JP2018061974A - Pbフリーはんだ合金、Pbフリーはんだ合金の製造方法、Pbフリーはんだ合金の評価方法 - Google Patents

Pbフリーはんだ合金、Pbフリーはんだ合金の製造方法、Pbフリーはんだ合金の評価方法 Download PDF

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希 谷上
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Abstract

【課題】接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を有する高温用のPbフリーはんだ合金を提供することを目的とする。【解決手段】Pbフリーはんだ合金であって、Znを主成分とし、融点が300℃以上450℃以下であり、前記Pbフリーはんだ合金の表面は、グロス値が1200以上であり、かつSCE方式で計測したL*が10.0以上50.0以下、a*が−3.0以上−1.0以下、b*が−9.0以上−4.0以下であるPbフリーはんだ合金を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、Pbフリーはんだ合金、Pbフリーはんだ合金の製造方法、Pbフリーはんだ合金の評価方法に関する。
各種電子部品の組み立て工程においては、電子部品と、他の部材とを接合するために各種はんだ合金が用いられており、融点等の特性の良さから、従来はPb(鉛)を含有するはんだ合金が用いられていた。
しかし、近年では環境汚染に対する配慮から、Pbの使用を制限する動きが強くなってきており、例えばRoHS指令などではPbは規制対象物質になっている。こうした動きに対応して、電子部品などの組立の分野においても、Pbを含まない(無鉛)はんだ合金、即ちPbフリーはんだ合金の提供が求められている。
中低温用(約140〜230℃)はんだ合金に関しては、Sn(スズ)を主成分とするPbフリーはんだ合金が既に実用化されている。例えば、特許文献1には、スズを主成分とし、銀を1.0〜4.0重量%、銅を2.0重量%以下、ニッケルを1.0重量%以下含有することを特徴とする「はんだ合金」が開示されている。
ところで、近年ではパワー半導体素子として、SiC(炭化ケイ素)チップの適用が進んでいる。これは、SiCチップを用いると、高密度電流を流すことが可能となるため、パッケージの大幅な小型化が可能となるからである。
SiCチップの動作温度は、従来の一般的なSi(シリコン)チップの動作温度である175℃より高くなり、最大動作温度は250℃程度の高温のものが多く用いられており、車載向けパワーモジュールの一部では350℃まで上昇するものがある。
SiCチップ等の高温で動作する電子部品と他の部品とを接合する際に用いるはんだ合金には、接合する電子部品の最大動作温度と、素子接合温度上限とを考慮し、250℃〜450℃に耐えうること、すなわち250℃〜450℃の融点を有することが求められている。
このような250〜450℃程度の比較的高温の融点を有するはんだ合金(以下、「高温用はんだ合金」とも称する)として、従来はPb−5質量%Sn合金に代表されるPb系はんだ合金が主に用いられていた。しかし、Pbの使用に対する制限から、係る高温用はんだ合金についてもPbフリーはんだ合金とすることが求められている。
ところが、実用化が進んでいる上述の中低温用のSnを主成分とするPbフリーはんだ合金は、融点が220℃前後と低いため、高温用はんだ合金としては耐熱性が不足しており、適用できない。このため、SiCチップ等の高温で動作する電子部品の接合に適した高温用のPbフリーはんだ合金が求められており、Au系はんだ合金やZn系はんだ合金などが検討されている。
しかし、Au系はんだ合金は高コストである点が問題となり、使用量が多くなるような大面積のチップ付けには適用が難しい。
Zn系はんだ合金としては、例えば特許文献2に、Alを1〜9重量%含み、Geを0.05〜1重量%含み、残部がZnおよび不可避不純物からなる高温はんだ付用Zn合金が開示されている。
また、特許文献3には、はんだ合金表面の酸化物層が120nm以下であり、平均表面粗さRaが0.60μm以下であることを特徴とするZnを主成分とするPbフリーはんだ合金が開示されている。
特開平11−077366号公報 特許平11−288955号公報 特開2012−228729号公報
しかしながら、特許文献2、3に開示されたZn系はんだ合金でも、電子部品等の被接合部材を接合する際にボイドが形成され、接合不良を生じる場合があった。また、250℃以上の高温で動作する電子部品を接合した場合に、一定時間電子部品を動作させると接合部にクラックが生じる等、十分な接合信頼性が得られない場合があった。このため、接合不良の発生を抑制し、250℃の高温環境下でも接合信頼性を有する高温用のPbフリーはんだ合金が求められていた。
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を有する高温用のPbフリーはんだ合金を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様では、
Pbフリーはんだ合金であって、
Znを主成分とし、融点が300℃以上450℃以下であり、
前記Pbフリーはんだ合金の表面は、グロス値が1200以上であり、かつSCE方式で計測したLが10.0以上50.0以下、aが−3.0以上−1.0以下、bが−9.0以上−4.0以下であるPbフリーはんだ合金を提供する。
本発明の一態様によれば、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を有する高温用のPbフリーはんだ合金を提供することができる。
実施例、比較例において作製した接合体の構造の説明図。
[Pbフリーはんだ合金]
以下、本実施形態のPbフリーはんだ合金の一実施形態について説明する。
本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Znを主成分とし、融点を300℃以上450℃以下とすることができる。そして、Pbフリーはんだ合金の表面は、グロス値が1200以上であり、かつSCE方式で計測したLが10.0以上50.0以下、aが−3.0以上−1.0以下、bが−9.0以上−4.0以下とすることができる。
