JP2018065700A - 酸化ニッケル微粉末の製造方法 - Google Patents

酸化ニッケル微粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 硫黄等の不純物品位が低く、電子部品用材料や電池用材料として好適な微細な酸化ニッケル微粉末を低コストで作製可能な製造方法を提供する。
【解決手段】 好適には硫黄含有量が200質量ppm以下であって、レーザー散乱法で測定したD50が1μm以下である酸化ニッケル微粉末の製造方法であって、硫酸ニッケル水溶液を塩基性水溶液で中和してニッケル塩の中間体粒子を晶析する工程と、得られた水酸化ニッケル等の中間体粒子の焼成処理により酸化ニッケル粉末を生成する工程と、得られた酸化ニッケル粉末を解砕して微粒子にする工程とを含み、前記焼成処理を温度550〜950℃の範囲内で且つ酸素分圧5kPa以下の例えば窒素、二酸化炭素、水蒸気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる1種を主成分とする非還元性雰囲気下で行う。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子部品用材料や電池用材料として好適な酸化ニッケル微粉末の製造方法に関する。
酸化ニッケル微粉末は、電子部品用材料や固体酸化物形燃料電池の電極用材料等の多様な用途に用いられている。例えば、電子部品のフェライト部品に用いる場合は、酸化ニッケル微粉末を酸化鉄や酸化亜鉛等の他の金属酸化物と混合した後、焼結により複合金属酸化物の形態にすることが行われている。このフェライト部品のように、複数の材料の焼成反応で複合金属酸化物を製造する場合は、反応速度が固相の拡散に律速されるので、原料となる粉体の粒径を小さく微細にすることが生産効率の向上ための重要な要件となる。即ち、微細な原料を用いることで他材料との接触確率が高くなると共に粒子の活性が高くなるため、低温度且つ短時間でも反応をより均一に進ませることが可能になる。
また、環境及びエネルギーの両面から新しい発電システムとして固体酸化物形燃料電池が期待されており、その電極材料には酸化ニッケル微粉末が用いられている。一般に、固体酸化物形燃料電池のセルスタックは、空気極、固体電解質及び燃料極からなる単セルが複数セル積層された構造を有しており、燃料極にはニッケル又は酸化ニッケルと、安定化ジルコニアからなる固体電解質とを混合したものが通常用いられている。燃料極では発電時に水素や炭化水素等の燃料ガスにより還元されてニッケルメタルとなり、ニッケルと固体電解質と空隙からなる三相界面が燃料ガスと酸素の反応場となる。そのため、上記のフェライト部品の場合と同様に、原料となる粉体の粒径を小さくして微細にすることが発電効率向上の重要な要件となる。
ところで、粉体の細かさを測る指標として比表面積を用いることがあり、比表面積と粒径の間には、下記の計算式1の関係があることが知られている。下記計算式1の関係は粒子を真球と仮定して導き出したものであるため、計算式1から求めた粒径は実際の粒径とは異なりある程度の誤差を含むことになるが、比表面積が大きいほど粒径が小さくなることが分かる。
[計算式1]
粒径=6/(密度×比表面積)
近年、フェライト部品はますます高性能化が求められており、また酸化ニッケル微粉末の用途はフェライト部品以外の電子部品や電極材料等に広がっている。これに伴い、酸化ニッケル微粉末には上記のように微細であることに加えて不純物元素が低品位であることも求められている。不純物元素の中でも特に塩素や硫黄は、電極に利用されている銀と反応して電極劣化を生じさせたり、焼成炉を腐食させたりすることがあるため、できるだけ低減することが望ましい。
例えば特許文献1には、原料段階におけるフェライト粉の硫黄成分の含有量がS換算で300〜900ppm且つ塩素成分の含有量がCl換算で100ppmであるフェライト材料が開示されている。このフェライト材料は、低温焼成においても添加物を用いることなく高密度化を図ることができ、これにより作製されたフェライト磁心及び積層チップ部品は、耐湿性と温度特性に優れていると記載されている。
上記した酸化ニッケル微粉末の製造方法としては、従来、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等のニッケル塩類又はニッケルメタル粉を、ロータリーキルン等の転動炉、プッシャー炉等のような連続炉、あるいはバーナー炉のようなバッチ炉を用いて酸化性雰囲気下で焼成する乾式法が採用されてきた。
例えば特許文献2には、原料としての硫酸ニッケルを、キルンなどを用いて酸化雰囲気中で焙焼温度950〜1000℃未満で焙焼する第1段焙焼と、焙焼温度1000〜1200℃で焙焼する第2段焙焼とで処理して酸化ニッケル粉末を製造する方法が開示されている。この製造方法によれば、平均粒径が制御され、且つ硫黄含有量が50質量ppm以下の酸化ニッケル微粉末が得られると記載されている。
