以下、添付する図面を参照しつつ、好適な実施形態について詳細な説明をする。
《三次元造形物の製造方法》
まず、本発明の三次元造形物の製造方法について説明する。
図1〜図10は、本発明の三次元造形物の製造方法の好適な実施形態の工程を模式的に示す縦断面図である。また、図11は、本発明の三次元造形物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図示のように、本実施形態の三次元造形物10の製造方法は、複数の層1を積層することにより、三次元造形物10を製造する方法であって、金属粒子およびバインダーを含む複数種の組成物1’を用いて層1を形成する層形成工程と、層形成工程を繰り返し行うことにより得られた積層体50に対して、脱脂処理を施し脱脂体70を得る脱脂工程とを有している。
そして、組成物1’として、金属粒子および第1のバインダーを含む第1の組成物1A’と、前記金属粒子および第2のバインダーを含む第2の組成物1B’とを用い、脱脂体70において、三次元造形物10の外表面となるべき第1の領域71での残炭率が、三次元造形物10の内部の領域となるべき第2の領域72での残炭率よりも高くなるように、層形成工程において第1の組成物1A’および第2の組成物1B’をそれぞれ所定のパターンで供給する。
このように、脱脂体70の各部位において残炭率が異なるものとなるように、複数種の組成物1’を組み合わせて用いることにより、脱脂体70の表面(第1の領域71)においては、残炭率(炭素含有率)を比較的高いものとすることができ、脱脂体70の形状の安定性を優れたものとすることができる。よって、三次元造形物10の製造時(特に、後に詳述する焼結工程)における不本意な変形(欠け等を含む)を防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度を優れたものとすることができる。その一方で、脱脂体70の内部の領域(第2の領域72)での残炭率(炭素含有率)を低いものとすることにより、最終的に得られる三次元造形物10において、金属材料が本来有している特性(材料特性)を効果的に発揮させることができる。
したがって、寸法精度に優れ、かつ、所望の材料特性(例えば、金属材料が有している強度、靭性等の機械的特性)を有する三次元造形物を製造することができる三次元造形物10の製造方法を提供することができる。
これに対し、上記のような条件を満足しない場合には、上述したような優れた効果は得られない。
例えば、三次元造形物の製造に1種類の組成物を用いた場合には、脱脂体における残炭率が低いものとなるように組成物の組成等を調整すると、脱脂体の形状の安定性が低下し、三次元造形物の製造時(特に、焼結工程)における不本意な変形を生じ易くなり、最終的に得られる三次元造形物は、寸法精度に劣ったものとなり、脱脂体における残炭率が高いものとなるように組成物の組成等を調整すると、例えば、焼結工程において、炭素と金属との化学反応(金属炭化物を生成する化学反応)が進行し、三次元造形物において、所望の特性(より具体的には、金属材料が有する材料特性)が得られず、三次元造形物の耐食性が低下する等の問題を生じる。
また、複数種の組成物を組み合わせて用いた場合であっても、脱脂体の表面の残炭率に比べて脱脂体の内部の残炭率が高いものであると、脱脂体の形状の安定性が低下し、三次元造形物の製造時(特に、焼結工程)における不本意な変形を生じ易くなり、最終的に得られる三次元造形物は、寸法精度に劣ったものとなるとともに、三次元造形物において、所望の特性(より具体的には、金属材料が有する材料特性)が得られず、三次元造形物の耐食性が低下する等の問題を生じる。
なお、本明細書において、残炭率とは、脱脂体の対象とする領域の全質量をWA[g]、当該領域中における炭素の含有量をWC[g]としたときに、(WC/WA)×100の値のことをいう。
また、脱脂体とは、所定の形状に成形された成形体(積層体50)に対し、バインダーを除去するための処理(脱脂処理)を施すことにより得られた物のことをいう。なお、脱脂処理では、成形体(積層体50)中に含まれるバインダーのうちの少なくとも一部を除去すればよく、脱脂体には、バインダーの一部が残存していてもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
≪層形成工程≫
層形成工程では、複数個の金属粒子およびバインダーを含む組成物1’を用いて層1を形成する。
特に、1層目の層1を形成する層形成工程では、ステージ(支持体)M41の表面に向かって組成物1’を吐出し、2層目以降の層1を形成する層形成工程では、先に形成された層1に向かって組成物1’を吐出する。すなわち、1層目の層1を形成する層形成工程では、ステージM41が組成物1’の被着体であり、2層目以降の層1を形成する層形成工程では、先に形成された層1が組成物1’の被着体である。なお、ステージM41上に金属プレート(図示せず)等の別部材を載置し、これを被着体としてもよい。
本工程では、三次元造形物10の実体部となるべき部位を形成するための組成物1’として、金属粒子および第1のバインダーを含む第1の組成物1A’と、金属粒子および第2のバインダーを含む第2の組成物1B’とを用いる。
このように複数種の組成物1’(第1の組成物1A’、第2の組成物1B’)を用いることにより、脱脂体70において、残炭率(炭素含有率)が互いに異なる複数の領域(第1の領域71、第2の領域72)を好適に形成することができる。
層形成工程は、金属粒子およびバインダーを含む組成物1’(少なくとも、第1の組成物1A’および第2の組成物1B’)を用いて層1を形成するものであれば、組成物1’の供給方法は特に限定されず、例えば、インクジェット装置等を用いて行うこともできるが、ディスペンサーを用いて、組成物1’を吐出することにより行うものであるのが好ましい。
このように、ディスペンサーを用いて組成物1’の吐出を行うことにより、高粘度の組成物1’であっても好適に供給(吐出)することができ、組成物1’が目的の部位に接触した後の当該組成物1’のダレ等をより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。また、高粘度の組成物1’を用いることにより、厚みが比較的大きい層1を容易に形成することができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
本実施形態では、各層1の形成において、第2の組成物1Bを用いた部分を中心部に形成し、その周囲に第1の組成物1Aを用いた部分を形成する。前者は後述する第2の領域72に対応し、後者は後述する第1の領域71に対応する。
第1の組成物1A’および第2の組成物1B’は、いずれも、金属粒子を含むものである。
金属粒子は、金属材料を含むものであればよく、特に限定されないが、鉄系合金で構成されたものであるのが好ましい。特に、鉄系合金による金属粒子が全金属粒子の70質量%以上を占めるのが好ましい。
鉄系合金は、安価で、種々の特性に優れるものであるが、その一方で、炭素の含有率が低すぎると、形状の変化を生じやすく(特に、焼結処理が施されるような高温の環境下での形状の安定性が低く)、炭素の含有率(特に、不純物としての金属炭化物の含有率)が高くなると、鉄系合金が本来有している特性が急激に低下するという問題が顕著に発生する材料である。これに対し、本発明では、鉄系合金を用いた場合に、鉄系合金が有する特長を発揮させつつ、上記のような問題の発生を効果的に防止することができる。すなわち、金属粒子が鉄系合金で構成されたものであると、本発明による効果がより顕著に発揮され、三次元造形物10の寸法精度を優れたものとしつつ、三次元造形物10の特性(材料特性)をより優れたものとすることができる。
中でも、金属粒子は、ステンレス鋼で構成されたものであるのが好ましい。特に、ステンレス鋼による金属粒子が全金属粒子の70質量%以上を占めるのが好ましい。
ステンレス鋼は、各種鉄系合金の中でも、特に、耐食性等の種々の特性に優れるものであるが、その一方で、炭素の含有率が低すぎると、形状の変化を生じやすく(特に、焼結処理が施されるような高温の環境下での形状の安定性が低く)、炭素の含有率(特に、不純物としての金属炭化物の含有率)が高くなると、ステンレス鋼が本来有している特性が急激に低下するという問題が顕著に発生する材料である。これに対し、本発明では、ステンレス鋼を用いた場合に、ステンレス鋼が有する特長を発揮させつつ、上記のような問題の発生を効果的に防止することができる。すなわち、金属粒子がステンレス鋼で構成されたものであると、本発明による効果がさらに顕著に発揮され、三次元造形物10の寸法精度を優れたものとしつつ、三次元造形物10の特性(材料特性)をさらに優れたものとすることができる。
金属粒子を構成するステンレス鋼中におけるNiの含有率は、3.0質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、3.5質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、本発明による効果がより顕著に発揮され、脱脂体70の形状の安定性をより優れたものとしつつ、最終的に得られる三次元造形物10の特性(耐食性等)をより優れたものとすることができる。
