JP2018054011A - 動力伝達装置 - Google Patents
動力伝達装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2018054011A JP2018054011A JP2016190282A JP2016190282A JP2018054011A JP 2018054011 A JP2018054011 A JP 2018054011A JP 2016190282 A JP2016190282 A JP 2016190282A JP 2016190282 A JP2016190282 A JP 2016190282A JP 2018054011 A JP2018054011 A JP 2018054011A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gear
- clutch
- power transmission
- driven gear
- transmission device
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
- Mechanical Operated Clutches (AREA)
- Gear-Shifting Mechanisms (AREA)
- Control Of Transmission Device (AREA)
Abstract
【課題】簡単な構造で、能動ギアの第1係合突部と従動ギアの第2係合突部との間で円滑に結合状態を確立することができる動力伝達装置を提供する。【解決手段】シフトドラム93に複数のカム溝94、135が形成され、カム溝135に連結されるプッシュロッド128が配置され、プッシュロッド128はシフトドラム93の動作に伴い、フリクション板113とクラッチ板119との間を狭めるように軸方向にフリクション板113もしくはクラッチ板119を駆動する。【選択図】図5
Description
本発明は、動力入力側に連結されて、フリクション板を保持するクラッチアウターと、クラッチアウターに対して相対回転自在に支持されて、フリクション板に摩擦接合可能なクラッチ板を保持するクラッチハブと、クラッチハブに連結されて、第1係合突部を有する能動ギアと、軸方向に変位可能に能動ギアに同軸に支持されて、軸方向基準位置から軸方向に作動位置に移動すると第1係合突部に係り合う第2係合突部を有する従動ギアと、軸方向に能動ギアを駆動するカムプロファイルを有するシフトドラムとを備えた動力伝達装置に関する。
特許文献1はドグクラッチ式変速機を開示する。ドグクラッチ式変速機では動力の伝達にあたって従動ギアの第2係合突部に能動ギアの第1係合突部は噛み合う。こうして入力軸の動力は能動ギアから従動ギアを経て出力軸の被駆動ギアに伝達される。特許文献1では第1係合突部が第2係合突部に当たって能動ギアの軸方向移動が阻止される場合でも、電動アクチュエーターにより能動ギアと従動ギアとの間で相対回転が引き起こされることから、第1係合突部は第2係合突部の隣接空間に確実に進入することができる。
特許文献1では、前述のように第1係合突部および第2係合突部の間で円滑に結合状態が確立されるものの、相対回転の生成にあたって電動アクチュエーターが用いられることから、構造が複雑化し、同時に調達コストや製造コストも上昇してしまう。
本発明は、簡単な構造で、能動ギアの第1係合突部と従動ギアの第2係合突部との間で円滑に結合状態を確立することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
本発明の第1側面によれば、動力入力側に連結されて、フリクション板を保持するクラッチアウターと、前記クラッチアウターに対して相対回転自在に支持されて、前記フリクション板に摩擦接合可能なクラッチ板を保持するクラッチハブと、前記クラッチハブに連結されて、第1係合突部を有する能動ギアと、軸方向に変位可能に前記能動ギアに同軸に支持されて、軸方向基準位置から軸方向に作動位置に移動すると前記第1係合突部に係り合う第2係合突部を有する従動ギアと、前記能動ギアと前記従動ギアとの組み合わせにより変更される複数の変速ギアを有し、前記変速ギアを稼動させるシフトドラムを備えた動力伝達装置において、前記シフトドラムに複数のカム溝が形成され、前記カム溝に連結されるプッシュロッドが配置され、前記プッシュロッドは前記シフトドラムの動作に伴い、前記フリクション板と前記クラッチ板との間を狭めるように軸方向に前記フリクション板もしくは前記クラッチ板を駆動する動力伝達装置は提供される。
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記プッシュロッドは、前記シフトドラムが前記能動ギアと前記従動ギアとが係合しないニュートラル位置にある場合に、前記シフトドラムに構成された前記カム溝により稼動される。
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記クラッチアウターには複数の前記フリクション板が保持され、前記複数のフリクション板のうち外端に配置される前記フリクション板は他のフリクション板より最大外形が大きく構成され、前記外端のフリクション板の半径方向外端に前記プッシュロッドが当接する当接部が構成されている。
第4側面によれば、第3側面の構成に加えて、前記外端のフリクション板と前記プッシュロッドの当接部とが当接する部分は、前記クラッチアウターの前記外端のフリクション板を保持する保持部より径方向において外方に構成されている。
第5側面によれば、第1〜第4側面のいずれかの構成に加えて、前記プッシュロッドは、端部に配置された前記フリクション板に当接するリング状部材と、前記リング状部材を支持するロッド部と、前記ロッド部に前記リング状部材を付勢する弾性部材とを備える。
第6側面によれば、第5側面の構成に加えて、前記シフトドラムを稼動させるマスターアームがクランクケースに配置され、前記マスターアームと係合するマスターアームストッパーピンがクランクケースに固定され、前記ロッド部の略中央部は、前記マスターアームストッパーピンを貫通して配置されている。
第7側面によれば、第2側面の構成に加えて、動力伝達装置は、前記能動ギアおよび前記従動ギアを含む駆動ギアまたは被駆動ギアを支持する第1軸、並びに、前記駆動ギアまたは前記被駆動ギアに噛み合い可能な被駆動ギアまたは駆動ギアを支持する第2軸を含む多段変速機で、前記第1軸および前記第2軸の間で動力の伝達を切断するニュートラル状態が確立され、前記フリクション板および前記クラッチ板の間で摩擦接合が確立されると、エンジンの燃焼動作を停止する制御回路と、前記エンジンのクランクシャフトに接続されて、前記ニュートラル状態で前記摩擦接合が再び解除されると前記制御回路からの指令信号を受けてクランクシャフトを自動始動するスターターモーターとを備える。