特許文献3には、450〜600℃の仮焼による脱水工程と、1000〜1200℃の焙焼による硫酸ニッケルの分解工程とを明確に分離した酸化ニッケル粉末の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、硫黄含有量が低く且つ平均粒径が小さい酸化ニッケル粉末を安定して製造できると記載されている。さらに特許文献4には、横型回転式製造炉を用いて強制的に空気を導入しながら最高温度900〜1250℃で焙焼する方法が開示されている。この製造方法によっても、硫黄含有量が500質量ppm以下の不純物の少ない酸化ニッケル粉末が得られると記載されている。
また、酸化ニッケル微粉末を湿式法で合成する方法も提案されている。例えば特許文献5には、塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和し、得られた水酸化ニッケル粒子を500〜800℃の温度で熱処理し、これにより生成される酸化ニッケル粉末をスラリー化し、湿式ジェットミルを用いて解砕すると同時に洗浄することにより、硫黄及び塩素の含有量が低く且つ微細な粒径の酸化ニッケル微粉末を得る方法が開示されている。
特開2002−198213号公報 特開2001−032002号公報 特開2004−123488号公報 特開2004−189530号公報 特開2011−042541号公報
上記の特許文献1や2の方法によれば不純物含有量の低い酸化ニッケル微粉末が得られるものの、熱処理を2回行う必要があるため生産性が低く、生産コストが高くなるという問題を抱えている。また、上記特許文献2〜4のいずれの方法においても、硫黄含有量を低減するために焙焼温度を高くすると粒径が粗大になり、また粒子を微細にするために焙焼温度を下げると硫黄含有量が高くなるため、粒径と硫黄含有量を同時に最適値に制御するのは困難である。さらに、加熱する際に大量のSOxを含むガスが発生し、これを除害処理するために高価な設備が必要になるという問題も抱えている。
一方、上記特許文献5のように、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで中和して水酸化ニッケル粒子を晶析させる場合は、得られた水酸化ニッケル粒子を焙焼することで酸化ニッケル微粉末を生成できるため、陰イオン成分由来のガスの発生を少なくでき、よって排ガス処理は不要となるか若しくは簡易な設備でよく、低コストでの製造が可能になると考えられる。さらに特許文献5の酸化ニッケル微粉末の製造方法は、原料に塩化ニッケルを用いているので硫黄品位の低減が可能である。
しかしながら、特許文献5の技術では硫黄品位を所定の範囲内に制御することは困難であった。すなわち、酸化ニッケル微粉末は、電子部品材料としての用途、特にフェライト部品の原料として用いる場合は、硫黄等の不純物の含有量を単に低減するだけでなく、硫黄の含有量を所定の範囲内に厳密に制御することを要求されることがある。このように、電子部品材料として用いられる酸化ニッケル微粉末の場合は、粒径の微細化と不純物の低減に加えて、硫黄の含有量の厳密な制御が必要になることがある。さらに、特許文献5の技術は湿式解砕を要件としているため、この湿式解砕後の乾燥時に粒子同士が凝集するおそれがある上、乾燥に要するエネルギーがコスト的に不利になることがあった。
上記のように、従来の技術では微細な粒子径を有すると共に硫黄含有量が制御された酸化ニッケル微粉末を低コストで作製するのは困難であり、更なる改善が望まれていた。本発明は、上記した従来の技術が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、ナトリウム等の総アルカリ金属及び硫黄等の不純物品位が低く、電子部品用材料や固体酸化物形燃料電池の電極用材料として好適な微細な酸化ニッケル微粉末を低コストで作製することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、酸化ニッケル微粉末の製造プロセスについて鋭意研究を重ねた結果、湿式法で生成した水酸化ニッケル等のニッケル塩の中間体を、非還元性で且つ低酸素分圧雰囲気で焼成することにより、特に洗浄処理を施すことなく微細な酸化ニッケル粉末中の硫酸根や硫黄分を効率的に低減できる事を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の酸化ニッケル微粉末の製造方法は、硫酸ニッケル水溶液を塩基性水溶液で中和してニッケル塩の中間体粒子を晶析する工程と、得られた中間体粒子の焼成処理により酸化ニッケル粉末を生成する工程と、得られた酸化ニッケル粉末を解砕して微粒子にする工程とを含み、前記焼成処理を温度550〜950℃の範囲内で且つ酸素分圧5kPa以下の非還元性雰囲気下で行うことを特徴としている。
本発明によれば、フェライト部品などの電子部品用材料や電池用材料として好適な硫黄含有量が低く且つ微細な酸化ニッケル微粉末を低コストで作製することができる。
以下、本発明の酸化ニッケル微粉末の製造方法の一具体例について説明する。この本発明の一具体例の酸化ニッケル微粉末の製造方法は、硫酸ニッケル水溶液と塩基性水溶液との中和反応により水酸化ニッケル等のニッケル塩の中間体粒子を晶析する中和工程と、得られた中間体粒子を、温度550〜950℃の範囲内であって且つ酸素分圧5kPa以下の非還元性雰囲気で焼成処理して酸化ニッケル粉末を得る焼成工程と、得られた酸化ニッケル粉末を解砕する解砕工程とからなる。以下、これら一連の工程からなる酸化ニッケル微粉末の製造方法を工程ごとに詳細に説明する。
