JP2018076302A - メラノソーム分解促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 新たなメラノソーム分解促進剤を提供することを主な目的とすること。【解決手段】 スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)植物又は当該抽出物を有効成分として含有するメラノソーム分解促進剤;本技術のメラノソーム分解促進剤において、特に限定されないが、花蕾又は当該抽出物であってもよい。また、本技術のメラノソーム分解促進剤において、前特に限定されないが、メラノソーム分解促進が、ケラチノサイト内にあるメラノソーム分解促進であってもよい。【選択図】なし

Description

本技術は、メラノソーム分解促進剤に関する。
メラニン(melanin)はアミノ酸の一種であるチロシンから酵素により生成される褐色ないし黒色の色素である。
メラニンは、動植物、菌界に広く見られ、動物において、大半が皮膚の表皮最下層の基底層や毛髪の毛母などにあるメラノサイト(色素細胞)で生成されている。
メラニンは、ヒトにおいては、肌色を決定する因子の1つであるとともに、紫外線の悪影響から体を守る重要な役割を担っているといわれている。しかし、メラニンの過剰生成は色黒とされ、また、その不均一な分布とされるシミやソバカス、クスミなどの現象は、美容上の欠陥・肌の老化とされることもある。
メラニン生成メカニズムとして以下のプロセス(a)〜(d)が解明されている。(a)紫外線やストレスによってケラチノサイトからメラノサイト活性化因子が産生され、これらの因子が、皮膚の基底層に存在するメラノサイトを刺激する。(b)活性化されたメラノサイト内において、メラニン生成酵素であるチロシナーゼが過剰に生成され、細胞内小器官メラノソームにおいてチロシンを出発物質とした酸化反応により、メラニンが生成される。(c)このメラノソームはメラノサイトの樹状突起の末端へ移動し、ケラチノサイト(角化細胞)や毛母細胞に渡される。(d)メラノソームがこれらの細胞内に移送され、蓄積されて、最終的に体色や毛髪色を黒く変化させる。局所的に黒く変化した肌の領域を、シミ・ソバカスと呼んでいる。
特に肌の場合、老化等の代謝能の低下に伴い、肌のターンオーバーと呼ばれる新陳代謝も低下し、メラニンを含むメラノソームが体外に排出されにくくなり、その結果、シミ・ソバカスが増える。
従来から、シミやソバカス等の対策として、メラニンの生成を抑制するため、チロシナーゼ阻害物質の探索が多く行われている。
例えば、特許文献1には、セカン(Secang)のエタノール抽出物にチロシナーゼ阻害作用があることが開示されている。また、特許文献2には、西洋わさび葉のエタノール抽出物にチロシナーゼ阻害作用があることが開示されている。
しかしながら、チロシナーゼ阻害剤は、メラニンが生成される前を抑制するため、シミ・ソバカスの予防にとどまり、生成されたメラニンを内包するメラノソームがケラチノサイト内に渡され、蓄積されることによって生じているシミ・ソバカスを減らすことはできない。しかしながら、既にできてしまったシミ・ソバカスを減らしたいと望むヒトは多く、新たなアプローチの美白剤又はシミ・ソバカス改善剤が求められている。
特開平9−87197号公報 特開2006−232806号公報 特開2010−280720号公報
よって、本技術は、斯かる実状に鑑み、新たなメラノソーム分解促進剤を提供することを主な目的とする。
そこで、本発明者らは、既に生成されたメラニンを内包するメラノソームがケラチノサイトの細胞内に渡され、その細胞内に蓄積された状態に近い実験モデルを検討した。そして、本発明者らは、ケラチノサイト貪食メラノソーム及び蛍光観察顕微鏡を用いる実験モデルを採用し、メラノソーム分解促進物質について検討を行った。
本発明者らは、鋭意検討した結果、スイカズラ科(Caprifoliaceae)スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)の植物又はその抽出物(特にキンギンカ又はその抽出物)に、ケラチノサイト内のメラノソームを分解促進する作用があることを見出し、本発明を完成させた。
なお、スイカズラは、スイカズラ科(Caprifoliaceae)スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)には、利尿作用、解毒作用が知られているが、メラノソーム分解促進作用があることは知られていない。
また、特許文献3には、キンギンカ50重量%エタノール抽出物がB−16メラノーマ細胞試験によってメラニン産生亢進作用があること、白髪の男性被験者に対して白髪改善効果が半数程度認められたことが記載されている。しかしながら、本技術のキンギンカ抽出物に既にできてしまったシミ・ソバカスを減少させる作用があることを見出したことは全くの予想外であった。
