JP2018058526A - 制御装置 - Google Patents

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幸宏 城
弘 岡田
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弘 岡田
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Seiichiro Washino
誠一郎 鷲野
齋藤 友宏
Tomohiro Saito
齋藤  友宏
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Abstract

【課題】クラッチが固着した場合でも、車両の走行中、エンジンおよびモータを効率よく作動させることが可能な制御装置を提供する。【解決手段】制御部25は、固着検出部251および効率低下抑制部252を有している。固着検出部251は、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の係合状態が接続状態で固着したことを検出可能である。効率低下抑制部252は、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の固着を固着検出部251が検出したとき、車両の走行中、エンジンENGまたはモータMG1の引きずり損失によるエネルギー効率の低下を抑制するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータMG1、モータMG2またはエンジンENGの作動を制御可能である。【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンおよびモータの動力を車両の駆動部に伝達する動力伝達装置を制御する制御装置に関する。
従来、エンジンおよびモータの動力を車両の駆動部に伝達する動力伝達装置を制御する制御装置が知られている。例えば特許文献1には、1つのエンジンおよび2つのモータの動力を車両の駆動部に伝達する動力伝達装置を制御する制御装置が開示されている。
特許第5136660号公報
特許文献1の動力伝達装置は、複数のクラッチを備え、エンジンおよびモータの動力を、クラッチを含む伝達経路を経由して車両の駆動部に伝達する。この動力伝達装置において、例えば、第1のモータ側の出力クラッチが接続状態で固着した場合、車両の走行中、第1のモータの引きずり損失が生じ、第1のモータのエネルギー効率が低下するおそれがある。また、車両の速度が所定の速度以上になると、第1のモータが過回転し、第1のモータの故障を招くおそれがある。また、例えば、エンジン側の出力クラッチが接続状態で固着した場合、車両の走行中、エンジンの引きずり損失が生じ、エンジンのエネルギー効率が低下するおそれがある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、クラッチが固着した場合でも、車両の走行中、エンジンおよびモータを効率よく作動させることが可能な制御装置を提供することにある。
本発明は、複数のクラッチ(8、11、13)を備え、車両(1)のエンジン(ENG)、および、1つ以上のモータ(MG1、MG2)の動力を、クラッチを含む伝達経路を経由して車両の駆動部(14)に伝達する動力伝達装置(17)を制御する制御装置(20)であって、制御部(25)を備えている。
制御部は、エンジン、モータおよびクラッチの作動を制御可能である。
制御部は、固着検出部(251)および効率低下抑制部(252)を有している。
固着検出部は、クラッチの係合状態が接続状態で固着したことを検出可能である。
効率低下抑制部は、クラッチの固着を固着検出部が検出したとき、車両の走行中、エンジンまたはモータの引きずり損失によるエネルギー効率の低下を抑制するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータまたはエンジンの作動を制御可能である。これにより、クラッチが固着した場合でも、車両の走行中、エンジンおよびモータを効率よく作動させることができる。
本発明の第1実施形態による制御装置、および、それを適用した車両を示す模式図。 本発明の第1実施形態による制御装置、および、他の部位との接続関係を示す模式図。 MG1_Lモードのときの動力伝達装置の状態を示す模式図。 MG1_Hモードのときの動力伝達装置の状態を示す模式図。 ENG_Lモードのときの動力伝達装置の状態を示す模式図。 ENG_Hモードのときの動力伝達装置の状態を示す模式図。 発電モードのときの動力伝達装置の状態を示す模式図。 各動力源の特性を示すグラフ。 EVメインモードにおける切替マップを示す図。 エンジンメインモードにおける切替マップを示す図。 制御部が実行する走行モード切替処理を示すフロー図。 制御部が実行する作動モード選択処理を示すブロック図。 本発明の第1実施形態による制御装置の第1処理を示すフロー図。 本発明の第1実施形態による制御装置の第1処理で用いられる関数F1を示す図。 本発明の第1実施形態の制御装置の第1処理により設定される走行モードを示す図。 本発明の第1実施形態による制御装置の第2処理を示すフロー図。 本発明の第1実施形態の制御装置の第2処理により設定される走行モードを示す図。 本発明の第1実施形態による制御装置の第3処理を示すフロー図。 本発明の第1実施形態の制御装置の第3処理により設定される走行モードを示す図。 本発明の第2実施形態による制御装置の第4処理を示すフロー図。 本発明の第2実施形態の制御装置の第4処理により設定される走行モードを示す図。
以下、本発明の複数の実施形態による制御装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による制御装置、および、それを適用した車両を図1に示す。
車両1は、内燃機関としてのエンジンENG、第1モータとしてのモータMG1、第2モータとしてのモータMG2、動力伝達装置17、駆動部14、制御装置20等を備えている。
エンジンENGは、本実施形態では、例えばガソリンを燃料として駆動するガソリンエンジンである。モータMG1およびモータMG2は、車両1に搭載された車両駆動用バッテリ(図示せず)の電力により回転する電気モータであり、モータ軸にトルクが入力されることにより発電し車両駆動用バッテリに充電可能なジェネレータとしても機能する。ここで、車両1は所謂ハイブリッド車両である。
動力伝達装置17は、エンジンENG、モータMG1、モータMG2の動力を駆動部14に伝達する。ここで、駆動部14は、例えばディファレンシャルギアである。駆動部14には、車軸15が接続されている。車軸15の両端には、駆動輪16が設けられている。
駆動部14に伝達されたエンジンENG、モータMG1、モータMG2の動力は、車軸15を経由して駆動輪16に伝達される。これにより、車両1が走行する。
制御装置20は、動力伝達装置17を制御し、動力伝達装置17における複数の伝達経路を切り替え、エンジンENG、モータMG1、モータMG2の動力の駆動部14への伝達の仕方を制御可能である。
動力伝達装置17は、第1入力軸2、ダンパ3、第1入力軸4、第1駆動ギア5、第2入力軸6、第2駆動ギア7、入力側クラッチ8、出力軸9、第1被駆動ギア10、第1出力側クラッチ11、第2被駆動ギア12、第2出力側クラッチ13等を備えている。
第1入力軸2は、棒状に形成され、一端がエンジンENGのクランクシャフトに接続されている。これにより、エンジンENGの動力は、第1入力軸2に入力される。
ダンパ3は、略円板状に形成され、一方の面側が第1入力軸2の他端に接続されている。
第1入力軸4は、棒状に形成され、一端がダンパ3の他方の面側に接続されている。これにより、エンジンENGの動力は、第1入力軸2およびダンパ3を経由して第1入力軸4に伝達する。ここで、ダンパ3は、エンジンENGの動力の脈動を吸収可能である。
第1駆動ギア5は、略円板状に形成され、外縁部に外歯を有している。第1駆動ギア5は、中心に第1入力軸4が位置するよう第1入力軸4に固定されている。これにより、第1駆動ギア5は、第1入力軸4とともに回転可能である。
第2入力軸6は、棒状に形成され、一端がモータMG1のモータ軸に接続される。これにより、モータMG1の動力は、第2入力軸6に入力される。ここで、第2入力軸6は、他端が第1入力軸4の他端に対向するよう第1入力軸4と同軸に設けられている。
第2駆動ギア7は、略円板状に形成され、外縁部に外歯を有している。第2駆動ギア7は、中心に第2入力軸6が位置するよう第2入力軸6に固定されている。これにより、第2駆動ギア7は、第2入力軸6とともに回転可能である。ここで、第2駆動ギア7の外径は、第1駆動ギア5の外径より小さい。
入力側クラッチ8は、第1入力軸4の他端と第2入力軸6の他端との間に設けられている。入力側クラッチ8は、例えば単層湿式クラッチである。入力側クラッチ8は、第1入力軸4と第2入力軸6とを接続または切断可能である。これにより、入力側クラッチ8が第1入力軸4と第2入力軸6とを接続している接続状態のとき、エンジンENGの動力は第2入力軸6に伝達され、または、モータMG1の動力は第1入力軸4に伝達される。
なお、入力側クラッチ8は、制御量に応じ、伝達トルク容量が完全解放状態である0の状態からスリップのない完全係合状態(伝達トルク容量最大)まで連続的に変化する。すなわち、入力側クラッチ8は、完全解放状態、つまり、伝達トルク容量が0のとき、第1入力軸4と第2入力軸6とを切断した状態であり、完全係合状態のとき、第1入力軸4と第2入力軸6とを接続した状態である。また、入力側クラッチ8は、完全解放状態と完全係合状態との間のスリップ状態のとき、そのスリップ状態に応じたトルクを第1入力軸4と第2入力軸6との間で伝達する。入力側クラッチ8は、後述する制御装置20の制御により、その係合状態が連続的に変化する。
出力軸9は、棒状に形成され、一端が駆動部14に接続され、他端がモータMG2のモータ軸に接続されている。これにより、モータMG2の動力は、出力軸9に入力される。また、出力軸9が回転すると、駆動部14に動力が伝達し、車軸15および駆動輪16が回転する。ここで、出力軸9は、第1入力軸2、4、第2入力軸6に対し平行に設けられている。
第1被駆動ギア10は、略円板状に形成され、外縁部に外歯を有している。第1被駆動ギア10は、中心に出力軸9が位置するよう出力軸9に対し相対回転可能に設けられている。第1被駆動ギア10は、外歯が第1駆動ギア5の外歯と噛み合うよう出力軸9に設けられている。
第1出力側クラッチ11は、第1被駆動ギア10と出力軸9との間に設けられている。第1出力側クラッチ11は、例えば単層湿式クラッチである。第1出力側クラッチ11は、第1被駆動ギア10と出力軸9とを接続または切断可能である。これにより、第1出力側クラッチ11が第1被駆動ギア10と出力軸9とを接続している接続状態のとき、エンジンENGの動力は、第1駆動ギア5、第1被駆動ギア10を含む第1の伝達経路を経由して出力軸9に伝達される。また、第1出力側クラッチ11が接続状態で、入力側クラッチ8が接続状態のとき、モータMG1の動力は、入力側クラッチ8、第1駆動ギア5、第1被駆動ギア10を含む第2の伝達経路を経由して出力軸9に伝達される。
なお、第1出力側クラッチ11は、制御量に応じ、伝達トルク容量が完全解放状態である0の状態からスリップのない完全係合状態(伝達トルク容量最大)まで連続的に変化する。すなわち、第1出力側クラッチ11は、完全解放状態、つまり、伝達トルク容量が0のとき、第1被駆動ギア10と出力軸9とを切断した状態であり、完全係合状態のとき、第1被駆動ギア10と出力軸9とを接続した状態である。また、第1出力側クラッチ11は、完全解放状態と完全係合状態との間のスリップ状態のとき、そのスリップ状態に応じたトルクを第1被駆動ギア10と出力軸9との間で伝達する。第1出力側クラッチ11は、後述する制御装置20の制御により、その係合状態が連続的に変化する。
第2被駆動ギア12は、略円板状に形成され、外縁部に外歯を有している。第2被駆動ギア12は、中心に出力軸9が位置するよう出力軸9に対し相対回転可能に設けられている。第2被駆動ギア12は、外歯が第2駆動ギア7の外歯と噛み合うよう出力軸9に設けられている。ここで、第2被駆動ギア12の外径は、第1被駆動ギア10の外径より大きい。
