JP2018065395A - フレキシブル銅張積層板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 狭い筐体内でも配線回路の断線や割れを防止し得る、優れた耐折り曲げ性を有するフレキシブル銅張積層板を提供する。
【解決手段】 厚み10〜15μmであり、引張弾性率6〜10GPaのポリイミド層(A)の少なくとも一方の面に、厚み10〜15μmであり、引張弾性率10〜20GPaであって、かつ厚み方向の断面における平均結晶粒径が10μm以上の銅箔(B)を有し、前記ポリイミド層(A)と銅箔(B)の厚みの比(A/B)が1〜1.09の範囲内にあることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子機器の筐体内に折り畳んで収納されるフレキシブル回路基板に用いられるフレキシブル銅張積層板に関する。
近年、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機などに代表される電子機器は、小型化、薄型化、軽量化が急速に進み、これらに使用される材料に対して、小スペースにおいても部品を収納できる高密度で高性能な材料が望まれるようになっている。フレキシブル回路基板においても、スマートフォン等の高性能小型電子機器の普及に伴い、部品収納の高密度化が進展したため、今まで以上に、より狭い筐体内にフレキシブル回路基板を収納する必要が出てきている。そのためフレキシブル回路基板の材料であるフレキシブル銅張積層板においても材料面からの耐折り曲げ性の向上が求められて来ている。
前記課題に対して、フレキシブル銅張積層板に使用するポリイミドベースフィルムやカバーフィルムの弾性率を制御することによって、フレキシブル回路基板トータルのスティフネス性を低減させることにより、耐折り曲げ性を向上させるという技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、ポリイミドやカバーフィルムの特性の制御のみでは、電子機器内に折り畳んで収納するという厳しい屈曲モードに対しては不十分であり、十分な耐折り曲げ性に優れたフレキシブル回路基板に使用し得るフレキシブル銅張積層板を提供することができない。
また、電子機器内への高密度化の観点から、銅箔側からのアプローチとして、銅箔の結晶粒径サイズに着目して、耐スプリングバック性を抑えた熱処理用銅箔が報告されている(特許文献2参照)。本技術は、銅箔中に種々の適切な添加剤を入れた圧延銅箔を用いて、結晶粒の肥大化に充分な熱量を加えることにより結晶粒径を大きく成長させ、その結果、銅箔の耐スプリングバック性を改良しようという技術である。
しかしながら、スマートフォンに代表される小型電子機器に対しては、更なる高密度化が要請されている。そのため、前記従来技術だけでは、更なる高密度化の要請に応えることが難しい。
特開2007−208087号公報 特開2010−280191号公報
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものである。その目的は、狭い筐体内でも配線回路の断線や割れを防止し得る、優れた耐折り曲げ性を有するフレキシブル銅張積層板を提供するものである。
前記問題点を解決するために、本発明者等が検討した結果、銅箔及びポリイミドフィルムの特性を最適化すると共に、銅張積層板を配線回路加工した配線回路基板の特性に着目することで、前記課題を解決し得る銅張積層板を提供し得ることを見出し、本発明を完成した。
本明細書においては、厚み10〜25μmであり、引張弾性率4〜10GPaのポリイミド層(A)の少なくとも一方の面に、厚み8〜20μmであり、引張弾性率10〜20GPaであって、かつ厚み方向の断面における平均結晶粒径が10μm以上の銅箔(B)を有して、電子機器の筐体内に折り畳んで収納されるフレキシブル回路基板に用いられるフレキシブル銅張積層板であって、当該フレキシブル銅張積層板の銅箔を配線回路加工して銅配線を形成した任意のフレキシブル回路基板のギャップ0.3mmでの折り曲げ試験での、下記式(I)によって計算される折れ癖係数[PF]が0.96±0.02の範囲にあることを特徴とするフレキシブル銅張積層板を開示する。
Figure 2018065395

(式(I)において、|ε|は銅配線の屈曲平均ひずみ値の絶対値であり、e Cは銅配線の引張弾性限界ひずみである。)
すなわち、本発明は、厚み10〜15μmであり、引張弾性率6〜10GPaのポリイミド層(A)の少なくとも一方の面に、厚み10〜15μmであり、引張弾性率10〜20GPaであって、かつ厚み方向の断面における平均結晶粒径が10μm以上の銅箔(B)を有し、前記ポリイミド層(A)と銅箔(B)の厚みの比(A/B)が1〜1.09の範囲内にあることを特徴とするフレキシブル銅張積層板である。