すなわち、本技術は、スイカズラ科(Caprifoliaceae)スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)の植物又はその抽出物を有効成分として含有するメラノソーム分解促進剤を
提供するものである。
また、本技術のメラノソーム分解促進剤において、特に限定されないが、花蕾又は当該抽出物であってもよい。
また、本技術のメラノソーム分解促進剤において、前記メラノソーム分解促進が、ケラチノサイト内にあるメラノソーム分解促進であってもよい。
本技術は、新たなメラノソーム分解促進剤を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
図1A図(左)は、ケラチノサイトにメラノソームを貪食させ、洗浄後、被験物質を添加前に、蛍光観察用抗体処理した後の蛍光観察像である(被験物質添加前)。 図1B(中)は、メラノソームを貪食させたケラチノサイトに、洗浄後、被験物質無添加の水を添加した培地にて24時間培養後、さらに蛍光観察用抗体処理した後の蛍光観察像である(被験物質添加(なし):水(溶媒))。 図1C(右)は、メラノソーム貪食させたケラチノサイトに、洗浄後、被験物質(キンギンカエキス)を添加した培地にて24時間培養後、さらに蛍光観察用抗体処理した後の蛍光観察像である(被験物質添加(あり):キンギンカエキス)。
本技術における植物とは、スイカズラ科(Caprifoliaceae)スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)及びその近縁植物が挙げられ、スイカズラの名称の他、別名ニンドウとも呼ばれている。その近縁植物は、スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)とほぼ同等の効能を有し、生薬のスイカズラ(特にキンギンカ、ニンドウ等)として流通している植物の意味であり、例えば、L.confusa(Sweet)DC.、L.mamckii MAXIM、L. chinensis WASTON、L.similis HEMSL、L. tragophylla HEMSL、L. pampaninii LEVL、L. hypoglauca MIQ、L. hypoglauca macranthoides HAND MAZZ等が挙げられる。
本技術において、スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)及びその近縁植物を、総称して、スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)植物(以下、「スイカズラ植物」ともいう。)とする。
本技術におけるスイカズラ植物は、原産として、日本、朝鮮半島、中国、台湾等が挙げられる。この花蕾はキンギンカとも呼ばれ、茎及び/又は葉はニンドウとも呼ばれる。キンギンカ及びニンドウは、生薬として古くから使用され、キンギンカには、消炎、解毒、利尿、抗菌作用があることが知られている。
前記スイカズラ植物の使用する部位は、いずれの部位を用いてもよく、例えば、花蕾、根、茎、幹、葉、胞子等から選ばれる1種又は2種以上のものを用いることができる。これらの部位は、乾燥、細切、圧搾、粉砕又は発酵などの適宜の処理を施したものを使用することができる。また、このような処理を施した後に、抽出を行ってもよい。
このうち、花蕾、茎及び葉の何れか1種又は2種以上のものを用いるのが好ましく、より好ましくは花蕾である。
本技術のスイカズラ植物の抽出物は、スイカズラ植物から抽出して得ることができるも
のである。抽出によって、より効能成分を高めることができるので、スイカズラ植物抽出物が好ましい。
前記スイカズラ植物の抽出方法は、特に限定されない。抽出は、前記スイカズラ植物を一定温度(低温、常温又は加温)下にて、所定期間、浸漬等にて抽出溶媒を用いて行えば良い。
前記抽出溶媒としては、特に限定されないが、例えば水;アルコール類;アセトン等のケトン類;エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類等の一種又は二種以上を用いることができる。
前記アルコール類として、メタノール、エタノール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ブタンジオール等の液状多価アルコール等が挙げられる。
前記アルコール類は、1価アルコール類及び2価アルコール類が好ましく、アルコール類の炭素数は1〜5程度であるのが好ましい。
