JP2018062657A - ゴム組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、以下の〔1〕〜〔9〕を提供する。
〔1〕ゴム成分、セルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含むゴム組成物。
〔2〕前記ゴム成分が、クロロプレンゴムである上記〔1〕に記載のゴム組成物。
〔3〕前記セルロース系繊維が、酸化セルロースファイバー、カルボキシメチル化セルロースファイバー及びカチオン化セルロースファイバーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む上記〔1〕又は〔2〕に記載のゴム組成物。
〔4〕前記メチレンアクセプター化合物が、レゾルシン、レゾルシン誘導体及びレゾルシン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔5〕前記メチレンドナー化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔6〕前記セルロース系繊維の長さ加重平均繊維長が50〜2000nm、長さ加重平均繊維径が2〜500nmである上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のゴム組成物を用いてなる成形品。
〔8〕上記〔7〕に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(a1)及び(a2)を有する成形品の製造方法。
(a1)ゴム成分とセルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合して混合物(1)を得る工程。
(a2)前記工程(a1)で得た混合物(1)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱し、成形して成形品を得る工程。
〔9〕上記〔7〕に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(b1)〜(b3)を有する成形品の製造方法。
(b1)ゴム成分とセルロース系繊維を混合して混合物(2)を得る工程。
(b2)前記工程(b1)で得た混合物(2)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱した加熱処理物を得る工程。
(b3)前記工程(b2)で得た加熱処理物にメチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合し、成形して成形品を得る工程。
本発明のゴム組成物は、セルロース系繊維、ゴム成分、メチレンアクセプター化合物、及びメチレンドナー化合物を少なくとも含む。
本発明において、セルロース系繊維として、ミクロンオーダーの繊維径を有するセルロース繊維又は当該セルロース繊維を必要に応じ化学変性した後で解繊して得たナノオーダーの繊維径を有するセルロースナノファイバーを使用できる。
以下、セルロースナノファイバーの製造方法について説明する。便宜上、セルロースナノファイバーの原料となるセルロース繊維を「セルロース原料」ともいう。
セルロース原料は、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性を行うことが可能である。セルロース原料としては、化学変性されたセルロース原料及び化学変性されていないセルロース原料のいずれも使用できる。しかしながら、化学変性されたセルロース原料を用いると、繊維の微細化が十分に進んで均一な平均繊維長及び平均繊維径のセルロースナノファイバーが得られる。そのため、ゴム成分と複合化した際に、十分な補強効果を発揮する成形品を製造し得る。したがって、化学変性されたセルロース原料が好ましい。化学変性としては、例えば、酸化、エーテル化、リン酸化、エステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化、カチオン化、エステル化が好ましい。以下、これらの化学変性について説明する。
酸化処理によって得られる酸化セルロース又は酸化セルロースナノファイバー(総称して「酸化セルロースファイバー」ともいう)中のカルボキシル基量の下限値は、絶乾重量に対して、好ましくは0.5mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上である。当該量の上限値は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。したがって、当該量は0.5〜3.0mmol/gが好ましく、0.8〜2.5mmol/gがより好ましく、1.0〜2.0mmol/gがさらに好ましい。
N−オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量の下限値は、N−オキシル化合物1molに対して、1mol以上が好ましい。また、その上限値は、40mol以下が好ましい。したがって、酸化剤の使用量は、N−オキシル化合物1molに対して、1〜40molが好ましい。
反応温度の下限値は、4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。当該温度の上限値は、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。したがって、反応温度は、4〜40℃が好ましく、15〜30℃程度、すなわち室温であってもよい。
反応液のpHの下限値は、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHの上限値は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。したがって、反応液のpHは、好ましくは8〜12、より好ましくは10〜11程度である。
なお、通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱いの容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
オゾン添加量の下限値は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。オゾン添加量の上限値は、通常、30質量%以下である。したがって、オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1〜30質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
オゾン処理時間の下限値は、通常、1分以上であり、好ましくは30分以上である。また、その上限値は、通常、360分以下である。したがって、オゾン処理時間は、通常、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。
