JP2018065914A - ポリオレフィン系樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂とオレフィン系エラストマーから構成されたアロイ系のポリオレフィン系樹脂に、特定にアミド系化合物を配合することにより、該ポリオレフィン系樹脂成形体の機械的異方性を改良することが可能であり、その改良方法を用いることにより容易に機械的異方性の小さいポリオレフィン系樹脂成形体を得る良いことができる。
【選択図】 なし
Description
ポリプロピレン系樹脂の分子鎖の全部又は一部が成形する際の樹脂の流動方向に対して垂直な方向に配向していることを特徴とするポリオレフィン系樹脂成形体。
一般式(1)
一般式(2)
(ii)前記工程(i)により得られた溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物を冷却して、アミド系化合物の結晶を析出させる工程、及び
(iii)前記工程(ii)で冷却されたポリオレフィン系樹脂組成物をポリプロピレン系樹脂の融点以上、アミド系化合物が加熱溶解しない温度の範囲に溶融させた後に成形する工程
を具備してなる、低機械的異方性のポリオレフィン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1)
一般式(2)
一般式(1)
一般式(2)
一般式(1)
一般式(2)
本発明のポリオレフィン系樹脂成形体は、ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとし、オレフィン系エラストマーをドメインとする海島構造を有するポリオレフィン系樹脂成形体であって、ポリプロピレン系樹脂の分子鎖の全部又は一部がオレフィン系エラストマーの伸張方向、即ち成形する際の樹脂の流動方向に対して垂直な方向に配向していることを特徴とする。この様な構造を有することにより、得られたポリオレフィン系樹脂成形体の機械的異方性を改良することが可能となる。なお、ポリオレフィン系樹脂成形体の説明は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の説明でもあり、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体の剛性及び耐衝撃性をバランスよく向上させる方法の説明でもある。
本発明のポリオレフィン系樹脂成形体中に含まれるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体であり、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンを主体としたプロピレンと他のα−オレフィン(好ましくは炭素数2又は4〜20、特に好ましくは炭素数2又は4〜8のα−オレフィン)とのランダム共重合体、プロピレンを主体としたプロピレンと他のα−オレフィン(好ましくは炭素数2又は4〜20、特に好ましくは炭素数2又は4〜8のα−オレフィン)とのブロック共重合体、プロピレンを主体としたプロピレン・エチレン・ジエン多元共重合体(ジエンとしては5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエンなど。)、プロピレンを主体としたプロピレンと少量のスチレン、無水マレイン酸又は(メタ)アクリル酸等のコモノマーとの共重合体、或いは前記ポリプロピレン系樹脂と少量の熱可塑性樹脂とのブレンドポリマー、などが例示される。
本発明に係るオレフィン系エラストマーとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンが共重合した共重合体、上記α−オレフィンや共重合体に更にスチレン、非共役ジエン、酢酸ビニル等のモノマーが共重合した共重合体などが挙げられる。
本発明のアミド系化合物は、下記一般式(1)で示されるアミド系化合物、及び一般式(2)で示されるアミド系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミド系化合物である。
一般式(1)
一般式(2)
本発明に係るポリオレフィン系樹脂成形体は、ハードセグメントであるポリプロピレン系樹脂とソフトセグメントであるオレフィン系エラストマーを主成分とする組成物からなり、ハードセグメントであるポリプロピレン系樹脂からなるマトリックス中にソフトセグメントであるオレフィン系エラストマーがドメインとして存在する海島構造を有することにより、剛性を大きく損なうことなく、柔軟性や耐衝撃性を付与する構造体を基本とする。
本発明のポリオレフィン系樹脂成形体の製造方法は、例えば、次の(i)〜(iii)工程を具備するものであり、このような条件を満たすことにより本発明の効果をより効果的に奏することができる成形体を得ることができる。
なお、後述の製造方法の説明は、本発明に係るポリオレフィン系樹脂組成物を成形する方法の説明でもある。
工程(ii);その溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物をアミド系化合物の結晶が析出する温度以下に冷却する工程。
工程(iii);その冷却されたポリオレフィン系樹脂組成物をポリプロピレン系樹脂の融点以上、アミド系化合物のポリオレフィン系樹脂への溶解温度未満の温度範囲で溶融した後に、通常125℃以下、好ましくは20〜125℃、より好ましくは50〜120℃、特に好ましくは80〜120℃の温度範囲で成形する工程。
本発明に係る機械的異方性の改良方法とは、ポリプロピレン系樹脂の分子鎖の配向方向を、オレフィン系エラストマーの伸張方向と平行な方向、即ち樹脂の流れ方向から、垂直な方向に変えることに最大の特徴を有する。具体的には、上記アミド系化合物を配合し、上記条件で成形することにより分鎖の配向方向を垂直な方向に変えることができる。
試料の調製
テクノベル社製の同方向完全噛合型二軸押出機ULT15TWnano−15MG−NH(−700)−HKUを用いて、下記条件にて押出成形を行い、シートを作製した。得られたシートより所定の大きさの試験片を切り出し、室温下でキシレン中に4日間浸漬して、オレフィン系エラストマーを抽出したのち、キシレンを除去した。その後、ミクロトームを用いて液体窒素冷却下で10μm厚みに切削して試料とした。