この溶媒のうち、水及び/又はアルコール類(好適には炭素数1〜4)が好ましい。前記アルコール類は、メタノール、エタノール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)及びブチレングリコール(1,3−ブタンジオール)から選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。さらに、前記溶媒として、水がさらに好ましい。
また、含水アルコールの場合、アルコール類濃度(V/V)は、好ましくは20〜80体積%であるのが好適である。
前記スイカズラ植物の好ましい抽出方法の例としては、前記スイカズラ植物を、水、アルコール類及び水−アルコール類混合液の何れかにて、室温(例えば5〜40℃程度)で又は加温(40〜100℃程度)して5分間〜5日間抽出を行う方法が挙げられる。このうち、水抽出(特に熱水抽出)が好ましい。
前記抽出温度は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは75〜95℃である。また、抽出期間は、加温抽出の場合、30分〜3時間程度で行うことが望ましい。
本技術のスイカズラ植物又はその抽出物は、そのまま有効成分として用いてもよいし、効能を損なわない範囲で夾雑物等不純物を除去するため又は効能を高めるために、適宜、公知の分離精製方法にて処理してもよい。例えば、必要に応じて、さらに、抽出溶媒の留去、濾過やイオン交換樹脂等による脱臭、脱色等の精製処理を施した後に用いることもできる。又、液体クロマトグラフィー等の分離手段を用いて、活性の高い画分のみを用いることもできる。
本技術のスイカズラ植物の抽出物は、抽出液単独で又は異なる抽出方法にて得られた抽出液を混合して、そのまま用いるか、又は当該抽出物を希釈、濃縮又は乾燥させて、液状、粉末状又はペースト状に調製して用いることもできる。
そして、後記実施例に示すように、ケラチノサイト内のメラノソーム分解促進モデル試験において、本技術のキンギンカ抽出物が、メラノソーム分解促進作用を有することが認められた。
本技術のスイカズラ植物若しくはキンギンカ(以下、「本技術の植物」ともいう。)又は当該抽出物は、従来のようなメラニン生成抑制剤(例えば、チロシナーゼ酵素阻害剤)とは異なり、一旦生成されてしまったメラニン顆粒、メラノソームを分解促進させることができる。本技術の植物又は当該抽出物は、シミ・ソバカスの原因であるケラチノサイト内にあるメラノソームを分解促進させることで、シミ・ソバカスを減少させることができる。
現在、作用機序は解明中であるが、メラノソームは、本技術によって分解促進されて微小で多数の粒状となり、この多数の微小粒状が細胞内に分散し、散在する。このことによって、皮膚に既に生じているシミ・ソバカスが希釈化され、最終的にシミ・ソバカスが減少すると考えている。
このように、本技術では、ヒト又は動物において、既に生じているシミ・ソバカスを減少させることができ、また美白化を目指すことが可能となる。このことから、本技術の対象者は、一旦生成されてしまったメラノソームの分解促進作用による、美白向上及びシミ・ソバカス改善等を期待する者であることが望ましい。また、本技術は、既にシミ・ソバカスができてしまった者に対する美白向上又はシミ・ソバカス軽減が望ましい。
従来のようにチロシナーゼ阻害剤を使用した場合、メラニン生成抑制によりメラニン含有量の少なくなったケラチノサイトが基底層からターンオーバーで表面にでて排出されるまでの期間は約1〜2ヶ月程度要する。このため、チロシナーゼ阻害剤における美白効果は時間がかかり遅効性と考えられる。また、メラノソームがケラチノサイトに渡ると、チロシナーゼ阻害剤の効果の及ばないところとなる。
これに対し、本技術の植物又は当該抽出物は、メラノサイトからケラチノサイトに渡され、ケラチノサイト内で蓄積されたメラノソームに対して有効である。本技術は、基底層やターンオーバーの途中にある有棘層及び顆粒層に存在するメラノソームを分解促進できるため、本技術における美白効果はチロシナーゼ阻害剤と比較して即効性と言える。このようなことから、本技術の植物又はその抽出物は、美白作用及びシミ・ソバカス改善作用を早く期待する者を対象者とすることが望ましい。
従って、本技術の植物又は当該抽出物は、メラノソーム分解促進作用を有する。また、本技術の植物又は当該抽出物は、メラノソーム分解促進剤、シミ・ソバカス改善用組成物及び美白用化粧料として、使用することも可能である。
さらに、本技術の植物又は当該抽出物は、メラノソーム産生に関わる様々な状態(例えば、シミ・ソバカスの増加、色ムラ、ケラチノサイト内のメラノソームの蓄積増加等)等を予防、改善及び/又は治療のために使用することができる。
さらに、本技術の植物又は当該抽出物は、メラノソーム分解促進剤、シミ・ソバカス改善用組成物及び美白用化粧料等の有効成分として含有させることができる。
