JP2018057308A - 果汁感増強方法及び果汁感増強組成物 - Google Patents

果汁感増強方法及び果汁感増強組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】果汁が持つ苦みや渋み、収斂味等の雑味を低減しつつ果汁感を増強させることができる果汁感増強方法及び果汁感増強組成物の提供。
【解決手段】果汁に高甘味度甘味料とイノシトールと酸味料とを添加することによる果汁感増強方法、及び高甘味度甘味料とイノシトールと酸味料とを含有する果汁感増強組成物。高甘味度甘味料としては、果実由来の甘味料であるため果汁との相性が良く、果汁の果実感を向上させる効果に優れるため、ラカンカ抽出物が最も好ましい。酸味料としては、イノシトールと併用した場合に、刺激の強い酸味のみがマスキングされ、爽やかな味質を呈するクエン酸が最も好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、果汁が持つ果汁感を増強させる方法及び組成物に関する。
オレンジやリンゴ、パイナップル等の果汁は、飲料や冷菓等の食品に広く使用されているが、近年、輸入果汁価格が上昇しており、果汁を用いた食品の原料コストを押し上げる要因となっている。そこで、果汁を用いた食品の製造コストを低減するために、価格の安い果汁を使用することが検討されている。
しかしながら、価格の安い果汁は、果汁自体の質が劣るため、果実の苦みや渋み等の雑味が強く、甘味や果実感が少ないため、高品質な果汁を用いた場合と比べて、果汁を用いた食品の品質を低下させてしまう。そこで、低価格の果汁を用いる場合には、他の材料を添加して果汁感を補うことが好ましい。
例えば、特許文献1には、うめ果汁を含有するアルコール飲料にラカンカ抽出物を配合することにより、果汁含有アルコール飲料の果汁感を増強することが記載されている。
特開2015−208246号公報
特許文献1に記載の方法では、ラカンカ抽出物の添加により果汁感を増強することができるが、低価格の果汁においては苦みや渋み等の雑味が強く、この雑味を十分に低減することができない。また、ラカンカ抽出物自体が苦みや焦げ味等を有するため、ラカンカ抽出物を単独で果汁に添加すると、雑味を増加させてしまうため好ましくない。
それ故に、本発明は、果汁が持つ苦みや渋み等を低減しつつ果汁感を増強させることができる果汁感増強方法及び果汁感増強組成物を提供することを目的とする。
本発明は、果汁の果汁感を増強させる果汁感増強方法に関するものであり、果汁に、高甘味度甘味料と、イノシトールと、酸味料とを添加することを特徴とする。
また、本発明に係る果汁感増強組成物は、高甘味度甘味料と、イノシトールと、酸味料とを含有するものである。
本発明によれば、果汁が持つ苦みや渋み等を低減しつつ果汁感を増強させることができる果汁感増強方法及び果汁感増強組成物を提供できる。
実施例1に係る果汁感増強組成物を添加したオレンジ果汁の味質を示すレーダーチャート 実施例22に係る果汁感増強組成物を添加したオレンジ果汁の味質を示すレーダーチャート
本発明に係る果汁感増強方法は、果汁に、高甘味度甘味料と、イノシトールと、酸味料とを添加することを特徴とするものである。
高甘味度甘味料としては、天然由来の高甘味度甘味料及び化学合成された高甘味度甘味料のいずれも使用できる。具体的には、天然由来の高甘味度甘味料としては、羅漢果抽出物、ステビア抽出物、甘草抽出物等が挙げられる。また、化学合成された高甘味度甘味料としては、グリチルリチン、フィロズルチン、モネリン、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、チクロ等が挙げられる。これらの中でも、ラカンカ抽出物は、果実由来の甘味料であるため果汁との相性が良く、果汁の果実感を向上させる効果に優れるため、最も好ましい。
イノシトールは、グルコースを原料として生合成され、植物や動物の体内に含まれる環状ポリオールである。イノシトールは、白色の結晶性粉末であって、無臭で、後味がなく、すっきりとしたショ糖に比べて違和感のない甘味を呈する。イノシトールの甘味度は、3%ショ糖溶液の甘味度の50%程度であるので、イノシトール自体によって付与される甘味は強くないが、果汁や高甘味度甘味料が有する苦みや渋み、収斂味等の雑味をマスキングし、コクとまろやかさを付与する効果を有する。
酸味料は、果汁が持つ爽やかさを増強する。酸味料の添加により、pHが低下するが、イノシトールと併用することによって刺激のある酸味がマスキングされ、爽やかですっきりした味質を形成する。酸味料としては、フィチン酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クロロゲン酸、酢酸、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)、アジピン酸、酒石酸、フマル酸等を利用できる。これらの中でも、イノシトールと併用した場合に、刺激の強い酸味のみがマスキングされ、爽やかな味質を呈するクエン酸が最も好ましい。
