JP2018065942A - ポリアミド樹脂組成物およびそれを含む成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】流動性、離型性および機械強度に優れるポリアミド樹脂組成物およびその成形品を提供する。【解決手段】(A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対し、(B)繊維状充填材30〜240質量部、(C)重量平均分子量Mwが1000〜5000のポリスチレン1〜15質量部を含有するポリアミド樹脂組成物。【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびそれを含む成形品に関するものである。
ポリアミド樹脂は、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性を有するため、自動車や電気・電子部品用途へ好ましく用いられている。さまざまな用途の中でも、ポリアミド樹脂は、機械強度と耐熱性に優れる点を活かし、コネクター用途には広く採用されている。近年、これらの用途では、電機・電子機器の小型化、製品の軽量化に伴い、射出成形時での更なる薄肉化や形状の複雑化が求められている。また、小型化により製品の多数個取りが期待されるため、より成形性を追求する動向がある。これらの要求に対して、樹脂の流動性、離型性が不十分な場合には、薄肉や複雑形状の部品を成形する際に、樹脂の未充填が起こり得ることや、エジェクト時に部品の変形や破損が起きてしまうことから、樹脂の流動性、離型性の改良が求められている。
ポリアミド樹脂の流動性向上技術として、例えば、相対粘度が1.40〜1.80であって、末端カルボキシル基濃度が90μep/g以下、末端アミノ基濃度が30μep/g以下であるポリアミド樹脂80〜99.5質量%、質量平均分子量Mwが1,000〜15,000であり、(メタ)アクリレート単量体及び芳香族ビニル単量体から形成される単位を主たる構成単位とする流動改良剤0.5〜20質量%を配合してなることを特徴とする磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)が知られている。また、耐熱性や機械的特性に優れる樹脂組成物として、テレフタル酸単位を60〜100モル%含むジカルボン酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチルー1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含むジアミン単位からなるポリアミド系樹脂と、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、スチレン系重合体を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。また、流動性、透明性および耐久性に優れる樹脂組成物として、ポリオルガノシロキサン単位を含有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(A1成分)からなるか、または該A1成分とA1成分以外のポリカーボネートとからなり、ポリオルガノシロキサン単位含量がA成分100重量%中0.1〜20重量%であるポリカーボネート系樹脂(A成分)100質量部に対して、重量平均分子量Mwが1000〜15000であり、分子量分布がMw/Mnが1.2〜1.3であり、芳香族アルケニル化合物単量体と共重合可能な単量体(B2a)から形成される単位、および芳香族アルケニル化合物単量体(B2b)から形成される単位を構成単位とし、B2aおよびB2bの合計100重量%中B2aは0〜35重量%およびB2bは100〜65重量%である重合体(B2成分)の流動改質剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)が知られている。
近年要求される薄肉や複雑形状の部品を成形するためには、樹脂組成物の流動性と離型性の両立が求められていたが、前記特許文献1〜3に記載の樹脂組成物では、流動性は向上するものの、離型性向上について記載されていない。
そこで本発明は、流動性、離型性および機械強度に優れるポリアミド樹脂組成物およびその成形品を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
[1](A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対し、(B)繊維状充填材30〜240質量部、(C)重量平均分子量Mwが1000〜5000のポリスチレン1〜15質量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
[2](A)半芳香族ポリアミド樹脂が、(A−1)ポリアミド10T、ポリアミド9T、ポリアミド6Tおよび、ポリアミド6Iからなる群より選ばれる少なくとも1種および/または(A−2)3元共重合ポリアミド樹脂である[1]記載のポリアミド樹脂組成物。
[3](A)半芳香族ポリアミド樹脂が、(A−1)ポリアミド10Tおよび(A−2)ポリアミド66/6I/6である、[1]または[2]記載のポリアミド樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
[1](A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対し、(B)繊維状充填材30〜240質量部、(C)重量平均分子量Mwが1000〜5000のポリスチレン1〜15質量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
[2](A)半芳香族ポリアミド樹脂が、(A−1)ポリアミド10T、ポリアミド9T、ポリアミド6Tおよび、ポリアミド6Iからなる群より選ばれる少なくとも1種および/または(A−2)3元共重合ポリアミド樹脂である[1]記載のポリアミド樹脂組成物。
[3](A)半芳香族ポリアミド樹脂が、(A−1)ポリアミド10Tおよび(A−2)ポリアミド66/6I/6である、[1]または[2]記載のポリアミド樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、流動性、離型性、および機械強度に優れる。本発明のポリアミド樹脂組成物によれば、特に流動性と離型性に優れることから、薄肉や複雑形状の成形品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)半芳香族ポリアミド樹脂、(B)繊維状充填材および(C)ポリスチレンを含有する。以下、各成分について説明する。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において用いられるポリアミド樹脂が芳香族環を有することによって、ポリアミド樹脂組成物の流動性と離形性の両方が改質される。さらに、前記ポリアミド樹脂、つまり、(A)半芳香族ポリアミド樹脂と(C)ポリスチレンを用いることによって、得られる樹脂組成物の流動性および離型性がより改善される。