そして、本技術の植物又は当該抽出物を含有する各種製剤は、上述のように「シミ・ソバカスの増加、色ムラ、ケラチノサイト内のメラノソームの蓄積増加」等の予防、改善及び/又は治療のために、ヒト用若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、皮膚外用剤、化粧品、食品、医薬組成物、食品組成物などの有効成分として、これらに配合して使用することができる。また、本技術の植物又は当該抽出物は、これら各種製剤の製造のために使用することができる。
本技術の植物又は当該抽出物は、適用対象であるヒト若しくは非ヒト動物に使用してもよく、また、治療目的使用であっても、非治療目的の使用であってもよい。
「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。例えば、美容行為が挙られる。
「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転;疾患、症状又は状態の悪化の防止、遅延;疾患又は症状の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、又は適用対象の疾患若しくは症状の発症の危険性の低下をいう。
従って、本技術の植物又は当該抽出物は、上述のメラノソーム分解促進等のために、皮膚外用剤、化粧料、医薬品、医薬部外品、食品、用途を表示した食品用組成物や機能性食品(例えば特定保健用食品等)等に配合することが可能である。
また、本技術のメラノソーム分解促進剤等は、これら皮膚外用剤、化粧料、用途を表示した食品用組成物、機能性食品(例えば、錠剤、清涼飲料等)等として有用である。
本技術の植物又は当該抽出物は、特に美白用又はシミ・ソバカス減少のための「化粧料、医薬部外品、皮膚外用剤」等に用いるのが好ましく、皮膚に塗布したり、皮膚に接触させる製剤が好適である。皮膚外用剤、化粧料として、例えば化粧水、乳液、クリーム、パック化粧料、リキッドファンデーション、軟膏剤、養毛剤等が挙げられる。また、皮膚外用剤、化粧料の剤型として、水系、可溶化系、乳化系(O/W型、W/O型、W/O/W型)等が挙げられる。
前記メラノソーム分解促進剤、化粧料等の製品中における植物又は当該抽出物の含有量は、好ましくは乾燥固形分として0.0000001〜0.1質量%であり、より好ましくは0.000001〜0.05質量%であり、さらに好ましくは0.00001〜0.01質量%である。
なお、前記メラノソーム分解促進剤等には、本技術の植物又は当該抽出物の他に、必要に応じて、任意の成分を組み合わせて使用してもよい。好ましい他の成分としては、薬学的に許容される成分であればよく、例えば、美白成分、チロシナーゼ阻害剤、ターンオーバー促進剤、抗炎症成分、細胞賦活剤、抗酸化剤、保湿剤、紫外線防止剤、溶剤(水、アルコール類等)、油剤、界面活性剤、増粘剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、乳化剤、安定化剤、着色剤、光沢剤、矯味剤、矯臭剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、香料等が挙げられ、これらを目的とする製剤に応じて配合すればよい。
また、前記メラノソーム分解促進剤等の形態は、特に限定されず、液状、ペースト状、ゲル状、固形状、粉末状等の何れの形態でもよい。
<メラノソーム貪食ケラチノサイトの蛍光染色によるメラノソーム調整物質の探索>
本技術のスクリーニング方法は、メラノソーム貪食ケラチノサイトを用い、蛍光染色観察を行うことで、メラノソーム分解促進物質又は増加促進物質を得ることができる。
具体的には、本技術は、以下の(a)〜(c)の特徴を有する、メラノソームの分解促進物質又は増加促進物質のスクリーニング方法である。
(a)メラノソーム貧食ケラチノサイトに、被験物質を添加し培養すること;
(b)被験物質添加のメラノソーム貧食ケラチノサイト内のメラノソームを蛍光観察するための抗体処理をして、当該メラノソームを蛍光観察すること;
(c)被験物質添加ありのメラノソームの蛍光強度を、被験物質添加なしのメラノソームの蛍光強度と比較し、減少した場合、被験物質をメラノソーム分解促進物質と判断し、増加した場合、被験物質をメラノソーム増加促進物質と判断すること。
なお、本技術のスクリーニング方法において、使用する培地(培養液)は通常市販の培地(培養液)を使用すればよい。また、培養は、37℃のCOインキュベーターで行えばよい。本技術において、特に言及しなれば、培地及び培養等について、公知の手法を用いて行うことができる。
本技術のスクリーニング方法における「(a)メラノソーム貧食ケラチノサイト」は、培養ケラチノサイト(好適には、ヒト表皮角化細胞)に抽出メラノソームを添加後、培養して得ることが可能である。なお、「メラノソーム貪食ケラチノサイト」は、公知の手法にて得たものを使用することも可能である。
