JP2018070987A - 硬質材料および摩擦撹拌接合用ツール - Google Patents

硬質材料および摩擦撹拌接合用ツール Download PDF

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Abstract

【課題】十分な長寿命化が可能な硬質材料を提供する。【解決手段】硬質相と、硬質相中に点在する結合相と、を含む硬質材料であって、硬質相は、WC粒子、または、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWからなる群より選ばれた一種以上の金属と、N、C、B、およびOからなる群より選ばれる一種以上の元素とからなる一種以上の化合物粒子(ただし、WC粒子を除く)とWC粒子と、からなり、結合相は、Coを含み、硬質材料における結合相の割合は、0.2質量%以上5質量%未満であり、結合相の円相当径の平均値CAVEは0.1〜0.2μmであり、かつその標準偏差CSDは0.2μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、硬質材料および摩擦撹拌接合用ツールに関する。
高い硬度が要求される製品として、たとえば摩擦撹拌接合用ツールがある。このような製品に用いられる硬質材料としては、超硬合金、サーメットなどが広く知られている。
ところで、摩擦撹拌接合用ツールのような、硬質材料を用いた製品は、時として高温環境下に曝される場合がある。高温環境下においては、硬質材料の摩耗が促進されてしまい、製品として所望される寿命長を達成できなくなる場合が多い。
上記のような問題を解消すべく、たとえば特開2012−166219号公報(特許文献1)には、摩擦撹拌接合用ツールにおいて、特徴的な基材を用いることにより、耐酸化性および耐塑性変形性を向上させる技術が開示されている。特徴的な基材とは、硬質相と結合相とを含み、かつ結合相に含まれるCoの含有割合を低減させた基材である。
特開2012−166219号公報
しかし、高温環境の過酷さは近年増す一方である。このため、従来の硬質材料では、要求される長寿命化に応えることが困難な場合があった。本開示では、十分な長寿命化が可能な硬質材料および摩擦撹拌接合用ツールを提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る硬質材料は、硬質相と、硬質相中に点在する結合相と、を含む硬質材料であって、硬質相は、WC粒子、または、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWからなる群より選ばれた一種以上の金属と、N、C、BおよびOからなる群より選ばれる一種以上の元素とからなる一種以上の化合物粒子(ただし、WC粒子を除く)とWC粒子と、からなり、結合相は、Coを含み、硬質材料における結合相の割合は、0.2質量%以上5質量%未満であり、結合相の円相当径の平均値CAVEは0.1μm以上0.2μm以下であり、かつその標準偏差CSDは0.2μm以下である。
本開示の一態様に係る摩擦撹拌接合用ツールは、上記硬質材料を含む摩擦撹拌接合用ツールである。
上記によれば、十分な長寿命化が可能な硬質材料および摩擦撹拌接合用ツールを提供することができる。
図1は、一実施形態に係る摩擦撹拌接合用ツールの一例を示す断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。なお、本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
〔1〕本開示の一態様に係る硬質材料は、硬質相と、硬質相中に点在する結合相と、を含む硬質材料であって、硬質相は、WC粒子、または、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWからなる群より選ばれた一種以上の金属と、N、C、BおよびOからなる群より選ばれる一種以上の元素とからなる一種以上の化合物粒子(ただし、WC粒子を除く)とWC粒子と、からなり、結合相は、Coを含み、硬質材料における結合相の割合は、0.2質量%以上5質量%未満であり、結合相の円相当径の平均値CAVEは0.1〜0.2μmであり、かつその標準偏差CSDは0.2μm以下である。
上記硬質材料は、耐摩耗性および耐塑性変形性に優れ、さらに耐欠損性に優れる。このため、上記硬質材料によれば、十分な長寿命化が可能となる。
〔2〕上記硬質材料において、化合物粒子の割合は、0.1〜3質量%である。これにより、耐摩耗性および耐塑性変形性がさらに優れることとなる。さらに、硬質相におけるネッキング形成が促進され、これにより硬質材料の靱性が向上することとなり、もって硬質材料の耐欠損性が向上する。
〔3〕上記硬質材料において、結合相はCrを含む。これにより、硬質材料のさらなる長寿命化が可能となる。
〔4〕上記硬質材料において、WC粒子は、平均粒子径が0.4〜3μmである。これにより、硬質材料の耐摩耗性および抗折力を高く維持することができる。
〔5〕上記硬質材料において、結合相の結合相間距離の平均値DAVEは0.2〜0.5μmであり、かつその標準偏差DSDは0.2μm以下である。これにより、耐欠損性と耐塑性変形性とのバランスに優れる。
