JP2018009303A - 柱梁接合構造 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1の柱梁接合構造では、ノンダイアフラム形式の鋼管柱、及びこの鋼管柱に直接接続された梁を備えている。鋼管柱は、梁が直接溶接される柱梁仕口部と、梁が接続されない非柱梁仕口部とからなる。柱梁仕口部の外径と非柱梁仕口部の外径とは、同径である。柱梁仕口部の肉厚は、非柱梁仕口部の肉厚よりも厚い。
柱梁接合構造をノンダイアフラム形式とすることで、柱梁接合構造を構成する部品点数が削減される。さらに、部品の加工数が低減されることで、柱梁接合構造の製造に要するコストが抑えられる。
梁に荷重が作用すると、柱梁接合構造に曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントにより、柱鉄骨のフランジに引っ張られる部分や圧縮される部分が生じる。柱鉄骨のウェブとフランジとを部分溶け込み溶接又は隅肉溶接で接合すると、接合部にウェブとフランジとが接合されていない切欠き状の不溶着部がある。梁に作用する荷重等により、この不溶着部から破断が生じる恐れがある。
しかしながら、完全溶け込み溶接を用いると、部分溶け込み溶接又は隅肉溶接を用いた場合に比べて以下の点で製造に要するコストが増加する。すなわち、フランジにウェブを突き合せ溶接する部分に開先加工が必要になる。開先加工により生じた空間を溶接で埋め戻しするために、溶接金属がより多く必要になる。溶接後に超音波探傷試験等を行い、不溶着部が形成されていないことを確認する必要がある。
このように、完全溶け込み溶接を用いたことによるコストの増加が、ノンダイアフラム形式とすることによるコストの低減を相殺してしまうことがある。
本発明の柱梁接合構造は、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の柱と、鉄骨造の梁と、前記柱に前記梁が接合された接合部と、を備えるノンダイアフラム形式の柱梁接合構造であって、前記柱は、ウェブの端部とフランジとが互いに溶接されたフランジ付き十字鉄骨又はH形鋼製の柱鉄骨を備え、前記柱鉄骨における前記梁が接合された前記フランジと前記ウェブとは、前記柱鉄骨の前記フランジに引張応力が作用している範囲で全強接合され、前記全強接合されていない範囲は、前記全強接合以外の方法で接合されていることを特徴としている。
この発明によれば、柱鉄骨のフランジに引張応力が作用している範囲内で柱鉄骨のフランジとウェブとが全強接合されているため、この範囲内の柱鉄骨にウェブとフランジとの不溶着部が形成されない。フランジに引張応力が作用している範囲内は不溶着部から破断が生じやすいが、この範囲内に不溶着部が形成されないため、梁に荷重が作用したときに柱鉄骨のウェブとフランジとの溶接部から破断が生じにくくなる。残りの範囲における柱鉄骨のウェブとフランジとは、全強接合以外の方法で接合する。
ただし、Bc:前記柱鉄骨の前記フランジの幅、tcf:前記柱鉄骨の前記フランジの板厚、tcw:前記柱鉄骨の前記ウェブの板厚、σcfy:前記柱鉄骨の前記フランジの降伏強さ、σcwy:前記柱鉄骨の前記ウェブの降伏強さ、Hb:前記梁のせい、Fc:前記柱のコンクリートの強度、d:前記柱鉄骨の前記フランジに対する前記コンクリートのかぶり厚さ。
以下、本発明に係る柱梁接合構造の第1実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の柱梁接合構造1は、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の柱11と、鉄骨造の梁21と、柱11に梁21が接合された接合部31と、を備える。なお、柱11は鉄骨鉄筋コンクリート造ではなく、後述する鉄筋15及びコンクリート16を備えない鉄骨造の柱であってもよい。
柱11は、ウェブ14とフランジ13とを有する柱鉄骨12と、柱鉄骨12を囲う複数本の鉄筋15、及びコンクリート16を備えている。
