JP2018052889A - 黒麹菌の培養物とポリフェノール類化合物とを含有する組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
(I-1)黒麹菌の培養物とポリフェノール類化合物とを含有する組成物。
(II-1)麹菌の培養物を含むポリフェノール類化合物の吸収促進剤。
(III-1)ポリフェノール類化合物に麹菌の培養物を配合することを特徴とする、ポリフェノール類化合物の吸収促進方法。
本発明の組成物は、黒麹菌の培養物とポリフェノール類化合物とを含有することを特徴とする。黒麹菌の培養物を用いることで、ポリフェノール類化合物(アントシアニン等)を体内で有効に吸収させ、十分な生理活性を発揮させることができる。
黒麹菌は、アスペルギルス(Aspergillus)属に分類され、胞子の色が黒褐色をしている麹菌である。黒麹菌は、黄麹菌と比べて、大量のクエン酸を造ることが特徴である。黒麹菌として、
・Aspergillus awamori(アスペルギルス・アワモリ)、
・Aspergillus saitoi(アスペルギルス・サイトイ、Aspergillus phoenicis(アスペルギルス・フォエニシス)と学名変更されている)、
・Aspergillus usamii(アスペルギルス・ウサミ、Aspergillus niger var. awamoriと学名変更されている)、
・Aspergillus kawachii(アスペルギルス・カワチ)、
・Aspergillus luchuensis(アスペルギルス・ルウチウエンス)、及び
・Aspergillus niger(アスペルギルス・ニガー)
を使用することが好ましい。
黒麹菌の培養ろ液は、黒麹菌を培養した後、その黒麹菌の培養物(培養液)を濾過又は遠心分離等することにより、菌体を取り除いた部分(清澄液)である。この黒麹菌の培養ろ液の濃縮物を用いることもできる。
黒麹菌体の破砕抽出物は、黒麹菌を培養した後、その黒麹菌の培養物(培養液)を濾過又は遠心分離等することにより、菌体を回収した部分である。この回収した黒麹菌の菌体を超音波破砕等した後、菌体残渣を取り除き、菌体抽出物(破砕抽出物)を得ることができる。得られた抽出物は、そのままの液状形態を有していても良く、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の乾燥工程により粉末化することも可能である。
ポリフェノール類化合物に対して、黒麹菌の培養物を用いることで、例えばその組成物を経口で摂取することにより、より多くのポリフェノール類化合物を体内で有効に吸収させ、十分な生理活性を発揮させることができる。
本発明の黒麹菌の培養物-ポリフェノール類化合物含有組成物の一態様として、黒麹菌の培養物とポリフェノール類化合物とを含む製剤を挙げることができる。
本発明の組成物において、黒麹菌の培養物とポリフェノール類化合物との配合割合は、黒麹菌の培養物により、ポリフェノール類化合物の吸収を促進できる範囲に調整することが好ましい。
経口摂取したポリフェノール類化合物、特にアントシアニン類化合物の体内吸収の場は、腸管、殊に小腸が中心であると考えられている。小腸吸収をin vitroで評価する方法としてヒト結腸癌由来Caco-2細胞株を用いた小腸上皮モデルが知られており、上皮細胞及び細胞間隙(Tight Junction、密着結合)からの物質透過度を、電気抵抗値(TEER)等を観測することにより知ることができる。
1:0.001〜0.5(重量比)、1:0.001〜0.375(重量比)、1:0.001〜0.1(重量比)、
1:0.001〜0.075(重量比)、1:0.001〜0.02(重量比)、1:0.001〜0.015(重量比)、
の順に好ましい。
本発明の組成物では、ポリフェノール類化合物に対して、黒麹菌の培養物を用いることで、例えばその組成物を経口で摂取することにより、より多くのポリフェノール類化合物を体内で有効に吸収させ、十分な生理活性を発揮させることができる。本発明の黒麹菌の培養物-ポリフェノール類化合物含有組成物は、ポリフェノール類化合物の吸収促進剤として有用である。
本発明が対象とする黒麹菌の培養物-ポリフェノール類化合物含有組成物、及びポリフェノール類化合物の吸収促進剤は、少なくとも黒麹菌の培養物及びポリフェノール類化合物を成分として含有し、本発明の効果に基づいて、商品の品質、特に外観の低下が抑制できるという利点が享受できるものであれば良い。その限りにおいて、製剤の形態、使用態様、及び用途を特に限定するものではない。
本発明の組成物を食品組成物として用いることができる。