本発明の発明者らは、従来の高温用のPbフリーはんだ合金において、濡れ性や、接合性について安定した性能を発揮できず、接合不良が生じたり、250℃の高温環境下において十分な接合信頼性が得られなかったりする場合の原因について、鋭意検討を行った。その結果、高温用のPbフリーはんだ合金は、そのPbフリーはんだ合金表面に付着した油等の異物と、該Pbフリーはんだ合金の表面の表面粗さとが、該Pbフリーはんだ合金の濡れ性や、接合性に影響を与えていることを見出した。
従来の高温用のPbフリーはんだ合金においては、例えば特許文献3に開示されているように、表面の酸化物層の厚さ等については検討されてきたが、表面に付着した油等の異物については着目されていなかった。このため、従来の高温用のPbフリーはんだ合金については、製造時の条件等により、該Pbフリーはんだ合金の表面に残留した油等の異物の程度にばらつきを生じていた。そして、近年の被接合部材の小型化に伴って、微量な残留物であっても、被接合部材の接合不良や、250℃の高温環境下において十分な接合信頼性を得られない原因となっていることを見出した。
また、Pbフリーはんだ合金の表面粗さが十分に低くないと、Pbフリーはんだ合金が溶融して接合する際にボイドが形成され、被接合部材の接合不良や、250℃の高温環境下において十分な接合信頼性が得られない原因となることを見出した。
以上のように、本発明の発明者らの検討によれば、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を有する高温用のPbフリーはんだ合金とするためには、高温用のPbフリーはんだ合金の表面に付着した油等の異物と、その表面の表面粗さとを制御することが重要である。このため、高温用のPbフリーはんだ合金の表面の、油等の異物の付着状態や、表面粗さに関する表面状態を適切に評価し、該表面状態が適切なPbフリーはんだ合金とする必要がある。
高温用のPbフリーはんだ合金の表面状態を評価する方法として、例えば、界放射型オージェ電子分光装置などが挙げられる。しかし、製造ラインなどに界放射型オージェ電子分光装置を入れて定期的に評価するのは生産性およびコストの面から現実的ではない。
そこで、本発明の発明者らは、高温用のPbフリーはんだ合金の表面の油等の異物の付着状態や、表面粗さを変化させ、表面状態を各種評価方法により評価し、評価結果と、該はんだ合金の接合不良の発生の程度や接合信頼性との関係について、さらに検討を行った。その結果、高温用のPbフリーはんだ合金の表面の油等の異物の付着状態や、表面粗さに関する表面状態を、グロス値及び色彩値(明度、色相、彩度)により把握できることを見出した。さらに、これらの値が所定の範囲内にある高温用のPbフリーはんだ合金を用いることで、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を確保できることを見出し、本発明を完成させた。
なお、本明細書において接合不良とは、被接合部材をPbフリーはんだ合金により接合した場合に、該はんだ合金により形成された接合部にボイドが多量に発生し、ボイド率が10%以上であることを意味する。また、250℃高温環境下における接合信頼性とは、被接合部材をPbフリーはんだ合金により接合後、250℃で50時間保持した場合でもはんだにより形成した接合部に剥がれやクラックを生じないことを意味する。
以下、本実施形態のPbフリーはんだ合金について、具体的に説明する。
本実施形態のPbフリーはんだ合金を適用する被接合部材は特に限定されるものではないが、高温動作のため、接合部の材料に250℃以上の高温での耐熱性が要求されるSiCチップやGaNチップ接合向けを主要とするダイボンディング用に特に好適に用いることができる。このため、本実施形態のPbフリーはんだ合金の融点は300℃以上450℃以下であることが好ましい。
そして、既述のように、本発明の発明者らの検討によれば、Pbフリーはんだ合金表面の油等の異物の付着状態や、表面粗さに関する表面状態を、グロス値及び色彩値(明度(L)、色相、彩度(a、b))により評価できる。さらに、これらの値が所定の範囲内にあるPbフリーはんだ合金とすることで、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を確保することができる。
以下、本実施形態のPbフリーはんだ合金表面の、グロス値(光沢値)、及びL、a、b、について説明する。
本実施形態のPbフリーはんだ合金は、例えばシート形状を有することができるが、被接合部材と接合する面の表面を評価した場合に、グロス値を1200以上、SCE方式で計測した色彩値であるLを10.0以上50.0以下、aを−3.0以上−1.0以下、bを−9.0以上−4.0以下とすることができる。
グロス値は、分光測色計で評価を行うことができ、8度グロス値を示している。一般には、JISZ8741−1995において鏡面光沢度−測定方法として、この角度が20度・45度・60度・75度・85度の5つの角度での測定方法が規定されており、60度鏡面光沢を測定する光沢計が、測定範囲が広いため多用されている。しかしながら本実施形態のPbフリーはんだ合金を評価する場合には、グロス値と色彩値とを同時に精度良く測定できることが好ましい。そして、分光測色計で評価を行った際の8度グロス値を用いることにより、光沢値と色彩値を一度で測定できるため、複数測定による計測バラツキを減らし、かつ効率的に評価することができるため、60度光沢計に近似するように設定された8度グロス値を用いて計測、評価することが好ましい。
色彩値であるL、a、bはJISZ8729−2004において定義される色に関するL表示系であり、明度をL、色相と彩度とをa、bで表現したものである。L、a、bについても分光測色計で評価を行うことができる。
本発明の発明者らの検討によれば、Pbフリーはんだ合金は、グロス値が1200以上、SCE方式で計測したLが10.0以上50.0以下、aが−3.0以上−1.0以下、bが−9.0以上−4.0以下となる状態にすることにより、Pbフリーはんだ合金の表面の状態が、濡れ性や接合性について好ましい状態となり、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を確保することが可能な状態となることを見出した。
