以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
(実施形態1)
[濾過装置、中空糸膜モジュール]
まず、本発明の実施形態1に係る中空糸膜モジュール10及びこれを備えた濾過装置1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように、濾過装置1は、原水を濾過するための中空糸膜モジュール10と、中空糸膜モジュール10に原水を送るための送液ポンプ20と、中空糸膜モジュール10にバブリング用の空気(気体)を送るためのエアーコンプレッサー30と、これらを接続する配管と、当該配管に設けられた開閉バルブと、各機器の動作及びバルブの開閉を制御する制御装置40と、を有する。中空糸膜モジュール10は、中空糸膜の外表面側に原水を供給し、内表面側から濾液を取り出す外圧濾過式のものである。
図2に示すように、中空糸膜モジュール10は、複数の中空糸膜14が上端14Bにおいて固定部材3により束状に固定された中空糸膜束15と、中空糸膜束15が収容される内部空間S1が形成されたハウジング13と、内部空間S1に原水を供給する導水管5と、内部空間S1に供給された空気を分散させるための散気部材4と、を有する。
中空糸膜束15は、複数の中空糸膜14の上端14Bが開口した状態で固定部材3により固定され、下端14Aが1本ずつ固定されない状態で封止された片端フリータイプである。固定部材3は、複数の中空糸膜14の上端14Bを収束固定する。固定部材3は、中空糸膜14を濾過膜として機能させるため、ハウジング13内の空間を原水側の内部空間S1と濾液側の空間S2とに液密に仕切る。固定部材3には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が使用される。中空糸膜束15と固定部材3との接着方法としては、遠心接着法、静置接着法などがある。なお、中空糸膜モジュール10は、本実施形態のような片端フリータイプのものに限定されず、両端固定タイプのものであってもよい。
中空糸膜14の素材としては、種々の材料を用いることが可能であり、特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール及びポリエーテルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種類が、中空糸膜14の素材として用いられることが好ましい。特に、膜強度や耐薬品性の観点でポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましい。
中空糸膜モジュール10は、上述の通り外圧濾過式のものであり、膜分離処理の条件や要求される性能に応じて外圧全量濾過式又は外圧循環濾過式であってもよい。膜寿命の点では、濾過膜の表面洗浄を同時に行うことができる外圧循環濾過式が好ましく、設備の単純さ、設置コスト、運転コストの点では外圧全量濾過式が好ましい。
中空糸膜束15は、中空糸膜14の本数が多くなるに従いモジュール当たりの膜面積が大きくなるため、濾過流量を高くして運転することができるが、一方で洗浄時における汚濁物質の排出効率が低下する。そのため、中空糸膜14の外径di(m)、中空糸膜14の本数n(本)及びハウジング13の断面積S(m2)により計算される膜充填率100πndi2/4S(%)が10〜60%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましい。
中空糸膜束15は、周方向に分割された複数の膜束からなり、隣り合う膜束の間に隙間が形成されている。各膜束は、複数の中空糸膜14が円筒状に束ねられたものである。膜束の数は例えば4〜8個とすることが可能であり、また膜束の形状は円筒形状以外のその他の形状であってもよい。なお、中空糸膜束15は、複数の膜束からなるものに限定されず、一つの膜束からなるものでもよい。
ハウジング13は、上面13A及び下面13Cと、これらを接続する側面13Bと、を有する筒形状からなる。ハウジング13は、中空糸膜束15が収容される内部空間S1を有する。