前記「培養ケラチノサイト」は、市販品のヒト培養ケラチノサイトを用いればよい。また、公知の手法にて培養し、培養ケラチノサイトを得てもよい。ケラチノサイトの由来は特に限定されないが、ヒト由来、マウス由来、ラット由来及びブタ由来が好ましく、ヒト由来がより好ましい。
前記「抽出メラノソーム」は、公知の手法にて得ることができる。
一例として、正常ヒト表皮メラノサイトを培養し、培養後タンパク質分解酵素にて容器からメラノサイトを剥がし、遠心分離して細胞を回収する。回収したメラノサイトに界面活性剤溶液を添加し、抽出メラノソームを得ることができる。
前記「添加後の培養」は、6時間〜3日程度であることが好ましい。
前記培養ケラチノサイトに対する抽出メラノソームの添加割合は、ケラチノサイト10cells/wellに対し、メラノサイト0.1〜10×10cells分の抽出メラノソームを添加することが好ましい。
本技術のスクリーニング方法における「(a)被験物質を添加し培養する」において、メラノソーム貧食ケラチノサイトに、各種濃度に調整した被験物質を培地に添加し12〜48時間培養を行う。
この被験物質を含有する培地を添加する前に、培養後に培地を除去し、次いでリン酸緩衝食塩液(PBS)等の緩衝液にて洗浄することが好ましい。この作業にて、ケラチノサイトは容器に付着しているので、ケラチノサイトに貪食されていないメラノソームなど不要な成分は除去することができる。
被験物質添加培地にて培養後に、培地を除去し、次いでリン酸緩衝食塩液(PBS)等の緩衝液にて洗浄することが好ましい。この作業にて、メラノソーム貪食ケラチノサイトは容器に付着しているので、培地由来の成分など染色に不要な成分を除去することができる。また、剥がした場合、細胞を回収するための遠心分離等の作業も発生するが、本技術
では付着したままなので、この作業を行わなくともよい。
「メラノソーム貪食ケラチノサイト」は、容器に付着していることから通常、剥離して使用されているが、本技術では、剥離せずに行うことが可能である。
ちなみに、容器からの剥離法の一例として、培養後に培地を除去し、次いでリン酸緩衝食塩液(PBS)等の緩衝液にて洗浄した後、容器固着しているメラノソーム貪食ケラチノサイトに、タンパク質分解酵素(例えばトリプシン分解酵素)を添加後、37℃にて5分間インキュベートし、遠心分離にて、沈殿した細胞を培地で洗浄し、最終的にメラノソーム貪食ケラチノサイトを得る。
「メラノソーム貪食ケラチノサイト」を容器から剥離する場合、数量の調整のために被験物質添加の前に行うか、又は次の測定機器のために被験物質添加培養後に行うのが一般的である。この剥離工程を行わないことで、作業工程の簡略によって効率向上ができ、また検出時の細胞ロスを低減でき、検出精度向上ができる。
本技術のスクリーニング方法における「(b)被験物質添加のメラノソーム貧食ケラチノサイト内のメラノソームを蛍光観察するための抗体処理」において、前処理として、細胞固定処理及び透過処理を行うことが望ましい。
細胞固定処理として、公知の細胞固定の方法で行えば良い。例えば、容器内にある細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定(10〜30℃程度の室温、10〜20分)し、適宜メタノール固定(冷蔵(1〜5℃程度)、20〜40分)を行う。
透過処理として、蛍光染色物質の透過性を高めることが可能な公知の透過処理を使用することができる。例えば、透過性を高める界面活性剤としてオクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)、ポリソルベート 20、サポニンやジギトニン等が挙られる。当該界面活性剤として、好適には非イオン系界面活性剤であり、そのうち、オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)がより好適である。
本技術における「(b)蛍光観察するための抗体処理」は、公知の蛍光観察用の抗体及びそのプロトコールに従って行うことが可能である。例えば、マウスまたはウサギ等由来の一次抗体、及びFITC、Alexa Fluor(R) 488 、Alexa Fluor(R) 568色素等でラベル化された二次抗体等が挙げられる。
本技術における「(b)メラノソームの蛍光観察」は、一般的な蛍光観察用の顕微鏡装置にて行うことが可能である。
蛍光観察用装置を用いることによって、メラノソーム貧食ケラチノサイトを容器から剥がすことによって生じる検出細胞ロスを低減することができ、ロスによる測定の精度低下を防ぐことができる。
本技術は、検出時に細胞全体での1カウントでなく、1つの細胞内に点在する複数のメラノソームも細かく蛍光観察可能なため、より測定精度を高めることができる。また、本技術は、メラノソームの挙動(縮小又は増大)も確認することができる。
