または有機化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体を用いることができる。
無機化合物としては、例えば、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物などが挙げられる。
多孔質酸化物としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaOおよびThO2などの組成を有する多孔質酸化物、またはこれらの組成を含む複合酸化物、あるいはこれらの多孔質酸化物の混合物などが挙げられる。具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−Cr2O3およびSiO2−TiO2−MgOなどの組成を有する多孔質酸化物が挙げられる。これらのうち、SiO2を含む多孔質酸化物が好ましい。
なお、これらの多孔質酸化物には、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物が含まれてもよい。
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、平均粒子径が0.2〜300μmであることが好ましく、1〜200μmであることがより好ましい。また、比表面積は50〜1200m2/gであることが好ましく、100〜1000m2/gであることがより好ましい。また、細孔容積は0.3〜30cm3/gであることが好ましい。このような多孔質酸化物は、必要に応じて、好ましくは100〜1000℃、より好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
無機ハロゲン化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2などが挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
粘土は、粘土鉱物を主成分として含む。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含まれるイオンは交換可能である。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
粘土、粘土鉱物としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられる。
イオン交換性層状化合物としては、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物を例示することができる。具体的には、α−Zr(HAsO4)2・H2O、α−Zr(HPO4)2、α−Zr(KPO4)2・3H2O、α−Ti(HPO4)2、α−Ti(HAsO4)2・H2O、α−Sn(HPO4)2・H2O、γ−Zr(HPO4)2、γ−Ti(HPO4)2、γ−Ti(NH4PO4)2・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上であることが好ましく、0.3〜5cc/gであることがより好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104Åの範囲について測定される。
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことが好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等が挙げられる。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させることができる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらすことができる。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これら化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得られる重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、前記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分け等の処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、または加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機化合物としては、例えば、平均粒子径が10〜300μmである顆粒状または微粒子状固体などが挙げられる。有機化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数が2〜14のオレフィンを主に重合して得られる(共)重合体、ビニルシクロヘキサン、スチレン、ジビニルベンゼンを主に重合して得られる(共)重合体や反応体、およびそれらの変成体からなる顆粒状または微粒子状固体などが挙げられる。
また、特開平11−140113号公報、特開2000−38410号公報、特開2000−95810号公報、国際公開第2010/055652号などに記載された方法で、前記成分(C)を不溶化させて得られる固体成分を、固体状担体(S)として用いることもできる。
固体状担体(S)としては、成形時の異物発生防止の観点から、多孔質酸化物または前記成分(C)を不溶化させて得られる固体成分が好ましく、多孔質酸化物がより好ましい。特に、前記成分(C)が前記(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物であり、かつ、固体状担体(S)が多孔質酸化物であることが好ましい。
(各成分の含有比)
本発明に係るオレフィン重合用触媒に含まれる、成分(A)と成分(B)とのモル比(成分(A)/成分(B))は、製造したいオレフィン系重合体の分子量および分子量分布に応じて適宜決定できるが、0.01〜0.5が好ましく、0.02〜0.3がより好ましく、0.03〜0.2がさらに好ましい。
オレフィン重合用触媒に含まれる、成分(A)と成分(C)とのモル比(成分(C)/成分(A))は、0.00005〜0.01が好ましく、0.0001〜0.005がより好ましく、0.0001〜0.001がさらに好ましい。
オレフィン重合用触媒に含まれる、成分(B)と成分(C)とのモル比(成分(C)/成分(B))は、0.0001〜0.05が好ましく、0.0005〜0.05がより好ましく、0.001〜0.01がさらに好ましい。
なお、成分(C)が(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物である場合、成分(C)のモル数はアルミニウムのモル数を示す。
(オレフィン重合用触媒の調製方法)
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、例えば、成分(A)、成分(B)および成分(C)を不活性炭化水素中または不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製できる。各成分の添加順序は任意であるが、例えば、以下の(1)〜(10)に示される方法が挙げられる。
(1)成分(C)、成分(A)、成分(B)の順で重合系中に添加する方法。
(2)成分(C)、成分(B)、成分(A)の順で重合系中に添加する方法。
(3)成分(A)と成分(C)とを混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(B)を重合系中に添加する方法。
(4)成分(B)と成分(C)とを混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(A)を重合系中に添加する方法。