上記フレキシブル銅張積層板は、ポリイミド層(A)が、熱膨張係数30×10-6/K未満の低熱膨張性のポリイミド層(i)と熱膨張係数30×10-6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層(ii)とからなり、高熱膨張性のポリイミド層(ii)が直接銅箔(B)と接しているのが好ましい。加えて、好ましくは、高熱膨張性のポリイミド層(ii)と銅箔(B)との接触面における銅箔(B)の表面粗さ(Rz)が0.5〜1.5μmの範囲にあるのがよい。
上記銅箔(B)の厚み方向の断面における平均結晶粒径が10〜60μmの範囲であるのが好ましい。
本発明のフレキシブル銅張積層板は、配線基板に要求される高い耐折り曲げ性を発現し得ることから、特に、スマートフォン等の小型液晶周りの折り曲げ部分等の耐折り曲げ性が要求される電子部品に好適に用いられる。
図1は、本発明のフレキシブル銅張積層板の銅箔を配線回路加工して得たフレキシブル回路基板を示す斜視説明図である。 実施例で用いた試験回路基板片の銅配線の様子を示す平面説明図である。 折り曲げ試験での試料ステージと試験回路基板片との様子を示す側面説明図である(試料ステージ上に試験回路基板片を固定した状態図)。 折り曲げ試験での試料ステージと試験回路基板片との様子を示す側面説明図である(試験回路基板片の折り曲げ箇所をローラーで押さえる手前の状態図)。 折り曲げ試験での試料ステージと試験回路基板片との様子を示す側面説明図である(試験回路基板片の折り曲げ箇所をローラーで押さえた状態図)。 折り曲げ試験での試料ステージと試験回路基板片との様子を示す側面説明図である(折り曲げ箇所を開いて試験片を平らな状態に戻した状態図)。 折り曲げ試験での試料ステージと試験回路基板片との様子を示す側面説明図である(折り曲げ箇所の折り目部分をローラーで押さえて均す状態図)。 フレキシブル回路基板の断面説明図(一部)である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフレキシブル銅張積層板は、銅箔(B)とポリイミド層(A)とから構成される。銅箔(B)はポリイミド層(A)の片面又は両面に設けられている。このフレキシブル銅張積層板は、銅箔をエッチングするなどして配線回路加工して銅配線を形成し、フレキシブルプリント回路基板用として使用される。
本発明のフレキシブル銅張積層板においては、ポリイミド層(A)の厚みが10〜25μmであることが必要であり、10〜20μmの範囲にあることが好ましく、10〜15μmの範囲にあることが特に好ましい。ポリイミド層(A)の厚みが10μmに満たないと、電気絶縁性が担保出来ないことや、ハンドリング性の低下により製造工程にて取扱いが困難になるなどの問題が生じる、一方、ポリイミド層(A)の厚みが25μmを超えるとフレキシブル回路基板を折り曲げた際に銅配線により曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性を著しく低下させてしまう。
また、ポリイミド層(A)の引張弾性率は4〜10GPaであることが必要であり、好ましくは6〜10GPaであるのがよい。ポリイミド層(A)の引張弾性率が4GPaに満たないとポリイミド自体の強度が低下することによって、フレキシブル銅張積層板の加工時等のハンドリングの際にフィルムの裂けなどの問題が生じ、反対に10GPaを超えると銅張積層板の折り曲げに対する剛性が上昇する結果、銅張積層板を折り曲げた際に銅配線に加わる曲げ応力が上昇し、耐折り曲げ耐性が低下してしまう。
また、銅箔(B)の厚みは8〜20μmであることが必要であり、10〜15μmの範囲が好ましい。銅箔(B)の厚みが8μmに満たないと、銅張積層板の製造時、銅箔上にポリイミド層を形成する工程において銅箔自体の剛性が低下し、その結果、銅張積層板上にシワ等が発生する問題が生じる。また、20μmを超えると、銅張積層板を折り曲げた際の銅箔に加わる曲げ応力が大きくなることにより耐折り曲げ性が低下することとなる。
また、銅箔(B)の引張弾性率については、10〜20GPaの範囲であることが必要である。銅箔(B)の引張弾性率が10GPaに満たないと、銅張積層板の製造時、銅箔上にポリイミド層を形成する工程において銅箔自体の剛性が低下し、その結果、銅張積層板上にシワ等が発生する問題が生じる。一方、引張弾性率が20Gpaを超えるとフレキシブル回路基板を折り曲げた際に銅配線により大きな曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性が著しく低下する。
更に、本発明では銅箔の厚み方向の断面における平均結晶粒径が10μm以上であることが必要であり、10〜60μmであることが好ましい。この平均結晶粒径が10μmより小さくなると、銅箔の結晶の粒界の割合が大きくなり、銅張積層板の折り曲げた際に発生するクラックの伸展がより促進されることとなり、結果として耐折り曲げ性の低下に繋がることとなる。なお、本発明で規定する銅箔断面における平均結晶粒径は、後記実施例に記載した測定方法によって求めることが出来る。