(中和工程)
先ず中和工程では、原料としての硫酸ニッケルの水溶液に対して、中和剤としての塩基性水溶液を添加して中和反応を生じさせ、水酸化ニッケル等のニッケル塩の中間体粒子を晶析させる。原料として用いる硫酸ニッケルは、例えば硫酸ニッケル六水和物等を用いるのが好ましく、これを水で希釈して水溶液とする。なお、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末は電子部品用材料や電池用材料として主に用いられるため、それらの腐食を防止するため、原料や中和剤中に含まれる不純物が100質量ppm未満であることが望ましい。
硫酸ニッケル水溶液中のニッケル濃度は特に限定はないが、生産性を考慮するとニッケル濃度で50〜150g/Lが好ましい。この濃度が50g/L未満では生産性が悪くなる。一方、150g/Lを超えると水溶液中の陰イオン濃度が高くなりすぎ、生成した水酸化ニッケル中の硫黄品位が高くなるため、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末中の不純物品位が十分に低くならない場合がある。
中和剤として用いる塩基性水溶液には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような水酸化塩、炭酸ナトリウムのような炭酸塩、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムのような硝酸塩を用いることができる。これら中和剤を用いた中和反応により得られる中間体粒子は、水酸化塩の場合は水酸化ニッケル粒子、炭酸塩の場合は炭酸ニッケル粒子、硝酸塩の場合は硝酸ニッケルとなる。
上記の塩基性水溶液は、これらの2種以上の混合液でもよく、この場合に生成される中間体粒子は、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、及び硝酸ニッケルのうち2種以上が混合した粒子となる。中和反応時の液中に残留するニッケルの量を考慮すると、上記塩基性水溶液は水酸化塩とするのが好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましく、コストを考慮すると水酸化ナトリウムが特に好ましい。この塩基性水溶液にはアルコール等の水溶性有機溶媒を混合させてもよい。
中和反応時の液温は一般的な反応条件であれば特に制約はなく、常温で行うことも可能であるが、水酸化ニッケル粒子を十分に成長させるため、液温を50〜70℃とすることが好ましい。このように中間体粒子を十分に成長させることで、中間体粒子中に硫黄が過度に含まれるのを防止することができる。上記中和反応により晶析した中間体粒子には硫黄が含まれており、例えば中間体粒子が水酸化ニッケル粒子の場合は1〜3質量%程度の硫黄を含有している。一方、原料に塩化ニッケルを用いないため塩素が混入する虞がほとんどなく、原料に不可避的に含まれる不純物以外は実質的に塩素を含有しない中間体粒子となる。
上記の中和反応の終了後は、晶析した中間体粒子を含むスラリーを濾過して中間体粒子を濾過ケーキの形態で回収する。この濾過ケーキは、次の焼成工程に移る前に洗浄することが好ましい。洗浄はレパルプ洗浄とすることが好ましく、洗浄に用いる洗浄液としては水が好ましく、純水が特に好ましい。洗浄時の中間体粒子と水の混合割合は特に限定はなく、中間体粒子であるニッケル塩に含まれる陰イオン、特に硫酸イオン等の成分が、十分に除去できる混合割合とすればよい。洗浄後は必要に応じて脱水した後、乾燥するのが好ましい。
(焼成工程)
次に焼成工程では、上記の中和工程で得た中間体粒子を熱処理して酸化ニッケル粉末の生成、即ち焼成が行われる。この熱処理は、温度が550〜950℃の範囲内で且つ酸素分圧が5kPa以下の非還元性雰囲気下で行われる。上記にて説明した通り、中間体粒子は硫黄を含有している。この硫黄は主に原料に由来する硫酸の形態を有しており、大部分は硫酸ニッケルのままで中間体粒子内若しくはその表面に存在している。この硫酸ニッケルは焼成により下記式1の通り分解、揮発して酸化ニッケルとなる。この式1に示す反応における分解反応を促進するため、焼成時の雰囲気を上記したように非還元性で且つ低酸素分圧にするのが良いと考えられる。
[式1]
2NiSO → 2NiO + 2SO + O
焼成時の雰囲気の具体的な酸素分圧の値としては、5kPa以下にする。この酸素分圧は3kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましい。この酸素分圧が5kPaを超えると、上記式1における分解反応進みにくくなり、酸化ニッケル粉末の硫黄含有量が低下せず、解砕後の酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量が200質量ppmを超えることがある。酸素分圧の下限は特に限定はないが、10Paにすれば十分に酸化ニッケル粉末の硫黄含有量を低減することができる。もちろん酸素分圧が10Paよりもさらに低い場合を除外するものではない。