(5)成分(C)を重合系中に添加し、次いで成分(A)と成分(B)とを混合接触させた接触物を重合系中に添加する方法。
(6)成分(C)、成分(A)、成分(B)の順で重合系中に添加し、再度成分(C)を重合系中に添加する方法。
(7)成分(C)、成分(B)、成分(A)の順で重合系中に添加し、再度成分(C)を重合系中に添加する方法。
(8)成分(A)と成分(C)とを混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(B)を重合系中に添加した後、再度成分(C)を重合系中に添加する方法。
(9)成分(B)と成分(C)とを混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(A)を重合系中に添加した後、再度成分(C)を重合系中に添加する方法。
(10)成分(C)を重合系中に添加し、次いで成分(A)と成分(B)とを混合接触させた接触物を重合系中に添加した後、再度成分(C)を重合系中に添加する方法。
これらの中でも、(1)、(2)または(5)の方法が好ましい。
本発明に係るオレフィン重合用触媒が固体状担体(S)を含む場合、該オレフィン重合用触媒としては、例えば、成分(C)および成分(A)が固体状担体(S)に担持された固体状触媒成分(以下、固体状触媒成分(X−A)と示す)と、成分(C)および成分(B)が固体状担体(S)に担持された固体状触媒成分(以下、固体状触媒成分(X−B)と示す)と、を含む触媒、並びに、成分(A)、成分(B)および成分(C)が、固体状担体(S)に担持された固体状触媒成分(以下、固体状触媒成分(X−C)と示す)を含む触媒が挙げられる。これらの中でも、より粒子性状が良好なオレフィン系重合体を製造可能な観点から、固体状触媒成分(X−C)を含む触媒が好ましい。なお、固体状触媒成分(X−A)に含まれる成分(C)および固体状担体(S)と、固体状触媒成分(X−B)に含まれる成分(C)および固体状担体(S)とは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
前記固体状触媒成分(X−A)と、前記固体状触媒成分(X−B)とを含む触媒の調製方法において、各成分の接触順序は任意であるが、例えば、以下の(i)〜(iv)に示される方法が挙げられる。
(i)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)を接触させて固体状触媒成分(X−A)を調製し、かつ、成分(C)と固体状担体(S)を接触させ、次いで成分(B)を接触させて固体状触媒成分(X−B)を調製する方法。
(ii)成分(A)と成分(C)とを混合接触させ、次いで混合物を固体状担体(S)に接触させて固体状触媒成分(X−A)を調製し、かつ、成分(B)と成分(C)とを混合接触させ、次いで混合物を固体状担体(S)に接触させて固体状触媒成分(X−B)を調製する方法。
(iii)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)と成分(C)との接触物を接触させて固体状触媒成分(X−A)を調製し、かつ、成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(B)と成分(C)との接触物を接触させて固体状触媒成分(X−B)を調製する方法。
(iv)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)を接触させ、さらに再度成分(C)を接触させて固体状触媒成分(X−A)を調製し、かつ、成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(B)を接触させ、さらに再度成分(C)を接触させて固体状触媒成分(X−B)を調製する方法。
これらの中でも、(i)または(iii)の方法が好ましい。
前記固体状触媒成分(X−C)を含む触媒の調製方法において、各成分の接触順序は任意であるが、例えば、以下の(v)〜(XiX)に示される方法が挙げられる。
(v)固体状担体(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)を接触させた後に、成分(B)を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(vi)固体状担体(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(B)を接触させた後に、成分(A)を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(vii)固体状担体(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)と成分(B)との接触混合物を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(viii)成分(A)と成分(B)とを混合接触させ、次いで混合物を成分(C)と接触させ、引き続き固体状担体(S)に接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(iX)固体状担体(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、次いで成分(A)、成分(B)の順で接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(X)固体状担体(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、次いで成分(B)、成分(A)の順で接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xi)固体状担体(S)に成分(C)を接触させた後に、さらに成分(C)を接触させ、次いで成分(A)と成分(B)との接触混合物を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xii)固体状担体(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)と成分(B)と成分(C)との接触混合物を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xiii)固体状担体(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)と成分(C)との接触混合物を接触させ、さらに成分(B)を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xiv)固体状担体(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(B)と成分(C)との接触混合物を接触させ、さらに成分(A)を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xv)固体状担体(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、成分(A)と成分(C)との接触混合物、成分(B)と成分(C)との接触混合物の順で接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xvi)固体状担体(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、成分(B)と成分(C)との接触混合物、成分(A)と成分(C)との接触混合物の順で接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xvii)固体状担体(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、成分(A)と成分(B)と成分(C)との接触混合物を接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(Xviii)成分(A)と成分(C)との混合物と、成分(B)と成分(C)との混合物とを予め混合し、これを固体状担体(S)と成分(C)との接触物に接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