ハウジング13の上面13Aには、空間S2から濾液を取り出すための濾液配管51が接続され、当該濾液配管51には濾液出口52及び濾液側気体入口53が設けられている。側面13Bにおいて固定部材3の直下には、内部空間S1内の空気を系外に排出するための気体抜き口11が設けられている。側面13Bにおいて下面13Cの真上には、内部空間S1内の原水を系外に排出するためのドレン抜き口12が設けられている。下面13Cの中央近傍には、内部空間S1内にバブリング用の空気を供給するための孔である散気用気体入口7が設けられている。
図1に示すように、気体抜き口11には気体抜き配管61が接続され、これを介してハウジング13内の空気が系外に排出される。また気体抜き配管61には気体排出口バルブ62が設けられ、これを開くことでハウジング13内の空気が系外に排出される。また、ドレン抜き口12にはドレン配管41が接続され、これを介してハウジング13内の原水が系外に排出される。ドレン配管41には液体排出口バルブ42が設けられ、これを開くことでハウジング13内の原水が系外に排出される。
ハウジング13の材質としては、SUS、変性PPE、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ABS樹脂などが用いられる。図2に示すように、ハウジング13の内面に固定部材3が接着固定されることにより、いわゆる一体型モジュールが構成されていてもよい。また、固定部材3の外周部にO−リングやパッキンなどが取り付けられ、固定部材3がハウジング13に対して着脱可能かつ液密に装着されていてもよい。この場合、固定部材3を取り外して中空糸膜束15を交換し、ハウジング13を繰り返し使用することができる。
導水管5は、ハウジング13の下面13C及び散気部材4の中央を貫通すると共に、中空糸膜束15の中心において中空糸膜14の長手方向(上下方向)に沿うように配置されている。導水管5は、上端が固定部材3に接続されると共に、下端が下面13Cよりも下側に突き出ている。また導水管5の下端は、任意のシール部材などを介して原水配管21(図1)に固定されている。導水管5の構造は、上述のような本実施形態のものに限定されず、例えば散気部材4の上面から上向きに突き出た別の配管に対して外嵌されたものであってもよい。また本実施形態では、導水管5は円筒形状からなるが、特に形状は限定されない。
導水管5は、中空糸膜14の長手方向の全体に沿った部分である管部5Cを有し、当該管部5Cには複数の通水孔54が軸方向(上下方向)に互いに間隔を空けて形成されている。図2に示すように、管部5Cは、中空糸膜束15の中心において複数の中空糸膜14により取り囲まれた部分である。また上述のように、中空糸膜束15が周方向に分割された複数の膜束からなる場合、複数の通水孔54のうち少なくとも一部が当該膜束の隙間に向かって開口するように形成されることが好ましい。
導水管5は、管内に原水を導入するための原水入口9が下端に設けられ、また管内に空気を導入するための導水管用気体入口8が下面13Cよりも下側に突き出た部分の側面に設けられている。導水管5によれば、原水入口9から管内に導入された原水のみを通水孔54からハウジング13内に供給し、導水管用気体入口8から導入された空気のみを通水孔54からハウジング13内に供給し、また原水及び空気を通水孔54からハウジング13内に同時に供給することができる。
導水管5においてハウジング13内に挿入された部分の長さは、中空糸膜モジュール10を嵩張らせないようにするため、中空糸膜14の長さの1〜2倍であることが好ましく、1〜1.5倍であることがより好ましい。
導水管5の内径は、原水を高流速で流すため、通水孔54の径よりも大きくなっている。また導水管5の内径は、通水時の圧力損失を小さくするため、40mm以上に設計されることが好ましい。これにより、通水時の流束を4m/s以下(好ましくは3m/s以下)にすることができる。
散気部材4は、散気用気体入口7からハウジング13内に供給された空気を、中空糸膜束15の径方向に広がるように分散させるための部材である。散気部材4は、中空糸膜14の下端14Aよりも下側の位置に配置されており、中央部に導水管5が貫通している。導水管5及び散気部材4の詳細な構造については後述する。