第1側面によれば、シフトドラムが特定の位置に動作すると、フリクション板とクラッチ板との接合が解除された状態でも、フリクション板とクラッチ板との間を狭めることができ、板間を狭めることで一部動力を伝達し、連れ回りを発生しやすい状況を作り出すことが可能になる。そのため能動ギアはクラッチハブから動力を受け回転する。こうして能動ギアと従動ギアとの間で相対回転は引き起こされる。軸方向基準位置から作動位置に能動ギアが移動する際に、第1係合突部が第2係合突部に当たって能動ギアの軸方向移動が阻止される場合でも、相対回転によって第1係合突部は第2係合突部の隣接空間に進入することができる。こうして第1係合突部および第2係合突部の間で円滑に結合状態は確立されることができる。
第2側面によれば、シフトドラムがニュートラル位置にある場合には、能動ギアと従動ギアとが係合しておらず、その状態でフリクション板とクラッチ板との接合が解除された場合、クラッチハブと能動ギアとは動力源もしくは出力先と係合しない状況になる。そのような場合においても、本構造によれば、一部動力をクラッチハブに伝えることができるため、円滑に第1係合突部および第2係合突部の結合を行うことができる。また、シフトドラムをさらに稼働させることでプッシュロッドの動作を解除することができる。
第3側面によれば、フリクション板のうち外端に配置されるフリクション板の最大外形を他のフリクション板より大きくし、前記部分にプッシュロッドの当接部と当接するようにすることで、クラッチハブ側(のクラッチ板保持部など)に与える影響を少なくできるとともに、当接部の構成を容易に構成でき、プッシュロッドがアクセスしやすい簡素な構成とすることができる。
第4側面によれば、クラッチアウターの径方向外側にて当接することで、プッシュロッドが不要にクラッチアウターと接触することを抑え、容易にプッシュロッドがアクセスするができる。
第5側面によれば、リング状部材によりフリクション板を稼動させることで比較的均等に、また確実に力を加えることができるとともに、弾性部材により付勢することでシフトドラムに不要な力が掛かることを低減することができる。加えて、車体振動などでリング状部材に振動が伝わったとしても弾性部材を配置しているため、振動を低減し、フリクション板との不要な接触を低減することができる。
第6側面によれば、マスターアームはシフトドラムに近接して配置され、そのためマスターアームストッパーピンも近接して配置される。そのストッパーピンの中を貫通してロッドを通すことで、クランクケース内の他の可動部品に影響を与えることなくクランクケースまでシフトドラムからの駆動力を伝えることができる。またストッパーピンを貫通してロッドを通すことで長くなり、振動の影響を受けやすいロッドの支持部を長く構成することが容易になり、強固に支持することが可能になる。
第7側面によれば、フリクション板およびクラッチ板を含む摩擦クラッチが切断され、多段変速機でニュートラル状態が確立された後に、摩擦クラッチが再び接続状態に移行すると、エンジンではアイドルストップが実施され、エンジンの燃焼動作は停止する。このとき、駆動ギアを支持する入力軸に駆動力は入力されないことから、駆動ギアの回転は停止する。アイドルストップ時、被駆動ギアを支持する出力軸にも駆動力は入力されないことから、被駆動ギアの回転も停止する。その後、摩擦接合が再び解除されて摩擦クラッチが切断されると、スターターモーターはクランクシャフトを駆動し、続いてクラッチアウターが回転する。その際、ニュートラル状態であるため、プッシュロッドが駆動しており、フリクション板とクラッチ板との間が狭まっている。それにより能動ギアに回転が一部伝わり、能動ギアと従動ギアとの間で相対回転は引き起こされることから、第1係合突部は第2係合突部の隣接空間に進入することができる。こうして第1係合突部および第2係合突部の間で円滑に結合状態は確立されることができる。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。ここで、車体の上下前後左右は自動二輪車に乗車した乗員の目線に基づき規定されるものとする。
図1は本発明の一実施形態に係る自動二輪車の全体構成を概略的に示す。自動二輪車11は車体フレーム12を備える。車体フレーム12の前端でヘッドパイプ13にはフロントフォーク14が操向可能に支持される。フロントフォーク14には車軸15回りで回転自在に前輪WFが支持される。車体フレーム12の後端でピボットフレーム16にはスイングアーム17が車幅方向に水平に延びる支軸18回りで揺動自在に支持される。スイングアーム17の後端には車軸19回りで回転自在に後輪WRが支持される。
フロントフォーク14にはヘッドパイプ13の上側でハンドルバー21が結合される。ハンドルバー21の左右両端にはグリップ22が取り付けられる。走行にあたって自動二輪車11の運転者は左右の手でそれぞれグリップ22を握る。左グリップ22にはクラッチレバー23が組み合わせられる。運転者は左手でクラッチレバー23を操作することができる。
前輪WFおよび後輪WRの間で車体フレーム12にはエンジン25が搭載される。エンジン25は、クランクケース26と、クランクケース26に結合されるシリンダーブロック27と、シリンダーブロック27に結合されるシリンダーヘッド28と、シリンダーヘッド28に結合されるヘッドカバー29とを備える。クランクケース26には、後輪WRの車軸19に平行に延びる軸線回りで回転するクランクシャフト31が収容される。クランクシャフト31は、シリンダーブロック27のシリンダーボアにスライド自在に嵌め合わせられるピストン(図示されず)の軸線方向運動に応じて回転する。クランクシャフト31の回転運動は後述される動力伝達装置を経て駆動スプロケット32に伝達される。駆動スプロケット32の回転運動はドライブチェーン33を介して後輪WRに固定の被駆動スプロケット34に伝達される。
エンジン25の上方で車体フレーム12には燃料タンク35が搭載される。燃料タンク35の後方で車体フレーム12には乗員シート36が搭載される。燃料タンク35からエンジン25の燃料噴射装置に燃料は供給される。自動二輪車11の運転にあたって乗員は乗員シート36を跨ぐ。
図2に示されるように、クランクケース26は第1ケース半体26aおよび第2ケース半体26bを備える。クランクシャフト31は、第1ケース半体26aおよび第2ケース半体26bにそれぞれ嵌め込まれる軸受け37で第1ケース半体26aおよび第2ケース半体26bに回転自在に支持される。クランクケース26内でクランクシャフト31のクランクにはコネクティングロッド38が連結される。コネクティングロッド38はピストンの軸線方向運動をクランクシャフト31の回転運動に変換する。