ステンレス鋼としては、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、析出硬化ステンレス鋼が挙げられるが、中でも、オーステナイト系ステンレス鋼であるのが好ましい。特に、オーステナイト系ステンレス鋼による金属粒子が全金属粒子の55質量%以上を占めるのが好ましく、70質量%以上を占めるのがより好ましい。
これにより、本発明による効果がより顕著に発揮され、脱脂体70の形状の安定性をより優れたものとしつつ、最終的に得られる三次元造形物10の特性(耐食性等)をより優れたものとすることができる。
なお、第1の組成物1A’と第2の組成物1B’とでは、構成成分としての金属粒子の条件(例えば、含有率、組成、粒径、形状等)が同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
第1の組成物1A’と第2の組成物1B’とは、脱脂体70の第1の領域71と第2の領域72との間で、残炭率について所定の条件を満足することができるものであればよいが、第1の組成物1A’中におけるバインダー(第1のバインダー)の含有率は、第2の組成物1B’中におけるバインダー(第2のバインダー)の含有率よりも高いものであるのが好ましい。
これにより、脱脂体70の第1の領域71および第2の領域72の間で、より容易にかつより確実に、残炭率について、後述するようなより好適な関係を満足させることができる。その結果、寸法精度および材料特性がより優れた三次元造形物10を、より容易かつより確実に製造することができる。
第1の組成物1A’中におけるバインダー(第1のバインダー)の含有率をC1B[質量%]、第2の組成物1B’中におけるバインダー(第2のバインダー)の含有率をC2B[質量%]としたとき、5≦C1B/C2B≦40の関係を満足するのが好ましく、10≦C1B/C2B≦25の関係を満足するのがより好ましい。
これにより、第1の組成物1A’および第2の組成物1B’の取扱いのし易さ(特に、組成物1’の流動性、吐出安定性、保存安定性等)をより優れたものとしつつ、脱脂工程での、第1の組成物1A’を用いて形成された領域と第2の組成物1B’を用いて形成された領域との間での収縮率の差が大きくなりすぎることを効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
第1のバインダーと、第2のバインダーとは、同一の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよいが、第1の組成物1A’中におけるバインダー(第1のバインダー)の含有率が第2の組成物1B’中におけるバインダー(第2のバインダー)の含有率よりも高いものである場合には、第1のバインダーと、第2のバインダーとは、同一の組成を有するものであるのが好ましい。
これにより、第1の組成物1A’および第2の組成物1B’の原料の共通化を図ることができ、三次元造形物10の生産コストの低減に有利であるとともに、第1の組成物1A’および第2の組成物1B’の製造条件の調整が容易になる。また、例えば、脱脂工程におけるバインダーの分解温度を共通化させることができ、脱脂工程の条件設定等が容易になるとともに、脱脂工程後に、第1のバインダー、第2のバインダーのうち一方のみが多量に残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
また、第1のバインダーと、第2のバインダーとは、異なる組成を有するものであってもよい。
これにより、残炭のし易さの異なるバインダーを組み合わせて用いることができ、より容易かつより確実に、脱脂体70の第1の領域71と第2の領域72との間で、残炭率について所定の条件を満足させることができる。
また、第1のバインダーと第2のバインダーとが異なる組成を有するものである場合、第1の組成物1A’中における第1のバインダーの含有率と、第2の組成物1B’中における第2のバインダーの含有率とが同一であってもよい。
これにより、脱脂工程での、第1の組成物1A’を用いて形成された領域と第2の組成物1B’を用いて形成された領域との間での収縮率の差をより小さいものとすることができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
第1のバインダーと第2のバインダーとが異なる組成を有するものである場合、第1のバインダーは、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂よりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである。また、第2のバインダーは、(メタ)アクリル樹脂を含むものであるのが好ましい。
これにより、より容易かつより確実に、脱脂体70の第1の領域71と第2の領域72との間で、残炭率について所定の条件を満足させることができる。
また、本実施形態では、本工程において、層1形成用の組成物として、三次元造形物10の実体部となるべき部位を形成するための組成物1’としての第1の組成物1A’および第2の組成物1B’に加えて、三次元造形物10の製造過程において三次元造形物10の実体部となるべき部位を支持する機能を有するサポート材(支持部)5の形成に用いるサポート材形成用組成物1C’を用いている。
これにより、複数の層1を積み重ねる場合において、新たに形成する層1のうち三次元造形物10の実体部に対応する部位の少なくとも一部が、先に形成された層1のうち三次元造形物10の実体部に対応する部位に接触しない場合であっても、当該新たに形成する層1の前記部位(すなわち、先に形成された層1のうち三次元造形物10の実体部に対応する部位に接触しない部位)を好適に支持することができる。このようなことから、様々な形状の三次元造形物10を優れた寸法精度で製造することができる。
各組成物1’(第1の組成物1A’、第2の組成物1B’、サポート材形成用組成物1C’)は、例えば、ペースト状のものであってもよい。
本工程における各組成物1’(第1の組成物1A’、第2の組成物1B’、サポート材形成用組成物1C’)の粘度は、10mPa・s以上20000mPa・s以下であるのが好ましく、100mPa・s以上10000mPa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、組成物1’(第1の組成物1A’、第2の組成物1B’、サポート材形成用組成物1C’)の吐出安定性をより優れたものとすることができるとともに、適度な厚みを有する層1の形成に好適であり、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、被着体に接触した組成物1’が過剰に濡れ広がることが効果的に防止され、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、本明細書中において、粘度とは、特に条件の指定がない限り、せん断速度:10[s−1]という条件で、レオメーターを用いて測定される値をいう。
本工程では、各組成物1’(第1の組成物1A’、第2の組成物1B’、サポート材形成用組成物1C’)を、それぞれ複数の液滴として吐出するのが好ましい。
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
本工程で各組成物1’(第1の組成物1A’、第2の組成物1B’、サポート材形成用組成物1C’)を複数の液滴として吐出する場合、吐出される液滴の1滴あたりの体積は、1pL以上500pL以下であるのが好ましく、2pL以上300pL以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができるとともに、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
三次元造形物10の製造においては、第1の組成物1A’、第2の組成物1B’の少なくとも一方について、複数種の組成物を用いてもよい。
これにより、例えば、三次元造形物10の各部位に求められる特性に応じて、材料を組み合わせることができ、三次元造形物10全体としての特性(外観、機能性(例えば、弾性、靱性、耐熱性、耐腐食性等)等を含む)をより優れたものとすることができる。
また、三次元造形物10の製造においては、複数種のサポート材形成用組成物1C’を用いてもよい。
第1の組成物1A’、第2の組成物1B’およびサポート材形成用組成物1C’については、後に詳述する。
三次元造形物10の製造においては、所定回数だけ層形成工程を行い、複数の層1が積層された積層体50を得る。
すなわち、すでに形成された層1上に新たな層1を形成すべきか否かを判断し、形成すべき層1がある場合には新たな層1を形成し、形成すべき層1がない場合には積層体50に対して後に詳述する脱脂工程を行う。
