以下、添付する図面を参照しつつ、好適な実施形態について詳細な説明をする。
《三次元造形物の製造方法》
まず、本発明の三次元造形物の製造方法について説明する。
図1〜図10は、本発明の好適な実施形態の三次元造形物の製造方法の工程を模式的に示す縦断面図である。図11は、本発明の好適な実施形態の三次元造形物の製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態の三次元造形物10の製造方法では、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)1’を用いて層1を形成する層形成工程(図1、図2、図4、図5参照)と、層1中に含まれる溶剤を除去する溶剤除去工程(図3、図6参照)とを含む一連の工程を繰り返し行い積層体50を得(図7参照)、その後、積層体50に対して、積層体50(層1)中に含まれる粒子同士を接合する接合工程(図10参照)を行う。
特に、本実施形態では、層形成工程は、三次元造形物製造用組成物1’として、三次元造形物10の実体部(接合部)2の形成に用いる実体部形成用組成物1B’、および、実体部2となるべき部位を支持するサポート部(支持部、サポート材)5の形成に用いるサポート部形成用組成物1A’を用いて行うものであり、サポート部形成用組成物1A’を吐出して第1のパターン(サポート部用パターン)1Aを形成する第1のパターン形成工程(サポート部用パターン形成工程)と、実体部形成用組成物1B’を吐出して第2のパターン(実体部用パターン)1Bを形成する第2のパターン形成工程(実体部用パターン形成工程)とを有している。
そして、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)1’としての実体部形成用組成物1B’およびサポート部形成用組成物1A’のうち少なくとも一方が、複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、赤外線を吸収する機能を有する赤外線吸収材料とを含むものである。
以下、各工程について詳細に説明する。
≪第1のパターン形成工程≫
第1のパターン形成工程では、サポート部形成用組成物1A’を吐出して第1のパターン1Aを形成する。
このように、第1のパターン1Aを、サポート部形成用組成物1A’の吐出により形成することで、微細な形状、複雑な形状を有するパターンであっても好適に形成することができる。
サポート部形成用組成物1A’の吐出方法は、特に限定されず、例えば、インクジェット装置等を用いて行うこともできるが、ディスペンサーを用いて行うのが好ましい。
このように、ディスペンサーを用いてサポート部形成用組成物1A’の吐出を行うことにより、高粘度のサポート部形成用組成物1A’であっても好適に供給(吐出)することができ、サポート部形成用組成物1A’が目的の部位に接触した後の当該サポート部形成用組成物1A’のダレ等をより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。また、高粘度のサポート部形成用組成物1A’を用いることにより、厚みが比較的大きい層1を容易に形成することができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
本工程におけるサポート部形成用組成物1A’の粘度は、100mPa・s以上1000000mPa・s以下であるのが好ましく、500mPa・s以上100000mPa・s以下であるのがより好ましく、1000mPa・s以上20000mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
これにより、例えば、サポート部形成用組成物1A’の吐出安定性をより優れたものとすることができるとともに、適度な厚みを有する層1の形成に好適であり、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、被着体に接触したサポート部形成用組成物1A’が過剰に濡れ広がることがより効果的に防止され、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、本明細書中において、粘度とは、特に条件の指定がない限り、せん断速度:10[s−1]という条件で、レオメーターを用いて測定される値をいう。
本工程では、サポート部形成用組成物1A’を、連続体状に吐出してもよいし、複数の液滴として吐出してもよいが、複数の液滴として吐出するのが好ましい。
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
本工程でサポート部形成用組成物1A’を複数の液滴として吐出する場合、吐出される液滴の1滴あたりの体積は、1pL以上2000pL以下であるのが好ましく、10pL以上500pL以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができるとともに、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
三次元造形物10の製造においては、サポート部形成用組成物1A’として、複数種の組成物を用いてもよい。
なお、サポート部形成用組成物1A’については、後に詳述する。
≪第2のパターン形成工程≫
第2のパターン形成工程では、実体部形成用組成物1B’を吐出して第2のパターン1Bを形成する。
このように、第2のパターン1Bを、実体部形成用組成物1B’の吐出により形成することで、微細な形状、複雑な形状を有するパターンであっても好適に形成することができる。
特に、本実施形態では、第1のパターン1Aで取り囲まれた領域に実体部形成用組成物1B’を吐出し、第2のパターン1Bの周囲全体が、第1のパターン1Aと接触するようにする。
これにより、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
実体部形成用組成物1B’の吐出方法は、特に限定されず、例えば、インクジェット装置等を用いて行うこともできるが、ディスペンサーを用いて行うのが好ましい。
このように、ディスペンサーを用いて実体部形成用組成物1B’の吐出を行うことにより、高粘度の実体部形成用組成物1B’であっても好適に供給(吐出)することができ、実体部形成用組成物1B’が目的の部位に接触した後の当該実体部形成用組成物1B’のダレ等をより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。また、高粘度の実体部形成用組成物1B’を用いることにより、厚みが比較的大きい層1を容易に形成することができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
実体部形成用組成物1B’は、例えば、ペースト状のものであってもよい。
本工程における実体部形成用組成物1B’の粘度は、100mPa・s以上1000000mPa・s以下であるのが好ましく、500mPa・s以上100000mPa・s以下であるのがより好ましく、1000mPa・s以上20000mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
これにより、例えば、実体部形成用組成物1B’の吐出安定性をより優れたものとすることができるとともに、適度な厚みを有する層1の形成に好適であり、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、被着体に接触した実体部形成用組成物1B’が過剰に濡れ広がることがより効果的に防止され、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
本工程では、実体部形成用組成物1B’を、連続体状に吐出してもよいし、複数の液滴として吐出してもよいが、複数の液滴として吐出するのが好ましい。
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
本工程で実体部形成用組成物1B’を複数の液滴として吐出する場合、吐出される液滴の1滴あたりの体積は、1pL以上2000pL以下であるのが好ましく、10pL以上500pL以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができるとともに、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
三次元造形物10の製造においては、実体部形成用組成物1B’として、複数種の組成物を用いてもよい。
これにより、例えば、三次元造形物10の各部位に求められる特性に応じて、材料を組み合わせることができ、三次元造形物10全体としての特性(外観、機能性(例えば、弾性、靱性、耐熱性、耐腐食性等)等を含む)をより優れたものとすることができる。
なお、実体部形成用組成物1B’については、後に詳述する。
上記のような第1のパターン形成工程、第2のパターン形成工程を行うことにより、第1のパターン1A、第2のパターン1Bを有する層1が形成される。言い換えると、層形成工程は、第1のパターン形成工程および第2のパターン形成工程を含むものである。
サポート部形成用組成物1A’、実体部形成用組成物1B’を用いて形成される各層1の厚みは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、20μm以上250μm以下であるのがより好ましい。
