本発明の一実施形態に係る建具について説明する。本実施形態に係る建具1は、建物の壁体100の開口101に、スライド可能な複数の障子(引き戸)3が設けられる建具1である。本実施形態では、4枚の障子3からなる建具1を例に説明する。図1は、本実施形態に係る建具1の正面図である。図2は、建具1の横断面図(図1のII−II断面図)である。図3は、建具1の縦断面図(図1のIII−III断面図)である。
以後の説明では、建具1において、障子3の摺動方向であり、後述する枠部材2の上下枠21,22が延びる方向を見付方向x(幅方向、水平方向)と称し、見付方向xに垂直且つ建物の内外方向を見込方向z(奥行方向)と称する。また、複数の障子3が見付方向xに並んで建物の開口101が塞がれた状態を全閉状態と称する。また、障子3の見付方向xの両端について、戸袋5側の端部を戸尻と称し、戸尻と反対側の端部を戸先と称する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る建具1は、枠部材2と、複数の障子3と、戸車ユニット4と、戸袋5と、規制部6とを備える。
枠部材2は、上枠21と下枠22及び左右の縦枠28,29を方形状に枠組みして構成されている。上枠21及び下枠22には、障子3の枚数に応じて、見付方向xに延びる複数の溝部25,26が形成されている。本実施形態では、4枚の障子3を備え、中央部の2枚の内障子31の対向する縦框同士が当接する突合せ構造であるため、上枠21及び下枠22にはそれぞれ屋外O側に位置する外側溝部25と、屋内I側に位置する内側溝部26との2本の溝部が形成されている。
上枠21及び下枠22は型材からなり、図2及び図3に示すように、見込方向zにおける上枠21及び下枠22の両端(屋外O側及び屋内I側)において、見付方向xに平行に延びる2つの側壁部251,261と、2つの側壁部の間に平行に延びる仕切壁250とにより形成されている。外側溝部25及び内側溝部26の底部にはそれぞれ鉛直方向に僅かに突出し、上枠21及び下枠22の見付方向xに延びるレール27が形成されている。
上枠21には、屋内I側の下端から内側溝部26の下縁部まで延びる内側下面212が形成されている。上枠21の屋外O側の下端から、外側溝部25の開口を一部覆うように屋内I側に延びる外側下面213が形成されている。内側下面212と外側下面213とは面一になるように形成されている。
下枠22には、屋内I側の上端から内側溝部26の上縁部まで延びる内側上面が形成されている。下枠22の屋外O側の上端から外側溝部25の開口を一部覆うように屋内I側に延びる外側上面が形成されている。内側上面と外側上面とは面一になるように形成されている。
戸袋5は、建物の開口101の見付方向xの両端部に壁体100と間隔を空けてそれぞれ設けられている。各戸袋5は2枚の障子(外障子30及び内障子31)を収容可能な大きさを有し、障子3が出し入れ可能な入口50を有する。
障子3は、上框33及び下框34と左右の縦框とを方形状に枠組みされた框体内にパネル35が組み込まれて構成されている。パネル35は透明な2枚のガラス板を見込方向zに並べた複層構造を有する。上框33、下框34及び左右の縦框には、それぞれパネル収容溝36が形成され、公知の方法でパネル35の四方の縁部が各パネル収容溝36に収められて保持される。
図5は、下枠部分の構造を示す縦断面図である。図3及び図5に示すように、上框33及び下框34の各パネル収容溝36は、上下方向に延びる一対のパネル支持壁361で形成されている。
下框34の各パネル支持壁361の上端から見込方向zに延びる水平壁364が形成されている。下框34のパネル収容溝36の下方には戸車保持部362が形成されている。戸車保持部362は後述する戸車ユニット4との当接面を有する。戸車保持部362の見込方向zの寸法は、一対のパネル支持壁361の見込方向zの離間距離より小さく、戸車保持部362と各パネル支持壁361との間にはテーパ部363が形成されている。
