以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して一実施形態における冶具100を用いて製造される鉄筋かご1について説明する。図1(a)は鉄筋かご1が内蔵される鉄筋コンクリート6を壁面とするトンネル5の斜視図であり、図1(b)は鉄筋コンクリート6の1ブロックの拡大図である。図1(b)は、コンクリート7の一部を取り除いて鉄筋コンクリート6の芯材である鉄筋かご1が図示される。
図1に示す通り、トンネル5は、その壁面が鉄筋コンクリート6で構成される。その鉄筋コンクリート6を二点鎖線で区画した1ブロック毎に1つの鉄筋かご1が内蔵される。鉄筋かご1は、鉄筋コンクリート6の芯材として用いられるものであり、コンクリート7により覆われる。鉄筋かご1は、環状に形成された複数の剪断補強筋2と、複数の主筋3とを互いに結合したものである。剪断補強筋2の内周に主筋3が接触し、剪断補強筋2と主筋3とが交差した部分が溶接や結束線により結合される。
剪断補強筋2は、曲げ加工が施された複数の鉄筋を互いに結合して環状に形成される。本実施形態では、剪断補強筋2が短辺と長辺とを有する四角環状に形成される。なお、剪断補強筋2を四角環状以外の多角環状や円環状に形成しても良い。また、本明細書の図面では、剪断補強筋2を構成する各鉄筋の形状は省略し、剪断補強筋2を環状の一体の部材として図示している。
主筋3は、全長に亘って円弧形状に曲げ加工された鉄筋である。これにより、鉄筋かご1も、主筋3の軸方向に沿って主筋3と同一の円弧形状に曲げられる。なお、主筋3を直線状に形成しても良い。この場合には、鉄筋かご1が直方体状に形成される。
次に図2から図4を参照して冶具100について説明する。図2は冶具100の側面図である。図3は図2の矢印III方向から見た冶具100の上面図である。図4(a)は図2のIVa−IVa線における冶具100の断面図であり、図4(b)はサイドフレーム30,40を左右方向外側へスライドさせた冶具100の断面図である。第1実施形態ではそれぞれ、図2の紙面上下方向を冶具100の上下方向、紙面左右方向を冶具100の前後方向、紙面垂直方向を冶具100の左右方向として説明する。なお、図3では溶接ロボット15を模式的に図示している。
図2及び図3に示す通り、冶具100は、鉄筋かご1の製造時に剪断補強筋2及び主筋3をそれぞれ保持するための装置であり、主に金属製の部材から構成される。冶具100は、剪断補強筋2の長辺を上下方向に向けた状態で剪断補強筋2を保持する。冶具100は、前後左右に広がって形成されたベース10と、ベース10の左右方向中央に立設される複数の立設部20と、ベース10に立設される左右一対のサイドフレーム30,40とを備える。
ベース10は、冶具100の土台となる部材である。ベース10は、上面視において四角形状に構成される。ベース10の上面の左右方向中央には、複数の保持部11が上方へ突出して設けられる。保持部11は、剪断補強筋2を保持するための部位であり、前後方向に等間隔に円弧形状に並んで設けられる。第1実施形態では、冶具100に保持される22個の剪断補強筋2に対応して、保持部11が22個設けられる。
保持部11には、上端から下方へ向かって凹む凹部12が形成される。凹部12は、剪断補強筋2が嵌まる部位であって、保持部11を左右方向に切り欠いたU字状の溝である。この溝は、複数の保持部11が並んだ円弧形状の接線に対して垂直に設けられる。
ベース10の上面の左右両側には、前後方向に延設されたレール13がそれぞれ左右方向に2本並んで配置される。また、レール13よりも左右方向中央であってベース10の上面の左右両側には、左右方向に延設されたレール14がそれぞれ前後方向に3本並んで配置される。
ベース10上には、レール13上を移動する溶接ロボット15が配置される。溶接ロボット15は、冶具100に保持された剪断補強筋2と主筋3とを溶接するための装置である。溶接ロボット15は、レール13上を自在に移動する台車16と、台車16上に設けられるアーム17と、アーム17の先端に設けられる溶接トーチ18とを備える。
溶接トーチ18は、剪断補強筋2や主筋3を溶かして溶融金属とし、それらを溶接する部位である。台車16及びアーム17を適切に動かすことによって溶接トーチ18が、剪断補強筋2と主筋3との溶接位置に移動される。