エンジン25にはドグクラッチ式の多段変速機(動力伝達装置)39が組み込まれる。多段変速機39はクランクシャフト31の軸心に平行な軸心を有する入力軸41および出力軸42を備える。入力軸41および出力軸42は、第1ケース半体26aおよび第2ケース半体26bにそれぞれ嵌め込まれる軸受け43、44で第1ケース半体26aおよび第2ケース半体26bに回転自在に支持される。入力軸41は一次減速機構45を通じてクランクシャフト31に接続される。一次減速機構45は、クランクシャフト31に固定される駆動ギア45aと、出力軸42上に相対回転自在に支持される被駆動ギア45bとを備える。被駆動ギア45bは駆動ビア45aに噛み合う。出力軸42には駆動スプロケット32が結合される。
入力軸41上には4つの駆動ギアが配置される。駆動ギアは順番にロー駆動ギア46、4速駆動ギア47、3速駆動ギア48および2速駆動ギア49を含む。同様に、出力軸42上には順番に4つの被駆動ギアが配置される。被駆動ギアはロー被駆動ギア51、4速被駆動ギア52、3速被駆動ギア53および2速被駆動ギア54を含む。多段変速機39ではニュートラル状態、1速結合状態、2速結合状態、3速結合状態および4速結合状態で結合状態が選択的に切り替えられる。多段変速機39の詳細は後述される。
エンジン25には摩擦クラッチ55が組み込まれる。摩擦クラッチ55はクラッチアウター56およびクラッチハブ57を備える。クラッチアウター56に一次減速機構45の被駆動ギア45bは連結される。クラッチレバー23の操作に応じて摩擦クラッチ55ではクラッチアウター56およびクラッチハブ57の間で連結および切断が切り替えられる。摩擦クラッチ55の詳細は後述される。
エンジン25にはACG(交流発電機)スターター58が組み込まれる。ACGスターター58はローター59およびステーター61を備える。ローター59は、クランクケース26の第1ケース半体26aから突き出るクランクシャフト31に結合される。ローター59は周方向に配列される複数の磁石を有する。ローター59はステーター61の外周を囲む。ステーター61には周方向に配列される複数のコイルが巻き付けられる。コイルはローター59の回転時に磁石の軌道に向き合う軌道を辿る。クランクケース26の第1ケース半体26aには発電機カバー62が結合される。ステーター61は発電機カバー62に支持される。ローター59およびステーター61は発電機カバー62および第1ケース半体26aで区画される空間に収容される。ACGモーター58は、エンジン25の始動時にはクランクシャフト31を自動始動するスターターモーターとして機能し、エンジン25の始動が確認されると、交流発電機として機能する。
ACGスターター58には制御回路が接続される。制御回路は例えばECU(電子制御ユニット)で構成される。制御回路は例えば内蔵の記憶装置に格納される制御プログラム(ソフトウェア)に従ってアイドルストップ制御を実行することができる。アイドルストップ制御の実行にあたって、制御回路は、入力軸41および出力軸42の間で動力の伝達を切断するニュートラル状態が確立され、フリクション板およびクラッチ板の間で摩擦接合が確立されると、エンジン25の燃焼動作を停止する信号を出力する。その後、ニュートラル状態で摩擦接合が再び解除されると、制御回路は、スターターモーターの動作を指示する指令信号をACGスターター58に供給する。
エンジン25にはキックスターター64が組み込まれる。キックスターター64は、出力軸42の軸心に平行な軸心を有するキックスピンドル65を備える。キックスピンドル65にはキックアーム66が結合される。キックアーム66のキック動作に応じてキックスピンドル65は軸心回りに回転する。キックスピンドル65は捻りばね67の働きで軸心回りに基準位置に押し付けられる。
キックスターター64はキックスターター用の駆動ギア(以下「スターター駆動ギア」)68および被駆動ギア(以下「スターター被駆動ギア」)69を備える。スターター駆動ギア68はキックスピンドル65に相対回転自在に支持される。スターター駆動ギア68は噛み合い機構でキックスピンドル65に連結される。キックアーム66のキック動作に応じてキックスピンドル65が一方向に回転すると、噛み合い機構はキックスピンドルにスターター駆動ギア68を結合する。ここでは、スターター被駆動ギア69は中間ギア71を介してスターター駆動ギア68に噛み合う。中間ギア71は出力軸42に相対回転自在に支持される。スターター被駆動ギア69は被駆動ギア45bのクランクケース26側で被駆動ギア45bに一体に形成される。こうしてキックアーム66のキック動作はクラッチアウター56を経てクランクシャフト31に伝達される。
図3に示されるように、多段変速機39ではロー駆動ギア46は入力軸41に刻まれる。4速駆動ギア47は入力軸41に対して相対回転自在かつ軸方向変位不能に入力軸41に支持される。3速駆動ギア48は第1シフター72に一体化される。第1シフター72は、入力軸41に刻まれるスプライン73に嵌め合わせられスプライン73上に相対回転不能かつ軸方向変位自在に支持される。2速駆動ギア49は入力軸41に対して相対回転自在かつ軸方向変位不能に入力軸41に支持される。
4速駆動ギア47および3速駆動ギア48の間には第1嵌め合い機構74が構成される。第1嵌め合い機構74は、第1シフター72に形成される複数の駆動突部75と、4速駆動ギア47に形成される複数の被駆動突部76とを備える。第1シフター72がスプライン73上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部75の軌道は被駆動突部76の軌道から離れる。このとき、4速駆動ギア47および第1シフター72の間では入力軸41の軸心回りで相対回転は許容される。第1シフター72が軸方向基準位置から4速駆動ギア47に向かって第1距離で変位して第1作動位置に移動すると、駆動突部75は4速駆動ギア47上で周方向に隣接する被駆動突部76同士の間に入り込む。駆動突部75は入力軸41の回転方向に被駆動突部76に面接触する。駆動突部75および被駆動突部76にはそれぞれ入力軸41の軸心を含む仮想平面内で広がる接触面が区画される。こうして被駆動突部76および駆動突部75は入力軸41の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、4速駆動ギア47は第1シフター72を介して入力軸41に相対回転不能に結合される。