第2出力側クラッチ13は、第2被駆動ギア12と出力軸9との間に設けられている。第2出力側クラッチ13は、例えば単層湿式クラッチである。第2出力側クラッチ13は、第2被駆動ギア12と出力軸9とを接続または切断可能である。これにより、第2出力側クラッチ13が第2被駆動ギア12と出力軸9とを接続している接続状態のとき、モータMG1の動力は、第2駆動ギア7、第2被駆動ギア12を含む第3の伝達経路を経由して出力軸9に伝達される。また、第2出力側クラッチ13が接続状態で、入力側クラッチ8が接続状態のとき、エンジンENGの動力は、入力側クラッチ8、第2駆動ギア7、第2被駆動ギア12を含む第4の伝達経路を経由して出力軸9に伝達される。
なお、第2出力側クラッチ13は、制御量に応じ、伝達トルク容量が完全解放状態である0の状態からスリップのない完全係合状態(伝達トルク容量最大)まで連続的に変化する。すなわち、第2出力側クラッチ13は、完全解放状態、つまり、伝達トルク容量が0のとき、第2被駆動ギア12と出力軸9とを切断した状態であり、完全係合状態のとき、第2被駆動ギア12と出力軸9とを接続した状態である。また、第2出力側クラッチ13は、完全解放状態と完全係合状態との間のスリップ状態のとき、そのスリップ状態に応じたトルクを第2被駆動ギア12と出力軸9との間で伝達する。第2出力側クラッチ13は、後述する制御装置20の制御により、その係合状態が連続的に変化する。
上述のように、動力伝達装置17のエンジンENGおよびモータMG1と駆動部14との間には、第1〜4の4つの伝達経路が存在する。
第1の伝達経路および第2の伝達経路における第1駆動ギア5と第1被駆動ギア10とは、ハイギア機構HGを構成している。ハイギア機構HGの変速比は、例えば1より小さく設定されている。
第3の伝達経路および第4の伝達経路における第2駆動ギア7と第2被駆動ギア12とは、ローギア機構LGを構成している。ローギア機構LGの変速比は、例えば1より大きく設定されている。
そのため、エンジンENGまたはモータMG1の動力は、第1の伝達経路または第2の伝達経路(ハイギア機構HG)を経由する場合、増速されて出力軸9から駆動部14に出力される。また、エンジンENGまたはモータMG1の動力は、第3の伝達経路または第4の伝達経路(ローギア機構LG)を経由する場合、減速されて出力軸9から駆動部14に出力される。
以下、適宜、入力側クラッチ8を「エンジンクラッチ」、第1出力側クラッチ11を「ハイギア側クラッチ」、第2出力側クラッチ13を「ローギア側クラッチ」とよぶ。
制御装置20は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROMおよびRAM、ならびに、入出力手段等を有する小型のコンピュータである。制御装置20は、車両1の各部に取り付けられた各種センサからの信号等に基づき、ROMに記憶されたプログラムに従い処理を行い、動力伝達装置17を含む車両1の各種装置の作動を制御することで車両1を統合的に制御する。
制御装置20は、制御部25を有している。制御部25は、車両1の各種センサからの信号等に基づき、エンジンENG、モータMG1、モータMG2の駆動または非駆動、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の作動(係合状態)を制御することにより、エンジンENG、モータMG1が発生する動力の伝達経路および変速比を制御する。
図2に示すように、制御装置20には、車両1の車速を示す車速信号、アクセル開度を示すアクセル開度信号、車両駆動用バッテリの充電率を示すSOC(State of Charge)を示すSOC信号等が入力される。
車速信号としては、例えば駆動輪16に対応して設けられた車輪速センサから出力される信号を用いる。アクセル開度信号としては、例えばアクセル開度検出センサから出力される信号を用いる。SOC信号としては、車両駆動用バッテリのSOCを検出して出力するバッテリ監視装置から出力される信号を用いる。
制御部25は、入力された上記信号等に基づき、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の接続、切断を切り替える。具体的には、制御部25は、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13に対応して設けられたアクチュエータの作動を制御することにより、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の係合状態を、完全解放状態(切断状態)からスリップ状態を経由して完全係合状態(接続状態)まで連続的に変化させる。
制御部25による入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の制御によって、エンジンENGの発生する動力は、第1の伝達経路のハイギア機構HGを経由して駆動輪16に伝達されることも、第4の伝達経路のローギア機構LGを経由して駆動輪16に伝達されることも可能である。また、モータMG1の発生する動力は、第2の伝達経路のハイギア機構HGを経由して駆動輪16に伝達されることも、第3の伝達経路のローギア機構LGを経由して駆動輪16に伝達されることも可能である。
図3に示すように、例えばMG1_Lモードでは、モータMG1の動力が、破線矢印で示すような経路で、ローギア機構LGを経由して駆動輪16に伝達される。このモードでは、第2出力側クラッチ13が接続され、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13の接続または切断は任意である。ただし、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の全てが接続されることはない。
また、図4に示すように、MG1_Hモードでは、モータMG1の動力が、破線矢印で示すような経路で、ハイギア機構HGを経由して駆動輪16に伝達される。このモードでは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11が接続され、第2出力側クラッチ13が切断される。
また、図5に示すように、ENG_Lモードでは、エンジンENGの動力が、破線矢印で示すような経路で、ローギア機構LGを経由して駆動輪16に伝達される。このモードでは、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13が接続され、第1出力側クラッチ11が切断される。
また、図6に示すように、ENG_Hモードは、エンジンENGの動力が、破線矢印で示すような経路で、ハイギア機構HGを経由して駆動輪16に伝達される。このモードでは、第1出力側クラッチ11が接続され、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13の接続または切断は任意である。ただし、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の全てが接続されることはない。
また、図7に示すように、発電モードは、エンジンENGの動力が、破線矢印で示すような経路で、入力側クラッチ8を経由してモータMG1に伝達される。このモードでは、入力側クラッチ8が接続され、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13は切断される。このモードでは、エンジンENGの動力によりモータMG1が発電し、車両駆動用バッテリに充電を行うことができる。なお、このモードは、車両1の停止時に実現可能であり、モータMG2の発生する動力で車両1が低速走行するときにも実現可能である。また、モータMG1で発電した電力によりモータMG2で走行を行う、所謂シリーズ運転についても実現可能である。
上述したモータMG1の駆動モード(MG1_Lモード、MG1_Hモード)とエンジンENGの駆動モード(ENG_Lモード、ENG_Hモード)とは、任意に組み合わせることができる。
具体的には、モータMG1の動力とエンジンENGの動力とが共にローギア機構LGを経由して伝達されることを希望する場合、MG1_LモードとENG_Lモードとを組み合わせ、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を接続し、第1出力側クラッチ11を切断すればよい。
また、モータMG1の動力とエンジンENGの動力とが共にハイギア機構HGを経由して伝達されることを希望する場合、MG1_HモードとENG_Hモードとを組み合わせ、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を接続し、第2出力側クラッチ13を切断すればよい。
また、モータMG1の動力がローギア機構LGを経由し、エンジンENGの動力がハイギア機構HGを経由して伝達されることを希望する場合、MG1_LモードとENG_Hモードとを組み合わせ、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を接続し、入力側クラッチ8を切断すればよい。この場合、エンジンENGとモータMG1とで同時に異なる変速比を実現することができる。この場合、出力軸9の回転数は同一のため、エンジンENGの回転数よりもモータMG1の回転数を大きくでき、それぞれの駆動源において効率が高い動作点を選択することができる。
ただし、モータMG1の動力がハイギア機構HGを経由し、エンジンENGの動力がローギア機構LGを経由して伝達されるよう入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を制御することはできない。しかしながら、図8に基づき後述するように、モータMG1の動力がハイギア機構HGを経由して効率が良い場面と、エンジンENGの動力がローギア機構LGを経由して効率が良い場面とは全く異なるため、これら2つのモード(MG1_H、ENG_L)を同時に実現できなくても、車両1の燃費への悪影響は小さい。
制御装置20の制御部25は、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の接続状態、切断状態の組み合わせ、ならびに、モータMG1、モータMG2の駆動、非駆動を制御することで、車両1の状態に適した走行を実現することができる。
モータMG1の作動モードとしては、出力軸9に動力を伝達しない非駆動モード、MG1_Lモード、および、MG1_Hモードがある。モータMG2の作動としては、動力を発生しない非駆動モード、および、動力を発生して出力軸9に入力する駆動モードがある。エンジンENGの作動モードとしては、出力軸9に動力を伝達しない非駆動モード、ENG_Lモード、および、ENG_Hモードがある。これらモータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動モードは、一部の組み合わせを除き、任意に組み合わせることができる。
次に、車両1の状態に適した走行について、図8に基づき説明する
図8に、モータMG1、モータMG2およびエンジンENGの特性の一例をグラフで示す。
図8において、横軸は車速を示し、縦軸は車軸15の駆動トルクを示している。実線30は、平地低速走行時の各車速において必要な駆動トルクを示している。実線31、32は、それぞれMG1_Lモード、MG1_Hモードでの各車速におけるモータMG1の出力(発生)可能な駆動トルクの上限を示している。実線33は、各車速におけるモータMG2の出力(発生)可能な駆動トルクの上限を示している。
また、破線、一点鎖線で囲まれた範囲34、35は、それぞれMG1_Lモード、MG1_Hモードで効率(燃費に相当)が所定の基準以上に高いと想定される範囲を示している。また、二点鎖線で囲まれた範囲36は、モータMG2の駆動モードの効率が所定の基準以上に高いと想定される範囲を示している。また、実線37、38は、それぞれENG_Lモード、ENG_Hモードにおいて効率が最大であると想定される範囲(最大効率線)を示している。
モータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動モードの選定の基本的な考え方は、以下のとおりである。モータMG2のみで必要な駆動トルクを実現することができる場合は、モータMG2のみで車両1を駆動し、それ以外の場合は、車速と必要な駆動トルクとの関係において効率が最も高い組み合わせを選定する。
例えば、車速が0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域39aにおいては、領域39a内に高効率領域34、37があるMG1_LモードおよびENG_Lモードを積極的に使用し、車速が約60km/hから約150km/hまでの高速加速・登坂域39bにおいては、領域39b内またはその近傍に高効率領域35、36、38があるMG1_Hモード、モータMG2の駆動モード、ENG_Hモードを積極的に使用する。
