以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一または同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
図1は、本実施形態に係る電極製造装置により製造される電極の一例を示す図である。図1に示されるように、電極50は、金属箔51と、金属箔51上に設けられた活物質層52と、を有している。電極50は、例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる正極又は負極である。電極50が正極である場合には、金属箔51は例えばアルミニウム箔であり、活物質層52は正極活物質層である。正極活物質層は、例えば、金属箔51に正極用の電極ペーストが塗工されて形成される。この電極ペーストは、正極活物質、バインダ、及び溶剤等を含んでいる。活物質層52の主たる構造は、活物質の多数の粒子が、バインダにより粒子同士及び金属箔51に固定された多孔質層である。
正極活物質は、例えば、複合酸化物、又は硫黄系材料等である。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。バインダは、例えば、熱可塑性樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及びフッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、又はポリエチレン等)、イミド系樹脂(ポリイミド、又はポリアミドイミド等)、又はアルコキシシリル基含有樹脂である。溶剤は、例えば、有機溶剤(NMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、又はメチルイソブチルケトン等)、又は水である。電極ペーストは、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、又はケッチェンブラック(登録商標)等の導電助剤を含んでいてもよい。電極ペーストは、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を含んでいてもよい。
電極50が負極である場合には、金属箔51は例えば銅箔であり、活物質層52は負極活物質層である。負極活物質層は、例えば、金属箔51に負極用の電極ペーストが塗工されて形成される。この電極ペーストは、負極活物質、バインダ、及び溶剤等を含んでいる。負極活物質は、例えば、カーボン(黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、又はソフトカーボン等)、アルカリ金属(リチウム、又はナトリウム等)、金属化合物、シリコン系材料(Si、又はSiOx等)、スズ系材料(Sn、又はSnOx等)、又はホウ素添加炭素等である。バインダ及び溶剤は、例えば、上述した正極と同様のものが用いられる。負極活物質層にも、上述した正極と同様に導電助剤及び増粘剤が含まれていてもよい。
電極50は、金属箔51が活物質層52から露出した未塗工領域53と、金属箔51上に活物質層52が設けられた塗工領域54と、を含んでいる。塗工領域54においては、例えば、金属箔51の両面に活物質層52が設けられ、金属箔51が活物質層52に覆われている。未塗工領域53には、電極50の電気的な接続に用いられるタブ55が突設されている。
図2は、図1に示される電極の元となる電極材料を示す図である。図2に示される電極材料10を切断することにより、図1に示される電極50が得られる。図2に示されるように、電極材料10は、帯状(長尺状)を呈している。電極材料10は、金属箔11と、金属箔11上に設けられた活物質層12と、を有している。金属箔11は、金属箔51(図1参照)に対応し、金属箔51と同じ材料からなる。活物質層12は、活物質層52(図1参照)に対応し、活物質層52と同じ材料からなる。電極材料10は、一例として、2つの未塗工領域13と、1つの塗工領域14と、を含む。