これにより、三次元造形物10の生産性を優れたものとしつつ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。また、層1の厚みが前記範囲内の値であると、後に詳述するような赤外線の照射による溶剤の除去の効率をより優れたものとすることができる。
≪溶剤除去工程≫
溶剤除去工程では、層1中に含まれる溶剤を除去する。
特に、本工程において、層1に対して赤外線Eの照射を行う。前述したように、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)1’としての実体部形成用組成物1B’およびサポート部形成用組成物1A’のうち少なくとも一方は、溶剤とともに、赤外線吸収材料を含むものである。
このため、本工程において、赤外線Eを照射することにより、層1中に含まれる赤外線吸収材料に照射した赤外線Eのエネルギーを吸収させ、赤外線吸収材料が発熱し、層1全体を加熱することができる。特に、赤外線Eを用いることにより、層1の外表面付近だけでなく、層1の内部についても効率よく加熱することができ、層1全体の温度を上昇させることができる。その結果、層1中に含まれる溶剤の揮発が促進され、層1全体としての溶剤の除去効率を優れたものとすることができる。その結果、三次元造形物10の生産性を優れたものとすることができる。
また、層1中に溶剤が不本意に残存することを効果的に防止することができるため、三次元造形物10の製造過程における層1の不本意な変形(崩壊等)を効果的に防止したり、後述する脱脂工程や焼結工程での溶剤の急激な揮発による不本意な変形を防止したりすることができる。また、最終的に得られる三次元造形物10中に溶剤が不本意に残存することも効果的に防止することができる。
以上のようなことから、最終的に得られる三次元造形物10を、寸法精度に優れ、信頼性に優れたものとすることができる。
本発明において、赤外線とは、近赤外線、中赤外線および遠赤外線を含む概念であり、その波長領域は、0.7μm以上1000μm以下である。
本工程で照射する光は、上記のような赤外線を含むものであればよいが、そのスペクトルにおいて、赤外線の領域に極大値を有するものであるのが好ましい。
赤外線領域における極大値は、赤外線吸収材料の組成等により異なるが、例えば、後に好ましい材料として例示する赤外線吸収材料を用いる場合には、0.70μm以上10μm以下の領域に含まれるのが好ましく、0.72μm以上6μm以下の領域に含まれるのがより好ましく、0.74μm以上4μm以下の領域に含まれるのがさらに好ましい。
これにより、赤外線吸収材料に照射した赤外線Eをより効率よく吸収させることができ、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。また、赤外線領域における極大値が前記範囲内の値である光源は、比較的安価であり、また、入手が容易なものである。したがって、三次元造形物10の製造コストの低減、三次元造形物10の安定的な製造等の観点から有利である。
本工程で層1に照射する赤外線Eの単位面積当たりのエネルギー(溶剤を除去すべき領域における単位面積当たりのエネルギー)は、層1の厚さや構成材料等にもよるが、1mJ/cm2以上10000mJ/cm2以下であるのが好ましく、10mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下であるのがより好ましい。
これにより、溶剤除去工程後に層1中に残存する溶剤の量をより少ないものとしつつ、溶剤除去工程をより短時間で完了させることができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、単位量当たりの溶剤除去に要するエネルギー量をより少ないものとすることができ、エネルギー効率の観点からも好ましい。また、赤外線の光源として、比較的安価で入手が容易なものを用いることができる。したがって、三次元造形物10の生産コストの低減、安定供給の観点からも好ましい。
なお、本工程では、溶剤を除去するための処理として、赤外線照射以外の処理(例えば、赤外線照射以外による加熱処理や減圧処理等)を組み合わせて行ってもよい。
これにより、溶剤除去の効率をより優れたものとすることができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、層1の厚みが比較的大きい場合等であっても、容易に溶剤除去工程後の層1中に含まれる溶剤量をより少ないものとすることができる。
また、本実施形態では、実体部形成用組成物1B’およびサポート部形成用組成物1A’のうち少なくとも一方がバインダーを含むものである。このため、本工程で溶剤が除去されることにより、バインダーが粒子同士を仮結合することができ、層1の形状の安定性を向上させることができる。
なお、本工程においては、層1中に含まれる溶剤を、完全に除去する必要はない。このような場合でも、比較的短時間の赤外線照射処理により、層1中の溶剤の含有率を十分に低下させ、前述したような溶剤を含むことによる弊害の発生を十分に防止することができる。
本工程後の層1中における溶剤の含有率は、0.1質量%以上25質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、層1中に溶剤が残存することによる弊害の発生を十分に防止しつつ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
三次元造形物10の製造においては、層形成工程および溶剤除去工程を含む一連の工程を所定回数だけ繰り返し行い、複数の層1が積層された積層体50を得る。
すなわち、すでに形成された層1上に新たな層1を形成すべきか否かを判断し、形成すべき層1がある場合には新たな層1を形成し、形成すべき層1がない場合には積層体50に対して後に詳述する工程を行う。
≪脱脂工程≫
本実施形態では、上記のようにして層形成工程(第1のパターン形成工程、第2のパターン形成工程)および溶剤除去工程を含む一連の工程を繰り返し行うことにより得られた積層体50に対して、脱脂処理を施す脱脂工程を有している(図8参照)。これにより、脱脂体70が得られる。このような脱脂体70を得ることにより、後の焼結工程(接合工程)をより好適に行うことができる。
また、本工程に供される積層体50は、前述した赤外線照射処理により、溶剤の含有率が十分に低くなったものであるため、脱脂工程における不本意な変形(例えば、溶剤の急激な揮発に伴う変形等)が効果的に防止される。
また、例えば、脱脂工程を行うことにより、赤外線吸収材料を効率よく除去することができ、最終的に得られる三次元造形物10中に赤外線吸収材料やその分解物が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。
なお、本明細書において、脱脂体とは、所定の形状に成形された成形体(積層体50)に対し、バインダーを除去するための処理(脱脂処理)を施すことにより得られた物のことをいう。脱脂処理では、成形体(積層体50)中に含まれるバインダーのうちの少なくとも一部を除去すればよく、脱脂体には、バインダーの一部が残存していてもよい。
脱脂処理は、積層体50中に含まれるバインダーを除去する方法であればいかなる方法で行ってもよいが、酸素、硝酸ガス等の酸化性雰囲気の他、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10−4Pa以上13.3Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
また、脱脂工程(熱処理)における処理温度は、特に限定されないが、100℃以上750℃以下であるのが好ましく、150℃以上600℃以下であるのがより好ましい。
これにより、脱脂工程における積層体50、脱脂体70の不本意な変形をより確実に防止することができ、脱脂処理をより効率よく進行させることができる。その結果、より優れた寸法精度の三次元造形物10をより優れた生産性で製造することができる。
また、例えば、赤外線吸収材料をさらに効率よく除去することができ、最終的に得られる三次元造形物10中に赤外線吸収材料やその分解物が不本意に残存することをさらに効果的に防止することができる。
また、脱脂工程(熱処理)における処理時間(熱処理時間)は、0.5時間以上20時間以下であるのが好ましく、1時間以上10時間以下であるのがより好ましい。
これにより、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、脱脂体70におけるバインダーの残存率を十分に低いものとすることができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
また、このような熱処理による脱脂は、種々の目的(例えば、脱脂時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
≪サポート部除去工程≫
そして、脱脂工程を行った後に、サポート部5を除去する。これにより、脱脂体70が取り出される(図9参照)。