蛍光観察用装置のソフトを利用して、ハレーションによる蛍光強度の不適切な計測がされることなく、視野全体の蛍光強度をさらに検出精度を向上させることができる。
本技術における「(c)」において、同じ培養条件で、被験物質の添加の有無の対比によって、メラノソームの分解促進又は増加促進を判断する。被験物質及びブランクをそれぞれ培地に添加して一定期間培養後に、それぞれのメラノソームの蛍光観察を行うことが望ましい。
具体的には、被験物質添加ありのメラノソームの蛍光強度を、被験物質添加なしのメラノソームの蛍光強度と比較し、減少した場合、被験物質をメラノソーム分解促進物質と判断し、増加した場合、被験物質をメラノソーム増加促進物質と判断する。
判断基準として、例えば、被験物質無添加の蛍光強度を100%としたときに、99%以下の場合、メラノソーム分解促進物質、101%以上の場合、メラノソーム増加促進物質と判断する。
蛍光強度が、75%以下、50%以下と、下降するに従って、より強い作用を有するメラノソーム分解促進物質と判断できる。
蛍光強度が、125%以上、150%以上と、上昇するに従って、より強い作用を有するメラノソーム増加促進物質と判断できる。
なお、「被験物質添加なしのメラノソーム」とは、上記「(a)工程」において、被験物質を添加しなかった以外は同様に処理を行う。
また、メラノソーム分解促進物質と判断された物質は、メラノソーム分解促進作用を有し、これに関連する用途についても利用が可能である。
また、メラノソーム増加促進物質と判断された物質は、メラノソーム増加促進作用を有し、これに関連する用途についても利用可能である。
以下、実施例、試験例等を挙げ、本発明(本技術)をさらに具体的に説明するが、本発明(本技術)はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
<製造例1:スイカズラ植物抽出物の調製>
スイカズラ科スイカズラ属に属するスイカズラ(Lonicera Japonica Thunberg)の花蕾(生薬:キンギンカ)10gを水500mLに浸漬後、加温(80℃〜90℃)した状態で、2時間、熱水抽出した。その後、濾過により夾雑物を除去し、凍結乾燥して、キンギンカエキスの粉末(スイカズラ植物の水抽出物)を得た。
<試験例1:メラノソーム分解促進試験>
〔メラノソームの抽出〕
正常ヒト表皮メラノサイトHuman Epidermal Melanocytes(クラボウ社製)をHuman Melanocyte Growth Supplement (GIBCO社製)を含有したMedium 254(GIBCO社製)でT-75フラスコに播種し、37℃のCOインキュベーターで培養した。トリプシンにてフラスコからメラノサイトを剥がし、遠心分離して細胞を回収した。回収したメラノサイトに界面活性剤溶液を加え、メラノソームを抽出した。遠心分離してメラノソームを含む上清を回収した後に、上清をさらに遠心分離してメラノソームを回収した。
<メラノソーム分解促進試験>
(1)ケラチノサイトの事前培養
初代ヒト表皮角化細胞 HPEKs(CELLnTEC社製)をCnT-PR培地(CELLnTEC社製)でT-75フラスコに播種し、37℃のCOインキュベーターで培養した。
(2)試験
24well plateにガラス板(Collagen I -coated cover glass 12mm type, IWAKI社製)を設置し、ケラチノサイトを2×10cells/wellで播種した。ケラチノサイトを3日間培養後、メラノサイト4×10cells分のメラノソームを添加し、さらに24時間培養し、メラノソームをケラチノサイトに貪食させた。培地を除去し、この24well plateをリン酸緩衝食塩液(PBS)にて3回洗浄除去し、細胞外に存在する貪食されなかったメラノソームを除去した。
このメラノソームを貪食したケラチノサイトに、製造例1のキンギンカエキスを終濃度(100μg/培地1mL)となるように添加した。濃度調整の際に、溶媒として水を使用した。添加後、24時間培養を行い、これを「被験物質添加(あり)」試験とした。「被験物質添加(あり)」試験は、後述する(3)細胞染色及び(4)画像解析を行った。
「被験物質添加(なし)」試験は、「キンギンカエキス」を「溶媒:水」に変更した以外は、「被験物質添加(あり)」試験と同様に培養を行い、次いで(3)細胞染色及び(4)画像解析を行った。
「被験物質添加前」試験は、PBS洗浄後に被験物質を添加せずに(3)細胞染色及び(4)画像解析を行った。
(3)細胞染色