〔6〕本開示の一態様に係る摩擦撹拌接合用ツールは、上記硬質材料を含む。この摩擦撹拌接合用ツールによれば、十分な長寿命化が可能となる。
〔7〕上記摩擦撹拌接合用は、上記硬質材料からなる基材と、基材上に形成された被膜と、を備える。これにより、さらなる長寿命化が可能となる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)について説明する。ただし、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお以下の実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わす。また、本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のものに限定されるものではない。たとえば「TiCN」と記載されている場合、TiCNを構成する原子数の比はTi:C:N=1:0.5:0.5に限られず、従来公知のあらゆる原子比が含まれる。
〈硬質材料〉
《構成》
本実施形態に係る硬質材料は、硬質相と、硬質相中に点在する結合相とを含む。具体的には、硬質相は複数の粒子の集合体により構成されており、結合相は粒子として硬質相中に点在している。換言すれば、硬質相はマトリックスを構成している。さらに本実施形態に係る硬質材料は、以下(1)〜(4)を満たす。
(1)硬質相は、WC粒子、または、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWからなる群より選ばれた一種以上の金属と、N、C、BおよびOからなる群より選ばれる一種以上の元素とからなる一種以上の化合物粒子(ただし、WC粒子を除く)とWC粒子と、からなる;
(2)結合相は、Coを含む;
(3)硬質材料における結合相の割合は、0.2質量%以上5質量%未満である;
(4)結合相の円相当径の平均値DAVEは0.1〜0.2μmであり、かつその標準偏差DSDは0.2μm以下である。
硬質材料が硬質相および結合相を含むこと、結合相の組成、硬質材料における結合相の割合(質量%)ならびに平均値DAVEおよび標準偏差DSDは、次のようにして確認することができる。
まず、硬質材料の任意の断面を含む試料を作製する。断面の作製には、集束イオンビーム装置、クロスセクションポリッシャ装置等を用いることができる。次に、加工された断面をSEM(Scanning Electron Microscope)にて10,000倍で撮像して、10視野分の電子画像を得る。次に、付属のEPMA(Electron Probe Micro-Analysis)またはEDX(Energy Dispersive X-ray spectrometry)を用いて、各電子画像中の所定領域(12μm×9μm)について、元素マッピングを行う。
得られた元素マッピングに基づいて、WCを含む領域を硬質相とし、WCを含まない領域であり、かつCoを含む領域を結合相とする。これにより、硬質材料が硬質相および結合相を含むことが確認される。また元素マッピングから、結合相の組成および硬質材料における結合相の割合(質量%)が決定される。なお、焼結条件によっては、硬質相および結合相以外に、空孔が存在する場合がある。
さらに画像解析ソフト(「Mac−View I」、株式会社マウンテック製)により、硬質相中に点在する結合相の円相当径(粒子の面積と同一の面積を持つ仮想円の直径)の平均値DAVEとその標準偏差DSDが算出される。なお各値は、10視野にて分析された結果の平均値である。
また硬質相を構成する化合物粒子の組成、およびWC粒子および化合物粒子の各割合(質量%)は、硬質材料を粉砕し、ICP発光分光分析法により、粉砕物における各元素の含有割合を求め、これに基づいて各成分の組成比を試算することにより確認することができる。
ここで、硬質材料におけるWC粒子の含有割合は比較的高く、このため、WC粒子同士が隣接する領域が多く存在する。隣接するWC粒子同士は、元素マッピングの結果とSEM画像から得られる反射電子像によって、区別することができる。反射電子像において、各WC粒子の結晶方位の違いに起因した色の相違(濃淡)が観察されるためである。
以下、上記(1)〜(4)について詳述する。
上記(1)に関し、硬質相には、少なくともWC粒子が含まれることとなる。このため、硬質材料は、超硬合金またはサーメットである。なお本明細書において、硬質材料におけるWC粒子の割合が、50質量%以上100質量%以下のものを超硬合金、0.5質量%以上50質量%未満のものをサーメットと定義する。
硬質材料は、その製造過程で不可避的に混入する不純物を含有していてもよい。硬質材料は、その組織中に遊離炭素または「η層」と称される異常層を含む場合もある。さらに硬質材料は、表面改質処理が施されたものでもよい。たとえば、硬質材料は、その表面に脱β層等を含んでいてもよい。
上記WC粒子とは、WC(炭化タングステン)の粒子を意味する。硬質材料における結合相の割合が0.2質量%以上5質量%未満であることから、硬質材料におけるWC粒子の割合の上限値は99.8質量%である。また、硬質材料の硬度を向上させる観点からは、硬質材料におけるWC粒子の割合は、90質量%以上であることが好ましい。