障子3の縦框は内障子31と外障子30とで構成が異なる。図2に示すように、外障子30の縦框は、見付方向xにおいて、戸袋5側に位置する戸尻框70と、戸先側に位置し、全閉状態で内障子31の戸尻框70と見込方向zに重畳する召合わせ框71とからなる。
外障子30の戸尻框70は、框本体701と遮蔽壁部702とが見込方向zに並んで形成されている。框本体701には、召合わせ框71と対向する側にパネル収容溝36が形成されている。
遮蔽壁部702は、框本体701の見込方向zに屋外O側に向かって延出して形成されている。遮蔽壁部702は内部に断面略長方形の中空部が高さ方向yの全長にわたって形成されている。框本体701と遮蔽壁部702とは、見付方向xの寸法が略等しい。框本体701及び遮蔽壁部702における戸袋5側の各面が見込面である。
図3に示すように、戸尻框70の上下端部には、框本体701と遮蔽壁部702との間に上下方向に切り欠いた凹部(上側凹部703、下側凹部704)がそれぞれ形成されている。上側凹部703と下側凹部704とは、見込方向zの寸法が略等しく、上下方向の寸法は上側凹部703が下側凹部704よりも大きい。
遮蔽壁部702の上下端部には、上枠21及び下枠22の溝部の垂直断面形状に沿う形状を有し、且つ、可撓性を有する溝遮蔽部材707が設けられている。溝遮蔽部材707は、例えば、軟性樹脂製の薄板材からなる。溝遮蔽部材707は、遮蔽壁部702の見込面の上方及び下方に延設するように設けられている。
図2に示すように、召合わせ框71は、断面長方形状の型材であり、框本体711と、外側延出部712と、係止部713とを有する。框本体711には、戸尻框70と対向する側にパネル収容溝36が形成されている。
外側延出部712は、断面略長方形を有し、長辺が見込方向zに屋外O側に向かって延びて形成されている。框本体711と外側延出部712とは、見付方向xの寸法が略等しく形成されている。
係止部713は、召合わせ框71の屋内I側の見付面に水平断面形状が略L字型に形成されている。係止部713は、召合わせ框71の戸先側の見込面から面一に延びた後、曲折して戸尻側に延びるように形成されている。係止部713は、内障子31と外障子30との召合わせ部分(対向部分)における隙間を遮る煙返しの機能を併せ持つ。
内障子31の縦框は、戸尻側の召合わせ框72と、戸先側の突合框73とからなる。召合わせ框72は、外障子30の召合わせ框71と見付方向xの寸法が略等しい断面長方形状の型材であり、突合框73と対向する側にパネル収容溝36が形成されている。
召合わせ框72の屋内I側の見付面には、外障子30の召合わせ框71と同様の係止部723が形成されている。係止部723は、召合わせ框72の屋外O側の見付面に水平断面形状が略L字型に形成されている。係止部723は、召合わせ框72の戸尻側の見込面から面一に延びた後、曲折して戸先側に延びるように形成されている。
突合框73は、一対の内障子31が同じ溝部に収容された引き分け構造の引き戸において、内障子31同士が当接する見込方向zの対向面を有する縦框である。突合框73は、框本体731と、内側延出部732と、突合せ部733とを有する。突合框73は、断面略長方形状の型材であり、召合わせ框72と対向する側にパネル収容溝36が形成されている。内側延出部732は、断面略長方形を有し、長辺が見込方向zに屋内I側に向かって延びて形成されている。框本体731と内側延出部732とは、見付方向xの寸法が略等しく形成されている。
内側延出部732は内障子31の上下方向に延びて設けられており、内部に中空部を有する。突合框73の戸先側の見込面のうち、パネル収容溝36の反対側の位置には、戸先側に向かって突出する突合せ部733が形成されている。突合せ部733は突合框73の高さ方向yの全長に亘って形成されている。
図4は、障子3に設けられるクレセント錠9(錠)の構成を示す模式図である。図2及び図4に示すように、突合框73には、クレセント錠9が設けられている。