<押出条件>
設定温度 バレル C1 117℃、C2 200℃、
ヘッド 200℃、
ダイス 200℃
スクリュー形状 D=15mm、L/D=15 (二軸)
スクリュー回転数 20rpm
ダイス形状 スリットダイ(開口長) 35mm、
ダイギャップ 0.5mm
吐出量 0.42kg/h (重量フィーダーを使用)
エアギャップ 50mm
チルロール径 72mm
チルロール回転数 1rpm
チルロール温度 100℃
上記試料をイオン蒸着装置(日立製作所製 E1010)によりパラジウム/白金合金蒸着を80秒間行って導電性を付与し、走査型電子顕微鏡(日立製作所製S4100)を用いて加速電圧20kVにて観察した。
試料の調製
上記[成形体中のオレフィン系エラストマーの形状確認]と同じ条件にて得られた押出シートより、所定の大きさの試験片を切り出し、試料とした。
結晶配向の評価を行うために、広角X線回折装置((株)リガク製、SmartLab)を用いて、透過法によってX線回折の測定を行った。管電流、管電圧はそれぞれ30mA、40kVとした。それぞれのサンプルを縦X横が約10mm×10mmとなるように切り出し、トルエンとポリスチレンの溶液を用いて厚さが約1.0mmとなるように積層し貼り合わせた。X線はMD−TD面 (through view:以下、「TV」という)、MD−ND面(edge view:以下、「EV」という)の2方向から照射した。
結晶配向の評価を行うために、フーリエ変換型赤外分光装置(PerkinElmer社製、Spectrum100)を用いて、偏光赤外吸収スペクトルの測定を行った。得られた吸収スペクトルより(1式)を用いて赤色二色比Dを計算し、さらに(2式)を用いて配向関数F(2式)を算出した。なお、スペクトルの吸収帯は998cm-1に着目し、(2式)におけるcの値は1とした。
試料の調製
上記[成形体中のオレフィン系エラストマーの形状確認]と同じ条件にて得られた押出シートより、20mm×5mmの大きさの試験片を切り出し、試料とした。
上記試料を用い、動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel−E4000−DVE)にて、チャック間距離10mm、周波数10Hz、温度範囲−100℃〜165℃、昇温速度2℃/分で測定した。また、各押出シートより、樹脂の流れ方向(MD方向)および流れ方向に対して垂直な方向(TD方向)に沿って切り出した試料を用いて、それぞれ測定した。
ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレンホモポリマー、MFR=7.5g/10分、融点;168℃)70重量部、エチレン−1−ブテン共重合エラストマー(MFR=2.2g/10分、密度;0.862g/cm3)30重量部、アミド系化合物としてN,N´−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化株式会社製、商品名;エヌジェスターNU−100)0.07重量部、ポリオレフィン用改質剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASF社製、商品名「IRGANOX1010」)0.15重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製、商品名「IRGAFOS168」)0.1重量、及びステアリン酸カルシウム(日東化成工業株式会社製、商品名「CP−S」)0.05重量をヘンシェルミキサーでドライブレンドした。そのドライブレンド物を押出機にて樹脂温度260℃でN,N´−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドを溶解させて、溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物とし(工程(i))、その溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物を水令し、ペレタイザーでカッティングして、ペレット状のポリオレフィン系樹脂組成物を得た(工程(ii))。そのペレットを樹脂温度200℃、チルロール温度80℃にてシート成形して、厚さ0.3mmの本発明のポリオレフィン系樹脂シートを作製した(工程(iii))。
得られたシートより10mm×10mmの試験片を切り出し、所定の処理後SEM観察を行った。図1に観察された画像の写真を示した。
続いて、上記シートより10mm×10mmの試験片を切り出し、所定の処理後X線回折測定を行った。図3にEV (左)、TV (右)における2D−XRD回折パターンを示した。
次に、上記シートを用いて、偏光赤外線吸収スペクトルの測定を行い、(1式)、(2式)を用いて、赤色二色比と配向関数を求め、表1に示した。
最後に、上記シートより、20mm×5mmの試験片を切り出し、動的粘弾性試験を行い、動的粘弾性の温度依存性をグラフにプロットした結果を図5に示した。
オレフィン系エラストマーとして、エチレン−1−ブテン共重合エラストマーの代わりにエチレン−プロピレン共重合エラストマー(JSR社製、製品名「EP11」)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、シートを作製した。
得られたシートより、所定の大きさの試験片を切り出し、更に必要に応じて処理を行った後、その試験片を試料として用い、偏光赤外線吸収スペクトルの測定を行い、得られた赤色二色比と配向関数を表1に示した。
得られたシートより10mm×10mmの試験片を切り出し、所定の処理後SEM観察を行った。図2に観察された画像の写真を示した。
続いて、上記シートより、20mm×5mmの試験片を切り出し、動的粘弾性試験を行い、動的粘弾性の温度依存性をグラフにプロットした結果を図6に示した。
アミド系化合物を配合しない以外は、実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂シートを作製した。
得られたシートより10mm×10mmの試験片を切り出し、所定の処理後X線回折測定を行った。図4にEV (左)、TV (右)における2D−XRD回折パターンを示した。