3速駆動ギア48および2速駆動ギア49の間には第2嵌め合い機構77が構成される。第2嵌め合い機構77は、第1シフター72に形成される複数の駆動突部78と、2速駆動ギア49に形成される複数の被駆動突部79とを備える。第1シフター72がスプライン73上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部78の軌道は被駆動突部79の軌道から離れる。このとき、第1シフター72および2速駆動ギア49の間では入力軸41の軸心回りで相対回転は許容される。第1シフター72が軸方向基準位置から2速駆動ギア49に向かって第2距離で変位して第2作動位置に移動すると、駆動突部78は2速駆動ギア49上で周方向に隣接する被駆動突部79同士の間に入り込む。駆動突部78は入力軸41の回転方向に被駆動突部79に面接触する。駆動突部78および被駆動突部79にはそれぞれ入力軸41の軸心を含む仮想平面内で広がる接触面が区画される。こうして駆動突部78および被駆動突部79は入力軸41の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、2速駆動ギア49は第1シフター72を介して入力軸41に相対回転不能に結合される。
ロー被駆動ギア51は相対回転自在かつ軸方向変位不能に出力軸42に支持される。ロー被駆動ギア51は入力軸41上のロー駆動ギア46に噛み合う。4速被駆動ギア52は第2シフター81に一体化される。第2シフター81は、出力軸42に刻まれるスプライン82に嵌め合わせられスプライン82上に相対回転不能かつ軸方向変位自在に支持される。3速被駆動ギア53は出力軸42に対して相対回転自在かつ軸方向変位不能に出力軸42に支持される。2速被駆動ギア54は出力軸42に刻まれるスプラインに嵌め合わせられスプライン上に相対回転不能かつ軸方向変位不能に支持される。2速被駆動ギア54は入力軸41上の2速駆動ギア49に噛み合う。
ロー被駆動ギア51および4速被駆動ギア52の間には第3嵌め合い機構83が構成される。第3嵌め合い機構83は、第2シフター81に形成される複数の駆動突部84と、ロー被駆動ギア51に形成される複数の被駆動突部85とを備える。第2シフター81がスプライン82上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部84の軌道は被駆動突部85の軌道から離れる。このとき、第2シフター81およびロー被駆動ギア51の間では出力軸42の軸心回りで相対回転は許容される。第2シフター81が軸方向基準位置からロー被駆動ギア51に向かって第3距離で変位して第3作動位置に移動すると、駆動突部84はロー被駆動ギア51上で周方向に隣接する被駆動突部85同士の間に入り込む。駆動突部84は出力軸42の回転方向に被駆動突部85に面接触する。駆動突部84および被駆動突部85にはそれぞれ出力軸42の軸心を含む仮想平面内で広がる接触面が区画される。こうして駆動突部84および被駆動突部85は出力軸42の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、ロー被駆動ギア51は第2シフター81を介して出力軸42に相対回転不能に結合される。
4速被駆動ギア52および3速被駆動ギア53の間には第4嵌め合い機構86が構成される。第4嵌め合い機構86は、第2シフター81に形成される複数の駆動突部87と、3速被駆動ギア53に形成される複数の被駆動突部88とを備える。第2シフター81がスプライン82上で軸方向基準位置に位置すると、駆動突部87の軌道は被駆動突部88の軌道から離れる。このとき、第2シフター81および3速被駆動ギア53の間では出力軸42の軸心回りで相対回転は許容される。第2シフター81が軸方向基準位置から3速被駆動ギア53に向かって第4距離で変位して第4作動位置に移動すると、駆動突部87は3速被駆動ギア53上で周方向に隣接する被駆動突部88同士の間に入り込む。駆動突部87は出力軸42の回転方向に被駆動突部88に面接触する。駆動突部87および被駆動突部88にはそれぞれ出力軸42の軸心を含む仮想平面内で広がる接触面が区画される。こうして駆動突部87および被駆動突部88は出力軸42の軸心回りに相互に噛み合う。噛み合い時、3速被駆動ギア53は第2シフター81を介して出力軸42に相対回転不能に結合される。
実施形態において第1係合部は能動ギア51の側面に形成され、周方向に並ぶ複数の係合孔(または窪み)77であり、第2係合部は従動ギア52に構成される係合孔77と同数の係合突起76で構成されている。各係合孔77の間には能動ギア51の径方向に延びる第1係合部が構成され、第2係合部すなわち係合突起76と、第2係合部が周方向で当接することにより動力伝達を行う。ただし、先に述べるとおり本実施形態では係合突起76が係合孔77と係合しない場合、係合突起76が第1係合部と軸方向で当接し軸方向移動が阻止される場合がある。なお、能動ギア51に係合突起を設け、従動ギア52に係合孔を設ける構成でもよい。後述する変速ギアの構成においても同様であり便宜上突起と記載するものの、孔の間に構成される径方向に延びる係合部でも突部であってもよい。
入力軸41上で第1シフター72すなわち3速駆動ギア48が軸方向基準位置に位置し、出力軸42上で第2シフター81すなわち4速被駆動ギア52が軸方向基準位置に位置すると、入力軸41上の4速駆動ギア47は出力軸42上の4速被駆動ギア52に噛み合い、入力軸41上の3速駆動ギア48は出力軸42上の3速被駆動ギア53に噛み合う。4速駆動ギア47および2速駆動ギア49は入力軸41に対して相対回転する。ロー被駆動ギア51および3速被駆動ギア53は出力軸42に対して相対回転する。この状態では入力軸41から出力軸42に回転力は伝達されない。多段変速機39ではニュートラル状態が確立される。
ニュートラル状態から出力軸42上で第2シフター81すなわち4速被駆動ギア52が軸方向基準位置から第3作動位置に移動すると、第3嵌め合い機構83で第2シフター81の駆動突部84はロー被駆動ギア51の被駆動突部85に噛み合う。ロー被駆動ギア51は出力軸42に結合される。このとき、第2シフター81の移動に伴って4速被駆動ギア52は入力軸41の4速駆動ギア47から外れる。4速駆動ギア47および4速被駆動ギア52の噛み合いは解消される。ロー被駆動ギア51に伝達される入力軸41の回転力は出力軸42を駆動する。こうして多段変速機39では1速が確立される。
ニュートラル状態から入力軸41上で第1シフター72すなわち3速駆動ギア48が軸方向基準位置から第2作動位置に移動すると、第2嵌め合い機構77で第1シフター72の駆動突部78は2速駆動ギア49の被駆動突部79に噛み合う。2速駆動ギア49は入力軸41に結合される。このとき、第1シフター72の移動に伴って3速駆動ギア48は出力軸42の3速被駆動ギア53から外れる。3速駆動ギア48および3速被駆動ギア53の噛み合いは解消される。入力軸41の回転力は2速駆動ギア49に伝達される。入力軸41の2速駆動ギア49は出力軸42の2速被駆動ギア54に噛み合うことから、入力軸41の回転力は出力軸42を駆動する。こうして多段変速機39では2速が確立される。