(XiX)成分(A)と成分(C)との混合物と、成分(B)と成分(C)との混合物とを予め混合し、これを固体状担体(S)、成分(C)、さらに成分(C)を接触させた接触物に接触させて固体状触媒成分(X−C)を調製する方法。
これらの中でも、(v)、(vi)、(vii)、(Xii)、(Xiii)または(Xiv)の方法が好ましい。なお、成分(C)が複数用いられる場合は、その成分(C)同士は同一であっても異なっていても良い。
固体状触媒成分(X)の調製に用いられる溶媒としては、不活性炭化水素溶媒が挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、およびこれらの混合物等が挙げられる。
前記方法において、固体状担体(S)と成分(C)との接触を含む工程、固体状担体(S)と成分(A)との接触を含む工程、固体状担体(S)と成分(B)との接触を含む工程、固体状担体(S)と成分(A)と成分(B)との接触を含む工程においては、成分(G)を共存させることにより、重合反応中のファウリングを抑制することができる。
成分(G)としては、界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、特に制限されないが、非イオン性(ノニオン)界面活性剤が好ましく、ポリアルキレンオキサイドブロック、高級脂肪族アミド、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸がより好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
成分(C)と固体状担体(S)との接触により、成分(C)中の反応部位と固体状担体(S)中の反応部位とが反応し、成分(C)と固体状担体(S)とが化学的に結合され、成分(C)と固体状担体(S)との接触物が形成される。成分(C)と固体状担体(S)との接触時間は、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。接触温度は−50〜200℃が好ましく、−20〜120℃がより好ましい。成分(C)と固体状担体(S)との初期接触を急激に行うと、その反応発熱や反応エネルギーにより固体状担体(S)が崩壊し、得られる固体状触媒成分(X)のモルフォロジーが低下する。これを重合に用いた場合、ポリマーモルフォロジー不良により連続運転が困難になる場合がある。そのため、成分(C)と固体状担体(S)との接触初期は、反応発熱を抑制する目的で、−20〜30℃の低温で接触させる、または、反応発熱を制御し、初期接触温度を維持可能な速度で反応させることが好ましい。また、成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、さらに成分(C)を接触させる場合においても同様である。成分(C)と固体状担体(S)との接触のモル比(成分(C)/固体状担体(S))は任意に選択できるが、該モル比が高いほうが、成分(A)および成分(B)の接触量を増加させることができ、固体状触媒成分(X)の活性を向上させることができる。該モル比は0.2〜2.0が好ましく、0.4〜2.0がより好ましい。
成分(C)と固体状担体(S)との接触物と、成分(A)および成分(B)との接触に関して、接触時間は5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。接触温度は−50〜200℃が好ましく、−50〜100℃がより好ましい。成分(A)および成分(B)の成分(C)に対する接触量は、成分(C)の種類に大きく依存する。成分(C)として成分(c−1)を用いる場合、成分(c−1)と成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−1)/M]は、0.01〜100000が好ましく、0.05〜50000がより好ましい。成分(C)として成分(c−2)を用いる場合、成分(c−2)中のアルミニウム原子と成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−2)/M]は、10〜500000が好ましく、20〜100000がより好ましい。成分(C)として成分(c−3)を用いる場合、成分(c−3)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−3)/M]は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。なお、成分(C)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP分析法)により求めることができる。
(予備重合)
オレフィンの(共)重合には、前記固体状触媒成分(X)をそのまま触媒として用いることもできるが、固体状触媒成分(X)にオレフィンを予備重合させて、予備重合触媒成分(XP)を形成してから用いることもできる。
予備重合触媒成分(XP)は、例えば、固体状触媒成分(X)の存在下、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを導入することにより調製することができる。反応方式としては、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法も使用することができる。反応は、減圧、常圧または加圧下にて行うことができる。予備重合によって、固体状触媒成分(X)1g当たり、好ましくは0.01〜1000g、より好ましくは0.1〜800g、さらに好ましくは0.2〜500gの重合体を生成することができる。不活性炭化水素溶媒中で調製した予備重合触媒成分(XP)を、懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよく、また、乾燥させた後オレフィンを導入してもよい。
予備重合温度は、−20〜80℃が好ましく、0〜60℃がより好ましい。また、予備重合時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましい。
予備重合に使用する固体状触媒成分(X)としては、上述したものを制限無く利用することができる。また、予備重合では、必要に応じて前記成分(C)を用いることができ、特に前記(c−1)有機金属化合物中の式(V)で表される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。式(V)で表される有機アルミニウム化合物が用いられる場合、該化合物中のアルミニウム原子(Al−C)と、成分(A)および成分(B)中の遷移金属化合物とのモル比(成分(C)/遷移金属化合物)は、0.1〜10000が好ましく、0.5〜5000がより好ましい。
予備重合系における固体状触媒成分(X)の濃度は、固体状触媒成分(X)/重合容積1リットル比で、1〜1000グラム/リットルが好ましく、10〜500グラム/リットルがより好ましい。
予備重合時には、ファウリング抑制または粒子性状改善を目的として、前記成分(G)を共存させることができる。また、予備重合触媒成分(XP)の流動性改善や重合時のヒートスポット・シーティングやポリマー塊の発生抑制を目的として、予備重合によって生成した予備重合触媒成分(XP)に対して成分(G)を接触させてもよい。