銅箔(B)の表面は、粗化処理されていてもよく、好ましくは、ポリイミド層(A)と接する銅箔表面の表面粗さ(Rz)は0.5〜1.5μmであるのがよい。表面粗さ(Rz)の値が、0.5μmに満たないとポリイミドフィルムとの接着信頼性の担保が困難となり、1.5μmを超えると銅張積層板を繰り返し折り曲げた際に、その粗化粒子の凹凸がクラック発生の起点となりやすく、その結果、銅張積層板の耐折り曲げ性を低下させることとなる。なお、表面粗さRzはJIS B0601の規定に準じて測定される値である。
本発明のフレキシブル銅張積層板は、上記ポリイミド層(A)と上記銅箔(B)により構成されるが、このフレキシブル銅張積層板の銅箔を配線回路加工して銅配線を形成した任意のフレキシブル回路基板の折り曲げ試験(ギャップ0.3mm)での、下記(I)によって計算される折れ癖係数[PF]が0.96±0.02の範囲にあることが必要であり、0.96±0.01の範囲にあることがより好ましい。この折れ癖係数[PF]が上記範囲から外れると耐折り曲げ性が低下する。
[PF]=(|ε|−εc)/|ε| …(I)
式(I)において、|ε|は銅配線の屈曲平均ひずみ値の絶対値であり、εcは銅配線の引張弾性限界ひずみである。
上記のように、折れ癖係数[PF]は、銅配線の屈曲平均ひずみ値εの絶対値|ε|と銅配線の引張弾性限界ひずみεcとによって表され、屈曲平均ひずみ値εは、下記式(2)によって算出される。以下、図8に示した1層のポリイミドからなるポリイミド層11の片面側に1層の銅箔を配線回路加工した銅配線12が設けられた回路基板をモデルにし、第一層であるポリイミド層11の下面である基準面SPが下側に凸形状(屈曲部の外面)になるように回路基板を屈曲させる場合について説明する。なお、図8に示した回路基板は、回路基板の長手方向に対して垂直に切った断面(すなわち横断面)のうち、銅配線が存在する部分を示すものである。
ε=(yc−[NP]Line)/R …(2)
ここで、式(2)について、屈曲平均ひずみεは、回路基板の長手方向を2つ折りした際の純曲げによって銅配線に生じる長手方向の屈曲平均ひずみであり、式中のycは、ポリイミド層11の下面である基準面SPから銅配線12の中央面までの距離である。また、符号NPは回路基板の中立面を表している。ここで、中立面NPと基準面SPとの距離を中立面位置[NP]とし、この中立面位置[NP]については、銅箔の配線回路加工によって形成された銅配線と銅配線間に形成されるスペース部とで別々に計算する。中立面位置[NP]は、次の式(3)によって算出される。
Figure 2018065395
ここで、Eは、回路基板における第i層(図8に示した例では、第1層がポリイミド層11であり、第2層が銅配線12である)を構成する材料の引張弾性率である。この弾性率Eは、本実施の形態における「各層における応力とひずみの関係」に対応する。Bは、第i層の幅であり、図8に示した幅B(第1層の下面に平行で、回路基板の長手方向に垂直な方向の寸法)に相当する。
銅配線の中立面位置[NP]を求める場合には、Bとして銅配線の線幅LWの値を用い、スペース部の中立面位置[NP]を求める場合には、Bとして銅配線の線間幅SWの値を用いる。hは、第i層の中央面と基準面SPとの距離である。なお、第i層の中央面とは、第i層の厚み方向の中央に位置する仮想の面である。tは、第i層の厚みである。また、記号“Σi=1 ”は、iが1からnまでの総和を表す。また、銅配線における中立面位置については[NP]Lineと記す。
また、式(2)中のRは有効曲率半径を表し、有効曲率半径Rは、折り曲げ試験において回路基板を折り曲げた際の、屈曲部における屈曲中心から銅配線の中立面NPまでの距離である。すなわち、有効曲率半径Rは、ギャップ間隔Gと銅配線の中立面位置[NP]Lineとから、次の式(4)によって算出される。
R=G/2−[NP]Line …(4)
上記のように、中立面位置、有効曲率半径、屈曲平均ひずみを求めることで、回路基板全体の折れ癖の程度を表す折れ癖係数[PF]が算出される。また、この折れ癖係数[PF]は、上記の説明のとおり、回路基板を構成する各層の厚みと、回路基板を構成する各層の弾性率と、折り曲げ試験におけるギャップ間隔Gと、銅配線12における線幅LW等の各情報を用いて算出することができる。
なお、上記(図8)では、便宜上、回路基板が2層であるモデルを示し説明したが、上記説明は、回路基板が2層以上から形成される場合にも当てはまる。すなわち、回路基板1の層の数をnとした場合、nは2以上の整数であり、この回路基板を構成する各層のうち基準面SPから数えてi番目(i=1,2,…,n)の層を第i層と呼ぶ。
また、回路基板は、図1に示したように銅箔が配線回路加工によりパターニングされており、銅配線12が存在する部分と、銅配線12が存在しない部分とがある。ここで、銅配線12が存在する部分を配線部と呼び、銅配線12が存在しない部分をスペース部と呼べば、配線部とスペース部とでは、構成が異なる。例えば、図1に示した回路基板1の場合、配線部は10列の銅配線で構成され、スペース部は配線部以外で、主に銅配線間の隙間で構成される。以上より、折り癖係数の算出は、配線部とスペース部とを分けて行うことができる。