立設部20は、上下方向に延設される柱状の部材であり、前後方向に複数(第1実施形態では5つ)配置される。立設部20の左右両側の側面には、それぞれガイドローラ22が設けられる。ガイドローラ22は、剪断補強筋2の内側へ挿入する主筋3を滑らせるための部材である。ガイドローラ22は、左右に回転軸23を向けて立設部20に回転可能に支持される。ガイドローラ22は、立設部20の側面に上下方向に5つ並んで配置される。
ガイドローラ22の回転軸23は、保持部11が並んだ円弧形状の接線に対して垂直に設けられる。ガイドローラ22の外周面24は、軸方向両端に対して軸方向中央が凹んで形成される。これにより、ガイドローラ22上を滑らせる主筋3の左右位置を特定できるので、主筋3を立設部20や剪断補強筋2に接触し難くできる。
サイドフレーム30,40は、剪断補強筋2の長辺を左右両側から挟む左右一対の部材である。サイドフレーム30は、レール14上を移動するフレーム本体50と、フレーム本体50に連結されて前後方向に延設される横部材31と、横部材31に連結されて上下方向に延設される縦部材60とを備える。サイドフレーム40は、レール14上を移動するフレーム本体50と、フレーム本体50に連結されて前後方向に延設される横部材41と、横部材41に連結されて上下方向に延設される縦部材60とを備える。
フレーム本体50は、横部材31,41及び縦部材60を支持する部材である。フレーム本体50は、レール14上を移動する移動部51と、移動部51から上方へ延設される第1フレーム52と、第1フレーム52同士を前後に連結する第2フレーム53とを備える。
フレーム本体50は、3つの移動部51と、3本の角棒状の第1フレーム52と、2本の角棒状の第2フレーム53とが互いに一体化されて構成される。このフレーム本体50に横部材31,41及び縦部材60が一体化されてサイドフレーム30,40がそれぞれ構成される。よって、フレーム本体50によってサイドフレーム30,40の強度および剛性を確保できる。
移動部51は、サイドフレーム30,40を左右方向に移動させるための部位である。作業者がリモコン等の操作子(図示せず)を操作することで、駆動部(図示せず)によってレール14上を移動部51が移動する。サイドフレーム30,40の各部は一体化されているので、移動部51を移動させようとすると、レール14上をサイドフレーム30,40全体が移動する。
図4(a)に示す通り、レール14の左右方向内側にサイドフレーム30,40が位置する状態をそれぞれサイドフレーム30,40の内側状態とし、図4(b)に示す通り、レール14の左右方向外側にサイドフレーム30,40が位置する状態をそれぞれサイドフレーム30,40の外側状態とする。
図2及び図3に示す通り、横部材31,41は、剪断補強筋2を左右両側から挟む部位である。横部材31,41は、前後方向に延設される板材である。横部材31,41は、それぞれ左右一対のフレーム本体50,50の左右方向内側に縦部材60を介して連結される。横部材31,41は、板厚方向を上下方向に向けてフレーム本体50,50の上下端側にそれぞれ配置される。
横部材31は、サイドフレーム40側の側縁が内側縁32であり、内側縁32とは反対側の側縁が外側縁33である。横部材41は、サイドフレーム30側の側縁が内側縁42であり、内側縁42とは反対側の側縁が外側縁43である。
横部材31は、左右方向であって横部材41側へ凸の円弧形状に形成される。横部材41は、左右方向であって横部材31とは反対側へ凸の円弧形状に形成される。即ち、横部材31,41は、同じ方向へ凸の円弧形状に形成される。
横部材31の内側縁32の曲率と横部材41の内側縁42の曲率とは同一に設定される。更に、内側縁32,42の曲率は、複数の保持部11が並んだ円弧形状の曲率とも一致する。これにより、保持部11に保持された複数の剪断補強筋2を横部材31,41とで左右両側から挟むことができる。
横部材31,41には、内側縁32,42から外側縁33,43へ向かって凹む複数の凹部34,44が前後方向に等間隔にそれぞれ形成される。凹部34,44は、剪断補強筋2の左右両側にそれぞれ嵌まる部位である。凹部34,44は、横部材31,41の内側縁32,42側を上下方向にそれぞれ切り欠いて円弧形状に形成される。第1実施形態では、冶具100に保持される22個の剪断補強筋2に対応して、横部材31,41の前後方向にそれぞれ凹部34,44が22個設けられる。