本発明のポリフェノール類化合物の吸収促進剤は、麹菌の培養物を含有することを特徴とする。前記ポリフェノール類化合物は、アントシアニンであることが好ましい。
本発明のポリフェノール類化合物の吸収促進剤は、前記黒麹菌に加えて、他の麹菌(Aspergillus属)を用いることができる。例えば、胞子の色が黄、黄緑又は黄褐色をしている黄麹菌や、黒麹菌の突然変異体であり、胞子の色が白色をしている白麹菌を用いることが好ましい。
・Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼー、ニホンコウジカビ)、及び
・Aspergillus sojae(アスペルギルス・ソーエ、ショウユコウジカビ)
を使用することが好ましい。
本発明のポリフェノール類化合物の吸収促進方法は、ポリフェノール類化合物に麹菌の培養物を併用することで実施することができる。
黒麹菌の培養物:菌体(A.niger)を、MMY培地100mLに殖菌し2日間振とう培養した。MMY培地は、マルトース(和光純薬)20g、イーストイクストラクト(和光純薬)5g及び麦芽エキス(和光純薬)2gを1Lの蒸留水で溶解し、滅菌したものである。
(2)動物試験方法
マウスを使った動物試験で、アントシアニン類の吸収作用を確認した。
種:ICR系マウス雄、週齢(試験時):7週齢、供給源:日本SLC株式会社
(2-2)飼育条件
飼料
種類:市販固型飼料CE-2(日本クレア(株))
給餌方法:自由摂取、試験16時間前から絶食とした。
給水方法:給水瓶にて自由摂取とした。
被験物質(試験製剤)の調整及び投与
表1の各配合比率に従って混合し、50mM酢酸Na緩衝液を用いて溶解した。
投与60分後にイソフルラン麻酔下で腹部後大静脈より、ヘパリン処置のうえ全採血を行った。採血後の処理として、4℃、1,000×g、30分間遠心分離し、血漿300μLを採取し、血漿300μLに対し,酸添加の後、-30℃で冷凍保存した。
血漿サンプルに1%ギ酸-アセトニトリル800μLを添加して、遠心して上清を回収し、抽出乾固ののち5%ギ酸水溶液50μLで再溶解して分析に用いた。
試験結果を表2に示した。黒麹菌無添加群と比較して、添加群での血中アントシアニン類増加率を相対値として算出した。
Caco-2細胞を使った細胞試験で、物質透過度及びTJ(Tight Junction)機能(タイトジャンクション機能)を確認した。TJ機能はTranswell上部と下部の間の膜抵抗値(TEER)を測定することによって評価した。
測定試料
測定試料:対象化合物透過試験後の透過液(HBSS-HEPES溶液、pH7.4)
培養期間:21日間
Caco-2細胞培養(3週間培養系)
培養培地:D-MEM 500 mLボトルに牛胎児血清50 mLを加え、十分に攪拌し、4℃冷蔵保存した。使用直前に水浴で約37℃にして使用した。
添加溶液の調製
ビルベリーエキス末を終濃度100μg/mLとなるようにHBSS-MES溶液(pH6.5)にて溶解し、コントロール添加溶液とした。添加サンプルを終濃度25mg/mLとなるように、夫々HBSS-MES溶液(pH6.5)に溶解した。夫々の溶液に終濃度100μg/mLとなるようビルベリーエキス末を溶解し、添加溶液とした。ビルベリーエキス末溶解後の調製及び保管は全て低温条件で実施し、調整後1時間以内に使用した。
10%ギ酸にて調製したシアニジン-3-グルコシド10 mM標準溶液を2%ギ酸(v/v)/0.5N HCl混合溶液で順次希釈して1.6、3.2、8、40、200、1,000、2,000及び4,000 nM溶液を調製し、これを検量線溶液とした。
10 mMスルファフェナゾールDMSO溶液を10%ギ酸含有メタノールで希釈して、0.2 μMスルファフェナゾール溶液を調製し、これを内部標準溶液とした。測定条件の検討結果に応じて、適宜変更した。
Millicell ERSメーター(Millipore社製)を用いて、Transwell上部と下部の間の膜抵抗値(TEER)を測定することによって、細胞単層のTJ機能をモニターした。上部に被験物質不含HBSS-MES溶液(pH6.5)300μLを、下部に透過液(HBSS-HEPES溶液、pH7.4)800μLを加え、恒温振とう機(37℃、200rpm)にて20分以上インキュベートした。その後、評価ウェル(n=3)毎に、試験前の抵抗値(実測値)を測定した。抵抗値(実測値)が800 Ω以上のウェルを試験に使用した。
TEER=(R-R0)×A
TEER:細胞膜抵抗値(Ω・cm2)
R:細胞播種ウェルの抵抗値(実測値)(Ω)
R0:無細胞ウェルの抵抗値(Ω)