本工程の具体的な方法としては、例えば、刷毛等でサポート部5を払い除ける方法、サポート部5を吸引により除去する方法、空気等の気体を吹き付ける方法、水等の液体を付与する方法(例えば、液体中に前記のようにして得られたサポート部5と脱脂体70との複合物を浸漬する方法、液体を吹き付ける方法等)、超音波振動等の振動を付与する方法等が挙げられる。また、これらから選択される2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。
また、サポート部5は、例えば、サポート部5の少なくとも一部を溶解する液体を用いることにより除去されるものであってもよいし、化学反応により分解されることにより除去されるものであってもよい。
≪焼結工程(接合工程)≫
本実施形態では、脱脂工程で得られた脱脂体70中に含まれる粒子(主材粒子)同士を接合するための接合処理を施す接合工程としての焼結工程を有している。
これにより、脱脂体70中に含まれる粒子同士が接合(焼結)されて接合部(実体部)2が形成され、焼結体としての三次元造形物10が得られる。
このように接合部2が形成されることにより、三次元造形物10は、粒子が強固に接合して構成されたものとなり、三次元造形物10の機械的強度等を特に優れたものとすることができる。
また、前述した工程までで赤外線吸収材料が残存している場合であっても、接合処理(焼結処理)により、赤外線吸収材料を確実に除去することができる。その結果、三次元造形物10中に赤外線吸収材料が不本意に残存することを防止することができ、三次元造形物10の信頼性を高いものとすることができる。
特に、本実施形態では、接合処理は、層1を複数備えた積層体(脱脂体70)に対して施すものである。
これにより、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
焼結工程は、加熱処理により行う。
焼結工程での加熱は、脱脂体70を構成する粒子の構成材料の融点以下の温度で行うのが好ましい。
これにより、積層体の形状を崩すことなく粒子の接合をより効率よく行うことができる。
焼結工程での加熱処理は、通常、脱脂工程での加熱処理よりも高い温度で行う。
粒子の構成材料の融点をTm[℃]としたとき、焼結工程での加熱温度は、(Tm−200)℃以上(Tm−50)℃以下であるのが好ましく、(Tm−150)℃以上(Tm−70)℃以下であるのがより好ましい。
これにより、より短時間の加熱処理でより効率よく粒子の接合を行うことができるとともに、焼結工程における脱脂体70の不本意な変形をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、粒子が複数の成分を含むものである場合には、前記融点としては、最も含有率の高い成分の融点を採用することができる。
焼結工程での加熱時間は、特に限定されないが、30分以上5時間以下であるのが好ましく、1時間以上3時間以下であるのがより好ましい。
これにより、粒子同士の接合を十分に進行させつつ本工程における不本意な変形をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の機械的強度、寸法精度をより高いレベルで両立することができるとともに、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
また、焼結処理時の雰囲気は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10−4Pa以上133Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、必要に応じて水素等の還元性ガス雰囲気とすることができる。
また、焼結工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、焼結の効率が向上し、より短い処理時間で焼結(焼成)を行うことができる。
また、焼結工程は、前述の脱脂工程と連続して行ってもよい。
これにより、脱脂工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱脂体70に予熱を与えて、脱脂体70をより確実に焼結させることができる。
また、このような焼結工程は、種々の目的(例えば、焼成時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で焼成するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
前述したような本発明の製造方法によれば、寸法精度に優れた三次元造形物を効率よく製造することができる。
前述したような三次元造形物の製造方法をフローチャートにまとめると、図11のようになる。
《三次元造形物製造用組成物》
次に、本発明の三次元造形物製造用組成物について説明する。
三次元造形物の製造に複数種の三次元造形物製造用組成物を用いる場合、少なくとも1種の三次元造形物製造用組成物が、本発明の三次元造形物製造用組成物(複数個の粒子と、前記粒子を分散させる溶剤と、赤外線を吸収する機能を有する赤外線吸収材料とを含む組成物)であればよい。
本実施形態では、三次元造形物製造用組成物として、実体部形成用組成物1B’と、サポート部形成用組成物1A’とを用いている。
≪実体部形成用組成物≫
まず、三次元造形物10の製造に用いる三次元造形物製造用組成物としての実体部形成用組成物1B’について説明する。
実体部形成用組成物1B’は、実体部2の形成(第2のパターン1Bの形成)に用いることのできるものであれば、その構成成分等は特に限定されないが、複数個の粒子(主材粒子)と粒子を分散する溶剤とを含むものが好ましく、さらに、バインダーを含むものであるのがより好ましい。また、実体部形成用組成物1B’は、赤外線吸収材料を含むものであるのが好ましい。
以下の説明では、実体部形成用組成物1B’が複数個の粒子、溶剤、バインダーおよび赤外線吸収材料を含むものである場合について、代表的に説明する。
(粒子)
実体部形成用組成物1B’が、複数個の粒子を含むものであることにより、三次元造形物10の構成材料の選択の幅を広いものとすることができ、所望の物性、質感等を有する三次元造形物10を好適に得ることができる。例えば、溶媒に溶解した材料を用いて三次元造形物を製造する場合、使用することのできる材料に制限があるが、粒子を含む実体部形成用組成物1B’を用いることによりこのような制限を解消することができる。
実体部形成用組成物1B’に含まれる粒子の構成材料としては、例えば、金属材料、金属化合物(セラミックス等)、樹脂材料、顔料等が挙げられる。
実体部形成用組成物1B’は、金属材料、セラミックス材料のうち少なくとも一方を含む材料で構成された粒子を含むものであるのが好ましい。
これにより、例えば、三次元造形物10の質感(高級感)、機械的強度、耐久性等をより優れたものとすることができる。また、これらの材料は、一般に、後に詳述するような赤外線吸収材料の分解温度で、十分な形状の安定性を有するものである。したがって、三次元造形物10の製造過程において、赤外線吸収材料を確実に除去し、三次元造形物10中に赤外線吸収材料が残存するのをより確実に防止しつつ、三次元造形物10の寸法精度をより確実に優れたものとすることができる。
特に、粒子が金属材料を含む材料で構成されたものであると、三次元造形物10の高級感、重量感、機械的強度、靱性等を特に優れたものとすることができる。また、粒子の接合のためのエネルギーを付与した際の伝熱が効率よく進行するため、三次元造形物10の生産性を特に優れたものとしつつ、各部位での不本意な温度のばらつきの発生をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の信頼性を特に優れたものとすることができる。
粒子を構成する金属材料としては、例えば、マグネシウム、鉄、銅、コバルト、チタン、クロム、ニッケルやこれらのうち少なくとも1種を含む合金(例えば、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル基調合金、アルミニウム合金等)等が挙げられる。
粒子を構成する金属化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム等の各種金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の各種金属水酸化物;窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム等の各種金属窒化物;炭化珪素、炭化チタン等の各種金属炭化物;硫化亜鉛等の各種金属硫化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の各種金属の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の各種金属のケイ酸塩;リン酸カルシウム等の各種金属のリン酸塩;ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等の各種金属のホウ酸塩や、これらの複合化物等が挙げられる。
粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエーテルニトリル、ポリアミド(ナイロン等)、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂等が挙げられる。
粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、筒状、鱗片状等、いかなる形状であってもよく、また、不定形のものであってもよいが、球状をなすものであるのが好ましい。
粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
これにより、実体部形成用組成物1B’の流動性をより好適なものとすることができ、第2のパターン形成工程をより円滑に行うことができるとともに、接合工程での粒子の接合をより好適に行うことができる。また、例えば、層1中に含まれる溶剤やバインダー等の除去等を効率よく除去することができ、不本意に粒子以外の構成材料が最終的な三次元造形物10中に残存することをより効果的に防止することができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の信頼性、機械的強度をより優れたものとすることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を言い、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTER ELECTRONICS INS製TA−II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
粒子のDmaxは、0.2μm以上25μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。
これにより、実体部形成用組成物1B’の流動性をより好適なものとすることができ、第2のパターン形成工程をより円滑に行うことができるとともに、接合工程での粒子の接合をより好適に行うことができる。その結果、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の機械的強度をより優れたものとすることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
実体部形成用組成物1B’中における粒子の含有率は、30質量%以上93質量%以下であるのが好ましく、35質量%以上88質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、実体部形成用組成物1B’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、粒子は、三次元造形物10の製造過程(例えば、接合工程等)において、化学反応(例えば、酸化反応等)をする材料で構成されたものであり、実体部形成用組成物1B’中に含まれる粒子の組成と、最終的な三次元造形物10の構成材料とで、組成が異なっていてもよい。
また、実体部形成用組成物1B’は、2種以上の粒子を含むものであってもよい。
(溶剤)
実体部形成用組成物1B’が溶剤を含むことにより、実体部形成用組成物1B’中において粒子を好適に分散させることができ、ディスペンサー等による実体部形成用組成物1B’の吐出を安定的に行うことができる。
溶剤は、実体部形成用組成物1B’中において粒子を分散させる機能(分散媒としての機能)を有し、赤外線照射による除去(例えば、揮発による除去)が可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;カルビトールやそのエステル化合物(例えば、カルビトールアセテート等)等のカルビトール類;セロソロブやそのエステル化合物(例えば、セロソロブアセテート等)等のセロソロブ類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
実体部形成用組成物1B’が金属材料で構成された粒子を含むものである場合、溶剤としては、非プロトン性溶剤を用いるのが好ましい。これにより、粒子の構成材料の不本意な酸化反応等を効果的に防止することができる。
実体部形成用組成物1B’中における溶剤の含有量は、5質量%以上68質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上60質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、実体部形成用組成物1B’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
(赤外線吸収材料)
赤外線吸収材料は、赤外線を吸収する機能を有し、赤外線を吸収することにより発熱(昇温)するものである。
このような赤外線吸収材料を含むことにより、赤外線を照射した際に、三次元造形物製造用組成物としての実体部形成用組成物1B’を加熱(昇温)することができ、溶剤を効率よく除去することができる。その結果、三次元造形物10の生産性を優れたものとすることができる。
また、溶剤が不本意に残存することを効果的に防止することができるため、三次元造形物10の製造過程における層1の不本意な変形(崩壊等)を効果的に防止することができる。また、三次元造形物10中に溶剤が不本意に残存することも効果的に防止することができる。
以上のようなことから、三次元造形物10を、寸法精度に優れ、信頼性に優れたものとすることができる。
赤外線吸収材料は、赤外線を吸収することにより発熱(昇温)する材料であればよいが、赤外線領域に吸収率が20%以上の波長を有するものであるのが好ましく、赤外線領域に吸収率が30%以上の波長を有するものであるのがより好ましく、赤外線領域に吸収率が40%以上の波長を有するものであるのがさらに好ましい。
これにより、赤外線のエネルギーをより効率よく熱エネルギーに変換することができ、溶剤をより効率よく加熱、除去することができる。したがって、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができるとともに、三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
赤外線吸収材料は、分解温度が250℃以上のものであるのが好ましく、分解温度が280℃以上のものであるのがより好ましく、分解温度が300℃以上600℃以下のものであるのがさらに好ましい。
一般に、溶剤の沸点は、当該温度よりも十分に低いものである。このため、赤外線の照射強度が比較的強い場合であっても、溶剤の気化熱により赤外線吸収材料の温度が前記温度よりも高くなることが効果的に防止される。したがって、溶剤除去工程において、赤外線吸収材料が不本意に分解してしまい、溶剤除去の効率が低下することがより確実に防止される。その結果、溶剤除去工程をより効率よく進行させることができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、溶剤が不本意に残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
赤外線吸収材料は、赤外線領域での吸収スペクトルにおいて、0.70μm以上10μm以下の領域に吸収極大を有するものであるのが好ましく、0.72μm以上6μm以下の領域に吸収極大を有するものであるのがより好ましく、0.74μm以上4μm以下の領域に吸収極大を有するものであるのがさらに好ましい。
これにより、赤外線の照射による溶剤の除去効率をより優れたものとすることができる。また、上記のような波長領域に発光の極大値を有する光源は、比較的安価であり、また、入手が容易なものである。したがって、三次元造形物10の製造コストの低減、三次元造形物10の安定的な製造等の観点から有利である。
なお、本発明において、赤外線吸収材料以外の成分(例えば、粒子、バインダー、溶剤等)も、赤外線を吸収するものであってもよいが、赤外線吸収材料は、当該成分とは、赤外線領域において、異なる吸収スペクトルを有するもの(特に吸収極大値の波長が異なるもの)であるのが好ましい。これにより、所定のスペクトルを有する光源(単波長光ではない光源)を用いた場合に、全体としての赤外線の吸収効率をより優れたものとすることができ、溶剤の除去効率を特に優れたものとすることができる。
赤外線吸収材料としては、例えば、シアニン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン化合物、スクアリウム色素、キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物、ニッケルジチオレン錯体等が挙げられるが、中でも、シアニン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン化合物、スクアリウム色素、キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物が好ましく、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
これにより、赤外線のエネルギーをより効率よく熱エネルギーに変換することができるとともに、赤外線吸収材料の不本意な劣化、分解等をより効果的に防止することができる。その結果、溶剤除去工程をより効率よく進行させることができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、溶剤が不本意に残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
また、前記粒子が金属材料で構成されたものであり、かつ、赤外線吸収材料が例えばCuのような金属原子を含むものである場合、当該金属原子は、前記粒子を構成する金属原子と共通のものであるのが好ましい。