グロス値が1200未満の場合、Pbフリーはんだ合金の表面の表面粗さRaが許容範囲を超えていたり、油等の異物が表面に過度に付着していたりする状態となっている。このため、はんだ合金が溶融して接合する際にボイドを形成するなどして十分な接合信頼性が得られない。そこで、上述のようにグロス値は1200以上であることが好ましい。また、このグロス値は残留油の評価において、その残留量に大きく影響されるため、多量の残留油の評価に非常に適している。なお、はんだ合金の表面に微量の加工油が点在する場合、主にaの値が−1.0を超える等するため、このように微量の残留油の評価にはaが適している。
グロス値は、1300以上であることがより好ましい。グロス値が1300以上となると、より清浄で平滑な表面状態を示し、濡れ性がより向上し、基板との接着性を特に高めることが可能になる。このため、接合不良の発生を特に抑制でき、250℃の高温環境下での接合信頼性を特に高めることができる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金においては、グロス値や色彩値はPbフリーはんだ合金の組成に応じても変化し、グロス値や色彩値が既述の範囲内の場合、特に被接合部材間の接合に好適な組成を有するPbフリーはんだ合金であることを示している。
以上のように、本実施形態のPbフリーはんだ合金のグロス値及びL、a、bを上記の範囲内となるように加工することにより、Pbフリーはんだ合金の表面に付着した油等の異物と、その表面の表面粗さを所定の範囲とすることができ、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を確保することができる。
なお、上述の様に、本実施形態のPbフリーはんだ合金はシート形状を有することができ、被接合部材と接合する面である2つの主表面のうち、被接合物と接合する接合面について、グロス値、及びL、a、bが上述の範囲を満たしている場合、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を確保することができる。このため、2つの被接合物を本実施形態のPbフリーはんだ合金により接合する場合であって、該Pbフリーはんだ合金がシート形状を有する場合、被接合部材と接合する面である2つの主表面について、共にグロス値、及びL、a、bが上述の範囲を満たしていることが好ましい。
次に、本実施形態のPbフリーはんだ合金の組成の構成例について説明する。
本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Zn(亜鉛)を主成分として含有していればよく、その他の成分は特に限定されるものではない。ただし、本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Pbフリーはんだ合金であることから、Pbは、不可避成分を除いて含有していないことが好ましく、その含有量は0.01質量%以下であることが好ましい。
なお、ここでいう主成分とは、質量%の単位において、最も多く含まれている成分であることを意味し、例えば50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましい。Znの含有量の上限値は特に限定されないが、例えばZn以外の成分の含有量を十分に確保するため、98質量%以下とすることができる。
Znは融点が419℃であり、300〜400℃で接合されることが望まれる高温用Pbフリーはんだ合金の主成分として、非常に適している元素である。加えて、熱伝導性がPbの3倍あるため、放熱性に優れ、接合材として好ましい性質を有する。コスト的にも安価で、容易に入手できるなど、多くの利点を持っている。
ただし、Znは酸化し易いことから、はんだ合金の濡れ性を十分に高めるため、本実施形態のPbフリーはんだ合金は、さらにAl(アルミニウム)や、Ge(ゲルマニウム)、Mg(マグネシウム)、Ag(銀)から選択される1種以上を含有することもできる。
具体的には例えば、本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Alを0.01質量%以上9.00質量%以下含有することができる。
また、本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Ge、Mg、Agから選択される1種以上を含有することもできる。Ge、Mg、Agから選択される1種以上を含有する場合において、Geを含有する場合はGeを0.01質量%以上8.00質量%以下、Mgを含有する場合はMgを0.01質量%以上5.00質量%以下、Agを含有する場合はAgを0.10質量%以上4.00質量%以下含有することができる。
さらに、本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Pの含有量を0質量%以上0.500質量%以下とすることができる。
そして、本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Alと、Ge、Mg、Agから選択される1種以上と、Pとを除いた残部はZnと不可避不純物とから構成することができる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金が含有することができる、Zn以外の各元素について説明する。
<Al>
本実施形態のPbフリーはんだ合金は上述のようにAlを含有することもできる。AlはZnと共晶合金を形成するため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がAlを含有する場合、該Pbフリーはんだ合金は、AlとZnとの共晶合金を含有し、該Pbフリーはんだ合金の融点を、Zn単体の融点(419℃)よりも低くすることができる。また、本実施形態のPbフリーはんだ合金がAlを含有することで、該Pbフリーはんだ合金の加工性や応力緩和性を向上することができる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金がAlを含有する場合、Alの含有量は0.01質量%以上、9.00質量%以下であることが好ましい。
