JP2018062657A - ゴム組成物及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ゴム成分とセルロース系繊維の相溶性が向上し、十分な補強性を有する成形品を製造し得るゴム組成物を提供すること。【解決手段】ゴム成分、セルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含むゴム組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、セルロース系繊維を含有するゴム組成物、成形品及びその製造方法に関する。
ゴムとセルロース系繊維を含むゴム組成物は、優れた機械強度を有することが知られている。例えば、特許文献1には、平均繊維径が0.5μm未満のセルロース系繊維と、ゴムラテックスと、を撹拌混合して得られるゴム/セルロース系繊維のマスターバッチが記載されている。当該文献によれば、平均繊維径が0.5μm未満のセルロース系繊維を水中でフィブリル化させた分散液と、ゴムラテックスと、を混合して乾燥させることにより、セルロース系繊維をゴム中に均一に分散させたゴム/セルロース系繊維のマスターバッチが得られ、該マスターバッチからゴム補強性と耐疲労性のバランスに優れるゴム組成物を製造できるとされる。
しかしながら、一般にゴムとセルロース系繊維とは相溶性が低いため、ゴム組成物に十分な強度が得られていなかった。そこで、ゴムとセルロース系繊維の相溶性を向上させるために、カップリング剤を使用することや、セルロース系繊維に長鎖アルキル基を導入すること等が検討されている(例えば、特許文献2、3参照)。
特開2006−206864号公報 特開2009−191198号公報 特開2014−125607号公報
しかしながら、上記方法では、使用する試薬が高価であるという問題がある。また、上記方法は、反応率が低く、十分な強度改善効果が得られないという問題もある。
本発明の課題は、ゴム成分とセルロース系繊維の相溶性が向上し、十分な補強性を有する成形品を製造し得るゴム組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ゴム成分とセルロース系繊維に、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含ませることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の〔1〕〜〔9〕を提供する。
〔1〕ゴム成分、セルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含むゴム組成物。
〔2〕前記ゴム成分が、クロロプレンゴムである上記〔1〕に記載のゴム組成物。
〔3〕前記セルロース系繊維が、酸化セルロースファイバー、カルボキシメチル化セルロースファイバー及びカチオン化セルロースファイバーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む上記〔1〕又は〔2〕に記載のゴム組成物。
〔4〕前記メチレンアクセプター化合物が、レゾルシン、レゾルシン誘導体及びレゾルシン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔5〕前記メチレンドナー化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔6〕前記セルロース系繊維の長さ加重平均繊維長が50〜2000nm、長さ加重平均繊維径が2〜500nmである上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のゴム組成物を用いてなる成形品。
〔8〕上記〔7〕に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(a1)及び(a2)を有する成形品の製造方法。
(a1)ゴム成分とセルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合して混合物(1)を得る工程。
(a2)前記工程(a1)で得た混合物(1)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱し、成形して成形品を得る工程。
〔9〕上記〔7〕に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(b1)〜(b3)を有する成形品の製造方法。
(b1)ゴム成分とセルロース系繊維を混合して混合物(2)を得る工程。
(b2)前記工程(b1)で得た混合物(2)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱した加熱処理物を得る工程。
(b3)前記工程(b2)で得た加熱処理物にメチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合し、成形して成形品を得る工程。
本発明によれば、ゴム成分とセルロース系繊維の相溶性が向上し、十分な補強性を有する成形品を製造し得るゴム組成物を提供することができる。
実施例1〜3及び比較例1〜2のひずみ−応力曲線を示したチャートである。
[1.ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、セルロース系繊維、ゴム成分、メチレンアクセプター化合物、及びメチレンドナー化合物を少なくとも含む。
[1−1.セルロース系繊維]
本発明において、セルロース系繊維として、ミクロンオーダーの繊維径を有するセルロース繊維又は当該セルロース繊維を必要に応じ化学変性した後で解繊して得たナノオーダーの繊維径を有するセルロースナノファイバーを使用できる。
セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、植物、動物(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物に由来するものが挙げられる。植物由来のセルロース繊維としては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)が挙げられる。セルロース繊維は、これらのいずれか又は組合せであってもよいが、好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
セルロース繊維の平均繊維径は、特に制限されない。一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30〜60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10〜30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たセルロース繊維の平均繊維径は50μm程度である。例えば、数cm大のチップ等を精製したセルロース繊維を用いる場合、リファイナー、ビーター等の離解機で機械的処理を行い、平均繊維径を50μm程度に調整することが好ましい。
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、長さ加重平均繊維径にして、通常、2〜500nm程度であり、好ましくは2〜50nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長は、長さ加重平均繊維長にして、50〜2000nmが好ましい。長さ加重平均繊維径及び長さ加重平均繊維長(以下、単に「平均繊維径」、「平均繊維長」ともいう)は、原子間力顕微鏡(AFM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察して求められる。セルロースナノファイバーの平均アスペクト比の下限値は、通常、10以上である。上限値は特に限定されないが、通常、1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式(1)により算出できる。
式(1): 平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
以下、セルロースナノファイバーの製造方法について説明する。便宜上、セルロースナノファイバーの原料となるセルロース繊維を「セルロース原料」ともいう。