組成物1’を用いて形成される各層1の厚みは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、20μm以上250μm以下であるのがより好ましい。
これにより、三次元造形物10の生産性を優れたものとしつつ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
≪脱脂工程≫
脱脂工程では、前述した層形成工程を繰り返し行うことにより得られた積層体50に対して、脱脂処理を施し脱脂体70を得る。
脱脂工程を施すことにより、積層体50のうち、第1の組成物1A’を用いて形成された領域(三次元造形物10の外表面となるべき領域)が第1の領域71となり、第2の組成物1B’を用いて形成された領域(三次元造形物10の内部となるべき領域)が第2の領域72となる。
そして、第1の領域71での残炭率は、第2の領域72での残炭率よりも高いものとなる。
脱脂体70における第1の領域71の厚さは、特に限定されないが、0.05mm以上3.0mm以下であるのが好ましく、0.10mm以上1.0mm以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
第1の領域71における残炭率は、0.050質量%以上0.25質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上0.20質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、脱脂体70の形状の安定性をより優れたものとし、三次元造形物10の製造時(特に、焼結工程)における不本意な変形をより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
また、第1の領域71における残炭率が前記範囲内の値であると、焼結工程において、脱脂体70に含まれる金属酸化物の還元反応を好適に進行させることができ、最終的に得られる三次元造形物10の審美性(特に光沢感)をより優れたものとすることができる。このため、装飾性が求められる三次元造形物10(装飾品)の製造に好適に適用することができる。また、還元反応が進行することにより、導電性が向上するため、導電性が求められる部材(例えば、電子部品等)の製造にも好適に適用することができる。
第2の領域72における残炭率は、0.010質量%以下であるのが好ましく、0.005質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、三次元造形物10において、金属材料が有する材料特性をより効果的に発揮することができ、より高い特性を得ることができる。
また、第1の領域71における残炭率をX1[質量%]、第2の領域72における残炭率をX2[質量%]としたとき、X2/X1≦0.10の関係を満足するのが好ましく、X2/X1≦0.03の関係を満足するのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮され、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができるとともに、三次元造形物10において、金属材料が有する材料特性をさらに効果的に発揮することができ、さらに高い特性を得ることができる。
脱脂処理は、積層体50中に含まれるバインダーを除去する方法であればいかなる方法で行ってもよいが、酸素、硝酸ガス等の酸化性雰囲気の他、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10−4Pa以上13.3Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
また、脱脂工程(熱処理)における処理温度は、特に限定されないが、100℃以上750℃以下であるのが好ましく、150℃以上700℃以下であるのがより好ましい。
これにより、脱脂工程における積層体50、脱脂体70の不本意な変形をより確実に防止することができ、脱脂処理をより効率よく進行させることができる。その結果、より優れた寸法精度の三次元造形物10をより優れた生産性で製造することができる。
また、脱脂工程(熱処理)における処理時間(熱処理時間)は、0.5時間以上20時間以下であるのが好ましく、1時間以上10時間以下であるのがより好ましい。
これにより、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、脱脂体70におけるバインダーの残存率を十分に低いものとすることができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
また、このような熱処理による脱脂は、種々の目的(例えば、脱脂時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
≪サポート材除去工程≫
そして、脱脂工程を行った後に、サポート材5を除去する。これにより、脱脂体70が取り出される。
本工程の具体的な方法としては、例えば、刷毛等でサポート材5を払い除ける方法、サポート材5を吸引により除去する方法、空気等の気体を吹き付ける方法、水等の液体を付与する方法(例えば、液体中に前記のようにして得られたサポート材5と脱脂体70との複合物を浸漬する方法、液体を吹き付ける方法等)、超音波振動等の振動を付与する方法等が挙げられる。また、これらから選択される2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。
また、サポート材5は、例えば、サポート材5の少なくとも一部を溶解する液体を用いることにより除去されるものであってもよいし、化学反応により分解されることにより除去されるものであってもよい。
なお、脱脂体70が残炭率について上述したような条件を満足するものであることにより、サポート材除去工程においても、脱脂体70の変形が効果的に防止される。
≪焼結工程≫
本実施形態では、サポート材5が取り除かれた脱脂体70に対し焼結処理(焼成処理)を施す焼結工程をさらに有している。
これにより、脱脂体70中に含まれる金属粒子同士が接合(焼結)されて接合部2が形成され、焼結体としての三次元造形物10が得られる。
このように接合部2が形成されることにより、三次元造形物10の実体部(接合部2)は、金属粒子が強固に接合して構成されたものとなり、三次元造形物10の機械的強度等を優れたものとすることができる。
前述したように、脱脂体70における第1の領域71での残炭率が第2の領域72での残炭率より高いので、それらを焼結して得られた部位、すなわち、三次元造形物10の外表面と内部とで、残炭率について、脱脂体70と同様の大小関係を有するものとすることができる。また、焼結条件等によっては、三次元造形物10の外表面と内部とで、残炭率が同等となるようにすることもできる。
焼結工程は、加熱処理により行う。
焼結工程での加熱は、脱脂体70を構成する金属粒子の構成材料の融点以上の温度で行うのが好ましい。
これにより、金属粒子の接合をより効率よく行うことができる。
焼結工程での加熱処理は、通常、脱脂工程での加熱処理よりも高い温度で行う。
金属粒子の構成材料の融点をTm[℃]としたとき、焼結工程での加熱温度は、(Tm+1)℃以上(Tm+80)℃以下であるのが好ましく、(Tm+5)℃以上(Tm+60)℃以下であるのがより好ましい。
これにより、より短時間の加熱処理でより効率よく金属粒子の接合を行うことができるとともに、焼結工程における脱脂体70の不本意な変形をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、金属粒子が複数の成分を含むものである場合には、前記融点としては、最も含有率の高い成分の融点を採用することができる。
焼結工程での加熱時間は、特に限定されないが、30秒以上60分以下であるのが好ましく、1分以上30分以下であるのがより好ましい。
これにより、金属粒子同士の接合を十分に進行させつつ本工程における不本意な変形をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の機械的強度、寸法精度をより高いレベルで両立することができるとともに、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
また、焼結処理時の雰囲気は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10−4Pa以上133Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスとすることができる。
また、焼結工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、焼結の効率が向上し、より短い処理時間で焼結(焼成)を行うことができる。
また、焼結工程は、前述の脱脂工程と連続して行ってもよい。