オゾン処理の条件が上述の範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
なお、酸化セルロースと酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量は、通常、同値である。
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化等が挙げられる。この中から、一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
反応時間の下限値は、通常、15分以上であり、好ましくは30分以上である。当該時間の上限値は、通常、8時間以下であり、好ましくは7時間以下である。したがって、反応時間は、通常、15分〜8時間であり、好ましくは30分〜7時間である。
カルボキシメチル化剤の添加量の下限は、セルロース原料のグルコース残基当たり、モル換算で、通常、0.05倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましく、0.8倍以上がさらに好ましい。当該量の上限は、通常、10.0倍以下であり、5倍以下が好ましく、3倍以下がより好ましい。したがって、当該量は、セルロース原料のグルコース残基当たり、モル換算で、好ましくは0.05〜10.0倍であり、より好ましくは0.5〜5倍であり、さらに好ましくは0.8〜3倍である。
反応時間の下限値は、通常、30分以上であり、好ましくは1時間以上である。また、その上限値は、通常、10時間以下であり、好ましくは4時間以下である。したがって、反応時間は、通常、30分〜10時間であり、好ましくは1〜4時間である。なお、カルボキシメチル化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
なお、カルボキシメチル化セルロースとカルボキシメチル化セルロースナノファイバーのカルボキシメチル置換度は、通常、同値である。
式(3): DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:酸型カルボキシメチル化セルロース1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
カチオン化により得られるカチオン化セルロースナノファイバーは、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等のカチオン、又は該カチオンを有する基を分子中に含んでいればよい。カチオン化セルロースナノファイバーは、アンモニウムを有する基を含むことが好ましく、四級アンモニウムを有する基を含むことがより好ましい。
カチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト(例:3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハイドライト)又はこれらのハロヒドリン型が挙げられる。これらのいずれかを用いることで、四級アンモニウムを含む基を有するカチオン化セルロースを得ることができる。
触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
アルコールとしては、例えば、炭素原子数1〜4のアルコールが挙げられる。
触媒の量の下限値は、セルロース原料100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。当該量の上限値は、通常、70質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
アルコールの量の下限値は、セルロース原料100質量%に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは100質量%以上である。当該量の上限値は、通常、50000質量%以下であり、好ましくは500質量%以下である。
セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは、容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01以上であることにより、十分にナノ解繊することができる。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.40以下であることにより、膨潤又は溶解を抑制することができる。そのため、繊維形態を維持することができ、ナノファイバーとして得られない事態を防止することができる。
なお、カチオン化セルロースとカチオン化セルロースナノファイバーのカチオン置換度は、通常、同値である。
式(4): カチオン置換度=(162×N)/(1−116×N)
N:カチオン化セルロース1gあたりの窒素含有量(mol)
エステル化の方法は特に限定されない。例えば、セルロース原料に対して後述する化合物Aを反応させる方法が挙げられる。セルロース原料に対して化合物Aを反応させる方法としては、例えば、セルロース原料に化合物Aの粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高まり、かつエステル化効率が高くなることから、セルロース原料又はそのスラリーに化合物Aの水溶液を混合する方法が好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基の導入効率が高くなることから、エステル化においてはリン酸系化合物の水溶液を用いることが好ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基の導入効率を高める観点から7以下が好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点から3〜7がより好ましい。
エステル化反応の条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率を向上させることができる。
セルロース原料の解繊は、セルロース原料に化学変性を施す前に行ってもよいし、後に行ってもよい。解繊処理は1回行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回の場合それぞれの解繊の時期はいつでもよい。なお、解繊とは、通常、物理的解繊をいう。
ゴム成分と混合されるセルロース系繊維の形態は特に限定されない。例えば、セルロース系繊維が分散媒に分散した分散液、当該分散液の乾燥固形物、当該分散液の湿潤固形物を混合に供してよい。分散液におけるセルロース系繊維の濃度は、分散媒が水である場合は0.1〜5%(w/v)とすることができる。分散媒が水の他にアルコール等の有機溶媒を含む場合は、前記濃度を0.1〜20%(w/v)とすることができる。湿潤固形物とは、前記分散液と乾燥固形物との中間の態様の固形物である。前記分散液を通常の方法で脱水して得た湿潤固形物中の分散媒の量は、セルロース系繊維に対して、5〜15質量%であることが好ましい。但し、液状媒体の追加又はさらなる乾燥により分散媒の量を適宜調整できる。