図1に示すように、送液ポンプ20は、原水配管21の上流端に接続されており、制御装置40によって作動することにより原水配管21内に原水を送る。原水配管21の下流端は、導水管5の原水入口9に接続されている。また原水配管21には、配管内における原水の流通及び遮断を切り替える原水バルブ22が設けられており、制御装置40により原水バルブ22の開閉が制御される。この構成によれば、制御装置40により送液ポンプ20を作動させると共に原水バルブ22を開くことで、原水配管21を介して導水管5内に原水を供給することができる。
エアーコンプレッサー30は、第1気体導入配管31を介して濾液側気体入口53に接続され、第2気体導入配管32を介して散気用気体入口7に接続され、第3気体導入配管33を介して導水管用気体入口8に接続されている。第1気体導入配管31には配管内における空気の流通及び遮断を切り替える第1気体導入バルブ34が設けられ、第2及び第3気体導入配管32,33にも同様に第2及び第3気体導入バルブ35,36が設けられている。
制御装置40は、送液ポンプ20及びエアーコンプレッサー30の駆動を制御し、かつ各バルブの開閉動作を制御する。制御装置40は、例えばパーソナルコンピュータなどにより構成されている。制御装置40は、濾過プロセスにおいて順次実行される各工程(充水、濾過、逆洗、バブリング、排水など)のシーケンス情報が格納された記憶部と、当該シーケンス情報に従って各装置の駆動及びバルブの開閉を制御する制御部と、を有する。
[散気部材]
次に、散気部材4の詳細な構造について、図2〜図4を参照して説明する。図3は、散気部材4の平面構造を示している。図4は、図3中の線分IV−IVに沿った散気部材4の断面構造を示している。
図2に示すように、散気部材4は、中空糸膜束15の径方向に広がった形状を有し、周縁部が中空糸膜束15よりも径方向外側に位置している。散気部材4には、ハウジング13内に空気を分散させるための複数の通気孔43が径方向に間隔を空けて形成されている。
散気部材4は、中空糸膜束15の径方向に広がった形状を有し、複数の通気孔43が形成された円板状の本体部44と、本体部44の周縁部に接続された周壁部47と、本体部44の下面中央に接続された円筒状の気体受け部45と、を有し、これらが一体に形成されている。
図4に示すように、通気孔43は、本体部44を厚み方向に貫通するように形成されている。また図3に示すように、通気孔43は、本体部44の径方向及び周方向に互いに間隔を空けて複数形成されており、その一部は中空糸膜束15よりも径方向外側に位置している。これにより、中空糸膜束15に対して径方向に広い範囲に亘って空気を分散させることができる。また本体部44には、導水管5が貫通する貫通孔44Aが中央に形成されている。なお、本体部44は、図3に示すような円板状のものに限定されず、種々の形状のものを採用することができる。
気体受け部45は、散気用気体入口7からハウジング13内に供給された空気を一時的に収容するための部分である。気体受け部45は、筒形状を有し、上端が本体部44の下面中央に接続されると共に、下端側に空気の受け口45Aが形成されている。本実施形態では、気体受け部45は、上端から下端に向かって内径が略一定となる形状で構成されている。気体受け部45は、内径が導水管5の外径よりも大きく、導水管5の外周面との間の隙間において気体を収容する。
図2に示すように、気体受け部45は、散気用気体入口7よりも径方向外側に位置し、これにより散気用気体入口7からハウジング13内に供給された空気を筒内に収容することができる。また、気体受け部45の下端とハウジング13の下壁との間には隙間が形成されており、ハウジング13内の原水が当該隙間を流通することができる。これにより、ハウジング13の下部における液溜まりを防ぐことができる。
図4に示すように、気体受け部45の上端側の部位には、複数の分散孔46が周方向に間隔を空けて形成されている。分散孔46は、気体受け部45を貫通するように形成されている。分散孔46により、気体受け部45に収容された空気を当該気体受け部45よりも径方向外側へ逃がし、通気孔43へ導くことができる。分散孔46は、周方向に等間隔で形成されていてもよいし、異なる間隔で形成されていてもよい。
