また、近年、制震壁のより大きな制震力を得るために、収容部内に複数の仕切り壁で仕切られた複数の収容室と、これらの複数の収容室の各々に収容された内壁から成る複数の内壁を有する制震壁が用いられている。以下、図28及び図29を参照しながら、複数の内壁を有する制震壁のうち、第1〜第4内壁IW1〜IW4から成る4つの内壁と、第1〜第3仕切り壁CW1〜CW3から成る3つの仕切り壁を有する制震壁の従来の製造方法について説明する。
この従来の製造方法では、図28(a)に示すように、まず、フランジFLが立てた状態で配置され、互いに溶接により一体に取り付けられた収容部の一対の側壁、底壁(いずれも図示せず)及び一方の外壁OW1が寝かせて配置されるとともに、この外壁OW1の上方に第1内壁IW1を寝かせて配置した状態で、第1内壁IW1の上端が、裏当金BM1を用いた突合わせ溶接によって、フランジFLの下面に取り付けられる。次いで、フランジFLの下面と第1内壁IW1の上端との突合わせ溶接による溶接部分の欠陥の有無が、非破壊検査(例えば超音波探傷検査)によって判定され、欠陥が有ると判定された場合には、この溶接部分に対して補修溶接が行われる。なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「溶接部分」には、溶接金属の部分や、フランジFLなどの母材のうちの溶接金属の近傍の部分を含む。また、図28及び図29では、断面のハッチングを省略している。
次に、図28(b)に示すように、一方の外壁OW1、フランジFL及び第1内壁IW1をそのままで、第1仕切り壁CW1が、第1内壁IW1の上方に寝かせて配置された状態で、一対の側壁及び底壁(いずれも図示せず)に溶接により取り付けられる。次いで、第2内壁IW2を第1仕切り壁CW1の上方に寝かせて配置した状態で、第2内壁IW2の上端が、裏当金BM2を用いた突合わせ溶接によって、フランジFLの下面に取り付けられる。この状態では、第2内壁IW2に対応する裏当金BM2が、第1内壁IW1の対応する裏当金BM1と反対側の面に接触している。次に、フランジFLの下面と第2内壁IW2の上端との突合わせ溶接による溶接部分の欠陥の有無が、第1内壁IW1と同様に超音波探傷検査によって判定され、欠陥が有ると判定された場合には、この溶接部分に対して補修溶接が行われる。
次いで、図29(a)及び(b)に示すように、以上のような第1仕切り壁CW1の取付け及び第2内壁IW2の取付け・検査が、第2仕切り壁CW2及び第3内壁IW3、ならびに第3仕切り壁CW3及び第4内壁IW4についても、対応する裏当金BM3、BM4を用いて、同様に順に行われる。次に、フランジFLや第1〜第4内壁IW1〜IW4などをそのままで、他方の外壁OW2が、第4内壁IW4の上方に寝かせて配置された状態で、一対の側壁及び底壁に溶接により取り付けられる。また、図29(b)に示すように、第1〜第4内壁IW1〜IW4とこれらにそれぞれ対応する裏当金BM1〜BM4は、交互に並んでおり、フランジFLの幅方向の一方の側には裏当金BM1が、他方の側には第4内壁IW4が、それぞれ配置されている。なお、上述したように第1〜第4内壁IW1〜IW4のフランジFLへの取付けに突合わせ溶接が用いられるのは、粘性体のせん断抵抗に起因して第1〜第4内壁IW1〜IW4に作用する引っ張り力に抗するためである。
この種の裏当金を用いた突合わせ溶接は、いわゆる完全溶込み溶接であるため、その作業に比較的長い時間を必要とする。これに対して、従来の製造方法では、図29(b)から明らかなように、ある1つの内壁のフランジの下面との溶接部分が、その隣に位置する内壁の裏当金で覆われる。このため、上述したように、複数の内壁について、フランジの幅方向の一方の側から他方の側に向かって順々に、1つの内壁の突合わせ溶接と、その溶接部分の非破壊検査とが完了してから、その隣の内壁の突合わせ溶接と、その溶接部分の非破壊検査とを行わざるを得ないので、非破壊検査をまとめて効率よく行うことができない。また、この種の非破壊検査は一般に、その信頼性を担保するために、第三者機関によって行われることが多いのに対し、上述した理由から、第三者機関による非破壊検査が、決められた作業時間内に完了しないおそれがある。以上により、従来の製造方法では、制震壁の製造効率が低下してしまう。
さらに、従来の製造方法では、上述したように、第1〜第4内壁IW1〜IW4が順に、一方の外壁OW1側から他方の外壁OW2側に、フランジFLに溶接により取り付けられる。これにより、溶接ひずみが、フランジFLにおける他方の外壁OW2側の部分に偏って発生し、そのような溶接ひずみを直すには比較的長い時間を要するため、制震壁の製造効率がさらに低下してしまう。このような溶接ひずみは、内壁の数が4未満ではそれほど問題にならないものの、4つ以上の内壁では、その数が多くなるほど、より大きくなり、ひいては、上述した不具合がより顕著になってしまう。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、フランジの下面と複数の内壁の各々の上端との溶接部分について、非破壊検査をまとめて効率よく行えるとともに、内壁の数が比較的多い場合に溶接ひずみがフランジに偏って発生するのを抑制でき、ひいては、製造効率を高めることができる制震壁及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、構造物を含む系内の第1部位と、第1部位よりも上側の第2部位との間に設けられ、構造物の振動を抑制するための制震壁であって、上方に開口した箱状に形成され、複数の収容室を有するとともに、第1部位に連結される収容部と、鋼材で構成され、水平方向に延びるとともに、第2部位に連結されるフランジと、鋼板で構成され、複数の収容室に対応して設けられた複数の内壁と、鋼材で構成され、複数の内壁に対応して設けられた裏当金と、を備え、複数の内壁の各々は、上下方向及び水平方向に延び、上端が裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けられるとともに、上端部以外の部分が、上方から対応する複数の収容室の各々に、水平方向に移動自在に収容されており、複数の内壁及び裏当金は、フランジの幅方向に、フランジの幅方向の中央部から両外側に向かって、裏当金及び内壁の順で交互に並び、フランジの幅方向の最も両外側には、複数の内壁の1つがそれぞれ配置されており、複数の収容室の各々における収容部と複数の内壁の各々との間に設けられた粘性体をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、収容部が、上方に開口した箱状に形成されるとともに、複数の収容室を有しており、構造物を含む系内の第1部位に連結される。また、鋼材で構成されたフランジが、水平方向に延びており、第1部位よりも上側の第2部位に連結される。さらに、鋼板で構成されるとともに、複数の収容室に対応して設けられた複数の内壁の各々が、上下方向及び水平方向に延びており、その上端が裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けられている。また、複数の内壁の各々の上端部以外の部分が、上方から対応する複数の収容室の各々に、水平方向に移動自在に収容されている。
さらに、複数の収容室の各々における収容部と複数の内壁の各々との間には、粘性体が設けられている。以上の構成により、制震壁では、例えば地震などにより構造物が振動するのに伴い、第1部位と第2部位の間で水平方向の相対変位が発生すると、それに伴って複数の内壁が収容部に対して水平方向に移動し、複数の内壁と収容部の間の粘性体のせん断抵抗が、収容部及び複数の内壁を介して第1及び第2部位にそれぞれ作用することにより、構造物の振動が抑制される。
また、上述した構成によれば、複数の内壁及び裏当金は、フランジの幅方向に、フランジの幅方向の中央部から両外側に向かって、裏当金及び内壁の順で交互に並んでおり、最も両外側には、前述した従来の場合(図29(b)参照)と異なり、複数の内壁の1つがそれぞれ配置されている。このため、1つの内壁の突合わせ溶接と溶接部分の非破壊検査とが完了してからその隣の内壁の突合わせ溶接と溶接部分の非破壊検査とを行わずに、複数の内壁のうち、内側の裏当金を中心としてフランジの幅方向に互いに対称に配置される2つの内壁について、それらの突合わせ溶接が完了した後に、それらのフランジとの溶接部分の非破壊検査をまとめて効率よく行うことができ、それにより、制震壁の製造効率を高めることができる。
特に、内壁の数が4つ以上で比較的多い場合には、フランジの幅方向の内側から両外側に向かって順々に、互いに対称に配置される複数組の2つの内壁とフランジとの溶接部分の非破壊検査を、それらの突合わせ溶接の完了ごとに、まとめて効率よく行うことができ、それにより、上述した制震壁の製造効率を高められるという効果を、有効に得ることができる。
また、内壁の数が4つ以上で比較的多い場合に、上述した構成によって、裏当金を用いた突合わせ溶接によるフランジへの複数の内壁の取付けを、フランジの幅方向の中央部から両外側に向かって順に行うことができ、それにより、前述した従来の製造方法と異なり、溶接ひずみがフランジの幅方向の一方の側の部分に偏って発生するのを抑制することができる。これにより、フランジの溶接ひずみを直すのに要する時間を短くすることができるので、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の制震壁において、複数の内壁の数は、4以上であり、裏当金は、複数の内壁の数よりも1少ない複数の裏当金で構成され、複数の裏当金のうち、フランジの幅方向の中央部に位置する単一の裏当金である内側裏当金を共通として、複数の内壁のうちの内側裏当金の両隣にそれぞれ位置する第1内壁及び第2内壁がフランジの下面に取り付けられていることを特徴とする。