ニュートラル状態から出力軸41上で第2シフター81すなわち4速被駆動ギア52が軸方向基準位置から第4作動位置に移動すると、第4嵌め合い機構86で第2シフター81の駆動突部87は3速被駆動ギア53の被駆動突部88に噛み合う。3速被駆動ギア53は出力軸42に結合される。このとき、第2シフター81の移動に伴って4速被駆動ギア52は入力軸41の4速駆動ギア47から外れる。4速駆動ギア47および4速被駆動ギア52の噛み合いは解消される。3速被駆動ギア53に伝達される入力軸41の回転力は出力軸42を駆動する。こうして多段変速機39では3速が確立される。
ニュートラル状態から入力軸41上で第1シフター72すなわち3速駆動ギア48が軸方向基準位置から第1作動位置に移動すると、第1嵌め合い機構74で第1シフター72の駆動突部75は4速駆動ギア47の被駆動突部76に噛み合う。4速駆動ギア47は入力軸41に結合される。このとき、第1シフター72の移動に伴って3速駆動ギア48は出力軸42の3速被駆動ギア53から外れる。3速駆動ギア48および3速被駆動ギア53の噛み合いは解消される。入力軸41の回転力は4速駆動ギア47に伝達される。入力軸41の4速駆動ギア47は出力軸42の4速被駆動ギア52に噛み合うことから、入力軸41の回転力は出力軸42を駆動する。こうして多段変速機39では4速が確立される。
図4に示されるように、多段変速機39にはシフト機構89が組み込まれる。シフト機構89は入力軸41の軸心に平行に延びる案内軸91を備える。案内軸91にはシフトフォーク92が軸方向に変位自在に支持される。シフトフォーク92は案内軸91の軸心に直交する方向に延びて入力軸41上の第1シフター72に連結される。
シフト機構89はシフトドラム93を備える。シフトドラム93は案内軸91の軸心に平行に延びる回転軸線Rx回りで回転自在に支持される。シフトドラム93の外周面にはカム溝94が刻まれる。カム溝94は回転角に応じてシフトドラム93の軸方向に変位する。カム溝94には、案内軸91の軸心に直交する方向にシフトフォーク92から突き出るピン95が挿入される。こうしてシフトドラム93の回転に応じて案内軸91に沿ってシフトフォーク92は移動する。シフトフォーク92の移動は入力軸41上で第1シフター72の移動を引き起こす。同様なシフト機構は出力軸42上の第2シフター81にも関連づけられる。
図5に示されるように、シフト機構89は、シフトドラム93の回転軸線Rxに同軸にシフトドラム93に結合されるドラムセンター97と、ドラムセンター97に係り合って、スピンドル98回りの揺動に基づき回転軸線Rx回りに段階的にドラムセンター97を駆動するマスターアーム99とを備える。ドラムセンター97はシフトドラム93に回転軸線Rx回りに相対回転不能に連結される。ドラムセンター97には、回転軸線Rx回りに等間隔に6つのピン101が固定される。ピン101は回転軸線Rxに平行に軸心を有する。ドラムセンター97の外周には周方向に隣接するピン101同士の間で内側に窪む凹部102が区画される。凹部102にはストッパーローラー103が嵌まる。ストッパーローラー103は回転軸線Rxに平行な回転軸回りで回転する。ストッパーローラー103には凹部102に向かって押しつけられるばね力が作用する。こうして凹部102ごとに回転軸線Rx回りでドラムセンター97の姿勢は保持される。
マスターアーム99は、1対の駆動片104を有する変位プレート(図示されず)を支持するアーム本体106を備える。変位プレートは、回転軸線Rxに直交する方向DRに変位自在にアーム本体106に連結される。変位プレートには回線軸線Rxに向かってばね力が作用する。変位プレートはばね力の働きで基準位置に保持される。基準位置ではスピンドル98の軸心回りの駆動片104の軌道上にピン101は位置する。アーム本体106がスピンドル98回りで揺動すると、一方の駆動片104は1つのピン101に接触し、ドラムセンター97に回転力を加える。アーム本体106が元の姿勢に復帰すると、ピン101は駆動片104のカム面104aに接触し、変位プレートはばね力に抗して回転軸線Rxから遠ざかる。こうしてピン101は駆動片104を通過する。再びストッパーローラー103が凹部102に嵌まり、ドラムセンター97の姿勢は設定される。
マスターアーム99のアーム本体106にはスピンドル98に装着される捻りばね107が連結される。捻りばね107の2つの線形域107aはアーム本体106のばね受け片108を挟み込む。線形域107aの間にはストッパーピン109が配置される。マスターアーム99のアーム本体106が回転すると、一方の線形域107aの移動はストッパーピン109で制止される。他方の線形域107aはばね受け片108とともに移動し、スピンドル98回りで線形域107a同士の間隔は広がっていく。アーム本体106への拘束力が解放されると、捻りばね107の弾性力で線形域107a同士は接近していき、アーム本体106は元の姿勢に復帰する。
図6に示されるように、クラッチアウター56は、前述の被駆動ギア45bを外周に保持するクラッチギア111と、入力軸41の軸心回りで相対角変化可能にクラッチギア111に支持される保持部材112とを備える。クラッチギア111は多段変速機39の入力軸41の軸心回りに相対回転自在にクラッチハブ57に支持される。クラッチギア111はクランクシャフト31上の駆動ギア45aに噛み合う。駆動ギア45aは、クランクケース26の第2ケース半体26bから突き出るクランクシャフト31に相対回転不能に結合される。こうして規定の減速比でクランクシャフト31の回転はクラッチギア111に伝達される。
保持部材112には複数枚のフリクション板113が保持される。フリクション板113は入力軸41の軸方向に変位可能に保持部材112に支持される。フリクション板113は保持部材112とともに回転する。保持部材112とクラッチギア111との間には、周方向に衝撃を吸収する弦巻ばね114およびダンパー115が配置される。クランクシャフト31の動力はクラッチギア111を経て入力軸41の軸心回りに保持部材112に伝達される。
クラッチハブ57は相対回転不能に入力軸41に支持される。クラッチハブ57は、入力軸41に相対回転不能に装着されるガイド筒116と、ワッシャー117を介してガイド筒116に軸方向から押し当てられる保持部材118とを備える。ガイド筒116にクラッチギア111は相対回転自在に支持される。保持部材118の外周はクラッチアウター56の保持部材112で囲まれる。保持部材118には複数枚のクラッチ板119が保持される。クラッチ板119は入力軸41の軸方向に相対変位可能に保持部材118に支持される。クラッチ板119はフリクション板113同士の間に挟まれる。