クレセント錠9は、ハンドル90と、ハンドル支持部91と、ハンドル支持部91の上下方向に延びて設けられる上下シャフト92,93と、各シャフト92,93の上端あるいは下端に設けられるアジャスタ94,95とを備える。上下シャフト92,93はハンドル支持部91においてハンドル90と接続されている。アジャスタ94,95は、略L字形状の部材であり、水平部97と、水平部97と直交する方向に延びる軸部98とを備える。水平部97に上下シャフト92,93との固定部99を有し、軸部98と上下シャフトとは平行である。軸部98は固定部99よりも見込方向zに外側に位置する。
図3及び図5に示すように、戸車ユニット4は、戸車枠40と、戸車本体41とを備える。戸車枠40は、障子3の見付方向xの寸法よりやや短い寸法で形成されている。戸車枠40は、戸車収納部401と、補助支持部402と、障子載置部403と、テーパ部404とを備える。戸車収納部401は、垂直断面において、略矩形の中空部を有し、戸車本体41が収納可能な大きさを有する。戸車収納部401は、戸車枠40の見付方向xの全長に亘って形成されており、戸車本体41が配置される位置の底面には、戸車本体41の寸法に応じた開口(不図示)が形成されている。戸車収納部401の見込方向zの両端の側壁の下方には、戸車収納部401の底面よりも下方に延びる補助支持部402がそれぞれ形成されている。図5に示すように、戸車の下端よりも高い位置に補助支持部402の下端が位置する。
戸車収納部401の上方には水平面を備える溝状の障子載置部403が形成されている。障子載置部403の見込方向z両端の側壁は、戸車収納部401の側壁と面一に上方に延びて形成されている。障子載置部403の側壁の上端には、見込方向zに互いに離間するように傾斜したテーパ部404が形成されている。
戸車本体41は、2つの公知の戸車が見付方向xに並んで保持されている。本実施形態では、一つの戸車ユニット4に3つの戸車本体41が設けられる。このため、戸車収納部401の下面には3つの開口が形成される。戸車収納部401内に戸車本体41が収納されると、戸車本体41は戸車枠40に対する位置が固定された状態で保持される。
図6は、規制部が建具に設けられた状態を示す斜視図である。規制部6は外障子30の走行を規制する部材である。図6に示すように、規制部6は、L字型部材60に樹脂製の緩衝材61が固定されている。規制部6は、枠部材2との固定部62がL字型部材60に形成されている。
図7はカバー部材の端部を示す斜視図である。カバー部材8は、枠部材2の溝部を覆う部材である。図7に示すように、カバー部材8は、枠部材2の溝部を覆うカバー板80と、枠部材2の溝部に挿入される一対の挿入部81と、枠部材2の溝部の開口縁部に係止される溝係止部85と、枠部材2との固定部83とを備える。
カバー板80は、見込方向zの寸法が枠部材2の溝部の寸法と略等しい。カバー板80の見付方向xの寸法は、全閉状態における外障子30同士の離間距離に基づき設定されている。一対の挿入部81は、カバー板80の一面側において、それぞれカバー板80と直交し且つ互いに平行となるように立設されている。一対の挿入部81はカバー板80の見付方向xの寸法と略等しい。一対の挿入部81の上下方向の高さは、枠部材2の溝部の深さに応じて設定されている。一対の挿入部81のうちの一方には、高さ方向yの端部が他方の挿入部81側に曲折してカバー板80と平行に延びる底部当接部84が形成されている。溝係止部は、カバー板80の見込方向zの一端部と、他端部側の挿入部81の外側面に形成されている。固定部83は、底部当接部84の見付方向xの両端部が延出して形成されている。
上記枠部材2(上枠21、下枠22、縦枠28,29)、各框、戸車枠40及びカバー部材8は、それぞれアルミニウムの押し出し成型材からなる。
次に、建具1の構造について説明する。
図1に示すように、4枚の障子は枠部材2内を摺動する引き戸であり、全閉状態で、両端部の2枚が、枠部材2の屋外O側の溝部に配設される外障子30であり、中央部の2枚が外障子30よりも屋内I側に設けられた内障子31である。図2に示すように、建具1は見付方向Aの中央部を中心に対称に構成されている。
