JP2018070964A - 脱水素装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得る脱水素装置を提供する。【解決手段】脱水素装置は、脱水素触媒を含むアノードと、プロトンを還元する触媒を含むカソードと、アノード及びカソードの間に配置されたプロトン伝導体と、アノードに非極性の有機ハイドライドのミスト及びガスの少なくともいずれか一方を含むアノードガスを供給する第1の供給器と、アノード及び前記カソードに電圧を印加する電圧印加器と、を備える。【選択図】図1
Description
本開示は脱水素装置に関する。
芳香族化合物の水素化を行い、水素を有機ハイドライド(水素化芳香族化合物)の形で貯蔵及び運搬する技術が知られている。逆に、有機ハイドライドから水素を取り出すための有機ハイドライドの脱水素反応の開発も行われている。例えば、特許文献1では、ペロブスカイト型プロトン伝導体を用い、100℃以上、300℃以下の温度域で有機ハイドライドの脱水素を行う装置が提案されている。
しかし、従来例は、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を高効率に行うことは十分に検討されていない。
本開示の一態様(aspect)は、このような事情に鑑みてなされたものであり、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得る脱水素装置を提供する。
上記課題を解決するため、本開示の一態様の脱水素装置は、脱水素触媒を含むアノードと、プロトンを還元する触媒を含むカソードと、前記アノード及び前記カソードの間に配置されたプロトン伝導体と、前記アノードに非極性の有機ハイドライドのミスト及びガスの少なくともいずれか一方を含むアノードガスを供給する第1の供給器と、前記アノード及び前記カソードに電圧を印加する電圧印加器と、を備える。
本開示の一態様の脱水素装置は、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得るという効果を奏する。
有機ハイドライドの脱水素反応(吸熱反応)では、一般的に、有機ハイドライドを沸点以上に加熱することが多い。例えば、メチルシクロヘキサンの水素脱離に必要なエネルギーは、204.8kJ/molである。また、極性官能基を備えない非極性の有機ハイドライドは、極性官能基を備える有機ハイドライドに比べ電気二重層の形成が容易でないので、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応は起こりにくいことが知られている。このため、非極性の有機ハイドライドを沸点以上に加熱せずに液体のままの有機ハイドライドを脱水素装置のアノードに供給しても、有機ハイドライドの脱水素反応が生じない。
そこで、このような有機ハイドライドの脱水素反応の効率化について鋭意検討が行われ、有機ハイドライドのミスト及びガスの少なくともいずれか一方の状態で脱水素装置のアノードに供給するとともに、アノードとカソードに電圧を印加することにより、有機ハイドライドに電気二重層を適切に形成できるという知見が得られた。
すなわち、本開示の第1の態様の脱水素装置は、このような知見に基づいて案出できたものであり、脱水素触媒を含むアノードと、プロトンを還元する触媒を含むカソードと、アノード及びカソードの間に配置されたプロトン伝導体と、アノードに非極性の有機ハイドライドのミスト及びガスの少なくともいずれか一方(以下、「有機ハイドライドのミスト及び/又はガス」と略す場合がある)を含むアノードガスを供給する第1の供給器と、アノード及びカソードに電圧を印加する電圧印加器と、を備える。
かかる構成によると、本態様の脱水素装置は、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得る。つまり、発明者らは、有機ハイドライドのミスト化及びガス化の少なくともいずれか一方と、アノード及びカソード間の電圧印加とを組み合わせることにより、非極性の有機ハイドライドを沸点以上に加熱しなくても有機ハイドライドの脱水素反応が起こることを見出した。これにより、例えば、室温状態でも有機ハイドライドから水素を適切に脱離させることができるので、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得る。
