JP2018065125A - ホウ素含有水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ホウ素含有水に炭酸根が含まれていても、ホウ素を除去できるホウ素含有水の処理方法を提供する。
【解決手段】炭酸根を含有するホウ素含有水にリン源を添加し、ついで、ホウ素含有水にカルシウム源を添加し、ハイドロキシアパタイトを生成してホウ素を共沈させる。リン源の添加量をB/Pが0.08〜0.14となる量とする。カルシウム源の添加量をP/Caが0.3〜0.45となる量とする。ホウ素含有水に炭酸根が含まれていても、ホウ素を除去できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホウ素含有水の処理方法に関する。さらに詳しくは、炭酸根を含有するホウ素含有水からホウ素を除去するホウ素含有水の処理方法に関する。
ホウ素を含有する水(以下、「ホウ素含有水」という。)は、自然界において地下水、海水などとして存在している。また、ホウ素はホウ素化合物を原材料として使用する工業、例えば、ガラス工業をはじめ、医薬、化粧品原料、石鹸工業、電気めっき工業などで生じる廃水、発電所から生じる廃水、ゴミ焼却場で生じる洗煙廃水などの廃水に含まれている。ホウ素含有水の起源によっては、炭酸根も同時に含有される場合がある。
ホウ素は、動植物にとって必須の微量栄養素であるが、その反面、農業用水中に数mg/L以上の濃度で含まれている場合、植物の成長を阻害することが知られている。また、ホウ素を人体に継続的に摂取したとき、健康障害が生じるおそれがあることから、ホウ素の人体摂取量が法令で規制されている。例えば、水道水の水質基準では水道水に含まれるホウ素濃度が1.0mg/L以下に規制されている。また、海域へのホウ素の排水基準ではホウ素濃度が230mg/L以下、海域外への排水基準ではホウ素濃度が10mg/L以下に規制されている。そこで、ホウ素を含有する廃水は、ホウ素を除去する処理を行った後に、放流される。
ホウ素含有水からホウ素を除去する方法として、アルミニウムや鉄などの水酸化物とともにホウ素を沈殿させる沈殿法、ジルコニウムやマグネシウムなどの水酸化物にホウ素を吸着させる吸着法、ホウ素含有水を蒸発濃縮してホウ酸を晶析する蒸発濃縮法、アルコール基を有する溶媒によりホウ素を抽出分離する溶媒抽出法、逆浸透膜を用いてホウ素を分離除去する逆浸透膜法などの種々の方法が知られている。
しかしながら、沈殿法は、低濃度のホウ素を沈殿させるために共沈剤を多量に添加するため操業資材が多量に必要であり、またホウ素含有澱物である汚泥の発生量が多いという問題がある。吸着法は、ジルコニウムやマグネシウムなどの水酸化物へのホウ素の吸着容量が低いため、多量の吸着剤の添加が不可欠であり、効率性と経済性において実用的でない。蒸発濃縮法は、ホウ素含有水を濃縮しホウ酸を晶析させるために熱源が必要であり、特にホウ素濃度が低い廃水を対象とする場合には、莫大なエネルギーを必要とするので経済的でない。しかも、晶析後のホウ素含有水の中和処理が必要となる。溶媒抽出法は、有機溶媒からホウ素を逆抽出して得られるホウ素含有液の処理のほかに、有機溶媒が微量溶解している処理後の廃水の処理が不可欠である。活性炭などにより有機溶媒を回収除去するなどの処理が必要であり経済的でない。逆浸透膜法は、この方法のみで低濃度になるまでホウ素を除去することが困難であるので、他の方法との併用が必要である。また、膜の閉塞による効率悪化の問題がある。
特許文献1には、ホウ素を含有する廃水に、アルミニウム化合物、硫酸化合物、カルシウム化合物、およびpH調整剤を同時に添加して、pHをアルカリ性に調整した反応液中に析出物を析出させる方法が開示されている。この方法によれば、ホウ素を取り込んだエトリンガイトを析出させることで、廃水からホウ素を除去できる。
特開2014−144433号公報
しかし、本願発明者は、ホウ素含有水に炭酸根が含まれていると、エトリンガイトの生成が阻害され、ホウ素を除去できないとの知見を得た。また、その他の方法についても、炭酸根を含有するホウ素含有水からホウ素を除去することが困難であるとの知見を得た。
本発明は上記事情に鑑み、ホウ素含有水に炭酸根が含まれていても、ホウ素を除去できるホウ素含有水の処理方法を提供することを目的とする。
第1発明のホウ素含有水の処理方法は、炭酸根を含有するホウ素含有水にリン源を添加し、ついで、前記ホウ素含有水にカルシウム源を添加し、ハイドロキシアパタイトを生成してホウ素を共沈させることを特徴とする。
第2発明のホウ素含有水の処理方法は、第1発明において、前記リン源はリン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸であることを特徴とする。