この構成によれば、複数の内壁の数は、4以上であり、裏当金は、複数の内壁の数よりも1少ない複数の裏当金で構成され、フランジの幅方向の中央部に位置する裏当金である内側裏当金を共通として、複数の内壁のうちの内側裏当金の両隣にそれぞれ位置する第1内壁及び第2内壁がフランジの下面に取り付けられている。このため、請求項1に係る発明の説明で述べたように、制震壁の製造効率を高められるという効果を、有効に得ることができる。また、第1及び第2内壁を取り付けるための裏当金が、単一の共通の内側裏当金で構成されているので、それぞれ別個の裏当金で構成した場合と比較して、制震壁の部品点数を削減できるとともに、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の制震壁を製造する製造方法であって、フランジの下面におけるフランジの幅方向の中央部に、裏当金としての第1内側裏当金及び第2内側裏当金を一体に設ける内側裏当金製造工程と、内側裏当金製造工程の完了後に、複数の内壁の1つである第1内壁を第1内側裏当金に溶接により仮付けする第1内壁仮付け工程と、内側裏当金製造工程の完了後に、複数の内壁の他の1つである第2内壁を第2内側裏当金に溶接により仮付けする第2内壁仮付け工程と、第1内壁仮付け工程の完了後に、第1内壁の上端を、第1内側裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付ける第1内壁本付け工程と、第2内壁仮付け工程の完了後に、第2内壁の上端を、第2内側裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付ける第2内壁本付け工程と、第1及び第2内壁本付け工程の完了後に、フランジの下面と第1及び第2内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の各々の欠陥の有無を、非破壊検査により判定する第1判定工程と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、内側裏当金製造工程において、第1及び第2内側裏当金が、フランジの下面におけるフランジの幅方向の中央部に一体に設けられ、内側裏当金製造工程の完了後に、第1及び第2内壁仮付け工程においてそれぞれ、第1及び第2内壁が、第1及び第2内側裏当金に溶接によりそれぞれ仮付けされるとともに、第1及び第2内壁仮付け工程の完了後に、第1及び第2内壁本付け工程においてそれぞれ、第1及び第2内壁の上端が、第1及び第2内側裏当金をそれぞれ用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けられる。また、第1及び第2内壁本付け工程の完了後に、第1判定工程において、フランジの下面と第1及び第2内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の各々の欠陥の有無が、非破壊検査により判定されるので、請求項1に係る発明の説明で述べたように、これらの溶接部分の非破壊検査をまとめて効率よく行うことができ、それにより、制震壁の製造効率を高めることができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の制震壁の製造方法において、第1及び第2内側裏当金が、互いに共通の単一の裏当金で構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1及び第2内側裏当金が、互いに共通の単一の裏当金で構成されているので、互いに別個の裏当金で構成した場合と比較して、制震壁の部品点数を削減できるとともに、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載の制震壁の製造方法において、複数の内壁の数は、4以上であり、裏当金は、第1及び第2内側裏当金を含む複数の裏当金で構成され、第1判定工程の完了後に、フランジの幅方向の最も両外側にそれぞれ位置する内壁の両外側に、複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の1つの裏当金及び他の1つの裏当金を、それぞれ配置した状態で、フランジの下面に取り付ける裏当金取付工程と、裏当金取付工程により取り付けられた1つの裏当金に、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の1つの内壁を仮付けする第1外側内壁仮付け工程と、裏当金取付工程により取り付けられた他の1つの裏当金に、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の他の1つの内壁を仮付けする第2外側内壁仮付け工程と、第1外側内壁仮付け工程の完了後に、1つの内壁の上端を、1つの裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付ける第1外側内壁本付け工程と、第2外側内壁仮付け工程の完了後に、他の1つの内壁の上端を、他の1つの裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付ける第2外側内壁本付け工程と、第1及び第2外側内壁本付け工程の完了後に、フランジと1つの内壁及び他の1つの内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の各々の欠陥の有無を非破壊検査により判定する第2判定工程と、をさらに備え、裏当金取付工程、第1及び第2外側内壁仮付け工程、第1及び第2外側内壁本付け工程、ならびに第2判定工程から成る中間組立品製造工程を、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の内壁、及び複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の裏当金に対して、繰り返し行うことを特徴とする。
この構成によれば、複数の内壁の数は、4以上であり、裏当金は、第1及び第2内側裏当金を含む複数の裏当金で構成されている。また、裏当金取付工程において、第1判定工程の完了後に、フランジの幅方向の最も両外側にそれぞれ位置する内壁の両外側に、複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の1つの裏当金及び他の1つの裏当金が、それぞれ配置されるとともに、その状態で、フランジの下面に取り付けられる。さらに、第1及び第2外側内壁仮付け工程においてそれぞれ、裏当金取付工程により取り付けられた1つの裏当金及び他の1つの裏当金に、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の1つの内壁及び他の1つの内壁がそれぞれ仮付けされる。
また、第1及び第2外側内壁仮付け工程の完了後に、第1及び第2外側内壁本付け工程においてそれぞれ、1つの内壁及び他の1つの内壁の上端が、1つの裏当金及び他の1つの裏当金をそれぞれ用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けられる。さらに、第1及び第2外側内壁本付け工程の完了後に、第2判定工程において、フランジの下面と1つの内壁及び他の1つの内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の各々の欠陥の有無が、非破壊検査により判定される。以上の裏当金取付工程、第1及び第2外側内壁仮付け工程、第1及び第2外側内壁本付け工程、ならびに第2判定工程から成る中間組立品製造工程が、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の内壁、及び複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の裏当金に対して、繰り返し行われる。
以上により、請求項1に係る発明の説明で述べたように、第1及び第2内側裏当金を中心として両外側に互いに対称に配置される複数組の2つの内壁について、第1及び第2内壁を含めて、内側から外側に向かって順々に、それらの突合わせ溶接が完了するごとに、それらの内壁のフランジとの溶接部分の非破壊検査を、まとめて効率よく行うことができる。これにより、制震壁の製造効率を高められるという効果を、有効に得ることができる。また、上述した複数の工程によって、請求項1に係る発明の説明で述べたように、複数の内壁が、フランジの下面の幅方向の中央部から両外側に向かって順に取り付けられるので、溶接ひずみがフランジの幅方向の一方の側の部分に偏って発生するのを抑制でき、ひいては、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
請求項6に係る発明は、請求項3又は4に記載の制震壁を製造する製造方法であって、第1内壁本付け工程では、内側裏当金製造工程、第1及び第2内壁仮付け工程により互いに一体化されたフランジ、第1及び第2内側裏当金、ならびに第1及び第2内壁を、第1内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、第1内側裏当金を用いた突合わせ溶接によるフランジの下面への第1内壁の上端の取付けを行い、第2内壁本付け工程では、第1内壁本付け工程の完了後に、内側裏当金製造工程、第2内壁仮付け工程及び第1内壁本付け工程により互いに一体化されたフランジ、第1及び第2内側裏当金、ならびに第1及び第2内壁を、裏返し、第2内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、第2内側裏当金を用いた突合わせ溶接によるフランジの下面への第2内壁の上端の取付けを行うことによって、互いに一体化されたフランジ、第1及び第2内側裏当金、ならびに第1及び第2内壁を含む中間組立品を製造し、第1判定工程では、製造された中間組立品を、第2内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と第2内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無の判定を行った後に、中間組立品を、裏返し、第1内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と第1内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無の判定を行うことを特徴とする。
この構成によれば、第1内壁本付け工程において、内側裏当金製造工程、第1及び第2内壁仮付け工程により互いに一体化されたフランジ、第1及び第2内側裏当金、ならびに第1及び第2内壁を、第1内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、第1内側裏当金を用いた突合わせ溶接によるフランジの下面への第1内壁の上端の取付けが行われる。また、第2内壁本付け工程において、第1内壁本付け工程の完了後に、内側裏当金製造工程、第2内壁仮付け工程及び第1内壁本付け工程により互いに一体化されたフランジ、第1及び第2内側裏当金、ならびに第1及び第2内壁を、裏返し、第2内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、第2内側裏当金を用いた突合わせ溶接によるフランジの下面への第2内壁の上端の取付けが行われることによって、互いに一体化されたフランジ、第1及び第2内側裏当金、ならびに第1及び第2内壁を含む中間組立品が製造される。
このように、第1及び第2内壁本付け工程においてそれぞれ、互いに一体化されたフランジ、第1及び第2内側裏当金、ならびに第1及び第2内壁を、第1及び第2内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、突合わせ溶接によるフランジの下面への第1及び第2内壁の上端の取付けをそれぞれ行うので、これらの突合わせ溶接を容易に行うことができ、ひいては、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