例として、モータMG1、モータMG2を主体として車両1を駆動するEVメインモードの平地低速走行について説明する。EVメインモードは、車両駆動用バッテリのSOCに余裕がある場合に用いる走行モードである。
EVメインモードにおいては、平地低速走行時は、130km/hより低い車速では、必要な駆動トルクがモータMG2の最大駆動トルクを下回るため、モータMG2の動力のみで走行可能である。つまり、モータMG1およびエンジンENGは非駆動モード、モータMG2は駆動モードとする。このとき、制御装置20の制御部25は、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を全て切断し、モータMG1を停止させる。このとき、モータMG1を完全に停止させることができるため、モータMG1の連れ回り回転による損失を低減できる。
また、平地低速走行時でも、車速が130km/hを上回る場合は、モータMG2の動力のみで必要な駆動トルクを賄えないため、ENG_HモードとMG1_Hモードとを組み合わせ、かつ、モータMG2も駆動させるモードで走行する。
また、別の例として、エンジンENGを主体として車両1を駆動するエンジンメインモードの平地低速走行について説明する。エンジンメインモードは、車両駆動用バッテリのSOCに余裕がない場合に用いる走行モードである。
エンジンメインモードにおいては、平地低速走行時は、車両駆動用バッテリの電力を節約するため、モータMG2の駆動モードとENG_Hモードとを組み合わせ、さらに、モータMG1の非駆動モードも組み合わせる。このとき、制御装置20の制御部25は、第1出力側クラッチ11を接続し、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を切断し、モータMG1を停止させる。このとき、モータMG1を完全に停止させることができるため、モータMG1の連れ回り回転による損失を低減できる。
このように、図8に示したモータMG1、モータMG2およびエンジンENGの特性を効率的に利用するため、制御装置20においては、例えば工場出荷時等、予めROMまたはRAM等に、EVメインモードにおける切替マップ22(図9参照)、および、エンジンメインモードにおける切替マップ23(図10参照)が記録される。
切替マップ22、23は、車速と駆動トルクから成る二次元面を複数の区画41〜47、51〜54に分け、これら区画41〜47、51〜54のそれぞれにモータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動モードの組み合わせを1組割り当てるデータである。つまり、切替マップ22、23は、車速と駆動トルクの組み合わせに対して作動モードの組み合わせを1組割り当てるデータである。切替マップ22、23は、「車速および駆動トルク」と「エンジンENG、モータMG1、モータMG2、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の作動状態」との関係を示している。
制御装置20の制御部25は、所定のプログラムを読み出して実行することにより、図11に示す走行モード切替処理S900を所定の制御周期毎に実行し、EVメインモードとエンジンメインモードとを相互に切り替える。
S901では、現在の走行モードをRAM等の記憶媒体中の走行モード変数から読み込むことで取得する。続くS902では、車両駆動用バッテリの現在のSOCを取得する。続くS903では、S901で取得した走行モードがEVメインモードであるか否かを判定し、EVメインモードであると判定した場合(S903:YES)、S904に移行する。EVメインモードでないと判定した場合(S903:NO)、すなわちエンジンメインモードであれば、S907に移行する。
S904では、現在のSOCが所定のEV走行下限値未満であるか否かを判定し、EV走行下限値未満でないと判定した場合(S904:NO)、S905に移行する。S905では、上述の走行モード変数を書き換えないことで走行モードをEVメインモードに維持し、今回の走行モード切替処理S900を終了する。S904でEV走行下限値未満であると判定した場合(S904:YES)、S906に移行する。S906では、走行モードをエンジンメインモードに切り替えるため、走行モード変数にエンジンメインモードを示す値を代入し、今回の走行モード切替処理S900を終了する。
S907では、現在のSOCが所定のエンジン走行上限値未満であるか否かを判定し、エンジン走行上限値未満であると判定した場合(S907:YES)、S909に移行する。なお、エンジン走行上限値は、ヒステリシスを考慮し、EV走行下限値よりも大きい値とする。S909では、上述の走行モード変数を書き換えないことで走行モードをエンジンメインモードに維持し、今回の走行モード切替処理S900を終了する。S907でエンジン走行上限値未満でないと判定した場合(S907:NO)、S908に移行する。S908では、走行モードをEVメインモードに切り替えるため、上記走行モード変数にEVメインモードを示す値を代入し、今回の走行モード切替処理S900を終了する。
制御装置20が走行モード切替処理S900を繰り返すことにより、走行モードがEVメインモードでSOCがEV走行下限を下回らない間は、S901、S902、S903、S904、S905の順に処理が実行されることで、走行モードはEVメインモードに維持される。そして、モータMG1、モータMG2の使用等によってSOCが徐々に下がっていった結果、EV走行下限値を下回ると、S901、S902、S903、S904、S906の順に処理が実行されることで、走行モードがEVメインモードからエンジンメインモードに切り替わる。
また、走行モードがエンジンメインモードでSOCがエンジン走行上限を下回っている間は、S901、S902、S903、S907、S909の順に処理が実行されることで、走行モードはエンジンメインモードに維持される。そして、発電等によってSOCが徐々に上昇していった結果、エンジン走行上限値以上になると、S901、S902、S903、S907、S908の順に処理が実行されることで、走行モードがエンジンメインモードからEVメインモードに切り替わる。
また、図12に示すように、制御装置20の制御部25は、所定のプログラムを実行することで、所定の制御周期毎に,その時点のアクセル開度および車速を取得し、取得したアクセル開度および車速に基づき、モータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動モードを選択する。
具体的には、制御部25は、制御装置20のROM、RAM等に予め記憶されたアクセル開度トルクマップ21に基づき、取得したアクセル開度から必要な駆動トルクを算出する。ここで、アクセル開度トルクマップ21は、アクセル開度と、そのアクセル開度で必要となる駆動トルクとの対応関係を示すデータである。
そして、制御部25は、算出した駆動トルクと取得した車速とに対応するモータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動モードの組み合わせを切替マップ22、23(図9、10参照)に基づき選択する。
具体的には、現在の走行モードに応じた切替マップ(22、23)を用い、算出した駆動トルクと取得した車速との組み合わせの位置を含む区画を、対応する切替マップから読み取り、当該区画に割り当てられたモータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動モードの組み合わせを選択する。
ここで、図9、10に示す切替マップ(22、23)の具体的な区画分けと割り当て内容について説明する。
まず、図9に示すEVメインモード用の切替マップ22について説明する。
切替マップ22では、全車速域に亘り、駆動トルクが概ね200Nm以下の範囲が1つの区画41として設定されている。区画41には、モータMG2の駆動モード、モータMG1の非駆動モード、エンジンENGの非駆動モードの組み合わせ(MG2)が割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を切断することで実現する。
0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域においては、区画41のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画42が設定されている。区画42には、MG1_Lモード、モータMG2の非駆動モード、エンジンENGの非駆動モードの組み合わせ(MG1_L)が割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を切断し、第2出力側クラッチ13を接続し、モータMG2を駆動せず出力軸9の回転によって空回りさせることで実現する。この区画42は、図8に示すMG1_Lモードの高効率領域34が含まれているため、効率が高くなる。
また、0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域においては、区画42のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画43が設定されている。区画43には、MG1_Lモード、モータMG2の駆動モード、エンジンENGの非駆動モードの組み合わせ(MG1_L+MG2)が割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を切断し、第2出力側クラッチ13を接続することで実現する。このようにモータMG1とモータMG2とを併用することで、モータMG1の発生する動力自体は図8のMG1_Lモードの高効率領域34内、または、その近傍の駆動トルクとしつつ、その高効率領域34よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
20km/hから約60km/hまでの車速域においては、区画43のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画44が設定されている。区画44には、MG1_Lモード、モータMG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせ(MG1_L+MG2+ENG_H)が割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8を切断し、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を接続することで実現する。このようにモータMG1、モータMG2、エンジンENGを併用することで、モータMG1の発生する動力自体は図8のMG1_Lモードの高効率領域34内、または、その近傍の駆動トルクとし、エンジンENGの出力は図8のENG_Hモードの高効率領域38、または、その近傍の駆動トルクとしつつ、その高効率領域34、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
また、このように、モータMG1の動力とエンジンENGの動力とが経由するギア機構が異なるようにすることができるため、作動モードの選択の幅が広がる。特に図8に示すように、車速が約60km/h以下の発進〜低中速加速域39aには、MG1_Lモードの高効率領域34とENG_Hモードの高効率領域38の両方が含まれているため、これら2つを組み合わせて使用することができる。
また、約20km/hから約60km/hまでの車速域においては、区画43、44のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画45が設定されている。区画45には、MG1_Lモード、モータMG2の駆動モード、ENG_Lモードの組み合わせ(MG1_L+MG2+ENG_L)が割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を接続し、第1出力側クラッチ11を切断することで実現する。このようにモータMG1、モータMG2、エンジンENGを併用することで、モータMG1の発生する動力自体は図8のMG1_Lモードの高効率領域34内、または、その近傍の駆動トルクとし、エンジンENGの出力は図8のENG_Lモードの高効率領域37、または、その近傍の駆動トルクとしつつ、その高効率領域34、37よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。また、領域44と異なり、ENG_Lモードを用いるため、より大きい駆動トルクを効率よく実現できる。