これにより、赤外線吸収材料の分解物が最終的に得られる三次元造形物10中に含まれる場合であっても、三次元造形物10の品質の低下をより効果的に防止することができる。
実体部形成用組成物1B’中において、赤外線吸収材料は、いかなる形態で含まれるものであってもよいが、少なくとも一部が溶剤に溶解した状態であるのが好ましい。
これにより、赤外線の照射により発生した熱をより効率よく溶剤に伝えることができ、溶剤の除去効率を特に優れたものとすることができる。また、赤外線吸収材料を、粒子を分散する分散媒として機能させることができ、実体部形成用組成物1B’の吐出性をより優れたものとすることができる。
前記粒子100体積部に対する赤外線吸収材料の含有量は、2体積部以上20体積部以下であるのが好ましく、3体積部以上18体積部以下であるのがより好ましく、4体積部以上15体積部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、溶剤除去工程における溶剤の除去をより効率よく行うことができるとともに、後の工程で赤外線吸収材料を容易かつ確実に除去することができる。その結果、三次元造形物10の生産性、信頼性をより高いレベルで両立することができる。
(バインダー)
バインダーは、溶剤が除去された状態で層1(第2のパターン1B)中において粒子同士を仮結合する機能を有するものである。
このようなバインダーを含むことにより、例えば、実体部形成用組成物1B’を用いて形成された第2のパターン1Bの不本意な変形をより効果的に防止することができる。その結果、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。また、三次元造形物10中における空隙率(空孔率)、三次元造形物10の密度等の調整を好適に行うことができる。
バインダーとしては、脱脂工程に供される前の実体部形成用組成物1B’(すなわち、第2のパターン1B)中において粒子を仮固定する機能を有するものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の各種樹脂材料等を用いることができる。
硬化性樹脂を含む場合、実体部形成用組成物1B’の吐出後であって接合工程よりも前のタイミングで、当該硬化性樹脂の硬化反応を行ってもよい。
これにより、実体部形成用組成物1B’を用いて形成されたパターンの不本意な変形をさらに効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
硬化性樹脂の硬化反応を進行させる硬化処理は、例えば、加熱や紫外線等のエネルギー線の照射により行うことができる。
硬化性樹脂としては、例えば、各種熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を好適に用いることができる。
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を用いることができるが、実体部形成用組成物1B’は、硬化性樹脂(重合性化合物)として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、硬化性樹脂(重合性化合物)の吐出安定性をより優れたものとする上で有利である。
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、エネルギー線の照射により、重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
実体部形成用組成物1B’は、硬化性樹脂(重合性化合物)として、モノマー以外に、オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を含むものであってもよい。
実体部形成用組成物1B’中において、バインダーは、いかなる形態で含まれるものであってもよいが、液状(例えば、溶融状態、溶解状態等)をなすものであるのが好ましい。すなわち、分散媒の構成成分として含まれているのが好ましい。
これにより、バインダーは、粒子を分散する分散媒として機能することができ、実体部形成用組成物1B’の吐出性をより優れたものとすることができる。
バインダーの分解温度(硬化性樹脂の場合は、硬化した状態での分解温度)は、赤外線吸収材料の分解温度よりも高いものであるのが好ましい。
これにより、脱脂工程において、バインダーに優先して、赤外線吸収材料を分解させることができ、最終的に得られる三次元造形物10中に赤外線吸収材料が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。また、脱脂工程における積層体50の形状の安定性をより優れたものとすることができる。したがって、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
実体部形成用組成物1B’中におけるバインダーの含有率は、0.1質量%以上48質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、第2のパターン形成工程での実体部形成用組成物1B’の流動性をより適切なものとしつつ、バインダーによる粒子の仮固定の機能がより効果的に発揮される。また、脱脂工程でのバインダーの除去をより確実に行うことができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の寸法精度、信頼性をより優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、実体部形成用組成物1B’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;分散剤;界面活性剤;増粘剤;凝集防止剤;消泡剤;スリップ剤(レベリング剤);染料;重合禁止剤;重合促進剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
≪サポート部形成用組成物≫
次に、三次元造形物10の製造に用いる三次元造形物製造用組成物としてのサポート部形成用組成物1A’について説明する。
サポート部形成用組成物1A’は、サポート部5の形成(第1のパターン1Aの形成)に用いることのできるものであれば、その構成成分等は特に限定されないが、複数個の粒子(主材粒子)と粒子を分散する溶剤とを含むものが好ましく、さらに、バインダーを含むものであるのがより好ましい。また、サポート部形成用組成物1A’は、赤外線吸収材料を含むものであるのが好ましい。
以下の説明では、サポート部形成用組成物1A’が複数個の粒子、溶剤、バインダーおよび赤外線吸収材料を含むものである場合について、代表的に説明する。
(粒子)
サポート部形成用組成物1A’が、複数個の粒子を含むものであることにより、形成すべきサポート部5(第1のパターン1A)が微細な形状を有するもの等である場合であっても、サポート部5を高い寸法精度で、効率よく形成することができる。また、サポート部5を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)を効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、脱脂体70に不本意に溶剤、バインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
サポート部形成用組成物1A’中に含まれる粒子の構成材料としては、例えば、実体部形成用組成物1B’の構成材料として説明したものと同様のものが挙げられる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
ただし、サポート部形成用組成物1A’を構成する粒子は、実体部形成用組成物1B’を構成する粒子よりも高融点の材料で構成されたものであるのが好ましい。
粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、筒状、鱗片状等、いかなる形状であってもよく、また、不定形のものであってもよいが、球状をなすものであるのが好ましい。
粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート部形成用組成物1A’の流動性をより好適なものとすることができ、第1のパターン形成工程をより円滑に行うことができる。また、サポート部5(第1のパターン1A)を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)をより効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、脱脂体70に不本意に溶剤、バインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。また、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