凹部34,44は、保持部11に対して保持部11の凹部12を切り欠いた方向に配置される。即ち、内側縁32,42の接線(複数の保持部11が並んだ円弧形状の接線)に対して垂直な線上に凹部12と凹部34と凹部44とが並んで配置される。これにより、凹部12,34,44には同一の剪断補強筋2が嵌まる。
図3及び図4(a)に示す通り、縦部材60は、主筋3を載せるための張出部64が設けられる部位である。縦部材60は、上下方向に延設される板材であり、板厚方向を前後方向に向けて前後方向に等間隔に4つ配置される。縦部材60は、対向するサイドフレーム30,40側の側縁が内側縁61であり、内側縁61とは反対側の側縁が外側縁62である。縦部材60は、上下の横部材31,41にそれぞれ架け渡され、外側縁62がフレーム本体50に固定される。
縦部材60には、内側縁61から外側縁62へ向かって凹む複数の凹部63が上下方向に等間隔に形成される。凹部63は、剪断補強筋2の内側に挿入した主筋3が嵌まる部位である。凹部63は、縦部材60の内側縁61側を前後方向に切り欠いて形成される。第1実施形態では、剪断補強筋2の内周の左右それぞれに溶接される12本の主筋3に対応して、1つの縦部材60に凹部63が12個設けられる。
複数の縦部材60にそれぞれ設けられる凹部63は、いずれも上下方向の位置が一致する。そのため、前後方向に複数設けられる縦部材60において、同一の高さの各凹部63に同一の主筋3が嵌まる。
縦部材60には、内側縁61から左右方向へ複数の張出部64が張り出す。張出部64は、剪断補強筋2の内側へ挿入した主筋3を載せるための部位である。剪断補強筋2は、縦部材60と一体成形され、縦部材60の上下方向に等間隔に配置される。縦部材60は、複数の凹部63の下部にそれぞれ設けられる。縦部材60の上端65と凹部63の内周とが滑らかに連続する。張出部64の上端65は、ベース10の上面や床面に対して平行に形成される。
次に図5及び図6を参照して冶具100を用いた鉄筋かご1の製造方法について説明する。図5は鉄筋かご1の製造工程を示す冶具100の上面図である。図6(a)及び図6(b)は鉄筋かご1の製造工程を示す冶具100の断面図である。
冶具100を用いた鉄筋かご1の製造工程は、保持工程と、挿入工程と、結合工程とを主に備える。各工程がこの順番で行われる。以下、各工程を詳しく説明する。なお、これら各工程の間に別の工程を入れても良い。
まず、図5に示す通り、剪断補強筋2を冶具100に保持する保持工程を行う。保持工程では、予め環状に形成された複数(本実施形態では22個)の剪断補強筋2を、ベース10の凹部12とサイドフレーム30,40の凹部34,44とに作業者が嵌める。サイドフレーム30,40の凹部34,44に剪断補強筋2を嵌めるには、例えば、サイドフレーム30,40の両方を内側状態(図4(a)参照)にし、剪断補強筋2を冶具100の上方から凹部12,34,44に挿入するようにして嵌めることが考えられる。この場合、冶具100の上端は、比較的高い位置にあるので、足場やクレーン(図示せず)を用いて剪断補強筋2を凹部12,34,44に嵌める必要がある。
これに対し、サイドフレーム30,40は、移動部51によりレール14に沿って移動可能なので、サイドフレーム30を外側状態(図4(b)参照)とし、サイドフレーム40を内側状態(図4(a)参照)として、複数の剪断補強筋2を凹部12と凹部44とに嵌めた後、サイドフレーム30を内側状態に切り替えて、剪断補強筋2を凹部34に嵌めることができる。
なお、サイドフレーム30を内側状態とし、サイドフレーム40を外側状態として、剪断補強筋2に凹部12,44を嵌めた後に、サイドフレーム40を内側状態に切り替えても良い。これらの結果、足場やクレーンを用いずに、剪断補強筋2を冶具100に保持させることができるので、鉄筋かご1の製造時の作業効率を向上できる。
保持工程では、剪断補強筋2が凹部12,34,44に嵌められることで、剪断補強筋2が前後方向に位置決めされると共に、剪断補強筋2がサイドフレーム30,40の凹部34,44で挟まれて保持される。凹部12,34,44が前後方向に等間隔に配置されるので、凹部12,34,44に嵌まった剪断補強筋2も前後方向に等間隔に配置される。また、内側縁32,42の接線に対して垂直な線上に凹部12と凹部34と凹部44とが並んで配置されるので、複数の凹部12,34,44に嵌められた各剪断補強筋2は、前後方向に内側縁32,42の円弧形状に沿って並べられる。