建物の開口101に枠部材2が取付けられている。開口101の上縁部には上枠21が固定され、下縁部には下枠22が固定されている。図3に示すように、下枠22の上端は、屋内I外の床面と面一となるように配置されている。上下枠21,22の左右端部には縦枠28,29が設けられている。なお、本実施形態では、建物の屋内外床面が面一となる例であるが、屋内外の床面の高さが異なる場合は、少なくとも屋内I側の床面と面一となるように下枠22が設けられれば意匠性及び動線の観点で好ましい。
上枠21の屋内I側には、開口101の上縁部から下方に延びる目隠し壁103が設けられている。上枠21の下端は目隠し壁103の下端と面一となるように設けられている。
戸袋5は、上枠21及び下枠22の見付方向xの両端部に設けられている。戸袋5は、建物の壁体100から屋内I側に離間して戸袋壁51が取付けられて構成されている。
上枠21及び下枠22の見付方向xの両端部は戸袋5内まで延設されている。建枠28,29は戸袋5内に収容されている。図2に示すように、戸袋5の入口50には、屋外O側に外方立23が設けられ、屋内I側に内方立24が設けられている。外方立23は壁体100に固定されている。内方立24は上枠21及び下枠22に固定されている。外方立23及び内方立24はアルミニウム型材からなる長尺部材である。
図2に示すように、2枚の外障子30は、上枠21及び下枠22の外側溝部25内に配置され、2枚の内障子31は上枠21及び下枠22の内側溝部26内に配置されている。
外障子30及び内障子31は、下框34と下枠22の溝部との間に戸車ユニット4が配設される。戸車ユニット4は、障子3を取り付ける前に、予め下枠22の溝部25,26内に配置される。具体的には、3つの戸車本体41を下枠22の溝部25,26のレール27上に配置する。その後、上方から戸車枠40の補助支持部402を下に向けて溝部内に挿入する。戸車収納部401の開口内に戸車本体41を挿入して、溝部25,26内にて戸車ユニット4が組み立てられる。次に、障子の下框34を障子載置部403に配置する。このとき、補助支持部402により、戸車ユニット4が傾いて倒れることが防止される。また、下框34が戸車枠40のテーパ部404にガイドされて障子載置部403に円滑に載置される。戸車枠40のテーパ部404と下框34のテーパ部363とが当接し、障子3が戸車ユニット4上に容易に位置決めされる。戸車ユニット4上に障子3が載置されると、障子3の自重により障子3と戸車本体41との位置関係が保持され、障子3は溝部内25,26を摺動可能な状態となる。
下框34及び上框33は、屋内I側から視認されないようにするため、枠部材2の上下溝部内に収められている。図3に示すように、建物の床面と、下枠22の上面と、障子の下框34の上面とは面一になるように構成されている。したがって、下框34は下枠22よりも上方に突出せず、開口101を遮らない構成となっている。
4枚の障子3は、図2に示す全閉状態から戸袋5に収納される全開状態まで溝部内を移動可能である。全閉状態時は、同じ溝部に配置された2枚の内障子31の突合框73の突合せ部723同士が当接し、内障子31及び外障子30の召合わせ框71が係止部713,723側で当接し、外障子30の戸尻框70は、戸袋5の入口50の外方立23と内側方立24との間に位置する。
戸尻框70の見込方向zの寸法は、外方立23と内方立24との離間距離よりわずかに短い。外方立23と、この外方立23に対向する戸尻框70の見付面との間には外側シール材705が設けられている。外側シール材705は、建物の内外の気密性を保つために設けられており、全閉状態で、外方立23と戸尻框70の見付面との間は隙間が生じないように塞がれる。
内方立24と、この内方立24に対向する戸尻框70の見付面との間には内側シール材706が設けられている。建物の内外の気密性は外側シール材705で確保されているので、内側シール材706は、屋内Iから戸袋5内への塵埃の侵入を防ぐ程度に隙間が塞がればよい。
外側シール材705及び内側シール材706は、戸尻框70の上下方向に沿って設けられている。本実施形態では、外側シール材705及び内側シール材706は外方立23及び内方立24に固定されているが戸尻框70の見付面に取り付けられていてもよい。外側シール材705は、例えば、軟性樹脂製の帯状部材、ブラシ等が挙げられる。