培地を除去し、PBSにて3回洗浄を行った。4%パラホルムアルデヒドで24well plate内の細胞を固定する。さらに24well plate内の細胞を0.3%Triton X-100(商品名:非イオン系界面活性剤/オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル))/PBSで透過処理した。固定・透過処理した24well plate内の細胞に対し、一次抗体としてMonoclonal Mouse Anti-Human Melanosome Clone HMB45 (DAKO社製)、2次抗体として、Alexa Fluor 568 goat anti-mouse IgG(H+L)(Thermo Fisher Scientific社製)にて処理を行った。
(4)画像解析
24well plate内に付着している抗体処理後の細胞を、蛍光観察顕微鏡にて画像を取得し、Image J(アメリカ国立衛生研究所製)にて蛍光強度をRGB輝度値として解析した。
各試験の蛍光観察顕微鏡の写真を図1に示す。また、水及びキンギンカエキスを添加し培養したときのそれぞれの蛍光強度を表1に示す。これらの蛍光強度は、被験物質添加前の蛍光強度を100%としたときのものである。なお、()内の数値は水を基準1.00とした場合の値を示している。
この結果より、キンギンカエキスによるケラチノサイト内のメラノソーム分解促進作用が認められた。
以下は、本技術の植物、当該抽出物又は本技術のメラノソーム分解促進剤を含有する化粧料又は皮膚外用剤の処方例である。なお、各実施例の全量は100質量%である。
[実施例1:化粧水]
(製法)
A.下記成分(5)〜(9)を混合溶解する。
B.下記成分(1)〜(4)と(10)を混合溶解する。
C.BにAを加え混合し、化粧水を得た。
(成分) (%)
1 グリセリン 5.0
2 1,3−ブチレングリコール 5.0
3 乳酸 0.05
4 乳酸ナトリウム 0.1
5 モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
6 エタノール 8.0
7 製造例1のキンギンカエキス 0.0005
8 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9 香料 0.05
10 精製水 残量
[実施例2:化粧水]
(製法)
A.下記成分(1)〜(9)を混合溶解する。
B.下記成分(10)〜(12)を混合溶解する。
C.AにBを加え混合し、化粧水を得た。
(成分) (%)
1 グリセリン 5.0
2 1,3−ブチレングリコール 10.0
3 リン酸一水素ナトリウム 0.1
4 リン酸二水素ナトリウム 0.1
5 精製水 残量
6 製造例1のキンギンカエキス 0.0005
7 ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
8 ハチミツ 0.01
9 コラーゲン 0.1
10 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.2
11 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
12 香料 0.02
[実施例3:美容液]
(製法)
A.下記成分(1)〜(10)を混合溶解する。
B.下記成分(11)〜(17)を混合溶解する。
C.AにBを加え混合し、美容液を得た。
(成分) (%)
1 ジプロピレングリコール 5.0
2 1,3−ブチレングリコール 8.0
3 アルキル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(*1) 0.16
4 キサンタンガム 0.2
5 精製水 残量
6 水酸化ナトリウム2%溶液 2.0
7 製造例1のキンギンカエキス 0.001
8 ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
9 加水分解エラスチン 0.01
10 加水分解コラーゲン 0.1
11 イソステアリン酸PEG−50水添ヒマシ油 0.3
12 イソステアリン酸 0.2
13 精製ホホバ油 0.2
14 アスタキサンチン 0.001
15 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
16 エタノール 2.0
17 香料 0.02
(*1)CARBOPOL1382(LUBRIZOL社製)
[実施例4:水中油型乳液]
(製法)
A.成分1〜5を70℃で均一に溶解混合する。
B.成分6〜14を80℃で均一に溶解混合する。
C.AにBを添加し70℃で乳化する。
D.Cに成分15〜17を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳液を得た。
(成分) (%)
1 1,3−ブチレングリコール 5.0
2 ジブチレングリコール 5.0
3 精製水 残量
4 製造例1のキンギンカエキス 0.002