本開示の第2の態様の脱水素装置は、第1の態様の脱水素装置において、カソードにカソード流体を供給する第2の供給器を備えてもよい。
かかる構成によると、カソードにカソード流体を供給することで、プロトンの還元で得られる水素を、カソード流体とともに外部へ取り出すことができる。
本開示の第3の態様の脱水素装置は、第1の態様又は第2の態様の脱水素装置において、アノードガスは、不活性ガスを含むものであってもよい。
かかる構成によると、例えば、有機ハイドライドを不活性ガスでバブリングすることで、液体の有機ハイドライドをミスト及びガスの少なくともいずれか一方の状態にすることができる。
本開示の第4の態様の脱水素装置は、第1の態様−第3の態様のいずれかの脱水素装置において、アノードガス中の水蒸気濃度は、大気中の水蒸気濃度よりも低くてもよい。また、本開示の第5の態様の脱水素装置は、第4の態様の脱水素装置において、アノードガスは、水蒸気を含まない方がよい。
アノードガスが水蒸気を含む場合、アノードでの水蒸気の電気分解により電力を消費する。すると、有機ハイドライドの脱水素反応の効率が低下する。そこで、本態様の脱水素装置では、アノードガス中の水蒸気濃度を低くすることで、有機ハイドライドの脱水素反応の効率低下を抑制できる。
また、本開示の第6の態様の脱水素装置は、第1の態様−第5の態様のいずれかの脱水素装置において、アノードガスの温度は、有機ハイドライドの沸点未満であってもよい。
かかる構成によると、アノードガスの温度が有機ハイドライドの沸点未満であっても、例えば、有機ハイドライドを不活性ガスでバブリングすることで、液体の有機ハイドライドをミスト及びガスの少なくともいずれか一方の状態にすることができる。
また、本開示の第7の態様の脱水素装置は、第1の態様−第6の態様のいずれかの脱水素装置において、アノードガス中の有機ハイドライドガスの濃度は、1体積%以上、99体積%以下であってもよい。また、本開示の第8の態様の脱水素装置は、第7の態様の脱水素装置において、有機ハイドライドガスの濃度は、1体積%以上、55体積%以下であってもよい。有機ハイドライドガスが、例えば、メチルシクロヘキサン(MCH)を含む場合、MCHの蒸気圧曲線から約80℃程度のMCHの飽和蒸気圧濃度の上限値は、約55体積%程度であると推算される。よって、この場合、有機ハイドライドガスの濃度は、上記のとおり、55体積%以下に設定される。
また、本開示の第9の態様の脱水素装置は、第1の態様−第8の態様のいずれかの脱水素装置において、第1の供給器から供給されるアノードガス中の有機ハイドライドガスの流速は、0.01sccm以上、20sccm以下であってもよい。
また、本開示の第10の態様の脱水素装置は、第1の態様−第9の態様のいずれかの脱水素装置において、プロトン伝導体は、ペロブスカイト型プロトン伝導体を含むものであってもよい。
また、本開示の第11の態様の脱水素装置は、第1の態様−第9の態様のいずれかの脱水素装置において、プロトン伝導体は、高分子電解質膜を含むものであってもよい。
また、本開示の第12の態様の脱水素装置は、第1の態様−第11の態様のいずれかの脱水素装置において、カソード流体を加湿する加湿器を備えてもよい。
プロトン伝導体が、例えば、高分子電解質膜を含む場合、高分子電解質膜は、湿潤状態でプロトン伝導性を示す。よって、この場合、上記の構成により、カソード流体を積極的に加湿することで、高分子電解質膜を適切に湿潤状態に保つことができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。よって、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
(実施形態)
[装置構成]
図1は、実施形態の脱水素装置の一例を示す図である。
[装置構成]
図1は、実施形態の脱水素装置の一例を示す図である。
図1に示す例では、脱水素装置100は、アノード10と、カソード11と、プロトン伝導体12と、アノードガス供給系20と、カソード流体供給系30と、電圧印加器40と、を備える。また、アノードガス供給系20は、第1のタンク21と、第1の供給器22と、を備える。カソード流体供給系30は、第2のタンク31と、第2の供給器32と、を備える。