これは、本実施形態のPbフリーはんだ合金のAlの含有量が0.01質量%以上の場合、Pbフリーはんだ合金の融点を下げたり、加工性や応力緩和性を向上させたりする効果を十分に発揮することができるからである。
Alの含有量が過度に多いと、Znと共晶合金を形成しないAlが増加し、Pbフリーはんだ合金の液相線温度が420℃程度と高くなり接合温度が高くなるため、被接合部材を接合する際に被接合部材にダメージを与えたりする恐れがある。また、液相線温度が高くなると、Pbフリーはんだ合金を調製する際の処理温度等も高くなるため、該Pbフリーはんだ合金内で元素間の反応が生じやすくなり、脆い金属間化合物等が生成される恐れもある。
Alの含有量を9.00質量%以下とすることで、Pbフリーはんだ合金の液相線温度を好適な温度範囲内に維持することが可能になり、上述の問題が生じることを防止できる。このため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がAlを含有する場合、その含有量は、9.00質量%以下であることが好ましい。本実施形態のPbフリーはんだ合金がAlを含有する場合、その含有量は0.1質量%以上7.00質量%以下であることがより好ましい。
<Ge>
本実施形態のPbフリーはんだ合金は上述のようにGeを含有することもできる。Geは、Pbフリーはんだ合金の加工性や、耐酸化性を向上させることができ、さらには濡れ性を向上させることができる。
GeはZnやAlには、わずかにしか固溶しないため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がGeを含有する場合、該Pbフリーはんだ合金が溶融後に冷却、凝固する際に、まず溶融したPbフリーはんだ合金中のGeが析出する。そして、該析出したGeが核となり、はんだ合金の結晶が形成される。このため、Pbフリーはんだ合金の結晶が微細化し、加工性が向上する。
GeはZnと共晶合金を形成することのできる元素であり、本実施形態のPbフリーはんだ合金がGeを含有する場合においても同様にZnと共晶合金を形成する。このようにGeと、Znとが共晶合金を形成することにより、形成される結晶を微細化し、加工性を向上させる効果を有する。
また、GeはZnよりも比重が小さく、かつ酸化され易いため、溶融時にPbフリーはんだ合金の表面付近に偏析し、少量の含有量で効果的にZnの酸化を抑制し、Pbフリーはんだ合金の耐酸化性を向上させることができ、さらには濡れ性を向上させることもできる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金がGeを含有する場合、Geの含有量は、0.01質量%以上8.00質量%以下が好ましい。Geの含有量を0.01質量%以上とすることで、上述の加工性や、耐酸化性、濡れ性を十分に向上させることができる。Geの含有量が過度に多いと、Geの核が成長してしまい、Pbフリーはんだ合金の結晶が微細化しなかったり、Geの酸化膜が厚くなり過ぎたりして、却って加工性や、濡れ性が低下する恐れがある。Geの含有量を8.00質量%以下とすることで、Geの核の成長や、Geの酸化膜が過度に厚くなることを抑制し、上述の加工性や、濡れ性の低下をより確実に抑制できる。このため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がGeを含有する場合、その含有量は、8.00質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のPbフリーはんだ合金がGeを含有する場合、その含有量は0.10質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましい。
<Mg>
本実施形態のPbフリーはんだ合金は、上述のようにMgを含有することもできる。Mgは、Pbフリーはんだ合金の融点を下げるとともに、濡れ性を向上させることができる。
MgはZnと2種類の共晶合金を形成することができ、それらの共晶温度は341℃と364℃である。このため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がMgを含有する場合、該Pbフリーはんだ合金は、これらの共晶合金を含有することで、該Pbフリーはんだ合金の融点を、Zn単体の融点(419℃)よりも低くすることができる。
また、MgはZn、Alよりも酸化し易い元素であるため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がMgを含有する場合、該Pbフリーはんだ合金中のMgが酸化することによりZnやAlの酸化を抑制し、該Pbフリーはんだ合金の濡れ性を向上させる効果も有する。
本実施形態のPbフリーはんだ合金がMgを含有する場合、Mgの含有量は0.01質量%以上5.00質量%以下が好ましい。これは、Mgの含有量を0.01質量%以上とすることで、上述したMgの効果を十分発揮させることができるからである。
Mgの含有量が過度に多いと、Pbフリーはんだ合金の表面に強固なMgの酸化膜が形成され、却って濡れ性が低下したり、該酸化膜により接合性が低下したりする恐れがある。また、Pbフリーはんだ合金の液相線温度が高くなる恐れもある。Mgの含有量を5.00質量%以下とすることで、このような強固なMgの酸化膜の形成等を抑制し、上述の濡れ性や接合性の低下等の問題が生じることもより確実に抑制できる。このため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がMgを含有する場合、その含有量は、5.00質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のPbフリーはんだ合金がMgを含有する場合、その含有量は0.01質量%以上4.00質量%以下であることがより好ましい。
<Ag>
本実施形態のPbフリーはんだ合金は、上述のようにAgを含有することもできる。Agは、Pbフリーはんだ合金の濡れ性及び接合性を向上させることができる。
Agは比較的酸化しにくい元素であり、本実施形態のPbフリーはんだ合金がAgを含有することで、該Pbフリーはんだ合金を酸化しにくくすることができる。