さらに、水酸化ニッケル等の中間体粒子が還元されてニッケルになるのを防止するため、焼成時の雰囲気を非還元性にする。例えば、焼成時の雰囲気を構成するガスの主成分を、窒素、二酸化炭素、水蒸気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる1種にすればよい。具体的には、炉内にこれら窒素、二酸化炭素、水蒸気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる1種のガスを供給したり、これらガスのいずれかを主成分とする低酸素濃度のガスを供給したりしながら焼成すればよい。あるいは、炉内雰囲気の排気により酸素分圧5kPa以下にまで減圧した状態で焼成してもよい。
焼成時の雰囲気温度を550〜950℃の範囲内にする理由は、この温度が550℃未満では、上記式1の分解反応が進行しにくくなり硫黄成分が残留するため、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量が200質量ppmを超えることがあるからである。一方、この温度が950℃を超えると、中間体粒子の熱分解で生成した酸化ニッケル粉末同士の焼結が進行して、次工程で解砕を行っても焼結した粉末の分離が困難となり、電子部品用材料や電池用材料としては適さない程度に小さな比表面積を有するD50の大きな粉末となってしまう。この焼成を行う装置は特に限定はなく、公知の装置を使用してもよいが、焼成時に発生する分解ガスを効率よく排出するため、炉内に強制的に雰囲気ガスを導入したり、炉内の雰囲気を強制的に排気する機構を有する装置を用いるのが好ましい。
(解砕工程)
次に解砕工程では、上記焼成により得た酸化ニッケル粉末の焼結体を物理的に分離、破壊して酸化ニッケル微粉末を形成する。上記焼成工程では中間体粒子が熱分解されて酸化ニッケル粉末が生成されるが、その際、粒径の微細化が起こると共に、高温の熱処理の影響で酸化ニッケル粉末同士の焼結がある程度進行する。この焼結体を破壊するため、この工程では焼成後の酸化ニッケル粉末に対して解砕処理を行い、これにより酸化ニッケル微粉末を得るものである。解砕に用いられる装置は特に限定はなく、公知のものを用いることができる。例えば、ビーズミルやボールミル等の解砕メディアを用いた解砕装置や、ジェットミル等の解砕メディアを用いずに流体エネルギーを利用した解砕装置などを用いることができる。
(酸化ニッケル微粉末の物性)
上記した本発明の一具体例の製造方法により得られる酸化ニッケル微粉末は、ニッケル鍍金等に広く用いられる硫酸ニッケルを原料に用いても、レーザー散乱法で測定した中心粒径(粒度分布上で体積積算50%となるD50)が1μm以下でありながら低硫黄含有量を実現することができる。従って、この酸化ニッケル微粉末は、電子部品用材料や電池用材料として特に好適である。
即ち、原料や中和剤から不可避不純物として混入する以外に塩素が混入する工程を含まないので、塩素含有量が極めて低い。加えて、硫黄含有量が制御されていて微細である。具体的には、硫黄含有量が200質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下であり、レーザー散乱法で測定したD50が1μm以下、より好ましくは0.2〜0.8μm、さらに好ましくは0.3〜0.5μmである。従って、電子部品材料、特にフェライト部品用の材料や、電池材料、特に固体酸化物形燃料電池の電極用材料として好適である。なお、固体酸化物形燃料電池の電極用材料としては、硫黄含有量が100質量ppm以下であることが好ましいとされている。
以下、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた酸化ニッケル微粉末の粒径及び比表面積、酸化ニッケル微粉末又はその中間体粒子の硫黄分析方法は、以下の通りである。
(1)酸化ニッケル微粉末の粒径の測定:粒子径測定装置(Microtrac 320−X100、Microtrac Inc製)を用いて、レーザー回折・散乱法で測定し、その粒度分布から体積積算50%となる粒径D50を求めた。
(2)酸化ニッケル微粉末の比表面積の測定:比表面積測定装置(NOVA 1000e、ユアサアイオニクス社製)を用いて、BET法で行なった。
(3)酸化ニッケル微粉末又はその中間体粒子の硫黄分析:ICP発光分光分析法で行なった。
(実施例1)
硫酸ニッケルの水溶液を撹拌しながら、水酸化ナトリウムによりpH8.0、液温60℃の条件下で中和し、得られた水酸化ニッケル沈殿物を水洗、脱水、乾燥して水酸化ニッケル粒子とした。得られた水酸化ニッケル粒子の硫黄含有量は、2.0質量%であった。この粒子10gをアルミナの試料皿に充填し、長尺石英管にヒーターを付設した管状炉に装填した。
この長尺石英管の端部から窒素濃度が99.99vol%で且つ酸素分圧が0.1kPa未満の非還元性ガスを毎分1Lで導入し、この気流雰囲気の下、上記の水酸化ニッケル粒子を800℃で5時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末状にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が120質量ppm、D50が0.31μm、比表面積が4.8m/gであった。
(実施例2)
焼成時の温度を800℃に代えて850℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が60質量ppm、D50が0.39μm、比表面積が4.3m/gであった。