約60km/hを超える領域においては、区画41のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画46が設定されている。区画46には、モータMG1の非駆動モード、モータMG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせ(MG2+ENG_H)が割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を切断し、第1出力側クラッチ11を接続することで実現する。このようにモータMG2とエンジンENGとを併用することで、モータMG2の発生する動力自体は図8のモータMG2の駆動モードの高効率領域33内、または、その近傍の駆動トルクとし、エンジンENGの出力は図8のENG_Hモードの高効率領域38内、または、その近傍の駆動トルクとしつつ、その高効率領域33、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
また、約60km/hから約150km/hまでの領域においては、区画46のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画47が設定されている。区画47には、MG1_Hモード、モータMG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせ(MG1_H+MG2+ENG_H)が割り当てられている。この組み合わせは、第2出力側クラッチ13を切断し、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を接続することで実現する。このようにモータMG1、モータMG2、エンジンENGを併用することで、モータMG1の発生する動力自体は図8のMG1_Hモードの高効率領域35内、または、その近傍の駆動トルクとし、エンジンENGの出力は図8のENG_Hモードの高効率領域38内、または、その近傍の駆動トルクとしつつ、その高効率領域35、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
上述したように、制御装置20の制御部25は、EVメインモードでは、発進〜低中速加速域39aにおいては、必要な駆動トルクが大きくなるに従い、区画41のMG2単独モード、区画42のMG1_L単独モード、区画43のMG1_L+MG2モード、区画44のMG1_L+MG2+ENG_Hモード、区画45のMG1_L+MG2+ENG_Lモードの順に駆動源を選択する。また、高速加速・登坂域39bでは、要求トルクが大きくなるに従い、区画41のMG2単独モード、区画46のMG2+ENG_Hモード、区画47のMG1_H+MG2+ENG_Hモードの順に各駆動源の作動モードを選択する。
次に、図10のエンジンメインモード用の切替マップ23について説明する。エンジンメインモードでは、EVメインモードとは異なり、常にエンジンENGを用いることで、車両駆動用バッテリのSOCの急な低下を抑えることができる。
切替マップ23では、極低速域(時速約15km未満の速度域)を除く全ての車速域において、駆動トルクが概ね200〜300Nm以下の範囲が1つの区画51として設定されている。区画51には、MG2の駆動モード、モータMG1の非駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせ(ENG_H+MG2)が割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を切断し、第1出力側クラッチ11を接続し、モータMG1を停止させることで実現する。このとき、モータMG1を完全に停止させることができるため、モータMG1の連れ回り回転による損失を低減できる。
また、0km/hから約15km/hまでの極低速域かつ約400Nm以下の範囲を含み、約15km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域において、区画51のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画52が設定されている。区画52には、モータMG1の非駆動モード、モータMG2の駆動モード、ENG_Lモードの組み合わせ(ENG_L+MG2)が割り当てられている。この組み合わせは、第1出力側クラッチ11を切断し、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を接続し、モータMG1を駆動せず第2入力軸6の回転によって空回りさせることで実現する。この区画52は、図8に示すENG_Lモードの高効率領域37が含まれているため、効率が高くなる。
また、0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域においては、区画52のすぐ上の駆動トルク範囲を含む区画53が設定されている。区画53には、MG1_Lモード、モータMG2の駆動モード、ENG_Lモードの組み合わせ(MG1_L+MG2+ENG_L)が割り当てられている。この組み合わせは、第1出力側クラッチ11を切断し、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を接続することで実現する。
このようにモータMG1、モータMG2、エンジンENGを併用することで、モータMG1の発生する動力自体は図8のMG1_Lモードの高効率領域34内、または、その近傍の駆動トルクとし、モータMG2の発生する動力は図8のモータMG2の駆動モードの高効率領域36内、または、その近傍の駆動トルクとし、エンジンENGの出力は図8のENG_Lモードの高効率領域37、または、その近傍の駆動トルクとしつつ、その高効率領域34、36、37よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。また、領域52と異なり、MG1_Lモードも用いるため、より大きい駆動トルクを効率よく実現できる。
約60km/hから約150km/hまでの領域においては、区画51のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画54が設定されている。区画54には、MG1_Hモード、モータMG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせ(MG1_H+MG2+ENG_H)が割り当てられている。この組み合わせは、第2出力側クラッチ13を切断し、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を接続することで実現する。
このようにモータMG1、モータMG2、エンジンENGを併用することで、モータMG1の発生する動力自体は図8のMG1_Hモードの高効率領域35内、または、その近傍の駆動トルクとし、モータMG2の発生する動力は図8のMG2駆動モードの高効率領域36内、または、その近傍の駆動トルクとし、エンジンENGの出力は図8のENG_Hモードの高効率領域38、または、その近傍の駆動トルクとしつつ、その高効率領域35、36、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
上述したように、制御装置20の制御部25は、エンジンメインモードでは、約15km/h未満の極低速域においては、必要な駆動トルクが大きくなるに従い、区画52のENG_L+MG2モード、区画53のMG1_L+MG2+ENG_Lモードの順に駆動源を選択する。また、低中速加速域39a中で約15km/h以上となる範囲においては、必要な駆動トルクが大きくなるに従い、区画51のENG_H+MG2モード、区画52のENG_L+MG2モード、区画53のMG1_L+MG2+ENG_Lモードの順に駆動源を選択する。また、高速加速・登坂域39bでは、要求トルクが大きくなるに従い、区画51のENG_H+MG2モード、区画54のMG1_H+MG2+ENG_Hモードの順に各駆動源の作動モードを選択する。
制御部25は、上述のように切替マップ22、23に基づき各駆動源の作動モードを選択したとき、選択した作動モードとなるよう、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の作動(係合状態)を制御し、動力の伝達経路を切り替え、エンジンENGまたはモータMG1の動力を変速して駆動部14に伝達する。
上述した本実施形態の構成では、例えばEVメインモードにおいて、各区画を遷移するよう各駆動源の作動モードの組み合わせが選択されるとき、制御部25により、動力の伝達経路が切り替えられる。
本実施形態では、制御部25は、概念的な機能部として固着検出部251、効率低下抑制部252、車速制限部253、トルク調整部254を有している(図2参照)。
固着検出部251は、クラッチ(入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11または第2出力側クラッチ13)の係合状態が接続状態で固着したことを検出可能である。具体的には、固着検出部251は、例えば各クラッチに対応して設けられたストロークセンサからの信号に基づき、クラッチのアクチュエータに切断状態側への作動に対応する作動信号を出力したにもかかわらず、ストロークセンサからの信号が完全係合状態(接続状態)を示したままの場合、「該当のクラッチの係合状態が接続状態で固着したこと」を検出する。
効率低下抑制部252は、クラッチの固着を固着検出部251が検出したとき、車両1の走行中、エンジンENGまたはモータMG1の引きずり損失によるエネルギー効率の低下を抑制するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータMG1、モータMG2またはエンジンENGの作動を制御可能である。具体的な制御の仕方については、後述する。
車速制限部253は、クラッチの固着を固着検出部251が検出したとき、車両1の走行中、車両1の速度が所定速度Sth以下となるよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータMG1、モータMG2またはエンジンENGの作動を制御可能である。具体的な制御の仕方については、後述する。
トルク調整部254は、クラッチの固着を固着検出部251が検出したとき、車両1の走行中、駆動部14に要求されるトルクである要求駆動トルクに対する駆動部14へのトルクの過不足を調整するよう、モータMG1、モータMG2の作動を制御可能である。具体的な制御の仕方については、後述する。
次に、本実施形態の制御部25が固着検出部251、効率低下抑制部252、車速制限部253、トルク調整部254として機能するときの処理について、図13〜19に基づき説明する。
制御部25は、所定のプログラムを読み出して実行することにより、図13に示す第1処理S100、図16に示す第2処理S200、図18に示す第3処理S300を所定の制御周期毎に実行する。本実施形態では、第1処理S100、第2処理S200、第3処理S300は、この順でシーケンシャルに実行される。すなわち、第1処理S100、第2処理S200、第3処理S300は、いずれかの処理が終了した後、次の処理が開始される。そのため、各処理が同時に実行されることはない。なお、第1処理S100、第2処理S200、第3処理S300は、走行モードがEVメインモードのときに実行される。
まず、第1処理S100について図13に基づき説明する。
S101では、制御部25は、各種の信号を読み込む。具体的には、制御部25は、例えば、エンジンENGのクランクシャフトに対応して設けられたクランクポジションセンサからの信号を読み込み、エンジンENGの回転数であるENG回転数Neを算出する。また、制御部25は、例えば、モータMG2に流れる電流を検出するセンサからの信号を読み込み、モータMG2のトルクであるMG2トルクTmg2を算出する。また、制御部25は、現在の走行モードをRAM等の記憶媒体中の走行モード変数から読み込む。また、制御部25は、車速信号、アクセル開度信号等を読み込み、駆動部14に要求されるトルクである要求駆動トルクTdrvを算出する。S101の後、処理はS102へ移行する。
S102では、制御部25は、入力側クラッチ8(エンジンクラッチ:CLE)が固着しているか否かを判断する。入力側クラッチ8は固着していると判断した場合(S102:YES)、処理はS103へ移行する。一方、入力側クラッチ8は固着していないと判断した場合(S102:NO)、S100を終了する。