また、Agは電子部品やCu基板の最上層に形成されていることからも明らかなように、他の被接合部材と反応しやすい元素である。このため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がAgを含有する場合、該Pbフリーはんだ合金を溶融させた際に、Pbフリーはんだ合金内のAgと被接合部材表面の金属との反応が進行し易くなるため、該Pbフリーはんだ合金の濡れ性や接合性を向上させることができる。被接合部材の表面がAg、またはAgを含有する金属の場合は、より顕著に濡れ性や接合性を向上させることができる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金がAgを含有する場合、Agの含有量は、0.10質量%以上4.00質量%以下が好ましい。これは、Agの含有量を0.10質量%以上とすることで、上述したAgの効果を十分に発揮させることができるからであり、Agの含有量が4.00質量%を超えると、ZnやAlなどと脆い金属間化合物を形成してしまい、接合強度が不十分となり接合信頼性が低下してしまう場合があり好ましくないからである。
<P>
本実施形態のPbフリーはんだ合金は、Pを含有することもできる。Pは、Pbフリーはんだ合金の濡れ性を向上させることができる。
Pは強い還元性があり自らが酸化し易い元素であるため、本実施形態のPbフリーはんだ合金がPを含有する場合、該Pbフリーはんだ合金を溶融させた際に、はんだ合金の主成分であるZnや他の元素よりもPについて優先的に酸化が進行する。また、該Pbフリーはんだ合金によれば、はんだ合金表面に形成された酸化膜や、電子部品等の接合面に形成されている酸化膜を還元して除去する効果も有している。その結果、酸化膜を介することなく金属同士が直接接して反応しやすくなるため濡れ性が向上する。また、接合界面に酸化膜を巻き込む可能性が減るため、残存酸化膜に起因するボイドの発生を減少させることができる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金はPを任意の成分として含有することができるため、その含有量は例えば0質量%以上0.500質量%以下とすることが好ましい。
Pの含有量が過度に多い場合、Pbフリーはんだ合金の表面や、その内部にPとZnとの金属間化合物などの脆弱なPの化合物や、酸化物等が多量に生じ、却って濡れ性が悪化したり、接合信頼性が悪化したりする恐れがある。Pの含有量を0.500質量%以下とすることで、このようなPの化合物や、酸化物等の生成を抑制し、濡れ性や、接合信頼性の悪化を確実に抑制できるため、Pの含有量は0.500質量%以下であることが好ましい。
特に、本実施形態のPbフリーはんだ合金はPを含有していることが好ましく、Pの含有量は0.001質量%以上0.500質量%以下であることがより好ましい。
これは、Pの含有量を0.001質量%以上とすることで、上述したPの効果を十分発揮することができるからである。
以上に説明した本実施形態のPbフリーはんだ合金によれば、表面のグロス値、およびSCE方式で計測したL、a、bを所定の範囲となっている。このため、該Pbフリーはんだ合金の表面は、油等の異物の付着状態や、表面粗さに関する表面状態について適切な状態にあり、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を有することができる。
[Pbフリーはんだ合金の製造方法]
本実施形態のPbフリーはんだ合金の製造方法は、表面粗さRaが0.30μm以下の圧延ロールを用い、最終圧下率を10%以上とする圧延工程を有することができる。
本発明の発明者らは、既述のように、グロス値や、SCE方式で計測したL,a,bを所定の値であるPbフリーはんだ合金とすることで接合不良の発生を抑制し、250℃の高温環境下でも接合信頼性を確保することができることを見出した。
そして、係るPbフリーはんだ合金は、はんだ合金の表面状態が、はんだ接合に適した状態になっていることから、本実施形態のPbフリーはんだ合金を製造する際には、圧延工程の条件を制御することが非常に重要であることを見出した。
特に、圧延により最終製品の厚みを有するシート形状のPbフリーはんだ合金に加工する際、該Pbフリーはんだ合金の表面に接触し、その表面状態がはんだ合金表面に直接影響する圧延ロールの表面状態を制御する必要がある。本発明の発明者らの検討によれば、圧延ロールの表面の表面粗さが大きいと、該圧延ロールを用いて加工されたPbフリーはんだ合金についても表面粗さが大きくなり、該Pbフリーはんだ合金表面で光が乱反射し、はんだ合金表面の主にグロス値が既述の範囲から外れてしまう。
そこで、本実施形態のPbフリーはんだ合金の製造方法においては、圧延に使用する圧延ロールの表面粗さRaは、0.30μm以下とすることが好ましい。圧延ロールの表面粗さRaを0.30μm以下とすることで、該圧延ロールを用いてPbフリーはんだ合金を圧延加工した場合に、該Pbフリーはんだ合金表面のグロス値等をより確実に所望の範囲内とすることができる。
特に圧延工程で用いる圧延ロールは、表面粗さRaが0.10μm以下であることがより好ましい。これは、圧延ロールの表面粗さRaを0.10μm以下にすると、該圧延ロールを用いて圧延加工したPbフリーはんだ合金の表面が更に平滑になりより好ましいからである。なお、表面粗さRaは、JIS B 0601に規定されており、例えば触針法もしくは光学的方法等により評価することができる。また、ここで規定している圧延ロールの表面粗さRaは、圧延ロールの軸方向に沿って計測した際の値である。
また、はんだ合金を所定の厚さにまで薄くするためには、圧延を複数回繰り返すことになるが、本実施形態のPbフリーはんだ合金の製造方法においては、最終製品厚さにするための最後の圧延をする際に、その最終圧下率を10%以上とすることが好ましい。金属材料は、ある程度の負荷に対しては、元の状態に戻る弾性領域を有している。本実施形態のPbフリーはんだ合金の製造方法において製造するPbフリーはんだ合金についても当然弾性領域を有している。最終圧下率が10%未満の場合、組織構造や組成バラツキ等の影響により、部分的に塑性領域の場所と弾性領域の場所が混在してしまう場合がある。その結果、塑性領域は薄く、弾性領域は厚くなり、Pbフリーはんだ合金の表面に凹凸が発生し、表面粗さが大きくなってしまう場合があるので好ましくない。最終圧下率を10%以上とすることにより、全ての場所が塑性領域となり、均一な圧延が出来、凹凸の少ない平滑な、すなわち表面粗さの小さいはんだ合金表面を得ることができる。