第3発明のホウ素含有水の処理方法は、第1または第2発明において、前記カルシウム源は水酸化カルシウム、または水酸化焼成ドロマイトであることを特徴とする。
第4発明のホウ素含有水の処理方法は、第1、第2または第3発明において、前記リン源の添加量を、添加後の溶液のリンに対するホウ素のモル比が0.08〜0.14となる量とすることを特徴とする。
第5発明のホウ素含有水の処理方法は、第1、第2、第3または第4発明において、前記カルシウム源の添加量を、添加後の溶液のカルシウムに対するリンのモル比が0.3〜0.45となる量とすることを特徴とする。
第6発明のホウ素含有水の処理方法は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記ホウ素含有水に前記リン源を添加した後、前記カルシウム源を添加する前に、前記ホウ素含有水のpHを4.7〜5.2に調整することを特徴とする。
第7発明のホウ素含有水の処理方法は、第1、第2、第3、第4、第5または第6発明において、前記ホウ素含有水に前記カルシウム源を添加する前に、前記ホウ素含有水にアルミニウムイオンを共存させることを特徴とする。
第8発明のホウ素含有水の処理方法は、第7発明において、前記ホウ素含有水のアルミニウム濃度を0.2〜0.4mMに調整することを特徴とする。
本発明のホウ素含有水の処理方法によれば、ホウ素含有水に炭酸根が含まれていても、ホウ素を除去できる。
実施例1、2における濾液の分析結果を示すグラフである。 実施例1における残渣のXRDスペクトルである。 実施例2における残渣のXRDスペクトルである。 実施例3、4における濾液の分析結果を示すグラフである。 実施例1〜4における濾液の分析結果を示すグラフである。 実施例3における残渣のXRDスペクトルである。 実施例4における残渣のXRDスペクトルである。 実施例3〜6における濾液の分析結果を示すグラフである。 実施例5における残渣のXRDスペクトルである。 実施例6における残渣のXRDスペクトルである。 実施例9〜12における濾液の分析結果を示すグラフである。 実施例9における残渣のXRDスペクトルである。 実施例12における残渣のXRDスペクトルである。 実施例9〜12における残渣の溶出試験の結果を示すグラフである。 実施例13、14における濾液の分析結果を示すグラフである。 実施例13における残渣のXRDスペクトルである。 実施例14における残渣のXRDスペクトルである。 実施例15における濾液の分析結果を示すグラフである。 実施例15における残渣のXRDスペクトルである。 実施例1〜15の条件および測定結果をまとめた表である。
つぎに、本発明の一実施形態を説明する。
本発明の一実施形態に係るホウ素含有水の処理方法は、炭酸根を含有するホウ素含有水からホウ素を除去する方法である。具体的には、ホウ素含有水にリン源を添加し(第1工程)、ついで、ホウ素含有水にカルシウム源を添加し(第2工程)、ハイドロキシアパタイトを生成してホウ素を共沈させる。
ここで、リン源としてリン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸(H3PO4)などが用いられる。また、カルシウム源として水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化焼成ドロマイトなどが用いられる。
なお、水酸化焼成ドロマイトは天然産物であるドロマイトに対して焼成、水和などの処理をして製造される工業製品である。水酸化焼成ドロマイトは一般的な試薬に比べて安価である。例えば、水酸化焼成ドロマイト1gには、水酸化カルシウム7.65mmol、酸化カルシウム0.59mmol、水酸化マグネシウム3.81mmol、酸化マグネシウム2.53mmolが含まれる。
第1工程において、リン源の添加量を、添加後の溶液のリンに対するホウ素のモル比(以下、「B/P」という。)が0.08〜0.14となる量とすることが好ましい。ホウ素に対してリンを過剰にすることで、ホウ素がハイドロキシアパタイトの結晶に取り込まれる機会が増えると推測される。
第2工程において、カルシウム源の添加量を、添加後の溶液のカルシウムに対するリンのモル比(以下、「P/Ca」という。)が0.3〜0.45となる量とすることが好ましい。ハイドロキシアパタイトはCa10(PO4)6(OH)2で表されP/Ca=0.6である。P/Caを0.6より小さくすることで、結晶中のPに代わってBが取り込まれやすくなると推測される。なお、P/Caが0.45を超えるとホウ素を十分に除去できない恐れがある。また、P/Caが0.3より小さいとハイドロキシアパタイトが十分に生成されない恐れがある。