本発明の実施形態で用いられる(A)半芳香族ポリアミド樹脂とは、分子鎖中に芳香族環を有しているものを指し、一般的にはジアミン、もしくはジカルボン酸などの原料の内、一方が芳香族環を有するものを含んだポリアミド樹脂を指す。
本発明の実施形態で用いられる(A)半芳香族ポリアミド樹脂の原料として、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは特に限定されないが、特に有用な半芳香族ポリアミド樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂である。具体的な例としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリオクタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド8T)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ポリアミドXD10)、およびこれらの混合物などが挙げられる。
また、芳香族ポリアミドの共重合体でも良く、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/11)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド66/6I/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)およびこれらの混合物などが挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示す。以下、同様とする。融点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定することができる。
本発明の実施形態で用いられる(A)半芳香族ポリアミド樹脂は、機械強度の観点から、(A−1)ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、およびポリアミド6Iからなる群より選ばれる少なくとも1種および/または(A−2)3元共重合ポリアミド樹脂が好ましい。(A−2)3元共重合ポリアミド樹脂とは、ポリアミド66/6I/6および/またはポリアミド66/6T/6Iをいう。(A−1)ポリアミド10Tおよび/または(A−2)ポリアミド66/6I/6が更に好ましく、(A−1)ポリアミド10Tおよび(A−2)ポリアミド66/6I/6がより好ましい。なお、(A)半芳香族ポリアミド樹脂に、(A−2)3元共重合ポリアミド樹脂を含む場合は、その含有量について特に制限は無いが、機械強度の観点から、(A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部((A−1)および(A−2)の合計を100質量部とした場合)に対して25質量部以下が好ましい。離型性の観点から5質量部以上が好ましい。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、(A)半芳香族ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を用いてもよい。(A)半芳香族ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、などが挙げられる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(B)繊維状充填材を含有する。(B)繊維状充填材を含有することにより、成形品の機械強度を向上させることができる。(B)繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系またはピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化珪素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、窒化珪素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填材が挙げられる。その中でも機械強度とコストの観点からガラス繊維が特に好ましい。
ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により被膜あるいは集束されていてもよい。さらに、ガラス繊維の断面は、円形、扁平状のひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品など限定されるものではない。
本実施形態で用いられる(B)繊維状充填材としては、長さや断面直径に制限は無いが、機械強度や押出加工性の観点から、長さ1〜5mm、断面直径8〜12μmが好ましく用いられる。断面形状が扁平のガラス繊維については、換算繊維径を用いる。
なお、扁平ガラス繊維の換算繊維径とは、扁平断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径(扁平ガラス繊維の断面形状が円形であるとしたとき、同一の面積を有する円の直径である換算繊維径)をいう。
なお、換算繊維径は、扁平ガラス繊維のフィラメントの単位長さ当りの重量を電子天秤で測定し、ガラスの比重で割ることにより断面積を求め、その断面積から真円形としたときの直径を算出することで、換算繊維径が得られる。また、換算繊維径Dについては、具体的には、
計算式:D2=(TEX/d×N)×(4/π)×103
D2:換算繊維径(μm)、TEX:扁平ガラス繊維の番手(1000mあたりのg数)
d=ガラスの比重(g/cm3)、N:扁平ガラス繊維のフィラメントの本数(本)
π:円周率
から求めることもできる。
計算式:D2=(TEX/d×N)×(4/π)×103
D2:換算繊維径(μm)、TEX:扁平ガラス繊維の番手(1000mあたりのg数)
d=ガラスの比重(g/cm3)、N:扁平ガラス繊維のフィラメントの本数(本)
π:円周率
から求めることもできる。
なお、上記(B)繊維状充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)などにより処理されていてもよく、成形品の機械強度や表面外観をより向上させることができる。例えば、常法に従って予め充填材をカップリング剤により表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法が好ましく用いられるが、予め充填材の表面処理を行わずに、充填材とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、カップリング剤を添加するインテグラルブレンド法を用いてもよい。カップリング剤の処理量は、(B)繊維状充填材100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。一方、カップリング剤の処理量は、充填材100質量部に対して10質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