S103では、制御部25は、エンジンENGが停止しているか否かを判断する。エンジンENGは停止していると判断した場合(S103:YES)、処理はS104へ移行する。一方、エンジンENGは停止していないと判断した場合(S103:NO)、処理はS106へ移行する。
S104では、制御部25は、現在の走行モードがMG2(区画41)か否かを判断する。具体的には、制御部25は、S101で読み込んだ走行モードに基づき、判断する。現在の走行モードはMG2であると判断した場合(S104:YES)、S100を終了する。一方、現在の走行モードはMG2ではないと判断した場合(S104:NO)、処理はS105へ移行する。
S105では、制御部25は、エンジンENGを始動する。S105の後、処理はS106へ移行する。
S106では、制御部25は、走行モードを設定する。具体的には、制御部25は、S101で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG1_L(区画42)、MG1_L+MG2(区画43)またはMG1_L+MG2+ENG_H(区画44)のとき(図15に示すAの範囲)、走行モードをMG1_L+MG2+ENG_Lに設定し(図15参照)、この走行モードを実現するよう、固着していないクラッチである第1出力側クラッチ11(ハイギア側クラッチ:CLH)、モータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動を制御する。
また、制御部25は、S101で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG2+ENG_H(区画46)のとき(図15に示すBの範囲)、走行モードをMG1_H+MG2+ENG_Hに設定し(図15参照)、この走行モードを実現するよう、モータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動を制御する。
これにより、入力側クラッチ8の固着に伴うエンジンENGまたはモータMG1の引きずり損失の発生を抑制できる。
S106の後、処理はS107へ移行する。
S107では、制御部25は、エンジンENGが出力すべきトルクであるエンジントルクTengを算出(決定)する。具体的には、制御部25は、S101で算出したENG回転数Neを、図14に示す関数F1に代入し、エンジントルクTengを算出する。すなわち、下記式により、エンジントルクTengを算出する。
Teng=F1(Ne)
ここで、F1は、エンジンENGの回転数(Ne)毎の出力トルク(Teng)と効率との関係を示すマップである。F1は、代入されたエンジンENGの回転数(Ne)において最大の効率に対応する出力トルク(Teng)を出力値として返す。すなわち、F1により、エンジントルクTengは、その回転数における効率が最も高いトルクに設定される。
そして、制御部25は、設定したエンジントルクTengを出力するようエンジンENGの作動を制御する。これにより、エンジンENGは、エネルギー効率の高い領域で作動する。
S107の後、処理はS108へ移行する。
S108では、制御部25は、モータMG1の目標トルクMG1tgtを算出する。具体的には、制御部25は、S101で算出したTdrv、Tmg2、S107で算出したTengを下記式に代入し、目標トルクMG1tgtを算出する。
MG1tgt=Tdrv−Teng−Tmg2
S108の後、処理はS109へ移行する。
S109では、制御部25は、モータMG1の出力トルクを操作する。具体的には、制御部25は、S108で算出した目標トルクMG1tgtを出力するようモータMG1の作動を制御する。
これにより、MG1tgtが正の値の場合、モータMG1は力行作動し、エンジンENGが効率の高い領域で作動することに伴う要求駆動トルクTdrvに対するエンジントルクTengの不足分を補う。一方、MG1tgtが負の値の場合、モータMG1は回生(発電)作動し、エンジンENGが効率の高い領域で作動することに伴う要求駆動トルクTdrvに対するエンジントルクの余剰分を発電により回生する。
S109の後、S100を終了する。
上述のように、制御部25は、S102で固着検出部251として機能し、S106で効率低下抑制部252として機能し、S108、S109でトルク調整部254として機能する。
S100でS106が実行された場合、車両1の走行中、エンジンENGまたはモータMG1の引きずり損失によるエネルギー効率の低下が抑制される。また、S100でS108、S109が実行された場合、車両1の走行中、駆動部14に要求される要求駆動トルクTdrvに対するエンジンENGの出力トルクの過不足が調整される。
次に、第2処理S200について図16に基づき説明する。
第2処理S200は、第1処理S100が終了すると開始される。
S201では、制御部25は、各種の信号を読み込む。具体的には、制御部25は、例えば、クランクポジションセンサからの信号を読み込み、ENG回転数Neを算出する。また、制御部25は、例えば、モータMG1、モータMG2に流れる電流を検出するセンサからの信号を読み込み、モータMG1、モータMG2のトルクであるMG1トルクTmg1、MG2トルクTmg2を算出する。また、制御部25は、現在の走行モードをRAM等の記憶媒体中の走行モード変数から読み込む。また、制御部25は、車速信号、アクセル開度信号等を読み込み、要求駆動トルクTdrvを算出する。また、制御部25は、例えば、モータMG2に設けられた回転角センサからの信号を読み込み、出力軸9の回転数である出力軸回転数Noutを算出する。S201の後、処理はS202へ移行する。
S202では、制御部25は、第1出力側クラッチ11(ハイギア側クラッチ:CLH)が固着しているか否かを判断する。第1出力側クラッチ11は固着していると判断した場合(S202:YES)、処理はS203へ移行する。一方、第1出力側クラッチ11は固着していないと判断した場合(S202:NO)、S200を終了する。
S203では、制御部25は、エンジンENGが停止しているか否かを判断する。エンジンENGは停止していると判断した場合(S203:YES)、処理はS204へ移行する。一方、エンジンENGは停止していないと判断した場合(S203:NO)、処理はS207へ移行する。
S204では、制御部25は、モータMG2の最大トルクであるMG2最大トルクTmg2maxと、S201で算出した要求駆動トルクTdrvと、第1出力側クラッチ11が固着することによるエンジンENGの引きずり損失Lengとの関係が下記式を満たすか否かを判断する。
Tmg2max<Tdrv−Leng
ここで、Tmg2maxは、例えば50(Nm)に設定されている。また、Lengは、例えば50(Nm)に設定されている。
Tmg2maxとTdrvとLengとの関係が上記式を満たすと判断した場合(S204:YES)、処理はS205へ移行する。一方、Tmg2maxとTdrvとLengとの関係は上記式を満たさないと判断した場合(S204:NO)、処理はS215へ移行する。
S205では、制御部25は、エンジンENGの最低回転数Neminと、S201で算出した出力軸回転数Noutと、ハイギア機構HGの変速比ρ1との関係が下記式を満たすか否かを判断する。
Nemin<Nout×ρ1
ここで、Neminは、例えば400(rpm)に設定されている。
NeminとNoutとρ1との関係が上記式を満たすと判断した場合(S205:YES)、処理はS206へ移行する。一方、NeminとNoutとρ1との関係は上記式を満たさないと判断した場合(S205:NO)、処理はS211へ移行する。
S206では、制御部25は、エンジンENGを始動する。S206の後、処理はS207へ移行する。
S207では、制御部25は、走行モードを設定する。具体的には、制御部25は、S201で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG2(区画41)、MG1_L(区画42)、MG1_L+MG2(区画43)、MG1_L+MG2+ENG_H(区画44)またはMG1_L+MG2+ENG_L(区画45)であって、要求駆動トルクが例えば90(Nm)以上、かつ、車速が例えば20(km/h)以上60(km/h)未満のとき(図17に示すCの範囲)、走行モードをMG1_L+MG2+ENG_Hに設定し(図17参照)、この走行モードを実現するよう、固着していないクラッチである入力側クラッチ8(エンジンクラッチ:CLE)、第2出力側クラッチ13(ローギア側クラッチ:CLL)、モータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動を制御する。
また、制御部25は、S201で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG2(区画41)であって、要求駆動トルクが例えば90(Nm)以上、かつ、車速が例えば60(km/h)以上のとき(図17に示すDの範囲)、走行モードをMG2+ENG_Hに設定し(図17参照)、この走行モードを実現するよう、モータMG2、エンジンENGの作動を制御する。
これにより、第1出力側クラッチ11の固着に伴うエンジンENGの引きずり損失の発生を抑制できる。
S207の後、処理はS208へ移行する。
S208では、制御部25は、エンジンENGが出力すべきトルクであるエンジントルクTengを算出(決定)する。具体的な処理は、S107と同様のため、説明を省略する。これにより、エンジンENGは、エネルギー効率の高い領域で作動する。
S208の後、処理はS209へ移行する。
S209では、制御部25は、モータMG2の目標トルクMG2tgtを算出する。具体的には、制御部25は、S201で算出したTdrv、Tmg1、S208で算出したTengを下記式に代入し、目標トルクMG2tgtを算出する。
MG2tgt=Tdrv−Teng−Tmg1
S209の後、処理はS210へ移行する。
S210では、制御部25は、モータMG2の出力トルクを操作する。具体的には、制御部25は、S209で算出した目標トルクMG2tgtを出力するようモータMG2の作動を制御する。
これにより、MG2tgtが正の値の場合、モータMG2は力行作動し、エンジンENGが効率の高い領域で作動することに伴う要求駆動トルクTdrvに対するエンジントルクの不足分を補う。一方、MG2tgtが負の値の場合、モータMG2は回生(発電)作動し、エンジンENGが効率の高い領域で作動することに伴う要求駆動トルクTdrvに対するエンジントルクの余剰分を発電により回生する。
S210の後、S200を終了する。
S211では、制御部25は、走行モードを設定する。具体的には、制御部25は、S201で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG2(区画41)、MG1_L(区画42)、MG1_L+MG2(区画43)またはMG1_L+MG2+ENG_L(区画45)であって、要求駆動トルクが例えば90(Nm)以上、かつ、車速が例えば20(km/h)未満のとき(図17に示すAの範囲)、走行モードをMG1_L+MG2に設定し(図17参照)に設定し、この走行モードを実現するよう、固着していないクラッチである入力側クラッチ8(エンジンクラッチ:CLE)、第2出力側クラッチ13(ローギア側クラッチ:CLL)、モータMG1、モータMG2、エンジンENGの作動を制御する。なお、このとき、第1出力側クラッチ11が固着し、エンジンENGが停止しているため、エンジンENGの引きずり損失が生じる。
S211の後、処理はS212へ移行する。
S212では、制御部25は、モータMG2の目標トルクMG2tgtを算出する。ここで、目標トルクMG2tgtは、モータMG2の動力が出力軸9に伝達されるときに必要とされるモータMG2の出力トルクである。具体的には、制御部25は、例えば下記式に基づき、目標トルクMG2tgtを算出する。
MG2tgt=F2(Nout)
ここで、F2は、入力された値に応じた値を出力する関数であり、例えばPIDコントローラである。F2は、出力値と目標値との偏差、その積分および微分によって、入力値をフィードバック制御する。
S212の後、S213へ移行する。
S213では、制御部25は、モータMG1の目標トルクMG1tgtを算出する。具体的には、制御部25は、S201で算出したTdrv、S212で算出したMG2tgt、Leng、ハイギア機構HGの変速比ρ1、ローギア機構LGの変速比ρ2を下記式に代入し、目標トルクMG1tgtを算出する。
MG1tgt=(Tdrv−MG2tgt+Leng/ρ1)/ρ2
S213の後、処理はS214へ移行する。