なお、カルシウム源の添加量を、添加後の溶液のカルシウムに対するホウ素のモル比(以下、「B/Ca」という。)が0.3以下となる量とすることが好ましい。カルシウムの量が少なすぎると(B/Caが0.3を超えると)、ハイドロキシアパタイトが十分に生成できなくなる。
第1工程の後、第2工程の前に、ホウ素含有水のpHを4.7〜5.2に調整することが好ましい。pH調整は例えば塩酸を添加することで行うことができる。ホウ素含有水のpHを上記範囲に調整すれば、ハイドロキシアパタイトの生成に必要なカルシウム源の溶解が促進され、短時間でホウ素を除去できる。
第2工程の後、ホウ素含有水を撹拌することが好ましい。ホウ素含有水を撹拌すれば、ハイドロキシアパタイトの生成に要する時間が短くなり、短時間でホウ素を除去できる。
ハイドロキシアパタイトが生成した後、固液分離によりハイドロキシアパタイトを除去することで、ホウ素含有水からホウ素を除去できる。
ホウ素含有水に炭酸根が含まれていると、カルシウムが炭酸カルシウムの生成に消費され、ハイドロキシアパタイトが生成されにくく、ホウ素を除去することが困難である。しかし、以上の処理方法によれば、ホウ素含有水に炭酸根が含まれていても、ホウ素を除去できる。
その理由はつぎの通りであると推測される。ホウ素含有水にリン源を添加した後に、カルシウム源を添加するようにすれば、カルシウム源が添加される時点で炭酸カルシウムよりもハイドロキシアパタイトの生成反応が優先的になる。そのため、ホウ素含有水に炭酸根が含まれていても、カルシウム源が炭酸カルシウムの生成に消費されず、ハイドロキシアパタイトが生成される。
ホウ素含有水にアルミニウム源を添加し、ホウ素含有水にアルミニウムイオンを共存させることが好ましい。アルミニウム源を添加するタイミングは第2工程の前であればよく、第1工程の前でもよいし、pH調整の後でもよい。アルミニウム源としてはホウ素含有水中でアルミニウムイオンを生成できるものであれば特に限定されず、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、塩化アルミニウム(AlCl3)などが用いられる。
ホウ素含有水にアルミニウムイオンを共存させるとハイドロキシアパタイトの生成が促進される。そのため、ハイドロキシアパタイトの生成に要する時間が短くなり、短時間でホウ素を除去できる。
その理由はつぎの通りであると推測される。ホウ素含有水にアルミニウムイオンを共存させると、第1工程で添加されたリン源の作用により、ハイドロキシアパタイト中のCaをAlに置き換えた前駆的な結晶が生成する。第2工程でカルシウム源を添加すると、前駆的な結晶中のAlとCaとが置き換わってハイドロキシアパタイトが生成する。このように前駆的な結晶を経てハイドロキシアパタイトを生成する反応は、前駆的な結晶を経ずに直接ハイドロキシアパタイトを生成する反応に比べて容易に起こる。そのため、カルシウム源を添加した後にハイドロキシアパタイトが短時間で生成する。
アルミニウム源の添加量を、添加後の溶液のアルミニウム濃度が0.2mM以上となる量、または添加後の溶液のホウ素に対するアルミニウムのモル比(以下、「Al/B」という。)が0.09以上となる量とすることが好ましい。
ホウ素含有水のアルミニウム濃度が高いほどホウ素の除去効果が高い。そのため、ホウ素除去効果の観点からはアルミニウム源の添加量に特に上限はない。ただし、ホウ素含有水のアルミニウム濃度が0.8mM以上となると、ハイドロキシアパタイトが生成した後、固液分離により得られる残渣からアルミニウムが溶出しやすくなる。そのため、アルミニウム源の添加量を、添加後の溶液のアルミニウム濃度が0.4mM以下となる量、または添加後の溶液のAl/Bが0.18以下となる量とすることが好ましい。
なお、以上の処理方法によれば、砒素を除去することも可能である。具体期には初期濃度が0.45mg/Lであったところを、0.1mg/Lに低減できる。また、以上の処理方法によれば、シリカを除去することも可能である。具体的には初期濃度が30〜40mg/Lであったところを、0.1mg/Lに低減できる。
つぎに、実施例を説明する。
(ホウ素含有水)
ホウ素含有水として模擬廃水と実廃水とを用意した。
模擬廃水は超純水にホウ酸(H3BO3)と炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)とを溶解して得た。模擬廃水はホウ素濃度が1.7mMまたは2.6mM、炭酸水素ナトリウム濃度が16.4mM、pHが7.2である。