摩擦クラッチ55は圧力板121およびクラッチリフター122を備える。圧力板121は入力軸41の軸方向に変位自在にクラッチハブ57に装着される。圧力板121はクラッチハブ57のフランジ57aとの間にフリクション板113およびクラッチ板119を挟み込む。圧力板121にはクラッチリフター122のリフター板123が締結される。リフター板123およびクラッチハブ57の間にはクラッチばね124が挟まれる。クラッチばね124はクラッチハブ57のフランジ57aに対して圧力板121を押し付ける弾性力を発揮する。クラッチばね124の働きでフリクション板113およびクラッチ板119は摩擦接合される。こうした摩擦接合に基づきクラッチアウター56はクラッチハブ57に結合される。
リフター板123にはリフターロッド125が連結される。リフターロッド125に対して入力軸41の軸心回りにリフター板123の相対回転は確保される。クラッチレバー23の操作に連動してリフターロッド125がクラッチばね124の弾性力に抗して押し込まれると、フリクション板113およびクラッチ板119の間で密着は解消される。摩擦クラッチ55は切断される。
多段変速機39には、入力軸41の軸方向にフリクション板103を駆動するプッシュユニット127が組み込まれる。プッシュユニット127は、入力軸41の軸心に平行に変位自在にクランクケース26に支持されるプッシュロッド128を備える。プッシュロッド128はマスターアーム99のストッパーピン109に同軸にストッパーピン109を貫通する。
プッシュロッド128の先端はクランクケースカバー129に連結される。クランクケースカバー129はクランクケース26の外側でACGスターター58や摩擦クラッチ55を覆う。クランクケースカバー129の内側には、プッシュロッド128の軸方向に変位自在にプッシュロッド128の先端を受け入れるボス131が形成される。ボス131の摺動孔131aにプッシュロッド128の先端は挿入される。こうしてプッシュロッド128はクランクケース26およびクランクケースカバー129に両持ち支持の支持強度で支持される。
プッシュユニット128は、フリクション板113に当接するリング状部材132を備える。リング状部材132はクラッチアウター56の保持部材112の外周を囲む。リング状部材132は例えば入力軸41回りで周方向全域でフリクション板113に向き合わせられる。ここでは、複数のフリクション板113のうち外端に配置されるフリクション板113aは圧力板121から最も遠い位置に位置する。外端のフリクション板113aは他のフリクション板113よりも大きい最大外形に構成される。外端のフリクション板113aには径方向外端にプッシュユニット127のリング状部材132が当接する当接部133が構成される。当接部133は、クラッチアウター56の外端のフリクション板113aを保持する保持部112より径方向において外方に構成される。加えて、外端のフリクション板113aは最大外形がクラッチアウター56の最大外形と略同一径であるとともに、プッシュロッド128の端部に結合されたリング状部材132も略同一径にて構成されている。
リング状部材132はプッシュロッド128の軸心の方向に変位可能にプッシュロッド128に連結される。プッシュロッド128には、先端とリング状部材132との間に挟まれる弾性部材134が装着される。弾性部材134は、フリクション板113およびクラッチ板119の間で摩擦接合を確立する方向にリング状部材132を付勢する。
プッシュロッド128には、クランクケース26の内側で、シフトドラム93のカム溝135に連結されるカムピン136が固定される。カムピン136はシフトドラム93の回転軸線Rxに直交する方向に軸心を有する。カムピン136はカム溝135に挿入される。カム溝135は、多段変速機39でニュートラル状態が確立される際にカム溝94で確立される回転角位置に対応してシフトドラム93の回転軸線Rxの方向に変位する。カム溝136はプッシュロッド128に固有にシフトドラム93の外面に刻まれればよい。シフトドラム93の回転中にカムピン136の動きはカム溝135で案内される。シフトドラム93が回転軸線Rx回りで回転すると、カム溝135のカムプロファイルに基づき軸方向にプッシュロッド128は変位する。
図7に示されるように、リング状部材132はクラッチハブ57の外周を途切れなく囲む。リング状部材132の内径はクラッチハブ57の外径よりも大きく設定される。リング状部材132はプッシュロッド128回りで相対回転不能にプッシュロッド128に支持されることが望まれる。
走行中、摩擦クラッチ55ではフリクション板113およびクラッチ板119が摩擦接合する。クラッチハブ57はクラッチアウター56に連結される。多段変速機39では1速、2速、3速または4速のいずれかが確立される。クランクシャフト31の動力は摩擦クラッチ55および多段変速機39を経て決められた減速比で後輪WRに伝達される。
停止中、多段変速機39でニュートラル状態が確立されれば、運転者はクラッチレバー23を解放し摩擦クラッチ55を接続することができる。摩擦クラッチ55の接続に先立って、運転者は、いちど摩擦クラッチ55を切断し、多段変速機39でニュートラル状態を確立する。運転者が再びクラッチレバー23を解放すると、摩擦クラッチ55が再び接続状態に移行し、制御回路は多段変速機39のニュートラル状態および摩擦クラッチ55の再接続を検出する。制御回路はエンジン25でアイドルストップを実施する。例えばスロットル弁に制御回路から信号が供給され、エンジン25の燃焼動作は停止する。クランクシャフト31の回転は停止する。このとき、多段変速機39の入力軸41に駆動力は入力されないことから、駆動ギア46〜49の回転は停止する。アイドルストップ時、自動二輪車11は静止状態にあることから、多段変速機39の出力軸42にも駆動力は入力されない。被駆動ギア51〜54の回転も停止する。
走行の再開に先立って運転者はシフト操作に基づき多段変速機39で例えば1速を確立する。シフト操作に先立って運転者はクラッチレバー23を操作する。こうして摩擦接合が再び解除されて摩擦クラッチ55が切断されると、制御回路はACGスターター58に指令信号を供給する。ACGスターター58は指令信号を受けてクランクシャフト31を駆動する。一次減速機構45の働きでクラッチアウター56は回転する。