S214では、制御部25は、モータMG1、モータMG2の出力トルクを操作する。具体的には、制御部25は、S213で算出した目標トルクMG1tgtを出力するようモータMG1の作動を制御し、S212で算出した目標トルクMG2tgtを出力するようモータMG2の作動を制御する。
これにより、モータMG1、モータMG2は、エンジンENGの引きずり損失によって生じる、要求駆動トルクTdrvに対するエンジントルクの不足分を補う。
S214の後、S200を終了する。
S215では、制御部25は、走行モードを設定する。具体的には、制御部25は、S201で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG2(区画41)であって、要求駆動トルクが例えば90(Nm)未満のとき(図17に示すBの範囲)、走行モードをMG2に設定(維持)し(図17参照)、この走行モードを実現するよう、モータMG2の作動を制御する。なお、このとき、第1出力側クラッチ11が固着し、エンジンENGが停止しているため、エンジンENGの引きずり損失が生じる。
S215の後、処理はS216へ移行する。
S216では、制御部25は、モータMG2の目標トルクMG2tgtを算出する。具体的には、制御部25は、S201で算出したTdrv、Lengを下記式に代入し、目標トルクMG2tgtを算出する。
MG2tgt=Tdrv+Leng
S216の後、処理はS217へ移行する。
S217では、制御部25は、モータMG2の出力トルクを操作する。具体的には、制御部25は、S216で算出した目標トルクMG2tgtを出力するようモータMG2の作動を制御する。
これにより、モータMG2は、エンジンENGの引きずり損失によって生じる、要求駆動トルクTdrvに対するエンジントルクの不足分を補う。
S217の後、S200を終了する。
上述のように、制御部25は、S202で固着検出部251として機能し、S207で効率低下抑制部252として機能し、S209、S210、S212、S213、S214、S216、S217でトルク調整部254として機能する。
S200でS207が実行された場合、車両1の走行中、エンジンENGの引きずり損失によるエネルギー効率の低下が抑制される。また、S200でS209、S210、S212、S213、S214、S216、S217が実行された場合、車両1の走行中、駆動部14に要求される要求駆動トルクTdrvに対するエンジンENGの出力トルクの過不足が調整される。
なお、S207またはS211において、S201で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG1_L+MG2+ENG_L(区画45)であって、要求駆動トルクが例えば950(Nm)以上のとき(図17に一点鎖線で示すXの範囲)、走行モードはMG1_L+MG2またはMG1_L+MG2+ENG_Hに設定される。しかしながら、この走行モードでは、ローギア機構LGを経由したエンジンENGの出力トルク(ENG_L)を使えないため、要求駆動トルク(950Nm以上)を実現することはできない。つまり、図17に一点鎖線で示すXの範囲は、実質的に使用不可の領域である。
次に、第3処理S300について図18に基づき説明する。
第3処理S300は、第2処理S200が終了すると開始される。
S301では、制御部25は、各種の信号を読み込む。具体的には、制御部25は、例えば、クランクポジションセンサからの信号を読み込み、ENG回転数Neを算出する。また、制御部25は、現在の走行モードをRAM等の記憶媒体中の走行モード変数から読み込む。また、制御部25は、車速信号、アクセル開度信号等を読み込み、要求駆動トルクTdrvを算出する。また、制御部25は、例えば、モータMG2に設けられた回転角センサからの信号を読み込み、出力軸回転数Noutを算出する。また、制御部25は、例えば、車速信号を読み込み、車速SPDを算出する。S301の後、処理はS302へ移行する。
S302では、制御部25は、第2出力側クラッチ13(ローギア側クラッチ:CLL)が固着しているか否かを判断する。第2出力側クラッチ13は固着していると判断した場合(S302:YES)、処理はS303へ移行する。一方、第2出力側クラッチ13は固着していないと判断した場合(S302:NO)、S300を終了する。
S303では、制御部25は、エンジンENGが停止しているか否かを判断する。エンジンENGは停止していると判断した場合(S303:YES)、処理はS304へ移行する。一方、エンジンENGは停止していないと判断した場合(S303:NO)、処理はS309へ移行する。
S304では、制御部25は、現在の走行モードがMG2(区画41)か否かを判断する。具体的には、制御部25は、S301で読み込んだ走行モードに基づき、判断する。現在の走行モードはMG2であると判断した場合(S304:YES)、処理はS305へ移行する。一方、現在の走行モードはMG2ではないと判断した場合(S304:NO)、処理はS309へ移行する。
S305では、制御部25は、走行モードを設定する。具体的には、制御部25は、S301で読み込んだ走行モードが、EVメインモードのMG2(区画41)であって、車速が例えば60(km/h)未満のとき(図19に示すAの範囲)、走行モードをMG1_L+MG2に設定し(図19参照)、この走行モードを実現するよう、モータMG1、モータMG2の作動を制御する。
これにより、第2出力側クラッチ13の固着に伴うモータMG1の引きずり損失の発生を抑制できる。
S305の後、処理はS306へ移行する。
S306では、制御部25は、モータMG2の目標トルクMG2tgtを算出する。S306の処理は、S212の処理と同様のため、説明を省略する。
S306の後、S307へ移行する。
S307では、制御部25は、モータMG1の目標トルクMG1tgtを算出する。S307の処理は、S213の処理と同様のため、説明を省略する。
S307の後、処理はS308へ移行する。
S308では、制御部25は、モータMG1、モータMG2の出力トルクを操作する。具体的には、制御部25は、S307で算出した目標トルクMG1tgtを出力するようモータMG1の作動を制御し、S306で算出した目標トルクMG2tgtを出力するようモータMG2の作動を制御する。
これにより、モータMG1、モータMG2は、モータMG1の引きずり損失によって生じる、要求駆動トルクTdrvの不足分を補う。
S308の後、処理はS309へ移行する。
S309では、制御部25は、S301で算出した車速SPDが減速開始速度α以上か否かを判断する。車速SPDは減速開始速度α以上であると判断した場合(S309:YES)、処理はS310へ移行する。一方、車速SPDは減速開始速度α未満であると判断した場合(S309:NO)、S300を終了する。
ここで、減速開始速度αは、所定速度Sth(例えば60km/h)より低い速度であって、例えば、車両1の登降坂、車重、SOC、モータMG1の温度、モータMG1を駆動するインバータの温度、エンジンENGの温度(冷却水温、潤滑油温)、バッテリの温度、変速機の温度(潤滑油温)、環境温度等に基づき、予め設定されている。なお、前記所定速度Sthは、ローギア機構LGの変速比、および、モータMG1の最大許容回転数に基づき、設定されている。
αは、例えば、車両1の登坂時、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、車両1の降坂時、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、αは、例えば、車重が小さいほど、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、車重が大きいほど、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、αは、例えば、SOCの値が小さいほど、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、SOCの値が大きいほど、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、αは、例えば、モータMG1の温度、インバータの温度、エンジンENGの温度、バッテリの温度、変速機の温度、環境温度が低いほど、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、モータMG1の温度、インバータの温度、エンジンENGの温度、バッテリの温度、変速機の温度、環境温度が高いほど、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
S310では、制御部25は、減速処理を行う。具体的には、制御部25は、例えば、固着していないクラッチである入力側クラッチ8(エンジンクラッチ:CLE)を接続し、エンジンENGが運転している場合は燃料噴射を停止することで運転を停止し、エンジンブレーキ(エンジンENGの引きずり損失)を利用することにより、車両1を減速させる。また、制御部25は、例えば、モータMG1、モータMG2の発電制御、または、モータMG1、モータMG2の損失(熱による損失)を利用することにより、車両1を減速させる。
これにより、車速がαより高い場合でも、車速がαより低くなるよう、車両1を減速させることができる。そのため、車速を所定速度Sth(例えば60km/h)以下に制限することができる。
S310の後、S300を終了する。
上述のように、制御部25は、S302で固着検出部251として機能し、S305で効率低下抑制部252として機能し、S306、S307、S308でトルク調整部254として機能し、S309、S310で車速制限部253として機能する。
S300でS305が実行された場合、車両1の走行中、モータMG1の引きずり損失によるエネルギー効率の低下が抑制される。また、S300でS306、S307、S308が実行された場合、車両1の走行中、駆動部14に要求される要求駆動トルクTdrvに対する駆動部14へのトルクの過不足が調整される。また、S300でS310が実行された場合、車両1を減速させ、車速を所定速度Sth以下に制限することができる。これにより、第2出力側クラッチ13が固着した状態で車両1が高速走行することに伴うモータMG1の過回転を抑制することができる。
以上説明したように、(1)本実施形態は、複数のクラッチ(入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13)を備え、車両1のエンジンENG、および、1つ以上のモータ(モータMG1、モータMG2)の動力を、クラッチを含む伝達経路を経由して車両1の駆動部14に伝達する動力伝達装置17を制御する制御装置20であって、制御部25を備えている。
制御部25は、エンジンENG、モータ(モータMG1、モータMG2)およびクラッチ(入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13)の作動を制御可能である。
制御部25は、固着検出部251および効率低下抑制部252を有している。
固着検出部251は、クラッチの係合状態が接続状態で固着したことを検出可能である。
効率低下抑制部252は、クラッチの固着を固着検出部251が検出したとき、車両1の走行中、エンジンENGまたはモータの引きずり損失によるエネルギー効率の低下を抑制するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータまたはエンジンENGの作動を制御可能である。これにより、クラッチが固着した場合でも、車両1の走行中、エンジンENGおよびモータを効率よく作動させることができる。
また、(2)本実施形態では、制御部25は、車速制限部253を有している。車速制限部253は、クラッチの固着を固着検出部251が検出したとき、車両1の走行中、車両1の速度が所定速度Sth以下となるよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータまたはエンジンENGの作動を制御可能である。これにより、クラッチが固着した状態で車両1が高速走行することに伴うモータの過回転を抑制することができる。そのため、モータの故障を抑制することができる。
また、(3)本実施形態では、制御部25は、トルク調整部(254)を有している。トルク調整部254は、クラッチの固着を固着検出部251が検出したとき、車両1の走行中、駆動部14に要求されるトルクである要求駆動トルクに対する駆動部14へのトルクの過不足を調整するよう、モータの作動を制御可能である。これにより、クラッチが固着した場合でも、要求駆動トルクに応じたトルクを駆動部14に出力できる。