粒子のDmaxは、0.2μm以上25μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート部形成用組成物1A’の流動性をより好適なものとすることができ、サポート部形成用組成物1A’の供給をより円滑に行うことができる。また、サポート部5(第1のパターン1A)を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)をより効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、脱脂体70に不本意に溶剤、バインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。また、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
サポート部形成用組成物1A’中における粒子の含有率は、30質量%以上93質量%以下であるのが好ましく、35質量%以上88質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート部形成用組成物1A’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、粒子は、三次元造形物10の製造過程(例えば、接合工程等)において、化学反応(例えば、酸化反応等)をする材料で構成されたものであり、サポート部形成用組成物1A’中に含まれる粒子の組成と、最終的な三次元造形物10の構成材料とで、組成が異なっていてもよい。
また、サポート部形成用組成物1A’は、2種以上の粒子を含むものであってもよい。
(溶剤)
サポート部形成用組成物1A’が溶剤を含むことにより、サポート部形成用組成物1A’中において粒子を好適に分散させることができ、ディスペンサー等によるサポート部形成用組成物1A’の吐出を安定的に行うことができる。
サポート部形成用組成物1A’中に含まれる溶剤としては、例えば、実体部形成用組成物1B’の構成材料として説明したものと同様のものが挙げられる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
なお、サポート部形成用組成物1A’中に含まれる溶剤の組成は、実体部形成用組成物1B’中に含まれる溶剤の組成と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
サポート部形成用組成物1A’中における溶剤の含有量は、5質量%以上68質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上60質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート部形成用組成物1A’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
(赤外線吸収材料)
赤外線吸収材料は、赤外線を吸収する機能を有し、赤外線を吸収することにより発熱(昇温)するものである。
サポート部形成用組成物1A’が赤外線吸収材料を含むことにより、前述したのと同様の効果が得られる。
なお、サポート部形成用組成物1A’中に含まれる赤外線吸収材料は、実体部形成用組成物1B’中に含まれる赤外線吸収材料と同一の条件(例えば、組成や含有率等)を満足するものであってもよいし、異なる条件のものであってもよい。
(バインダー)
バインダーは、溶剤が除去された状態で層1(第1のパターン1A)中において粒子同士を仮結合する機能を有するものである。
このようなバインダーを含むことにより、例えば、サポート部形成用組成物1A’を用いて形成された第1のパターン1Aの不本意な変形をより効果的に防止することができる。その結果、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
バインダーとしては、脱脂工程に供される前のサポート部形成用組成物1A’(すなわち、第1のパターン1A)中において粒子を仮固定する機能を有するものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の各種樹脂材料等を用いることができる。
硬化性樹脂を含む場合、サポート部形成用組成物1A’の吐出後であって接合工程よりも前のタイミングで、当該硬化性樹脂の硬化反応を行ってもよい。
これにより、サポート部形成用組成物1A’を用いて形成されたパターンの不本意な変形をさらに効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
硬化性樹脂の硬化反応を進行させる硬化処理は、例えば、加熱や紫外線等のエネルギー線の照射により行うことができる。
サポート部形成用組成物1A’が硬化性樹脂を含むものである場合、当該硬化性樹脂としては、例えば、実体部形成用組成物1B’の構成成分として説明したものと同様のもの等を用いることができる。
なお、サポート部形成用組成物1A’中に含まれる硬化性樹脂と、実体部形成用組成物1B’中に含まれる硬化性樹脂とは、同一の条件(例えば、同一の組成等)のものであってもよいし、異なる条件のものであってもよい。
サポート部形成用組成物1A’中において、バインダーは、いかなる形態で含まれるものであってもよいが、液状(例えば、溶融状態、溶解状態等)をなすものであるのが好ましい。すなわち、分散媒の構成成分として含まれているのが好ましい。
これにより、バインダーは、粒子を分散する分散媒として機能することができ、サポート部形成用組成物1A’の吐出性をより優れたものとすることができる。
サポート部形成用組成物1A’中におけるバインダーの含有率は、0.1質量%以上48質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、第1のパターン形成工程でのサポート部形成用組成物1A’の流動性をより適切なものとしつつ、バインダーによる粒子の仮固定の機能がより効果的に発揮される。また、脱脂工程でのバインダーの除去をより確実に行うことができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の寸法精度、信頼性をより優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、サポート部形成用組成物1A’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;分散剤;界面活性剤;増粘剤;凝集防止剤;消泡剤;スリップ剤(レベリング剤);染料;重合禁止剤;重合促進剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
《三次元造形物製造用組成物セット》
次に、本発明の三次元造形物製造用組成物セットについて説明する。
本発明の三次元造形物製造用組成物セットは、三次元造形物の製造に用いる複数種の組成物を備えるものであって、前記組成物のうちの少なくとも1種として前述したような本発明の三次元造形物製造用組成物(複数個の粒子と溶剤と赤外線吸収材料とを含む組成物)を備えるものである。
これにより、優れた生産性で信頼性に優れた三次元造形物を製造するのに用いることができる三次元造形物製造用組成物セットを提供することができる。
本発明の三次元造形物製造用組成物セットは、前述したような本発明の三次元造形物製造用組成物を少なくとも1種備えるものであればよいが、2種以上の本発明の三次元造形物製造用組成物を備えているのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
また、本発明の三次元造形物製造用組成物セットは、三次元造形物10の実体部2の形成に用いる実体部形成用組成物を少なくとも1種備えるとともに、サポート部5の形成に用いるサポート部形成用組成物を少なくとも1種備えるものであるのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
また、本発明の三次元造形物製造用組成物セットを構成する各三次元造形物製造用組成物では、溶剤除去速度(例えば、同一の赤外線照射条件での溶剤の除去速度等)を揃える目的で、赤外線吸収材料の含有率等を調整するのが好ましい。
これにより、溶剤除去速度のばらつきによる三次元造形物10の製造時における不本意な変形をより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
《三次元造形物製造装置》
次に、本発明の三次元造形物製造装置について説明する。
図12は、三次元造形物製造装置の好適な実施形態を模式的に示す断面図である。
三次元造形物製造装置M100は、層1の形成を繰り返し行うことにより、三次元造形物10を製造するのに用いられるものであって、制御部(制御手段)M1と、三次元造形物10の実体部2となるべき部位を支持するサポート部5の形成に用いるサポート部形成用組成物1A’を吐出するサポート部形成用組成物吐出ノズル(第1のノズル)M2と、三次元造形物10の実体部2の形成に用いる実体部形成用組成物1B’を吐出する実体部形成用組成物吐出ノズル(第2のノズル)M3と、赤外線を照射する赤外線照射手段M6とを備えている。そして、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’のうち少なくとも一方は、本発明の三次元造形物製造用組成物(複数個の粒子と、溶剤と、赤外線吸収材料とを含む組成物)である。
これにより、前述したような本発明の製造方法を好適に実行することができ、優れた生産性で信頼性に優れた三次元造形物10を製造することができる。
制御部M1は、コンピューターM11と、駆動制御部M12とを有している。