なお、最終圧下率rは、最後(最終)の圧延を行う際に、圧延ロールに供給する前のPbフリーはんだ合金の板厚をh1、最後の圧延後のPbフリーはんだ合金の板厚をh2とした場合にr=100×(h1−h2)/h1により算出できる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金の製造方法は、上述の圧延工程以外に任意の工程を有することもできる。例えばPbフリーはんだ合金を調製する、Pbフリーはんだ合金調製工程や、圧延工程で得られたPbフリーはんだ合金の表面を洗浄する洗浄工程等を有することもできる。
Pbフリーはんだ合金調製工程では、Pbフリーはんだ合金が含有する成分に対応した原料を混合、溶融し、冷却することで、Pbフリーはんだ合金を調製することができる。なお、原料を溶融する際、原料が溶融(溶解)し始めたら該原料、またはその溶融物を混合し、成分が均一になるようにすることが好ましい。また、Pbフリーはんだ合金が含有する成分を溶融した後、冷却する前に、溶融物を鋳型等に流し込み、所望の形状に成型することができる。
Pbフリーはんだ合金が含有する成分の例については既に説明したため、ここでは説明を省略する。Pbフリーはんだ合金を溶融する際の温度や、雰囲気等については特に限定されるものではなく、該Pbフリーはんだ合金の成分や、その原料により温度(処理温度)を選択することができる。また、雰囲気については、Pbフリーはんだ合金が酸化しないように、窒素や、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気とすることが好ましい。
Pbフリーはんだ合金調製工程で調製したPbフリーはんだ合金は、上述の圧延工程に供給することができる。
さらに、必要に応じてPbフリーはんだ合金を所望のサイズに打ち抜くプレス工程等を実施することもできる。
洗浄工程では、例えば圧延工程等でPbフリーはんだ合金の表面に付着した成分を洗浄、除去することができる。洗浄に用いる洗浄液等は特に限定されないが、例えばジクロロメタンなどの有機溶剤等、各種溶液を用いることができる。ジクロロメタンなどの有機溶剤は洗浄性に優れているが、環境への負荷も懸念される。このため、Pbフリーはんだ合金に付着した油等の異物を十分に除去しつつ、その使用量を抑制できるように、分光測色計等により、Pbフリーはんだ合金のグロス値や、L、a、bを任意のタイミングで評価し、既述の範囲内になるように洗浄工程の条件を選択することもできる。
また、洗浄工程の後に、得られたPbフリーはんだ合金の表面を分光測色計等によりグロス値や、L、a、bを評価し、各パラメータが既述の範囲内に満たしているか否か、を評価する評価工程を実施することもできる。評価工程で、各パラメータが既述の範囲内にある場合には、合格品として回収、出荷するように構成できる。また、評価工程で、各パラメータが既述の範囲内を満たしていないと評価されたPbフリーはんだ合金は、不合格品として、例えば再度洗浄工程に供給したり、既述のPbフリーはんだ合金調製工程に原料として供給したりすることもできる。
[Pbフリーはんだ合金の評価方法]
本実施形態のPbフリーはんだ合金の評価方法は、Pbフリーはんだ合金の表面について、グロス値、及びSCE方式によるL、a、bを測定し、測定結果に基づいて、はんだ接合が良好に行えるか否かを評価することができる。
既述のように、本発明の発明者らの検討によれば、Pbフリーはんだ合金の表面のグロス値、L、a、bが所定の範囲にある場合に、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を確保することができる。すなわち、はんだ接合に適しているPbフリーはんだ合金であると評価することができる。
具体的には、測定値について、既述のようにグロス値が1200以上であり、かつSCE方式で計測したLが10.0以上50.0以下、aが−3.0以上−1.0以下、bが−9.0以上−4.0以下の場合に、はんだ接合が良好に行えると評価することができる。
なお、上記いずれかのパラメータが、上記範囲から外れている場合には、はんだ接合を良好に行うことができないと評価することができる。
評価の具体的な方法については特に限定されないが、例えば既述のように分光測色計等を用いることができる。
本実施形態のPbフリーはんだ合金の評価方法は、例えば電子部品の組み立て等において、被接合部材をPbフリーはんだ合金により接合する前に、該Pbフリーはんだ合金の評価を行うために用いることができる。このように電子部品の組み立て等で、Pbフリーはんだ合金を接合に用いる前に、本実施形態のPbフリーはんだ合金の評価方法により評価することで、接合不良等の発生を抑制し、製品の歩留まりを向上させることができる。
また、本実施形態のPbフリーはんだ合金の評価方法は、例えばPbフリーはんだ合金の製造工程において、合格品と、不合格品とを識別するためや、Pbフリーはんだ合金を洗浄する際の条件を選択するため等に用いることもできる。このようにPbフリーはんだ合金の製造工程において、本実施形態のPbフリーはんだ合金の評価方法を用いることで、簡単な設備によって、合格品と、不合格品とを分類でき、歩留まりを向上させることができるため好ましい。
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の手順により、Pbフリーはんだ合金を調製し、評価を行った。
(Pbフリーはんだ合金調製工程)
原料として、それぞれ純度99.9質量%以上のZn、Al、Ge、Mg、Ag及びPを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく、均一になるように留意しながら、切断及び粉砕などにより3mm以下の大きさに細かくした。