図3に示すように、戸尻框70の遮蔽壁部702の上下端部は、上枠21及び下枠22の内側溝部26内に位置する。さらに、溝遮蔽部材707が内側溝部26の縦断面形状に沿って配置されている。したがって、遮蔽壁部702の上下端部及び溝遮蔽部材707により、内側溝部26の隙間が塞がれる。しかし、溝遮蔽部材707は、内側溝部26からわずかに離間しているので、外障子30の摺動を妨げない。
戸尻框70の凹部703,704内に枠部の仕切壁250が進入した状態で配置されている。上枠21の仕切壁250の下端と上側凹部703の下端(凹部の底)との間の隙間は、下枠22の仕切壁250の上端と下側凹部704の上端(凹部の底)との間の隙間より十分に大きい。
図6に示すように、規制部6は、全閉状態で外障子30の召合わせ框71の戸先側の見込面が緩衝材61に当接する位置において、外側溝部25にネジ止めされている。規制部6はねじ止めされているので、着脱可能である。なお、規制部6は外側溝部25に着脱可能に固定されていればよく、固定方法はネジに限定されず、粘着剤による固定や、係合、嵌合、圧着構造等による固定方法を採用してもよい。
上枠21及び下枠22の外側溝部25のうち、全閉状態で屋外Oに露出する部分には、カバー部材8が設けられて覆われている。カバー部材8は、全閉状態における2つの外障子30の召合わせ框71の見付面間の外側溝部25が覆われるように配置されている。したがって、規制部6はカバー部材8に覆われて外部から視認できず、且つ屋外O側から取り外すことができなくなる。
カバー部材8の固定部83は、外側溝部25と外障子30との間でねじにより枠部材2に固定されている。カバー部材8は、外障子30の少なくとも一部が戸袋5内に収容された位置にある状態で、外側溝部25内の所定の位置にねじで着脱可能に固定される。その後、全閉状態となると、カバー部材8の固定部83は外障子30に覆われて屋外O側には露出しない。
この他、固定部が全閉状態時の外障子30の召合わせ框71よりも戸尻側に位置する程度の寸法を有するように構成すれば、全閉状態で屋内I側に固定部が露出する。このように構成すると、全閉状態で屋内I側において、カバー部材8の固定を解除できる。
4枚の障子3は、最も開放された全開状態から、使用者がハンドル90を把持して内障子31を見付方向xの中央部(戸先側)に移動させると、やがて外障子30と内障子31との召合わせ框71,72間の係止部713,723が係止し、外障子30も内障子31と一緒に戸先側に移動する。外障子30と内障子31の召合わせ框71,72間の係止構造は、戸先側への移動時は外障子30が追従するが、内障子31の戸尻方向(開放方向)への移動には追従しないように構成されている。したがって、一対の内障子31が突き当たるまで移動させた状態で、使用者が外障子30を戸先側に動かすと、外障子30は上記係止関係が解除されて戸先側に移動可能となり、建物の開口101が外障子30の部分のみ開放可能となる。しかし、本実施形態に係る建具1では、上述の位置に規制部6及びカバー部材8が設けられているため、全閉状態では、外障子30は規制部6に当接するため、戸先側への移動が規制される。したがって、建具1は、ハンドル90を把持して内障子31を戸先側へ移動させる動作のみで全閉状態にでき、且つ、全閉状態が保たれる。
さらに、内障子31(錠付内障子)にクレセント錠9が設けられているので、全閉状態で施錠可能である。全閉状態で施錠を行う場合、内障子31に設けられている各ハンドル90を回転操作することにより内障子31が上枠21及び下枠22に固定されて施錠される。