これにより、脱脂工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱脂体に予熱を与えて、脱脂体をより確実に焼結させることができる。
また、このような焼結工程は、種々の目的(例えば、焼成時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で焼成するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
前述したような本発明の製造方法によれば、寸法精度に優れ、かつ、所望の材料特性を有する三次元造形物を製造することができる。
前述したような三次元造形物の製造方法をフローチャートにまとめると、図11のようになる。
《三次元造形物製造装置》
次に、前述した本発明の三次元造形物の製造方法を好適に実行することができる三次元造形物製造装置について説明する。
図12は、三次元造形物製造装置の好適な実施形態を模式的に示す断面図である。
図示のように、三次元造形物製造装置M100は、制御部M1と、第1の組成物1A’を供給する組成物供給手段としてのディスペンサー(第1のディスペンサー)M2と、第2の組成物1B’を供給する組成物供給手段としてのディスペンサー(第2のディスペンサー)M3と、サポート材形成用組成物1C’を供給する組成物供給手段としてのディスペンサー(第3のディスペンサー)M5とを備えている。
組成物1’の供給(吐出)を、ディスペンサー(ディスペンサーM2、M3、M5)を用いて行うことにより、例えば、インクジェット法等で組成物を吐出する場合に比べて、三次元造形物10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、比較的高い粘度の組成物であっても好適に吐出することができ、材料選択の幅が広がる。
制御部M1は、コンピューターM11と、駆動制御部M12とを有している。
コンピューターM11は、内部にCPUやメモリ等を備えて構成される一般的な卓上型コンピューター等である。コンピューターM11は、三次元造形物10の形状をモデルデータとしてデータ化し、それを平行な幾層もの薄い断面体にスライスして得られる断面データ(スライスデータ)を駆動制御部M12に対して出力する。
駆動制御部M12は、ディスペンサーM2、ディスペンサーM3、ディスペンサーM5、層形成部M4等をそれぞれに駆動する制御手段として機能する。具体的には、例えば、ディスペンサーM2による第1の組成物1A’の吐出パターンや吐出量、ディスペンサーM3による第2の組成物1B’の吐出パターンや吐出量、ディスペンサーM5によるサポート材形成用組成物1C’の吐出パターンや吐出量、ステージ(昇降ステージ)M41の下降量等を制御する。
層形成部M4は、組成物1’が供給され、組成物1’で構成された層1を支持するステージ(昇降ステージ)M41と、昇降ステージM41を取り囲む枠体M45とを有している。
昇降ステージM41は、先に形成された層1の上に、新たな層1を形成するのに際して、駆動制御部M12からの指令により所定量だけ順次下降する。
ステージM41は、表面(より詳しくは、組成物1’が付与される部位)が平坦なものである。これにより、厚みの均一性の高い層1を容易かつ確実に形成することができる。
ステージM41は、高強度の材料で構成されたものであるのが好ましい。ステージM41の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼等の各種金属材料等が挙げられる。
また、ステージM41の表面には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、組成物1’の構成材料がステージM41に強固に付着してしまうことをより効果的に防止したり、ステージM41の耐久性を特に優れたものとし、三次元造形物10のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。ステージM41の表面の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
ディスペンサーM2は、駆動制御部M12からの指令により移動し、第1の組成物1A’をステージM41上の所望の部位に所定のパターンで吐出するように構成されている。
ディスペンサーM2は、第1の組成物1A’を液滴として吐出するものであるのが好ましい。これにより、微細なパターンで第1の組成物1A’を付与することができ、微細な構造を有する三次元造形物10であっても、特に高い寸法精度、特に高い生産性で製造することができる。
ディスペンサーM2は、駆動制御部M12からの指令により、付与する第1の組成物1A’のパターン(形成すべき接合部2に対応するパターン)、量等が制御されている。ディスペンサーM2による第1の組成物1A’の吐出パターン、吐出量等は、スライスデータに基づいて決定される。これにより、必要十分な量の第1の組成物1A’を付与することができ、所望のパターンの接合部2を確実に形成することができ、三次元造形物10の寸法精度等を確実に優れたものとすることができる。
ディスペンサーM2は、1つの吐出部(ノズル)を備えるものである。
ディスペンサーM2の吐出部の大きさ(ノズル径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとしつつ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
ディスペンサーM3は、駆動制御部M12からの指令により移動し、第2の組成物1B’をステージM41上の所望の部位に所定のパターンで吐出するように構成されている。
ディスペンサーM3は、第2の組成物1B’を液滴として吐出するものであるのが好ましい。これにより、微細なパターンで第2の組成物1B’を付与することができ、微細な構造を有する三次元造形物10であっても、特に高い寸法精度、特に高い生産性で製造することができる。
ディスペンサーM3は、駆動制御部M12からの指令により、付与する第2の組成物1B’のパターン(形成すべき接合部2に対応するパターン)、量等が制御されている。ディスペンサーM3による第2の組成物1B’の吐出パターン、吐出量等は、スライスデータに基づいて決定される。これにより、必要十分な量の第2の組成物1B’を付与することができ、所望のパターンの接合部2を確実に形成することができ、三次元造形物10の寸法精度等を確実に優れたものとすることができる。
ディスペンサーM3は、1つの吐出部(ノズル)を備えるものである。
ディスペンサーM3の吐出部の大きさ(ノズル径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとしつつ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
ディスペンサーM5は、駆動制御部M12からの指令により移動し、サポート材形成用組成物1C’をステージM41上の所望の部位に所定のパターンで吐出するように構成されている。
ディスペンサーM5は、サポート材形成用組成物1C’を液滴として吐出するものであるのが好ましい。これにより、微細なパターンでサポート材形成用組成物1C’を付与することができ、微細な構造を有する三次元造形物10であっても、特に高い寸法精度、特に高い生産性で製造することができる。
ディスペンサーM5は、駆動制御部M12からの指令により、付与するサポート材形成用組成物1C’のパターン(形成すべきサポート材5に対応するパターン)、量等が制御されている。ディスペンサーM5によるサポート材形成用組成物1C’の吐出パターン、吐出量等は、スライスデータに基づいて決定される。これにより、必要十分な量のサポート材形成用組成物1C’を付与することができ、所望のパターンのサポート材5を確実に形成することができ、三次元造形物10の寸法精度等を確実に優れたものとすることができる。
ディスペンサーM5は、1つの吐出部(ノズル)を備えるものである。
ディスペンサーM5の吐出部の大きさ(ノズル径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとしつつ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。
上記のような構成により、複数の層1を積層して、積層体50を得ることができる。
得られた積層体50に対して、脱脂処理、焼結処理(焼成処理)を施すことにより、三次元造形物10を得ることができる。
脱脂処理、焼結処理は、三次元造形物製造装置M100とは異なる装置等を用いて行ってもよい。また、三次元造形物製造装置M100が、図示しない脱脂処理を行う脱脂手段、焼結処理を行う焼結手段(焼成手段)を備えるものである場合には、当該処理を三次元造形物製造装置M100により行ってもよい。
前述したような三次元造形物製造装置M100を用いることにより、寸法精度に優れ、かつ、所望の材料特性を有する三次元造形物を製造することができる。
《第1の組成物》