次に、これら原料から所定量を秤量し、高周波溶解炉用のグラファイト製坩堝に入れた。上記各原料の入った坩堝を高周波溶解炉に装入し、酸化を抑制するために窒素ガスを原料1kg当たり0.7リットル/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶解させた。金属が溶解しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混合した。全ての原料が十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかに坩堝を取り出し、坩堝内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型には、幅50mm×長さ200mm×厚さ10mmのはんだ母合金が得られるものを使用した。
このようにして、各原料の混合比率を変えることにより、組成の異なる試料1〜試料13のPbフリーはんだ母合金を作製した。
得られた試料1〜試料13の各はんだ母合金について、その成分組成をICP発光分光分析器(株式会社島津製作所製「SHIMADZU S−8100」)を用いて分析した。得られた分析結果を表1に示す。
なお、DSCにより各はんだ母合金の融点を測定した結果、本評価に用いた各はんだ母合金の融点は、すべて300℃以上450℃以下の範囲内に含まれることを確認した。
(圧延工程)
次に、上記試料1〜試料13の各はんだ母合金を、それぞれ圧延機でシート形状に加工した。
その際圧延のパススケジュールを調整して、最終圧延の圧下率が9%、10%、20%となる圧延条件で、最終製品の厚みが0.1mmとなるような条件を設定した。また、圧延ロールには表1に示した表面粗さRaの圧延ロールを用いた。表1に、使用した圧延ロールの表面粗さ、最終圧下率を示す。
(プレス工程)
圧延工程終了後のPbフリーはんだ合金の各試料を、プレス機で6mm×6mmのシート形状(四角形状)に打抜いて打抜き品を作製した。
(洗浄工程)
プレス工程後の、Pbフリーはんだ合金は、ジクロロメタンを用いてそのPbフリーはんだ合金表面に付着している加工油の洗浄を行った。
ただし、試料5に関してはジクロロメタンに替えて、水を用いた点以外は同様にして洗浄工程を実施し、試料6に関しては洗浄工程を実施しなかった。
試料1〜試料5、試料7〜試料13については洗浄工程後のPbフリーはんだ合金について、試料6についてはプレス工程後のPbフリーはんだ合金について、以下の評価を実施した。
なお、試料1〜試料3、試料8〜試料11、試料13が実施例、試料4〜試料7、試料12が比較例になる。また、Pbフリーはんだ合金について、以下単にはんだ合金とも記載する。
<グロス値(光沢値)、色彩値(L、a、b)の測定>
上記した試料1〜試料13について、8度グロス値及び色彩値(L、a、b)を分光測色計(コニカミノルタオプティクス株式会社製、型式:CM−5)を用いて測定した。試料を分光測色計の測定台に載せ、測定台が設置された試料室の蓋を閉じて8度グロス値及び色彩値を測定した。本装置では、正反射光を除去したSCEモード(正反射光を除去する測定モード)により色彩値を計測すると同時に、SCIモード(正反射光を含む測定モード)による計測を行うことにより、1回の測定で同じ測定エリアでの8度グロス値とSCE方式による色彩値とを測定することができる。各試料の測定結果を表1に示す。
なお、試料1〜試料13のはんだ合金は、シート形状を有しており、以下の接合性の評価等では、上下の両主表面にそれぞれ被接合物となるNiめっき層を成膜したCu基板と、Siチップとを接合している。このため、グロス値、色彩値は、各試料の両主表面について評価を行ったが、両主表面について評価結果が同じであったため、表1には1つの値のみを示している。
Figure 2018061974
また、作製した各試料のはんだ合金を用いて、接合性の評価(ボイド率測定)、信頼性の評価(250℃保持試験)を行った。
以下、各評価について詳細に説明する。
<接合性の評価(ボイド率の測定)>
接合性の評価を行うに当たって、各試料のはんだ合金を用いて評価用の接合体を作製した。評価用の接合体はまず、ダイボンダー(ウェストボンド社製、MODEL:7327C)を起動し、ヒーター部分にカバーをしてヒーター部の周囲から窒素を流し(窒素流量:合計8L/分)、ヒーター部を窒素雰囲気とした。その後、ヒーター設定温度を各試料の融点より50℃高い温度にして加熱した。
ヒーター温度が設定値で安定した後、板厚0.3mmのCu基板上に膜厚3.0μmのNiめっき層が成膜されたCu基板をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。次に、各試料のはんだ合金を該Cu基板のNiめっき層上に載せて25秒加熱し、25秒経過後にSiチップを載せて3秒間スクラブした。スクラブが終了した後、Cu基板をSiチップと共にヒーター部から静かに取り上げて、その横の窒素雰囲気が保たれている保持台に一旦設置して冷却した。十分に冷却した後、大気中に取り出した。これにより、図1に示すような表面にNiめっき層2が成膜されたCu基板1上に各試料のはんだ合金3を介してSiチップ4を接合した評価用の接合体を得た。
接合性を確認するため、評価用の接合体のボイド率をX線透過装置(株式会社 東芝製 TOSMICRON−6125)を用いて測定した。試料(はんだ合金)でSiチップとCu基板とが接合された接合体の接合面をSiチップ上部から垂直にX線を透過し、以下の計算式1を用いてボイド率を算出した。算出した各試料のボイド率を表2に示す。
[計算式1]
ボイド率(%)=ボイド面積÷(ボイド面積+はんだとCu基板の接合面積)×100
<信頼性の評価(250℃保持試験)>
はんだ接合の信頼性を評価するために250℃保持試験を行った。250℃保持試験を行うに当たって、上記した接合性の評価の場合と同様にして、各試料について、評価用の接合体を3個作製した。具体的には、表面にNiめっき層2が成膜されたCu基板1のNiめっき層2上に、各試料のはんだ合金3を介してSiチップ4を接合した評価用の接合体を各試料について3個ずつ作製した。そして、各接合体3個のうちの1個に対しては、250℃保持試験を50時間実施し、1個に対しては、250℃保持試験を100時間まで実施した。そして、1個の接合体については、250℃保持試験前の接合面を観察するための比較試料として用いた。