また、第1判定工程において、第2内壁本付け工程で製造された中間組立品を、第2内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と第2内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無の判定を行った後に、中間組立品を、裏返し、第1内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と第1内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無の判定が行われる。このように、フランジの下面と第1及び第2内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無の判定をそれぞれ、第1及び第2内壁が上側に位置するように中間組立品を寝かせて配置した状態で行うので、容易に行うことができ、ひいては、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
さらに、第2内壁本付け工程の完了時には、中間組立品は、第2内壁が上側に位置するように寝かせて配置されているのに対し、第1判定工程において、まず、中間組立品を、第2内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と第2内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無を判定するので、第1判定工程の開始時に、中間組立品を裏返さずに、そのまま当該判定を行うことができる。
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の制震壁の製造方法において、複数の内壁の数は、4以上であり、裏当金は、第1及び第2内側裏当金を含む複数の裏当金で構成され、第1判定工程の完了後、中間組立品におけるフランジの幅方向の最も両外側にそれぞれ位置する内壁の両外側に、複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の1つの裏当金及び他の1つの裏当金を、それぞれ配置した状態で、フランジの下面に取り付ける裏当金取付工程と、裏当金取付工程により取り付けられた1つの裏当金に、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の1つの内壁を仮付けする第1外側内壁仮付け工程と、裏当金取付工程により取り付けられた他の1つの裏当金に、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の他の1つの内壁を仮付けする第2外側内壁仮付け工程と、裏当金取付工程、第1及び第2外側内壁仮付け工程により一体化された中間組立品、1つの裏当金、他の1つの裏当金、1つの内壁及び他の1つの内壁を、1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、1つの内壁の上端を、1つの裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付ける第1外側内壁本付け工程と、裏当金取付工程、第2外側内壁仮付け工程及び第1外側内壁本付け工程により一体化された中間組立品、1つの裏当金、他の1つの裏当金、1つの内壁及び他の1つの内壁を、裏返し、他の1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、他の1つの内壁の上端を、他の1つの裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けることによって、互いに一体化された中間組立品、1つの裏当金、他の1つの裏当金、1つの内壁及び他の1つの内壁を含む新たな中間組立品を製造する第2外側内壁本付け工程と、第2外側内壁本付け工程により製造された中間組立品を、他の1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と他の1つの内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の欠陥の有無を非破壊検査により判定した後に、中間組立品を、裏返し、1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と1つの内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の欠陥の有無を非破壊検査により判定する第2判定工程と、をさらに備え、裏当金取付工程、第1及び第2外側内壁仮付け工程、第1及び第2外側内壁本付け工程、ならびに第2判定工程から成る中間組立品製造工程を、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の内壁、及び複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の裏当金に対して、繰り返し行うことを特徴とする。
この構成によれば、複数の内壁の数は、4以上であり、裏当金は、第1及び第2内側裏当金を含む複数の裏当金で構成されている。また、第1判定工程の完了後、裏当金取付工程において、中間組立品におけるフランジの幅方向の最も両外側にそれぞれ位置する内壁の両外側に、複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の1つの裏当金及び他の1つの裏当金が、それぞれ配置された状態で、フランジの下面に取り付けられる。さらに、第1及び第2外側内壁仮付け工程においてそれぞれ、裏当金取付工程により取り付けられた1つの裏当金及び他の1つの裏当金に、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の1つの内壁及び他の1つの内壁が、それぞれ仮付けされる。
また、第1外側内壁本付け工程において、裏当金取付工程、第1及び第2外側内壁仮付け工程により一体化された中間組立品、1つの裏当金、他の1つの裏当金、1つの内壁及び他の1つの内壁を、1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、1つの内壁の上端が、1つの裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けられる。さらに、第2外側内壁本付け工程において、裏当金取付工程、第2外側内壁仮付け工程及び第1外側内壁本付け工程により一体化された中間組立品、1つの裏当金、他の1つの裏当金、1つの内壁及び他の1つの内壁を、裏返し、他の1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、他の1つの内壁の上端を、他の1つの裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けることによって、互いに一体化された中間組立品、1つの裏当金、他の1つの裏当金、1つの内壁及び他の1つの内壁を含む新たな中間組立品が製造される。
また、第2判定工程において、第2外側内壁本付け工程により製造された中間組立品を、他の1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と他の1つの内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の欠陥の有無を、非破壊検査により判定した後に、中間組立品を、裏返し、1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と1つの内壁の上端との突合わせ溶接による溶接部分の欠陥の有無が、非破壊検査により判定される。さらに、上述した裏当金取付工程、第1及び第2外側内壁仮付け工程、第1及び第2外側内壁本付け工程、ならびに第2判定工程から成る中間組立品製造工程が、複数の内壁のうちの第1及び第2内壁以外の内壁、及び複数の裏当金のうちの第1及び第2内側裏当金以外の裏当金に対して、繰り返し行われる。
以上により、4つ以上の内壁のうち、第1及び第2内側裏当金を中心として両外側に互いに対称に配置される複数組の2つの内壁について、第1及び第2内壁を含めて、内側から外側に向かって順々に、突合わせ溶接が完了するごとに、2つの内壁のフランジとの溶接部分の非破壊検査を、まとめて効率よく行うことができる。これにより、制震壁の製造効率を高められるという効果を、有効に得ることができる。また、上述した複数の工程によって、請求項1に係る発明の説明で述べたように、複数の内壁が、フランジの下面の幅方向の中央部から両外側に向かって順に取り付けられるので、溶接ひずみがフランジの幅方向の一方の側の部分に偏って発生するのを抑制でき、ひいては、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
また、第1及び第2外側内壁本付け工程においてそれぞれ、互いに一体化された中間組立品、1つの裏当金、他の1つの裏当金、1つの内壁及び他の1つの内壁を、1つの内壁及び他の1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、突合わせ溶接によるフランジの下面への1つの内壁及び他の1つの内壁の上端の取付けをそれぞれ行うので、これらの突合わせ溶接を容易に行うことができ、ひいては、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
さらに、第1判定工程において、フランジの下面と1つの内壁及び他の1つの内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無の判定をそれぞれ、1つの内壁及び他の1つの内壁が上側に位置するように中間組立品を寝かせて配置した状態で行うので、容易に行うことができ、ひいては、制震壁の製造効率をさらに高めることができる。