なお、本柱梁接合構造1は、柱11への梁21の接合に際してダイアフラム(スチフナ)を用いない形式、すなわちノンダイアフラム形式である。
部分溶け込み溶接及び隅肉溶接においては、柱鉄骨のウェブ・フランジ継手の断面内に溶接不溶着部が存在することを許容する溶接方法である。また、日本建築学会編、「日本建築学会建築工事標準仕様書・同解説 JASS6 鉄骨工事には、完全溶け込み溶接により形成された全強接合部には、内部欠陥がないことを超音波探傷試験等によって確認しなければならないことが記載されている。そのため、溶接仕様として突き合わせる母材との全断面が完全に溶接される場合でも、溶接後に超音波探傷試験等によって内部欠陥が無いことを確認しない場合には、その溶接部は非全強接合部に分類される。
図4に示す隅肉溶接により形成された非全強接合部18Bは、非全強接合部18Aと同様に溶接金属部18d、18eを有して構成されている。溶接金属部18dと溶接金属部18eとの間には、フランジ13とウェブ14とが溶接されていないことで、切欠き状の不溶着部18fが形成されている。
なお、非全強接合部18A及び非全強接合部18Bを区別しないで呼ぶときには、非全強接合部18と総称する。
柱鉄骨12における梁21が接合されたフランジ13とウェブ14とは、柱鉄骨12の材長方向(長手方向)におけるある範囲で全強接合部17で接合され、それ以外の範囲は非全強接合部18で接合されている。この範囲の詳細については、後述する。
なお、柱鉄骨12は、ウェブ14の端部とフランジ13とが互いに溶接されたH形鋼製であるとしてもよい。本明細書において、H形鋼にはI形鋼が含まれる。
コンクリート16は、材長方向に直交する断面が正方形又は長方形である。
図1に示すように、梁21は、H形鋼製であり、ウェブ24と、このウェブ24の両端部に接合された一対のフランジ23とを有している。梁21は、水平方向に沿って延びている。梁21は鉄骨であり、鋼板等で形成されている。
梁21のフランジ23は、接合部31において柱鉄骨12のフランジ13に溶接接合されている。梁21のウェブ24は、柱鉄骨12のフランジ13に溶接又は高力ボルト接合されている。柱鉄骨12のフランジ13と梁21とが接合された接合部31(溶接部、及び溶接部の近傍の柱鉄骨12、梁21を含む)は、コンクリート16により囲われている。
本柱梁接合構造1の崩壊機構として、図5から図7に示す機構を仮定する。図5から図7は、柱梁接合構造1が変形した後の状態を示している。柱鉄骨12のフランジ13に上方に塑性ヒンジ131、133、下方に塑性ヒンジ132、134が形成されるとする。すなわち、柱鉄骨12の梁21が接合されたフランジ13における梁21の一対のフランジ23が接続された部分に、一対の塑性ヒンジ131、133、132、134がそれぞれ形成されるとする。後述する塑性回転角度θ1、θ2が0(radian)の状態から図5から図7に示す塑性回転角度θ1、θ2が正の状態まで変形したとする。
梁21の引張側のフランジ23(この例では上方のフランジ231)が柱鉄骨12のフランジ13を面外に引き抜く力に対しては、鉄骨である柱鉄骨12は、フランジ13の面外変形とウェブ14の局部降伏を生じる。これにより、柱鉄骨12のウェブ14に局部降伏14aが形成される。また、柱鉄骨12のフランジ13には、塑性ヒンジ131が形成される。
柱鉄骨12のフランジ13が面外に変形することよって、フランジ13の外側のかぶりコンクリート16aがコーン状破壊する。かぶりコンクリート16aの側面16a1を、図6中にハッチングを付して示す。
一般にコンクリートの支圧耐力はコーン状破壊耐力よりも大きくなるので、接合部31の断面内の釣合条件を満たす中立軸C1は、梁せいHb(梁のせい(成)、mm)の上下方向の中心よりも圧縮側のフランジ232側に位置する。