成分(G)を混合接触させる際の温度は、−50〜50℃が好ましく、−20〜50℃がより好ましい。接触時間は1〜1000分間が好ましく、5〜600分間がより好ましい。固体状触媒成分(X)と成分(G)とを混合接触するに際して、成分(G)の量は、固体状触媒成分(X)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部がより好ましく、0.4〜5質量部がさらに好ましい。固体状触媒成分(X)と成分(G)との混合接触は、不活性炭化水素溶媒中で行うことができる。不活性炭化水素溶媒としては、固体状触媒成分(X)の調製に用いられる溶媒と同様のものが挙げられる。
得られた予備重合触媒成分(XP)を乾燥して、乾燥予備重合触媒として用いることもできる。乾燥予備重合触媒は流動性に優れているため、重合反応器への供給を安定的に行うことができる。また、気相重合系内に懸濁のために用いた溶媒を同伴させずに済むため、安定的に重合を行うことができる。
予備重合触媒成分(XP)の乾燥は、得られた予備重合触媒成分(XP)の懸濁液から濾過などにより分散媒を除去した後に行うことができる。予備重合触媒成分(XP)の乾燥は、予備重合触媒成分(XP)を不活性ガスの流通下、好ましくは70℃以下、より好ましくは20〜50℃の範囲の温度に保持することにより行うことができる。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが3〜8時間であることが好ましい。得られる乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。該揮発成分量が2.0質量%以下であることにより、乾燥予備重合触媒の流動性がより向上し、より安定的に重合反応器に供給できる。なお、該揮発成分量は少ないほどよく、その下限は特に限定されないが、実用的には0.001質量%以上である。
ここで、乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、減量法、ガスクロマトグラフィーを用いる方法などにより測定することができる。減量法では、乾燥予備重合触媒を不活性ガス雰囲気下において110℃で1時間加熱した際の減量を求め、加熱前の乾燥予備重合触媒に対する百分率として表す。ガスクロマトグラフィーを用いる方法では、乾燥予備重合触媒から炭化水素などの揮発成分を抽出し、内部標準法に従って検量線を作成した上でGC面積から質量%として算出する。乾燥予備重合触媒の揮発成分量が約1質量%以上である場合には、減量法が採用される。一方、乾燥予備重合触媒の揮発成分量が約1質量%未満である場合には、ガスクロマトグラフィーを用いる方法が採用される。
予備重合触媒成分(XP)の乾燥に用いられる不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガスなどが挙げられる。不活性ガスの酸素濃度(体積基準)は、20ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下がさらに好ましい。不活性ガスの水分含有量(質量基準)は、20ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下がさらに好ましい。不活性ガスの酸素濃度および水分含有量が前記範囲内であることにより、乾燥予備重合触媒のオレフィン重合活性が向上する。
[エチレン系重合体の製造方法]
本発明に係るエチレン系重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン重合用触媒の存在下、エチレン単独、または、エチレンと炭素数3〜20のオレフィンとを重合する。該方法では、本発明に係るオレフィン重合用触媒を用いることで、高い重合活性で、成形加工性および機械的強度に優れ、数多くの長鎖分岐を有する成形加工性に優れるエチレン系重合体を効率的に製造できる。なお、「エチレン系重合体」とは、重合体中のエチレン含有量が10モル%以上である重合体を示し、エチレン単独重合体でも、エチレン共重合体でもよい。
本発明に係る方法では、重合は、溶解重合法、懸濁重合法等の液相重合法または気相重合法により実施できるが、懸濁重合法または気相重合法が好ましい。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、およびこれらの混合物等が挙げられる。また、液相重合法においては、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
本発明に係るオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うに際して、成分(A)および成分(B)の量が、反応容積1リットル当たり、好ましくは10−12〜10−1モル、より好ましくは10−8〜10−2モルになるような量でオレフィン重合用触媒が用いられる。
オレフィンの重合温度は、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜170℃、さらに好ましくは60〜170℃である。重合圧力は、好ましくは常圧〜100kg/cm2、より好ましくは常圧〜50kg/cm2である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られる重合体の分子量は、重合系に水素を存在させる、または重合温度を変化させることによって調節することができる。重合時には、ファウリング抑制または粒子性状改善を目的として、前記成分(G)を共存させることができる。
重合反応に供給されるエチレン以外のオレフィンとしては、特に限定されないが、好ましくは炭素数3〜20のオレフィンである。炭素数が3〜20のオレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのα−オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン等が挙げられる。また、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンや、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸等;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸等の極性モノマー等も挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(エチレン系重合体)
前記方法により得られるエチレン系重合体は、通常、下記要件(1)を満たし、好ましくは下記要件(1)と、下記要件(2)または下記(3)とを満たし、より好ましくは下記要件(1)〜(3)の全てを満たす。なお、これらの要件の測定方法は、実施例に記載の通りである。
要件(1):密度が875kg/m3以上945kg/m3以下である。該密度の範囲の下限は好ましくは885kg/m3、より好ましくは900kg/m3である。該密度の範囲の上限は好ましくは935kg/m3、より好ましくは930kg/m3である。該密度が875kg/m3以上である場合、エチレン系重合体を成形して得られるフィルムの表面べたつきが少なく、耐ブロッキング性に優れる。また、該密度が945kg/m3以下である場合、エチレン系重合体を成形して得られるフィルムの衝撃強度が良好となり、ヒートシール強度、破袋強度などの機械的強度が良好である。
一般に、密度はエチレン系重合体中のα−オレフィンの含有量に依存しており、α−オレフィンの含有量が少ないほど密度は高く、α−オレフィンの含有量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα−オレフィンの含有量は、重合系内におけるα−オレフィンとエチレンとの組成比(α−オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky,Makromol.Chem.193,p.606(1992))。このため、α−オレフィン/エチレンを増減させることで、前記範囲の密度を有するエチレン系重合体を製造することができる。