上記化合物粒子とは、化合物の粒子を意味する。具体的には、TiWC、TiWCN、NbWC、TaMoWC、TaNbWC、TiC、NbC、TiC、TaC、ZrC、ZrCN、VC、TaNbC、TiN、TiCN等の組成からなる粒子が挙げられる。このような硬質相は、特に硬度に優れることができるため、これを有する硬質材料は、硬度に優れることができる。
上記(2)に関し、結合相はCoを含み、本発明の効果を奏する限り、他の成分を含んでいてもよい。超硬合金またはサーメットの結合相を構成する成分としては、Coの他にNi、Cr、等がある。ただし、結合相は複数の成分からなる場合、少なくともCoは主成分、すなわち結合相を構成する成分のうち、最も配合割合(質量%)の大きな成分である。
上記(3)に関し、硬質材料における結合相の割合は、0.2質量%以上5質量%未満である。結合相は、硬質相を構成する各粒子同士を強固に結合するという作用を有する一方で、硬質相と比して硬度に劣る傾向や、耐塑性変形性に劣る傾向がある。このため、結合相の割合が上記範囲であることにより、結合相による作用効果を維持しつつ、結合相の存在に依拠する硬質材料の耐摩耗性および耐塑性変形性の低下を抑制することができる。
上記(4)に関し、結合相が上記のような小さな平均値CAVEおよび標準偏差CSDを有することは、結合相が、マトリックスを構成する硬質相内において、均一な小さい粒子として点在していることを意味する。平均値CAVEが0.1μm未満の場合、硬質相を構成する各粒子同士を強固に結合するという上記作用が十分に機能しない恐れがある。なお、標準偏差CSDの下限値は特に制限されず、値が小さいほど好ましいが、製造上0.05μm以上となる傾向がある。
《製造方法》
上記硬質材料は、以下に詳述する製造方法によって、初めて製造可能となったものである。
(分級処理)
まず、結合相の原料粉末(結合相用原料粉末)を準備する。たとえば結合相を構成する成分がCoおよびCrからなる場合、Co粉末およびCr粉末のそれぞれを分級して、6μm以上の粒径を有する粗粒や凝集粉末を除去する。
上記の分級には分級装置を用いることができる。これにより、極端に大きな粒子や凝集粒子が除去された、粒径のばらつきの小さい結合相用原料粉末を調製することができる。分級方法としては、たとえば乾式分級法または湿式分級法を挙げることができ、6μm以上の粒径を有する粗粒や凝集粉末を除去するためには、たとえば分級装置(気流分級機)の分級点(カットポイント)を1μmに設定すればよい。
また、上記の分級処理に関し、2.4μm以上の粒径を有する粗粒や凝集粉末を除去することがより好ましい。特に、Coが主成分である場合に、Coに対してこのような分級処理を実施することが好ましい。この場合には、たとえば気流分級機のカットポイントを0.4μmに設定すればよい。
(予備粉砕混合処理)
次に、分級後の各結合相用原料粉末を混合し、エタノール等の溶媒を添加した後、アトライターを用いて予備粉砕混合処理を実施する。好ましい条件は以下のとおりである。これにより、予備粉砕混合後の結合相スラリーが得られる。
アトライター周速:100〜500rpm
処理時間 :2〜5時間。
(粉砕混合処理)
次に、得られた結合相スラリーに対し、硬質相の原料粉末(硬質相用原料粉末)を添加する。たとえば硬質相を構成する成分がWCおよびTiWCとする場合、WC粉末およびTiWC粉末を結合相スラリーに添加することができる。そして、アトライターを用いて粉砕混合処理を実施する。好ましい条件は以下のとおりである。これにより、粉砕混合後の混合スラリーが得られる。
アトライター周速:100〜500rpm
処理時間 :12〜17時間。
なお、各原料粉末の配合比(たとえば、WC、TiWC、CoおよびCrの各質量%)は、製造される硬質材料における各成分の組成比(原子比)と一致する。このことは、次のようにして確認されている。まず、製造した硬質材料を粉砕し、ICP発光分光分析法により、粉砕物における各元素の含有割合を求めた。求められた各元素の含有割合から、各成分の組成比を試算したところ、実際の配合比とほぼ同等であった。
(焼結処理)
次に、得られた混合スラリーから溶媒を除去することにより、焼結用原料粉末を調製する。そして、焼結用原料粉末を超硬合金製の金型に充填し、これを焼結する。好ましい焼結条件は以下のとおりである。これにより、焼結体である硬質材料が得られる。なお、焼結処理後に熱間静水圧成形処理を実施してもよい。
圧力:80〜120MPa
温度:1300〜1600℃
時間:1〜2時間。
以上により、上述の硬質材料を得ることができる。上記予備粉砕混合処理において、処理時間が長いほど、平均値CAVEおよび標準偏差CSDを小さくすることができる。
また上記粉砕混合処理においては、処理時間が長いほど、平均値CAVEおよび標準偏差CSDを小さくすることができる一方で、硬質相を構成するWC粒子や化合物粒子の粒径が小さくなり過ぎることが懸念される。このため、粉砕混合処理の処理時間は、12時間以下であることが好ましい。
《作用効果》
以上詳述した本実施形態に係る硬質材料は、耐摩耗性および耐塑性変形性に優れ、さらに耐欠損性に優れる。このため、上記硬質材料によれば、十分な長寿命化が可能となる。本実施形態に係る硬質材料がこのような顕著な効果を奏する理由について、従来の硬質材料と比較しながら以下に説明する。