高甘味度甘味料、イノシトール及び酸味料は、高甘味度甘味料1質量部に対して、イノシトールを2〜250質量部、酸味料を0.3〜6質量部の割合で配合する。この配合比の範囲内とすることによって、果汁が持つ雑味のマスキングと、果汁感の増強効果とを両立することができる。また、高甘味度甘味料、イノシトール及び酸味料の配合量は、これらの合計量の最終濃度が果汁含有溶液の1〜5質量%の割合で含有されるようにすることが好ましい。
また、ギャバ(γ−アミノ酪酸)を更に添加することが好ましい。ギャバを添加することにより、果汁感の増強効果が向上する。ギャバ自体は、苦みを呈するが、イノシトールと併用するとギャバが持つ苦みがイノシトールによってマスキングされるため、果汁にギャバの苦みを付与することなく、果汁感の増強効果のみを得ることができる。
また、上記の成分に加えて、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール糖の単糖アルコールや、マルチトール、還元パラチノース糖の二糖アルコール、還元水あめ等のオリゴ糖アルコールといった糖アルコールを添加しても良い。
また、上記の成分に加えて、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、シクロデキストリン、グリコシルスクロース、トレハロース、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、コージオリゴ糖、環状四糖、マルトシルトレハロース、リン酸化オリゴ糖カルシウム、フラクトオリゴ糖、パラチノース、トレハロース、ラフィノース、ラクトスクロース、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、マンノオリゴ糖、シクロイヌオリゴ糖、ダイフラクトースアンハイドライドIII、アガロオリゴ糖を添加しても良い。
また、上記の成分に加えて、ポリデキストロースや、マルトデキストリン、分岐デキストリン、難消化性デキストリン、高度分岐環状デキストリン、難消化性でん粉、イヌリン、還元難消化性デキストリン、大豆多糖類といったに食物繊維や多糖類を添加しても良い。
また、果汁が持つ芳香や風味を増強するために、オレンジフラワーやカモミール等のハーブ類またはその抽出物を添加しても良い。
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
まず、表1に記載の配合比で各材料を混合したシロップと、表2に記載の配合比で各材料を混合した酸味料組成物とを調製した。尚、以降の表に記載の角成分の配合量の単位は、「質量部」である。
Figure 2018057308
Figure 2018057308
(比較例1〜4)
比較例1として、オレンジ果汁(Brix値65)を使用した。また、比較例2〜4として、表3に記載の配合比でオレンジ果汁と各成分とを混合したサンプルを用意した。
Figure 2018057308
比較例1〜4に係るサンプルについて、苦み、渋み、収斂味がマスキングされているかどうかと、果汁感が増強されているかどうかと、味質(果汁としてのおいしさ)とを、識別力のある3人の試験者が官能試験により評価した。各試験者は、以下の評価基準に基づいて各サンプルの点数を付け、3人の試験者の平均点を四捨五入した値を各サンプルの評価値とした。
<苦み、渋み、収斂味のマスキング効果の評価基準>
+2:苦み、渋み及び収斂味のいずれも感じない
+1:苦み、渋み及び収斂味のいずれかを僅かに感じるが、味質を損なう程度ではなく、問題ないレベル
0:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)と同程度の苦み、渋み、収斂味を感じる
−1:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)よりも、苦み、渋み及び収斂味のいずれかを強く感じる
−2:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)よりも、苦み、渋み及び収斂味のいずれかを極めて強く感じる
<果汁感の増強効果の評価基準>
+2:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)よりも果汁感が極めて強い
+1:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)よりも果汁感が強い
0:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)と同程度の果汁感を感じる
−1:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)よりも果汁感が弱い
−2:添加物を加えないオレンジ果汁(比較例1)よりも果汁感が極めて弱い
<味質(果汁としてのおいしさ)>
+2:生の果実よりも雑味が少なくおいしい