また、(4)本実施形態では、制御部25は、トルク調整部254によりモータの作動を制御しているとき、エネルギー効率が所定値以上となるようエンジンENGの作動を制御する(S107,S208)。そのため、エンジンENGを効率よく作動させることができる。
また、(5)本実施形態では、前記モータは、モータMG1を含む。
動力伝達装置17は、ハイギア機構HGとローギア機構LGとをさらに備えている。
ハイギア機構HGは、エンジンENGの動力が入力される第1入力軸4とともに回転する第1駆動ギア5と、駆動部14に接続する出力軸9に対し相対回転可能に設けられ第1駆動ギア5の回転により回転する第1被駆動ギア10とからなる。
ローギア機構LGは、モータMG1の動力が入力される第2入力軸6とともに回転する第2駆動ギア7と、出力軸9に対し相対回転可能に設けられ第2駆動ギア7の回転により回転する第2被駆動ギア12とからなり、変速比がハイギア機構HGの変速比より高い。
前記クラッチは、第1入力軸4と第2入力軸6とを接続または切断可能な入力側クラッチ8、第1被駆動ギア10と出力軸9とを接続または切断可能な第1出力側クラッチ11、および、第2被駆動ギア12と出力軸9とを接続または切断可能な第2出力側クラッチ13を含む。
本実施形態は、車両1、動力伝達装置17および制御装置20の具体的な構成を例示するものである。本実施形態では、固着検出部251は、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11または第2出力側クラッチ13の係合状態が接続状態で固着したことを検出可能である。
効率低下抑制部252は、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11または第2出力側クラッチ13の固着を固着検出部251が検出したとき、車両1の走行中、エンジンENGまたはモータMG1の引きずり損失によるエネルギー効率の低下を抑制するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータまたはエンジンENGの作動を制御可能である。これにより、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11または第2出力側クラッチ13が固着した場合でも、車両1の走行中、エンジンENGおよびモータを効率よく作動させることができる。
また、(6)本実施形態では、前記モータは、出力軸9に動力を出力するモータMG2をさらに含む。
また、(7)本実施形態では、制御部25は、第2出力側クラッチ13の固着を固着検出部251が検出したとき(S302)、車両1の走行中、車両1の速度が所定速度Sth以下では、モータMG2からトルクを出力するのに加え、モータMG1からもトルクを出力するよう、モータMG1およびモータMG2の作動を制御する(S305)。これにより、第2出力側クラッチ13の固着に伴うモータMG1の引きずり損失の発生を抑制できる。
また、(8)本実施形態では、制御部25は、入力側クラッチ8の固着を固着検出部251が検出したとき(S102)、車両1の走行中、モータMG2のトルクのみで走行可能な領域以外では、モータMG2からトルクを出力するのに加え、モータMG1およびエンジンENGからもトルクを出力するよう、モータMG1、モータMG2およびエンジンENGの作動を制御する(S106)。これにより、入力側クラッチ8の固着に伴うエンジンENGまたはモータMG1の引きずり損失の発生を抑制できる。
また、(9)制御部25は、第1出力側クラッチ11の固着を固着検出部251が検出したとき(S202)、車両1の走行中、駆動部14に要求されるトルクである要求駆動トルクが所定トルク以上、かつ、車両1の速度が所定車速以上のとき(図17に示すC、Dの範囲)は、エンジンENGの運転を開始し、要求駆動トルクが所定トルク未満、または、車両1の速度が所定車速未満のとき(図17に示すA、Bの範囲)は、エンジンENGの運転を停止する。すなわち、図17に示すA、Bの範囲のときは、エンジンENGの運転を禁止する。
図17に示すAの範囲のとき、第1入力軸2(クランクシャフト)の回転数がエンジンENGの最低回転数以下となるため、エンジンENGの運転を禁止する。また、図17に示すBの範囲のとき、エンジンENGのエネルギー効率が低下するため、エンジンENGの運転を禁止する。
また、(10)本実施形態では、車速制限部253は、第2出力側クラッチ13の固着を固着検出部251が検出したとき(S302)、車両1の走行中、車両1の速度が所定速度Sth以下となるよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータMG1、モータMG2またはエンジンENGの作動を制御可能である(S310)。これにより、第2出力側クラッチ13が固着した状態で車両1が高速走行することに伴うモータMG1の過回転を抑制することができる。そのため、モータMG1の故障を抑制することができる。
また、(11)本実施形態では、車速制限部253は、ローギア機構LGの変速比、および、モータMG1の最大許容回転数に基づき、前記所定速度Sthを設定する。これにより、前記所定速度Sthを適切に設定することができ、モータMG1の故障を確実に抑制することができる。
また、(12)本実施形態では、車速制限部253は、車両1の速度が、前記所定速度Sthより低い減速開始速度α以上になったとき、モータの発電制御、モータの損失、または、エンジンENGの損失により車両1が減速するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータまたはエンジンENGの作動を制御可能である。本実施形態は、車速制限部253による具体的な車速の制限の仕方を例示するものである。本実施形態の車速制限部253により、車両1の速度を前記所定速度Sth以下に確実に制限することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による制御装置について、図20、21に基づき説明する。
第2実施形態では、第1実施形態で示した第3処理S300に代えて、図20に示す第4処理S400を実行する点で、第1実施形態と異なる。
第4処理S400は、第2処理S200が終了すると開始される。
S401〜S408の処理は、それぞれ、S301〜308と同様のため、説明を省略する。なお、S402でNOと判断された場合、S400を終了する。また、S403でNOと判断された場合、処理はS409へ移行する。また、S404でNOと判断された場合、処理はS409へ移行する。
S408の後、処理はS409へ移行する。
S409では、制御部25は、車速SPDが第2減速開始速度α2以上か否かを判断する。車速SPDは第2減速開始速度α2以上であると判断した場合(S409:YES)、処理はS410へ移行する。一方、車速SPDは第2減速開始速度α2未満であると判断した場合(S409:NO)、処理はS413へ移行する。
ここで、第2減速開始速度α2は、所定速度Sth(例えば60km/h)より低い速度であって、例えば、車両1の登降坂、車重、SOC、モータMG1の温度、モータMG1を駆動するインバータの温度、エンジンENGの温度(冷却水温、潤滑油温)、バッテリの温度等に基づき、予め設定されている。なお、前記所定速度Sthは、ローギア機構LGの変速比、および、モータMG1の最大許容回転数に基づき、設定されている。
α2は、例えば、車両1の登坂時、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、車両1の降坂時、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、α2は、例えば、車重が小さいほど、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、車重が大きいほど、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、α2は、例えば、SOCの値が小さいほど、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、SOCの値が大きいほど、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、α2は、例えば、モータMG1の温度、インバータの温度、エンジンENGの温度、バッテリの温度が低いほど、50〜60(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、モータMG1の温度、インバータの温度、エンジンENGの温度、バッテリの温度が高いほど、50〜60(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
S410では、制御部25は、モータMG1、モータMG2により車両1を減速可能か否かを判断する。具体的には、制御部25は、モータMG1、モータMG2の温度等に基づき、例えば温度が所定値以下の場合、モータMG1、モータMG2により車両1を減速可能であると判断する。モータMG1、モータMG2により車両1を減速可能であると判断した場合(S410:YES)、処理はS411へ移行する。一方、モータMG1、モータMG2により車両1を減速可能でないと判断した場合(S410:NO)、処理はS412へ移行する。
S411では、制御部25は、減速処理を行う。具体的には、制御部25は、例えば、モータMG1、モータMG2の発電制御、または、モータMG1、モータMG2の損失(熱による損失)を利用することにより、車両1を減速させる。
S411の後、処理はS412へ移行する。
S412では、制御部25は、減速処理を行う。具体的には、制御部25は、例えば、固着していないクラッチである入力側クラッチ8(エンジンクラッチ:CLE)を接続し、エンジンENGが運転している場合は燃料噴射を停止することで運転を停止し、エンジンブレーキ(エンジンENGの引きずり損失)を利用することにより、車両1を減速させる。
S411、S412により、車速がα2より高い場合でも、車速がα2より低くなるよう、モータMG1、モータMG2およびエンジンENGにより車両1を減速させることができる。そのため、車速を所定速度Sth(例えば60km/h)以下に制限することができる。
S412の後、処理はS413へ移行する。
S413では、制御部25は、車速SPDが第1減速開始速度α1以上か否かを判断する。車速SPDは第1減速開始速度α1以上であると判断した場合(S413:YES)、処理はS414へ移行する。一方、車速SPDは第1減速開始速度α1未満であると判断した場合(S413:NO)、S400を終了する。
ここで、第1減速開始速度α1は、第2減速開始速度α2より低い速度であって、例えば、車両1の登降坂、車重、SOC、モータMG1の温度、モータMG1を駆動するインバータの温度、エンジンENGの温度(冷却水温、潤滑油温)、バッテリの温度等に基づき、予め設定されている。
α1は、例えば、車両1の登坂時、50〜α2(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、車両1の降坂時、50〜α2(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、α1は、例えば、車重が小さいほど、50〜α2(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、車重が大きいほど、50〜α2(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、α1は、例えば、SOCの値が小さいほど、50〜α2(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、SOCの値が大きいほど、50〜α2(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
また、α1は、例えば、モータMG1の温度、インバータの温度、エンジンENGの温度、バッテリの温度が低いほど、50〜α2(km/h)のうち比較的高い値(高速側)に設定され、モータMG1の温度、インバータの温度、エンジンENGの温度、バッテリの温度が高いほど、50〜α2(km/h)のうち比較的低い値(低速側)に設定される。
S414では、制御部25は、モータMG1、モータMG2により車両1を減速可能か否かを判断する。モータMG1、モータMG2により車両1を減速可能であると判断した場合(S414:YES)、処理はS415へ移行する。一方、モータMG1、モータMG2により車両1を減速可能でないと判断した場合(S414:NO)、S400を終了する。