(実施例3)
焼成時の温度を800℃に代えて900℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が30質量ppm、D50が0.43μm、比表面積が3.8m/gであった。
(実施例4)
焼成時の温度を800℃に代えて700℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が150質量ppm、D50が0.61μm、比表面積が15m/gであった。
(実施例5)
焼成時の温度を800℃に代えて600℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が170質量ppm、D50が0.87μm、比表面積が28m/gであった。
(実施例6)
中和時のpHを8.0に代えて8.5にした以外は上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子を生成したところ、その硫黄含有量は1.8質量%になった。この粒子100gを小型転動炉に充填し、窒素濃度99.99vol%で且つ酸素分圧0.1kPa未満の非還元性ガスを毎分10Lで導入し、この気流雰囲気の下、上記の水酸化ニッケル粒子を850℃で2時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末状にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が120ppm質量、D50が0.33μm、比表面積が4.6m/gであった。
(実施例7)
焼成時の温度を850℃に代えて900℃にした以外は上記実施例6と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が80質量ppm、D50が0.40μm、比表面積が4.3m/gであった。
(実施例8)
焼成時の温度を850℃に代えて600℃にした以外は上記実施例6と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が190質量ppm、D50が0.88μm、比表面積が31m/gであった。
(実施例9)
上記実施例6と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製し、その粒子20gをアルミナの匣鉢に充填してから小型減圧加熱炉内に載置し、排気量と吸気量とを調整して炉内の圧力が20kPa以下、炉内の酸素分圧が4kPa以下の非還元性雰囲気において、850℃で2時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末状にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が100質量ppm、D50が0.40μm、比表面積が4.4m/gであった。
(実施例10)
上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子を管状炉に装填した後、長尺石英管の端部から酸素濃度5vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧が5kPaの非還元性ガスの気流雰囲気の下、900℃で5時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末にした。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が190質量ppm、D50が0.38μm、比表面積が4.0m/gであった。
(実施例11)
長尺石英管の端部から酸素濃度3vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧3kPaの非還元性ガスの気流雰囲気の下で焼成した以外は上記実施例10と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が150質量ppm、D50が0.39μm、比表面積が4.0m/gであった。
(実施例12)
長尺石英管の端部から酸素濃度1vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧1kPaの非還元性ガスの気流雰囲気の下で焼成した以外は上記実施例10と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が90質量ppm、D50が0.42μm、比表面積が3.9m/gであった。
(比較例1)
長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧が21kPaの大気の気流雰囲気の下で焼成した以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が340質量ppm、D50が0.30μm、比表面積が5.3m/gであった。
(比較例2)