本崩壊機構で用いる変数は、図中に示すx、y、z(mm)である。変数xは、梁21の端部の曲げモーメントに対する中立軸C1の位置を決定する係数で、0以上1以下の任意の値を取り得る。変数xは、梁21の端部に曲げモーメントが作用したときの、梁21の引張側のフランジ231の外表面から中立軸C1までの距離の梁せいHbに対する比である。変数yは、梁21の上方のフランジ231の上方にある塑性ヒンジ131、塑性ヒンジ133間の柱鉄骨12の材長方向の長さである。変数zは、梁21の下方のフランジ232の下方にある塑性ヒンジ132、塑性ヒンジ134間の柱鉄骨12の材長方向の長さである。変数y、zは、任意の正数(0よりも大きい値)を取り得る。
これらの変数x、y、zを用いて、柱鉄骨12のフランジ13とフランジ231、232の交差部における面外変形量δ1、δ2(mm)は、(1)式及び(2)式を用いて(3)式及び(4)式によって表わすことができる。ここで、梁21のフランジ23の板厚をtbf(mm)、フランジ13及びフランジ23の交差部に仮定する剛域の幅をt’(mm)とする。
柱鉄骨12及び梁21等のような鋼材の実際の応力−ひずみ特性を、図8に示す。図8の横軸は鋼材のひずみを表し、縦軸は鋼材に作用する応力を表す。鋼材には、ひずみが0の状態から、ひずみが増加するのにしたがって応力が比例して増加する弾性領域R1がある。弾性領域R1よりもひずみが大きい範囲が、非弾性領域R2である。非弾性領域R2では、弾性領域R1よりも応力の増加率が低下する。弾性領域R1と非弾性領域R2との境界となる応力が、降伏応力σ1である。
非弾性領域R2では、最大応力σ2において応力が最大値となる。最大応力σ2に対応するひずみよりもひずみが大きくなると、応力は最大応力σ2よりも低下する。鋼材は、ひずみε1において破断する。
このモデルでは、ひずみが0のままで応力が増加する。応力が降伏応力σ1となったときに、鋼材が降伏する。鋼材が降伏した後は、応力が変わらずにひずみが増加する。このモデルでは、ひずみ硬化を考慮していない。
柱鉄骨12のフランジ13の降伏ヒンジ線の単位長さあたりの降伏モーメントM0(N)、及び柱鉄骨12のウェブ14に生ずる不連続線の単位長さあたりの降伏軸力N0 c(N/mm)は、それぞれ(7)式及び(8)式で与えられる。
ここで、柱鉄骨12のフランジ13の板厚をtcf(mm)、柱鉄骨12のウェブ14の板厚をtcw(mm)、柱鉄骨12のフランジ13の降伏強さをσcfy(N/mm2)、柱鉄骨12のウェブ14の降伏強さをσcwy(N/mm2)とする。
梁21の引張側のフランジ231周りのかぶりコンクリート16aに生じるコーン状破壊による内部仕事WRC1は、(11)式で与えられる。梁21の圧縮側のフランジ232周りに生じる内部のコンクリート16の支圧破壊による内部仕事WRC2は、(12)式で与えられる。
ここで、柱鉄骨12のフランジ13の幅をBc(mm)、柱鉄骨12のフランジ13に対するコンクリート16のかぶり厚さをd(mm、図2参照)、コンクリート16の強度(設計基準強度)をFc(N/mm2)、コンクリート16の支圧効果係数をλ(−)(本実施形態では1.5とする)とする。
崩壊曲げモーメントMの最小値である全塑性曲げモーメントjMp(Nmm)は、(14)式を連立して解くことで求められ、(15)式から(18)式によって与えられる。(14)式は、崩壊曲げモーメントMを変数x、y、zで偏微分した値がそれぞれ0に等しいことを表す方程式である。(16)式から(18)式により、変数x、y、zが求められる。
なお、全塑性曲げモーメントjMpは、図9において鋼材が降伏したときの曲げモーメントを表し、接合部31の全塑性耐力に相当する。基本的に、変数yは変数zよりも大きい。これは、前述のようにコンクリートの支圧耐力はコーン状破壊耐力よりも大きくなるためである。コンクリート16の強度Fcが0である場合(柱11が鉄筋15及びコンクリート16を備えない鉄骨造の柱の場合)には、変数yと変数zとが等しくなる。
なお、柱11が鉄筋15及びコンクリート16を備えない鉄骨造の柱の場合には、(19)式においてコンクリート16の強度Fcを0として計算すればよい。