周壁部47は、本体部44の周縁部から下方に延びる筒形状を有する。周壁部47により、分散孔46から気体受け部45の外側に放出された空気が、本体部44よりも外側に広がることを抑制できる。これにより、通気孔43から上向きに空気を分散する前において、本体部44の下面に空気を留めることができる。
図2に示すように、散気部材4によれば、散気用気体入口7からハウジング13の下部空間に供給された空気を気体受け部45により一時的に収容し、その後通気孔43から上向きに分散させることができる。これにより、中空糸膜14の表面をバブリング洗浄することができる。
[導水管の通水孔]
次に、導水管5に形成された通水孔54について詳細に説明する。図2に示すように、導水管5の管部5Cは、上側管部5Aと、下側管部5Bと、を有する。上側管部5Aは、導水管5において中空糸膜14の長手方向の中央Cよりも上側部分に沿った部分であり、下側管部5Bは、導水管5において中空糸膜14の長手方向の中央Cよりも下側部分に沿った部分である。また上述のように、本実施形態では、導水管5の下端に原水入口9が設けられている。このため、本実施形態では、下側管部5Bが原水入口9により近い上流管部となり、上側管部5Aが下側管部5Bよりも原水入口9から遠い下流管部となる。
図2に示すように、導水管5においては、複数の通水孔54が上側管部5A及び下側管部5Bに亘るように軸方向に互いに間隔を空けて形成されている。即ち、上側管部5A及び下側管部5Bのいずれにおいても、複数の通水孔54が軸方向に間隔を空けて形成されている。そして、当該複数の通水孔54から内部空間S1に向けて原水を吐出することができる。この時、中空糸膜束15の中央に配置された導水管5からハウジング13の内壁に向かって径方向外向きに原水が吐出される。これにより、中空糸膜束15の内側から外側に向かって放射状に原水の流れが形成される。そして、原水は中空糸膜14の膜壁を透過することにより濾過され、中空糸膜14の内表面側の領域を通過して濾液として取り出される。
本実施形態に係る中空糸膜モジュール10では、下側管部5Bは、上側管部5Aに比べて通水孔54の開孔率が大きくなっている。より具体的には、上側管部5Aにおける通水孔54の開孔率(上側開孔率)に対する下側管部5Bにおける通水孔54の開孔率(下側開孔率)の比(下側開孔率/上側開孔率)が、1.2以上3以下となっている。本実施形態では、下側管部5Bにおいて上側管部5Aよりも多数の通水孔54を形成することにより、下側開孔率が上側開孔率よりも大きくなっている。
より詳細に説明すると、図2に示すように、通水孔54は、導水管5の軸方向に互いに間隔を空けて複数形成されると共に、当該軸方向の同じ位置において導水管5の周方向に互いに間隔を空けて形成されている。図5〜図8は、図2中における線分V−V、VI−VI、VII−VII及びVIII−VIIIに沿った導水管5の断面構造を示している。図2及び図5に示すように、導水管5の上端から見て2番目〜4番目の位置にある通水孔54は、周方向に90°の間隔で4つ形成されている。図2及び図6に示すように、導水管5の上端から見て5番目の位置にある通水孔54は、周方向に72°の間隔で5つ形成されている。図2及び図7に示すように、導水管5の上端から見て6番目及び7番目にある通水孔54は、周方向に60°の間隔で6つ形成されている。図2及び図8に示すように、導水管5の上端から見て1番目及び8番目〜10番目にある通水孔54は、周方向に45°の間隔で8つ形成されている。また図2に示すように、導水管5の上端から見て1番目〜5番目の通水孔54は上側管部5Aに形成され、6番目〜10番目の通水孔54は下側管部5Bに形成されている。
このように本実施形態では、下側管部5B(上流管部)に形成された通水孔54の数(36個)が、上側管部5A(下流管部)に形成された通水孔54の数(25個)よりも多くなっている。また導水管5の上端から2番目〜10番目の範囲で見ると、軸方向の同じ位置に形成される通水孔54の数は、原水入口9に近づくに従って増加している(4個、4個、4個、5個、6個、6個、8個、8個、8個)。また導水管5において中空糸膜14の上端14Bに最も近接する通水孔54(最上部に形成された通水孔54)の周方向の数(8個)は、これに隣接する通水孔54(上端から見て2番目の通水孔54)の周方向の数(4個)よりも多くなっており、これにより最上部の通水孔54から吐出される原水によって中空糸膜14の上端14B近傍を効果的に洗浄することができる。