[1−1−1.変性]
セルロース原料は、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性を行うことが可能である。セルロース原料としては、化学変性されたセルロース原料及び化学変性されていないセルロース原料のいずれも使用できる。しかしながら、化学変性されたセルロース原料を用いると、繊維の微細化が十分に進んで均一な平均繊維長及び平均繊維径のセルロースナノファイバーが得られる。そのため、ゴム成分と複合化した際に、十分な補強効果を発揮する成形品を製造し得る。したがって、化学変性されたセルロース原料が好ましい。化学変性としては、例えば、酸化、エーテル化、リン酸化、エステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化、カチオン化、エステル化が好ましい。以下、これらの化学変性について説明する。
[酸化]
酸化処理によって得られる酸化セルロース又は酸化セルロースナノファイバー(総称して「酸化セルロースファイバー」ともいう)中のカルボキシル基量の下限値は、絶乾重量に対して、好ましくは0.5mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上である。当該量の上限値は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。したがって、当該量は0.5〜3.0mmol/gが好ましく、0.8〜2.5mmol/gがより好ましく、1.0〜2.0mmol/gがさらに好ましい。
酸化方法は特に限定されない。酸化方法の一例として、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物及びこれらの混合物からなる群より選択される化学物質と、の存在下で、酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基を有する炭素原子が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5質量%以下が好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生し得る化合物である。ニトロキシルラジカルとしては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)が挙げられる。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
N−オキシル化合物の使用量は、セルロース原料を酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下がさらに好ましい。したがって、N−オキシル化合物の使用量は、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.02〜0.5mmolがさらに好ましい。
臭化物とは、臭素を含む化合物である。臭化物としては、水中で解離してイオン化可能なアルカリ金属の臭化物、例えば、臭化ナトリウムが挙げられる。また、ヨウ化物とは、ヨウ素を含む化合物であり、例えば、アルカリ金属のヨウ化物が挙げられる。
臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量の下限値は、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。当該量の上限値は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下がさらに好ましい。したがって、臭化物及びヨウ化物の合計量は、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、特に限定されない。例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、これらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物が挙げられる。中でも、安価で環境負荷が少ないことから、次亜ハロゲン酸又はその塩が好ましく、次亜塩素酸又はその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがさらに好ましい。
酸化剤の使用量の下限値は、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.5mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上がさらに好ましい。当該量の上限値は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下がさらに好ましく、10mmol以下がさらにより好ましい。したがって、酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolがさらにより好ましい。
N−オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量の下限値は、N−オキシル化合物1molに対して、1mol以上が好ましい。また、その上限値は、40mol以下が好ましい。したがって、酸化剤の使用量は、N−オキシル化合物1molに対して、1〜40molが好ましい。
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されず、通常、比較的温和な条件であっても酸化反応が効率よく進行する。
反応温度の下限値は、4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。当該温度の上限値は、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。したがって、反応温度は、4〜40℃が好ましく、15〜30℃程度、すなわち室温であってもよい。
反応液のpHの下限値は、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。pHの上限値は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。したがって、反応液のpHは、好ましくは8〜12、より好ましくは10〜11程度である。
なお、通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱いの容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
酸化における反応時間は、酸化の進行程度に従って適宜設定することができる。反応時間の下限値は、通常、0.5時間以上である。また、その上限値は、通常、6時間以下であり、好ましくは4時間以下である。したがって、酸化における反応時間は、通常、0.5〜6時間であり、好ましくは0.5〜4時間程度である。
酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
カルボキシル化(酸化)方法の他の例として、オゾン酸化が挙げられる。この酸化反応では、セルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾン処理は、通常、オゾンを含む気体とセルロース原料を接触させることにより行われる。
気体中のオゾン濃度の下限値は、50g/m以上が好ましい。その上限値は、250g/m以下が好ましく、220g/m以下がより好ましい。したがって、気体中のオゾン濃度は、50〜250g/mが好ましく、50〜220g/mがより好ましい。
オゾン添加量の下限値は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。オゾン添加量の上限値は、通常、30質量%以下である。したがって、オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100質量%に対し、0.1〜30質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