従来の硬質材料の製造方法においては、上述した分級処理および予備粉砕混合処理といった各工程は実施されず、また、粉砕混合処理もまた、上記のような長い時間実施されることはなかった。一般的な粉砕混合処理の時間は、5〜12時間程度である。このようにして製造された従来の硬質材料においては、結合相は比較的大きく、かつその大きさも均一にはなり難い傾向があった。
これに対し、本実施形態に係る硬質材料は、上述した製造方法により製造されるため、大きさが小さく、かつ均一な結合相を有することができる。一般的に硬質材料では、高温環境下において、硬質相よりも先に結合相が軟化し、または結合相のみが軟化すると考えられる。これにより、硬質材料内において硬質相が移動し易くなり(動き易くなり)、結果的に硬質材料が塑性変形してしまうことが懸念される。
しかし、本実施形態に係る硬質材料によれば、硬度に優れた硬質相を有し(上記(1))、かつ結合相の割合(質量%)が十分に低い(上記(3))。このため、結合相による作用効果を維持しつつ、結合相の存在に依拠する硬質材料の耐摩耗性および耐塑性変形性の低下を抑制することができ、もって硬質材料の耐摩耗性および耐塑性変形性を向上させることができる。
特に、結合相に含まれるCo(上記(2))は、Cr、Ni等の他の結合相の成分よりもWC粒子とのぬれ性に優れるため、焼結性を向上させる傾向がある。また、本実施形態に係る硬質材料は、結合相の割合が低いため、WC粒子とのぬれ性の高い結合相を用いることの有益性は高い。したがって、Coが主成分である場合には、耐摩耗性および耐塑性変形性の低下を抑制する効果に優れることができる。
また、各結合相が十分に小さく均一であるため(上記(4))、各結合相が大きい場合と比して、結合相の軟化に伴うその周囲の硬質相の移動は起こり難くなる。このため、硬質材料の耐塑性変形性はさらに優れることとなる。さらに、大きな結合相の存在は、硬質材料の抗折力の低下を引き起こすが、本実施形態に係る硬質材料によれば、このような抗折力の低下が抑制されるため、高い耐欠損性を発揮することができる。
また、硬質材料における各結合相が十分に小さいということは、焼結前の状態(焼結用原料粉末が金型に充填されている状態)において、結合相用原料粉末が十分に小さく分散されているということを意味する。焼結前の状態がこのような場合、焼結性が向上し、焼結体中の空孔の発生が抑制され得るため、結果的に、硬度および抗折力に優れた焼結体となる。
以上のように、本実施形態に係る硬質材料によれば、上記(1)〜(4)に依拠した上述の各効果が相乗的に発揮されることとなり、結果的に、耐摩耗性および耐塑性変形性に優れ、さらに耐欠損性に優れることができる。したがって、本実施形態に係る硬質材料によれば、十分な長寿命化が可能となる。特に、各硬質材料の特性のばらつきも小さくなると考えられることから、硬質材料の信頼性向上も可能となる。
以上詳述した本実施形態に係る硬質材料において、平均値CAVEが0.1〜0.13μmであり、かつ標準偏差CSDが0.05〜0.12μmであることが好ましい。この場合、さらに上記効果に優れる。さらに好ましくは、平均値CAVEが0.1〜0.12μmであり、かつ標準偏差CSDが0.05〜0.08μmである。
上記硬質材料において、化合物粒子の割合は、0.1〜3質量%であることが好ましい。化合物粒子の割合が0.1質量%以上である場合、硬質材料の耐摩耗性および耐塑性変形性がさらに向上し、3質量%以下の場合、化合物粒子の存在に起因する抗折力の低下を抑制することができる。また、このような割合で化合物粒子が存在することにより、焼結時におけるWC粒子のネッキング形成が促進されるため、硬質材料の靭性が向上することとなる。靭性の向上により、硬質材料の欠損が抑制される。
上記化合物粒子は、WおよびC以外の他の元素がWCに固溶した化合物であることが好ましい。たとえば、TiWC、TiWCN、NbWC、TaMoWCおよびTaNbWC等が挙げられる。この場合に、硬質材料は顕著な長寿命を有することができる。このような化合物粒子は、他の化合物粒子と比べて、高強度という特性を発揮するためである。
上記硬質材料において、硬質材料における結合相の割合は、0.3質量%以上5質量%未満であることが好ましい。この場合、さらに上記効果に優れる。さらに好ましくは0.4質量%以上5質量%未満であり、特に好ましくは2質量%以上5質量%未満であり、なかでも2〜3.2質量%であることが好ましい。特に、硬質材料におけるCoの割合は、2質量%以上5質量%未満が好ましく、2〜3質量%が好ましい。
上記硬質材料において、結合相はCrを含むことが好ましい。Crは、WC粒子の粒成長を促進する作用を有するため、結合相の分散性を向上させる。さらにCrは、Coを含む結合相に固溶し易い特性を有するため、結合相を小さく維持することができる。したがって、結合相がCrを含むことにより、硬質材料の耐摩耗性および耐塑性変形性をさらに向上させることができ、もって硬質材料のさらなる長寿命化が可能となる。硬質材料におけるCrの割合は、0.1〜0.3質量%が好ましい。
一方、Niは、焼結体の焼結性を低下させる傾向、すなわち硬質材料内に巣を発生させ易い傾向があることから、硬質材料におけるNiの割合は低く抑えることが好ましい。具体的には、硬質材料におけるNiの割合は、0.2質量%以下が好ましく、0質量%、すなわち硬質材料中に含まれないことがより好ましい。