さらに、第2外側内壁本付け工程の完了時には、中間組立品は、他の1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置されているのに対し、第2判定工程において、まず、中間組立品を、他の1つの内壁が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、フランジの下面と他の1つの内壁の上端との溶接部分の欠陥の有無を判定するので、第2判定工程の開始時に、中間組立品を裏返さずに、そのまま当該判定を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。以下の説明では便宜上、図1の手前側及び奥側をそれぞれ「前」及び「後」とし、図1の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」、上側及び下側をそれぞれ「上」及び「下」とする。図1及び図2に示すように、実施形態による制震壁1は、上方に開口する箱状に形成された収容部2を備えており、比較的小型に構成されている。収容部2は、前後の外壁3、4と、前外壁3と後外壁4の間に互いに等間隔に設けられた3つの仕切り壁5A、5B、5Cと、前後の外壁3、4及び仕切り壁5A、5B、5Cの左端部に一体に設けられた左側壁6と、前後の外壁3、4及び仕切り壁5A、5B、5Cの右端部に一体に設けられた右側壁7と、前後の外壁3、4及び仕切り壁5A、5B、5Cの下端部に一体に設けられた底壁8を有している。以下、仕切り壁5A、5B、5Cを総称する場合、「仕切り壁5」という。
前後の外壁3、4、仕切り壁5、左右の側壁6、7及び底壁8はいずれも、矩形状の鋼板で構成され、前後の外壁3、4及び仕切り壁5は、上下方向及び左右方向に延びており、左右の側壁6、7は縦長に、底壁8は横長に、それぞれ形成されている。また、前後の外壁3、4の上端部には、溜まり部3a、4aがそれぞれ設けられており、溜まり部3a、4aは、前後にそれぞれ突出するとともに、仕切り壁5よりも上方に若干、延びている。
さらに、前後の外壁3、4及び仕切り壁5には、前後方向に貫通する挿入孔3b、4b、5aがそれぞれ形成されている(図2には前外壁3のもののみ図示。他については後述する図6〜図26参照)。各挿入孔3b、4b、5aには、共通のボルト9が前方から挿入されており、ボルト9には、後方からナット10が締め付けられている。これらのボルト9及びナット10は、後述する粘性体21の圧力により前後の外壁3、4が前方及び後方にそれぞれ膨らむのを防止するためのものである。なお、これらの挿入孔3b、4bには、後述する粘性体21の漏れを防止するための環状のシール(図示せず)が設けられている。さらに、前後の外壁3、4及び仕切り壁5の各々の下端部には、前後方向に貫通する粘性体注入口が形成されており、前後の外壁3、4の粘性体注入口の各々は、蓋(図示せず)で密閉されている。
また、前外壁3の挿入孔3bの縁部と前側の仕切り壁5Aの挿入孔5aの縁部との間、仕切り壁5Aの挿入孔5aの縁部と中央の仕切り壁5Bの挿入孔5aの縁部との間、仕切り壁5Bの挿入孔5aの縁部と後側の仕切り壁5Cの挿入孔5aの縁部との間、及び、仕切り壁5Cの挿入孔5aの縁部と後外壁4の挿入孔4bの縁部との間にはそれぞれ、リング状のスペーサ11(図1及び図2には図示せず。後述する図5〜図26参照)が設けられている。これらのスペーサ11、11、11、11は、前外壁3と前側の仕切り壁5Aとの間、仕切り壁5Aと中央の仕切り壁5Bとの間、仕切り壁5Bと後側の仕切り壁5Cとの間、及び、仕切り壁5Cと後外壁4との間に、所定の間隔をそれぞれ保持するためのものである。
さらに、中央の仕切り壁5Bの前面及び後面の上端部以外の縁部(左端部、右端部及び下端部)、ならびに、前側の仕切り壁5Aの前面及び後側の仕切り壁5Bの後面の上端部以外の縁部(左端部、右端部及び下端部)にはそれぞれ、鋼材で構成された位置決め部材12が一体に設けられている。これらの位置決め部材12、12、12、12は、前後の外壁3、4及び仕切り壁5A、5B、5Cを前後方向に位置決めすることによって、それらの間に、スペーサ11、11、11、11と協働して所定の間隔をそれぞれ保持するためのものである。各位置決め部材12は、長さ方向に直交する断面が角形状の棒形の鋼材で構成され、その幅がスペーサ11の長さと等しくなっており、対応する仕切り壁5の上端部以外の縁部を縁取るように配置されている。
また、収容部2内には、前外壁3、前側の仕切り壁5A、左右の側壁6、7及び底壁8によって第1収容室2aが画成されており、仕切り壁5A、中央の仕切り壁5B、左右の側壁6、7及び底壁8によって第2収容室2bが、仕切り壁5B、後側の仕切り壁5C、左右の側壁6、7及び底壁8によって第3収容室2cが、それぞれ画成され、仕切り壁5C、後外壁4、左右の側壁6、7及び底壁8によって第4収容室2dが画成されている。さらに、底壁8の前端部及び後端部には、上下方向に貫通する複数のボルト孔が形成されており、これらのボルト孔は互いに左右方向に並んでいる。
また、制震壁1は、矩形状の鋼板で構成されたフランジ15と、上述した収容部2内に、上下方向及び左右方向に移動自在に部分的に収容された前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19と、3つの裏当金20A、20B、20Cを備えている。以下、裏当金20A、20B、20Cを総称する場合、「裏当金20」という。フランジ15は、横長に形成されており、底壁8と同じ前後方向及び左右方向の長さで平行に延びている。また、フランジ15の前端部及び後端部には、上下方向に貫通する複数のボルト孔が形成されており、これらのボルト孔は互いに左右方向に並んでいる。
前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19の各々は、互いに同じサイズの矩形状の鋼板で構成され、上下方向及び左右方向に延びており、その左右方向の長さが、前後の外壁3、4のそれよりも小さい。また、これらの内壁16〜19の各々の上端が、対応する裏当金20を用いた突合わせ溶接によって、フランジ15の下面に取り付けられている。裏当金20は、左右方向に延びる鋼材で構成され、その長さ方向に直交する角形状の断面を有しており、左右方向の長さが、内壁16〜19の各々のそれよりも若干、大きい。
また、内壁16〜19及び裏当金20A、20B、20Cは、フランジ15の幅方向(前後方向)に、中央部から前側に向かって中央の裏当金20B、第1内壁17、前側の裏当金20A、前内壁16の順で、中央部から後側に向かって中央の裏当金20B、第2内壁18、後側の裏当金20C、後内壁19の順で、互いに平行に交互に並んでいる。さらに、第1及び第2内壁17、18の上端は、フランジ15の幅方向の中央部に位置する裏当金20B(以下、適宜「内側裏当金20B」という)を共通として、フランジ15の下面に取り付けられている。
また、前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19は、収容部2内の前記第1収容室2a、第2収容室2b、第3収容室2c及び第4収容室2dにそれぞれ収容されており、前内壁16と第1内壁17の間、第1内壁17と第2内壁18の間、及び、第2内壁18と後内壁19の間に、対応する裏当金20によって、所定の間隔がそれぞれ保持されている。また、これらの内壁16〜19の各々の前面及び後面には、複数のスペーサ22(図1及び図2には図示せず。後述する図4及び図6〜図26参照)が取り付けられている。各スペーサ22が対応する前外壁3、仕切り壁5A、5B、5C及び後外壁4の1つに接触することによって、前外壁3と前内壁16との間、前内壁16と前側の仕切り壁5Aとの間、仕切り壁5Aと第1内壁17との間、第1内壁17と中央の仕切り壁5Bとの間、仕切り壁5Bと第2内壁18との間、第2内壁18と後側の仕切り壁5Cとの間、仕切り壁5Cと後内壁17との間、後内壁17と後外壁4との間に、比較的小さい所定の間隔がそれぞれ保持されている。
さらに、前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19の各々には、前後方向に貫通する複数の横長の長孔16a、17a、18a、19aがそれぞれ形成されている(図1及び図2には前内壁16のもののみ図示。他については後述する図6〜図26参照)。これらの長孔16a〜19aの各々は、前記ボルト9に対応して設けられ、上下方向の幅がボルト9の径よりもかなり大きくなっており、ボルト9及びスペーサ11が挿入されている。以上の構成により、前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19は、これらの長孔16a、17a、18a、19aの範囲内で、収容部2に対して上下方向及び左右方向に移動自在である。
また、制震壁1は粘性体21をさらに備えており、粘性体21は、粘性が比較的高い流体、例えばポリイソブチレンから成る流体で構成されている。また、粘性体21は、第1収容室2aにおける前内壁16と、前外壁3、前側の仕切り壁5A、左右の側壁6、7及び底壁8との間に充填され、第2収容室2bにおける第1内壁17と、仕切り壁5A、中央の仕切り壁5B、左右の側壁6、7及び底壁8との間、及び、第3収容室2cにおける第2内壁18と、仕切り壁5B、後側の仕切り壁5C、左右の側壁6、7及び底壁8との間にそれぞれ充填されるとともに、第4収容室2dにおける後内壁19と、仕切り壁5C、後外壁4、左右の側壁6、7及び底壁8との間に充填されている。
以上の構成の制震壁1は、構造物、例えば高層の建築物の上梁BUの下面に、フランジ15が、上間柱PUを介して連結されるとともに、この建築物の下梁BDの上面に、底壁8が、下間柱PDを介して連結される。上下の間柱PU、PDは、例えばH型鋼で構成されており、それらの上下のフランジの前端部及び後端部には、底壁8及びフランジ15と同様に、上下方向に貫通する複数のボルト孔が形成されている。上下の梁BU、BDは、例えばH型鋼で構成され、左右方向に水平に延びており、それらの上下のフランジの前端部及び後端部には、底壁8及びフランジ15と同様に、上下方向に貫通する複数のボルト孔が形成されている。
この場合、フランジ15の複数のボルト孔及び上間柱PUの下側の複数のボルト孔の各々に挿入したボルトに、ナット(いずれも図示せず)を締め付けることによって、フランジ15が上間柱PUに固定される。また、上間柱PUの上側の複数のボルト孔及び上梁BUの複数のボルト孔の各々に挿入したボルトに、ナット(いずれも図示せず)を締め付けることによって、上間柱PUが上梁BUに固定される。
同様に、底壁8の複数のボルト孔及び下間柱PDの上側の複数のボルト孔の各々に挿入したボルトに、ナット(いずれも図示せず)を締め付けることによって、底壁8が下間柱PDに固定される。また、下間柱PDの下側の複数のボルト孔及び下梁BDの複数のボルト孔の各々に挿入したボルトに、ナット(いずれも図示せず)を締め付けることによって、下間柱PDが下梁BDに固定される。
次に、図3〜図26を参照しながら、制震壁1の製造方法について説明する。まず、前述した前後の外壁3、4、仕切り壁5、左右の側壁6、7、底壁8、フランジ15、前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18、ならびに裏当金20などの制震壁1の構成部品を用意する。次いで、前後の外壁3、4及び仕切り壁5A、5B、5Cの各々の左端、右端及び下端、ならびに、前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18の上端に、後述する溶接のための開先加工を施し、レ型の開先を形成する。