要件(2):ASTM D1238−89の標準法に準拠し、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート[MFR(g/10分)]が0.01〜100g/10分である。該MFRの範囲の下限は好ましくは0.1g/10分、より好ましくは0.5g/10分である。該MFRの範囲の上限は好ましくは50g/10分、より好ましくは30g/10分である。該MFRが0.01g/10分以上である場合、エチレン系重合体のせん断粘度が高過ぎず成形性に優れ、例えばフィルムとした場合の外観が良好である。また、該MFRが100g/10分以下である場合、エチレン系重合体の引張強度やヒートシール強度が良好である。
要件(3):135℃デカリン中で測定した極限粘度([η](dl/g))と、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)−粘度検出器法(GPC−VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが、下記式(Eq−1)を満たす。
0.90×10−4×Mw0.776≦[η]≦1.65×10−4×Mw0.776 (Eq−1)
前記[η]の範囲の下限は好ましくは0.95×10−4×Mw0.776、より好ましくは1.00×10−4×Mw0.776である。前記[η]の範囲の上限は好ましくは1.58×10−4×Mw0.776、より好ましくは1.50×10−4×Mw0.776である。
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard,ADVANCES IN POLYMER SCIENCE,143,Branched PolymerII,p.137(1999))。そのため、本発明に係るエチレン系重合体においても、極限粘度[η](dl/g)が前記範囲内の場合には、エチレン系重合体が多数の長鎖分岐を有しているため、成形性、流動性に優れる。
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などが施されることができる。
本発明に係る方法により得られるエチレン系重合体は、例えば以下の方法によりペレット化しても良い。
(i)エチレン系重合体および所望により添加される他の成分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
(ii)エチレン系重合体および所望により添加される他の成分を適当な良溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、該溶媒を除去した後、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして所定の大きさにカットする方法。
本発明に係る方法により得られるエチレン系重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
本発明に係る方法により得られるエチレン系重合体、および必要に応じて熱可塑性樹脂や添加剤を含む樹脂組成物は、例えばフィルム成形、ブロー成形、インジェクション成形および押出成形等により加工されることができる。フィルム成形としては、押出ラミネート成形、Tダイフィルム成形、インフレーション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などが挙げられる。該エチレン系重合体を用いて得られたフィルムは単層でも使用することができるが、多層とすることでさらに様々な機能を付与することができる。多層からなるフィルムの製造方法としては、例えば前記各成形法における共押出法が挙げられる。また、押出ラミネート成形やドライラミネート法のような貼合ラミネート成形法によって、共押出が困難な紙やバリアフィルム(アルミニウム箔、蒸着フィルム、コーティングフィルムなど)と積層するにより製造する方法が挙げられる。ブロー成形、インジェクション成形、押出成形等での、共押出法による多層からなる高機能製品の作製については、フィルム成形と同様に実施することが可能である。
本発明に係る方法により得られるエチレン系重合体、および必要に応じて熱可塑性樹脂や添加剤を含む樹脂組成物を加工することにより得られる成形体としては、例えばフィルム、ブロー輸液バック、ブローボトル、ガソリンタンク、押出成形によるチューブ、パイプ、引きちぎりキャップ、日用雑貨品等射出成形物、繊維、回転成形による大型成形品などが挙げられる。
さらに、本発明に係る方法により得られるエチレン系重合体、および必要に応じて熱可塑性樹脂や添加剤を含む樹脂組成物を加工することにより得られるフィルムは、例えば水物包装袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチ等)、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用等の各種包装用フィルム、プロテクトフィルム、輸液バック、農業用資材等として、好適に用いることができる。また、該フィルムをナイロン、ポリエステル等の基材と貼り合わせて、多層フィルムとして用いることもできる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[化合物の同定]
成分(A)および成分(B)の合成において、化合物の同定は、270MHz、1H−NMR(商品名:GSH−270、日本電子(株)製)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)(商品名:GCMS−QP5050AおよびGCMS−QP2010Ultra、(株)島津製作所製)、FD−質量分析(商品名:SX−102A、日本電子(株)製)を用いて行った。
[メルトフローレート(MFR)]
エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238−89に従い、190℃、2.16kg荷重(kgf)の条件下で測定した。
[密度]
エチレン系重合体の密度は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
[極限粘度[η]]
エチレン系重合体の極限粘度[η]は、測定サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(Eq−2)に示されるように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) (Eq−2)
[ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定]
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は、ウォーターズ社製GPC/V2000(商品名)を用い、以下のようにして測定した。ガードカラムにはShodexAT−G(商品名)を用いて、分析カラムにはAT−806(商品名)を2本使用した。カラム温度は145℃とした。移動相にはo−ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT0.3質量%を用い、1.0ml/分で移動させた。試料濃度は0.1質量%とした。検出器として示差屈折計、3キャピラリー粘度計を用いた。標準ポリスチレンには、東ソー社製の標準ポリスチレンを用いた。粘度計と屈折計から実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)、比(Mw/MnおよびMz/Mw)を算出した。
<(1)成分(A)の合成>
[合成例1]
下記式(A−1)で表されるジメチルシリレン−1−(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)−1−(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(以下、成分(A−1)と示す)を、特許第5455354号公報記載の方法によって合成した。