A:膜面積(cm2)
TEER測定後、上部を添加溶液350μL、下部を新たな透過液(HBSS-HEPES溶液、pH7.4)800μLに交換し、上部から50μLを採取した(これを0時点Donor溶液とする)。その後、恒温振とう機(37℃、200rpm)にてインキュベートした。60分後に、TEERを測定した後、それぞれの下部から透過液を、100μLずつ採取した。
2%ギ酸(v/v)/0.5N HCl混合溶液100μLを添加しておいたプレートに、下部の透過サンプル100μLを夫々添加した。これらを混合して得られた溶液100μLに内部標準溶液150μLを加え攪拌した。
検量線溶液100μLにHBSS-HEPES溶液(pH7.4)100μLを添加した。これらを混合して得られた溶液100μLに内部標準溶液150μLを加え攪拌した。
2%ギ酸(v/v)/0.5N HCl混合溶液50μLを添加しておいたプレートに、0時点Donor溶液50μLを添加した。これらを混合して得られた溶液を、10倍希釈した溶液100μLに内部標準溶液150μLを加え攪拌した。
LC設定条件
分析カラム:Inertsil ODS-3、2.1 mm I.D. × 33 mm L.、3μm
(株)ジーエルサイエンス
カラム温度:40℃
移動相:A 0.2%ギ酸、B 0.2%ギ酸含有アセトニトリル
グラジエントプログラム:
時間:B濃度=0分:B2%、0.2分:B2%、1.0分:B98%、
2.5分:B98%、2.51分:B2%、4.0分:B2%
流量:0.4 mL/min
注入量:10μL(但し条件5のDonor溶液の測定時のみ0.2 μL)
洗浄液:アセトニトリル/水(1:1、v/v)
MS/MS設定条件
タンデム質量分析計:API 4000、AB Sciex Pte. Ltd.
インターフェース:Turbo-V spray
イオン化法:Electrospray ionization(ESI)、 Positive ion mode
スキャンモード:Multiple reaction monitoring(MRM)mode
モニターイオン
シアニジン3グルコシド:Q1:450.1、Q3:288.1
I.S.(スルファフェナゾール):Q1:315.0、Q3:158.0
(3-4)算出方法
TJ機能値の算出
0分時点のTEERを100%とした時の60分時点のTEERを相対値(%)として算出した。
60分後の定量値と膜面積、下部の容量と初期濃度から、以下の式にて透過度を算出した。
Claims (10)
- 黒麹菌の培養物とポリフェノール類化合物とを含有する組成物。
- 前記黒麹菌が、Aspergillus awamori、Aspergillus saitoi、Aspergillus usamii、Aspergillus kawachii、Aspergillus luchuensis及びAspergillus nigerからなる群から選ばれる少なくとも一種の黒麹菌である、請求項1に記載の組成物。
- 前記黒麹菌の培養物が、黒麹菌の培養ろ液、又は黒麹菌体の破砕抽出物である、請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記ポリフェノール類化合物が、フラボノイドである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- 前記フラボノイドが、アントシアニン及びイソフラボンからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項4に記載の組成物。
- 前記ポリフェノール類化合物が、セサミン、セサモール、クルクミン、レスベラトロール、プロシアニジン、ゲニポシド酸、シリンガ酸、バニリン酸及びエクオールからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- 前記黒麹菌の培養物とポリフェノール類化合物との配合割合が、黒麹菌の培養物1重量部に対して、ポリフェノール類化合物0.001〜1重量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
- ポリフェノール類化合物の吸収促進剤である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
- 麹菌の培養物を含むポリフェノール類化合物の吸収促進剤。
- 前記ポリフェノール類化合物が、アントシアニンである、請求項9に記載の組成物。
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