このとき、シフトドラム93がニュートラル状態を確立しているシフトドラム93の位置に伴い、カム溝135のカムプロファイルに基づきプッシュロッド128はクランクケースカバー129から遠ざかるように移動している。プッシュロッド128の移動後の位置に応じてリング状部材132は外端のフリクション板113aに当接している。フリクション板113およびクラッチ板119は弾性部材134の弾性力に基づき接触している。これにより、クラッチアウター56からクラッチハブ57に動力の一部が伝達され、クラッチアウター56とクラッチハブ57との間で連れ回りを発生しやすい状況を作り出すことが可能になる。ロー駆動ギア46は回転し、ロー駆動ギア46に噛み合うロー被駆動ギア51(能動ギア)は回転する。出力軸42は静止状態であるから、従動ギアを有する第2シフター64とロー被駆動ギア51との間で相対回転は引き起こされる。軸方向基準位置から第3作動位置に第2シフター73(従動ギア)が移動する際に、ロー被駆動ギア51の被駆動突部(第1係合突部)77が第2シフター73の駆動突部(第2係合突部)76に当たって第2シフター73の軸方向移動が阻止される場合でも、相対回転によってロー被駆動ギア51の被駆動突部(第1係合突部)77は第2シフター73の駆動突部(第2係合突部)76の隣接空間に進入することができる。こうして駆動突部(第2係合突部)76および被駆動突部(第1係合突部)77の間で円滑に結合状態は確立されることができる。特に、クラッチアウター56およびクランクケース26の間にキックスターター用の被駆動ギア69や中間ギア71が配置される場合には、それらに邪魔されずにプッシュユニット127は配置されることができる。
本実施形態では、シフトドラム93が回転軸線Rx回りで特定の位置に動作すると、第1シフター64の駆動突部67、71は4速駆動ギア47の被駆動突部68および2速駆動ギア49の被駆動突部72からそれぞれ離脱し、第2シフター73の駆動突部76、78はロー被駆動ギア51の被駆動突部77および3速被駆動ギア53の被駆動突部79からそれぞれ離脱する。駆動突部67、71、76、78および被駆動突部68、72、77、79の組み合わせで変更される変速ギアではニュートラル状態が確立される。こうしたニュートラル位置にシフトドラム93がある場合に、いわゆる能動ギアを有する第1シフター64および第2シフター73は従動ギア(4速駆動ギア47、2速駆動ギア49、ロー被駆動ギア51および3速被駆動ギア53)には係合しておらず、その状態でフリクション板113とクラッチ板119との接合が解除された場合に、クラッチハブ57と第1および第2シフター64、73とは動力源もしくは出力先と係合しない状況になる。そのような場合においても、本構造によれば、クラッチハブ57に動力の一部を伝えることができるとともに、シフトドラム93が必要な位置に応じプッシュロッド128の動作を解除することができる。
多段変速機39では、複数のフリクション板113のうち外端に配置されるフリクション板113aは他のフリクション板113より最大外形が大きく構成され、外端のフリクション板113の半径方向外端にプッシュユニット127のリング状部材132が当接する当接部133が構成されている。その結果、クラッチハブ57側(の保持部材112など)に与える影響を少なくできるとともに、当接部133の構成を容易に構成でき、プッシュロッド128がアクセスしやすい簡素な構成とすることができる。
外端のフリクション板113aとプッシュユニット127のリング状部材132とが当接する部分は、クラッチアウター56の外端のフリクション板113aを保持する保持部材112より径方向において外方に構成されている。こうしてクラッチアウター56の径方向外側にて当接することで容易にプッシュユニット127がアクセスするができる。
前述のように、プッシュユニット127は、外端に配置されたフリクション板113aに当接するリング状部材132と、リング状部材132を支持するプッシュロッド118と、プッシュロッド118にリング状部材132を付勢する弾性部材134とを備える。リング状部材132によりフリクション板113aを駆動することで、比較的均等に、確実に力を加えることができるとともに、弾性部材134により付勢することでシフトドラム93に不要な力が掛かることを低減することができる。加えて、車体振動などでリング状部材132に振動が伝わったとしても弾性部材134を配置しているため、振動を低減し、フリクション板113aとの不要な接触を低減することができる。
前述のように、マスターアーム99はシフトドラム93に近接して配置され、そのためストッパーピン109も近接して配置される。そのストッパーピン109の中を貫通してプッシュロッド128を通すことで、クランクケース26内の他の可動部品に影響を与えることなくクランクケース26までシフトドラム93からの駆動力を伝えることができる。また、ストッパーピン109を貫通してプッシュロッド128を通すことで長くなり、振動の影響を受けやすいプッシュロッド128の支持部を長く構成することが容易になり、強固に支持することが可能になる。
なお、前述の実施形態では、プッシュロッド128はフリクション板113に当接するが、クラッチ板119に当接する構成をとってもよい。その場合には、クラッチアウター56の一部を切り欠き、クラッチ板119にプッシュロッド128を当接させる構成など、適宜対応可能である。
25…エンジン、26…クランクケース、26b…第2ケース半体、31…クランクシャフト、39…動力伝達装置(多段変速機)、41…第1軸(入力軸)、42…第2軸(出力軸)、51…能動ギア(ロー被駆動ギア)、52…従動ギア(4速被駆動ギア)、56…クラッチアウター、57…クラッチハブ、58…スターターモーター(ACGスターター)、84…第2係合突部(駆動突部)、85…第1係合突部(被駆動突部)、93…シフトドラム、94…カム溝、99…マスターアーム、109…ストッパーピン、112…保持部材、113…フリクション板、113a…(外端の)フリクション板、119…クラッチ板、127…プッシュユニット、128…プッシュロッド、132…リング状部材、133…(フリクション板の)当接部、134…弾性部材、135…カム溝。
Claims (7)
- 動力入力側に連結されて、フリクション板(113)を保持するクラッチアウター(56)と、
前記クラッチアウター(56)に対して相対回転自在に支持されて、前記フリクション板(113)に摩擦接合可能なクラッチ板(119)を保持するクラッチハブ(57)と、
前記クラッチハブ(57)に連結されて、第1係合突部(85)を有する能動ギア(51)と、
軸方向に変位可能に前記能動ギア(51)に同軸に支持されて、軸方向基準位置から軸方向に作動位置に移動すると前記第1係合突部(85)に係り合う第2係合突部(84)を有する従動ギア(52)と、
前記能動ギア(51)と前記従動ギア(52)との組み合わせにより変更される複数の変速ギア(46、47、51、52)を有し、
前記変速ギア(46、47、51、52)を稼動させるシフトドラム(93)を備えた動力伝達装置(39)において、
前記シフトドラム(93)に複数のカム溝(94、135)が形成され、
前記カム溝(135)に連結されるプッシュロッド(128)が配置され、
前記プッシュロッド(128)は前記シフトドラム(93)の動作に伴い、前記フリクション板(113)と前記クラッチ板(119)との間を狭めるように軸方向に前記フリクション板(113)もしくは前記クラッチ板(119)を駆動する