オゾン処理温度の下限値は、通常、0℃以上であり、好ましくは20℃以上である。また、その上限値は、通常、50℃以下である。したがって、オゾン処理温度は、0〜50℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
オゾン処理時間の下限値は、通常、1分以上であり、好ましくは30分以上である。また、その上限値は、通常、360分以下である。したがって、オゾン処理時間は、通常、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。
オゾン処理の条件が上述の範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理されたセルロースに対して、さらに酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されない。例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸が挙げられる。追酸化処理の方法としては、例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を調製し、酸化剤溶液中にオゾン処理されたセルロースを浸漬させる方法が挙げられる。酸化セルロース又は酸化セルロースナノファイバーに含まれるカルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基の量は、酸化剤の添加量、反応時間等の酸化条件をコントロールすることで調整することができる。
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とする。酸性にした水分散液に、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式(2)を用いてカルボキシル基量を算出することができる。
なお、酸化セルロースと酸化セルロースナノファイバーのカルボキシル基量は、通常、同値である。
式(2): カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース又は酸化セルロースナノファイバー〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕
[エーテル化]
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化等が挙げられる。この中から、一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
カルボキシメチル化により得られるカルボキシメチル化セルロース又はカルボキシメチル化セルロースナノファイバー(総称して「カルボキシメチル化セルロースファイバー」ともいう)中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の下限値は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。当該置換度の上限値は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。したがって、カルボキシメチル置換度は、0.01〜0.50が好ましく、0.05〜0.40がより好ましく、0.10〜0.35がさらに好ましい。
カルボキシメチル化方法は特に限定されない。例えば、出発原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。当該反応には、通常、溶媒が使用される。溶媒としては、例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコールが挙げられる。混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常、60質量%以上又は95質量%以下であり、60〜95質量%が好ましい。溶媒の量の下限は、セルロース原料に対し、質量換算で、通常、3倍以上である。当該量の上限は、特に限定されないが、20倍以下である。したがって、溶媒の量は、セルロース原料に対し、質量換算で、3〜20倍が好ましい。
マーセル化は、通常、出発原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。マーセル化剤の使用量の下限は、出発原料の無水グルコース残基当たり、モル換算で、0.5倍以上が好ましく、1.0倍以上がより好ましく、1.5倍以上がさらに好ましい。当該量の上限は、通常、20倍以下であり、10倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましい。したがって、マーセル化剤の使用量は、出発原料の無水グルコース残基当たり、モル換算で、0.5〜20倍が好ましく、1.0〜10倍がより好ましく、1.5〜5倍がさらに好ましい。
マーセル化の反応温度の下限値は、通常、0℃以上であり、好ましくは10℃以上である。また、その上限値は、通常、70℃以下であり、好ましくは60℃以下である。したがって、反応温度は、通常、0〜70℃であり、好ましくは10〜60℃である。
反応時間の下限値は、通常、15分以上であり、好ましくは30分以上である。当該時間の上限値は、通常、8時間以下であり、好ましくは7時間以下である。したがって、反応時間は、通常、15分〜8時間であり、好ましくは30分〜7時間である。
エーテル化反応は、通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては、例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。
カルボキシメチル化剤の添加量の下限は、セルロース原料のグルコース残基当たり、モル換算で、通常、0.05倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましく、0.8倍以上がさらに好ましい。当該量の上限は、通常、10.0倍以下であり、5倍以下が好ましく、3倍以下がより好ましい。したがって、当該量は、セルロース原料のグルコース残基当たり、モル換算で、好ましくは0.05〜10.0倍であり、より好ましくは0.5〜5倍であり、さらに好ましくは0.8〜3倍である。
反応温度の下限値は、通常、30℃以上であり、好ましくは40℃以上である。また、その上限値は、通常、90℃以下であり、好ましくは80℃以下である。したがって、反応温度は、通常、30〜90℃であり、好ましくは40〜80℃である。
反応時間の下限値は、通常、30分以上であり、好ましくは1時間以上である。また、その上限値は、通常、10時間以下であり、好ましくは4時間以下である。したがって、反応時間は、通常、30分〜10時間であり、好ましくは1〜4時間である。なお、カルボキシメチル化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は、例えば、次の方法により行うことができる。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。2)メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた硝酸メタノール液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を酸型カルボキシメチル化セルロースにする。3)酸型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで酸型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式(3)によって算出する。
なお、カルボキシメチル化セルロースとカルボキシメチル化セルロースナノファイバーのカルボキシメチル置換度は、通常、同値である。
A=[(100×F’−(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(酸型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