コンピューターM11は、内部にCPUやメモリ等を備えて構成される一般的な卓上型コンピューター等である。コンピューターM11は、三次元造形物10の形状をモデルデータとしてデータ化し、それを平行な幾層もの薄い断面体にスライスして得られる断面データ(スライスデータ)を駆動制御部M12に対して出力する。
制御部M1が有する駆動制御部M12は、サポート部形成用組成物吐出ノズルM2、実体部形成用組成物吐出ノズルM3、層形成部M4、赤外線照射手段M6等をそれぞれに駆動する制御手段として機能する。具体的には、例えば、サポート部形成用組成物吐出ノズルM2および実体部形成用組成物吐出ノズルM3の駆動、サポート部形成用組成物吐出ノズルM2によるサポート部形成用組成物1A’の吐出、実体部形成用組成物吐出ノズルM3による実体部形成用組成物1B’の吐出、ステージ(昇降ステージ)M41の下降量、赤外線照射手段M6からの赤外線の照射等を制御する。
層形成部M4は、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’が供給され、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’を用いて形成された層1を支持するステージ(昇降ステージ)M41と、昇降ステージM41を取り囲む枠体M45とを有している。
昇降ステージM41は、先に形成された層1の上に、新たな層1を形成するのに際して、駆動制御部M12からの指令により所定量だけ順次下降する。
ステージM41は、表面(より詳しくは、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’が付与される部位)が平坦なものである。これにより、厚みの均一性の高い層1を容易かつ確実に形成することができる。
ステージM41は、高強度の材料で構成されたものであるのが好ましい。ステージM41の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼等の各種金属材料等が挙げられる。
また、ステージM41の表面には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、サポート部形成用組成物1A’の構成材料や、実体部形成用組成物1B’の構成材料がステージM41に強固に付着してしまうことをより効果的に防止したり、ステージM41の耐久性を特に優れたものとし、三次元造形物10のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。ステージM41の表面の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2は、駆動制御部M12からの指令により移動し、サポート部形成用組成物1A’をステージM41上の所望の部位に所定のパターンで吐出するように構成されている。
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2としては、例えば、インクジェットヘッドノズル、各種ディスペンサーノズル等が挙げられるが、ディスペンサーノズルであるのが好ましい。
これにより、例えば、インクジェット法等で組成物を吐出する場合に比べて、三次元造形物10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、比較的高い粘度の組成物であっても好適に吐出することができ、材料選択の幅が広がる。
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2の吐出部の大きさ(ノズル径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとしつつ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2は、サポート部形成用組成物1A’を液滴として吐出するものであるのが好ましい。これにより、微細なパターンでサポート部形成用組成物1A’を付与することができ、微細な構造を有する三次元造形物10であっても、特に高い寸法精度、特に高い生産性で製造することができる。
実体部形成用組成物吐出ノズルM3は、駆動制御部M12からの指令により移動し、実体部形成用組成物1B’をステージM41上の所望の部位に所定のパターンで吐出するように構成されている。
実体部形成用組成物吐出ノズルM3としては、例えば、インクジェットヘッドノズル、各種ディスペンサーノズル等が挙げられるが、ディスペンサーノズルであるのが好ましい。
これにより、例えば、インクジェット法等で組成物を吐出する場合に比べて、三次元造形物10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、比較的高い粘度の組成物であっても好適に吐出することができ、材料選択の幅が広がる。
実体部形成用組成物吐出ノズルM3の吐出部の大きさ(ノズル径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとしつつ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
実体部形成用組成物吐出ノズルM3は、実体部形成用組成物1B’を液滴として吐出するものであるのが好ましい。これにより、微細なパターンで実体部形成用組成物1B’を付与することができ、微細な構造を有する三次元造形物10であっても、特に高い寸法精度、特に高い生産性で製造することができる。
赤外線照射手段M6は、駆動制御部M12からの指令により、サポート部形成用組成物1A’、実体部形成用組成物1B’により形成された層1に向けて、赤外線を照射するように構成されている。
赤外線照射手段M6としては、例えば、ハロゲンヒーター、赤外線レーザー装置等が挙げられる。
上記のような構成により、複数の層1を積層して、積層体50を得ることができる。
得られた積層体50に対して、脱脂処理、接合処理(焼結処理)を施すことにより、三次元造形物10を得ることができる。
本実施形態の三次元造形物製造装置M100は、脱脂処理を行う脱脂手段(図示せず)、接合処理(焼結処理)を行う接合手段(焼結手段)(図示せず)を備えていてもよい。
これにより、層1の形成等と、脱脂処理、接合処理とを同一の装置で行うことができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
《三次元造形物》
本発明に係る三次元造形物は、前述したような本発明の三次元造形物製造装置を用いて製造することができる。
これにより、優れた生産性で信頼性に優れた三次元造形物を製造することができる。
三次元造形物の用途は、特に限定されないが、例えば、人形、フィギュア等の鑑賞物・展示物;インプラント等の医療機器等が挙げられる。
また、三次元造形物は、プロトタイプ、量産品、オーダーメード品のいずれに適用されるものであってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、単一の層について、第1のパターン形成工程の後に第2のパターン形成工程を行うものとして説明したが、少なくとも1つの層の形成において、第1のパターン形成工程と第2のパターン形成工程の順番は逆であってもよい。また、異なる領域で複数種の組成物を同時に付与してもよい。
また、前述した実施形態では、単一の層について、第1のパターン形成工程および第2のパターン形成工程を行った後に溶剤除去工程を行う場合について代表的に説明したが、例えば、第1のパターン形成工程の後、および、第2のパターン形成工程の後のそれぞれについて、個別に、溶剤除去工程をおこなってもよい。
また、前述した実施形態では、全ての層の形成に第1のパターンおよび第2のパターンを形成する場合について代表的に説明したが、積層体は、例えば、第1のパターンを有さない層や、第2のパターンを有さない層を備えるものであってもよい。また、ステージとの接触面(ステージの直上)に、実体部に対応する部位が形成されない層(例えば、サポート部のみで構成された層)を形成し、当該層を犠牲層として機能させてもよい。
また、本発明の三次元造形物の製造方法においては、工程・処理の順番は、前述したものに限定されず、その少なくとも一部を入れ替えて行ってもよい。例えば、前述した実施形態では、積層体を得たのちに、脱脂工程、サポート部除去工程、焼結工程をこの順に行う場合について代表的に説明したが、これらの順番を入れ替えて行ってもよい。より具体的には、脱脂工程、焼結工程、サポート部除去工程の順で行ってもよいし、サポート部除去工程、脱脂工程、焼結工程の順で行ってもよい。また、例えば、層形形成工程と溶剤除去工程とを、同時進行的に行ってもよい。また、各層について、逐次接合処理を施してもよい。この場合、各層への接合処理は、例えば、レーザー光の照射により好適に行うことができる。
また、例えば、バインダーを含まない組成物を用いる場合には、脱脂工程を省略することができる。また、バインダーを含む組成物を用いる場合であっても、接合工程において、粒子の接合とともに、バインダーの除去を行ってもよく、このような場合、脱脂工程を省略することができる。
また、前述した実施形態では、接合工程において、実体部形成用組成物中に含まれる粒子の接合を行い、サポート部形成用組成物中に含まれる粒子の接合を行わない場合について中心的に説明したが、接合工程では、実体部形成用組成物中に含まれる粒子の接合とともに、サポート部形成用組成物中に含まれる粒子の接合を行ってもよい。