範囲R6は、梁21のせいの中心P1を範囲の中心とした(Hb+2W)の式により得られる値の範囲である。ただし、Wは(19)式によるy以上である。柱鉄骨12の材長方向において範囲R6以外の範囲R7、すなわち全強接合部17で接合されていない範囲R7は、非全強接合部18で接合される。
アーク溶接の開始時には、アーク溶接に用いられるシールド内に外気が入ることがある。このため、アーク溶接の火花が安定しにくく、アーク溶接を開始した部分の耐力が安定しないので、アーク溶接の開始時には助走区間を設けることが好ましい。
全強接合部17を形成した範囲R6には、ウェブ14の端部等に予め開先加工が施されていることが好ましい。さらに、この範囲R6に対して超音波探傷試験等を行い、ウェブ14とフランジ13との不溶着部が形成されていないことを確認することが好ましい。
したがって、柱梁接合構造1の必要な範囲に全強接合するとともに全強接合する範囲を狭くすることで、柱梁接合構造1の製造に要するコストを抑えることができる。
柱鉄骨12のフランジ13に引張応力が作用している範囲内で柱鉄骨12のフランジ13とウェブ14とが全強接合されているため、この範囲R9内の柱鉄骨12にウェブ14とフランジ13との不溶着部が形成されない。フランジ13に引張応力が作用している範囲R9内は不溶着部から破断が生じやすいが、この範囲R9内に不溶着部が形成されないため、梁21に荷重が作用したときに柱鉄骨12のウェブ14とフランジ13との溶接部から破断が生じにくくなる。
したがって、必要な範囲に全強接合するとともに全強接合する範囲を狭くすることで、柱梁接合構造1の製造に要するコストを抑えることができる。
次に、本発明の第2実施形態について図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態では、第1実施形態のように極限解析の手法を用いて理論解を求めるとともに、使用頻度の高い柱梁接合構造1の厚さ等の諸元に限定すること等により、全強接合する範囲を容易に求められるようにしている。
(i)柱鉄骨12のフランジ13の降伏強さσcfyと柱鉄骨12のウェブ14の降伏強さσcwyとが等しい。
(ii)柱鉄骨12のフランジ13の板厚tcfの2倍に対する柱鉄骨12のフランジ13の幅Bcの比が3.0以上である。
(iii)柱鉄骨12のウェブ14の板厚tcwに対する柱鉄骨12のフランジ13の板厚tcfの比が3.33以下である。
(iv)かぶりコンクリートの影響を無視する(Fcを0とする)。
前述の(19)式において、(i)の限定及び(iv)の仮定をして変形することで、(20)式が得られる。
すなわち、変数yは、柱鉄骨12のフランジ13の幅Bc、柱鉄骨12のウェブ14の板厚tcwに対する柱鉄骨12のフランジ13の板厚tcfの比、及び、柱鉄骨12のフランジ13の板厚tcfの2倍に対する柱鉄骨12のフランジ13の幅Bcの比で表されることが分かる。
(20)式において、(ii)の限定である(Bc/(2tcf))の式により得られる値の下限値の3.0、及び、(iii)の限定である(tcf/tcw)の式により得られる値の上限値の3.33を(20)式に代入することで、(ii)及び(iii)の限定における変数yの最大値が約0.75Bcと求まる。
なお、本実施形態で変数yを0.75Bcとした評価の精度を検証した図11については、第3実施形態において説明を行う。
次に、本発明の第3実施形態について図12から図20を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
前述の第1実施形態及び第2実施形態では極限解析の手法を用いて理論解を求め、柱11と梁21との接合部31における全塑性曲げモーメントjMpの柱11のウェブ14の塑性化範囲に基づいて、全強接合部17の範囲を設定した。ただし、接合部31が降伏した後には鋼材のひずみ硬化によって塑性化範囲は拡大する場合がある。