本発明のフレキシブル銅張積層板は、例えば、銅箔表面にポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリアミド酸溶液ともいう。)を塗工し、次いで、乾燥、硬化させる熱処理工程を経て製造することができる。熱処理工程における熱処理条件は、塗工されたポリアミド酸溶液を160℃未満の温度でポリアミド酸中の溶媒を乾燥除去した後、更に、150℃から400℃の温度範囲で段階的に昇温し、硬化させることで行なわれる。このようにして得られた片面フレキシブル銅張積層板を両面銅張積層板とするには、前記片面フレキシブル銅張積層板と、これとは別に準備した銅箔とを300〜400℃にて熱圧着する方法が挙げられる。
本発明のフレキシブル銅張積層板に使用する銅箔は、上記特性を充足するものであれば特に限定されるものではなく、市販されている銅箔を用いることができる。その具体例としては、圧延銅箔としてはJX日鉱日石金属株式会社製のHA箔や、TP箔が挙げられ、電解銅箔としては、古河電気工業株式会社製WS箔、日本電解株式会社製HL箔、三井金属鉱業株式会社製HTE箔などが挙げられる。また、これらの市販品を含めて、それ以外のものを使用した場合であっても、前述した銅箔上へのポリイミド層(A)を形成する際の熱処理条件などにより、銅箔(B)の引張弾性率や平均結晶粒径は変化し得るので、本発明では結果として得られたフレキシブル銅張積層板がこれら所定の範囲になればよい。
ポリイミド層(A)は、市販のポリイミドフィルムをそのまま使用することも可能であるが、絶縁層の厚さや物性のコントロールのしやすさから、ポリアミド酸溶液を銅箔上に直接塗布した後、熱処理により乾燥、硬化する所謂キャスト法によるものが好ましい。また、ポリイミド層(A)は、単層のみから形成されるものでもよいが、ポリイミド層(A)と銅箔(B)との接着性等を考慮すると複数層からなるものが好ましい。ポリイミド層(A)を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリアミド酸溶液の上に他のポリアミド酸溶液を順次塗布して形成することができる。ポリイミド層(A)が複数層からなる場合、同一の構成のポリイミド前駆体樹脂を2回以上使用してもよい。
ポリイミド層(A)について、より詳しく説明すると、上述した通りポリイミド層(A)は複数層とすることが好ましいが、具体的には、ポリイミド層(A)は、熱膨張係数30×10-6/K未満の低熱膨張性のポリイミド層(i)と熱膨張係数30×10-6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層(ii)からなることが好ましい。より好ましくは、ポリイミド層(A)は、低熱膨張性のポリイミド層(i)の少なくとも一方、好ましくはその両側に高熱膨張性のポリイミド層(ii)を有し、高熱膨張性のポリイミド層(ii)が直接銅箔(B)と接するようにすることがよい。ここで、本発明でいう低熱膨張性のポリイミド層(i)とは、熱膨張係数30×10-6/K未満のポリイミド層を言い、好ましくは1×10-6〜25×10-6/K、特に好ましくは3×10-6〜20×10-6/Kのポリイミド層をいう。また、本発明でいう高熱膨張性のポリイミド層(ii)とは、熱膨張係数30×10-6/K以上のポリイミド層を言い、好ましくは30×10-6〜80×10-6/K、特に好ましくは30×10-6〜70×10-6/Kのポリイミド層をいう。このようなポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望の熱膨張係数を有するポリイミド層とすることができる。
上記ポリイミド層を与えるポリアミド酸溶液は、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合して製造することができ、この際、重合される樹脂粘度は、500cps以上35,000cps以下の範囲とすることが好ましい。
用いられるジアミンとしては、例えば、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノジベンゾフラン、1,5-ジアミノフルオレン、ジベンゾ-p-ジオキシン-2,7-ジアミン、4,4'-ジアミノベンジルなどが挙げられる。
また、酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
ジアミン及び酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく2種以上を併用することもできる。また、重合に使用される溶媒は、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、1種又は2種以上併用して使用することもできる。