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1に記載の動力伝達装置において、前記プッシュロッド(128)は、前記シフトドラム(93)が前記能動ギア(51)と前記従動ギア(52)とが係合しないニュートラル位置にある場合に、前記シフトドラム(93)に構成された前記カム溝(135)により稼動されることを特徴とする動力伝達装置。
- 請求項1または2に記載の動力伝達装置において、前記クラッチアウター(56)には複数の前記フリクション板(113)が保持され、前記複数のフリクション板(113)のうち外端に配置される前記フリクション板(113a)は他のフリクション板(113)より最大外形が大きく構成され、前記外端のフリクション板(113a)の半径方向外端に前記プッシュロッド(128)が当接する当接部(133)が構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
- 請求項3に記載の動力伝達装置において、前記外端のフリクション板(113a)と前記プッシュロッド(128)の当接部とが当接する部分は、前記クラッチアウター(56)の前記外端のフリクション板(113a)を保持する保持部(112)より径方向において外方に構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の動力伝達装置において、前記プッシュロッド(128)は、端部に配置された前記フリクション板(113a)に当接するリング状部材(132)と、前記リング状部材(132)を支持するロッド部(128)と、前記ロッド部(128)に前記リング状部材(132)を付勢する弾性部材(134)とを備えることを特徴とする動力伝達装置。
- 請求項5に記載の動力伝達装置において、前記シフトドラム(93)を稼動させるマスターアーム(99)がクランクケース(26)に配置され、前記マスターアーム(99)と係合するマスターアームストッパーピン(109)がクランクケース(26)に固定され、前記ロッド部(128)の略中央部は、前記マスターアームストッパーピン(109)を貫通して配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
- 請求項2に記載の動力伝達装置において、
前記能動ギア(51)および前記従動ギア(52)を含む駆動ギアまたは被駆動ギア(46、47、48、49)を支持する第1軸(41)、並びに、前記駆動ギアまたは前記被駆動ギアに噛み合い可能な被駆動ギアまたは駆動ギア(51、52、53、54)を支持する第2軸(42)を含む多段変速機で、前記第1軸(41)および前記第2軸(42)の間で動力の伝達を切断するニュートラル状態が確立され、前記フリクション板(113)および前記クラッチ板(119)の間で摩擦接合が確立されると、エンジン(25)の燃焼動作を停止する制御回路と、
前記エンジン(25)のクランクシャフト(31)に接続されて、前記ニュートラル状態で前記摩擦接合が再び解除されると前記制御回路からの指令信号を受けてクランクシャフト(31)を自動始動するスターターモーター(58)とを備えることを特徴とする動力伝達装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016190282A JP2018054011A (ja) | 2016-09-28 | 2016-09-28 | 動力伝達装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016190282A JP2018054011A (ja) | 2016-09-28 | 2016-09-28 | 動力伝達装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018054011A true JP2018054011A (ja) | 2018-04-05 |
Family
ID=61835578
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016190282A Pending JP2018054011A (ja) | 2016-09-28 | 2016-09-28 | 動力伝達装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018054011A (ja) |
-
2016
- 2016-09-28 JP JP2016190282A patent/JP2018054011A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3853926B2 (ja) | 車両用動力伝達装置 | |
JP4849542B2 (ja) | 変速制御装置および鞍乗型車両 | |
JP5731884B2 (ja) | 車両の動力伝達制御装置 | |
JP6315812B2 (ja) | パワーユニットの駆動トルクダンパ構造 | |
JP6239768B2 (ja) | パワーユニットの変速駆動装置 | |
WO2017168615A1 (ja) | 動力伝達装置 | |
JP4773201B2 (ja) | 変速装置 | |
JP6218771B2 (ja) | 車両の変速装置 | |
JP5801068B2 (ja) | 手動変速機 | |
JP2009121594A (ja) | 車両用パワーユニットおよびそれを備えた車両 | |
JP2007261357A (ja) | 変速機におけるパーキングロック装置 | |
JP2007022148A (ja) | ハイブリッド車両における変速制御装置 | |
JP6487887B2 (ja) | 動力伝達装置 | |
JP5210210B2 (ja) | 車両用パワーユニット | |
JP3158452U (ja) | 車両用パワーユニットおよびそれを備えた車両 | |
JP2018054011A (ja) | 動力伝達装置 | |
JP5065127B2 (ja) | 前後進切替機構付鞍乗り型車両 | |
JP2008115884A (ja) | 変速機の変速駆動機構 | |
JP4583390B2 (ja) | 車両用動力伝達装置 | |
JP2009243562A (ja) | 前後進切替機構 | |
JP7130713B2 (ja) | 車両の変速装置 | |
JP5065126B2 (ja) | 副変速機付鞍乗り型車両 | |
JP2023023204A (ja) | 手動変速機 | |
JP2001208196A (ja) | 自動二輪車用電動式変速装置 | |
JP2021050813A (ja) | 車両用変速装置 |