ゴム成分は、通常、有機高分子を主成分とする、弾性限界が高く、弾性率の低い成分である。ゴム成分は、天然ゴム及び合成ゴムに大別され、本発明においてはいずれでもよく、両者の組み合わせでもよい。
天然ゴムとしては、化学修飾を施さない、狭義の天然ゴムでもよく、また水素化天然ゴム、塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴムのように、天然ゴムを化学修飾したもの、脱タンパク天然ゴムでもよい。
合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)が挙げられる。
ゴム成分は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
本発明のゴム組成物は、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含む。
ゴム組成物におけるセルロース系繊維の含有量の下限値は、ゴム成分100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。これにより引張強度の向上効果が十分に発現し得る。上限値は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。これにより、製造工程における加工性を保持することができる。したがって、セルロース系繊維の含有量は、1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。
本発明のゴム組成物は、必要に応じて1又は2以上の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、補強剤(カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤(酸化亜鉛、ステアリン酸)、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、着色剤などゴム工業で使用され得る配合剤が挙げられる。これらの中でも、硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤が好ましい。加硫促進剤としては例えば、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
本発明の成形品は、上記のゴム組成物を用いてなるものである。ゴム組成物中のゴム成分とセルロース系繊維の相溶性が向上しているので、十分な補強性を有する。
本発明の成形品の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、以下の製造方法が挙げられる。
本発明の成形品の製造方法の一例として、(a1)ゴム成分とセルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合して混合物(1)(ゴム組成物)を得る工程、(a2)工程(a1)で得た混合物(1)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱し、成形して成形品を得る工程を有する製造方法aが挙げられる。
製造方法aの(a1)における各成分の添加の順序は、特に限定されず、各成分を一度に混合してもよいし、いずれかの成分を先に混合した後で残りの成分を混合してもよい。また、製造方法aの(a2)の加熱処理温度は40℃以上100℃未満、処理時間は1〜24時間であることが好ましい。この範囲とすることで、ゴム成分に対するダメージを押さえることができる。
製造方法aとして、より詳細には、セルロース系繊維の分散液とゴム成分の分散液(ラテックス)を混合し(例:ミキサー等による撹拌)、水を除去し、得られる混合物(通常は固形物)に対し、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含む成分を添加して素練り及び混練り(例:オープンロール等の装置)する。当該方法によれば、ゴム成分中に化学変性セルロースナノファイバーを均一に分散させることができる。
本発明の成形品の製造方法の他の例として、(b1)ゴム成分とセルロース系繊維を混合して混合物(2)を得る工程、(b2)工程(b1)で得た混合物(2)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱した加熱処理物(マスターバッチ)を得る工程、(b3)工程(b2)で得た加熱処理物にメチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合し、成形して成形品を得る工程を有する製造方法bが挙げられる。これにより、いずれの成分をも均一に分散させることができる。
また、(b2)の加熱処理温度は40℃以上100℃未満、処理時間は1〜24時間であることが好ましい。この範囲とすることで、ゴム成分に対するダメージを押さえることができる。(b3)における、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物の添加順序は、各成分を一度に混合してもよいし、いずれかの成分を先に混合した後で残りの成分を混合してもよい。
その他の製造方法としては、ゴム成分に対し、それ以外の成分を任意の順番で添加して混合する方法が挙げられる。より詳細には、ゴム成分の固形物に対し、セルロース系繊維の固形物、メチレンアクセプター化合物、メチレンドナー化合物を任意の順番で混合し、同様にオープンロール等の装置で素練り及び混練りする。これにより、水を除去する工程を省略できる。
混合の際の(例えば、素練り及び混練りの際の)の温度は、常温程度(15〜30℃程度)でもよいが、ゴム成分が架橋反応しない程度に高温に加熱してもよい。例えば140℃以下であり、より好ましくは120℃以下である。また、加熱する際の下限は、40℃以上であり、好ましくは60℃以上である。したがって、加熱温度は、40〜140℃程度が好ましく、60〜120℃程度がより好ましい。硫黄及び加硫促進剤の添加時期は、メチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物の添加時期より後であることが好ましい。すなわち、硫黄及び加硫促進剤を添加せずにメチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物を含むゴム組成物を混合して素練り開始後に、硫黄及び加硫促進剤を追加してさらに素練り及び混練りを行うことが好ましい。これにより、メチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物が加熱により予備的に縮合し、その縮合物とゴム成分及びセルロース系繊維との相互作用が効果的に発揮され得る。