本発明において、低熱膨張性のポリイミド層(i)とするには、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることがよく、特に好ましくは、ピロメリット酸二無水物及び2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルを原料各成分の主成分とするものがよい。また、熱膨張係数30×10-6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層(ii)とするには、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることがよく、特に好ましくはピロメリット酸二無水物及び2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを原料各成分の主成分とするものがよい。
また、ポリイミド層(A)を低熱膨張性のポリイミド層(i)と高熱膨張性のポリイミド層(ii)とした場合、好ましくは、低熱膨張性のポリイミド層(i)と高熱膨張性のポリイミド層(ii)との厚み比(低熱膨張性のポリイミド層(i)/高熱膨張性のポリイミド層(ii))が2〜15の範囲であるのがよい。この比の値が、2に満たないとポリイミド層全体に対する低熱膨張性ポリイミド層が薄くなるため、ポリイミドフィルムの寸法特性の制御が困難となり、銅箔をエッチングした際の寸法変化率が大きくなり、15を超えると高熱膨張性ポリイミド層が薄くなるため、ポリイミドフィルムと銅箔との接着信頼性が低下する。なお、ポリイミド層(A)が複数層からなる場合であっても、上記折れ癖係数[PF]の算出にあたっては、ポリイミド層(A)全体の厚み、弾性率を用いることができる。
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。なお、下記の実施例における各特性評価は、以下の方法により行った。
[引張弾性率の測定]
東洋精機(株)製ストログラフR-1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張弾性率の値を測定した。
[熱膨張係数(CTE)の測定]
セイコーインスツルメンツ製のサーモメカニカルアナライザーを使用し、250℃まで昇温し、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、240℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
[表面粗さ(Rz)の測定]
接触式表面粗さ測定機((株)小坂研究所製SE1700)を用いて、銅箔のポリイミド層との接触面側の表面粗さを測定した。
[銅箔の平均結晶粒径の測定]
各実施例で製造されたフレキシブル銅張積層板について、IP(イオンポリッシュ)法により、銅箔の長手方向(MD方向)に沿って銅箔の断面形成を行い(厚み方向に切った断面)、TSL社製OIM(ソフトウェアVer5.2)を用いてEBSD(後方散乱電子線回折パターン法)により、銅箔断面の結晶粒径及び配向状態の分析を行った。その分析は、加速電圧20kV、試料傾斜角70°の条件にて行い、また、分析の範囲は、銅箔の長手方向に沿って500μmの幅で分析した。分析にて得られた逆極点図方位マップより、Σ3CSL(双晶粒界)を結晶粒界とし2〜5°の粒界を結晶粒界としない条件にて粒度分布解析を行い、結晶の面積比率による加重平均にて結晶粒径の算出を行った。
[はぜ折りの測定(折り曲げ試験)]
銅張積層板の銅箔をエッチング加工し、その長手方向に沿ってライン幅100μm、スペース幅100μmにて長さが40mmの10列の銅配線を形成した試験片(試験回路基板片)を作製した(図2)。試験片における銅配線のみを表した図2に示したように、その試験片40における10列の銅配線51は、U字部52を介して全て連続して繋がっており、その両端には抵抗値測定用の電極部分(図示外)を設けている。その試験片40を、二つ折りが可能な試料ステージ20及び21上に固定し、抵抗値測定用の配線を接続して、抵抗値のモニタリングを開始した(図3)。折り曲げ試験は、10列の銅配線51に対して、長手方向のちょうど中央部分にて、ウレタン製のローラー22を用いて、折り曲げ箇所40CのギャップGが0.3mmとなるように制御しながら折り曲げた線と並行にローラーを移動させ10列の銅配線51を全て折り曲げた後(図4及び図5)、折り曲げ部分を開いて試験片を平らな状態に戻し(図6)、折り目がついている部分を再度ローラーにて抑えたまま移動させ(図7)、この一連の工程をもってはぜ折り回数1回とカウントするようにした。その常時配線の抵抗値をモニタリングしながら、折り曲げ試験を繰り返し、所定の抵抗(3000Ω)になった時点を配線の破断と判断し、その時までに繰り返した折り曲げ回数をはぜ折り測定値とした。
実施例、比較例に記載のフレキシブル銅張積層板の製造方法について次に示す。
[ポリアミック酸溶液の合成]