本実施形態のように、導水管5の下端から上端に向かって原水が流れる場合には、下側管部5Bよりも上側管部5Aに対してより多くの原水が流れ込む。このため、各通水孔54の大きさが同じで且つ上側管部5A及び下側管部5Bにおける通水孔54の数が同じである場合、上側管部5Aの通水孔54から吐出する原水の流速が下側管部5Bに比べて大きくなり、原水の流速が不均一になる。これに対して、上述のように下側管部5Bの通水孔54の数を上側管部5Aの通水孔54の数よりも多くすることで、各通水孔54から均一化された流速で原水を吐出することができる。なお、上述した通水孔54の具体的な数は例示であり、任意に設計することが可能である。
また通水孔54は、軸方向の同じ位置から吐出される原水の吐出量の合計が0.02m3/h以上10m3/h以下となるように形成されている。具体的には、導水管5の上端から見て2番目〜4番目の位置では4つの通水孔54からの合計吐出量が上記範囲となり(図5)、5番目の位置では5つの通水孔54からの合計吐出量が上記範囲となり(図6)、6番目及び7番目の位置では6つの通水孔54からの合計吐出量が上記範囲となり(図7)、1番目及び8番目〜10番目の位置では8つの通水孔54からの合計吐出量が上記範囲となる(図8)。このように合計吐出量の下限値及び上限値を設定することで、濾過工程における膜の洗浄効果を高めつつ膜の損傷も防ぐことができる。
通水孔54は、本実施形態のように導水管5の軸方向及び周方向において等間隔で形成されていてもよいし、異なる間隔で形成されていてもよい。また通水孔54の形状は、本実施形態のように円形状であってもよいが、矩形状などの他の形状であってもよく、特に限定されない。
ここで、通水孔54の開孔率は、以下のように定義することができる。図9に示すように、導水管5において軸方向に任意の範囲(図中斜線部)を設定し、当該範囲における導水管5の外周面の面積をS1とし、当該範囲の外周面に形成された全ての通水孔54の開孔面積の合計をS2としたときに、通水孔54の開孔率は、S2/S1×100、として定義することができる。
複数の通水孔54は、それぞれ同じ大きさで形成されていてもよいし、異なる大きさで形成されていてもよい。各通水孔54の径は、5mm以上30mm以下に設計されており、好ましくは5mm以上20mm以下に設計されている。これにより、通水孔54から内部空間S1に向けて吐出される原水の流速(吐出流速)を0.05m/s以上4m/s以下にすることが可能となる。これにより、濾過工程において原水の流れによって中空糸膜14を効果的に洗浄することができると共に、水の吐出による膜の損傷を防ぐことができる。
また図2に示すように、導水管5の最上部に形成された通水孔54は気体抜き口11の下面11Aよりも上側に位置しており、上端から見て2番目の通水孔54は当該下面11Aよりも下側に位置している。つまり、導水管5には、気体抜き口11の下面11Aを上下方向に挟む位置に通水孔54が形成されている。
[濾過方法]
次に、上記濾過装置1を用いて実施される本実施形態に係る濾過方法について、図1及び図10を主に参照して説明する。図10は、濾過装置1の基本的な運転方法について、各工程とバルブの開閉状態との関係を示している。図10中の丸印は該当するバルブが開状態であることを意味し、空欄は該当するバルブが閉状態であることを意味する。
はじめに、充水工程(濾過前)が実施される。この工程では、濾過装置1の全バルブが閉じた状態から制御装置40によって原水バルブ22及び気体排出口バルブ62が開かれ、送液ポンプ20が作動する。これにより、送液ポンプ20から原水配管21を介して導水管5内に原水が導入される。そして、導水管5の各通水孔54からハウジング13の内部空間S1に原水が供給される。これにより、内部空間S1が充水される。