式(3): DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:酸型カルボキシメチル化セルロース1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのHSOのファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
[カチオン化]
カチオン化により得られるカチオン化セルロースナノファイバーは、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等のカチオン、又は該カチオンを有する基を分子中に含んでいればよい。カチオン化セルロースナノファイバーは、アンモニウムを有する基を含むことが好ましく、四級アンモニウムを有する基を含むことがより好ましい。
カチオン化の方法は特に限定されない。例えば、セルロース原料にカチオン化剤と触媒を水又はアルコールの存在下で反応させる方法が挙げられる。
カチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト(例:3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハイドライト)又はこれらのハロヒドリン型が挙げられる。これらのいずれかを用いることで、四級アンモニウムを含む基を有するカチオン化セルロースを得ることができる。
触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
アルコールとしては、例えば、炭素原子数1〜4のアルコールが挙げられる。
カチオン化剤の量の下限値は、セルロース原料100質量%に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。当該量の上限値は、通常、800質量%以下であり、好ましくは500質量%以下である。
触媒の量の下限値は、セルロース原料100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。当該量の上限値は、通常、70質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
アルコールの量の下限値は、セルロース原料100質量%に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは100質量%以上である。当該量の上限値は、通常、50000質量%以下であり、好ましくは500質量%以下である。
カチオン化の際の反応温度の下限値は、通常、10℃以上であり、好ましくは30℃以上である。また、その上限値は、通常、90℃以下であり、好ましくは80℃以下である。反応時間の下限値は、通常、10分以上であり、好ましくは30分以上である。また、その上限値は、通常、10時間以下であり、好ましくは5時間以下である。なお、カチオン化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カチオン化セルロース又はカチオン化セルロースナノファイバー(総称して「カチオン化セルロースファイバー」ともいう)のグルコース単位当たりのカチオン置換度は、カチオン化剤の添加量、水又はアルコールの組成比率によって調整することができる。カチオン置換度とは、セルロースを構成する単位構造(グルコピラノース環)あたりに導入された置換基のモル数を示す。すなわち、カチオン置換度は、「導入された置換基のモル数をグルコピラノース環の水酸基の総モル数で割った値」として定義される。純粋なセルロースは、単位構造(グルコピラノース環)あたり3つの置換可能な水酸基を有しているため、カチオン置換度の最大値は、理論上3(最小値は0)である。
カチオン化セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカチオン置換度の下限値は、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。当該置換度の上限値は、0.40以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.20以下がさらに好ましい。したがって、カチオン置換度は0.01〜0.40が好ましく、0.02〜0.30がより好ましく、0.03〜0.20がさらに好ましい。
セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは、容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01以上であることにより、十分にナノ解繊することができる。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.40以下であることにより、膨潤又は溶解を抑制することができる。そのため、繊維形態を維持することができ、ナノファイバーとして得られない事態を防止することができる。
グルコース単位当たりのカチオン置換度の測定方法の一例を以下に説明する。試料(カチオン化セルロース)を乾燥させた後に、全窒素分析計TN−10(三菱化学社製)で窒素含有量を測定する。例えば、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを用いた場合、次式(4)によりカチオン置換度が算出される。ここでいうカチオン置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値である。
なお、カチオン化セルロースとカチオン化セルロースナノファイバーのカチオン置換度は、通常、同値である。
式(4): カチオン置換度=(162×N)/(1−116×N)
N:カチオン化セルロース1gあたりの窒素含有量(mol)
[エステル化]
エステル化の方法は特に限定されない。例えば、セルロース原料に対して後述する化合物Aを反応させる方法が挙げられる。セルロース原料に対して化合物Aを反応させる方法としては、例えば、セルロース原料に化合物Aの粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高まり、かつエステル化効率が高くなることから、セルロース原料又はそのスラリーに化合物Aの水溶液を混合する方法が好ましい。
化合物Aとしては、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステルが挙げられる。化合物Aは、塩の形態でもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由から、リン酸系化合物が好ましい。リン酸系化合物は、リン酸基を有する化合物であればよく、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウムが挙げられる。用いられるリン酸系化合物は、これらの1種あるいは2種以上の組み合わせでもよい。これらのうち、リン酸基の導入効率が高く、解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基の導入効率が高くなることから、エステル化においてはリン酸系化合物の水溶液を用いることが好ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基の導入効率を高める観点から7以下が好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点から3〜7がより好ましい。
エステル化の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。セルロース原料の懸濁液(例えば、固形分濃度0.1〜10質量%)に化合物Aを撹拌しながら添加し、セルロースにリン酸基を導入する。化合物Aがリン酸系化合物の場合、化合物Aの添加量(リン元素量として)の下限値は、セルロース原料100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。これにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上できる。当該量の上限値は、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。これにより、化合物Aの使用量に見合った収率を効率よく得ることができる。したがって、化合物Aの添加量は、0.2〜500質量部が好ましく、1〜400質量部がより好ましい。