未塗工領域13は、金属箔11が活物質層12から露出した領域である。塗工領域14は、金属箔11上に活物質層12が設けられ、金属箔11が活物質層12に覆われた領域である。未塗工領域13及び塗工領域14は、電極材料10の長手方向(以下、単に「長手方向」ともいう)に沿って延びる帯状を呈している。未塗工領域13は、電極材料10の短手方向(以下、単に「短手方向」ともいう)の両端部をなす領域である。つまり、未塗工領域13は、短手方向に沿って互いに離間するように配列されている。塗工領域14は、短手方向の中央部をなす領域である。塗工領域14は、未塗工領域13の間に配置されている。
未塗工領域13は、電極50の未塗工領域53(図1参照)が切り出される領域である。塗工領域14は、電極50の塗工領域54(図1参照)が切り出される領域である。ここでは、各未塗工領域13は、1つの電極50の未塗工領域53を含んでいる。塗工領域14は、短手方向に沿って配列された2つの電極50の塗工領域54を含んでいる。したがって、電極材料10は、短手方向に沿って配列された2つの電極50を含む。
電極50は、上述の電極材料10を、電極材料10に設定された切断線Lにおいて切断することにより製造される。切断線Lは、例えば仮想的な線であって、電極50の形状(平面視における電極50の外形)と一致する。切断線Lは、未塗工領域13において設定された第1切断線L1と、塗工領域14において設定された第2切断線L2と、を有している。
図3は、本実施形態に係る電極製造装置の模式的な側面図である。図3に示される電極製造装置1は、電極材料10を搬送すると共に切断して電極50(図1参照)を製造する装置である。ここでは、電極材料10は、長手方向に沿って搬送されるので、電極材料10の搬送方向(以下、単に「搬送方向」ともいう)は、長手方向に対応している。
電極製造装置1は、供給ロール2と、一対のニップロール3と、アキューム機構4と、一対の板部材5,6と、駆動部7と、レーザ照射部8と、吸着部9と、制御部Cと、を備えている。供給ロール2は、回転により電極材料10を連続的に繰り出す。一対のニップロール3は、供給ロール2から繰り出された電極材料10を挟み込んだ状態で挟持する。
アキューム機構4は、供給ロール2とニップロール3との間に配置されている。ここでは、アキューム機構4は、3つのローラ4a〜4cを含んでいる。電極材料10は、ローラ4a〜4cに順に架け渡されている。アキューム機構4は、供給ロール2から連続的に電極材料10が繰り出されている状態において、ローラ4bを上下に移動させることにより、ローラ4aからローラ4cに至る電極材料10の経路長を変更する。これにより、アキューム機構4は、電極材料10をローラ4cから間欠的に搬出する。後述するように、電極材料10は板部材5により間欠的に搬送される。アキューム機構4は、例えば制御部Cによる制御のもと、電極材料10を板部材5が搬送するタイミングと同期させて、電極材料10をローラ4cから搬出する。
図4は、図3に示される板部材の平面図である。図3及び図4に示されように、板部材5は、電極材料10の搬送面Fの一方側に配置されている。板部材6は、搬送面Fの他方側に配置されている。搬送面Fは、電極材料10の表面及び裏面に沿うと共に搬送方向に沿って延びる仮想的な面である。板部材5,6は、電極材料10の厚さ方向において電極材料10を挟持すると共に、電極材料10を搬送面Fに沿って搬送するための部材である。板部材5,6は、平面視で矩形状を呈し、所定の厚さを有している。板部材5,6の厚さは、電極材料10を挟持した際に、電極材料10の変形を是正できる程度の厚さに設定されている。板部材5,6は、例えばSUS等の金属材料からなる。板部材5,6の形状は、後述する吸着孔Hの設けられる数及び位置の点で相違するものの、それ以外の点で同等である。
板部材5,6は、それぞれ搬送方向の上流側から下流側に向けて順に配列された第1領域R1及び第2領域R2を有している。搬送方向における第1領域R1及び第2領域R2のそれぞれの長さは、搬送方向における電極50(図1参照)の長さに対応している。短手方向における第1領域R1及び第2領域R2の長さは、短手方向における電極材料10の長さに対応している。