地下水を採取して実廃水とした。実廃水の組成を、イオンクロマトグラフィー(Na、K、Mg、Cl-、SO4 2-濃度の測定に使用。)、ICP−OES(B、Ca濃度の測定に使用。メーカー:Perkin Elmer、型番:Optima 8300DV、以下同じ。)、ICP−MS(As濃度の測定に使用。メーカー:アジレントテクノロジー株式会社、型番:Agilent 7500C)、酸滴定(HCO3 -濃度の測定に使用。)で分析した。その結果、実廃水には、24mg/L(=2.2mM)のホウ素、904mg/LのHCO3 -のほか、Na、K、Mg、Ca、Cl-、SO4 2-、Asなどが含まれていることが分かった。また、実廃水のpHは8.2であった。
(実施例1)
模擬廃水(ホウ素濃度:1.7mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)を添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.093となっている。なお、pH調整は行わなかった。したがって、pHは7.2である。
つぎに、溶液40mLに粉末状の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を添加した。ここで、水酸化カルシウムの添加量を添加後の溶液においてP/Ca=0.3となるように、0.18gとした。
つぎに、溶液をバイオシェイカー(メーカー:Takasaki Scientific Instruments Corp、型番:TB-16R)に入れた。バイオシェイカーはポリエチレンテレフタレート製の円筒形容器であり、内径28.5mm、高さ73.5mmである。バイオシェイカーを寝かした状態で容器重心を中心として100rpmで120分撹拌した。液温は35℃とした。
撹拌した後、バイオシェイカーを静置した。静置開始から24時間後までの適当な時間間隔でバイオシェイカーから試料を取り出した。取り出した試料を孔径0.2μmのフィルターを用いて吸引濾過し、濾液と残渣とを分離回収した。
濾液のpHをpHメータにより測定した。また、濾液のB、Ca2+、PO4 3-濃度をICP−OESで測定し、HCO3 -、CO3 2-濃度を酸滴定で測定した。残渣は上口デシケーターを用いて真空乾燥させた後、XRD分析(メーカー:Rigaku、型番:Ultima IV、以下同じ。)を行った。
その結果を図1、図2に示す。
図1のグラフ(a)より、静置時間を120分とすればホウ素濃度を12.6mg/L(=1.17mM)まで低減できることが分かる。また、図2より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
(実施例2)
模擬廃水(ホウ素濃度:2.6mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.14となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸(HCl)を添加してpHを4.8に調整した。その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例1と同様である。
その結果を図1、図3に示す。
図1のグラフ(a)より、静置時間を120分とすればホウ素濃度を5.0mg/L(=0.46mM)まで低減できることが分かる。また、図3より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
(実施例3)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。なお、pH調整は行わなかった。したがって、pHは8.2である。
その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例1と同様である。ただし、バイオシェイカーから取り出した試料を吸引濾過して得られた濾液について、B、Ca2+、PO4 3-濃度に加えてSi濃度をICP−OESで測定した。
その結果を図4、図6に示す。
図4のグラフ(a)より、静置時間を24時間とすればホウ素濃度を8.6mg/L(=0.80mM)まで低減できることが分かる。また、図6より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
(実施例4)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.8に調整した。その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例3と同様である。
その結果を図4、図7に示す。
図4のグラフ(a)より、静置時間を21時間とすればホウ素濃度を3.0mg/L(=0.28mM)まで低減できることが分かる。また、図7より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