本発明の実施形態で用いられる(B)繊維状充填材の含有量は、(A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対して、30〜240質量部(30質量部以上240質量部以下)である。30質量部未満では十分な機械強度を得る事が出来ず、240質量部を超えると溶融混練による繊維状充填材の配合が困難となる。あるいは配合できたとしても樹脂組成物の流動性が悪くなり、薄肉成形品を成形する際、薄肉部への樹脂組成物の充填が困難となる。さらに樹脂組成物の流動性の低下は、成形品表面の外観を悪化させる。また、機械強度と押出加工性のバランスという観点から、(A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対して50〜150質量部の範囲が好ましい。
本発明の実施形態で用いられる(C)ポリスチレンは、スチレンをモノマーとするポリマーであり、アクリルニトリル、ブタジエン等を共重合させたものは除く。また、重量平均分子量Mwが1000〜5000(1000以上5000以下)の範囲である必要がある。重量平均分子量Mwが1000未満の場合は、自由体積が十分に形成されず、流動性と離型性に劣る。また、重量平均分子量Mwが5000を超える場合、高分子化により、離型性の向上効果が得られない。より高い効果を得るためには、重量平均分子量Mwが2000〜4000の範囲であることが好ましく、2500〜3500の範囲がより好ましい。具体的には、(C)ポリスチレンの市販品として、BASF製“Joncryl(登録商標)”などを挙げることが出来る。
なお、ここでいう重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算の分子量として求めることが出来る。例えば溶媒としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてShodex製 KF−806Lを用いることで測定することができる。
また、上記(C)ポリスチレンの含有量は、(A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対して、1〜15質量部である。1質量部未満では流動性と離型性の向上効果が得られず、15質量部を超えると押出加工を行うことが困難になる。機械強度の観点から、より好ましくは3〜8質量部の範囲である。
本発明において、特定の重量平均分子量を有する(C)ポリスチレンを含有することにより、機械強度に劣ることなく、大幅に流動性と離型性を向上させることができる。この理由については定かではないが、特定の重量平均分子量を有する(C)ポリスチレンを、(A)半芳香族ポリアミド樹脂および(B)繊維状充填材に配合することにより、ポリアミド樹脂の分子鎖間に自由体積をつくることで、樹脂あるいは樹脂組成物の流動性を高め、加えて離型性にも優れると推定される。
また、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を加えて良い。各種添加剤の具体例としては、銅化合物以外の熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物などの可塑剤、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミドなどの発泡剤、滑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤、耐衝撃改良剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、(A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対して10質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲において、難燃剤を加えても良い。難燃剤を含有する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に生かすため、(A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対して100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。3質量部以上が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限はなく、例えば単軸または2軸の押出機やニーダー等の混練機を用いて280〜350℃の温度で溶融混練する方法等が挙げられる。また、ガラス繊維など、繊維状充填材は、その直径に対する長手方向の長さの割合が高いほど高い補強効果が発現するため、樹脂成分が溶融した後に繊維状充填材を配合する製造方法が好ましい。
本発明の実施形態で用いられるポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、とりわけ、流動性、離型性および機械強度が要求されるコネクター、コイル、各種センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク・DVD等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライター関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等の光学機器/精密機械関連部品などが挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。特性評価は下記の方法に従って行った。
[ポリアミド樹脂の融点]
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で(A)ポリアミド樹脂の融点を測定した。ポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、10℃/分の降温速度で40℃まで降温し、40℃で1分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で(A)ポリアミド樹脂の融点を測定した。ポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、10℃/分の降温速度で40℃まで降温し、40℃で1分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
[相対粘度]
JIS−K6810に従って98%硫酸での相対粘度を測定した。
JIS−K6810に従って98%硫酸での相対粘度を測定した。