板部材5,6には、電極50の形状(平面視における電極50の外形)に対応した形状のスリットSが設けられている。スリットSは、第1領域R1に設けられ、電極50の形状の一部分に対応した形状の第1スリットS1と、第2領域R2に設けられ、電極50の形状の他の一部分に対応した形状の第2スリットS2と、を有している。図2及び図4に示されるように、具体的には、第1スリットS1は、電極材料10のうち未塗工領域13に対応している。第1スリットS1は、搬送面Fに交差(直交)する方向(以下、単に「交差方向」ともいう)から見て第1切断線L1と重複したときに、第1切断線L1の全体が第1スリットS1から露出するように形成されている。第2スリットS2は、電極材料10のうち塗工領域14に対応している。第2スリットS2は、交差方向から見て第2切断線L2と重複したときに、第2切断線L2のうち、搬送方向の下流側の端部をなす線L2a以外の線が第2スリットS2から露出するように形成されている。線L2aは、短手方向に沿って延在している。
第1スリットS1及び第2スリットS2は、互いに接続されている。また、第1スリットS1及び第2スリットS2は、いずれも板部材5,6の外縁に達しておらず、閉曲線を形成していない。このため、板部材5,6は、それぞれ第1スリットS1及び第2スリットS2よって分離されておらず、一部材で構成されている。
図5は、図4(a)のV-V線に沿っての断面図である。図4及び図5に示されるように、板部材5は、搬送面F(図3参照)と対向する対向面5aと、対向面5aの反対側の反対面5bと、を有している。板部材5には、対向面5aに開口する断面円形状の複数の吸着孔Hと、反対面5bに開口する単一の負圧導入孔5cと、が設けられている。複数の吸着孔Hのそれぞれは、例えば、板部材5の内部において、負圧導入孔5cに連通している。複数の吸着孔Hは、板部材5の第1領域R1及び第2領域R2の両方に設けられている。
板部材6は、搬送面Fと対向する対向面6aと、対向面6aの反対側の反対面(不図示)と、を有している。板部材6には、対向面6aに開口する断面円形状の複数の吸着孔Hと、反対面6bに開口する単一の負圧導入孔(不図示)と、が設けられている。複数の吸着孔Hのそれぞれは、例えば、板部材6の内部において、負圧導入孔に連通している。複数の吸着孔Hは、板部材6において、第1領域R1のみに設けられている。
板部材5の第1領域R1上には、1つの吸着用の空間A1が形成される。空間A1は、板部材5の第1領域R1における複数の吸着孔Hにより画定される空間である。板部材5の第2領域R2上には、第2スリットS2を挟んで短手方向に並ぶ2つの吸着用の空間A2が形成される。空間A2は、板部材5の第2領域R2における複数の吸着孔Hにより画定される空間である。板部材6の第1領域R1上には、1つの吸着用の空間A1が形成される。空間A1は、板部材6の第1領域R1における複数の吸着孔Hにより画定される空間である。
図3に示される駆動部7は、板部材5,6を駆動するための装置である。駆動部7は、例えばモータである。
レーザ照射部8は、レーザ光LBの照射により電極材料10を切断するための装置である。レーザ照射部8は、板部材5,6により挟持された状態の電極材料10に対してスリットSを介してレーザ光LBを照射する。レーザ照射部8は、互いに独立してレーザ光LBの照射が可能な第1照射部8a及び第2照射部8bを有している。第1照射部8a及び第2照射部8bは、電極材料10の搬送方向の上流側から下流側に向けて順に配置されている。
第1照射部8aは、例えば、電極材料10に対して第1スリットS1を介してパルスレーザ光であるレーザ光LBを照射する。第2照射部8bは、例えば、電極材料10に対して第2スリットS2を介してCWレーザ光であるレーザ光LBを照射する。この場合、未塗工領域13(図2参照)に対してパルスレーザ光が照射され、塗工領域14(図2参照)に対してCWレーザ光が照射される。
吸着部9は、電極材料10及び電極50(図1参照)を、板部材5,6に吸着させるための装置である。吸着部9は、例えば負圧源(負圧ポンプ)及び切替弁である。吸着部9は、負圧導入孔5cを介して板部材5の吸着孔Hに対する負圧の供給又は遮断を行うと共に、板部材6の負圧導入孔を介して板部材6の吸着孔Hに対する負圧の供給又は遮断を行う。これにより、吸着部9は、吸着孔Hを介して電極材料10及び電極50を吸着する。本実施形態では、吸着部9は、電極材料10及び電極50を板部材5に吸着すると共に、電極材料10を板部材6に吸着する。