本実施形態では、接合部31が大きく変形して接合部31の塑性化範囲が拡大した場合においても前述の全強接合部17の範囲が十分であるための条件を検討する。本実施形態では、変数yに相当する塑性ひずみが分布している範囲を有限要素解析により求めた。
図12の解析モデルは、柱梁接合構造1の柱11が鉄骨造であってH形鋼製の柱鉄骨12である場合を示している。
・解析モデルの要素は、8節点ソリッド要素とした。
・梁21の端部が柱鉄骨12に溶接された部分の溶接金属部の余盛り高さは、梁21のフランジ23の板厚の1/4とした。ただし、梁21のフランジ23の板厚が40mm以上の場合は、余盛り高さを10mmとした。
・柱鉄骨12のウェブ14とフランジ13との溶接金属部は、脚長及び余盛り高さともに10mmとした。
・柱鉄骨12及び梁21の降伏強さを380MPa、引張強さを519MPaとした。
・溶接金属部の降伏強さを526MPa、引張強さを606MPaとした。
・荷重条件は、梁21の柱鉄骨12とは反対の端に荷重F(図12参照)を作用させて、鉛直方向の一方向強制変位を与えた。
すなわち、以下のように比の値を決めた。
・柱鉄骨12のフランジ13における板厚tcfに対する幅Bcの比が、3.0以上8.0以下である。
・柱鉄骨12のウェブ14における板厚tcwに対する幅の比(幅厚比)が、柱鉄骨12がフランジ付き十字鉄骨製の場合に12.0以上である。
なお、柱鉄骨12がH形鋼製の場合には、この比は24.0以上である。
・柱鉄骨12におけるフランジ13の幅Bcに対するせいHcの比が、1.7以上3.5以下である。
・柱鉄骨12のせいHcに対する梁21のせいHbの比が、0.7以上1.5以下である。
・柱鉄骨12のフランジ13の幅Bcに対する梁21のフランジ23の幅Bbの比が、0.5以上1.0以下である。
・柱鉄骨12のウェブ14の板厚tcwに対する梁21のウェブ24の板厚tbwの比が、0.5以上1.0以下である。
・柱鉄骨12のせいHcは、600mmの固定値とした。
・柱鉄骨12におけるフランジ13の幅Bcに対するせいHcの比の変数により、柱鉄骨12におけるフランジ13の幅Bcを決める。
・柱鉄骨12のウェブ14における板厚tcwに対する幅の比、及び、柱鉄骨12のフランジ13における板厚tcfに対する幅Bcの比の変数により、ウェブ14の板厚tcw及びフランジ13の板厚tcfを決める。
・柱鉄骨12のせいHcに対する梁21のせいHbの比、及び、柱鉄骨12のウェブ14の板厚tcwに対する梁21のウェブ24の板厚tbwの比の変数により、梁21のせいHb及び梁21のフランジ23の幅Bbを決める。
・梁21のフランジ23の板厚tbfは、接合部31の局所耐力に対して梁21の曲げ耐力が1.2倍以上となるように決めた。
このとき、梁21のフランジ23における板厚tbfに対する幅Bbの比がFDランクとなる場合には、FDランクとFCランクの境界値となるように、梁21のフランジ23の板厚tbfを厚くする。また、梁21のフランジ23の板厚tbfが梁21のウェブ24の板厚tbwよりも薄くなる場合には、梁21のフランジ23の板厚tbfを梁21のウェブ24の板厚tbwと等しくする。
・柱鉄骨12におけるウェブ14の板厚tcwに対するフランジ13の板厚tcfの比が3.33を超える場合は、その解析ケースを除外した。除外した解析ケースは、使用頻度が低いケースである。
なお、表2及び表3において、柱鉄骨12のウェブ14における板厚tcwに対する幅の比が12.0のものは柱鉄骨12がフランジ付き十字鉄骨製であり、32.0のものは柱鉄骨12がH形鋼製である。
図17に、塑性ひずみを求めた結果の一例を解析ケース2(梁21のせいHbは900mm)の場合で示す。図17の横軸は相当塑性ひずみを表し、縦軸は梁21のせいの中心に対する位置を表す。なお、位置は上方を正とする。□印の線L16は、柱梁接合構造1の接合部31の降伏が始まったときの状態を表す。◇印の線L17は、梁21の端部が0.02radian(約1.15°)回転したときの状態を表す。