次に、三次元造形物10の製造に用いる第1の組成物1A’について説明する。
第1の組成物1A’は、複数個の金属粒子と第1のバインダーとを含むものであり、三次元造形物10の実体部(特に、三次元造形物10の外表面)の形成に用いる組成物である。
以下、第1の組成物1A’の構成成分について説明する。
(金属粒子)
第1の組成物1A’は、金属粒子を複数個含むものである。
第1の組成物1A’が、金属粒子を含むものであることにより、三次元造形物10の構成材料の選択の幅を広いものとすることができ、所望の物性、質感等を有する三次元造形物10を好適に得ることができる。例えば、溶媒に溶解した材料を用いて三次元造形物を製造する場合、使用することのできる材料に制限があるが、金属粒子を含む第1の組成物1A’を用いることによりこのような制限を解消することができる。また、例えば、三次元造形物10の質感(高級感)、重量感、機械的強度、靱性、耐久性等をより優れたものとすることができ、試作用途のみならず実製品として適用することができる。
また、三次元造形物10製造時において、粒子(金属粒子)の接合のためのエネルギーを付与した後の放熱が効率よく進行するため、三次元造形物10の生産性を特に優れたものとすることができる。
金属粒子を構成する金属材料としては、例えば、マグネシウム、鉄、銅、コバルト、チタン、クロム、ニッケルやこれらのうち少なくとも1種を含む合金(例えば、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル基調合金、アルミニウム合金等)等が挙げられる。好ましい金属材料については、前述したとおりである。
また、金属粒子は、金属材料に加え、金属材料以外の成分を含むものであってもよい。例えば、金属粒子は、金属材料以外の成分を含む材料で構成されたコア部と、当該コア部を被覆し、金属材料で構成されたシェル部を有する物であってもよい。
金属粒子を構成する金属材料以外の成分としては、例えば、セラミックスのような金属化合物や、樹脂材料等が挙げられる。
金属粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、筒状、鱗片状等、いかなる形状であってもよく、また、不定形のものであってもよいが、球状をなすものであるのが好ましい。
金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
これにより、第1の組成物1A’の流動性をより好適なものとすることができ、層形成工程をより円滑に行うことができるとともに、脱脂工程での脱脂(バインダーの除去)や、焼結工程での金属粒子の接合をより好適に行うことができる。また、例えば、層1中に含まれる溶剤やバインダー等の除去等を効率よく除去することができ、不本意に金属粒子以外の構成材料が最終的な三次元造形物10中に残存することをより効果的に防止することができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の信頼性、機械的強度をより優れたものとすることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を言い、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTER ELECTRONICS INS製TA−II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
金属粒子のDmaxは、0.2μm以上25μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。
これにより、第1の組成物1A’の流動性をより好適なものとすることができ、層形成工程をより円滑に行うことができるとともに、焼結工程での金属粒子の接合をより好適に行うことができる。その結果、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の機械的強度をより優れたものとすることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
第1の組成物1A’中における金属粒子の含有率は、50質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、55質量%以上98質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、第1の組成物1A’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、金属粒子は、三次元造形物10の製造過程(例えば、焼結工程等)において、化学反応(例えば、酸化反応等)をする材料で構成されたものであり、第1の組成物1A’中に含まれる金属粒子の組成と、最終的な三次元造形物10の構成材料とで、組成が異なっていてもよい。
なお、第1の組成物1A’は、2種以上の金属粒子を含むものであってもよい。
(第1のバインダー)
第1の組成物1A’は、層1中において金属粒子同士を仮接合(仮固定)する機能を有するバインダー(第1のバインダー)を含むものである。
これにより、例えば、第1の組成物1A’を用いて形成されたパターンの不本意な変形を効果的に防止することができる。その結果、三次元造形物10の寸法精度を優れたものとすることができる。また、三次元造形物10中における空隙率(空孔率)、三次元造形物10の密度等の調整を好適に行うことができる。
第1のバインダーとしては、脱脂工程前の層1(すなわち、第1の組成物1A’を用いて形成されたパターン)中において金属粒子を仮固定する機能を有するものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の各種樹脂材料等を用いることができる。
硬化性樹脂を含む場合、第1の組成物1A’の吐出後であって脱脂工程よりも前のタイミングで、当該硬化性樹脂の硬化反応を行ってもよい。
これにより、第1の組成物1A’を用いて形成されたパターンの不本意な変形をさらに効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
硬化性樹脂の硬化反応を進行させる硬化処理は、例えば、加熱や紫外線等のエネルギー線の照射により行うことができる。
硬化性樹脂としては、例えば、各種熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を好適に用いることができる。
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を用いることができる。
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、エネルギー線の照射により、重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
第1のバインダーは、同一条件で焼成した際の炭素の残存率が、第2のバインダーよりも高いものであるのが好ましい。
これにより、脱脂体70の第1の領域71と第2の領域72との間で、前述したような関係をより容易に満足させることができ、前述したような効果がより顕著に発揮される。
第1のバインダーは、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂よりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
これにより、金属粒子の仮固定の固定力を特に優れたものとすることができるとともに、脱脂体70の第1の領域71での残炭率が好ましい値となるようにより容易に調整することができる。
第1の組成物1A’中において、第1のバインダーは、いかなる形態で含まれるものであってもよいが、液状(例えば、溶融状態、溶解状態等)をなすものであるのが好ましい。すなわち、第1のバインダーは、金属粒子を分散する分散媒の構成成分として含まれているのが好ましい。
これにより、第1の組成物1A’の吐出性をより優れたものとすることができる。また、脱脂工程に際して第1のバインダーが金属粒子を好適に被覆した状態とすることができ、脱脂工程を行う際におけるパターン(第1の組成物1A’を用いて形成されたパターン)の形状の安定性をより優れたものとすることができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
第1の組成物1A’中における第1のバインダーの含有率は、0.5質量%以上48質量%以下であるのが好ましく、0.8質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、層形成工程での第1の組成物1A’の流動性をより適切なものとしつつ、第1のバインダーによる金属粒子の仮固定の機能がより効果的に発揮される。また、脱脂工程での第2のバインダーの除去をより確実に行うことができる。また、より容易かつより確実に、脱脂体70の第1の領域71における残炭率を好適なものとすることができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、三次元造形物10を所望の材料特性を有するものとし、製造される三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとし、信頼性をより優れたものとすることができる。