[機械強度]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で14時間減圧乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製NEX−1000)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:130℃(比較例8〜9は80℃)の条件で射出成形することにより、厚さ4.0mmのISOダンベル試験片1A型を作製した。この試験片について、ISO 527に従って引張試験機インストロン5581型(インストロン社製)により、クロスヘッド速度5mm/分で引張試験を行った。5回測定を行い、その平均値を引張強度として算出した。引張強度が大きいほど、機械強度に優れる。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で14時間減圧乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製NEX−1000)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:130℃(比較例8〜9は80℃)の条件で射出成形することにより、厚さ4.0mmのISOダンベル試験片1A型を作製した。この試験片について、ISO 527に従って引張試験機インストロン5581型(インストロン社製)により、クロスヘッド速度5mm/分で引張試験を行った。5回測定を行い、その平均値を引張強度として算出した。引張強度が大きいほど、機械強度に優れる。
[流動性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で14時間真空乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製NEX−1000)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:130℃(比較例8〜9は80℃)、射出圧力:60MPaの条件で、200mm長×10mm幅×1.0mm厚の金型を用いて射出成形し、10mm幅×0.5mm厚の棒流動試験片を作製した。各10サンプルについて保圧0における棒流動長を測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で14時間真空乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製NEX−1000)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:130℃(比較例8〜9は80℃)、射出圧力:60MPaの条件で、200mm長×10mm幅×1.0mm厚の金型を用いて射出成形し、10mm幅×0.5mm厚の棒流動試験片を作製した。各10サンプルについて保圧0における棒流動長を測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
[離型性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で14時間真空乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製NEX−1000)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:95℃(比較例8〜9は80℃)、射出/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:100mm/秒の条件で、長さ100mm×幅60mm×高さ25mm、肉厚2mmの箱型成形品を成形し、離型性を評価した。離型性の評価は、圧力センサーを突き出しピン(直径2mm)の後ろに配置し、金型から箱型成形品を取り出す際の突出し応力を測定することにより行った。10ショットの突出し応力の平均値を離型力として示した。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で14時間真空乾燥し、射出成形機(日精樹脂工業(株)製NEX−1000)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:95℃(比較例8〜9は80℃)、射出/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:100mm/秒の条件で、長さ100mm×幅60mm×高さ25mm、肉厚2mmの箱型成形品を成形し、離型性を評価した。離型性の評価は、圧力センサーを突き出しピン(直径2mm)の後ろに配置し、金型から箱型成形品を取り出す際の突出し応力を測定することにより行った。10ショットの突出し応力の平均値を離型力として示した。
参考例1((A−1)ポリアミド10T)
デカメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である10T塩と、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンを過剰に添加した。
さらに、これら原料の合計70質量部に対して、水30質量部を添加して混合した。これを加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.31、融点317℃のポリアミド10Tを得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
デカメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である10T塩と、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンを過剰に添加した。
さらに、これら原料の合計70質量部に対して、水30質量部を添加して混合した。これを加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.31、融点317℃のポリアミド10Tを得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
参考例2((A−2)3元共重合ポリアミド)
実施例で用いた3元共重合ポリアミド樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩75質量部、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩20質量部、およびεカプロラクタム5質量部をそれぞれ投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥し、相対粘度2.0の3元共重合ポリアミド樹脂を得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
実施例で用いた3元共重合ポリアミド樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩75質量部、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩20質量部、およびεカプロラクタム5質量部をそれぞれ投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥し、相対粘度2.0の3元共重合ポリアミド樹脂を得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