制御部Cは、少なくとも駆動部7、レーザ照射部8、及び吸着部9を制御するための装置である。制御部Cは、少なくとも駆動部7、レーザ照射部8、及び吸着部9と電気的に接続されている。制御部Cは、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、通信を行うための通信モジュール、並びにハードディスク等の補助記憶装置等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。これらの構成要素がプログラム等により動作することで、制御部Cとしての機能(例えば後述の各処理)が実現される。
図3〜図8を参照して、制御部Cによる駆動部7、レーザ照射部8、及び吸着部9の制御について説明する。図6〜図8は、制御部による制御について説明するための図である。
まず、特に図3に示されるように、制御部Cは、駆動部7を制御して一対の板部材5,6を駆動することにより、スリットSを互いに一致させると共に、一対の板部材5,6により電極材料10を挟持する第1処理を実行する。ここで、スリットSを互いに一致させるとは、交差方向から見て、スリットSの全体を互いに重ねるという意味である。制御部Cは、第1処理において、板部材5,6の第1領域R1同士、及び第2領域R2同士を互いに対向させる。
続いて、制御部Cは、レーザ照射部8を制御することにより、一対の板部材5,6により挟持された状態の電極材料10に対してスリットSを介してレーザ光LBを照射する第2処理を実行する。具体的には、制御部Cは、第2処理において、第1照射部8aを制御することにより電極材料10に対して第1スリットS1を介してレーザ光LBを照射すると共に、第2照射部8bを制御することにより電極材料10に対して第2スリットS2を介してレーザ光LBを照射する。これにより、電極材料10が図2に示されるような切断線Lにおいて切断される。具体的には、未塗工領域13が第1切断線L1において切断されると共に、塗工領域14が第2切断線L2において切断される。
後述するように、電極材料10は、レーザカットが行われるたびに、搬送方向における電極50(図1参照)の長さ分ずつ搬送される。つまり、電極材料10のうち、板部材5,6の第1領域R1間に配置された部分は、第1切断線L1において切断された後、搬送されて、板部材5,6の第2領域R2間に配置される。したがって、電極材料10のうち、板部材5,6の第2領域R2間に配置された部分は、第1切断線L1において切断済みである。このように第1切断線L1において切断済みの部分が、板部材5,6の第2領域R2間でさらに第2切断線L2において切断される。これにより、第2領域R2間において、電極材料10から電極50と端材60(図9参照)とが得られる。レーザカットを連続して行うことにより、電極材料10から連続して複数の電極50が形成される。第2切断線L2のうち線L2aは、直前に形成された電極50の第2切断線L2の一部として切断される。
続いて、制御部Cは、吸着部9を制御することにより、板部材5に電極材料10及び電極50を吸着する第3処理を実行する。具体的には、板部材5の第1領域R1には、電極材料10のうち、第1切断線L1において切断済みの部分が吸着される。板部材5の第2領域R2には、第2領域R2間で得られた電極50が吸着される。なお、第3処理は、第2処理が終了した後に行ってもよいが、第1処理又は第2処理と並行して実施してもよい。第3処理を第1処理又は第2処理と並行して実施することにより、第2処理終了後、直ぐに次の処理を実施できるので、サイクルタイムの短縮が可能となる。
続いて、特に図6に示されるように、制御部Cは、駆動部7を制御して板部材6を板部材5から離れる方向に駆動することによって、板部材6を電極材料10及び電極50(図1参照)から離間させる第6処理を実行する。このとき、板部材6は、交差方向に沿って駆動される。電極材料10及び電極50は、板部材5に吸着されて支持されているため、第6処理によって、電極材料10及び電極50の位置は変化しない。制御部Cは、後述する第4処理において電極材料10及び電極50を搬送面Fに沿って搬送する前に、第6処理を実行する。
続いて、特に図7に示されるように、制御部Cは、駆動部7を制御して電極材料10及び電極50を吸着した状態の板部材5を駆動することにより、板部材5と共に電極材料10及び電極50(図1参照)を搬送面Fに沿って搬送する第4処理を実行する。制御部Cは、第4処理において、板部材5の第1領域R1が板部材6の第2領域R2と対向するように板部材5を駆動する。これにより、電極材料10は、搬送方向における電極50に対応する長さ分ずつ搬送される。