(溶剤)
第1の組成物1A’は、金属粒子、第1のバインダーに加え、さらに、溶剤を含むものであってもよい。
溶剤を含むことにより、第1の組成物1A’中において金属粒子をより好適に分散させることができ、第1の組成物1A’の吐出を安定的に行うことができる。
溶剤は、第1の組成物1A’中において金属粒子を分散させる機能(分散媒としての機能)を有するものであれば、特に限定されないが、揮発性のものであるのが好ましい。
揮発性の溶剤は、三次元造形物10の製造過程において効率よく除去することができるため、最終的に得られる三次元造形物10中に、不本意に残存することによる弊害の発生を効果的に防止することができる。
溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、第1の組成物1A’は、溶剤として、非プロトン性溶剤を含むものであるのが好ましい。これにより、金属粒子(金属材料)の不本意な酸化反応等を効果的に防止することができる。
第1の組成物1A’中における溶剤の含有量は、0.5質量%以上48質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上46質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、第1の組成物1A’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、溶剤としては、例えば、重合性のモノマー等のように、重合反応により固化し、揮発性を有さないものを用いてもよい。
(その他の成分)
また、第1の組成物1A’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、金属粒子以外の粒子(例えば、セラミックス材料や樹脂材料で構成された粒子等);重合開始剤;分散剤;界面活性剤;増粘剤;凝集防止剤;消泡剤;スリップ剤(レベリング剤);顔料、染料等の着色剤;重合禁止剤;重合促進剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
《第2の組成物》
次に、三次元造形物10の製造に用いる第2の組成物1B’について説明する。
第2の組成物1B’は、複数個の金属粒子と第2のバインダーとを含むものであり、三次元造形物10の実体部(特に、三次元造形物10の内部)の形成に用いる組成物である。
以下、第2の組成物1B’の構成成分について説明する。
(金属粒子)
第2の組成物1B’は、金属粒子を複数個含むものである。
第2の組成物1B’が、金属粒子を含むものであることにより、三次元造形物10の構成材料の選択の幅を広いものとすることができ、所望の物性、質感等を有する三次元造形物10を好適に得ることができる。例えば、溶媒に溶解した材料を用いて三次元造形物を製造する場合、使用することのできる材料に制限があるが、金属粒子を含む第2の組成物1B’を用いることによりこのような制限を解消することができる。また、例えば、三次元造形物10の質感(高級感)、重量感、機械的強度、靱性、耐久性等をより優れたものとすることができ、試作用途のみならず実製品として適用することができる。
また、三次元造形物10製造時において、粒子(金属粒子)の接合のためのエネルギーを付与した後の放熱が効率よく進行するため、三次元造形物10の生産性を特に優れたものとすることができる。
第2の組成物1B’中に含まれる金属粒子(第2の金属粒子)の構成材料としては、例えば、第1の組成物1A’中に含まれる金属粒子(第1の金属粒子)の構成材料として説明したものと同様のものが挙げられる。
なお、第2の組成物1B’中に含まれる金属粒子の構成材料は、第1の組成物1A’中に含まれる金属粒子の構成材料と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
第2の組成物1B’中に含まれる金属粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、筒状、鱗片状等、いかなる形状であってもよく、また、不定形のものであってもよいが、球状をなすものであるのが好ましい。
第2の組成物1B’中に含まれる金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
これにより、第2の組成物1B’の流動性をより好適なものとすることができ、層形成工程をより円滑に行うことができるとともに、脱脂工程での脱脂(バインダーの除去)や、焼結工程での金属粒子の接合をより好適に行うことができる。また、例えば、層1中に含まれる溶剤やバインダー等の除去等を効率よく除去することができ、不本意に金属粒子以外の構成材料が最終的な三次元造形物10中に残存することをより効果的に防止することができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の信頼性、機械的強度をより優れたものとすることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
第2の組成物1B’中に含まれる金属粒子のDmaxは、0.2μm以上25μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。
これにより、第2の組成物1B’の流動性をより好適なものとすることができ、層形成工程をより円滑に行うことができるとともに、焼結工程での金属粒子の接合をより好適に行うことができる。その結果、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の機械的強度をより優れたものとすることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
第2の組成物1B’中における金属粒子の含有率は、50質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、55質量%以上98質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、第2の組成物1B’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、金属粒子は、三次元造形物10の製造過程(例えば、焼結工程等)において、化学反応(例えば、酸化反応等)をする材料で構成されたものであり、第2の組成物1B’中に含まれる金属粒子の組成と、最終的な三次元造形物10の構成材料とで、組成が異なっていてもよい。
なお、第2の組成物1B’は、2種以上の金属粒子を含むものであってもよい。
(第2のバインダー)
第2の組成物1B’は、層1中において金属粒子同士を仮接合(仮固定)する機能を有するバインダー(第2のバインダー)を含むものである。
これにより、例えば、第2の組成物1B’を用いて形成されたパターンの不本意な変形を効果的に防止することができる。その結果、三次元造形物10の寸法精度を優れたものとすることができる。また、三次元造形物10中における空隙率(空孔率)、三次元造形物10の密度等の調整を好適に行うことができる。
第2のバインダーとしては、脱脂工程前の層1(すなわち、第2の組成物1B’を用いて形成されたパターン)中において金属粒子を仮固定する機能を有するものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の各種樹脂材料等を用いることができる。
硬化性樹脂を含む場合、第2の組成物1B’の吐出後であって脱脂工程よりも前のタイミングで、当該硬化性樹脂の硬化反応を行ってもよい。
これにより、第2の組成物1B’を用いて形成されたパターンの不本意な変形をさらに効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
硬化性樹脂の硬化反応を進行させる硬化処理は、例えば、加熱や紫外線等のエネルギー線の照射により行うことができる。
硬化性樹脂としては、例えば、各種熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を好適に用いることができる。
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を用いることができる。
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、エネルギー線の照射により、重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
第2のバインダーは、同一条件で焼成した際の炭素の残存率が、第1のバインダーよりも高いものであるのが好ましい。