保持工程の後、剪断補強筋2の内側へ主筋3を挿入して張出部64に載せる挿入工程を行う。挿入工程では、横部材31,41の内側縁32,42の曲率と同一の曲率を有する複数の主筋3を剪断補強筋2の内側へ作業者が挿入していく。主筋3の数は、立設部20の左右両側で12本ずつの計24本である。
剪断補強筋2の内側へ主筋3を挿入するときは、主筋3をサイドフレーム40側に凸の状態で作業者が持ちながら、ガイドローラ22上を滑らせて主筋3を剪断補強筋2の内側へ挿入していく。これにより、剪断補強筋2の内側へ主筋3を挿入し易くしつつ、挿入時に主筋3が剪断補強筋2と干渉することを抑制できる。その結果、鉄筋かご1の製造時の作業効率を向上できる。
更に、ガイドローラ22の外周面24は軸方向両端に対して軸方向中央が凹んで形成されるので、ガイドローラ22の外周面24に主筋3が嵌まり、主筋3の向きが特定される。特に、サイドフレーム40側に凸の状態の主筋3が隙間なく嵌まるように、外周面24の凹みの軸方向寸法を主筋3の直径よりも僅かに大きく設定することで、ガイドローラ22の外周面24に嵌まった主筋3をサイドフレーム40側に凸の状態で維持できる。これらの結果、ガイドローラ22上を滑らせている主筋3が立設部20や剪断補強筋2に干渉することをより抑制できる。
更に、ガイドローラ22が前後方向に複数並んで配置されるので、複数のガイドローラ22上を滑らせている主筋3の向きをより正確に特定できる。これにより、立設部20や剪断補強筋2に主筋3を一層干渉し難くできる。
ガイドローラ22の回転軸23は、保持部11が並んだ円弧形状の接線に対して垂直に設けられる。その円弧形状の曲率と同一の曲率を主筋3が有するので、円弧形状の主筋3に沿ってガイドローラ22が配置される。そのため、複数のガイドローラ22に主筋3を載せ易くできるので、鉄筋かご1の製造時の作業効率を向上できる。
図6(a)に示す通り、横部材31,41に接触させた状態の剪断補強筋2の内側へ縦部材60から張出部64が張り出す。この張出部64上へガイドローラ22上に載せられた主筋3を移動させ、張出部64に載せた主筋3を凹部63に嵌める。凹部63の底が、横部材31,41の凹部34,44(図5参照)に嵌まった剪断補強筋2の内周と略同じ位置にあるので、凹部63に嵌めた主筋3と剪断補強筋2とが接触する。
次いで、主筋3と剪断補強筋2とを溶接により結合する結合工程を行う。ここで、張出部64の上端65は、ベース10の上面や床面に対して平行に形成されるので、張出部64に主筋3を載せただけでは、剪断補強筋2と主筋3との接触を維持できないことがある。そこで、結合工程では、まず、主筋3を張出部64に載せて凹部63に嵌めた状態で、一部の剪断補強筋2と主筋3とを作業者が仮溶接する。
なお、主筋3が載せられる張出部64はサイドフレーム30,40の縦部材60にそれぞれ12個ずつ設けられるのに対し、ガイドローラ22は立設部20の左右両側にそれぞれ5個ずつしかない。そのため、5つのガイドローラ22に主筋3を1本ずつ載せた後、その主筋3を張出部64に移動させて剪断補強筋2と仮溶接する。この作業を繰り返し行うことが好ましい。これにより、全ての主筋3を張出部64に載せ終わる前に、一部の主筋3が張出部64から落下することを防止できる。
最後に、図6(b)に示す通り、仮溶接により剪断補強筋2と主筋3との接触が維持された状態で、それらが接触する部分、即ち、剪断補強筋2と主筋3とが交差する部分を溶接ロボット15で溶接する。これにより、剪断補強筋2と主筋3とが互いに溶接された鉄筋かご1が製造される。
なお、剪断補強筋2の内周に主筋3を溶接する場合には、剪断補強筋2の内側、且つ、主筋3の上側から溶接することが好ましい。剪断補強筋2の外側から剪断補強筋2と主筋3とを溶接する場合、上下方向に軸を向けた剪断補強筋2の内周に、前後方向に軸を向けた主筋3が接触しているので、剪断補強筋2と主筋3との接触部分のうち、剪断補強筋2の前後を隅肉溶接することになる。その隅肉溶接する部分の下部には、剪断補強筋2や主筋3が溶解した溶融金属を受ける箇所がないので、溶融金属が落ちて剪断補強筋2と主筋3との溶接強度が低下するおそれがある。
これに対し、剪断補強筋2の内側、且つ、主筋3の上側から両者を溶接することで、剪断補強筋2や主筋3が溶解した溶融金属を主筋3で下方から受けることができる。その結果、溶融金属が落ちることを抑制できるので、剪断補強筋2と主筋3との溶接強度を確保できる。