すなわち、ハンドル90の回転操作に応じて、クレセント錠9の公知の機構により上下シャフト92,93が突合框73の内側延出部732内でそれぞれ軸方向(高さ方向y)に移動する。具体的には、ハンドル支持部91よりも下側且つパネルに近接配置されているハンドル90を見込方向zに屋内Iへ向けて90度回転させると、上シャフト92は下側に移動し、下シャフト93は上側に移動する。一方、ハンドル90を下側且つパネル35に近付けるように90度回転させると、上シャフト92は上側に移動し、下シャフト93は下側に移動する。上下シャフト92,93は内側溝部26よりも屋内I側において上下移動するが、アジャスタ94,95の軸部98は、上下シャフト92,93よりも屋外O側の内側溝部26で上下シャフト92,93に対して平行に移動する。このため、内側溝部26よりも屋内I側に突出した位置にあるハンドル90を操作することにより、軸部98が内側溝部26内の錠ロック部(不図示)と係合あるいは係合解除されるように構成されている。
一方、4枚の障子3を開放するときは、使用者がハンドル90を把持して内障子31を戸尻方向へ移動させると、係止部713,723の係止が解除されて、内障子31のみが移動する。その後、内障子31の召合わせ框72が外障子30の遮蔽壁部702に当接し、外障子30も戸尻側に押されて戸袋5内に収納される。外障子30のパネル35が戸袋50内に収納されると、外障子30の召合わせ框71の外側延出部712が外方立23に当接し、これ以上戸尻方向に移動できなくなる。この状態で障子3が全開状態となり、且つ、戸袋5の奥まで障子が入り込むことを防ぐことができる。
本実施形態に係る建具によれば、外障子30と内障子31とからなる複数の障子3で建物の開口を塞ぐ建具の全閉状態において、規制部6により外障子30の移動が規制されるので、外障子30の戸尻框70が戸袋5内に収納された状態が保たれ、戸袋5の室外O側に隙間ができることを防ぎ、戸袋5内に塵埃等が侵入することを効率良く抑制できる。また、外障子30の規制部6を枠部材2の溝部内に設けることにより、外障子の規制部6を目立たない場所に設けることができ、視野を妨げることなく、意匠性に優れた建具を提供できる。
本実施形態に係る建具によれば、全閉状態では、規制部6の外側溝部25への固定箇所が屋外O側に露出しないため、屋外O側から規制部6の枠部材2への固定を解除することができず、防犯性に優れた建具1を提供できる。
また、規制部6が溝部に着脱可能に固定されているので、規制部6を溝部から取り外すことができ、建具のメンテナンス時等、障子3を取り外す際には外障子30の摺動可能範囲を広げることができる。
本実施形態に係る建具によれば、カバー部材8により溝部内の凹凸が覆われて建具の意匠性を高めることができる。また、カバー部材8により規制部6が覆われるので、全閉状態において規制部6が溝部内に露出しないため、規制部6を外部から取り外すことができず、防犯性を高めることができる。
本実施形態に係る建具によれば、カバー部材8により溝部が覆われることにより、溝部の凹凸が覆われて建具の意匠性を高めることができる。また、規制部6がカバー部材8の端部と一体で形成されているので、カバー部材8を溝部に着脱可能に固定することにより併せて規制部6を設けることができる。そのため、規制部6の着脱作業が容易となり、メンテナンス性に優れた建具を提供できる。
本実施形態に係る建具によれば、全閉状態では外部に露出しない位置でカバー部材8が固定されるため、全閉状態で外部からカバー部材8を取り外すことができず、防犯性を高めることができる。一方、全閉状態を解除するとカバー部材8を取り外すことができるので、障子交換等のメンテナンスも容易に行うことができる。
本実施形態に係る建具によれば、全閉状態では外部に露出しない位置で規制部6が固定されるため、全閉状態で外部からカバー部材8を取り外すことができず、防犯性を高めることができる。一方、全閉状態を解除すると規制部6を取り外すことができるので、障子交換等のメンテナンスも容易に行うことができる。
本実施形態に係る建具によれば、内障子31に錠を設け、開口を閉鎖する方向に内障子31を移動させる操作に追従して外障子30が移動し、且つ、全閉状態では、外障子30は移動が規制される。そのため、全閉状態では外障子30は、内障子31と係止し且つ規制部6により移動が規制された状態で保持されるので、外障子に錠を設けることなく全閉状態が保持される。したがって、内障子31の施錠操作や開閉操作のみで外障子30の開閉を連動して行うことが可能となり、障子3の開閉操作が容易となる。また、外障子30に錠を設ける必要がないので、外障子30の軽量化や、框の寸法を抑えることが可能となり意匠性の向上にも寄与する。