上記硬質材料において、WC粒子は、平均粒子径が0.4〜3μmであることが好ましい。WC粒子の平均粒子径が0.4μm以上の場合、硬質材料からのWC粒子の脱落が抑制され、3μm以下の場合、焼結体の焼結性が向上し、これにより焼結体の硬度が向上する。したがって、WC粒子の平均粒子径が0.4〜3μmである場合、硬質材料の耐摩耗性および抗折力を高く維持することができる。上記平均粒子径は、より好ましくは1.2〜3μmである。
WC粒子の平均粒子径は、次のようにして算出される。まず、上述の方法により得られたSEM画像から、電子画像中に存在する各WC粒子の外形を得る。次に、同電子画像において、長さ20μmの任意の線分を3本設定する。次に、1本の線分上に存在するWC粒子の数を計数し、かつ同線分のうちWC粒子によって占有される合計長さを測定する。次に、合計長さをWC粒子の個数で除することにより、粒径が算出される。他の2本の線分についても同様にして粒径を算出する。そして、3つの粒径の算術平均値をWC粒子の平均粒子径とする。
上記硬質材料において、結合相の結合相間距離の平均値DAVEが0.2〜0.5μmであり、かつその標準偏差DSDが0.2μm以下であることが好ましい。これにより、耐欠損性と耐塑性変形性とのバランスが向上する。一方、平均値DAVEが0.2μm未満の場合、硬質材料の耐欠損性が低下する傾向があり、0.5μmを超える場合、硬質材料の耐塑性変形性が低下する傾向がある。より好ましくは、平均値DAVEは0.2〜0.3μmであり、かつ標準偏差DSDは0.16μm以下である。なお、標準偏差DSDの下限値は特に制限されず、値が小さいほど好ましいが、製造上0.12μm以上となる傾向がある。
平均値DAVEおよび標準偏差DSDは、上述の画像解析ソフトを用いた画像解析により算出される。なお「結合相間の距離」とは、結合相のそれぞれに対して1つずつ設定されるものである。任意の一の結合相における「結合相間の距離」は、該結合相の重心点と、該重心点から最も近い位置に重心点を有する他の結合相との距離である。そして「結合相間の距離の平均値」とは、全ての「結合相間の距離」の平均値である。
〈摩擦撹拌接合用ツール〉
図1を用いながら、本実施形態に係る摩擦撹拌接合用ツールについて説明する。本実施形態に係る摩擦撹拌接合用ツール1(以下「ツール1」ともいう)は、基材2を備える。
基材2は、小径(たとえば直径2〜8mm)のプローブ部4と、大径(たとえば直径4〜20mm)の円柱部5とを備えた形状を有し、円柱部5の上方部分には、ホルダーにチャックされるためのチャック部7が設けられている。かかるチャック部7は、たとえば円柱部5の側面の一部が削られることにより形成することができる。また、プローブ部4から拡がる部分(接合加工時に被接合材と接する部分)のことをショルダー部6ともいう。
このような構成を有するツール1は、摩擦撹拌接合技術に極めて有用に用いることができる。摩擦撹拌接合用技術とは、1991年の英国において確立された、アルミニウム合金などの金属材料(被接合材)同士を接合する技術である。具体的には、接合を目的とする金属材料同士の接合面において、先端にプローブ部が形成された円柱状の摩擦撹拌接合用ツールを押圧しながら回転させる。これにより、摩擦熱を発生させて、当該摩擦熱により接合部分の金属材料を軟化させて塑性流動させることにより、金属材料同士を接合するという技術である。
「接合部分」とは、金属材料を突き合わせたり、金属材料を重ねて設置させたりすることにより、それらの金属材料の接合が所望される接合界面部分をいう。この接合界面付近において金属材料が軟化されて塑性流動が起こり、その金属材料が攪拌されることでその接合界面が消滅し、接合が行なわれる。さらに、同時にその金属材料に動的再結晶が起こるので、この動的再結晶により接合界面付近の金属材料が微粒化することとなり、金属材料同士を高強度に接合することができる。
摩擦撹拌接合としては、たとえば点接合(FSJ:Friction Spot Joining)、および線接合(FSW:Friction Stir Welding)がある。FSJにおいては、上下に積層、もしくは突き合わされた2つの被接合材において、接合対象部分にプローブ部4を押圧もしくは挿入させ、その状態でツール1を回転させる。そして、回転するプローブ部4を押圧しながら、その場所でプローブ部4を引き続き回転させることにより、被接合材同士を接合する。
一方、FSWにおいては、上下に積層、もしくは突き合わされた2つの被接合材のうち、接合対象部分にプローブ部4を押圧もしくは挿入させ、その状態でツール1を回転させる。そして、回転するプローブ部4を当該積層もしくは突き合わされた部分に対して直線状に移動させることにより、被接合材同士を接合する。
ツール1の基材2は、上述の硬質材料を含む。これにより、ツール1は、長寿命を有することができる。少なくともツール1の接触部分が上述の硬質材料により構成されていればよいが、基材2のすべてが上述の硬質材料により構成されていることが好ましい。