なお、実施例1〜4を比較したグラフを図5に示す。
(実施例5)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が27.5mMとなる量とした。したがって、B/P=0.08となっている。なお、pH調整は行わなかった。したがって、pHは8.2である。
つぎに、溶液40mLに粉末状の水酸化カルシウムを添加した。ここで、水酸化カルシウムの添加量を添加後の溶液においてP/Ca=0.45となるように、0.18gとした。その後の工程(溶液の撹拌以降の工程)は実施例3と同様である。
その結果を図8、図9に示す。
図8のグラフ(a)より、静置時間を24時間とすればホウ素濃度を7.8mg/L(=0.72mM)まで低減できることが分かる。また、図9より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
(実施例6)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が27.5mMとなる量とした。したがって、B/P=0.08となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを5.2に調整した。
つぎに、溶液40mLに粉末状の水酸化カルシウムを添加した。ここで、水酸化カルシウムの添加量を添加後の溶液においてP/Ca=0.45となるように、0.18gとした。その後の工程(溶液の撹拌以降の工程)は実施例3と同様である。
その結果を図8、図10に示す。
図8のグラフ(a)より、静置時間を24時間とすればホウ素濃度を4.9mg/L(=0.45mM)まで低減できることが分かる。また、図10より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
(実施例7)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が27.5mMとなる量とした。したがって、B/P=0.08となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.7に調整した。
つぎに、溶液40mLに粉末状の水酸化カルシウムを添加した。ここで、水酸化カルシウムの添加量を添加後の溶液においてP/Ca=0.3となるように、0.27gとした。その後の工程(溶液の撹拌以降の工程)は実施例3と同様である。
その結果、静置時間を21時間とすればホウ素濃度を2.7mg/L(=0.25mM)まで低減できることが分かった。
(実施例8)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が27.5mMとなる量とした。したがって、B/P=0.08となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.7に調整した。
つぎに、溶液40mLに粉末状の水酸化カルシウムを添加した。ここで、水酸化カルシウムの添加量を添加後の溶液においてP/Ca=0.45となるように、0.18gとした。その後の工程(溶液の撹拌以降の工程)は実施例3と同様である。
その結果、静置時間を24時間とすればホウ素濃度を5.1mg/L(=0.47mM)まで低減できることが分かった。
(実施例9)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.7に調整した。
その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例1と同様である。ただし、バイオシェイカーから取り出した試料を吸引濾過して得られた濾液について、B、Ca2+、PO4 3-に加えてSi、Al濃度をICP−OESで測定した。
また、静置時間2時間でバイオシェイカーから取り出した試料を吸引濾過して得られた残渣についてアルミニウムの溶出試験を行った。溶出試験の手順はつぎのとおりである。まず、超純水0.9mLに残渣0.09gを入れた。つぎに、振とう機を用いて200rpmで6時間撹拌した。つぎに、遠心分離機を用いて3,000rpmで20分間処理した。分離した溶液をシリンジで採取し孔径0.2μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を0.8Nの希硝酸で10倍に希釈して定量するイオンを安定化し、Al濃度をICP−OESで測定した。
その結果を図11、図12、図14に示す。