参考例3((F)ポリアミド66樹脂)
比較例で用いたポリアミド66樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩を秤量し、投入した全量と同重量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を280℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥し、相対粘度2.8のポリアミド66樹脂を得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
比較例で用いたポリアミド66樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩を秤量し、投入した全量と同重量の純水を加え、重合缶内をN2で置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cm2に調整しながら最終到達温度を280℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥し、相対粘度2.8のポリアミド66樹脂を得た。なお、相対粘度は、上記に示すとおり、JIS―K6810に従い測定した。
その他、本実施例および比較例に用いた(B)繊維状充填材、(C)ポリスチレン、(C’)その他添加剤(D)難燃剤、(E)酸化防止剤、は以下の通りである。重量平均分子量Mwは、溶媒としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてShodex製 KF−806Lを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算の分子量として求めた。
(B):繊維状充填材(日本電気硝子(株)製ECS03T−275H)、断面の直径10.5μm。
(C−1):ポリスチレン(BASF製Joncryl ADF 1300)、重量平均分子量Mw=3000。
(C−2):ポリスチレン(PSジャパン(株)製PS−J680)、重量平均分子量Mw=20万。
(C’−1):スチレンアクリル共重合(BASF製Joncryl ADD 3310)、重量平均分子量Mw=3000
(C’−2):HALS(CLARIANT製Nylostab S−EED)。
(D):難燃剤(有機リン酸塩 CLARIANT製Exolit OP930)。
(E):ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製Irganox1098)。
(B):繊維状充填材(日本電気硝子(株)製ECS03T−275H)、断面の直径10.5μm。
(C−1):ポリスチレン(BASF製Joncryl ADF 1300)、重量平均分子量Mw=3000。
(C−2):ポリスチレン(PSジャパン(株)製PS−J680)、重量平均分子量Mw=20万。
(C’−1):スチレンアクリル共重合(BASF製Joncryl ADD 3310)、重量平均分子量Mw=3000
(C’−2):HALS(CLARIANT製Nylostab S−EED)。
(D):難燃剤(有機リン酸塩 CLARIANT製Exolit OP930)。
(E):ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF製Irganox1098)。
(実施例1〜9、比較例1〜7)
表1および2に示す(A)半芳香族ポリアミド樹脂、(C)ポリスチレン、(C’)その他添加剤、(E)酸化防止剤、(F)ポリアミド66樹脂を、シリンダー温度を最も融点の高いポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を300rpmに設定したコペリオン(株)製ZSK57型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、つまりスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。続いて、表に示す(B)繊維状充填材、(D)難燃剤を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
表1および2に示す(A)半芳香族ポリアミド樹脂、(C)ポリスチレン、(C’)その他添加剤、(E)酸化防止剤、(F)ポリアミド66樹脂を、シリンダー温度を最も融点の高いポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を300rpmに設定したコペリオン(株)製ZSK57型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、つまりスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。続いて、表に示す(B)繊維状充填材、(D)難燃剤を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
得られたペレットを用いて機械強度、流動性および離型性を評価した。評価結果を表1、2に示す
実施例1〜2、6〜9は、(A−1)ポリアミド10T100質量部に対して、(B)繊維状充填材を50〜100質量部、(C)重量平均分子量3000のポリスチレンを3〜15質量部含有するため、比較例1〜7と比較して、機械強度を保持したまま、流動性および離型性の優れる成形品を得る事が出来た。
実施例3〜5は、(A−1)ポリアミド10Tと(A−2)ポリアミド66/6I/6共重合樹脂組成物の合計100質量部に対して、(B)繊維状充填材100質量部、(C)重量平均分子量3000のポリスチレン3質量部含有するため、比較例1〜7と比較して、機械強度を保持したまま、流動性および離型性の優れる成形品を得る事が出来た。
比較例3は、(A−1)ポリアミド10T100質量部に対して、(C)重量平均分子量3000のポリスチレンを16質量部含有するため、押出加工時ストランド切れの不具合が多発し、ポリアミド樹脂組成物を取得出来なかった。
Claims (4)
- (A)半芳香族ポリアミド樹脂100質量部に対し、(B)繊維状充填材30〜240質量部、(C)重量平均分子量Mwが1000〜5000のポリスチレン1〜15質量部を含有するポリアミド樹脂組成物。
- (A)半芳香族ポリアミド樹脂が、(A−1)ポリアミド10T、ポリアミド9T、ポリアミド6T、および、ポリアミド6Iからなる群より選ばれる少なくとも1種および/または(A−2)3元共重合ポリアミド樹脂である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- (A)半芳香族ポリアミド樹脂が、(A−1)ポリアミド10Tおよび(A−2)ポリアミド66/6I/6である、請求項1または請求項2記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品。
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