また上述の硬質材料は、過酷な高温環境下においても、十分に高い耐摩耗性、耐塑性変形性および抗折力を有することから、ツール1は、たとえば融点が1000℃以上の被接合材の接合も可能となる。このような高融点を有する被接合材は、従来、摩擦撹拌接合用ツールによる接合が困難な傾向にあったものである。とりわけツール1は、従来、抵抗溶接法が主として用いられていた高張力鋼の接合にも好適に用いることができ、特に、炭素を多く含む高比強度(たとえば1200MPa以上)の超高張力鋼の接合に極めて有効に使用し得るものである。
またツール1は、基材2の表面に被膜3を備えてもよい。これにより、ツール1において被膜3の特性を付与させることができる。
基材2が高温になることを防止する観点からは、基材2のうちの接触部分(プローブ部4およびショルダー部6)の表面のみ、またはチャック部7を除く表面の全域に、被膜3が設けられていることが好ましく、基材2のうちの接触部分(プローブ部4およびショルダー部6)の表面のみに設けられていることがより好ましい。摩擦により生じた熱が、被膜3が設けられていない部分からホルダーに放出されやすくなるため、基材2が高温になりにくくなり、もって基材2の変形を抑制することができるとともに、基材2の耐摩耗性の低下を抑制することができるためである。特に、酸化が著しいショルダー部6のみを被覆してもよい。
被膜3としては、7×10-6/K以上9×10-6/K以下の熱膨張係数を有する被膜を用いることが好ましく、Ti、Al、Cr、Si、Hf、Zr、Mo、Nb、Ta、VおよびWからなる群より選ばれた一種以上の金属の窒化物からなることがより好ましい。
さらに被膜3は、1000℃以上の耐酸化性を有することが好ましい。ここで、「1000℃以上の耐酸化性を有する」とは、被覆層を熱分析−示差熱・熱重量同時測定(TG/DTA:Thermogravimetry/Differential Thermal Analysis)装置により、大気中で評価を行ない、重量増加が生じた温度が1000℃以上であることを意味する。このような耐酸化性を有する被覆層を構成する組成の好適な例としては、AlTiSiN、AlCrN、TiZrSiN、CrTaN、HfWSiN、CrAlN等を挙げることができる。
上記のような被膜3は、PVD法およびCVD法のいずれによっても形成することができるが、PVD法により形成されることが好ましい。この場合、より緻密で、亀裂が生じ難い被膜3を形成することができる。特に、被膜3と基材2との密着性が格段に向上する点で、カソードアークイオンプレーティング法を用いることが好ましい。
なお図1では、基材2にチャック部7が設けられる場合を示したが、チャック部7は設けられていなくてもよい。
〈その他の用途〉
上述の硬質材料は、摩擦撹拌接合用ツール以外の他の製品に用いることもできる。他の製品としては、金型、切削工具等が挙げられる。これらは、摩擦撹拌接合用ツールと同様に、優れた硬度が求められるものであり、かつ過酷な高温環境下に曝される傾向が高いためである。したがって、上述の硬質材料を含む金型および切削工具においては、上述の硬質材料の効果が有効に発揮されることとなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〈検討1〉
検討1においては、摩擦撹拌接合用ツール(ただし、チャック部を有さず、被膜を有さないもの)を製造し、各摩擦撹拌接合用ツールの特性を確認した。
《No.1の摩擦撹拌接合用ツールの製造》
(分級処理)
まず、気流分級機(「AC−20」、日清エンジニアリング社製)を用いて、乾式分級法によりCo粉末(平均粒子径:0.7μm)を分級処理した。これにより、1μm以上の粒径を有する粗粒や凝集粉末が除去された分級後Co粉末が得られた。また、上記気流分級機を用いて、乾式分級法によりCr粉末(平均粒子径:1.0μm)を分級処理した。これにより、3μm以上の粒径を有する粗粒や凝集粉末が除去された分級後Cr粉末が得られた。
(予備粉砕混合処理)
次に、分級後Co粉末および分級後Cr粉末を、質量比2:0.2で混合し、これにエタノールを添加した後、アトライター(「MA01SC」、日本コークス株式会社製)を用いて以下の条件下で予備粉砕混合を実施した。これにより、結合相スラリーが調製された。
アトライター周速:280rpm
処理時間 :2時間。
(粉砕混合処理)
次に、WC粉末(平均粒子径:1.2μm)とTiWC粉末とを、結合相スラリーに添加した。このとき、配合割合がWC:TiWC:Co:Cr=96.8:1:2:0.2となるように調製した。上記アトライターを用いて、得られた混合物に対し、上記アトライターを用いて以下の条件下で粉砕混合処理を実施した。これにより、混合スラリーが調製された。
アトライター周速:280rpm
処理時間 :15時間。
(焼結処理)
次に、混合スラリーからエタノールを揮発させて焼結用原料粉末を調製した。これを超硬合金製の金型に充填して、100MPaで単軸加圧することにより、加圧成形体を調製した。そして、この加圧成形体に対し、以下の条件下で焼結処理を実施した。焼結処理後、1400℃、1000atmの条件下で、熱間静水圧成形処理を1時間実施した。
圧力:100MPa
温度:1450℃
時間:1時間。
以上により、No.1の硬質材料からなる摩擦撹拌接合用ツールを製造した。摩擦撹拌接合用ツールの形状に関し、プローブ部の直径および高さは4mmおよび2.5mmであり、円柱部の直径および高さは10mmおよび25mmであった。