接合部31の降伏が始まったときには、梁21のせいの外側に約105mmの範囲Xまで塑性ひずみが分布していることが分かった。一方で、梁21の端部が0.02radian回転した状態では、梁21のせいの外側に約150mmの範囲Xまで塑性ひずみが分布していることが分かった。
塑性ひずみが分布している範囲Xは、柱鉄骨12のフランジ13における幅Bcの1.1倍以下の範囲であることが分かった。
このため、本実施形態における前述の全強接合部17の範囲R6は、梁21のせいの中心P1を範囲の中心とした(Hb+2W)の式により得られる値の範囲とした。ただし、Wは1.1Bc以上である。すなわち、柱梁接合構造1の解析モデルにおいて、梁21のせいの中心P1を範囲の中心とした(Hb+2W)の式により得られる値の範囲の溶接金属部19を全強接合部17とし、全強接合部17以外の溶接金属部19を非全強接合部18とする。
また、柱鉄骨12のウェブ14とフランジ13とを全強接合する範囲が、柱鉄骨12のフランジ13の幅Bc及び梁21のせいHbだけで決まる。したがって、柱鉄骨12のウェブ14とフランジ13とを全強接合する範囲を容易に求めることができる。
0.03radian、0.04radian回転した状態は、塑性ひずみが分布している範囲Xは、ともに柱鉄骨12のフランジ13における幅Bcの1.2倍以下の範囲であることが分かった。
すなわち、梁21の端部が回転した角度が大きくなっても、塑性ひずみが分布している範囲Xは幅Bcの1.2倍以下の範囲で飽和すると考えらえる。この場合、梁21のせいHbの中心を範囲の中心とした少なくとも(Hb+2.4Bc)の式により得られる値の範囲で全強接合することで、充分大きな地震に対しても耐えられることが分かった。
塑性ひずみが分布している範囲Xは、柱鉄骨12のフランジ13における幅Bcの0.75倍以下の範囲であることが分かった。有限要素解析結果の降伏耐力時点の塑性化範囲を、もれなく安全側に評価できていることが分かった。
11 柱
12 柱鉄骨
13、23 フランジ
131、132、133、134 塑性ヒンジ
14、24 ウェブ
21 梁
31 接合部
Claims (2)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の柱と、鉄骨造の梁と、前記柱に前記梁が接合された接合部と、を備えるノンダイアフラム形式の柱梁接合構造であって、
前記柱は、ウェブの端部とフランジとが互いに溶接されたフランジ付き十字鉄骨又はH形鋼製の柱鉄骨を備え、
前記柱鉄骨における前記梁が接合された前記フランジと前記ウェブとは、
前記柱鉄骨の前記フランジに引張応力が作用している範囲で全強接合され、
前記全強接合されていない範囲は、前記全強接合以外の方法で接合されていることを特徴とする柱梁接合構造。 - 鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の柱と、鉄骨造の梁と、前記柱に前記梁が接合された接合部と、を備えるノンダイアフラム形式の柱梁接合構造であって、
前記柱は、ウェブの端部とフランジとが互いに溶接されたフランジ付き十字鉄骨又はH形鋼製の柱鉄骨を備え、
前記柱鉄骨における前記梁が接合された前記フランジと前記ウェブとは、
前記梁のせいの中心を範囲の中心とした(Hb+2y)の式により得られる値以上の範囲で全強接合され、
前記全強接合されていない範囲は、前記全強接合以外の方法で接合されていることを特徴とする柱梁接合構造。
ただし、Bc:前記柱鉄骨の前記フランジの幅、tcf:前記柱鉄骨の前記フランジの板厚、tcw:前記柱鉄骨の前記ウェブの板厚、σcfy:前記柱鉄骨の前記フランジの降伏強さ、σcwy:前記柱鉄骨の前記ウェブの降伏強さ、Hb:前記梁のせい、Fc:前記柱のコンクリートの強度、d:前記柱鉄骨の前記フランジに対する前記コンクリートのかぶり厚さ。
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