また、鉄筋かご1を冶具100から取り外すには、まず、図6(a)に示す内側状態のサイドフレーム30,40を左右外側へ移動させて外側状態(図4(b)参照)へ切り替えることで、剪断補強筋2を横部材31,41の凹部34,44(図5参照)から外し、主筋3を縦部材60の凹部63から外すと共に主筋3の上下に張出部64が位置しないようにする。これにより、冶具100から鉄筋かご1を上方へ取り外し可能となったので、クレーン(図示せず)等で鉄筋かご1を持ち上げて冶具100から鉄筋かご1を取り外す。
冶具100を用いて製造された鉄筋かご1は、サイドフレーム30,40の内側縁32,42の円弧形状に沿って剪断補強筋2が前後方向に円弧形状に並べられ(図5参照)、その剪断補強筋2を円弧形状の主筋3で溶接して製造されたので、鉄筋かご1が上面視において円弧形状に形成される。なお、内側縁32,42の形状や主筋3の形状を適宜変更することで、鉄筋かご1の形状を適宜変更できる。
例えば、内側縁32,42を上面視において直線状に形成して、複数の剪断補強筋2同士を平行に前後方向に並べ、その剪断補強筋2を直線状の主筋3で溶接することで、直方体状(上面視において直線状)の鉄筋かご1を製造できる。直方体状の鉄筋かご1は、住宅や店舗、トンネル等の建築物の外壁を構成する鉄筋コンクリートの芯材として使用される。
以上、第1実施形態における冶具100によれば、横部材31,41の凹部34,44及びベース10の凹部12に剪断補強筋2を嵌めることで、剪断補強筋2を前後方向に位置決めできる。更に、剪断補強筋2の内側へ張り出す張出部64に、剪断補強筋2の内側に挿入した主筋3を載せることで、主筋3を上下方向に位置決めできる。
従来、複数人の作業者が主筋3を持ち上げた状態で、剪断補強筋2の内周と主筋3とを接触させて溶接していた。これに対し、第1実施形態では、冶具100により剪断補強筋2と主筋3とが位置決めされた状態で、それらが交差した部分を溶接して鉄筋かご1を製造できるので、鉄筋かご1の製造時の作業効率を向上できると共に、冶具100を用いて製造された鉄筋かご1の品質のバラつきを抑制できる。
更に、剪断補強筋2の前後位置および左右位置と、主筋3の上下位置とが特定された状態で、一部の剪断補強筋2と主筋3とを仮溶接することで、主筋3の左右位置も特定されて剪断補強筋2と主筋3との接触を維持できる。これにより、冶具100を用いた毎回の鉄筋かご1の製造において、剪断補強筋2と主筋3との接触位置が略同一となるので、溶接ロボット15による剪断補強筋2と主筋3との溶接が可能となる。その結果、鉄筋かご1の製造時の作業効率をより向上できる。
次に図7を参照して第2実施形態における冶具110について説明する。第1実施形態では、剪断補強筋2と主筋3とを仮溶接してそれらの接触を維持させる場合について説明した。これに対し第2実施形態では、主筋3を剪断補強筋2に押し付ける押付部112を有する冶具110について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図7(a)は第2実施形態における冶具110の断面図であり、図7(b)は押付部112で主筋3を剪断補強筋2に押し付けた冶具110の断面図である。
図7(a)に示す通り、冶具110は、鉄筋かご1の製造時に剪断補強筋2及び主筋3をそれぞれ保持するための装置であり、主に金属製の部材から構成される。冶具110は、前後左右に広がって形成されたベース10と、ベース10の左右方向中央に立設される立設部111と、ベース10に立設される左右一対のサイドフレーム30,40と、立設部111のサイドフレーム30,40側に設けられる押付部112とを備える。
立設部111は、上下方向に延設される柱状の部材であり、前後方向に複数配置される。押付部112は、主筋3を剪断補強筋2へ押し付ける板状の部材であり、上下方向に延設される。押付部112は、ロッド113を介して立設部111に固定される。
ロッド113は、立設部111から左右方向に出没可能に設けられる。立設部111に内蔵される駆動部114によって、立設部111からのロッド113の突出量が調整される。なお、図7(a)ではロッド113の突出量が最小となるロッド113の短縮状態が図示されている。