《No.2〜26の摩擦撹拌接合用ツールの製造》
WC粉末の平均粒子径、結合相用原料粉末の種類、WC粉末以外の硬質相用原料粉末の種類、予備粉砕混合処理の処理時間、および各粉末の配合割合を、表1に示すように適宜変更した以外は、No.1と同様の方法により、No.2〜26の硬質材料からなる摩擦撹拌接合用ツールを製造した。
なお、結合相用原料粉末としてのNiは、上記気流分級機を用いて、乾式分級法によりNi粉末(平均粒子径:1.0μm)を分級処理することより、3μm以上の粒径を有する粗粒や凝集粉末が除去された分級後Ni粉末を用いた。
《No.27の摩擦撹拌接合用ツールの製造》
分級処理および予備粉砕混合処理を実施することなく、以下の粉砕混合処理を実施した。すなわち、WC粉末(平均粒子径1.2μm)、TiCN粉末、Co粉末(平均粒子径:1.4μm)およびCr粉末(平均粒子径:1.0μm)を、配合割合がWC:TiCN:Co:Cr=96.8:1:2:0.2となるように混合し、当該混合粉末にエタノールを添加した。
得られた混合物に対し、上記アトライターを用いて以下の条件下で粉砕混合処理を実施した。これにより、混合スラリーが調製された。
アトライター周速:280rpm
処理時間 :7時間。
次に、No.1と同様の方法により、焼結処理および熱間静水圧成形処理を実施した。これにより、No.27の硬質材料からなる摩擦撹拌接合用ツールが製造された。
《No.28〜31の摩擦撹拌接合用ツールの製造方法》
WC粉末の平均粒子径、結合相用原料粉末の種類、WC粉末以外の硬質相用原料粉末の種類、予備粉砕混合処理の処理時間、および各粉末の配合割合を、表1に示すように適宜変更した以外は、No.27と同様の方法により、No.28〜31の硬質材料からなる摩擦撹拌接合用ツールを製造した。
なお、結合相用原料粉末としてのNiは、Ni粉末(平均粒子径:2.5μm)を用い、分級処理および予備粉砕混合処理は実施しなかった。
Figure 2018070987
表1には、製造に用いた各原料粉末の特徴(各原料粉末の配合量(質量%)、各成分の組成およびWC粒子の平均粒子径(μm))が示されるが、これは製造後の焼結体に対し、上述の方法によりICP発光分光分析法で分析した結果、および上述の方法によりWC粒子の平均粒子径を測定した結果と一致するものであった。
《摩擦撹拌接合用ツールの特性評価》
平面研削盤(「GHL−B409NSH III」、日立ビアメカニクス社製)を用いて、各摩擦撹拌接合用ツールにおける任意の断面を作製し、ダイヤモンドペーストを用いて該断面を鏡面加工した。
次に、上述の方法により元素マッピングを作製し、これに基づいて、円相当径の平均値CAVEおよび標準偏差CSD、結合相間距離の平均値DAVEおよび標準偏差DSDを算出した。なお、画像解析ソフトとして、株式会社マウンテック製の「Mac−View I」を用いた。その結果を表2に示す。
《接合試験》
各摩擦撹拌接合用ツールを用いて、鋼板の点接合(FSJ)試験が実施された。接合条件を以下に示す。
被接合材 :1200MPa 高張力鋼板(厚さ:1.4mm)を2枚重ねる
ツール回転数:1500rpm
押込速度 :0.5mm/秒
押込深さ :1mm
接合荷重 :1.5t
接合時間 :5秒。
作製されるスポット数が2000個となるまで、上記試験を繰り返した。ただし、スポット数が2000個になる前にプローブ部に欠損が発生したものは、その時点で試験を終了した。
2000個のスポット作成後の各摩擦撹拌接合用ツールにおいて、塩酸を用いて凝着物を除去した後、プローブ部の直径をノギスで測定し、プローブ部の直径の変化量(試験前と試験後の直径の差)を求めた。その結果を表2の「プローブ径変化量」の欄に示す。値が小さいほど、摩耗しにくく、耐摩耗性に優れていることを示す。
また、凝着物を除去した後のプローブ部の高さをノギスで測定し、プローブ部の高さの変化量(試験前と試験後の高さの差)を求めた。その結果を表2の「高さ変化量」の欄に示す。値が小さいほど、耐塑性変形性に優れていることを示す。
Figure 2018070987
まず、実施例であるNo.1〜26と、比較例であるNo.27〜31とを比較する。比較例においては、No.29において、1000個のスポット作製が可能であったものの、プローブ径変化量および高さ変化量が大きかった。またNNo.29以外の比較例では、試験の早い段階で、プローブ部の欠損が確認された。
これに対し、実施例においては、2000個のスポット作製が可能であったものが多く、欠損が確認されたものにおいても、少なくとも1400個のスポット作製が可能であった。さらに、実施例においては、プローブ径および高さの変化量が小さかった。このことから、実施例の摩擦撹拌接合用ツールは、比較例の摩擦撹拌接合用ツールと比較して、長寿命を有することが確認された。
次に、No.1〜5を比較する。No.1〜5は、硬質材料の組成は一致するものの、予備混合粉砕における処理時間が異なるために、平均値CAVEおよび標準偏差CSD、ならびに平均値DAVEおよび標準偏差DSDが異なっている。これらの結果から、上記各値が小さくなるほど、長寿命化されていることが分かった。