S415では、制御部25は、減速処理を行う。具体的には、制御部25は、例えば、モータMG1、モータMG2の発電制御、または、モータMG1、モータMG2の損失(熱による損失)を利用することにより、車両1を減速させる。
S415により、車速がα2より低くα1より高い場合でも、車速がα1より低くなるよう、モータMG1、モータMG2により車両1を減速させることができる。
S415の後、S400を終了する。
上述のように、制御部25は、S409〜S415で車速制限部253として機能する。
以上説明したように、(13)本実施形態では、車速制限部253は、車両1の速度が、前記所定速度Sthより低い第1減速開始速度α1以上になったとき、モータの発電制御、または、モータの損失により車両1が減速するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータまたはエンジンENGの作動を制御し、車両1の速度が、前記所定速度Sthより低く第1減速開始速度α1より高い第2減速開始速度α2以上になったとき、モータの発電制御、または、モータの損失、および、エンジンENGの損失により車両1が減速するよう、複数のクラッチのうち固着していないクラッチ、モータまたはエンジンENGの作動を制御可能である。本実施形態は、車速制限部253による具体的な車速の制限の仕方を例示するものである。本実施形態の車速制限部253により、車速が比較的低いときはモータのみにより車両1を減速させ、車速が比較的高いときはモータおよびエンジンENGにより車両1を減速させることができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、車速制限部253が、ローギア機構LGの変速比、および、モータMG1の最大許容回転数に基づき、前記所定速度Sthを設定する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、車速制限部253は、例えば、モータMG1が最大許容回転数となる車速から、走行抵抗から算出した減速速度を引いた速度を前記所定速度Sthとして設定することとしてもよい。また、走行抵抗に含まれる勾配抵抗を、車両1の前後方向の傾斜角と車両1の重量とから算出してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、車速制限部253は、モータで減速する場合、SOCが所定値より大きいときは、モータの発電制御を禁止し、モータの損失のみで減速することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、車速制限部253は、エンジンENGの温度が所定値より高いときは、エンジンENGでの減速制御を禁止し、モータのみで減速することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、車速制限部253は、車速とハイギア機構HGの変速比とから目標エンジン回転数を算出し、目標エンジン回転数がエンジンENGの最大許容回転数を超える場合、ローギア機構LG側に変速後、エンジンENGの損失で減速することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、制御部25は、車速が所定値未満の場合、第1入力軸2の回転数と同期するようエンジンENGの作動を制御してもよい。
また、上述の実施形態では、図17に示すBの範囲の駆動トルクの上限値として90(Nm)を設定する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、モータMG2の最大出力トルクからエンジンENGの引きずり損失を補うトルクを引いた値を上記駆動トルクの上限値として設定してもよい。
また、上述の実施形態では、図17に示すAの範囲の車速の上限値として20(km/h)を設定する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、エンジンENGの最低許容回転数とハイギア機構HGの変速比とから決定される車速を上記車速の上限値として設定してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、SOCが所定値より大きいときは、モータの発電制御を禁止し、要求駆動トルクTdrvに対するエンジントルクの余剰分を、モータの損失により消費することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、モータの温度が所定値より大きいときは、モータの発電制御またはモータの損失によるエンジントルクの余剰分の消費を禁止し、エンジンENGの出力を低減することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、動力伝達装置17は、ギア機構としてハイギア機構HGまたはローギア機構LGのいずれか一方を備えることとしてもよい。また、動力伝達装置17は、3つのクラッチ(入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13)のうち少なくとも2つを備えることとしてもよい。また、車両1は、モータMG2を備えていなくてもよい。
また、上述の実施形態では、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13として単層湿式クラッチを用いる例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13として乾式クラッチ、または、シンクロ機構等の噛み合い式クラッチを用いてもよい。また、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を複層クラッチとして構成してもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
1 車両、8 入力側クラッチ(クラッチ)、11 第1出力側クラッチ(クラッチ)、13 第2出力側クラッチ(クラッチ)、14 駆動部、17 動力伝達装置、20 制御装置、25 制御部、251 固着検出部、252 効率低下抑制部、26 補正値算出部、27 補正値反映部、ENG エンジン、MG1 モータ(第1モータ)、MG2 モータ(第2モータ)

Claims (13)

  1. 複数のクラッチ(8、11、13)を備え、車両(1)のエンジン(ENG)、および、1つ以上のモータ(MG1、MG2)の動力を、前記クラッチを含む伝達経路を経由して前記車両の駆動部(14)に伝達する動力伝達装置(17)を制御する制御装置(20)であって、
    前記エンジン、前記モータおよび前記クラッチの作動を制御可能な制御部(25)を備え、
    前記制御部は、
    前記クラッチの係合状態が接続状態で固着したことを検出可能な固着検出部(251)、ならびに、
    前記クラッチの固着を前記固着検出部が検出したとき、前記車両の走行中、前記エンジンまたは前記モータの引きずり損失によるエネルギー効率の低下を抑制するよう、複数の前記クラッチのうち固着していない前記クラッチ、前記モータまたは前記エンジンの作動を制御可能な効率低下抑制部(252)を有している制御装置。
  2. 前記制御部は、
    前記クラッチの固着を前記固着検出部が検出したとき、前記車両の走行中、前記車両の速度が所定速度(Sth)以下となるよう、複数の前記クラッチのうち固着していない前記クラッチ、前記モータまたは前記エンジンの作動を制御可能な車速制限部(253)を有している請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記制御部は、
    前記クラッチの固着を前記固着検出部が検出したとき、前記車両の走行中、前記駆動部に要求されるトルクである要求駆動トルクに対する前記駆動部へのトルクの過不足を調整するよう、前記モータの作動を制御可能なトルク調整部(254)を有している請求項1または2に記載の制御装置。
  4. 前記制御部は、前記トルク調整部により前記モータの作動を制御しているとき、エネルギー効率が所定値以上となるよう前記エンジンの作動を制御する請求項3に記載の制御装置。
  5. 前記モータは、第1モータ(MG1)を含み、
    前記動力伝達装置は、
    前記エンジンの動力が入力される第1入力軸(4)とともに回転する第1駆動ギア(5)と、前記駆動部に接続する出力軸(9)に対し相対回転可能に設けられ前記第1駆動ギアの回転により回転する第1被駆動ギア(10)とからなるハイギア機構(HG)と、
    前記第1モータの動力が入力される第2入力軸(6)とともに回転する第2駆動ギア(7)と、前記出力軸に対し相対回転可能に設けられ前記第2駆動ギアの回転により回転する第2被駆動ギア(12)とからなり、変速比が前記ハイギア機構の変速比より高いローギア機構(LG)と、をさらに備え、
    前記クラッチは、
    前記第1入力軸と前記第2入力軸とを接続または切断可能な入力側クラッチ(8)、
    前記第1被駆動ギアと前記出力軸とを接続または切断可能な第1出力側クラッチ(11)、および、
    前記第2被駆動ギアと前記出力軸とを接続または切断可能な第2出力側クラッチ(13)を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の制御装置。
  6. 前記モータは、前記出力軸に動力を出力する第2モータ(MG2)をさらに含む請求項5に記載の制御装置。
  7. 前記制御部は、前記第2出力側クラッチの固着を前記固着検出部が検出したとき、前記車両の走行中、前記車両の速度が所定速度(Sth)以下では、前記第2モータからトルクを出力するのに加え、前記第1モータからもトルクを出力するよう、前記第1モータおよび前記第2モータの作動を制御する請求項6に記載の制御装置。
  8. 前記制御部は、前記入力側クラッチの固着を前記固着検出部が検出したとき、前記車両の走行中、前記第2モータのトルクのみで走行可能な領域以外では、前記第2モータからトルクを出力するのに加え、前記第1モータおよび前記エンジンからもトルクを出力するよう、前記第1モータ、前記第2モータおよび前記エンジンの作動を制御する請求項6に記載の制御装置。
  9. 前記制御部は、前記第1出力側クラッチの固着を前記固着検出部が検出したとき、前記車両の走行中、
    前記駆動部に要求されるトルクである要求駆動トルクが所定トルク以上、かつ、前記車両の速度が所定車速以上のときは、前記エンジンの運転を開始し、
    前記要求駆動トルクが所定トルク未満、または、前記車両の速度が所定車速未満のときは、前記エンジンの運転を停止する請求項5または6に記載の制御装置。
  10. 前記制御部は、
    前記第2出力側クラッチの固着を前記固着検出部が検出したとき、前記車両の走行中、前記車両の速度が所定速度(Sth)以下となるよう、複数の前記クラッチのうち固着していない前記クラッチ、前記モータまたは前記エンジンの作動を制御可能な車速制限部(253)を有している請求項5〜7のいずれか一項に記載の制御装置。
  11. 前記車速制限部は、前記ローギア機構の変速比、および、前記第1モータの最大許容回転数に基づき、前記所定速度を設定する請求項10に記載の制御装置。
  12. 前記車速制限部は、
    前記車両の速度が、前記所定速度より低い減速開始速度(α)以上になったとき、前記モータの発電制御、前記モータの損失、または、前記エンジンの損失により前記車両が減速するよう、複数の前記クラッチのうち固着していない前記クラッチ、前記モータまたは前記エンジンの作動を制御可能である請求項2、10または11に記載の制御装置。
  13. 前記車速制限部は、
    前記車両の速度が、前記所定速度より低い第1減速開始速度(α1)以上になったとき、前記モータの発電制御、または、前記モータの損失により前記車両が減速するよう、複数の前記クラッチのうち固着していない前記クラッチ、前記モータまたは前記エンジンの作動を制御し、
    前記車両の速度が、前記所定速度より低く前記第1減速開始速度より高い第2減速開始速度(α2)以上になったとき、前記モータの発電制御、または、前記モータの損失、および、前記エンジンの損失により前記車両が減速するよう、複数の前記クラッチのうち固着していない前記クラッチ、前記モータまたは前記エンジンの作動を制御可能である請求項2、10または11に記載の制御装置。
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