(合成例1)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、この反応容器に2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を投入して容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が12wt%となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸aの樹脂溶液を得た。
ポリアミド酸aから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、55×10-6/Kであった。
(合成例2)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、この反応容器に2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m-TB)を投入して容器中で攪拌しながら溶解させた。次に、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が15wt%、各酸無水物のモル比率(BPDA:PMDA)が20:80となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸bの樹脂溶液を得た。
ポリアミド酸bから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、22×10-6/Kであった。
(合成例3)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、この反応容器に2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m-TB)および4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)を各ジアミンのモル比率(m-TB:DAPE)が60:40となるように投入して容器中で攪拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が16wt%となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸cの樹脂溶液を得た。
ポリアミド酸cから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、22×10-6/Kであった。
(実施例1)
厚さ12μmで長尺状の銅箔の片面(表面粗さRz=0.8μm)に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.2μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、この塗布面側に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが7.6μmとなるように均一に塗布し、135℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、この塗布面側に第1層目で塗布したものと同じポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.2μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。この長尺状の積層体を130℃から開始して300℃まで段階的に温度が上がるように設定した連続硬化炉にて、合計6分程度の時間をかけて熱処理し、ポリイミド層の厚みが12μmの片面フレキシブル銅張積層板を得た。
得られたフレキシブル銅張積層板を構成する銅箔の引張弾性率、銅箔断面の平均結晶粒径、ポリイミド層の引張弾性率等の物性値、折れ癖係数、フレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ性の評価結果を表1に示す。なお、ポリイミド層の評価は製造された銅張積層板から銅箔をエッチング除去したものを用いた。
ここで、実施例で製造した銅張積層板の折れ癖係数[PF]の算出について、実施例1を例に具体的な計算手順を説明する。
銅配線12が存在する配線部について図8に示すような2層構成を考え、第1層および第2層を構成する材料をそれぞれポリイミドおよび銅とする。表1(実施例1)に示した通り、各層の弾性率はE1=7.2GPa、E2=14GPa、厚みはt=t=12μmである。また、各層における厚さ方向での中央面と基準面SPとの距離はそれぞれh=6μm、h=18μmである。更に、幅Bについては、銅配線12の幅Bとスペース部の幅B2‘はともに100μmであり、また、銅配線12が存在する直下のポリイミドの幅Bも100μmとした(スペース部の直下のポリイミドの幅B1’も100μm)。