次に、No.6〜9を比較する。No.6〜9は、平均値CAVEおよび標準偏差CSDの変化に比して、平均値DAVEおよび標準偏差DSDを大きく変化させたものである。これらの結果から、平均値DAVEおよび標準偏差DSDが小さくなるほど、高さの変化量が顕著に小さくなり、また欠損も抑制されることが確認された。このことから、平均値DAVEおよび標準偏差DSDが小さくなるほど、耐欠損性および耐塑性変形性に優れることが確認された。
次に、No.1,10,11,25および26を比較する。これらの実施例の主な相違点は、結合相の配合量(質量%)である。これらの結果から、結合相の配合量が低いほど、試験の早い段階で摩擦撹拌接合用ツールの欠損が確認された。このことから、結合相の配合量(質量%)は、2〜3.2質量%が最も好ましいことが確認された。
次に、No.12,13,23および24を比較する。これらの実施例の主な相違点は、Crの配合量(質量%)である。これらの結果から、結合相がCrを含む場合に、さらなる長寿命化が可能であること、その配合量は0.1〜0.3質量%が好ましいことが確認された。
次に、No.13〜15,21および22を比較する。これらの実施例の主な相違点は、WC粒子の粒径である。これらの結果から、WC粒子の粒径が0.4〜3μmの場合に、特に長寿命を有することが確認された。
次に、No.16〜20を比較する。これらの実施例の主な相違点は、WC粉末以外の硬質相用原料粉末の配合量(質量%)である。これらの結果から、硬質相はWC粒子の他に化合物粒子を含むことが好ましいこと、その配合量は0.1〜3質量%が好ましいことが確認された。
〈検討2〉
検討2においては、摩擦撹拌接合用ツール(ただし、チャック部を有さず、被膜を有するもの)を製造し、各摩擦撹拌接合用ツールの特性を確認した。
《No.32の摩擦撹拌接合用ツールの製造》
No.18の摩擦撹拌接合用ツールを用い、その表面(ショルダー部およびプローブ部)に、PVD法により、Al0.6Ti0.35Si0.05Nからなる被膜(厚さ:3μm)を作製した。この被膜の酸化開始温度は1130℃であり、1100℃以上の耐酸化性を有するものであった。
《No.33の摩擦撹拌接合用ツールの製造》
No.18の摩擦撹拌接合用ツールを用い、その表面(ショルダー部およびプローブ部)に、PVD法により、Ti0.5Al0.5Nからなる被膜(厚さ:3μm)を作製した。この被膜の酸化開始温度は970℃であった。
《接合試験》
各摩擦撹拌接合用ツールを用いて、鋼板の点接合(FSJ)試験が実施された。接合条件を以下に示す。
被接合材 :1200MPa 高張力鋼板(厚さ:1.5mm)を2枚重ねる
ツール回転数:2000rpm
押込速度 :0.5mm/秒
押込深さ :1mm
接合荷重 :1.8t
押付圧力 :468MPa
接合時間 :5秒。
作製されるスポット数が2000個となるまで、上記試験を繰り返した。そして、検討1と同様の方法により、プローブ部の直径の変化量および高さの変化量を求めた。その結果を表3に示す。
Figure 2018070987
表3の結果から、摩擦撹拌接合用ツールに、耐酸化性に優れた被膜を設けることにより、さらなる長寿命化が可能であることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 摩擦撹拌接合用ツール、
2 基材、
3 被膜、
4 プローブ部、
5 円柱部、
6 ショルダー部、
7 チャック部。

Claims (7)

  1. 硬質相と、前記硬質相中に点在する結合相と、を含む硬質材料であって、
    前記硬質相は、WC粒子、または、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWからなる群より選ばれた一種以上の金属と、N、C、BおよびOからなる群より選ばれる一種以上の元素とからなる一種以上の化合物粒子(ただし、WC粒子を除く)とWC粒子と、からなり、
    前記結合相は、Coを含み、
    前記硬質材料における前記結合相の割合は、0.2質量%以上5質量%未満であり、
    前記結合相の円相当径の平均値CAVEは0.1μm以上0.2μm以下であり、かつその標準偏差CSDは0.2μm以下である、硬質材料。
  2. 前記硬質材料における前記化合物粒子の割合は、0.1質量%以上3質量%以下である、請求項1に記載の硬質材料。
  3. 前記結合相はCrを含む、請求項1または請求項2に記載の硬質材料。
  4. 前記WC粒子は、平均粒子径が0.2μm以上3μm以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の硬質材料。
  5. 前記結合相の結合相間距離の平均値DAVEは0.2μm以上0.5μm以下であり、かつその標準偏差DSDは0.2μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の硬質材料。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の硬質材料を含む、摩擦撹拌接合用ツール。
  7. 前記硬質材料からなる基材と、前記基材上に形成された被膜と、を備える、請求項6に記載の摩擦撹拌接合用ツール。
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