なお、本実施形態の脱水素装置100では、アノード10、カソード11及びプロトン伝導体12を備える積層体が容器内を区画するように配置されている。そして、容器のアノード10側の領域が、アノードガスが流入するアノード室15を構成し、容器のカソード11側の領域が、カソード流体が流入するカソード室16を構成しているが、これに限定されない。例えば、プロトン伝導体12が、湿潤状態でなくてもプロトン伝導性を示す部材であれば、必ずしもカソード室16にカソード流体を流入させる必要はない。
アノード10は、脱水素触媒を含む電極である。アノード10は、脱水素触媒を含む電極であれば、どのような構成であってもよい。脱水素触媒に、例えば、触媒金属として白金(Pt)が含まれているが、これに限定されない。触媒の担体としては、例えば、カーボン等を挙げることができる。
カソード11は、プロトンを還元する触媒を含む電極である。カソード11は、プロトンを還元する触媒を含む電極であれば、どのような構成であってもよい。プロトンを還元する触媒に、例えば、触媒金属として白金(Pt)及びルテニウム(Ru)が含まれているが、これに限定されない。触媒の担体としては、例えば、カーボン等を挙げることができる。
プロトン伝導体12は、アノード10及びカソード11の間に配置されている。具体的には、アノード10は、プロトン伝導体12の一方の主面に設けられ、カソード11は、プロトン伝導体12の他方の主面に設けられている。
プロトン伝導体12は、プロトン伝導性を備える部材であれば、どのような構成であってもよい。プロトン伝導体12として、例えば、ペロブスカイト型プロトン伝導体、高分子電解質膜等を挙げることができる。前者は、特許文献1に開示されているペロブスカイト型プロトン伝導体等を用いることができる。後者は、Nafion(登録商標、デュポン社製)等を用いることができる。
第1の供給器22は、アノード10に非極性の有機ハイドライドのミスト及び/又はガスを含むアノードガスを供給する。第1の供給器22は、アノード10に、上記のアノードガスを供給できれば、どのような構成であってもよい。非極性の有機ハイドライド(水素化芳香族化合物)とは、極性官能基を備えない有機ハイドライドをいう。
有機ハイドライド(水素化芳香族化合物)は、芳香族化合物に水素が結合することによって、水素を貯蔵した状態にある化合物である。「有機ハイドライド(水素化芳香族化合物)」とは、芳香族化合物の全ての炭素―炭素二重結合に水素が付加された化合物であり、分子内に炭素−炭素不飽和結合を含まない。また、芳香族化合物は単環芳香族化合物のベンゼン及びベンゼンに官能基がついたトルエン、O―キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等で、多環芳香族化合物はナフタレン、アントラセン、ビフェニル、テルフェニル等を含む。
有機ハイドライド(水素化芳香族化合物)として用いことができる化合物は、メチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン等で、多環芳香族化合物は常温で液体となるビシクロヘキシル、水素化テルフェニル等である。また、水素が結合した化合物及び水素が脱離した化合物が、融点、沸点、燃焼性等の観点で、ガソリン等の石油類に属する化合物として取り扱いが可能であることが望ましい。
以上の観点からは、有機ハイドライド(水素化芳香族化合物)は、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ビシクロヘキシルであってもよい。メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ビシクロヘキシルから水素が完全に脱離した化合物は、トルエン、キシレン、ビフェニルである。
ここで、アノードガスの温度は、有機ハイドライドの沸点未満であるので、液体の有機ハイドライドをミスト及びガスの少なくともいずれか一方の状態にする必要がある。そこで、本実施形態の脱水素装置100では、液体の有機ハイドライドをミスト及びガスの少なくともいずれか一方の状態にするのに、バブリング方式を用いている。
具体的には、第1のタンク21は、液体の有機ハイドライドを収容するバブリングタンク21である。第1の供給器22は、バブリングタンク21内の有機ハイドライドにバブリング方式のキャリアガスを供給する際のキャリアガスの流量を調整する機器である。第1の供給器22として、例えば、マスフローコントローラ、流量調整弁等を挙げることができる。