また、製造すべき三次元造形物の形状によっては、サポート部を形成しなくてもよい。
また、本発明の製造方法においては、必要に応じて、前処理工程、中間処理工程、後処理工程を行ってもよい。
前処理工程としては、例えば、ステージの清掃工程等が挙げられる。
後処理工程としては、例えば、洗浄工程、バリ取り等を行う形状調整工程、着色工程、被覆層形成工程、粒子の接合強度を向上させるための熱処理工程等が挙げられる。
また、本発明の三次元造形物製造装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、ステージの表面に直接層を形成する場合について代表的に説明したが、例えば、ステージ上に造形プレートを配置し、当該造形プレート上に層を積層して三次元造形物を製造してもよい。
また、本発明の三次元造形物の製造方法は、前述したような三次元造形物製造装置を用いて実行するものに限定されない。
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(25℃)において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(25℃)における数値である。
[1]三次元造形物製造用組成物の製造
(実施例1)
平均粒径が3.0μmのCu粉末:81.5質量部と、溶剤としてのカルビトールアセテート:13.0質量部と、赤外線吸収材料としての銅フタロシアニン色素:0.5質量部と、バインダーとしてのメタクリル系樹脂:5.0質量部とを混合することにより、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)としての実体部形成用組成物を得た。前記粒子(Cu粉末):100体積部に対する赤外線吸収材料の含有量は9体積部であった。
また、平均粒径が3.0μmのアルミナ粉末:74.1質量部と、溶剤としてのカルビトールアセテート:17.6質量部と、赤外線吸収材料としての銅フタロシアニン色素:2.1質量部と、バインダーとしてのメタクリルレート系樹脂:6.2質量部とを混合することにより、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)としてのサポート部形成用組成物を得た。前記粒子(アルミナ粉末):100体積部に対する赤外線吸収材料の含有量は18.6体積部であった。
これにより、実体部形成用組成物とサポート部形成用組成物とからなる三次元造形物製造用組成物を得た。
なお、実体部形成用組成物中およびサポート部形成用組成物中において、赤外線吸収材料は溶解状態で含まれていた。
[2]三次元造形物の製造
前記のようにして得られた三次元造形物製造用組成物を用いて、設計寸法が厚さ:4mm×幅:10mm×長さ:80mmの直方体形状である三次元造形物を、以下のようにして製造した。
まず、図12に示すような三次元造形物製造装置を用意し、ディスペンサーのサポート部形成用組成物吐出ノズルから、ステージ上に所定のパターンで、サポート部形成用組成物を複数の液滴として吐出して第1のパターン(サポート部用パターン)を形成した。
次に、ディスペンサーの実体部形成用組成物吐出ノズルから、ステージ上に所定のパターンで、実体部形成用組成物を複数の液滴として吐出して第2のパターン(実体部用パターン)を形成した。
これにより、第1のパターンおよび第2のパターンからなる層が形成された。層の厚みは50μmであった。
その後、第1のパターンおよび第2のパターンからなる層に対して、赤外線照射手段としてのハロゲンヒーターから赤外線を照射する赤外線照射処理を施した。この処理により、層中の赤外線吸収材料が発熱し、層全体の温度が上昇し、層中から溶剤が除去された。ハロゲンヒーターが発する光は、波長:1μmに極大値を有するスペクトルを有するものであった。また、層に照射する赤外線の単位面積当たりのエネルギー(溶剤を除去すべき領域における単位面積当たりのエネルギー)を100mJ/cm2に設定した。
その後、溶剤が除去された層上への新たな層形成工程(第1のパターン形成工程、第2のパターン形成工程)および溶剤の除去工程を繰り返し行うことにより、製造すべき三次元造形物に対応する形状の積層体を得た。
次に、得られた積層体に対し、アルゴンガス中で、500℃×5時間という条件での加熱による脱脂処理を施し、脱脂体を得た。
次に、脱脂体から刷毛でサポート部を払い除ける方法でサポート部を除去した。
その後、サポート部が取り除かれた脱脂体に対し、水素ガス中で、980℃×2時間という条件での加熱による焼結処理(接合処理)を施し、三次元造形物を得た。
(実施例2)
実体部形成用組成物、サポート部形成用組成物の組成が表1に示すものとなるようにし、ガス雰囲気をアルゴンガスに、焼結処理での処理温度を1380℃とした以外は、前記実施例1と同様にして三次元造形物製造用組成物(三次元造形物製造用組成物セット)、三次元造形物を製造した。
(実施例3)
三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)として、実体部形成用組成物のみを用い、サポート部形成用組成物を用いなかった(第1のパターン形成工程を省略した)以外は、前記実施例1と同様にして三次元造形物製造用組成物、三次元造形物を製造した。
(比較例1)
実体部形成用組成物、サポート部形成用組成物の組成が表1に示すものとなるようにした以外は、前記実施例1と同様にして三次元造形物製造用組成物(三次元造形物製造用組成物セット)、三次元造形物を製造した。
前記各実施例および比較例の三次元造形物製造用組成物(三次元造形物製造用組成物セット)の組成を表1にまとめて示す。なお、表1中、カルビトールアセテートを「CA」、メタクリル系樹脂を「PM」、銅フタロシアニン色素を「IRA1」で示した。
また、前記各実施例および比較例で用いたサポート部形成用組成物、実体部形成用組成物の粘度は、いずれも、1000mPa・s以上20000mPa・s以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例および比較例でのサポート部形成用組成物、実体部形成用組成物の液滴1滴あたりの体積は、いずれも50pL以上100pL以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例で用いた赤外線吸収材料は、いずれも、赤外線領域に吸収率が40%以上の波長を有するものであり、分解温度が300℃以上600℃以下のものであり、赤外線領域での吸収スペクトルにおいて、0.74μm以上4μm以下の領域に吸収極大を有するものであった。また、前記各実施例で用いた赤外線吸収材料は、いずれも、赤外線領域において、三次元造形物製造用組成物の他の成分とは、異なる波長に吸収極大を有するスペクトルを有するものであった。また、前記各実施例では、いずれも、赤外線吸収材料の分解温度は、溶剤の沸点よりも高いものであった。また、前記各実施例では、赤外線照射後における各層中の溶剤の含有率は、0.5質量%以上2.0質量%以下の範囲内の値であった。
[3]評価
[3.1]三次元造形物の生産性(溶剤の除去効率)
前記各実施例および各比較例について、各三次元造形物製造用組成物(実体部形成用組成物、サポート部形成用組成物)を用いて、それぞれ、前記と同様にして、厚さ:100μmの単一の層を形成した。
その後、これらの層について、それぞれ、前記ハロゲンヒーターを用いて前記と同様の条件で赤外線の照射を行った。
層中に含まれる溶剤量が初期の5%となるまでの時間(溶剤の含有率が三次元造形物製造用組成物中での含有率の20分の1になるまでの時間)を測定し、以下の基準に従い評価した。当該時間が短いほど、効率よく溶剤を除去することができていると言うことができ、三次元造形物の生産性に優れているといえる。
A:溶剤量が初期の5%となるまでの時間が30秒未満である。
B:溶剤量が初期の5%となるまでの時間が30秒以上40秒未満である。
C:溶剤量が初期の5%となるまでの時間が40秒以上50秒未満である。
D:溶剤量が初期の5%となるまでの時間が50秒以上60秒未満である。
E:溶剤量が初期の5%となるまでの時間が60秒以上である。
[3.2]寸法精度
前記各実施例および各比較例の三次元造形物について、厚さ、幅、長さを測定し、設計値からのずれ量を求め、以下の基準に従い評価した。
A:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が1.0%未満である。
B:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が1.0%以上2.0%未満である。
C:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が2.0%以上4.0%未満である。
D:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が4.0%以上7.0%未満である。
E:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が7.0%以上である。
これらの結果を表2にまとめて示す。
表2から明らかなように、本発明では、寸法精度の高い三次元造形物を効率よく製造することができた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。