次に、図3に示すように、左右の側壁6、7の下端を底壁8の左端部及び右端部に、中央の仕切り壁5Bの左端及び右端を左側壁6の右面及び右側壁7の左面の幅方向(前後方向)の中央部に、仕切り壁5Bの下端を底壁8の上面の幅方向(前後方向)の中央部に、部分溶け込み溶接によりそれぞれ取り付け、それにより、仕切り壁5B、左右の側壁6、7及び底壁8を互いに一体化する。また、仕切り壁5Bの後面の上端部以外の縁部(下端部、左端部及び右端部)に、前記位置決め部材12を溶接により取り付ける。位置決め部材12は、その長さ方向に直交する断面が四角形になっており、その仕切り壁5Bの後面の下端部に位置する部分は、底壁8の上面の幅方向の中央部に接触しており、その仕切り壁5Bの後面の左端部及び右端部に位置する部分は、左側壁6の右面及び右側壁7の左面の幅方向(前後方向)の中央部に、それぞれ接触している。なお、図3では便宜上、一部のかくれ線の図示を省略している。
次いで、図4に示すように、フランジ15の下面の幅方向(前後方向)の中央部に、内側裏当金20Bを溶接により取り付ける。内側裏当金20Bは、その長さ方向に直交する断面が四角形になっており、この場合、その上面がフランジ15の下面に接触した状態で、その前面及び後面の上端の左端部及び右端部が、フランジ15の下面の左部及び右部に溶接によりそれぞれ取り付けられる。
次に、図4に示すように、フランジ15の下面に取り付けられた内側裏当金20Bに、第2内壁18を溶接により仮付けし、それにより、フランジ15、内側裏当金20B及び第2内壁18を一体化する。この場合、第2内壁18の上端とフランジ15の下面との間に若干の隙間を存した状態で、第2内壁18の前面の上端を、内側裏当金20Bの後面に接触させる。その状態で、第2内壁18の上端を、内側裏当金20Bの後面に溶接により仮付けするとともに、第2内壁18の前面の上端部を、内側裏当金20Bの下面の後端に溶接により仮付けする。また、第2内壁18用のスペーサ22は、第2内壁18を前述したように用意する際に、その前面及び後面の所定位置に取り付けられる。このことは、前後の内壁16、19及び第1内壁17についても、同様に当てはまる。なお、図4では便宜上、第2内壁18の後面に取り付けられたスペーサ22のみを示している。
次いで、図5に示すように、後側の仕切り壁5Cを、その前面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに載置するとともに、仕切り壁5Cの挿入孔5aに、仮ボルトPBを下方から(仕切り壁5Cの後面側から)挿入する。また、挿入した仮ボルトPBに、スペーサ11を上方から緩く嵌合させ、このスペーサ11の一端を、仕切り壁5Cの挿入孔5aの前側の縁部に接触させる。なお、仮ボルトPBは、挿入孔5aやスペーサ11から抜け落ちないように、支持台(図示せず)に載置されている。
次に、図6に示すように、図4を参照して説明したようにして一体化されたフランジ15、内側裏当金20B及び第2内壁18を、その第2内壁18の前面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに上述したように載置された仕切り壁5Cに、スペーサ22を介して載置する。この状態では、上述した仮ボルトPB及びスペーサ11が、第2内壁18の長孔18aに挿入されている。
次いで、図7に示すように、図3を参照して説明したようにして一体化された中央の仕切り壁5B、左右の側壁6、7、底壁8及び位置決め部材12を、仕切り壁5Bの前面が上側に位置するように寝かせた状態で、上述したように配置された第2内壁18及び仕切り壁5Cに、スペーサ22を介して載置するとともに、仕切り壁5Bの挿入孔5aに仮ボルトPBを下方から挿入する。また、一端が後側の仕切り壁5Cの挿入孔5aの前側の縁部に接触するスペーサ11の他端を、仕切り壁5Bの挿入孔5aの後側の縁部に接触させ、仕切り壁5Bの後面に取り付けられた位置決め部材12を、後側の仕切り壁5Cの前面の上端部以外の縁部に接触させた状態で、後側の仕切り壁5Cの左端、右端及び下端を、左側壁6の右面、右側壁7の左面及び底壁8の上面に溶接によりそれぞれ仮付けするとともに、中央の仕切り壁5Bの前面の上端部以外の縁部に、位置決め部材12を溶接により取り付ける。さらに、挿入された仮ボルトPBに、スペーサ11を上方から(仕切り壁5Bの前面側から)緩く嵌合させ、このスペーサ11の一端を、仕切り壁5Bの挿入孔5aの前側の縁部に接触させる。
上記の位置決め部材12のうち、仕切り壁5Bの前面の下端部に位置する部分は、その角部が仕切り壁5Bの下端の溶接金属の分、削られており、底壁8の上面における仕切り壁5Bよりも前側の部分に接触している。また、図示しないものの、この位置決め部材12のうち、仕切り壁5Bの前面の左端部及び右端部にそれぞれ位置する部分は、左側壁6の右面及び右側壁7の左面における仕切り壁5Bよりも前側の部分に、それぞれ接触している。なお、図7と、後述する図8〜図10、図13、図14、図24及び図25では、左側壁6の図示を省略するとともに、仕切り壁5Bの前面に取り付けられた位置決め部材12や、後述する3つの位置決め部材12、12、12のうち、対応する仕切り壁5A、5B、5Cの左端部に位置する部分の図示を省略している。
次に、図8に示すように、第1内壁17を、その前面が上側に位置するように寝かせた状態で、上述したように配置された仕切り壁5Bに、スペーサ22を介して載置し、その状態で、第1内壁17を内側裏当金20Bに溶接により仮付けする。この場合、第1内壁17の上端とフランジ15の下面との間に若干の隙間を存した状態で、第1内壁17の後面の上端を、内側裏当金20Bの前面に接触させる。その状態で、第1内壁17の上端を、内側裏当金20Bの前面に溶接により仮付けするとともに、第1内壁17の後面の上端部を、内側裏当金20Bの下面の前端に溶接により仮付けする。この状態では、第1内壁17の後面の上部は、第2内壁18の前面の上部に対向し、両者が互いに平行に並んでおり、仮ボルトPBと、一端が仕切り壁5Bの前側の縁部に接触するスペーサ11が、第1内壁17の長孔17aに挿入されている。
次いで、図9に示すように、前側の仕切り壁5Aを、その前面が上側に位置するように寝かせた状態で、上述したように配置された第1内壁17及び仕切り壁5Bに、スペーサ22及び位置決め部材12をそれぞれ介して載置するとともに、仕切り壁5Aの挿入孔5aに仮ボルトPBを下方から(仕切り壁5Aの後面側から)挿入する。また、仕切り壁5Aの挿入孔5aの後側の縁部を、一端が中央の仕切り壁5Bの挿入孔5aの前側の縁部に接触しているスペーサ11の他端に接触させるとともに、仕切り壁5Aの後面の上端部以外の縁部を、仕切り壁5Bの前面の上端部以外の縁部に取り付けられた位置決め部材12にそれぞれ接触させた状態で、仕切り壁5Aの左端、右端及び下端を、左側壁6の右面、右側壁7の左面及び底壁8の上面に溶接によりそれぞれ仮付けする。以上により、仕切り壁5A、5B、5C、左右の側壁6、7、底壁8、フランジ15、第1及び第2内壁17、18、内側裏当金20B、仮ボルトPB、ならびにスペーサ11、11が互いに一体化される。
次に、図10に示すように、互いに一体化された仕切り壁5、左右の側壁6、7、底壁8、フランジ15、第1及び第2内壁17、18、内側裏当金20Bなどを、そのままの状態で、すなわち、第1内壁17の前面が上側に位置するように寝かせて定盤SFに載置した状態で、第1内壁17の上端を、内側裏当金20Bを用いた突合わせ溶接によりフランジ15の下面及び内側裏当金20Bの前面に取り付ける(本付けする)とともに、前側の仕切り壁5Aの左端、右端及び下端を、左側壁6の右面、右側壁7の左面及び底壁8の上面に部分溶け込み溶接によりそれぞれ取り付ける。
この場合、上記の突合わせ溶接及び部分溶け込み溶接を行うにあたって、フランジ15の下面への裏当金20Bの取付けのために裏当金20Bの前面に溶接された溶接金属や、第1内壁17の仮付けのためにフランジ15の下面及び内側裏当金20Bの前面に溶接された溶接金属、仕切り壁5Aの仮付けのために左右の側壁6、7及び底壁8に溶接された溶接金属が、ガウジングにより除去される。また、突き合わせ溶接には、完全溶け込み溶接が用いられる。これらのことは、後述するフランジ15の下面に第2内壁18の上端を取り付けるための突き合わせ溶接と、左右の側壁6、7及び底壁8に仕切り壁5Cを取り付けるための部分溶け込み溶接についても、同様に当てはまる。
次いで、図11に示すように、互いに一体化された仕切り壁5、左右の側壁6、7、底壁8、フランジ15、第1及び第2内壁17、18、内側裏当金20Bなどを、裏返し、第2内壁18の後面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに載置する。その状態で、第2内壁18の上端を、内側裏当金20Bを用いた突合わせ溶接によりフランジ15の下面及び内側裏当金20Bの後面に取り付ける(本付けする)とともに、後側の仕切り壁5Cの左端、右端及び下端を、左側壁6の右面、右側壁7の左面及び底壁8の上面に部分溶け込み溶接によりそれぞれ取り付け、それにより、互いに一体化された仕切り壁5A、5B、5C、左右の側壁6、7、底壁8、フランジ15、第1及び第2内壁17、18、内側裏当金20B、ならびにスペーサ11、11を含む中間組立品IAを製造する。
なお、図11と、後述する図12、図15、図19〜図23及び図26では、右側壁7の図示を省略するとともに、仕切り壁5Bの前面及び後面に取り付けられた位置決め部材12、12や、後述する2つの位置決め部材12、12のうち、対応する仕切り壁5A、5B、5Cの右端部に位置する部分の図示を省略している。
次に、中間組立品IAを、そのまま定盤SFに載置した状態で、すなわち、その第2内壁18の後面が上側に位置するように寝かせて定盤SFに載置した状態で、超音波探傷器(図示せず)を用いて、第2内壁18の上端と、フランジ15の下面及び内側裏当金20Bの後面との溶接部分W2の欠陥の有無を、超音波探傷検査により判定する。この超音波探傷器は、一般的なもので、探触子25を有しており、この超音波探傷検査では、図12に示すように、探触子25から超音波をこの溶接部分W2に発信し、発信した超音波の溶接部分W2からの反射波を探触子25で受信するとともに、この受信した反射波に基づいて、溶接部分W2の欠陥の有無が判定される。これにより、溶接部分W2に欠陥が有ると判定されたときには、この欠陥がガウジングにより除去されるとともに、補修溶接が行われる。