ここでは、バブリング方式のキャリアガスとして不活性ガスを用いている。これにより、アノードガスは不活性ガスを含む。また、アノードガス中には、所定濃度の有機ハイドライドのミスト及び/又はガスが含まれている。なお、不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の希ガスを挙げることができる。
アノードガス中の水蒸気濃度は、大気中の水蒸気濃度よりも低い。例えば、アノードガスは、水蒸気を含まない方がよい。アノードガスが水蒸気を含む場合、アノード10での水蒸気の電気分解により電力を消費する。すると、有機ハイドライドの脱水素反応の効率が低下する。そこで、本実施形態の脱水素装置100では、アノードガス中の水蒸気濃度を低くすることで、有機ハイドライドの脱水素反応の効率低下を抑制できる。
また、アノードガス中の有機ハイドライドガスの濃度は、例えば、1体積%以上、99体積%以下である。例えば、アノードガス中の有機ハイドライドガスの濃度は、1体積%以上、55体積%以下であってもよい。有機ハイドライドガスが、例えば、メチルシクロヘキサン(MCH)を含む場合、MCHの蒸気圧曲線から約80℃程度のMCHの飽和蒸気圧濃度の上限値は、約55体積%程度であると推算される。よって、この場合、有機ハイドライドガスの濃度は、上記のとおり、55体積%以下に設定される。
また、バブリングタンク21から供給されるアノードガス中の有機ハイドライドガスの流速は、例えば、0.01sccm以上、20sccm以下である。
なお、以上のアノードガス中の有機ハイドライドガスの濃度及び流速等は例示であって、本例に限定されない。
図1に示すように、図示しない不活性ガス源(例えば、不活性ガスボンベ等)からバブリングタンク21の上壁部を気密に貫通し、液体の有機ハイドライド中にまで延伸する不活性ガス供給配管上に、上記の第1の供給器22が設けられている。また、上記のアノードガスが流れるアノードガス供給配管が、バブリングタンク21の上部空間の適所からバブリングタンク21の上壁部を気密に貫通し、アノード10が収容されたアノード室15の入口にまで延伸している。更に、アノード室15の出口から延伸するアノードオフガス排出配管を通じて、アノードオフガスが脱水素装置100から外部へ排出されている。なお、アノードオフガスは、有機ハイドライドの脱水素反応で生じる生成物を含む。
このようにして、本実施形態の脱水素装置100では、有機ハイドライドを不活性ガスでバブリングすることで、アノードガスが、有機ハイドライドのミスト及び/又はガスを含有した後、バブリングタンク21から供給されるアノードガスがアノード室15を通過するとき、アノードガスがアノード10に接触する。すると、アノードガス中の有機ハイドライドのミスト及び/又はガスがアノード10に供給される。
第2の供給器32は、カソード11にカソード流体を供給する。第2の供給器32は、カソード11に、カソード流体を供給できれば、どのような構成であってもよい。例えば、プロトン伝導体12として、高分子電解質膜を用いる場合、この高分子電解質膜は、湿潤状態でプロトン伝導性を示す。よって、この場合、脱水素装置100は、カソード流体を加湿する加湿器を備える。かかる加湿器はカソード流体を加湿できれば、どのような構成であってもよい。
そこで、本実施形態の脱水素装置100では、カソード流体を加湿するのにバブリング方式を用いている。
具体的には、第2のタンク31は、液体の水を収容するバブリングタンク31であり、このバブリングタンク31がカソード流体を加湿する加湿器として機能する。第2の供給器32は、バブリングタンク31内の水にバブリング方式のキャリアガスを供給する際のキャリアガスの流量を調整する機器である。第2の供給器32として、例えば、マスフローコントローラ、流量調整弁等を挙げることができる。
ここでは、バブリング方式のキャリアガスとして不活性ガスを用いている。これにより、カソード流体は不活性ガスを含む。また、カソード流体中には、所定量の水蒸気が含まれている。なお、不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の希ガスを挙げることができる。