これにより、脱脂体70の第1の領域71と第2の領域72との間で、前述したような関係をより容易に満足させることができ、前述したような効果がより顕著に発揮される。
第2のバインダーは、(メタ)アクリル樹脂を含むものであるのが好ましい。
これにより、金属粒子の仮固定の固定力を特に優れたものとすることができるとともに、脱脂体70の第2の領域72での残炭率が好ましい値となるようにより容易に調整することができる。
第2の組成物1B’中において、第2のバインダーは、いかなる形態で含まれるものであってもよいが、液状(例えば、溶融状態、溶解状態等)をなすものであるのが好ましい。すなわち、第2のバインダーは、金属粒子を分散する分散媒の構成成分として含まれているのが好ましい。
これにより、第2の組成物1B’の吐出性をより優れたものとすることができる。また、脱脂工程に際して第2のバインダーが金属粒子を好適に被覆した状態とすることができ、脱脂工程を行う際におけるパターン(第2の組成物1B’を用いて形成されたパターン)の形状の安定性をより優れたものとすることができ、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
第2の組成物1B’中における第2のバインダーの含有率は、0.1質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、層形成工程での第2の組成物1B’の流動性をより適切なものとしつつ、第2のバインダーによる金属粒子の仮固定の機能がより効果的に発揮される。また、脱脂工程での第2のバインダーの除去をより確実に行うことができる。また、より容易かつより確実に、脱脂体70の第1の領域71における残炭率を好適なものとすることができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、三次元造形物10を所望の材料特性を有するものとし、製造される三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとし、信頼性をより優れたものとすることができる。
(溶剤)
第2の組成物1B’は、金属粒子、第2のバインダーに加え、さらに、溶剤を含むものであってもよい。
溶剤を含むことにより、第2の組成物1B’中において金属粒子をより好適に分散させることができ、第2の組成物1B’の吐出を安定的に行うことができる。
第2の組成物1B’中に含まれる溶剤としては、例えば、第1の組成物1A’の構成材料として説明したものと同様のものが挙げられる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
なお、第2の組成物1B’中に含まれる溶剤の組成は、第1の組成物1A’中に含まれる溶剤の組成と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
第2の組成物1B’中における溶剤の含有量は、0.5質量%以上48質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上46質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、第2の組成物1B’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、第2の組成物1B’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、金属粒子以外の粒子(例えば、セラミックス材料や樹脂材料で構成された粒子等);重合開始剤;分散剤;界面活性剤;増粘剤;凝集防止剤;消泡剤;スリップ剤(レベリング剤);顔料、染料等の着色剤;重合禁止剤;重合促進剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
《サポート材形成用組成物》
次に、三次元造形物10の製造に用いるサポート材形成用組成物1C’について説明する。
サポート材形成用組成物1C’は、サポート材5の形成に用いられる組成物である。
(粒子)
サポート材形成用組成物1C’は、粒子を複数個含むものであるのが好ましい。
サポート材形成用組成物1C’が、粒子を含むものであることにより、形成すべきサポート材5が微細な形状を有するもの等である場合であっても、サポート材5を高い寸法精度で、効率よく形成することができる。また、サポート材5を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)を効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をより優れたものとすることができる。また、脱脂体70に不本意にバインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。
サポート材形成用組成物1C’を構成する粒子の構成材料としては、例えば、金属材料、金属化合物(セラミックス等)、樹脂材料、顔料等が挙げられる。
ただし、サポート材形成用組成物1C’を構成する粒子は、第1の組成物1A’を構成する粒子、第2の組成物1B’を構成する粒子よりも高融点の材料で構成されたものであるのが好ましい。
粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、筒状、鱗片状等、いかなる形状であってもよく、また、不定形のものであってもよいが、球状をなすものであるのが好ましい。
粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート材形成用組成物1C’の流動性をより好適なものとすることができ、層形成工程をより円滑に行うことができる。また、サポート材5を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)をより効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、脱脂体70に不本意にバインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。また、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
粒子のDmaxは、0.2μm以上25μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート材形成用組成物1C’の流動性をより好適なものとすることができ、サポート材形成用組成物1C’の供給をより円滑に行うことができる。また、サポート材5を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)をより効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、脱脂体70に不本意にバインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより優れたものとすることができる。また、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
サポート材形成用組成物1C’中における粒子の含有率は、50質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、55質量%以上98質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート材形成用組成物1C’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
なお、サポート材形成用組成物1C’は、2種以上の粒子を含むものであってもよい。
(バインダー)
サポート材形成用組成物1C’は、粒子に加え、さらに、溶剤が除去された層1中において粒子同士を仮接合する機能を有するバインダーを含むものであってもよい。
これにより、例えば、サポート材形成用組成物1C’を用いて形成されたサポート材5の不本意な変形をより効果的に防止することができる。その結果、三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
バインダーとしては、脱脂工程前の層1(すなわち、サポート材形成用組成物1C’を用いて形成されたパターン)中において粒子を仮固定する機能を有するものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の各種樹脂材料等を用いることができる。
硬化性樹脂を含む場合、サポート材形成用組成物1C’の吐出後であって脱脂工程よりも前のタイミングで、当該硬化性樹脂の硬化反応を行ってもよい。
これにより、サポート材形成用組成物1C’を用いて形成されたパターン(サポート材5)の不本意な変形をさらに効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