<(2)成分(B)の合成>
[合成例2]
充分に乾燥、アルゴン置換した200mLの反応器に、1,3−ジメチルシクロペンタジエン1.89g(20.1mmol)、テトラヒドロフラン40mLを仕込み、n−ブチルリチウム溶液13.0mL(ヘキサン溶液、1.63mol/L、21.2mmol)を氷冷下加え、室温で2時間攪拌した。この懸濁液を、ジメチルシリルジクロリド12.0mL(100mmol)のn−ヘキサン10mL希釈溶液に、−78℃冷却下ゆっくりと加え、室温まで戻しながら19時間攪拌を続けた。反応液の溶媒および未反応のジメチルシリルジクロリドを留去した後、残渣にテトラヒドロフラン20mL、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン2.00mL(21.3mmol)を加えた。充分に乾燥、アルゴン置換した200mLの反応器に、n−ブチルシクロペンタジエン溶液10.4g(テトラヒドロフラン溶液、25質量%、21.3mmol)、テトラヒドロフラン20mLを仕込み、n−ブチルリチウム溶液13.0mL(ヘキサン溶液、1.63mol/L、21.2mmol)を氷冷下加え、室温で2時間攪拌した。この溶液を、−78℃に冷却した先程の反応残渣希釈溶液に滴下し、ゆっくりと室温まで戻しながら19時間攪拌を続けた。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n−ヘキサンで可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。これにより、下記式(B−1a)で表される化合物(以下、化合物(B−1a)と示す)を1.82g(収率33%)の異性体混合物として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ 6.76−5.00(5H,m),3.50−2.52(2H,m),2.50−2.22(2H,m),2.22−1.10(10H,m),1.00−0.78(3H,m),−0.21(6H,s,Si−CH3)ppm
[合成例3]
充分に乾燥、アルゴン置換した200mLの反応器に、合成例2で得られた化合物(B−1a)1.49g(5.45mmol)、トルエン20mL、テトラヒドロフラン0.9mLを仕込み、攪拌した。この溶液に、n−ブチルリチウム溶液6.70mL(ヘキサン溶液、1.63mol/L、10.9mmol)を室温下加えた後、40℃のオイルバス中で3時間攪拌を続けた。溶媒を留去した後、得られた固体にテトラヒドロフラン20mLを加えた。この溶液を−78℃に冷却し、ジメチルシリルジクロリド0.65mL(5.44mmol)を加え、室温まで戻しながら17時間攪拌を続けた。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n−ヘキサンで可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。これにより、下記式(B−1b)で表される化合物(以下、化合物(B−1b)と示す)を1.33g(収率74%)の異性体混合物として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ 6.81(1H,s,C=CH−C),6.38(1H,s,C=CH−C),6.08(1H,s,C=CH−C),3.45(1H,s,Si−CH),3.17(1H,d,J=1.6Hz,Si−CH),2.43(2H,t,J=1.6Hz,−CH2−C3H7),2.22−1.93(6H,m,C−CH3),1.72−1.15(4H,m,−CH2−C2H4−CH3),0.93(3H,t,J=7.2Hz,−C3H6−CH3),0.64−0.30(6H,m,Si−CH3),−0.40(3H,s,Si−CH3),−0.52(3H,s,Si−CH3)ppm
[合成例4]
充分に乾燥、アルゴン置換した100mLの反応器に、合成例3で得られた化合物(B−1b)0.33g(1.01mmol)、トルエン10mL、テトラヒドロフラン0.17mLを仕込み、攪拌した。この溶液に、n−ブチルリチウム溶液1.25mL(ヘキサン溶液、1.63mol/L、2.04mmol)を室温下加えた後、40℃のオイルバス中で4時間攪拌を続けた。溶媒を留去した後、得られた固体にジエチルエーテル10mLを加えた。この溶液を0℃に冷却し、四塩化ジルコニウム0.23g(1.00mmol)を加え、室温で19時間攪拌を続けた。反応液の溶媒を留去した後、得られた固体にジクロロメタンを加え懸濁液を調製し、不溶物をメンブレンシリンジフィルターで除去した。得られた溶液の溶媒を留去した後、得られた固体にn−ヘキサンを加えることで懸濁液を調製し、不溶物をガラスフィルターで濾別し、残渣を減圧乾燥した。これにより、下記式(B−1)で表される白色粉末状の化合物(以下、成分(B−1)と示す)を0.28g(収率27%)得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ 6.54(2H,s,Cp−H),6.02(1H,s,Cp−H),2.69(2H,t,J=7.3Hz,Cp−CH2−),2.19(6H,s,Cp−CH3),1.70−1.55(2H,m,−CH2−),1.46−1.28(2H,m,−CH2−),0.92(3H,t,J=7.3Hz,−C3H6−CH3),0.85(6H,s,Si−CH3),0.54(6H,s,Si−CH3)ppm
FD−質量分析(M+):488
[合成例5]
充分に乾燥、アルゴン置換した200mLの反応器に、マグネシウム片2.02g(83.1mmol)を仕込み、減圧下加熱しながら30分激しく撹拌した。室温まで冷却した後、ヨウ素一片とテトラヒドロフラン25mLを仕込み攪拌した。2−ブロモインデン3.92g(20.1mmol)のテトラヒドロフラン20mL希釈溶液をゆっくりと加え、80℃のオイルバス中で1時間加熱還流した。この反応液を、ジメチルシリルジクロリド12.0mL(100mmol)のn−ヘキサン10mL希釈溶液に、−78℃冷却下ゆっくりと加え、室温まで戻しながら18時間攪拌を続けた。反応液の溶媒および未反応のジメチルシリルジクロリドを留去した後、残渣にテトラヒドロフラン20mL、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン1.90mL(20.2mmol)を加えた。充分に乾燥、アルゴン置換した100mLの反応器に、n−ブチルシクロペンタジエン溶液9.79g(テトラヒドロフラン溶液、25質量%、20.0mmol)、テトラヒドロフラン20mLを仕込み、n−ブチルリチウム溶液12.5mL(ヘキサン溶液、1.60mol/L、20.0mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。この溶液を、−78℃に冷却した先程の反応残渣希釈溶液に滴下し、ゆっくりと室温まで戻しながら17時間攪拌を続けた。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n−ヘキサンで可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。これにより、下記式(B−2a)で表される化合物(以下、化合物(B−2a)と示す)を4.65g(収率79%)の異性体混合物として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ 7.52−7.35(2H,m,Ar−H),7.32−7.08(3H,m,Ar−H&C=CH−C),7.02−5.70(3H,m,C=CH−C),3.60−2.87(3H,m,Ar−CH2−C&Si−CH),2.39(2H,t,J=7.7Hz,−CH2−C3H7),1.59−1.41(2H,m,−CH2−),1.41−1.20(2H,m,−CH2−),0.87(3H,t,J=7.2Hz,−C3H6−CH3),0.50−0.02(6H,m,Si−CH3)ppm