図11のグラフ(a)より、静置時間が60分を超えるとホウ素濃度が急激に低下することが分かる。静置時間を2時間とすればホウ素濃度を4.8mg/L(=0.44mM)まで低減できることが分かる。また、図12より、静置時間が60分を超えるとハイドロキシアパタイトの明らかなピークが現れることが分かる。また、図14より、残渣からはアルミニウムが溶出しないことが分かる。
(実施例10)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.7に調整した。
つぎに、溶液に粉末状の硝酸アルミニウムを添加して溶解した。ここで、硝酸アルミニウムの添加量を添加後の溶液のアルミニウム濃度が0.2mMとなる量とした。硝酸アルミニウムの添加により溶液のpHが低下したので、溶液に水酸化ナトリウムを添加してpHを4.8に調整した。その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例9と同様である。
その結果を図11、図14に示す。
図11のグラフ(a)より、静置時間が45分を超えるとホウ素濃度が急激に低下することが分かる。静置時間を1.5時間とすればホウ素濃度を4.9mg/L(=0.45mM)まで低減できることが分かる。また、図14より、残渣からのアルミニウムの溶出は少ないことが分かる。
(実施例11)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.7に調整した。
つぎに、溶液に粉末状の硝酸アルミニウムを添加して溶解した。ここで、硝酸アルミニウムの添加量を添加後の溶液のアルミニウム濃度が0.4mMとなる量とした。硝酸アルミニウムの添加により溶液のpHが低下したので、溶液に水酸化ナトリウムを添加してpHを4.8に調整した。その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例9と同様である。
その結果を図11、図14に示す。
図11のグラフ(a)より、静置時間が45分を超えるとホウ素濃度が急激に低下することが分かる。静置時間を1.5時間とすればホウ素濃度を4.6mg/L(=0.43mM)まで低減できることが分かる。また、図14より、残渣からのアルミニウムの溶出は少ないことが分かる。
(実施例12)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素アンモニウムを添加して溶解した。ここで、リン酸二水素アンモニウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.7に調整した。
つぎに、溶液に粉末状の硝酸アルミニウムを添加して溶解した。ここで、硝酸アルミニウムの添加量を添加後の溶液のアルミニウム濃度が0.8mMとなる量とした。硝酸アルミニウムの添加により溶液のpHが低下したので、溶液に水酸化ナトリウムを添加してpHを4.8に調整した。その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例9と同様である。
その結果を図11、図13、図14に示す。
図11のグラフ(a)より、静置時間が30分を超えるとホウ素濃度が急激に低下することが分かる。静置時間を1時間とすればホウ素濃度を4.5mg/L(=0.42mM)まで低減できることが分かる。また、図13より、静置時間が30分を超えるとハイドロキシアパタイトの明らかなピークが現れることが分かる。また、図14より、残渣からのアルミニウムの溶出は相対的に多くなることが分かる。
(実施例13)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)を添加して溶解した。ここで、リン酸二水素ナトリウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.8に調整した。
つぎに、溶液40mLに粉末状の水酸化カルシウムを添加した。ここで、水酸化カルシウムの添加量を添加後の溶液においてP/Ca=0.3となるように、0.18gとした。
つぎに、溶液をバイオシェイカーに入れた。バイオシェイカーを寝かした状態で容器重心を中心として100rpmで120分撹拌した。液温は25℃とした。
撹拌した後、バイオシェイカーを静置した。静置開始から24時間後までの適当な時間間隔でバイオシェイカーから試料を取り出した。取り出した試料を孔径0.2μmのフィルターを用いて吸引濾過し、濾液と残渣とを分離回収した。
濾液のB濃度をICP−OESで測定した。残渣は上口デシケーターを用いて真空乾燥させた後、XRD分析を行った。
その結果を図15、図16に示す。
図15のグラフより、静置時間を24時間とすればホウ素濃度を0.65mMまで低減できることが分かる。また、図16より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