これらの値を式(3)に代入すると、先ず、銅配線12が存在する配線部での中立面位置は[NP]=13.9μmと計算される。次に、この中立面位置[NP]とギャップ間隔G=0.3mmを式(4)に代入して、有効屈曲半径R=0.136mmと計算される。さらに、基準面SPと銅配線12の中央面までの距離ycはyc=h=18μmであるから、屈曲平均ひずみεはこのycと先に求めた[NP]、Rの値を式(2)に代入してε=-0.02995と計算される。ここでマイナスの符号は圧縮ひずみであることを表している。実施例1での銅配線となっている銅箔の引張試験より得た応力−ひずみ曲線より銅配線の引張弾性限界ひずみεcはεc=0.0012と決定した。これと先に求めた屈曲平均ひずみεの値を式(I)に代入すると折れ癖係数[PF]は[PF]=0.960と計算される。なお、本実施例においては、スペース部はポリイミド層のみから構成されていることから[NP]を求める操作は必要とせず、表1中の他の実施例、参考例、比較例の折れ癖係数も以上の手順で計算された値である。
(実施例2)
銅箔として、表1に示した特性を有する厚さ12μmの市販の圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.0μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての耐折り曲げ性の評価結果を表1に示す。
(参考例1)
銅箔として、表1に示した特性を有する厚さ18μmの市販の圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての耐折り曲げ性の評価結果を表1に示す。
(参考例2)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmで長尺状の市販の圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.0μm)上に、合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、この塗布面側に合成例3で調製したポリアミド酸cの樹脂溶液を硬化後の厚みが20.0μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、この塗布面側に第1層目で塗布したものと同じポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。この長尺状の積層体を130℃から開始して300℃まで段階的に温度が上がるように設定した連続硬化炉にて、合計6分程度の時間をかけて熱処理し、ポリイミド樹脂層厚み25μmの片面フレキシブル銅張積層板を得た。
得られたフレキシブル銅張積層板を構成する銅箔の引張弾性率、銅箔断面の平均結晶粒径、ポリイミド層の引張弾性率等の物性値、フレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ性の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmの圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての耐折り曲げ性の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
表1に示した特性を有し、厚さ11μmの圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=0.8μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての耐折り曲げ性の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmの圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を使用し、ポリイミド層の厚み構成を以下のように変更した以外は実施例4と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。
ここで、ポリイミド層の厚み構成は、銅箔上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが4.0μm、その上に合成例3で調製したポリアミド酸cの樹脂溶液を硬化後の厚みが42.0μm、更にその上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが4.0μmとなるようにした。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての耐折り曲げ性の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
表1に示した特性を有し、厚さ18μmの市販の圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.0μm)を使用し、ポリイミド層の厚み構成を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。