図7(b)に示す通り、駆動部114によって立設部111からロッド113を突出させ、押付部112を縦部材60へ向かって移動させると、張出部64に載せた主筋3が押付部112によって押され、主筋3が剪断補強筋2に押し付けられる。この状態がロッド113の伸長状態である。
ロッド113を伸長状態とすることによって、剪断補強筋2と主筋3との接触を押付部112により維持できるので、主筋3の左右位置を特定できる。これにより、冶具110を用いて製造された鉄筋かご1の品質のバラつきを抑制できる。
更に、剪断補強筋2と主筋3との接触を押付部112によって維持できるので、溶接ロボット15で剪断補強筋2と主筋3とを溶接する前に、剪断補強筋2の一部と主筋3とを仮溶接する作業を不要にできる。その結果、鉄筋かご1の製造時の作業効率をより向上できる。
次に図8を参照して第3,4実施形態における冶具120,130について説明する。第2実施形態では、押付部112によって剪断補強筋2と主筋3との接触を維持させる場合について説明した。これに対し第3,4実施形態では、張出部121,131の形状によって剪断補強筋2と主筋3との接触を維持させる場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図8(a)は第3実施形態における冶具120の断面図であり、図8(b)は第4実施形態における冶具130の張出部131の部分拡大図である。
図8(a)に示す通り、冶具120の張出部121は、剪断補強筋2の内側に挿入された主筋3が載せられる部位である。張出部121は、縦部材60の内側縁61から左右方向へ張り出し、縦部材60の上下方向に等間隔に配置される。張出部121は、縦部材60側に設けられる基部122と、基部122よりも縦部材60から離れた側に設けられる先端部124とを備える。
基部122は、張出部121に載せられた主筋3を縦部材60(凹部63)側へ導くための部位であり、縦部材60に連なる。基部122の上端123と縦部材60の凹部63の内周とが円弧形状に滑らかに連続する。基部122の上端123は、先端部124へ向かうにつれて徐々に高くなる。この基部122の上端123の傾斜によって、張出部121に載せられた主筋3が縦部材60(凹部63)側へ導かれる。
先端部124は、張出部121に載せられた主筋3が張出部121から脱落することを防止する部位である。先端部124は、基部122の縦部材60から離れた側に連なる。先端部124の上端125は、基部122の上端123よりも高く設定される。これにより、基部122の上端123によって凹部63へ導かれた主筋3の移動を張出部121によって規制できる。これにより、主筋3の左右位置を特定できるので、冶具120を用いて製造された鉄筋かご1の品質のバラつきを抑制できる。
また、基部122の上端123の一部と凹部63とが、主筋3が嵌まる円弧形状に形成されるので、主筋3を凹部63に嵌めたとき、主筋3の左右位置をより正確に特定できるので、冶具120を用いて製造された鉄筋かご1の品質のバラつきをより抑制できる。
更に、張出部121により主筋3が凹部63に嵌まった状態が維持されるので、剪断補強筋2と主筋3との接触を基部122の形状によって維持できる。そのため、溶接ロボット15で剪断補強筋2と主筋3とを溶接する前に、剪断補強筋2の一部と主筋3とを仮溶接する作業を不要にできる。その結果、鉄筋かご1の製造時の作業効率をより一層向上できる。
なお、凹部63に主筋3を嵌めるとき、先端部124と主筋3とを干渉し難くするため、主筋3に対して凹部63の上側を大きく切り欠くことが好ましい。これにより、無理なくスムーズに主筋3を凹部63に嵌めることができるので、鉄筋かご1の製造時の作業効率をより向上できる。
冶具120を用いて製造された鉄筋かご1を取り外すには、クレーン等(図示せず)で鉄筋かご1を吊り上げながら、サイドフレーム30,40を内側状態から外側状態(図4(b)参照)へ切り替えることが好ましい。これにより、凹部63に嵌まっていた主筋3が先端部124を乗り越えることができ、鉄筋かご1を上方へ取り外し可能となる。
図8(b)に示す通り、冶具130の張出部131は、剪断補強筋2の内側に挿入された主筋3が載せられる部位である。張出部131は、縦部材60の内側縁61から左右方向へ張り出し、縦部材60の上下方向に等間隔に配置される。張出部131は、縦部材60側に設けられる基部132と、基部132よりも縦部材60から離れた側に設けられる先端部134とを備える。