セルロース原料に対して化合物Aを反応させる際、さらに化合物Bを反応系に加えてもよい。化合物Bを反応系に加える方法としては、例えば、セルロース原料のスラリーに、化合物Aの水溶液に、又はセルロース原料と化合物Aのスラリーに、添加する方法が挙げられる。化合物Bとしては特に限定されないが、塩基性化合物が好ましく、塩基性を示す窒素含有化合物がより好ましい。「塩基性を示す」とは、通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で化合物Bの水溶液が桃〜赤色を呈すること、又は化合物Bの水溶液のpHが7より大きいことを意味する。
塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。この中でも低コストで扱いやすい点で、尿素が好ましい。化合物Bの添加量は、2〜1000質量部が好ましく、100〜700質量部がより好ましい。反応温度は、0〜95℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。反応時間は、特に限定されないが、通常、1〜600分程度であり、30〜480分が好ましい。
エステル化反応の条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率を向上させることができる。
セルロース原料に化合物Aを反応させた後、通常はエステル化セルロース懸濁液が得られる。エステル化セルロース懸濁液は、必要に応じて脱水される。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース原料の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100〜170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(さらに好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後、100〜170℃で加熱処理することがより好ましい。
リン酸エステル化セルロースにおいては、セルロース原料に置換基としてリン酸基が導入されており、セルロース同士が電気的に反発する。そのため、リン酸エステル化セルロースは容易にナノ解繊することができる。リン酸エステル化セルロースのグルコース単位当たりのリン酸置換度の下限値は、0.001以上が好ましい。これにより、十分な解繊(例えばナノ解繊)が実施できる。当該置換度の上限値は、0.60以下が好ましい。これにより、リン酸エステル化セルロースの膨潤又は溶解を防止し、ナノファイバーが得られない事態を防止することができる。したがって、当該置換度は0.001〜0.60が好ましい。リン酸エステル化セルロースは、煮沸後冷水で洗浄する等の洗浄処理がなされることが好ましい。これにより解繊を効率よく行うことができる。
[1−1−2.解繊]
セルロース原料の解繊は、セルロース原料に化学変性を施す前に行ってもよいし、後に行ってもよい。解繊処理は1回行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回の場合それぞれの解繊の時期はいつでもよい。なお、解繊とは、通常、物理的解繊をいう。
解繊に用いる装置は、特に限定されず、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式のタイプの装置が挙げられる。中でも、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に強力なせん断力を印加できることが好ましい。装置が印加できる圧力は、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に上記圧力を印加することができ、かつ、強力なせん断力を印加できる、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。
解繊をセルロース原料の分散体に対して行う場合、分散体中のセルロース原料の固形分濃度の下限値は、通常、0.1質量%以上であり、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、セルロース原料の量に対する液量が適量となり効率的になる。当該濃度の上限値は、通常、10質量%以下であり、好ましくは6質量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
解繊(好ましくは高圧ホモジナイザーでの解繊)、又は必要に応じて解繊前に行う分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサー等の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
[混合に供されるセルロース系繊維の形態]
ゴム成分と混合されるセルロース系繊維の形態は特に限定されない。例えば、セルロース系繊維が分散媒に分散した分散液、当該分散液の乾燥固形物、当該分散液の湿潤固形物を混合に供してよい。分散液におけるセルロース系繊維の濃度は、分散媒が水である場合は0.1〜5%(w/v)とすることができる。分散媒が水の他にアルコール等の有機溶媒を含む場合は、前記濃度を0.1〜20%(w/v)とすることができる。湿潤固形物とは、前記分散液と乾燥固形物との中間の態様の固形物である。前記分散液を通常の方法で脱水して得た湿潤固形物中の分散媒の量は、セルロース系繊維に対して、5〜15質量%であることが好ましい。但し、液状媒体の追加又はさらなる乾燥により分散媒の量を適宜調整できる。
また、セルロース系繊維と水溶性高分子溶液との混合液、混合液の乾燥固形物、混合液の湿潤固形物等も使用できる。当該混合液及び乾燥固形物における液状媒体の量は、前述の範囲であってよい。水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、澱粉、かたくり粉、クズ粉、陽性澱粉、燐酸化澱粉、コーンスターチ、アラビアガム、ジェランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸塩、でんぷんポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、グァーガム、及びコロイダルシリカ、並びにこれらの混合物が挙げられる。この中でも溶解性の点から、カルボキシメチルセルロース及びその塩を用いることが好ましい。
前記乾燥固形物及び湿潤固形物は、セルロース系繊維の分散液又はセルロース系繊維と水溶性高分子の混合液を乾燥して調製できる。乾燥方法は、特に限定されない。例えば、スプレードライ、圧搾、風乾、熱風乾燥、又は真空乾燥が挙げられる。乾燥装置としては、例えば、連続式の乾燥装置(例えば、トンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、スプレードライヤ乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置)、回分式の乾燥装置(例えば、箱型乾燥装置、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、撹拌乾燥装置)が挙げられる。これらの乾燥装置は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組合せて用いてもよい。ドラム乾燥装置は、均一に被乾燥物に熱エネルギーを直接供給することができるのでエネルギー効率が高く、かつ必要以上に熱を加えずに直ちに乾燥物を回収することができるので好ましい。
[1−2.ゴム成分]
ゴム成分は、通常、有機高分子を主成分とする、弾性限界が高く、弾性率の低い成分である。ゴム成分は、天然ゴム及び合成ゴムに大別され、本発明においてはいずれでもよく、両者の組み合わせでもよい。
天然ゴムとしては、化学修飾を施さない、狭義の天然ゴムでもよく、また水素化天然ゴム、塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴムのように、天然ゴムを化学修飾したもの、脱タンパク天然ゴムでもよい。