硬化処理は、例えば、加熱や紫外線等のエネルギー線の照射により行うことができる。
サポート材形成用組成物1C’が硬化性樹脂を含むものである場合、当該硬化性樹脂としては、例えば、第1のバインダー、第2のバインダーとして説明したものと同様のもの等を用いることができる。
なお、サポート材形成用組成物1C’中に含まれる硬化性樹脂と、第1のバインダー、第2のバインダー中に含まれる硬化性樹脂とは、同一の条件(例えば、同一の組成等)のものであってもよいし、異なる条件のものであってもよい。
サポート材形成用組成物1C’中におけるバインダーの含有率は、0.1質量%以上48質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、層形成工程でのサポート材形成用組成物1C’の流動性をより適切なものとしつつ、バインダーによる粒子の仮固定の機能がより効果的に発揮される。また、脱脂工程でのバインダーの除去をより確実に行うことができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより優れたものとしつつ、製造される三次元造形物10の寸法精度、信頼性をより優れたものとすることができる。
(溶剤)
サポート材形成用組成物1C’は、溶剤を含むものであってもよい。
溶剤を含むことにより、サポート材形成用組成物1C’中において粒子を好適に分散させることができ、サポート材形成用組成物1C’の吐出を安定的に行うことができる。
サポート材形成用組成物1C’中に含まれる溶剤としては、例えば、第1の組成物1A’の構成材料、第2の組成物1B’の構成材料として説明したものと同様のものが挙げられる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
なお、サポート材形成用組成物1C’中に含まれる溶剤の組成は、第1の組成物1A’中に含まれる溶剤の組成、第2の組成物1B’中に含まれる溶剤の組成と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
サポート材形成用組成物1C’中における溶剤の含有量は、0.5質量%以上48質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上46質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、サポート材形成用組成物1C’の取扱いのし易さをより優れたものとしつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少ないものとすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、サポート材形成用組成物1C’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;分散剤;界面活性剤;増粘剤;凝集防止剤;消泡剤;スリップ剤(レベリング剤);顔料、染料等の着色剤;重合禁止剤;重合促進剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
《三次元造形物》
前述したような三次元造形物の製造方法、三次元造形物製造装置を用いることにより三次元造形物を製造することができる。
前述したような製造方法、製造装置によれば、寸法精度に優れ、かつ、所望の材料特性を有する三次元造形物を製造することができる。
三次元造形物の用途は、特に限定されないが、例えば、人形、フィギュア等の鑑賞物・展示物;インプラント等の医療機器等が挙げられる。
また、三次元造形物は、プロトタイプ、量産品、オーダーメード品のいずれに適用されるものであってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の三次元造形物の製造方法に用いる三次元造形物製造装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
例えば、三次元造形物製造装置は、図示しない減圧手段を備えていてもよい。これにより、例えば、吐出された組成物(第1の組成物、第2の組成物、サポート材形成用組成物)から溶剤を効率よく除去することができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、三次元造形物製造装置は、吐出された組成物(第1の組成物、第2の組成物、サポート材形成用組成物)から溶剤を除去するための加熱手段を備えていてもよい。これにより、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、前述した実施形態では、ステージの表面に直接層を形成する場合について代表的に説明したが、例えば、ステージ上に造形プレートを配置し、当該造形プレート上に層を積層して三次元造形物を製造してもよい。
また、本発明の三次元造形物の製造方法は、前述したような三次元造形物製造装置を用いて実行するものに限定されない。
また、前述した実施形態では、全ての層の形成に第1の組成物および第2の組成物を用いる場合について代表的に説明したが、複数の層を有する積層体全体として、第1の組成物を用いて形成された領域と、第2の組成物を用いて形成された領域とを有していればよく、積層体は、例えば、第1の組成物を用いて形成された領域を有さない層や、第2の組成物を用いて形成された領域を有さない層を有するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、三次元造形物の外表面となるべき領域全体を、第1の組成物を用いて形成し、三次元造形物の内部となるべき領域全体を、第2の組成物を用いて形成する場合について代表的に説明したが、本発明においては、三次元造形物の外表面となるべき領域のうちの少なくとも一部を、第1の組成物を用いて形成し、かつ、三次元造形物の内部となるべき領域のうち少なくとも一部を、第2の組成物を用いて形成すればよい。このような場合、脱脂体において、三次元造形物の外表面となるべき領域のうち50体積%以上が第1の組成物を用いて形成されたものであるのが好ましく、三次元造形物の内部となるべき領域のうち50体積%以上が第2の組成物を用いて形成されたものであるのが好ましい。
また、前述した実施形態では、全ての層に実体部に対応する部位が形成される場合について代表的に説明したが、実体部に対応する部位が形成されない層を有していてもよい。例えば、ステージとの接触面(ステージの直上)に、実体部に対応する部位が形成されない層(例えば、サポート材のみで構成された層)を形成し、当該層を犠牲層として機能させてもよい。
また、前述した実施形態では、三次元造形物の実体部の形成に、第1の組成物および第2の組成物を用いる場合について代表的に説明したが、本発明では、三次元造形物の実体部の形成に、第1の組成物および第2の組成物に加え、少なくとも1種のその他の組成物(第3の組成物)を用いてもよく、また、第1の組成物または第2の組成物に加え、少なくとも1種のその他の組成物(第3の組成物)を用いてもよい。このような組成物(第3の組成物)としては、例えば、脱脂体の状態での残炭率を調整する機能を有するもの等を挙げることができる。
また、本発明の三次元造形物の製造方法においては、工程・処理の順番は、前述したものに限定されず、その少なくとも一部を入れ替えて行ってもよい。例えば、前述した実施形態では、任意の層を形成する層形成工程において、第2の組成物、第1の組成物およびサポート材形成用組成物を、この順で供給する場合について代表的に説明したが、これらの組成物の供給の順番は入れ替えてもよい。また、複数種の組成物を同時に供給してもよい。
また、前述した実施形態では、焼結工程において、第1の組成物および第2の組成物中に含まれる粒子の焼結(接合)を行い、サポート材形成用組成物中に含まれる粒子の焼結(接合)を行わない場合について中心的に説明したが、焼結工程では、第1の組成物および第2の組成物中に含まれる粒子の接合とともに、サポート材形成用組成物中に含まれる粒子の接合を行ってもよい。
また、前述した実施形態では、第1の組成物および第2の組成物に加え、サポート材の形成に用いるサポート材形成用組成物も粒子およびバインダーを含むものである場合について代表的に説明したが、サポート材形成用組成物は、粒子やバインダーを含まないものであってもよい。
また、前述した実施形態では、三次元造形物の実体部の形成に用いる実体部形成用組成物としての第1の組成物および第2の組成物とともに、サポート材形成用組成物を用いる場合について代表的に説明したが、本発明においては、製造すべき三次元造形物の形状等によっては、サポート材形成用組成物を用いなくてもよい。
また、本発明の製造方法においては、必要に応じて、前処理工程、中間処理工程、後処理工程を行ってもよい。
前処理工程としては、例えば、ステージの清掃工程等が挙げられる。
後処理工程としては、例えば、洗浄工程、バリ取り等を行う形状調整工程、着色工程、被覆層形成工程、粒子の接合強度を向上させるための熱処理工程等が挙げられる。