図1に示すように、図示しない不活性ガス源(例えば、不活性ガスボンベ等)からバブリングタンク31の上壁部を気密に貫通し、水中にまで延伸する不活性ガス供給配管上に、上記の第2の供給器32が設けられている。また、上記のカソード流体が流れるカソード流体供給配管が、バブリングタンク31の上部空間の適所からバブリングタンク31の上壁部を気密に貫通し、カソード11が収容されたカソード室16の入口にまで延伸している。更に、カソード室16の出口から延伸するカソード流体排出配管を通じて、カソード流体が脱水素装置100から外部へ排出されている。なお、カソード室16の出口から排出されるカソード流体は、有機ハイドライドの脱水素反応で得られる水素ガスを含む。
このようにして、本実施形態の脱水素装置100では、水を不活性ガスでバブリングすることで、カソード流体が加湿された後、バブリングタンク31から供給されるカソード流体が、カソード室16を通過するとき、カソード流体がカソード11に接触する。すると、カソード流体中の水蒸気がカソード11からプロトン伝導体12に供給される。
電圧印加器40は、アノード10及びカソード11に電圧を印加する。具体的には、電圧印加器40の高電位側端子が、アノード10に接続され、電圧印加器40の低電位側端子が、カソード11に接続されている。電圧印加器40は、アノード10及びカソード11の間に所望の電圧を印加できれば、どのような構成であってもよい。アノード10及びカソード11の間に印加される電圧の具体例は実施例で説明する。
(実施例)
[実験装置]
本実施例の脱水素装置100では、バブリング方式のキャリアガスとして不活性ガスの一例であるアルゴンガスを用いた。また、第1の供給器22及び第2の供給器32として、マスフローコントローラを用いた。更に、非極性の有機ハイドライドとして、和光純薬工業株式会社製のメチルシクロヘキサン(MCH)を用いた。
[実験装置]
本実施例の脱水素装置100では、バブリング方式のキャリアガスとして不活性ガスの一例であるアルゴンガスを用いた。また、第1の供給器22及び第2の供給器32として、マスフローコントローラを用いた。更に、非極性の有機ハイドライドとして、和光純薬工業株式会社製のメチルシクロヘキサン(MCH)を用いた。
評価セルには、CHEMIX社製のセルが用いられ、その仕様は以下の通りである。
・プロトン伝導体12:電極面積が20mm角であるNafionNR−212(厚みが約50μm)
・アノード10:0.5mg/cm250wt%のカーボン担持のPt電極
・カソード11:3.0mg/cm254wt%のカーボン担持のPt−Ru(1:1.5)電極
また、脱水素装置100の環境温度を室温に保ち、アノードガス供給系20及びカソード流体供給系30におけるアルゴンガスの流速を200sccmに設定した。このとき、アノードガス中のMCHの濃度を約5%程度に調整したので、メチルシクロヘキサンガスの流速は約10sccm程度であった。
・プロトン伝導体12:電極面積が20mm角であるNafionNR−212(厚みが約50μm)
・アノード10:0.5mg/cm250wt%のカーボン担持のPt電極
・カソード11:3.0mg/cm254wt%のカーボン担持のPt−Ru(1:1.5)電極
また、脱水素装置100の環境温度を室温に保ち、アノードガス供給系20及びカソード流体供給系30におけるアルゴンガスの流速を200sccmに設定した。このとき、アノードガス中のMCHの濃度を約5%程度に調整したので、メチルシクロヘキサンガスの流速は約10sccm程度であった。
更に、電圧印加器40により、時間の経過とともに一定の比率(ここでは、約0.1V)で階段状に上昇する電圧E(V)を、評価セルに印加した(図3の上段図を参照)。
また、カソード流体排出配管には、図示しない適宜の質量分析計(例えば、キャノンアネルバ株式会社製の四重極型質量分析計(Q−mass))を設けた。
なお、本実験の測定システムは、プリンストン・アプライド・リサーチ社のポテンショ/ガルバノスタット(Versa STAT4)を用い、測定プログラムは、Versa Studioを用いた。
[実験方法及び実験結果]
図2は、実施形態の実施例の脱水素装置で行われたMCHの脱水素反応の説明に用いる図である。図3は、実施形態の実施例の脱水素装置で行われた実験結果の一例を示す図である。
図2は、実施形態の実施例の脱水素装置で行われたMCHの脱水素反応の説明に用いる図である。図3は、実施形態の実施例の脱水素装置で行われた実験結果の一例を示す図である。