上記実施形態に係る建具によれば、上枠21の仕切壁250の下端と上側凹部703の下端との間の隙間は、下枠22の仕切壁250の上端と下側凹部704の上端との間の隙間より十分に大きい。このため、外障子30は、内側溝部26を塞ぐような溝遮蔽部材707を備えていても、枠部材2に対して所定量上下方向に動かすことができる。本実施形態に係る建具は、下框34が溝部内に隠れる程度で障子3が溝部内に収められている。このような構成であっても、上側凹部703の底が上枠21の仕切壁250の下端に当接するまで障子3を上方に持ち上げると、下枠22の仕切壁250が下側凹部704から外れて、障子3の下部を見込方向zに動かして、枠部材2から障子3を取り外すことができる(倹飩式)。そのため、遮蔽性及び意匠性を高めながら、メンテナンス時は、障子3を取り外す作業が容易に行える。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
また、上述の各実施形態及び各変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
本実施形態に係る建具1では、召合わせ框71,72が係止部713,723に係止される例を示したが、全閉時に戸袋の入口を外側で遮蔽するという目的において、係止部は必須ではない。例えば、外障子の戸尻框に引手部分を一体成型し、外障子を戸先側に移動する操作が可能な構成としてもよい。同様に、全閉時に戸袋の入口を外側で遮蔽するという目的において、内障子31に錠を設ける構成も必須ではない。
本実施形態に係る建具1では、係止部713,723が召合わせ框71,72の高さ方向yの全長に延びるように設けられる例を示した。しかし、内障子31と外障子30とを係止させる目的においては、係止部は高さ方向yの一部に設けられれば足りる。一方、係止部が高さ方向yの一部に設けられると、全閉状態では召合縦框間に隙間が生じるので、気密性あるいは防風性等の観点から、係止部は召合縦框の高さ方向に延びるように形成することがより好ましい。
本実施形態では、4枚の障子3からなる建具の例を示したが、本発明は、障子3の枚数は4枚に限定されるものではなく、見付方向xに左右対称の障子を設ける場合は、6枚、8枚等偶数枚の障子を設ける構成であってもよい。この場合、外障子とは、建具の見込方向zの最も屋外O側に位置する障子を指し、外障子よりも屋内I側に位置する障子を内障子と称する。
例えば、図8に模式的に示す建具1Aのように、6枚の障子3が見込方向zの左右に対称に配置される建具1Aの場合、上枠及び下枠22Aにはそれぞれ3つの溝部が形成され、最も外側の外側溝部25に外障子30が配置され、見込方向zの中央の第1内側溝部261に第1内障子311が配置され、最も内側の第2内側溝部262に第2内障子312が配置される。このとき、第2内障子312のみに錠が設けられ、第1内障子311及び外障子30はそれぞれ見付方向xに隣り合う障子同士の召合わせ框71,720A,721A,722Aに係止部が設けられて、上記実施形態と同様に連動する構成である場合、規制部6は、少なくとも外側溝部25に設ければよい。すなわち、外障子は規制部6により移動が規制され、且つ、第1内障子311は第2内障子312及び外障子30との係止構造により移動が規制される。このような構成とすることにより、複数の内障子311,312が設けられる場合でも、各障子3に錠を設ける必要がない。そのため、各障子3の軽量化や框の寸法を抑えることができ、意匠性を高めることができる。さらに、第2内障子312の動作に連動して外障子30及び第1内障子311を移動させることができるので、複数の障子3の開閉操作が容易となる。