次いで、図13に示すように、中間組立品IAを、裏返し、その第1内壁17の前面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに載置し、その状態で、上記の超音波探傷器を用いて、第1内壁17の上端と、フランジ15の下面及び内側裏当金20Bの前面との溶接部分W1の欠陥の有無を、超音波探傷検査により判定する。この超音波探傷検査では、上述した溶接部分W2の超音波探傷検査の場合と同様、探触子25から超音波をこの溶接部分W1に発信し、発信した超音波の溶接部分W1からの反射波を探触子25で受信するとともに、この受信した反射波に基づいて、溶接部分W1の欠陥の有無が判定される。これにより、溶接部分W1に欠陥が有ると判定されたときには、この欠陥がガウジングにより除去されるとともに、補修溶接が行われる。
次に、前述した突合わせ溶接により発生したフランジ15、第1及び第2内壁17、18の溶接ひずみを、治具などを用いて直す。
次いで、図14に示すように、中間組立品IAをそのままの状態で、すなわち、中間組立品IAを、その第1内壁17の前面が上側に位置するように寝かせて定盤SFに載置した状態で、フランジ15の下面に前側の裏当金20Aを溶接により取り付ける。裏当金20Aの角部は、前記溶接部分W1の溶接金属の分、削られており、この溶接金属及び第1内壁17の前面の上端部に接触している。
また、前側の仕切り壁5Aの前面の上端部以外の縁部に、位置決め部材12を溶接により取り付ける。この位置決め部材12のうち、仕切り壁5Aの前面の下端部に位置する部分は、その角部が仕切り壁5Aの下端の溶接金属の分、削られており、底壁8の上面における仕切り壁5Aよりも前側の部分に接触している。また、図示しないものの、位置決め部材12のうち、仕切り壁5Aの前面の左端部及び右端部にそれぞれ位置する部分は、左側壁6の右面及び右側壁7の左面における仕切り壁5Aよりも前側の部分に、それぞれ接触している。
次に、図15に示すように、中間組立品IAを、裏返し、その第2内壁18の後面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに載置する。その状態で、フランジ15の下面に後側の裏当金20Cを溶接により取り付ける。裏当金20Cの角部は、前記溶接部分W2の溶接金属の分、削られており、この溶接金属及び第2内壁18の後面の上端部に接触している。
また、後側の仕切り壁5Cの後面の上端部以外の縁部に、位置決め部材12を溶接により取り付ける。この位置決め部材12のうち、仕切り壁5Cの後面の下端部に位置する部分は、その角部が仕切り壁5Cの下端の溶接金属の分、削られており、底壁8の上面における仕切り壁5Cよりも後側の部分に接触している。また、図示しないものの、位置決め部材12のうち、仕切り壁5Cの後面の左端部及び右端部にそれぞれ位置する部分は、左側壁6の右面及び右側壁7の左面における仕切り壁5Cよりも後側の部分に、それぞれ接触している。
次いで、フランジ15の左端部と左側壁6の上端部を、図16に示す吊金具31、ボルト32及びナット33を用いて互いに連結するとともに、フランジ15の右端部と右側壁7の上端部を同様に、吊金具、ボルト及びナット(いずれも図示せず)を用いて互いに連結し、それにより、フランジ15、裏当金20、第1及び第2内壁17、18と、仕切り壁5、左右の側壁6、7、及び底壁8とを、互いに相対的に動かないように一体化させる。
図16に示すように、この吊金具31は、鋼板で構成された第1金具31a及び第2金具31bを有しており、両金具31a、31bの幅は、左側壁6の幅と等しい。第1金具31aの一端部は、フランジ15の下面の左端部に溶接により取り付けられ、第1金具31aの他端部及び第2金具31bの一端部にはそれぞれ、それらの厚さ方向に貫通するとともに、幅方向に並んだ一対の挿入孔が形成されている。これらの2組の一対の挿入孔の各々に共通のボルト32を挿入し、ナット33を締め付けることによって、第1及び第2金具31a、31bが互いに連結される。また、第2金具31bの他端部にも、厚さ方向に貫通するとともに、幅方向に並んだ一対の挿入孔が形成され、左側壁6の上端部にも、その厚さ方向に貫通するとともに、幅方向(前後方向)に並んだ一対の挿入孔が形成されている。これらの2組の一対の挿入孔の各々に共通のボルト32を挿入し、ナット33を締め付けることによって、第2金具31b及び左側壁6が互いに連結される。
なお、フランジ15、裏当金20、第1及び第2内壁17、18と、仕切り壁5、左右の側壁6、7、及び底壁8とを、互いに相対的に動かないように一体化させる構成は、上述した吊金具31、ボルト32及びナット33に限らず、他の適当な構成を採用してもよい。
次に、仮ボルトPBを、仕切り壁5A、5B、5Cの挿入孔5a、5a、5a及びスペーサ11、11から外すとともに、中間組立品IAを定盤SFから下ろす。
次いで、図17に示すように、前外壁3を、その後面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに載置するとともに、前外壁3の挿入孔3bに、ボルト9を下方から(前外壁3の前面側から)挿入する。また、挿入したボルト9に、スペーサ11を上方から緩く嵌合させ、このスペーサ11の一端を、挿入孔3bの後側の縁部に接触させる。なお、ボルト9は、挿入孔3bやスペーサ11から抜け落ちないように、支持台(図示せず)に載置されている。
次に、図18に示すように、前内壁16を、その後面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに載置するとともに、定盤SFに上述したように載置された前外壁3に、スペーサ22を介して載置する。この状態では、ボルト9及びスペーサ11が、前内壁16の長孔16aに挿入されている。
次いで、図19に示すように、裏当金20A、20Cなどが取り付けられた中間組立品IAを、その後側の仕切り壁5Cの後面が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに上述したように載置された前内壁16及び前外壁3に、スペーサ22及び位置決め部材12をそれぞれ介して載置する。また、ボルト9を、前側の仕切り壁5A、中央の仕切り壁5B及び後側の仕切り壁5Cの挿入孔5a、5a、5aに挿入し、さらに前側の仕切り壁5Aと中央の仕切り壁5Bの間のスペーサ11、及び、仕切り壁5Bと後側の仕切り壁5Cの間のスペーサ11に挿入するとともに、一端が前外壁3の挿入孔3bの後側の縁部に接触しているスペーサ11の他端部を、前側の仕切り壁5Aの挿入孔5aの前側の縁部に接触させる。
さらに、前内壁16の後面の上端を、フランジ15の下面と若干の隙間を存した状態で、裏当金20Aの前面に接触させるとともに、前外壁3の後面の上端部以外の縁部を、前側の仕切り壁5Aの前面に取り付けられた位置決め部材12に接触させる。その状態で、前内壁16の上端を裏当金20Aの前面に、前内壁16の後面の上端部を裏当金20Aの下面の前端に、溶接によりそれぞれ仮付けするとともに、前外壁3の左端、右端及び下端を、左側壁6の右面、右側壁7の左面及び底壁8の上面に溶接によりそれぞれ仮付けする。
次に、図20に示すように、前外壁3や、前内壁16、中間組立品IAなどはそのままで、後内壁19を、その後面が上側に位置するように寝かせた状態で、後側の仕切り壁5Cに、スペーサ22を介して載置する。また、後内壁19の前面の上端を、フランジ15の下面と若干の隙間を存した状態で、裏当金20Cの後面に接触させ、その状態で、後内壁19の上端を裏当金20Cの後面に、後内壁19の前面の上端部を裏当金20Cの下面の後端に、溶接によりそれぞれ仮付けする。さらに、ボルト9に、スペーサ11を上方から(仕切り壁5Cの後面側から)緩く嵌合させ、このスペーサ11の一端を、仕切り壁5Cの挿入孔5aの後側の縁部に接触させる。この状態では、ボルト9と、仕切り壁5Cの挿入孔5aの後側の縁部に接触するスペーサ11とが、後内壁19の長孔19aに挿入されている。
次いで、図21に示すように、前外壁3や、前内壁16、中間組立品IA、後内壁19などはそのままで、後外壁4を、その後面が上側に位置するように寝かせた状態で、後内壁19及び仕切り壁5Cに、スペーサ22及び位置決め部材12をそれぞれ介して載置する。また、ボルト9を後外壁4の挿入孔4bに挿入し、一端が後側の仕切り壁5Cの挿入孔5aの後側の縁部に接触しているスペーサ11の他端部を、後外壁4の挿入孔4bの前側の縁部に接触させるとともに、後外壁4の上端部以外の縁部を、後側の仕切り壁5Cの後面に取り付けられた位置決め部材12に接触させる。その状態で、後外壁4の左端、右端及び下端を、左側壁6の右面、右側壁7の左面及び底壁8の上面に溶接によりそれぞれ仮付けする。
次に、図22に示すように、前後の外壁3、4や、前後の内壁16、19、中間組立品IAなどはそのままで、ボルト9に、ナット10を上方から(後外壁4の後面側から)締め付ける。以上により、前後の外壁3、4や、前後の内壁16、19、裏当金20A、20C、中間組立品IAなどが互いに一体化される。
次いで、図23に示すように、互いに一体化された前後の外壁3、4や、前後の内壁16、19、裏当金20A、20C、中間組立品IAなどをそのままの状態で、すなわち、後外壁4及び後内壁19が上側に位置するように寝かせて定盤SFに載置した状態で、後内壁19の上端を、裏当金20Cを用いた突合わせ溶接によりフランジ15の下面及び裏当金20Cの後面に取り付ける(本付けする)とともに、後外壁4の左端、右端及び下端を、左側壁6の右面、右側壁7の左面及び底壁8の上面に部分溶け込み溶接によりそれぞれ取り付ける。
この場合、上記の突合わせ溶接及び部分溶け込み溶接を行うにあたって、フランジ15の下面への裏当金20Cの取付けのために裏当金20Cの後面に溶接された溶接金属や、後内壁19の仮付けのために裏当金20Cの後面に溶接された溶接金属、後外壁4の仮付けのために左右の側壁6、7及び底壁8に溶接された溶接金属が、ガウジングにより除去される。また、突き合わせ溶接には、完全溶け込み溶接が用いられる。これらのことは、後述するフランジ15の下面に前内壁16の上端を取り付けるための突き合わせ溶接と、左右の側壁6、7及び底壁8に前外壁3を取り付けるための部分溶け込み溶接についても、同様に当てはまる。
次に、図24に示すように、互いに一体化された前後の外壁3、4や、前後の内壁16、19、裏当金20A、20C、中間組立品IAなどを、裏返し、前外壁3及び前内壁16が上側に位置するように寝かせた状態で、定盤SFに載置する。その状態で、前内壁16の上端を、裏当金20Aを用いた突合わせ溶接によりフランジ15の下面及び裏当金20Aの前面に取り付けるとともに、前外壁3の左端、右端及び下端を、左側壁6の左面、右側壁7の右面及び底壁8の上面に部分溶け込み溶接によりそれぞれ取り付けることによって、前後の外壁3、4や、前後の内壁16、19、裏当金20A、20C、中間組立品IA、ボルト9、ナット10などを、新たな中間組立品IA’として製造する。