ここで、ポリイミド層の厚み構成は、銅箔上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μm、その上に合成例3で調製したポリアミド酸cの樹脂溶液を硬化後の厚みが20.0μm、更にその上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるようにした。
(比較例3)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmの電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.3μm)を使用し、ポリイミド層の厚み構成を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。
ここで、ポリイミド層の厚み構成は、銅箔上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.0μm、その上に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが8.0μm、更にその上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.0μmとなるようにした。
(比較例4)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmの電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=2.1μm)を使用し、ポリイミド層の厚み構成を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。
ここで、ポリイミド層の厚み構成は、銅箔上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μm、その上に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが20.0μm、更にその上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるようにした。
(比較例5)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmで長尺状の電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.4μm)を使用し、ポリイミド層の厚み構成を以下のように変更した以外は実施例4と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。
ここで、ポリイミド層の厚み構成は、銅箔上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが4.0μm、その上に合成例3で調製したポリアミド酸cの樹脂溶液を硬化後の厚みが42.0μm、更にその上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが4.0μmとなるようにした。
Figure 2018065395
1:回路基板
11:ポリイミド層
12、51:銅配線
20、21:試料ステージ
22:ローラー
40:試験片
40C:試験片の折り曲げ箇所
52:銅配線のU字部

Claims (4)

  1. 厚み10〜15μmであり、引張弾性率6〜10GPaのポリイミド層(A)の少なくとも一方の面に、
    厚み10〜15μmであり、引張弾性率10〜20GPaであって、かつ厚み方向の断面における平均結晶粒径が10μm以上の銅箔(B)を有し、
    前記ポリイミド層(A)と銅箔(B)の厚みの比(A/B)が1〜1.09の範囲内にあることを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
  2. ポリイミド層(A)が、熱膨張係数30×10−6/K未満の低熱膨張性のポリイミド層(i)と熱膨張係数30×10−6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層(ii)とからなり、高熱膨張性のポリイミド層(ii)が直接銅箔(B)と接している請求項1に記載のフレキシブル銅張積層板。
  3. 高熱膨張性のポリイミド層(ii)と銅箔(B)との接触面における銅箔(B)の表面粗さ(Rz)が0.5〜1.5μmの範囲にある請求項1又は2に記載のフレキシブル銅張積層板。
  4. 銅箔(B)の厚み方向の断面における平均結晶粒径が10〜60μmの範囲である請求項1〜3の何れかに記載のフレキシブル銅張積層板。
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