また、上記実施形態では、見付方向xに左右対称の構成の障子3が設けられる例を挙げたが、本発明に係る建具は、障子が見付方向xに左右対称に配置される構成に限定されない。例えば、図9に示す建具1Bのように、戸袋5が一つ設けられ、複数の障子が一つの戸袋5に収納される構成であってもよい。また、隣り合う障子の召合わせ框間に係止部を設けない場合、外側溝部25及び中央の第1内側溝部261にそれぞれカバー部材8及びまたは規制部6を設けることにより、全閉状態を保持することができる。
また、図8に示す変形例では、カバー部材8が外側溝部25のみに設けられる例を挙げたが、カバー部材8を設ける位置は外側溝部25のみに限定されない。例えば、図9に示すように、上枠21及び下枠22に3つ以上の溝部が形成され、3枚の障子が設けられる場合、カバー部材8及びまたは規制部6を外側溝部25と中央の第1内側溝部260に設ける構成としてもよい。カバー部材8を各溝部に設けることにより、溝部が覆われて意匠性を向上させることができる。また、召合わせ框間に係止部を設ける構成は必須ではない。そのため、召合わせ框間に係止部を設けない場合、全閉状態で屋外O側に露出する溝部にそれぞれカバー部材8を設けることにより、外障子30及び第1内障子311が戸袋5と離れる方向(図9に示す矢印A方向)へ移動することが規制される。
上記実施形態では、規制部6及びカバー部材8を設ける例を挙げたが、規制部6及びカバー部材8の構成はこれに限定されない。例えば、規制部6のみを設けてもよい。この場合、規制部6の枠部材2への固定位置を、全閉状態において、外障子30と溝部との間または外障子30よりも屋内I側とすればよい。この結果、全閉状態では、規制部6の緩衝材61は外部に露出するが、固定部は屋外O側に露出しないので、屋外O側から規制部6の枠部材2への固定を解除することができず、防犯効果を得ることができる。
この他、規制部とカバー部材とを一体に形成してもよい。例えば、上記実施形態のカバー部材のみでも、カバー板が外障子の移動を規制可能であるため、規制部を設けない構成であってもよい。あるいは、規制部をカバー部材に固定し、カバー部材を溝部に固定する構成としてもよい。これらの構成の場合、カバー部材が溝部を覆って意匠性を高める機能と、規制部の機能とを兼ね備え、且つ、カバー部材のみを溝部に着脱可能に固定すればよいため、より簡易な構成で、規制部の効果が得られる。
上記実施形態では、規制部6及びカバー部材8を上枠21及び下枠22の両方に設ける例を挙げたが、規制部やカバー部材は、上枠と下枠との少なくとも一方に設ければよい。
本実施形態では、戸袋5の入口50の屋内外に内方立及び外方立を設ける構成としたが、本発明において内方立及び外方立は必須の構成ではない。例えば、内方立を設けない構成や、内方立に代えて、開口部における屋内側の壁体の端部が屋外側に向かって見込方向に延びる延出部を設ける構成であってもよい。
遮蔽壁部702は戸袋5の入口50を塞ぐ構成であればよく、戸尻框の見付面の全面が入口50に対向する必要はない。例えば、外方立、内方立、あるいは入口50の縁部に対して、遮蔽壁部の見込面の一部が対向していればよい。
外側シール材705は、戸袋5の入口50とこの入口50に対向する框本体701の見付面との間に配置される構成であればよく、外側シール材705が固定される位置は、框本体701や、戸袋5の見付面でもよい。
本実施形態では、建具の見込方向の一方を屋内側、他方を屋外側と称したが、本発明に係る建具の設置箇所は、建物の屋内外を仕切る開口に限定されるものではなく、屋内の部屋の間を仕切る建具としても使用可能である。
本実施形態では、1枚の内障子31と外障子とが対となる構成であるため、外障子の召合縦框は1つである。しかし、1枚の外障子に2枚以上の内障子が設けられる場合、中間部に配置される内障子は、両方の縦框がそれぞれ召合縦框となる。
本実施形態では、外障子の召合わせ框に内側延出部を備える構成を例示したが、内側延出部は必須の構成ではない。例えば、戸袋5内に、外障子の移動終端を決める外障子受けを設けることにより、外障子が所定量以上戸袋5内に進入することを防ぐ構成であってもよい。
規制部6は、カバー部材8の端部と一体で形成されている。つまり、カバー部材が規制部として機能してもよい。