(実施例14)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸(H3PO4)を添加して溶解した。ここで、リン酸の添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。その後の工程(水酸化カルシウムの添加以降の工程)は実施例13と同様である。
その結果を図15、図17に示す。
図15のグラフより、静置時間を24時間とすればホウ素濃度を0.65mMまで低減できることが分かる。また、図17より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
(実施例15)
実廃水(ホウ素濃度:2.2mM)に粉末状のリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)を添加して溶解した。ここで、リン酸二水素ナトリウムの添加量を添加後の溶液のリン濃度が18.3mMとなる量とした。したがって、B/P=0.12となっている。つぎに、溶液に1Mの塩酸を添加してpHを4.8に調整した。
つぎに、溶液40mLに粉末状の水酸化焼成ドロマイト(吉澤石灰工業株式会社製、水酸化ドロマイトHCD60)を添加した。なお、HCD60に含まれる水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムとの比率はおよそ60:40である。ここで、水酸化焼成ドロマイトの添加量はP/Ca=0.3となるように、0.32gとした。を使用した。その後の工程(溶液の撹拌以降の工程)は実施例13と同様である。
その結果を図18、図19に示す。
図18のグラフより、静置時間を24時間とすればホウ素濃度を0.65mMまで低減できることが分かる。また、図19より、ハイドロキシアパタイトが生成されることが分かる。
以上の実施例1〜15の条件および測定結果を図20の表にまとめる。
以上より、実施例1から15のいずれの条件においても、ハイドロキシアパタイトが生成され、ホウ素含有水から十分にホウ素を除去できることが確認された。また、実施例9から12より、ホウ素含有水のアルミニウム濃度を高くするほど、ハイドロキシアパタイトの生成が促進され、短時間でホウ素を除去できることが確認された。ただし、ホウ素含有水のアルミニウム濃度が0.8mMとなると残渣からのアルミニウムの溶出量が多くなることが確認された。よって、ホウ素含有水のアルミニウム濃度は0.2mM以上、0.4mM以下が好ましいことが確認された。

Claims (8)

  1. 炭酸根を含有するホウ素含有水にリン源を添加し、
    ついで、前記ホウ素含有水にカルシウム源を添加し、
    ハイドロキシアパタイトを生成してホウ素を共沈させる
    ことを特徴とするホウ素含有水の処理方法。
  2. 前記リン源はリン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸である
    ことを特徴とする請求項1記載のホウ素含有水の処理方法。
  3. 前記カルシウム源は水酸化カルシウム、または水酸化焼成ドロマイトである
    ことを特徴とする請求項1または2記載のホウ素含有水の処理方法。
  4. 前記リン源の添加量を、添加後の溶液のリンに対するホウ素のモル比が0.08〜0.14となる量とする
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載のホウ素含有水の処理方法。
  5. 前記カルシウム源の添加量を、添加後の溶液のカルシウムに対するリンのモル比が0.3〜0.45となる量とする
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のホウ素含有水の処理方法。
  6. 前記ホウ素含有水に前記リン源を添加した後、前記カルシウム源を添加する前に、前記ホウ素含有水のpHを4.7〜5.2に調整する
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のホウ素含有水の処理方法。
  7. 前記ホウ素含有水に前記カルシウム源を添加する前に、前記ホウ素含有水にアルミニウムイオンを共存させる
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のホウ素含有水の処理方法。
  8. 前記ホウ素含有水のアルミニウム濃度を0.2〜0.4mMに調整する
    ことを特徴とする請求項7記載のホウ素含有水の処理方法。
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