[合成例6]
充分に乾燥、アルゴン置換した200mLの反応器に、合成例5で得られた化合物(B−2a)3.83g(13.0mmol)、トルエン50mL、テトラヒドロフラン2.2mLを仕込み攪拌した。この溶液に、n−ブチルリチウム溶液16.3mL(ヘキサン溶液、1.60mol/L、26.1mmol)を0℃冷却下加えた後、40℃のオイルバス中で3時間攪拌を続けた。溶媒を留去した後、得られた固体にテトラヒドロフラン50mLを加えた。この溶液を−78℃に冷却し、ジメチルシリルジクロリド1.55mL(13.0mmol)を加え、室温まで戻しながら17時間攪拌を続けた。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n−ヘキサンで可溶分を抽出し、得られた分画を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。これにより、下記式(B−2b)で表される化合物(以下、化合物(B−2b)と示す)を3.55g(収率78%)の異性体混合物として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ 7.48(2H,t,J=7.3Hz,Ar−H),7.30−7.13(3H,m,Ar−H&C=CH−C),6.90(1H,s,C=CH−C),6.43(1H,s,C=CH−C),3.91−3.37(2H,m,Ar−CH2−C&Si−CH),2.47(2H,t,J=7.9Hz,−CH2−C3H7),1.67−1.49(2H,m,−CH2−),1.49−1.22(2H,m,−CH2−),0.95(3H,t,J=7.2Hz,−C3H6−CH3),0.63(3H,s,Si−CH3),0.59(3H,s,Si−CH3),−0.42(3H,s,Si−CH3),−0.75(3H,s,Si−CH3)ppm
[合成例7]
充分に乾燥、アルゴン置換した100mLの反応器に、合成例6で得られた化合物(B−2b)0.35g(1.01mmol)、トルエン10mL、テトラヒドロフラン0.17mLを仕込み攪拌した。この溶液に、n−ブチルリチウム溶液1.25mL(ヘキサン溶液、1.60mol/L、2.00mmol)を室温下加えた後、40℃のオイルバス中で4時間攪拌を続けた。溶媒を留去した後、得られた固体にジエチルエーテル10mLを加えた。この溶液を0℃に冷却し、四塩化ジルコニウム0.23g(1.00mmol)を加え、室温で19時間攪拌を続けた。反応液の溶媒を留去した後、得られた固体にジクロロメタンを加え懸濁液を調製し、不溶物をメンブレンシリンジフィルターで除去した。得られた溶液を減圧下濃縮した後、n−ヘキサンを加えることで懸濁液を調製し、不溶物をガラスフィルターで濾別し、残渣を減圧乾燥した。これにより、下記式(B−2)で表される淡黄色粉末状の化合物(以下、成分(B−2)と示す)を0.17g(収率34%)得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ 7.75(1H,dt,J=1.1and8.3Hz,Ar−H),7.37−7.19(3H,m,Ar−H),7.13(1H,d,J=0.7Hz,Cp−H),6.23(1H,d,J=1.6Hz,Cp−H),6.41(1H,d,J=1.7Hz,Cp−H),2.55(2H,t,J=7.6Hz,Cp−CH2−),1.65−1.47(2H,m,−CH2−),1.40−1.22(2H,m,−CH2−),1.02(3H,s,Si−CH3),0.96(3H,s,Si−CH3),0.88(3H,t,J=7.3Hz,−C3H6−CH3),0.73(3H,s,Si−CH3),0.60(3H,s,Si−CH3)ppm
FD−質量分析(M+):510
[合成例8]
下記式(B−3)で表される(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)−(3’,5’−シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(以下、成分(B−3)と示す)を、特開2003−105016号公報記載の方法に従って合成した。
<(3)成分(C)と固体状担体(S)との反応物の合成>
[合成例9]
内容積270Lの攪拌機付き反応器を用い、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製、レーザー光回折散乱法の体積分布の累積50%粒径:70μm、比表面積:340m2/g、細孔容積:1.3cm3/g、250℃で10時間乾燥、以下、固体状担体(S−1)と示す)10kgを77Lのトルエンに懸濁させた後、0〜5℃に冷却した。この懸濁液にメチルアルミノキサン(以下、成分(C−1)と示す)のトルエン溶液(Al原子換算で3.5mol/L)19.4リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内温度を0〜5℃に保った。次いで、0〜5℃で30分間接触させた後、1.5時間かけて系内温度を95℃まで昇温して、引き続き95℃で4時間接触させた。その後、常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄することで、全量115リットルの固体状担体のトルエンスラリー(以下、成分(C−1)および固体状担体(S−1)のスラリーと示す)を調製した。得られた成分(C−1)および固体状担体(S−1)のスラリーの一部を採取し分析したところ、固体分濃度は122.6g/Lであった。
[実施例1]
(固体状触媒成分(X−1)の調製)
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン30mL、並びに合成例9で得られた成分(C−1)および固体状担体(S−1)のスラリー1.63mL(固体分質量0.2g)を装入した。次いで、合成例1で得られた成分(A−1)のトルエン溶液をZrとして0.24μmol、合成例4で得られた成分(B−1)のトルエン溶液をZrとして4.64μmol加えた。これらを系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量40mLの固体状触媒成分(X−1)のスラリーを調製した。
(エチレン系重合体の製造)
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させ液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、1−ヘキセンを10mL、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および前記固体状触媒成分(X−1)を固体分として80mg装入した後、80℃、0.8MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体133.2gを得た。遷移金属当りの重合活性は4.6×104(g/mmol−Zr/hr)であった。
得られたエチレン系重合体に、耐熱安定剤としてIrganoX1076(商品名、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)0.1質量%、Irgafos168(商品名、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)0.1質量%を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を用い、樹脂温度180℃、回転数50rpmで5分間溶融混練した。さらに、この溶融ポリマーを、プレス成形機(株式会社神藤金属工業所製)を用い、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cm2の条件にて冷却した。得られた試料を測定用試料として、物性測定を行った。結果を表6に示す。