続いて、特に図8に示されるように、制御部Cは、駆動部7を制御して板部材6を板部材5に近づく方向に駆動することによって、板部材6を電極材料10に接触させる処理を実行する。このとき、板部材6は、交差方向に沿って駆動される。具体的には、板部材6の第1領域R1は、電極材料10のうち、未切断の部分と接触する。板部材6の第2領域R2は、電極材料10のうち、第1切断線L1において切断済みの部分と接触する。
続いて、制御部Cは、吸着部9を制御することによって板部材6に電極材料10を吸着する第7処理を実行する。具体的には、板部材6のうち、吸着孔Hが設けられた第1領域R1に電極材料10が吸着される。制御部Cは、上述の第4処理と、後述する第5処理との間において、第7処理を実行する。
続いて、制御部Cは、吸着部9を制御することにより、板部材5への電極材料10及び電極50の吸着を解除する第5処理を実行する。これにより、電極50は重力にしたがって落下する。落下した電極50は、例えば下方に配置された搬送コンベア20により後工程へと供給される。搬送コンベア20は、電極50の落下距離が例えば5mm以下となるように、配置されている。電極材料10は、板部材6によって吸着されて支持されているため、電極材料10の位置は変化しない。
制御部Cは、第5処理の後に、第1処理を実行する。これにより、再び、スリットS同士が一致した状態において板部材5と板部材6とによって電極材料10が挟持された状態となる。そして、制御部Cが第1処理以降の処理を繰り返して実行することにより、電極材料10が板部材5によって間欠的に搬送されると共に、電極材料10がレーザ照射部8によってレーザカットされて、電極50が順次製造される。
なお、第1処理と第6処理との間において、電極材料10が板部材6に吸着されている場合、制御部Cは、吸着部9を制御することにより、板部材6への電極材料10の吸着を解除する処理を実行する。電極材料10は、板部材5,6により挟持されているため、電極材料10の位置は変化しない。
以上のように、制御部Cは、駆動部7を制御して板部材5をボックスモーションで駆動する。すなわち、まず、板部材5は、板部材5,6の第1領域R1同士、及び第2領域R2同士が互いに対向する状態から、板部材5の第1領域R1が板部材6の第2領域R2と対向するまで、搬送面Fに沿って搬送方向の下流に向けて駆動される。続いて、板部材5は、交差方向に沿って駆動され、電極材料10から離間する。続いて、板部材5は、板部材5,6の第1領域R1同士、及び第2領域R2同士が互いに対向するまで、搬送面Fに沿って搬送方向の上流に向けて駆動される。続いて、板部材5は、電極材料10に接触するまで、交差方向に沿って駆動される。これにより、電極材料10が板部材5,6により挟持される。
図9は、端材について説明するための図である。図9(a)に示されるように、切断線Lが電極材料10の短手方向の両端に達していない場合、即ち、電極材料10の短手方向の長さが、切断線Lにより画定される領域の短手方向の長さよりも長い場合、電極材料10の短手方向の両端部のそれぞれから連続した端材60が生じる。図9(b)に示されるように、切断線Lが電極材料10の短手方向の両端に達している場合、即ち、電極材料10の短手方向の長さが、切断線Lにより画定される領域の短手方向の長さと等しい場合、電極材料10の短手方向の両端部のそれぞれから、複数の個片の端材60が得られる。
以上説明したように、電極製造装置1においては、一対の板部材5,6に対して、製造する電極50の形状に対応したスリットSが形成されている。また、板部材5の対向面5a及び板部材6の対向面6aには、吸着孔Hが形成されている。これらの板部材5,6は、制御部Cの制御のもとで、駆動部7によって駆動される。すなわち、制御部Cは、駆動部7を制御して一対の板部材5,6を駆動することにより、一対の板部材5,6のスリットSを互いに一致させると共に一対の板部材5,6により電極材料10を挟持する(第1処理)。そして、制御部Cは、そのように一対の板部材5,6により電極材料10を挟持した状態において、レーザ照射部8を制御することにより、電極材料10に対してスリットSを介してレーザ光LBを照射する(第2処理)。これにより、板部材5,6のスリットSに沿って電極材料10が切断され、電極50が製造される。