長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧21kPaの大気の気流雰囲気の下、850℃で5時間の条件で焼成した以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が230質量ppm、D50が0.35μm、比表面積が4.4m/gであった。
(比較例3)
上記実施例6と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製し、これを上記実施例1と同様にして管状炉に装填した後、長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧21kPaの大気の気流雰囲気の下、850℃で2時間の条件で焼成した。これにより得た酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して微粉末にした。得られた酸化ニッケル粉末は、硫黄含有量が270質量ppm、D50が0.31μm、比表面積が4.8m/gであった。
(比較例4)
長尺石英管の端部から空気を毎分1Lで導入し、酸素分圧21kPaの大気の気流雰囲気の下、600℃で5時間の条件で焼成した以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が470質量ppm、D50が0.90μm、比表面積が29m/gであった。
(比較例5)
焼成時の温度を800℃に代えて1000℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が50質量ppm、D50が1.6μm、比表面積が1.7m/gであった。
(比較例6)
焼成時の温度を800℃に代えて500℃にした以外は上記実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が270質量ppm、D50が1.1μm、比表面積が65m/gであった。
(比較例7)
長尺石英管の端部から酸素濃度10vol%の酸素と窒素の混合ガスを毎分1Lで導入し、酸素分圧10kPaの気流雰囲気の下、焼成した以外は上記実施例10と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が210質量ppm、D50が0.38μm、比表面積が4.1m/gであった。上記した実施例及び比較例の結果を下記表1にまとめて示す。
Figure 2018065700
上記表1の結果から分かるように、全ての実施例において、電子部品用材料として好適な、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量が200質量ppm以下で且つD50が1μm以下であり、硫黄含有量が低減された微細な酸化ニッケル粉末が得られた。特に実施例2、3、7、9、12は硫黄含有量が100質量ppm以下であり、固体酸化物形燃料電池の電極材料としても好適である。これに対して、比較例1〜7は、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量及びD50のうちの少なくとも一方において電子部品用材料として好適な範囲内のものが得られなかった。


Claims (7)

  1. 硫酸ニッケル水溶液を塩基性水溶液で中和してニッケル塩の中間体粒子を晶析する工程と、得られた中間体粒子の焼成処理により酸化ニッケル粉末を生成する工程と、得られた酸化ニッケル粉末を解砕して微粉末にする工程とを含み、前記焼成処理を温度550〜950℃の範囲内で且つ酸素分圧5kPa以下の非還元性雰囲気下で行うことを特徴とする酸化ニッケル微粉末の製造方法。
  2. 前記非還元性雰囲気は、窒素、二酸化炭素、水蒸気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる1種を主成分とする雰囲気であることを特徴とする、請求項1に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
  3. 前記中間体粒子は、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、及び硝酸ニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
  4. 前記酸素分圧が3kPa以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに1項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
  5. 前記酸素分圧が1kPa以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに1項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
  6. 前記微粉末の硫黄含有量が200質量ppm以下であって、レーザー散乱法で測定したD50が1μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
  7. 前記硫黄含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。


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