なお、以下の脱水素装置100の実験方法(動作)は、図示しない制御器の制御プログラムにより行われても構わない。ただし、以下の動作を制御器で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部又は全部の動作を行っても構わない。また、制御器は、制御機能を有するものであれば、どのような構成であっても構わない。制御器は、例えば、演算回路と、制御プログラムを記憶する記憶回路と、を備える。演算回路として、例えば、MPU、CPU等が例示される。記憶回路として、例えば、メモリが例示される。制御器は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
まず、バブリングタンク21からアノードガス供給配管を通じて、アノードガスをアノード室15に供給するとともに、バブリングタンク31からカソード流体供給配管を通じて、カソード流体をカソード室16に供給する。
このとき、電圧印加器40により、評価セルのアノード10とカソード11の間に、階段状のランプ電圧E(V)が印加される(図3の上段図を参照)。
すると、ランプ電圧E(V)が上昇するタイミングで、アノードガス中のMCHに電気二重層が形成される。つまり、ランプ電圧E(V)による電場に従って、MCH内の荷電粒子(電子とプロトン)が移動する結果、カソード11及びアノード10のそれぞれに正負の荷電粒子が対を形成し層状に並ぶ。なお、この電気二重層の形成は、ランプ電圧E(V)の上昇タイミングとほぼ同時に生じる電流I(A)の急上昇(図3の中段図を参照)により確認することができる。
上記の電気二重層がMCHに形成されることで、MCHから水素が脱離する脱水素反応が起こる。
具体的には、図2に示すように、アノード10では、アノードガス中のMCH(C7H14)が、例えば、6個の電子及びプロトン(H+)を遊離してトルエン(C7H8)となる(式(1))。つまり、アノードオフガスは、脱水素反応に利用されなかったMCH(C7H14)の他、MCH(C7H14)の脱水素反応で生じるトルエン(C7H8)を含み、本トルエン(C7H8)は水素化を行うことで再利用できる。
遊離した電子は、電圧印加器40を介してカソード11へと移動する。プロトンは、図2に示す如く、プロトン伝導体12からカソード11に移動する。
カソード11では、プロトンと電子とによる還元反応が行われ、水素ガスが生成される(式(2))。つまり、全反応式は、以下の式(3)で表される。
C7H14→C7H8+6H++6e− ・・・(1)
2H++2e−→H2 ・・・(2)
C7H14→C7H8+3H2 ・・・(3)
なお、カソード室16のカソード11にカソード流体を供給することで、プロトン伝導体12(高分子電解質膜)を湿潤状態に保つことができるとともに、プロトンの還元で得られる水素を、カソード流体排出配管を通じてカソード流体とともに外部へ取り出すことができる。
2H++2e−→H2 ・・・(2)
C7H14→C7H8+3H2 ・・・(3)
なお、カソード室16のカソード11にカソード流体を供給することで、プロトン伝導体12(高分子電解質膜)を湿潤状態に保つことができるとともに、プロトンの還元で得られる水素を、カソード流体排出配管を通じてカソード流体とともに外部へ取り出すことができる。
そして、カソード流体排出配管に設けられた四重極型質量分析計により、MCHの脱水素反応で得られるカソード流体中の水素の同定と、この水素に対応する電流IH2(nA)の測定(図3の下段図を参照)と、が行われた。具体的には、図3の下段図の丸印で示された電流IH2(nA)のピークの存在により、本実験のMCHの脱水素反応でMCHから水素が脱離したことを確認できた。なお、電流I(A)の急上昇タイミングと、電流IH2(nA)のピークのタイミングとが時間的にずれているのは、カソード室16から四重極型質量分析計に水素が移動するのに必要なタイムラグのためであると考えられる。
以上のとおり、本実施形態の脱水素装置100は、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得る。つまり、発明者らは、有機ハイドライドのミスト化及び/又はガス化と、アノード10及びカソード11間の電圧印加とを組み合わせることにより、非極性の有機ハイドライドを沸点以上に加熱しなくても有機ハイドライドの脱水素反応が起こることを見出した。これにより、例えば、室温状態でも有機ハイドライドから水素を適切に脱離させることができるので、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得る。