その後、制御部Cは、吸着部9を制御することにより板部材5に電極材料10及び電極50を吸着した(第3処理)後に、駆動部7を制御することによって、板部材5と共に電極材料10及び電極50を搬送する(第4処理)。そして、制御部Cは、吸着部9をさらに制御することにより、板部材5への電極材料10及び電極50の吸着を解除し(第5処理)、後工程へと電極50を供給する。このように、この電極製造装置1にあっては、電極材料10及び電極50の搬送に用いられる一対の板部材5,6によって電極材料10を挟持した状態において、その板部材5,6に設けられたスリットSを介したレーザ光LBの照射により電極材料10を切断する。このため、この電極製造装置1によれば、電極材料10の切断に際して、電極材料10の搬送に寄与する板部材5,6を用いて、電極材料10の厚さ方向の位置精度を十分に高め、電極材料10の切断品質を向上することができる。
制御部Cは、第4処理において電極材料10及び電極50を搬送する前に、板部材6を電極材料10及び電極50から離間させる(第6処理)。したがって、板部材5により電極材料10及び電極50を搬送する際、板部材6と電極材料10及び電極50との接触を抑制することができる。
板部材6には、対向面6aに吸着孔Hが設けられ、制御部Cは、第4処理と第5処理との間において、板部材6に電極材料10を吸着する(第7処理)。したがって、板部材6が電極材料10を吸着して支持している状態において、再び第1処理を実行して、板部材5を駆動することにより、電極材料10を挟持する状態へと移行することができる。
板部材5,6は、それぞれ、搬送方向の上流側から下流側に向けて順に配列された第1領域R1及び第2領域R2を有している。搬送方向における第1領域R1及び第2領域R2のそれぞれの長さは、搬送方向における電極50の長さに対応している。制御部Cは、第1処理において、第1領域R1同士、及び第2領域R2同士を互いに対向させ、第4処理において、板部材5の第1領域R1が板部材6の第2領域R2と対向するように板部材5を駆動する。このため、電極材料10が、電極50に対応する長さ分ずつ搬送されながら、第1領域R1及び第2領域R2のそれぞれにおいてレーザ光LBの照射が行われることになる。したがって、電極材料10の1つの電極50に対応する部分に対して、第1領域R1間及び第2領域R2間のそれぞれにおいて独立してレーザ処理を行うことが可能となる。
スリットSは、第1領域R1に設けられ、電極50の形状の一部分に対応した形状の第1スリットS1と、第2領域R2に設けられ、電極50の形状の他の一部分に対応した形状の第2スリットS2と、を有している。このようにスリットSが2つの領域に分けて設けられるので、スリットSにより板部材5,6が複数部材に分離されることを抑制し、板部材5,6を一部材とすることができる。このため、板部材5,6の駆動等の制御が容易となる。
レーザ照射部8は、互いに独立してレーザ光LBの照射が可能な第1照射部8a及び第2照射部8bを有している。制御部Cは、第2処理において、第1照射部8aを制御することにより電極材料10に対して第1スリットS1を介してレーザ光LBを照射すると共に、第2照射部8bを制御することにより電極材料10に対して第2スリットS2を介してレーザ光LBを照射する。したがって、電極材料10の切断を、第1照射部8aと第1スリットS1との組み合わせによる切断、及び第2照射部8bと第2スリットS2との組み合わせによる切断の2つに分けて同時に行うことができる。これにより、電極製造にかかる時間を短縮することができる。
電極材料10は、金属箔11と、金属箔11上に設けられた活物質層12と、を有している。第1スリットS1は、金属箔11が活物質層12から露出した未塗工領域13に対応し、第2スリットS2は、金属箔11上に活物質層12が設けられた塗工領域14に対応している。したがって、第1照射部8aと第1スリットS1との組み合わせによる切断、及び第2照射部8bと第2スリットS2との組み合わせによる切断を、それぞれ未塗工領域13及び塗工領域14に適した条件で行うことができる。具体的には、未塗工領域13をパルスレーザ光の照射により切断し、塗工領域14をCWレーザ光の照射により切断することができる。