合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)が挙げられる。
ゴム成分は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
ゴム成分は、固形状及び液状のいずれでもよい。液状のゴム成分としては、例えば、ゴム成分の分散液、ゴム成分の溶液が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒が挙げられる。本発明においては、特に、ゴム成分として、クロロプレンゴム(CR)を含有させることで優れた効果を発現する。
[1−3.メチレンアクセプター化合物、及びメチレンドナー化合物]
本発明のゴム組成物は、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含む。
メチレンアクセプター化合物とは、通常、メチレン基を受容でき、かつ、メチレンドナー化合物と混合して加熱することにより、硬化反応し得る化合物である。メチレンアクセプター化合物としては、例えば、フェノール、レゾルシノール、レゾルシン、クレゾール等のフェノール性水酸基を有する化合物及びその誘導体、レゾルシン系樹脂、クレゾール系樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂としては、例えば、上記フェノール化合物及びその誘導体と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド化合物と、の縮合物が挙げられる。フェノール樹脂は、縮合の際の触媒によりノボラック樹脂(酸性触媒)、レゾール樹脂(アルカリ性触媒)に分類できるが、本発明においてはいずれを使用してもよい。フェノール樹脂は、オイル又は脂肪酸で変性されていてもよい。オイル及び脂肪酸としては、例えば、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸が挙げられる。
メチレンドナー化合物とは、通常、メチレン基を供与でき、かつ、メチレンアクセプター化合物と混合して加熱することにより、硬化反応し得る化合物である。メチレンドナー化合物としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、メラミン誘導体が挙げられる。メラミン誘導体としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチロールメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサキス−(メトキシメチル)メラミンが挙げられる。
メチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物の組み合わせとしては、例えば、クレゾール、クレゾール誘導体又はクレゾール系樹脂とペンタメトキシメチルメラミンとの組み合わせ、レゾルシン、レゾルシン誘導体又はレゾルシン系樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの組み合わせ、カシュー変性フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの組み合わせ、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの組み合わせが挙げられる。中でも、クレゾール、クレゾール誘導体又はクレゾール系樹脂とペンタメトキシメチルメラミンとの組み合わせ、レゾルシン、レゾルシン誘導体又はレゾルシン系樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの組み合わせが好ましい。
[1−4.含有量]
ゴム組成物におけるセルロース系繊維の含有量の下限値は、ゴム成分100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。これにより引張強度の向上効果が十分に発現し得る。上限値は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。これにより、製造工程における加工性を保持することができる。したがって、セルロース系繊維の含有量は、1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。
メチレンアクセプター化合物の含有量の下限値は、ゴム成分100質量%に対して0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.3質量%以上がさらに好ましく、1.5質量%以上がさらにより好ましい。これにより引張強度の向上効果が十分に発現し得る。上限値は、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。これにより、製造工程における加工性を保持することができる。したがって、メチレンアクセプター化合物の含有量は、0.5〜50質量%が好ましく、1.0〜20質量%がより好ましく、1.3〜20質量%がさらに好ましく、1.5〜10質量%がさらにより好ましい。
メチレンドナー化合物の含有量の下限値は、メチレンアクセプター化合物100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。これにより引張強度の向上効果が十分に発現し得る。上限値は、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。これにより、製造工程における加工性を保持することができる。したがって、メチレンドナー化合物の含有量は、メチレンアクセプター化合物100質量%に対して、10〜100質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましく、25〜85質量%がさらに好ましい。
[1−5.任意成分]
本発明のゴム組成物は、必要に応じて1又は2以上の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、補強剤(カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤(酸化亜鉛、ステアリン酸)、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、着色剤などゴム工業で使用され得る配合剤が挙げられる。これらの中でも、硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤が好ましい。加硫促進剤としては例えば、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
ゴム組成物が硫黄を含む場合、その含有量の下限値は、ゴム成分に対して、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、1.7質量%以上がさらに好ましい。上限値は、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
ゴム組成物が加硫促進剤を含む場合、その含有量の下限値は、ゴム成分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。上限値は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
[2.成形品]
本発明の成形品は、上記のゴム組成物を用いてなるものである。ゴム組成物中のゴム成分とセルロース系繊維の相溶性が向上しているので、十分な補強性を有する。
本発明の成形品の用途は、特に制限されず、例えば、自動車、電車、船舶、飛行、ベルトコンベア等の輸送機器;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品;携帯電話等の移動通信機器;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品;建築材;文具等の事務機器、容器、コンテナーが挙げられる。これら以外であっても、ゴムや柔軟なプラスチックが用いられている部材への適用が可能であり、産業用ベルトへの適用が好適である。例えば、フラットベルト、コンベアベルト、コグドベルト、Vベルト、リブベルト、丸ベルトが挙げられる。