基部132は、張出部131に載せられた主筋3を縦部材60(凹部63)側へ導くための部位であり、縦部材60に連なる。基部132の上端133と縦部材60の凹部63の内周とが滑らかに連続する。基部132の上端133は、ベース10の上面や床面に対して平行に形成される。
先端部134は、張出部131に載せられた主筋3が張出部131から脱落することを防止する部位である。先端部134は、基部132の縦部材60から離れた側に連なる。先端部134の上端135は、基部132の上端133よりも高く設定される。
張出部131には、基部132と先端部134とで段差が形成されるので、その段差によって張出部131に載せられた主筋3が基部132(凹部63)側へ導かれる。更に、基部132と先端部134との段差により、基部132側へ導かれた主筋3の移動を規制できるので、主筋3の左右位置を特定でき、冶具130を用いて製造された鉄筋かご1の品質のバラつきを抑制できる。
また、主筋3を凹部63に嵌めたとき、主筋3が先端部134に接触するように先端部134の位置や高さが設定されるので、主筋3の左右位置をより正確に特定できる。これにより、冶具130を用いて製造された鉄筋かご1の品質のバラつきを抑制できる。
更に、先端部134により主筋3が凹部63に嵌まった状態が維持されるので、剪断補強筋2と主筋3との接触を先端部134によって維持できる。そのため、溶接ロボット15で剪断補強筋2と主筋3とを溶接する前に、剪断補強筋2の一部と主筋3とを仮溶接する作業を不要にできる。その結果、鉄筋かご1の製造時の作業効率をより向上できる。
なお、凹部63に主筋3を嵌めるとき、先端部134と主筋3とを干渉し難くするため、主筋3に対して凹部63の上側を大きく切り欠くことが好ましい。これにより、無理なくスムーズに主筋3を凹部63に嵌めることができるので、鉄筋かご1の製造時の作業効率をより向上できる。
冶具130を用いて製造された鉄筋かご1を取り外すには、クレーン等(図示せず)で鉄筋かご1を吊り上げながら、サイドフレーム30,40を内側状態(図4(a)参照)から外側状態(図4(b)参照)へ切り替えることが好ましい。これにより、凹部63に嵌まっていた主筋3が先端部134を乗り越えることができ、鉄筋かご1を上方へ取り外し可能となる。
次に図9を参照して第5実施形態における冶具141a,141b及び溶接ロボット15を用いた溶接システム140について説明する。第1実施形態では、1つの冶具100に対して左右にそれぞれ1台ずつ溶接ロボット15が配置される場合について説明した。これに対し第5実施形態では、2つの冶具141a,141bに対して左右にそれぞれ1台ずつ溶接ロボット15が配置される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図9(a)及び図9(b)は第5実施形態における冶具141a,141b及び溶接ロボット15を用いた溶接システム140の上面図である。
図9(a)に示す通り、溶接システム140は、冶具141a,141bを用いた鉄筋かご1の製造時の作業効率を向上させるためのシステムである。溶接システム140は、2つの冶具141a,141bと、左右にそれぞれ1台ずつ配置される溶接ロボット15とを備える。なお、2つの冶具141a,141bの構成は互いに同一である。
第1実施形態における冶具100では、溶接ロボット15が移動するレール14がベース10に設けられるのに対し、第5実施形態における冶具141a,141bでは、溶接ロボット15が移動するレール14がベース142には設けられない。即ち、第1実施形態における冶具100と第5実施形態における冶具141a,141bとは、ベース10とベース142とが異なるのみで、その他の構成は同一である。そのため、図9では冶具141a,141bの一部の符号を省略して図示している。
ベース142は、床面に設けられた一対のレール143上を移動可能に構成される。一対のレール143には、2つのベース142,142(冶具141a,141b)が移動可能に設けられる。図9には、2つのベース142,142を互いに最も離した状態が図示されている。この状態では、2つのベース142,142間の距離が、ベース142の前後寸法の半分程度に設定される。
また、床面には、冶具141a,141bの左右両側に一対のレール144がそれぞれ設けられる。このレール144上を溶接ロボット15が移動する。レール144の中央は、互いに最も離した状態における2つの冶具141a,141bの中央に位置する。レール144の前後寸法は、ベース142の前後寸法と略同一に設定される。