+1:生の果実と同程度においしい
0:高品質な果汁と同程度においしい
−1:高品質な果汁と比べると、果汁感が乏しく、味質が劣る
−2:雑味が強く果汁感が弱いため、味質が悪い
表3に示すように、比較例2のサンプルでは、イノシトールの添加により元の果汁の雑味が低減されたが、果汁感も低下し、味質は元の果汁よりも若干改善した程度であった。また、比較例3のサンプルでは、ギャバの添加により果汁感が増強されたが、ギャバ自体が持つ苦みが果汁に付与され、味質は元の果汁よりも若干改善した程度であった。比較例4のサンプルでは、雑味及び果汁感のいずれも元の果汁と同等であり、果糖ブドウ糖液糖の添加によっては、苦み等がマスキングされず、果汁感も増強されなかった。
次に、表4〜6に記載の配合比で各材料を混合して、実施例1〜21に係る果汁感増強組成物を調製した。尚、表4〜6に記載のシロップは、上述した表1の材料を混合して得たものである。実施例1〜21の果汁感増強組成物を、比較例1と同じオレンジ果汁と1:1で混合したサンプルを作製し、比較例1〜4と同じ官能試験を行い、苦み、渋み、収斂味がマスキングされているかどうかと、果汁感が増強されているかどうかと、味質(果汁としてのおいしさ)とを官能試験により評価した。
Figure 2018057308
Figure 2018057308
Figure 2018057308
表4〜6に示すように、実施例1〜21に係る果汁感増強組成物を果汁に混合すると、果汁が持つ苦み、渋み、収斂味が有意に低減された。また、実施例1〜21の果汁感増強組成物は、高甘味度甘味料として羅漢果抽出物を含有しているが、羅漢果抽出物が持つ雑味等もマスキングされ、感じられなかった。また、実施例1〜7及び10〜21に係る果汁感増強組成物を果汁と混合すると、元の果汁と比べて混合物中の果汁の割合が少なくなっているにもかかわらず、果汁感が増強された。実施例1〜21に係る果汁感増強組成物を果汁に添加した場合、果汁が持つ雑味のマスキング効果と、果汁感の増強効果とによって、果汁の味質が向上した。
次に、表7及び8に記載の配合比で各材料を混合して、実施例22〜33に係る果汁感増強組成物を調製した。尚、表7及び8に記載のシロップは、上述した表2の材料を混合して得たものである。実施例22〜33の果汁感増強組成物を、比較例1と同じオレンジ果汁と1:1で混合したサンプルを作製し、比較例1〜4と同じ官能試験を行い、苦み、渋み、収斂味がマスキングされているかどうかと、果汁感が増強されているかどうかと、味質(果汁としてのおいしさ)とを官能試験により評価した。
Figure 2018057308
Figure 2018057308
表7及び8に示すように、実施例22〜32に係る果汁感増強組成物を果汁に混合すると、果汁が持つ苦み、渋み、収斂味が有意に低減されると共に、果汁感が増強され、高品質な果汁以上の味質であった。また、実施例33の果汁感増強組成物を果汁に混合したサンプルでは、ギャバの配合量が多いために、ギャバ自体の苦みにより、元の果汁と同程度の苦みを呈したが、ギャバの効果により果汁感が増強されたため、高品質な果汁と同程度の味質であった。
図1及び2は、それぞれ、実施例1及び22に係る果汁感増強組成物を添加したオレンジ果汁の味質を示すレーダーチャートである。
図1及び2に示すように、実施例1及び22に係る果汁感増強組成物を添加した場合、元のオレンジ果汁が持つ苦み、渋み、収斂味が大きく低減される一方で、元のオレンジ果汁には感じられなかった、オレンジの香り、爽快感、まろやかさ、甘味が増強されることが分かった。
以上説明したように、本発明に係る果汁感増強組成物を果汁に添加すると、果汁が持つ苦みや渋み、収斂味等の雑味を低減し、果汁感を増強できることにより、品質が高くない果汁の味質を大きく改善できることが確認された。
本発明は、飲料や冷菓等に用いる果汁の味質改善に利用できる。

Claims (2)

  1. 果汁の果汁感を増強させる果汁感増強方法であって、
    果汁に、高甘味度甘味料と、イノシトールと、酸味料とを添加することを特徴とする、果汁感増強方法。
  2. 果汁の果汁感を増強させる果汁感増強組成物であって、
    高甘味度甘味料と、
    イノシトールと、
    酸味料とを含有する、果汁感増強組成物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019198324A (ja) * 2018-05-15 2019-11-21 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 乳感増強剤、及びそれを含有する乳成分含有組成物
JP2020005639A (ja) * 2018-06-29 2020-01-16 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 果汁感増強剤、及びそれを含有する果汁含有組成物

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