[3.製造方法]
本発明の成形品の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、以下の製造方法が挙げられる。
[3−1.製造方法a]
本発明の成形品の製造方法の一例として、(a1)ゴム成分とセルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合して混合物(1)(ゴム組成物)を得る工程、(a2)工程(a1)で得た混合物(1)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱し、成形して成形品を得る工程を有する製造方法aが挙げられる。
製造方法aの(a1)における各成分の添加の順序は、特に限定されず、各成分を一度に混合してもよいし、いずれかの成分を先に混合した後で残りの成分を混合してもよい。また、製造方法aの(a2)の加熱処理温度は40℃以上100℃未満、処理時間は1〜24時間であることが好ましい。この範囲とすることで、ゴム成分に対するダメージを押さえることができる。
製造方法aとして、より詳細には、セルロース系繊維の分散液とゴム成分の分散液(ラテックス)を混合し(例:ミキサー等による撹拌)、水を除去し、得られる混合物(通常は固形物)に対し、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含む成分を添加して素練り及び混練り(例:オープンロール等の装置)する。当該方法によれば、ゴム成分中に化学変性セルロースナノファイバーを均一に分散させることができる。
[3−2.製造方法b]
本発明の成形品の製造方法の他の例として、(b1)ゴム成分とセルロース系繊維を混合して混合物(2)を得る工程、(b2)工程(b1)で得た混合物(2)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱した加熱処理物(マスターバッチ)を得る工程、(b3)工程(b2)で得た加熱処理物にメチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合し、成形して成形品を得る工程を有する製造方法bが挙げられる。これにより、いずれの成分をも均一に分散させることができる。
また、(b2)の加熱処理温度は40℃以上100℃未満、処理時間は1〜24時間であることが好ましい。この範囲とすることで、ゴム成分に対するダメージを押さえることができる。(b3)における、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物の添加順序は、各成分を一度に混合してもよいし、いずれかの成分を先に混合した後で残りの成分を混合してもよい。
なお、素練り及び混練り装置としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールが挙げられる。
[3−3.その他の製造方法]
その他の製造方法としては、ゴム成分に対し、それ以外の成分を任意の順番で添加して混合する方法が挙げられる。より詳細には、ゴム成分の固形物に対し、セルロース系繊維の固形物、メチレンアクセプター化合物、メチレンドナー化合物を任意の順番で混合し、同様にオープンロール等の装置で素練り及び混練りする。これにより、水を除去する工程を省略できる。
[混合]
混合の際の(例えば、素練り及び混練りの際の)の温度は、常温程度(15〜30℃程度)でもよいが、ゴム成分が架橋反応しない程度に高温に加熱してもよい。例えば140℃以下であり、より好ましくは120℃以下である。また、加熱する際の下限は、40℃以上であり、好ましくは60℃以上である。したがって、加熱温度は、40〜140℃程度が好ましく、60〜120℃程度がより好ましい。硫黄及び加硫促進剤の添加時期は、メチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物の添加時期より後であることが好ましい。すなわち、硫黄及び加硫促進剤を添加せずにメチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物を含むゴム組成物を混合して素練り開始後に、硫黄及び加硫促進剤を追加してさらに素練り及び混練りを行うことが好ましい。これにより、メチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物が加熱により予備的に縮合し、その縮合物とゴム成分及びセルロース系繊維との相互作用が効果的に発揮され得る。
混合終了後に、必要に応じて成形を行う。成形装置としては、例えば、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形が挙げられる。最終製品の形状、用途、成形方法に応じて適宜選択すればよい。
混合終了後に、好ましくは成形後に、加熱する(加硫、架橋)ことが好ましい。これによりメチレンアクセプター化合物とメチレンドナー化合物が加熱により縮合反応して三次元網状構造体を形成し、この構造体がゴム成分及びセルロース系繊維とそれぞれ相互作用することにより、成形品を効果的に補強することができる。加熱温度は、150℃以上が好ましい。上限は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。したがって、加熱温度は、150〜200℃程度が好ましく、150〜180℃程度がより好ましい。加熱装置としては例えば、型加硫、缶加硫、連続加硫等の加硫装置が挙げられる。
最終製品とする前に、必要に応じて仕上げ処理を行ってもよい。仕上げ処理としては、例えば、研磨、表面処理、リップ仕上げ、リップ裁断、塩素処理が挙げられる。これらの処理のうち、1つのみを行ってもよいし、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、特に断りがない限り、物性値の測定方法は上記に記載した測定方法による。また、「部」とは質量部を意味する。
<製造例1.酸化セルロースナノファイバーの製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するので、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、酸化セルロースナノファイバー分散液を得た。平均繊維径は3nm、アスペクト比は250であった。
<製造例2.カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの製造>
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g(出発原料の無水グルコース残基当たり、モル換算で2.25倍)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。30℃で30分攪拌した後に、モノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算、パルプのグルコース残基当たり、モル換算で1.5倍)添加し、30分撹拌した。70℃まで昇温し1時間撹拌した後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化したパルプを得た。これを水で固形分1%(w/v)とし、高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)により5回処理して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを得た。平均繊維径は15nm、アスペクト比は50であった。
<製造例3.カチオン化セルロースナノファイバーの製造>
パルプを攪拌することができるパルパーに、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で24g加え、パルプ固形濃度が15%(w/v)になるように水を加えた。30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを200g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.05のカチオン変性されたパルプを得た。これを固形濃度1%(w/v)とし、高圧ホモジナイザー(20℃、154MPa)により2回処理して、カチオン化セルロースナノファイバーを得た。平均繊維径は25nm、アスペクト比は50であった。