図9(a)に示す、2つの冶具141a,141bを最も離した状態から、図9(b)に示す通り、冶具141aを冶具141b側へ移動させることで、冶具141aに保持された剪断補強筋2と主筋3とを、その冶具141aの全長に亘って溶接ロボット15で溶接できる。これにより、冶具141aで剪断補強筋2と主筋3とを溶接ロボット15で溶接しているときに、冶具141bに剪断補強筋2及び主筋3を保持させたり、冶具141bに保持させた剪断補強筋2と主筋3とを仮溶接したりできる。
また、逆に冶具141bを冶具141a側へ移動させて、冶具141bに保持された剪断補強筋2と主筋3とを溶接ロボット15で溶接しているときに、冶具141aに剪断補強筋2及び主筋3を保持させたり、冶具141aに保持させた剪断補強筋2と主筋3とを仮溶接したりできる。これらの結果、鉄筋かご1の製造時の作業効率をより向上できる。
更に、2つの冶具141a,141bに対して左右にそれぞれ1台ずつ溶接ロボット15を設ければ良いので、1つの冶具141a,141bそれぞれに対して左右に1台ずつ溶接ロボット15を設けた場合と比べ、溶接ロボット15のコストを削減できる。
以上、各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、鉄筋かご1やベース10、横部材31,41、縦部材60、張出部64,121,131フレーム本体50等の形状は一例であり、種々の形状を採用することは当然である。また、縦部材60の凹部63や保持部11等を設けなくても良い。
上記各実施形態では、剪断補強筋2と主筋3とを互いに溶接する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、剪断補強筋2と主筋3とを結束線で結合しても良い。
上記各実施形態では、22個の剪断補強筋2と左右12本の主筋3とを溶接で結合して鉄筋かご1を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、剪断補強筋2及び主筋3の数は適宜変更可能である。また、剪断補強筋2の数に凹部12,34,44の数を合わせる場合に限らず、剪断補強筋2の数に対して凹部12,34,44の数を多く形成しても良い。また、全ての凹部12,34,44に剪断補強筋2を嵌めずに鉄筋かご1を製造しても良い。同様に、主筋3の数に凹部63の数を合わせる場合に限らず、主筋3の数に対して凹部63の数を多く形成しても良い。また、全ての凹部63に剪断補強筋2を嵌めずに鉄筋かご1を製造しても良い。
上記第1実施形態では、横部材31,41がフレーム本体50の上下端側に配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右のフレーム本体50に対して1つ又は3つ以上の横部材31,41を設けても良い。また、縦部材60を前後方向に4つ配置される場合、立設部20を前後方向に5つ配置される場合、ガイドローラ22を立設部20の側面に5つのガイドローラ22が上下方向に5つ配置される場合に限らず、縦部材60、立設部20、ガイドローラ22の数は適宜変更可能である。
上記第1実施形態では、ベース10の左右両側に1台ずつ溶接ロボット15が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ベース10の左右両側に2台以上の溶接ロボット15を設けても良い。また、上記第5実施形態では、2つの冶具141a,141bに対して左右にそれぞれ1台ずつ溶接ロボット15が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、2つの冶具141a,141bに対して左右にそれぞれ2台以上の溶接ロボット15を設けても良い。これらの場合、1台の溶接ロボット15が溶接する箇所を少なくできるので、鉄筋かご1の製造時の作業効率を更に向上できる。
また、各実施形態における構成を組み合わせても良い。例えば、第1実施形態の冶具100におけるガイドローラ22が設けられた複数の立設部20の間に、第2実施形態の冶具110における押付部112が設けられた立設部111を設けても良い。また、第2実施形態における押付部112を有する冶具110に、第3,4実施形態における張出部121,131を適用しても良い。