なお、特に断りがない限り、物性値の測定方法は上記に記載した測定方法による。また、「部」とは質量部を意味する。
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するので、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。平均繊維径は3nm、アスペクト比は250であった。
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g(出発原料の無水グルコース残基当たり、モル換算で2.25倍)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。30℃で30分攪拌した後に、モノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算、パルプのグルコース残基当たり、モル換算で1.5倍)添加し、30分撹拌した。70℃まで昇温し1時間撹拌した後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化したパルプを得た。これを水で固形分1%(w/v)とし、高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)により5回処理して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを得た。平均繊維径は15nm、アスペクト比は50であった。
パルプを攪拌することができるパルパーに、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で24g加え、パルプ固形濃度が15%(w/v)になるように水を加えた。30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを200g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.05のカチオン変性されたパルプを得た。これを固形濃度1%(w/v)とし、高圧ホモジナイザー(20℃、154MPa)により2回処理して、カチオン化セルロースナノファイバーを得た。平均繊維径は25nm、アスペクト比は50であった。
製造例1で得られた酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度1%水分散液500gとクロロプレンゴムラテックス(商品名:ショウプレン、昭和電工社製、固形分濃度50%)200g、レゾルシン10%水溶液25g、ヘキサメチレンテトラミン10%水溶液16gを混合して、ゴム成分:変性セルロースナノファイバー:メチレンアクセプター化合物:メチレンドナー化合物の質量比が100:5:2.5:1.6となるようにし、TKホモミキサー(6000rpm)で30分間攪拌した。この水性懸濁液を、70℃の加熱オーブン中で10時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
ゴム成分100部に対し、メチレンアクセプター化合物の質量比を1.25、メチレンドナー化合物の質量比を0.8としたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を図1及び表1に示す。
製造例1で得られた酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度1%水分散液500gとクロロプレンゴムラテックス(商品名:ショウプレン、昭和電工社、固形分濃度50%)200gを混合してゴム成分と変性セルロースナノファイバーとの質量比が100:5となるようにし、TKホモミキサー(6000rpm)で30分間攪拌した。この水性懸濁液を、70℃の加熱オーブン中で10時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
酸化セルロースナノファイバー、メチレンアクセプター化合物、及びメチレンドナー化合物を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。結果を図1及び表1に示す。
メチレンアクセプター化合物、及びメチレンドナー化合物を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。結果を図1及び表1に示す。
Claims (9)
- ゴム成分、セルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含むゴム組成物。
- 前記ゴム成分が、クロロプレンゴムである請求項1に記載のゴム組成物。
- 前記セルロース系繊維が、酸化セルロースファイバー、カルボキシメチル化セルロースファイバー及びカチオン化セルロースファイバーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- 前記メチレンアクセプター化合物が、レゾルシン、レゾルシン誘導体及びレゾルシン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 前記メチレンドナー化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 前記セルロース系繊維の長さ加重平均繊維長が50〜2000nm、長さ加重平均繊維径が2〜500nmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなる成形品。
- 請求項7に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(a1)及び(a2)を有する成形品の製造方法。
(a1)ゴム成分とセルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合して混合物(1)を得る工程。
(a2)前記工程(a1)で得た混合物(1)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱し、成形して成形品を得る工程。 - 請求項7に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(b1)〜(b3)を有する成形品の製造方法。
(b1)ゴム成分とセルロース系繊維を混合して混合物(2)を得る工程。
(b2)前記工程(b1)で得た混合物(2)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱した加熱処理物を得る工程。
(b3)前記工程(b2)で得た加熱処理物にメチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合し、成形して成形品を得る工程。
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