ここで、250℃保持試験を50時間実施するとは、250℃に保持された環境下に評価用の接合体を配置し、50時間放置することを意味する。そして、50時間経過後、ヒーターを切り室温まで徐冷し、以下の接合面の観察を行った。
50時間及び100時間の250℃保持試験を実施した接合体と、250℃保持試験を実施していない接合体とについて、それぞれの接合体のCu基板を樹脂に埋め込み、接合面と垂直な面、すなわち接合体の各部材の積層方向と平行な面が露出するように断面研磨を行った。そして、各接合体の得られた断面についてSEM(装置名:HITACHI S−4800)により観察を行った。観察の結果、接合面に剥がれが生じるか、またははんだ合金部分にクラックが入っていた場合を「×」、接合面の剥がれや、はんだ合金部分のクラック等の不良がなく、250℃保持試験前と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。得られた評価結果を下記の表2に示す。
Figure 2018061974
表2に示した結果から、実施例である、試料1〜試料3、試料8〜試料11、試料13は、ボイド率が7.1%以下と低く、信頼性評価も250℃の高温保持試験において50時間まで不具合の発生が無く、良好な結果を示した。
これに対し、比較例である試料4〜試料7、試料12はボイド率が高く、信頼性評価も250℃の高温保持試験において50時間までもたなかった。
試料4では、グロス値が1200未満、かつbが−4.0を超えることが確認できた。これは、試料4のはんだ合金を調製する際に圧延工程で表面粗さRaが0.4μmの圧延ロールを用いたことにより、はんだ合金の表面にキズが生じたためと考えられる。このため、試料4のはんだ合金の溶融時に表面のキズ部が大気を取り込み、ボイド形成につながったと考えられる。
試料5では、aが−1.0を超えていることが確認できた。試料5のはんだ合金の接合面となる主表面を確認したところ、加工油が点在して残留していた。これは洗浄工程で水を用いたため、該加工油を十分に除去できなかったためと考えられる。試料5の結果から、はんだ合金の表面への加工油が点在して残留している場合には、aの値が高くなることが確認できた。試料5のはんだ合金については、はんだ合金表面への加工油の残留により、より具体的には、該加工油の気化や残留異物などにより、ボイドが多く形成され、接合の信頼性も低くなったと考えられる。
試料6では、グロス値は1200未満、かつbが−4.0を超えることが確認できた。試料6のはんだ合金については、洗浄工程を実施しなかったため、はんだ合金の接合面となる主表面に加工油が多量に残留しており、このような場合には、グロス値が低くなり、かつbが−4.0を超える高い値になることを確認できた。試料5の結果との比較から加工油の残留状態により影響を与えることも確認できた。試料6のはんだ合金については、はんだ合金表面の加工油の多量の残留により、ボイドが多く形成され、接合の信頼性も低くなったと考えられる。
試料7では、グロス値が1200未満であることが確認できた。試料7のはんだ合金を調製する際に圧延工程で、最終圧下率が9%と低く、また圧延工程で圧延に使用した圧延ロールの表面粗さRaが0.35μmと高かったため、得られたはんだ合金の表面の表面粗さが悪化したためと考えられる。試料7のはんだ合金については、試料4のはんだ合金とは異なり、全面的に表面が荒れていることにより、特にグロス値が低くなったものと考えられる。そして、はんだ合金の表面が荒れていることにより、ボイドを形成し易く、接合の信頼性が悪化したと考えられる。
試料12は、グロス値が1200未満であることが確認できた。試料12のはんだ合金の組成が、接合に好適な範囲からずれたことにより、はんだ接合に好ましくない合金状態となり、その状態が光学的な評価でも検出できたためと考えられる。
以上の結果から、融点が所定の範囲であり、かつ表面のグロス値、SCE方式で計測したL、a、bが所定の範囲のPbフリーはんだ合金とすることで、接合不良の発生を抑制でき、250℃の高温環境下でも接合信頼性を有する高温用のPbフリーはんだ合金とすることができることを確認できた。
また、Pbフリーはんだ合金の表面についての、グロス値、及びSCE方式によるL、a、bの評価結果から、はんだ接合が良好に行えるかを簡単に評価できることも確認できた。係るPbフリーはんだ合金の評価方法を用いることで、好適なはんだ状態を簡易に判断することが可能となり、不具合製品の発生を低減することが可能になる。

Claims (5)

  1. Pbフリーはんだ合金であって、
    Znを主成分とし、融点が300℃以上450℃以下であり、
    前記Pbフリーはんだ合金の表面は、グロス値が1200以上であり、かつSCE方式で計測したLが10.0以上50.0以下、aが−3.0以上−1.0以下、bが−9.0以上−4.0以下であるPbフリーはんだ合金。
  2. Alを0.01質量%以上9.00質量%以下と、
    さらにGe、Mg、Agから選択される1種以上とを含有し、
    Geを含有する場合はGeを0.01質量%以上8.00質量%以下、Mgを含有する場合はMgを0.01質量%以上5.00質量%以下、Agを含有する場合はAgを0.10質量%以上4.00質量%以下含有し、
    Pの含有量が0質量%以上0.500質量%以下であり、
    Alと、Ge、Mg、Agから選択される1種以上と、Pとを除いた残部がZnと不可避不純物とからなる請求項1に記載のPbフリーはんだ合金。
  3. Pの含有量が0.001質量%以上0.500質量%以下である請求項2に記載のPbフリーはんだ合金。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のPbフリーはんだ合金を製造する方法であって、
    表面粗さRaが0.30μm以下の圧延ロールを用い、最終圧下率を10%以上とする圧延工程を有するPbフリーはんだ合金の製造方法。
  5. Pbフリーはんだ合金の表面について、グロス値、及びSCE方式によるL、a、bを測定し、
    測定結果に基づいて、はんだ接合が良好に行えるか否かを評価するPbフリーはんだ合金の評価方法。
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