電極製造装置1では、レーザカット時に、板部材5,6が電極材料10を狭持しているので、レーザカット時に発生するスパッタ(異物)、又はレーザカットに伴うアシストガスで飛散する他の異物等が電極50の表面に付着することがない。したがって、安全性の高い電極50を製造することが可能となる。
以上の実施形態は、本発明の一側面について説明したものである。したがって、本発明は、上記のものに限定されない。本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上記のものを任意に変更したものとすることができる。
図10は、変形例に係る電極製造装置の模式的な側面図である。図11は、図10に示される板部材の平面図である。変形例に係る電極製造装置1Aは、図10に示されるように、レーザ照射部8が第2照射部8bのみを有する点、及び、図11に示されるように、板部材5,6に設けられたスリットSの点で、実施形態に係る電極製造装置1と相違している。
変形例に係る板部材5,6の第1領域R1には、スリットSが設けられておらず、第2領域R2に、スリットSの全体が設けられている。電極材料10は、第2照射部8bによるレーザ光LBの照射のみで切断される。板部材5,6の第1領域R1は、電極材料10を吸着して搬送するために設けられている。スリットSは、一続きのスリットであって、図2に示される切断線Lのうち、線L2a以外の線に対応している。スリットSは、交差方向から見て切断線Lと重複したときに、切断線Lのうち、線L2a以外の線がスリットSから露出するように形成されている。この場合、スリットSが線L2aには対応せず閉曲線とならないので、スリットSにより板部材5,6が複数部材に分離されることを抑制し、板部材5,6を一部材とすることができる。このため、第1変形例においても、板部材5,6の駆動等の制御が容易となる。
図12は、別の変形例に係る電極製造装置の模式的な側面図である。図12に示されるように、別の変形例に係る電極製造装置1Bは、端材60を回収するボックス61をさらに備える点で、実施形態に係る電極製造装置1と相違している。ボックス61は、板部材6の下方に配置されている。電極製造装置1Bは、ボックス61を備えることにより、端材60を効率的に回収することができる。電極製造装置1Aも同様にボックス61を備える構成としてもよい。
電極製造装置1,1A,1Bにおいて、第1照射部8aは、パルスレーザ光以外のレーザ光LBを照射してもよく、第2照射部8bは、CWレーザ光以外のレーザ光LBを照射してもよい。第1照射部8a及び第2照射部8bは、同等のレーザ光LBを照射してもよい。板部材6において、吸着孔Hは、第1領域R1のみでなく、第1領域R1及び第2領域R2の両方に設けられていてもよい。
電極製造装置1,1A,1Bにおいては、さらにエア供給源を備え、吸着部9と切替え可能に、加圧エアを吸着孔に供給できる構成としてもよい。第5処理により吸着を解除しても、静電気などの作用で、板部材5より電極50が直ぐに落下しない場合がありえる。そこで、吸着部9と切替え、加圧エアを吸着孔に供給することで、電極50を確実に落下させることができる。
ここで、電極製造装置1,1A,1Bにおいて、板部材5,6の吸着孔Hの形状は、断面円形に限られず、電極50及び電極材料10が吸着可能であればよい。例えば、図13に示されるように、吸着孔Hは、スリット状である。ここでは、3つの吸着孔Hが第1領域R1に設けられている。各吸着孔Hは、スリット状であり、短手方向に沿って延在している。3つの吸着孔Hは、搬送方向に沿って並設されている。板部材5,6の他の吸着孔Hについても同様に構成してもよい。なお、図13は、変形例に係る板部材の平面図及び断面図である。具体的には、図13(a)は、変形例に係る板部材5の平面図であり、図13(b)は、図13(a)のXIIIb-XIIIb線に沿っての断面図である。
さらに、例えば板部材6においては、第2領域R2にも吸着孔Hを設けてもよい。具体的には図14に示される板部材6では、第2領域R2のうち、短手方向の両端部のそれぞれに複数の吸着孔Hが設けられている。吸着孔Hは、図2に示される電極材料10のうち切断線Lの内側となる部分(つまり、図1に示される電極50となる部分)を避けて配置されている。この場合、第7処理において、板部材6に電極材料10と共に端材60(図9参照)が吸着される。このため、電極50と端材60とを確実に分離することができる。なお、図14は、変形例に係る板部材の平面図である。