なお、上記製造例におけるカルボキシル基量、カルボキシメチル置換度、カチオン置換度は、上段にて説明した方法により測定された。
<実施例1>
製造例1で得られた酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度1%水分散液500gとクロロプレンゴムラテックス(商品名:ショウプレン、昭和電工社製、固形分濃度50%)200g、レゾルシン10%水溶液25g、ヘキサメチレンテトラミン10%水溶液16gを混合して、ゴム成分:変性セルロースナノファイバー:メチレンアクセプター化合物:メチレンドナー化合物の質量比が100:5:2.5:1.6となるようにし、TKホモミキサー(6000rpm)で30分間攪拌した。この水性懸濁液を、70℃の加熱オーブン中で10時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
このマスターバッチ152.7gをオープンロール(関西ロール社製)にて、60℃で5分間混練した。次に、ステアリン酸0.7g(ゴム成分に対し0.5質量%)、酸化亜鉛8.4g(ゴム成分に対し6質量%)、硫黄4.9g(ゴム成分に対し3.5質量%)、加硫促進剤(BBS、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)1g(ゴム成分に対し0.7質量%)を加え、オープンロール(関西ロール社製)を用い、60℃で10分間混練して、未加硫のゴム組成物のシートを得た。
このシートを、金型にはさみ、160℃で15分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの加硫ゴム組成物のシートを得た。これを所定の形状の試験片に裁断し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、補強性の一つである引張強度を測定した。結果を図1及び表1に示す。なお、各々の数値が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、ゴムの機械強度に優れることを示す。
<実施例2>
ゴム成分100部に対し、メチレンアクセプター化合物の質量比を1.25、メチレンドナー化合物の質量比を0.8としたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を図1及び表1に示す。
<実施例3>
製造例1で得られた酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度1%水分散液500gとクロロプレンゴムラテックス(商品名:ショウプレン、昭和電工社、固形分濃度50%)200gを混合してゴム成分と変性セルロースナノファイバーとの質量比が100:5となるようにし、TKホモミキサー(6000rpm)で30分間攪拌した。この水性懸濁液を、70℃の加熱オーブン中で10時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
このマスターバッチ147gに対し、レゾルシン3.5g(ゴム成分に対し2.5質量%)、ヘキサメチレンテトラミン2.24g(レゾルシンに対し64質量%)を添加し、オープンロール(関西ロール社製)にて、60℃で10分間混練した。次に、ステアリン酸0.7g(ゴム成分に対し0.5質量%)、酸化亜鉛8.4g(ゴム成分に対し6質量%)硫黄4.9g(ゴム成分に対し3.5質量%)、加硫促進剤(BBS、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)1g(ゴム成分に対し0.7質量%)を加え、オープンロール(関西ロール社製)を用い、60℃で10分間混練して、未加硫のゴム組成物のシートを得た。
このシートを、金型にはさみ、160℃で15分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの加硫ゴム組成物のシートを得た。結果を図1及び表1に示す。
<比較例1>
酸化セルロースナノファイバー、メチレンアクセプター化合物、及びメチレンドナー化合物を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。結果を図1及び表1に示す。
<比較例2>
メチレンアクセプター化合物、及びメチレンドナー化合物を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。結果を図1及び表1に示す。
Figure 2018062657
図1及び表1からわかるように、本発明のゴム組成物は、ひずみを与えた際のモジュラス値が高い成形品を製造可能であった。特に、ゴム成分、セルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を同時に加熱処理した場合、破断伸びが若干低下したものの、モジュラス値と破断強度のバランスに優れるものであった(実施例1及び2参照)。また、ゴム成分とセルロース系繊維を加熱処理した後、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合した場合、破断伸びに加えて破断強度も若干低下したものの、モジュラス値が高いものであった(実施例3参照)。これに対し、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合しない場合、破断伸びが若干低下したものの、モジュラス値と破断強度のバランスは向上したが、その効果は改善の余地があった(比較例2参照)。

Claims (9)

  1. ゴム成分、セルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を含むゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分が、クロロプレンゴムである請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記セルロース系繊維が、酸化セルロースファイバー、カルボキシメチル化セルロースファイバー及びカチオン化セルロースファイバーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 前記メチレンアクセプター化合物が、レゾルシン、レゾルシン誘導体及びレゾルシン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  5. 前記メチレンドナー化合物が、ヘキサメチレンテトラミンである請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  6. 前記セルロース系繊維の長さ加重平均繊維長が50〜2000nm、長さ加重平均繊維径が2〜500nmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなる成形品。
  8. 請求項7に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(a1)及び(a2)を有する成形品の製造方法。
    (a1)ゴム成分とセルロース系繊維、メチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合して混合物(1)を得る工程。
    (a2)前記工程(a1)で得た混合物(1)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱し、成形して成形品を得る工程。
  9. 請求項7に記載の成形品の製造方法であって、下記工程(b1)〜(b3)を有する成形品の製造方法。
    (b1)ゴム成分とセルロース系繊維を混合して混合物(2)を得る工程。
    (b2)前記工程(b1)で得た混合物(2)を40℃以上100℃未満で1〜24時間加熱した加熱処理物を得る工程。
    (b3)前記工程(b2)で得た加熱処理物にメチレンアクセプター化合物及びメチレンドナー化合物を混合し、成形して成形品を得る工程。
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