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良及び他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本開示の一態様は、非極性の有機ハイドライドの脱水素反応を従来よりも効率的に行い得る脱水素装置に利用できる。
10 :アノード
11 :カソード
12 :プロトン伝導体
15 :アノード室
16 :カソード室
20 :アノードガス供給系
21 :第1のタンク(バブリングタンク)
22 :第1の供給器
30 :カソード流体供給系
31 :第2のタンク(バブリングタンク)
32 :第2の供給器
40 :電圧印加器
100 :脱水素装置
11 :カソード
12 :プロトン伝導体
15 :アノード室
16 :カソード室
20 :アノードガス供給系
21 :第1のタンク(バブリングタンク)
22 :第1の供給器
30 :カソード流体供給系
31 :第2のタンク(バブリングタンク)
32 :第2の供給器
40 :電圧印加器
100 :脱水素装置
Claims (12)
- 脱水素触媒を含むアノードと、
プロトンを還元する触媒を含むカソードと、
前記アノード及び前記カソードの間に配置されたプロトン伝導体と、
前記アノードに非極性の有機ハイドライドのミスト及びガスの少なくともいずれか一方を含むアノードガスを供給する第1の供給器と、
前記アノード及び前記カソードに電圧を印加する電圧印加器と、を備える、脱水素装置。 - 前記カソードにカソード流体を供給する第2の供給器を備える、請求項1記載の脱水素装置。
- 前記アノードガスは、不活性ガスを含む、請求項1又は2記載の脱水素装置。
- 前記アノードガス中の水蒸気濃度は、大気中の水蒸気濃度よりも低い、請求項1−3のいずれか1項に記載の脱水素装置。
- 前記アノードガスは、水蒸気を含まない、請求項4記載の脱水素装置。
- 前記アノードガスの温度は、前記有機ハイドライドの沸点未満である、請求項1−5のいずれか1項に記載の脱水素装置。
- 前記アノードガス中の有機ハイドライドガスの濃度は、1体積%以上、99体積%以下である、請求項1−6のいずれか1項に記載の脱水素装置。
- 前記有機ハイドライドガスの濃度は、1体積%以上、55体積%以下である、請求項7記載の脱水素装置。
- 前記第1の供給器から供給される前記アノードガス中の有機ハイドライドガスの流速は、0.01sccm以上、20sccm以下である、請求項1−8のいずれか1項に記載の脱水素装置。
- 前記プロトン伝導体は、ペロブスカイト型プロトン伝導体を含む、請求項1−9のいずれか1項に記載の脱水素装置。
- 前記プロトン伝導体は、高分子電解質膜を含む、請求項1−9のいずれか1項に記載の脱水素装置。
- 前記カソード流体を加湿する加湿器を備える、請求項1−11のいずれか1項に記載の脱水素装置。
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JP2016213514A JP2018070964A (ja) | 2016-10-31 | 2016-10-31 | 脱水素装置 |
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JP2016213514A JP2018070964A (ja) | 2016-10-31 | 2016-10-31 | 脱水素装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020070484A (ja) * | 2018-11-02 | 2020-05-07 | 千代田化工建設株式会社 | 脱水素反応装置及び脱水素反応方法 |
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-
2016
- 2016-10-31 JP JP2016213514A patent/JP2018070964A/ja active Pending
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JP7198048B2 (ja) | 2018-11-02 | 2022-12-28 | 千代田化工建設株式会社 | 脱水素反応方法 |
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