次に、上記シートを用いて、偏光赤外線吸収スペクトルの測定を行い、(1式)、(2式)を用いて、赤色二色比と配向関数を求め、表1に示した。
続いて、上記シートより、20mm×5mmの試験片を切り出し、動的粘弾性試験を行い、動的粘弾性の温度依存性をグラフにプロットした結果を図7に示した。
Claims (11)
- ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとし、オレフィン系エラストマーをドメインとする海島構造を有するポリオレフィン系樹脂成形体であって、
ポリプロピレン系樹脂の分子鎖の全部又は一部が成形する際の樹脂の流動方向に対して垂直な方向に配向していることを特徴とするポリオレフィン系樹脂成形体。 - 偏光赤外吸収スペクトル測定により求めた吸収スペクトルの二色比が1.00未満であり、且つその二色比から計算される配向関数が負の値である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂成形体。
- (A)成分:ポリプロピレン系樹脂、
(B)成分:オレフィン系エラストマー、及び
(C)成分:下記一般式(1)で示されるアミド系化合物及び一般式(2)で示されるアミド系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミド系化合物
を含有してなる、ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとし、オレフィン系エラストマーをドメインとする海島構造を有するポリオレフィン系樹脂成形体。
一般式(1)
一般式(2)
- (C)成分が、一般式(1)中のnが2〜3の整数、R1が炭素数6〜12の芳香族ポリカルボン酸残基、2〜3個のR2が同一又は異なって、それぞれ、炭素数6〜10の飽和の脂環族のアミン残基で示されるアミド系化合物である請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂成形体。
- (C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分の含有量の合計100重量部に対して、0.001〜5重量部である、請求項3又は4に記載のポリオレフィン系樹脂成形体。
- (B)成分が、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体エラストマーである請求項1〜5の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂成形体。
- (A)成分と(B)成分の比率が、(A)成分/(B)成分=50/50〜90/10の範囲である、請求項3〜5の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂成形体。
- (i)ポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂とオレフィン系エラストマーを主成分とするポリオレフィン系樹脂に下記一般式(1)で示されるアミド系化合物及び一般式(2)で示されるアミド系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミド系化合物を加えて加熱し、該アミド系化合物を溶融したポリプロピレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂に溶解させて、溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物を得る工程、
(ii)前記工程(i)により得られた溶融状態のポリオレフィン系樹脂組成物を冷却して、アミド系化合物の結晶を析出させる工程、及び
(iii)前記工程(ii)で冷却されたポリオレフィン系樹脂組成物をポリプロピレン系樹脂の融点以上、アミド系化合物が加熱溶解しない温度の範囲に溶融させた後に成形する工程
を具備してなる、低機械的異方性のポリオレフィン系樹脂成形体の製造方法。
一般式(1)
一般式(2)
- 前記工程(ii)で析出したアミド系化合物の結晶が微細な針状結晶である、請求項7に記載の製造方法。
- ポリプロピレン系樹脂とオレフィン系エラストマーを主成分とするポリオレフィン系樹脂に下記一般式(1)で示されるアミド系化合物及び一般式(2)で示されるアミド系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミド系化合物を配合して成形することを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとし、オレフィン系エラストマーをドメインとする海島構造を有するポリオレフィン系樹脂成形体の機械的異方性の改良方法。
一般式(1)
一般式(2)
- (A)成分:ポリプロピレン系樹脂、
(B)成分:オレフィン系エラストマー、及び
(C)成分:下記一般式(1)で示されるアミド系化合物及び一般式(2)で示されるアミド系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミド系化合物
を含有してなることを特徴とする、低機械的異方性のポリオレフィン系樹脂成形体を得るために使用されるポリオレフィン系樹脂組成物。
一般式(1)
一般式(2)
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JPH05262936A (ja) * | 1992-01-24 | 1993-10-12 | New Japan Chem Co Ltd | 結晶性ポリプロピレン系樹脂組成物 |
JPH08197640A (ja) * | 1995-01-24 | 1996-08-06 | Mitsubishi Chem Corp | ポリオレフィン樹脂成形体 |
WO2010035912A2 (ja) * | 2009-01-31 | 2010-04-01 | 新日本理化株式会社 | ポリプロピレン系樹脂成形体 |
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