次いで、中間組立品IA’を、そのまま定盤SFに載置した状態で、すなわち、前内壁16が上側に位置するように寝かせて定盤SFに載置した状態で、前記超音波探傷器を用いて、前内壁16の上端と、フランジ15の下面及び裏当金20Aの前面との溶接部分WFの欠陥の有無を、超音波探傷検査により判定する。この超音波探傷検査では、図25に示すように、探触子25から超音波をこの溶接部分WFに発信し、発信した超音波の溶接部分WFからの反射波を探触子25で受信するとともに、この受信した反射波に基づいて、溶接部分WFの欠陥の有無が判定される。これにより、溶接部分WFに欠陥が有ると判定されたときには、この欠陥がガウジングにより除去されるとともに、補修溶接が行われる。
次に、図26に示すように、中間組立品IA’を、裏返し、後内壁19が上側に位置するように寝かせて定盤SFに載置した状態で、超音波探傷器を用いて、後内壁19の上端と、フランジ15の下面及び裏当金20Cの後面との溶接部分WBの欠陥の有無を、超音波探傷検査により判定する。この超音波探傷検査では、探触子25から超音波をこの溶接部分WBに発信し、発信した超音波の溶接部分WBからの反射波を探触子25で受信するとともに、この受信した反射波に基づいて、溶接部分WBの欠陥の有無が判定される。これにより、溶接部分WBに欠陥が有ると判定されたときには、この欠陥がガウジングにより除去されるとともに、補修溶接が行われる。
次いで、前述した突合わせ溶接により発生したフランジ15及び前後の内壁16、19の溶接ひずみを、治具などを用いて直す。
次に、中間組立品IA’を、定盤SFから下ろすとともに、フランジ15が上側に位置するように立てた状態で、作業場に配置する。その状態で、前後の外壁3、4、仕切り壁5、左右の側壁6、7及び底壁8で前述したように構成された第1〜第4収容室2a〜2dに、前後の外壁3、4の粘性体注入口から水道水を注入し、第1〜第4収容室2a〜2dを洗浄するとともに、液面が前後の外壁3、4の前記溜まり部3a、4aの所定位置に位置するのに必要な水道水の水量を確認する。
次いで、第1〜第4収容室2a〜2dから水道水を排出し、第1〜第4収容室2a〜2dを十分に乾燥させた後、第1〜第4収容室2a〜2dに、上述したようにして確認した水量の分の粘性体21を、前後の外壁3、4の粘性体注入口から注入する。この粘性体21の注入の完了後、これらの粘性体注入口を前記蓋により密閉する。
次に、前後の内壁16、19に設けられたホルダの各々に、カバー(いずれも図示せず)を取り付ける。これらのカバーは、溜まり部3a、4a内の粘性体21に、水や埃などの異物が上方から混入するのを防止するためのものであり、上記のホルダは、前後の内壁16、19を用意する際に、それらの前面及び後面の上部に設けられる。
以上により、制震壁1が完成する。なお、前述した吊金具31、ボルト32及びナット33(右側のものも同様)は、制震壁1を上下の梁BU、BDなどの対象物に連結するまでは、取り付けられた状態に保持され、連結した後に、取り外される。このように吊金具31、ボルト32及びナット33が取り外されることによって、フランジ15、前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18は、前後の外壁3、4や、仕切り壁5、左右の側壁6、7などから成る収容部2に対して、前述したように移動自在になる。
なお、前述したように、制震壁1は、比較的小型に構成されているため、その重量が比較的小さい。このため、これまでに説明した制震壁1の製造工程において、各種の構成部品を定盤SFに載置したり、一体化された中間組立品IAなどの構成部品を裏返したりする作業は、作業者の人力や補助的な装置を用いて行われる。
以上のように、実施形態による制震壁1では、収容部2が、上方に開口した箱状に形成されるとともに、第1〜第4収容室2a〜2dを有しており、建築物の下梁BDに連結される。また、鋼材で構成されたフランジ15が、左右方向に延びており、下梁BDよりも上側の上梁BUに連結される。さらに、鋼板で構成されるとともに、第1〜第4収容室2a〜2dに対応して設けられた前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19の各々が、上下方向及び左右方向に延びており、その上端が裏当金20を用いた突合わせ溶接によりフランジ15の下面に取り付けられている。また、これらの内壁16〜19の各々の上端部以外の部分が、上方から対応する第1〜第4収容室2a〜2dの各々に、左右方向に移動自在に収容されている。
さらに、第1〜第4収容室2a〜2dの各々における収容部2と前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19の各々との間には、粘性体21が充填されている。以上の構成により、制震壁1では、例えば地震などにより建物が振動するのに伴い、上下の梁BU、BDの間で左右方向の相対変位が発生すると、それに伴ってこれらの内壁16〜19が収容部2に対して左右方向に移動し、粘性体21のせん断抵抗が、内壁16〜19及び収容部2を介して上下の梁BU、BDにそれぞれ作用することにより、建物の振動が抑制される。
また、前内壁16、第1内壁17、第2内壁18、後内壁19及び裏当金20A、20B、20Cは、フランジ15の幅方向(前後方向)に、フランジ15の幅方向の中央部から両外側に向かって、裏当金及び内壁の順で交互に並んでおり、最も両外側には、前述した従来の場合(図29(b)参照)と異なり、前後の内壁16、19がそれぞれ配置されている。
また、図4、図6、図8、図10及び図11を参照して説明したように、まず、フランジ15の幅方向の中央部に位置する裏当金である内側裏当金20Bがフランジ15の下面に取り付けられた後、第1及び第2内壁17、18が、内側裏当金20Bに溶接により仮付けされ、さらにその後、第1及び第2内壁17、18の上端が、内側裏当金20Bを用いた突合わせ溶接によりフランジ15の下面に取り付けられ、それにより、中間組立品IAが製造される。その後、図12及び図13を参照して説明したように、突合わせ溶接によるフランジ15の下面と第1及び第2内壁17、18の上端との溶接部分W1、W2の欠陥の有無が、超音波探傷検査により判定される。
その後、図14及び図15を参照して説明したように、前側の裏当金20A及び後側の裏当金20Cが、第1及び第2内壁17、18の両外側にそれぞれ配置された状態で、フランジ15の下面に取り付けられ、さらにその後、図19及び図20を参照して説明したように、前後の内壁16、19が、前側及び後側の裏当金20A、20Bに仮付けされる。その後、図23及び図24を参照して説明したように、前後の内壁16、19が、前側及び後側の裏当金20A、20Bをそれぞれ用いた突合わせ溶接によりフランジ15の下面に取り付けられ、それにより、新たな中間組立品IA’が製造される。
以上により、従来の場合と異なり、1つの内壁の突合わせ溶接と溶接部分の超音波探傷検査とが完了してからその隣の内壁の突合わせ溶接と溶接部分の超音波探傷検査とを行わずに、内側裏当金20Bを中心として互いに対称に配置された2組の2つの内壁について、すなわち、第1及び第2内壁17、18ならびに前内壁16及び後内壁19について、それらの突合わせ溶接が完了した後に、それらのフランジ15との溶接部分W1、W2、WF、WBの超音波探傷検査をまとめて効率よく行うことができる。したがって、制震壁1の製造効率を高められるという効果を有効に得ることができる。
また、上述したように、前内壁16、第1内壁17、第2内壁18、後内壁19が、前述した従来の製造方法と異なり、フランジ15の下面の幅方向の中央部から両外側に向かって順に取り付けられるので、溶接ひずみがフランジ15の幅方向の一方の側の部分に偏って発生するのを抑制することができる。これにより、フランジ15の溶接ひずみを直すのに要する時間を短くすることができるので、制震壁1の製造効率をさらに高めることができる。
さらに、第1及び第2内壁17、18を取り付けるための裏当金が、単一の共通の内側裏当金20Bで構成されているので、それぞれ別個の裏当金で構成した場合と比較して、制震壁1の部品点数を削減できるとともに、制震壁1の製造効率をさらに高めることができる。
また、図10及び図11を参照して説明したように、互いに一体化されたフランジ15、内側裏当金20B、第1及び第2内壁17、18を、第1及び第2内壁17、18が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、突合わせ溶接によるフランジ15の下面への第1及び第2内壁17、18の上端の取付けをそれぞれ行うので、これらの突合わせ溶接を容易に行うことができ、ひいては、制震壁1の製造効率をさらに高めることができる。
また、図12及び図13を参照して説明したように、フランジ15の下面と第1及び第2内壁17、18との溶接部分W1、W2の欠陥の有無の判定をそれぞれ、第1及び第2内壁17、18が上側に位置するように中間組立品IAを寝かせて配置した状態で行うので、容易に行うことができ、ひいては、制震壁1の製造効率をさらに高めることができる。さらに、突合わせ溶接によるフランジ15の下面への第2内壁18の上端の取付けが完了した時には、中間組立品IAは、第2内壁18が上側に位置するように寝かせて配置されているのに対し、この突合わせ溶接による取付けに続いて、フランジ15の下面と第2内壁18との溶接部分W2の欠陥の有無を判定するので、この判定を、中間組立品IAを裏返さずに、そのまま行うことができる。
また、図23及び図24を参照して説明したように、互いに一体化された中間組立品IA、裏当金20A、20B、及び前後の内壁16、19を、前後の内壁16、19が上側に位置するように寝かせて配置した状態で、突合わせ溶接によるフランジ15の下面への前後の内壁16、19の上端の取付けをそれぞれ行うので、これらの突合わせ溶接を容易に行うことができ、ひいては、制震壁1の製造効率をさらに高めることができる。
さらに、図25及び図26を参照して説明したように、フランジ15の下面と前後の内壁16、19との溶接部分WF、WBの欠陥の有無の判定をそれぞれ、前後の内壁16、19が上側に位置するように中間組立品IA’を寝かせて配置した状態でそれぞれ行うので、容易に行うことができ、ひいては、制震壁1の製造効率をさらに高めることができる。また、突合わせ溶接によるフランジ15の下面への前内壁16の上端の取付けが完了したときには、中間組立品IA’は、前内壁16が上側に位置するように寝かせて配置されているのに対し、この突合わせ溶接による取付けに続いて、フランジ15の下面と前内壁16の上端との溶接部分WFの欠陥の有無を判定するので、この判定を、中間組立品IA’を裏返さずに、そのまま行うことができる。