[実施例2]
(固体状触媒成分(X−2)の調製)
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン30mL、並びに合成例9で得られた成分(C−1)および固体状担体(S−1)のスラリー2.45mL(固体分質量0.3g)を装入した。次いで、合成例1で得られた成分(A−1)のトルエン溶液をZrとして0.30μmol、合成例7で得られた成分(B−2)のトルエン溶液をZrとして7.14μmol加えた。これらを系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量40mLの固体状触媒成分(X−2)のスラリーを調製した。
(エチレン系重合体の製造)
前記固体状触媒成分(X−2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりエチレン系重合体81.2gを得た。遷移金属当りの重合活性は2.8×104(g/mmol−Zr/hr)であった。得られたエチレン系重合体を実施例1と同様の方法で溶融混練および冷却し、得られた試料を測定用試料として、物性測定を行った。結果を表6に示す。
[実施例3]
(固体状触媒成分(X−3)の調製)
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン30mL、並びに合成例9で得られた成分(C−1)および固体状担体(S−1)のスラリー1.63mL(固体分質量0.2g)を装入した。次いで、合成例1で得られた成分(A−1)のトルエン溶液をZrとして0.25mmol、合成例8で得られた成分(B−3)のトルエン溶液をZrとして4.84mmol加えた。これらを系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量40mLの固体状触媒成分(X−3)のスラリーを調製した。
(エチレン系重合体の製造)
前記固体状触媒成分(X−3)を固体分として40mg用いた以外は、実施例1と同様の方法によりエチレン系重合体62.80gを得た。遷移金属当りの重合活性は4.2×104(g/mmol−Zr/hr)であった。得られたエチレン系重合体を実施例1と同様の方法で溶融混練および冷却し、得られた試料を測定用試料として、物性測定を行った。結果を表6に示す。
[実施例4]
(固体状触媒成分(X−4)の調製)
充分に窒素置換した内容積2Lの攪拌機付き反応器に、トルエン150mL、並びに合成例9で得られた成分(C−1)および固体状担体(S−1)のスラリー398mL(固体分質量48.8g)を装入した。次いで、合成例1で得られた成分(A−1)のトルエン溶液をZrとして0.12mmol、合成例4で得られた成分(B−1)のトルエン溶液をZrとして1.09mmol加えた。これらを系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量1100mLの固体状触媒成分のスラリーを調製した。
得られた固体状触媒成分のスラリーを10℃まで冷却した後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)92.1mmolを添加した。さらに、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度を10〜15℃に保持した。次いで、1−ヘキセン13.3mLを添加した。1−ヘキセン添加後、系内温度を35℃に昇温し、固体状触媒成分に対して質量換算で3等量分のエチレンを重合させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を600mLとした。次に、系内温度を35℃に昇温した後、成分(G)として、高級脂肪酸アミドであるケミスタット2500(商品名、三洋化成工業株式会社製)1.9gのヘキサン溶液を添加し、2時間接触させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。次に、グラスフィルターに得られたヘキサンスラリーを移し、ろ過および減圧乾燥によりヘキサンを留去させることで、予備重合された固体状触媒成分(X−4)190.5gを得た。
(エチレン系重合体の製造)
内容積1.0m3の流動層型気相重合反応器を用い、重合圧力1.7MPa・A、エチレン分圧1.0MPa、ガス線速0.7m/s、触媒供給量4.0g/hr、重合温度80℃、気相部水素/エチレン比30molppm/mol%、気相部1−ヘキセン/エチレン比0.0066、ケミスタット供給量0.40g/hrの重合条件にて、反応器内に前記固体状触媒成分(X−4)、エチレン、1−ヘキセン、水素およびケミスタット2500を連続的に供給した。重合反応物を反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥することで、エチレン系重合体を得た。遷移金属当りの重合活性は4.1×104(g/mmol−Zr/hr)であった。
得られたエチレン系重合体に、耐熱安定剤として、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ)プロピル]−2−メチルフェノール(商品名:スミライザーGP、住友化学株式会社製)680ppm、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製)170ppmを加えた。これを、2軸同方向46mmφ押出機(株式会社池貝製)を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数300rpm、フィーダー回転数30rpmの条件で溶融混練し、ストランド状に押し出しカットしてエチレン系重合体のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として、物性測定を行った。結果を表6に示す。
[比較例1]
(固体状触媒成分(X−5)の調製)
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン30mL、並びに合成例9で得られた成分(C−1)および固体状担体(S−1)のスラリー2.45mL(固体分質量0.3g)を装入した。次いで、成分(A)を添加することなく、合成例8で得られた成分(B−3)のトルエン溶液をZrとして7.64μmol加えた。これらを系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量40mLの固体状触媒成分(X−5)のスラリーを調製した。
(エチレン系重合体の製造)
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレン/水素混合ガス(水素ガス濃度0.45モル%)を流通させ、液相および気相をエチレン/水素混合ガスで飽和させた。次に、1−ヘキセンを10mL、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および前記固体状触媒成分(X−5)を固体分として200mg装入した後、80℃、0.8MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体21.5gを得た。遷移金属当りの重合活性は2.8×103(g/mmol−Zr/hr)であった。得られたエチレン系重合体を実施例1と同様の方法で溶融混練および冷却し、得られた試料を測定用試料として、物性測定を行った。結果を表6に示す。
実施例1〜4では比較例1に比べて重合活性が高かった。また、実施例1〜4では[η]の値が*1〜*2の間に入っているのに対し、比較例1では[η]の値が*1〜*2の間に入っていなかった。このことから、実施例1〜4では、比較例1より数多くの長鎖分岐を有する、すなわち成形加工性に優れるエチレン系重合体を効率良く製造できたことがわかった。