5 水酸化ナトリウム2%溶液 0.2
6 N−ミリストイル−L−グルタミン酸 0.2
7 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(*2) 0.2
8 マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 1.0
9 ジメチルポリシロキサン(6CS) 3.0
10 N−ステアロイルフィトスフィンゴシン 0.1
11 酢酸トコフェロール 0.01
12 ステアリルアルコール 0.5
13 ペンタンジオール
0.1
14 カルボマー 0.15
15 (アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)
コポリマー(*3)
0.1
16 エタノール 5.0
17 香料 0.1
(*2) HCO−10(日本サーファクタント工業社製)
(*3) SIMULGEL EG(SEPIC社製)
[実施例5:水中油型乳液]
(製法)
A.成分1〜5を70℃で均一に溶解混合する。
B.成分6〜14を80℃で均一に溶解混合する。
C.AにBを添加し70℃で乳化する。
D.Cに成分15〜17を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳液を得た。
(成分) (%)
1 1,3−ブチレングリコール 5.0
2 ジプロピレングリコール 5.0
3 精製水 残量
4 製造例1のキンギンカエキス 0.002
5 水酸化ナトリウム2%溶液 0.2
6 N−ミリストイル−L−グルタミン酸 0.2
7 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(*2) 0.2
8 マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 1.0
9 ジメチルポリシロキサン(6CS) 3.0
10 N−ステアロイルフィトスフィンゴシン 0.1
11 酢酸トコフェロール 0.01
12 ステアリルアルコール 0.5
13 ペンタンジオール 0.1
14 カルボマー 0.15
15 (アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)
コポリマー(*3)
0.1
16 エタノール 5.0
17 香料 0.1
本技術は、以下の構成を取ることも可能である。
〔1〕 スイカズラ科(Caprifoliaceae)スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)植物又は当該抽出物を有効成分として含有するメラノソーム分解促進剤又は美白用化粧料。
〔2〕 前記植物部位が、花蕾である前記〔1〕記載のメラノソーム分解促進剤又は美白用化粧料。
〔3〕 キンギンカ(金銀花)又は当該抽出物を有効成分とするメラノソーム分解促進剤、美白用化粧料又は既にできてしまったシミ・ソバカス改善用組成物。
〔4〕 前記メラノソーム分解促進が、ケラチノサイト内に存在するメラノソームの分解促進である前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項記載のメラノソーム分解促進剤、美白用化粧料又は既にできてしまったシミ・ソバカス改善用組成物。
〔5〕 前記植物抽出物が、水、アルコール類又は含水アルコール類で抽出されたものである前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載のメラノソーム分解促進剤、美白用化粧料又は既にできてしまったシミ・ソバカス改善用組成物。好適には水で抽出されたものである。
〔6〕 前記アルコール類が1価アルコール類及び/又は2価アルコール類であるのが好適である。前記アルコールの炭素数が、1〜4であるのが好適である。前記アルコール類が、メタノール、エタノール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−ブタンジオールから選ばれる1種又は2種以上のものであるのが好適である。前記アルコール類の濃度が、20体積%以上であるのが好適である。

Claims (3)

  1. スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)植物又は当該抽出物を有効成分として含有するメラノソーム分解促進剤。
  2. 前記植物の部位が、花蕾である請求項1記載のメラノソーム分解促進剤。
  3. 前記メラノソーム分解促進が、ケラチノサイト内に存在するメラノソームの分解促進である請求項1又は2記載のメラノソーム分解促進剤。
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