また、図5〜図15及び図17〜図26を参照して説明したように、前後の外壁3、4及び仕切り壁5ならびに前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18を、それらの主面(前面又は後面)が上側に位置するように寝かせた状態で上下方向に重ねるとともに、スペーサ11、位置決め部材12及びスペーサ22を対応する壁の主面に接触させた状態で、左右の側壁6、7及び底壁8への前後の外壁3、4及び仕切り壁5の取付け、ならびに、フランジ15への前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18の取付けが行われる。これにより、第1及び第2内壁17、18などの各壁に作用する重力によって、スペーサ11、位置決め部材12及びスペーサ22を対応する壁の主面に確実に接触させた状態で、すなわち、各壁を前後方向に確実に位置決めした状態で、フランジ15などの対象物に各壁を適切に取り付けることができる。
次に、図27を参照しながら、実施形態の変形例による制震壁の製造方法に関し、実施形態の製造方法と異なる工程について説明する。この変形例では、突合わせ溶接によるフランジ15への第1及び第2内壁17、18の取付けと、突合わせ溶接によるフランジ15への前後の内壁16、19の取付けの際に、フランジ15、第1及び第2内壁17、18ならびに前後の内壁16、19が、溶接ひずみにより変形しないように、図27に示す拘束具41や一対の錘42、42を用いて拘束される。
この拘束具41は、図27に示すように、一対の本体部41a、41a、ボルト41b、41b及びナット41c、41cを有している。各本体部41aは、金属製の棒材で構成され、前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18の各々の左右方向の長さよりも大きい長さを有しており、その長さ方向に直交する断面が矩形状になっている。また、一対の本体部41a、41aの一方の長さ方向の中央部には、長さ方向に直交する方向に斜めに突出する突出部41dが一体に設けられており、一対の本体部41a、41aの各々の長さ方向の一端部及び他端部には、挿入孔が形成されている。また、一対の錘42、42の各々は、比重が比較的大きい金属製の棒で構成されている。
突合わせ溶接によるフランジ15への第1内壁17の取付けの際には、図27に示すように、一対の本体部41a、41aの一方と他方によって、第1及び第2内壁17、18を、フランジ15の幅方向に挟み込んだ状態で、一対のボルト41b、41bの一方を一対の本体部41a、41aの一端部の挿入孔に挿入し、一対のボルト41b、41bの他方を一対の本体部41a、41aの他端部の挿入孔に挿入するとともに、各ボルト41bにナット41cがきつく締め付けられる。これにより、第1及び第2内壁17、18が、フランジ15の幅方向に、拘束具41の一対の本体部41a、41aで挟み込まれ、拘束される。また、一方の本体部41aの突出部41dが、フランジ15の下面の前縁に接触する。さらに、一対の錘42、42が、フランジ15の前縁と、上側に位置する第1内壁17の前面とに、斜めに延びた状態で接触するように立てかけられる。以上のような状態は、フランジ15への第1内壁17の突合わせ溶接が完了してから、溶接部分W1の溶接金属の熱が完全に冷めるような時間が経過するまで、継続される。
一方、図示しないものの、突合わせ溶接によるフランジ15への第2内壁18の取付けの際には、一対の本体部41a、41aの一方と他方によって、第2及び第1内壁18、17を、フランジ15の幅方向に挟み込んだ状態で、一対のボルト41b、41bの一方を一対の本体部41a、41aの一端部の挿入孔に挿入し、一対のボルト41b、41bの他方を一対の本体部41a、41aの他端部の挿入孔に挿入するとともに、各ボルト41bにナット41cがきつく締め付けられる。これにより、第2及び第1内壁18、17が、フランジ15の幅方向に、拘束具41の本体部41a、41aで挟み込まれ、拘束される。また、一方の本体部41aの突出部41dが、フランジ15の下面の後縁に接触する。さらに、一対の錘42、42が、フランジ15の後縁と、上側に位置する第2内壁18の前面とに、斜めに延びた状態で接触するように立てかけられる。以上のような状態は、フランジ15への第2内壁18の突合わせ溶接が完了してから、溶接部分W2の溶接金属の熱が完全に冷めるような時間が経過するまで、継続される。
以上のような拘束具41による第1及び第2内壁17、18の拘束によって、両者17、18の突合わせ溶接の完了後、それらの溶接部分W1、W2の溶接金属が収縮する(ひずむ)に起因して第1及び第2内壁17、18がフランジ15の幅方向の外方に向かって互いに離れるように変形するのが、防止される。
また、突出部41dが、フランジ15の下面の前縁及び後縁にそれぞれ接触し、錘42、42が、フランジ15の下面の前縁及び第1内壁17の上面に接触するとともに、フランジ15の下面の後縁及び第2内壁18の上面に接触することで、突出部41d及び錘42、42がつっかえ棒のように機能することによって、第1及び第2内壁17、18の突合わせ溶接の完了後、それらの溶接部分W1、W2の溶接金属の収縮に起因してフランジ15の前端部及び後端部が第1及び第2内壁17、18側に湾曲するようにそれぞれ変形するのが、防止される。
また、突合わせ溶接によるフランジ15への前後の内壁16、19の取付けの際にも、拘束具41及び錘42、42が、第1及び第2内壁17、18の場合と同様にして、前後の内壁16、19に適用される。これにより、それらの溶接部分WF、WBの溶接金属の収縮に起因して前後の内壁16、19がフランジ15の幅方向の外方に向かって互いに離れるように変形したり、フランジ15の前端部及び後端部が前後の内壁16、19側に湾曲するようにそれぞれ変形したりするのが、防止される。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明における複数の内壁を前内壁16、第1内壁17、第2内壁18及び後内壁19で構成しており、その数が4であるが、内壁の数はこれに限らず、複数であれば、いくつでもよい。例えば、内壁の数が2の場合には、前後の仕切り壁(5A、5C)に代えて前後の外壁(3、4)を用いて、図3〜図13及び図16を参照して説明した製造工程を同様に行うことなどにより、制震壁が製造される。また、内壁の数が3の場合には、例えば、前内壁(16)を削除するとともに前側の仕切り壁(5A)に代えて前外壁(3)を用いるか、あるいは、後内壁(19)を削除するとともに後側の仕切り壁(5C)に代えて後外壁(4)を用いて、図3〜図26を参照して説明した製造工程を同様に行うことにより、制震壁が製造される。
さらに、内壁の数が5の場合には、例えば、図21を参照して説明した製造工程について、後外壁(4)の代わりに1つの仕切り壁を底壁(8)などに仮付けした後、図23〜図26を参照して説明した製造工程を同様に行うことによって、新たな中間組立品を製造する。次いで、1つの裏当金を、後内壁(19)の後側に配置した状態でフランジ(15)の下面に取り付け、1つの内壁を、この裏当金に仮付けするとともに、これを用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付け、その溶接部分の欠陥の有無を非破壊検査により検査する。次に、底壁などへの後外壁の取付けを行い、ボルト(9)にナット(10)を締め付けるとともに、収容室(2)内への粘性体(21)の注入を前述したようにして行うことにより、制震壁が製造される。
また、内壁の数が6以上の偶数(n)の場合には、例えば、フランジの幅方向の内側に位置するn−2個の内壁などの構成部品について、図3〜図16を参照して説明した製造工程を、仮ボルト(PB)を抜き差ししながらフランジ(15)の幅方向の内側から外側に向かって、同様にして繰り返し行い、さらに、残りの最も両外側の2つの内壁や両外側の外壁などの構成部品について、図17〜図26を参照して説明した製造工程を行うことによって、制震壁が製造される。さらに、内壁の数が7以上の奇数(n+1)の場合には、例えば、これらの複数の内壁のうち、フランジの幅方向の後端部以外の部分に位置するn個の内壁などの構成部品については、内壁の数が6以上の偶数の場合と同様の方法で組み立てられ、残りの1つの内壁などの構成部品が、上述した内壁の数が5の場合と同様の方法で組み立てられる。
また、実施形態では、前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18と、前後の外壁3、4及び仕切り壁5とを組み合わせながら、制震壁1を製造しているが、裏当金を用いた突合わせ溶接によるフランジへの複数の内壁の取付けと、それらの溶接部分の非破壊検査が完了した後に、互いに一体化されたフランジ、裏当金及び複数の内壁に、前後の外壁や仕切り壁を組み合わせながら、制震壁を製造してもよい。さらに、実施形態では、前後の内壁16、19、第1及び第2内壁17、18を、寝かせて配置した状態で、フランジ15に取り付けているが、クレーンなどでフランジを動かないように吊り下げるとともに、内壁を立てた状態で、裏当金に仮付けするとともに、裏当金を用いた突合わせ溶接によりフランジの下面に取り付けてもよい。その場合には、底壁(8)などが定盤に載置されるとともに、前後の外壁(3、4)及び仕切り壁(5)が、内壁と同様に立てた状態で底壁などに取り付けられる。
また、実施形態では、第1内壁17が前側に、第2内壁18が後側に、それぞれ位置しているが、これとは逆に、第1内壁17が後側に、第2内壁18が前側に、それぞれ位置していてもよい。さらに、実施形態では、フランジ15の下面に裏当金20を溶接により一体に設けているが、フランジ及び裏当金を鋳造により互いに一体成形してもよい。あるいは、ボルトを、裏当金及びフランジの一方を介して裏当金及びフランジの他方にねじ込むことによって、フランジの下面に裏当金を一体に設けてもよい。あるいは、裏当金及びフランジの一方に設けた凹部に、裏当金及びフランジの他方に設けた凸部を嵌合させることによって、フランジの下面に裏当金を一体に設けてもよい。また、実施形態では、第1及び第2内壁17、18を取り付けるための裏当金(本発明における第1及び第2内側裏当金)を、互いに共通の単一の内側裏当金20Bで構成しているが、互いに別個の裏当金で構成してもよい。
さらに、実施形態では、溶接部分W1、W2、WF、WBの欠陥の有無を判定するための非破壊検査は、超音波探傷検査であるが、他の適当な検査、例えば放射線透過検査などでもよい。また、実施形態では、粘性体20は、ポリイソブチレンから成る流体であるが、他の適当な粘性体でもよく、例えばシリコンオイルなどでもよい。さらに、実施形態では、上下の梁BU、BDに、フランジ15及び収容部2をそれぞれ、上下の間柱PU、PDを介して連結しているが、直接、連結してもよい。また、実施形態では、本発明における第1及び第2部位はそれぞれ、建築物の下梁BD及び上梁BUであるが、構造物の他の適当な部位でもよく、例えば、構造物の地下構造体及び基礎梁でもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。