次に、濾過工程が実施される。この工程では、気体抜き口11から原水が溢れた後、制御装置40によって濾液出口バルブ71が開かれ、かつ気体排出口バルブ62が閉じられる。そして、導水管5の複数の通水孔54から内部空間S1に向けて供給された原水が、中空糸膜14の外表面側から膜壁を通過して内表面側へ浸透する。そして、濾液側の空間S2から濾液が取り出される。
この濾過工程では、導水管5の複数の通水孔54から内部空間S1に向けて径方向外向きに原水が吐出されるが、当該導水管5においては、上述のように下側管部5Bにおける通水孔54の開孔率が上側管部5Aにおける通水孔54の開孔率よりも大きくなっている。このため、各通水孔54から均一化された流速で原水を吐出することができ、原水を濾過しながらその水流によって中空糸膜14を均一に洗浄することができる(セルフクリーニング)。
上記のように濾過工程が一定時間実施された後、以下に説明するようにバブリングによる中空糸膜14の洗浄が行われる。
まず、逆洗工程が実施される。この工程では、制御装置40によって液体排出口バルブ42及び第1気体導入バルブ34が開かれ、エアーコンプレッサー30を作動させる。これにより、濾液側気体入口53からハウジング13の濾液側の空間S2に気体(例えば空気)が導入され、当該気体によって濾液が加圧される。濾液は、中空糸膜14の内表面側から外表面側に押し出され、その結果内部空間S1の液体の一部がドレン抜き口12から系外に排出される。このようにして、中空糸膜14の逆洗が行われる。その後、濾液側圧抜きバルブ81を開くことにより、濾液側の空間S2の圧力を低下させる。
次に、充水工程(下側バブリング前)が実施される。この工程では、上記逆洗工程において低下した内部空間S1内の液面を上昇させるため、制御装置40によって気体排出口バルブ62及び原水バルブ22が開かれ、送液ポンプ20を作動させる。これにより、内部空間S1内に原水が導入され、液面が上昇する。その後、送液ポンプ20を停止させ、原水バルブ22が閉じられ、原水の供給が停止する。
次に、下側バブリング工程が実施される。この工程では、内部空間S1が充水された状態において、制御装置40によって第2気体導入バルブ35が開かれ、エアーコンプレッサー30が作動する。これにより、第2気体導入配管32を介して散気用気体入口7からハウジング13内に空気が供給される。そして、当該空気は、気体受け部45に収容された後、通気孔43から中空糸膜14の下端14Aに向けて分散される。そして、中空糸膜14の下端14Aから上端14Bに向かって上昇する空気により中空糸膜14が揺らされ、その作用で膜表面に付着した汚濁物質が剥がれ落とされる。このように、下側バブリング工程では、中空糸膜14の下端14Aよりも下側の位置でハウジング13内に空気を分散させ、当該空気をハウジング13の上部空間に向かって上昇させることにより、中空糸膜14が洗浄される。
次に、排水工程が実施される。この工程では、制御装置40によって第2気体導入バルブ35が閉じられると共に液体排出口バルブ42が開かれる。これにより、下側バブリング工程で膜表面から剥がれた汚濁物質を含む原水がドレン抜き口12を介して系外に排出される。
次に、充水工程(上側バブリング前)が実施される。この工程では、気体排出口バルブ62及び原水バルブ22が開かれ、送液ポンプ20を作動させることにより、再び内部空間S1に原水が満たされる。
次に、上側バブリング工程が実施される。この工程では、下側バブリング工程において洗浄が不十分であった中空糸膜14の上端14Bにおいて、膜表面に付着した汚濁物質がより確実に除去される。
まず、制御装置40によって原水バルブ22が閉じられると共に第3気体導入バルブ36が開かれる。これにより、第3気体導入配管33を介して導水管用気体入口8から導水管5内に空気が導入される。そして、当該空気は、導水管5内において浮力により上昇し、導水管5の最上部及びその真下に位置する通水孔54からハウジング13内に分散する。これにより、中空糸膜14の上端14Bの近傍を中心にバブリング洗浄することが可能となり、下側バブリング工程では十分に除去できなった上端14Bの周辺の膜表面に付着した汚濁物質をより確実に除去することができる。このように、上側バブリング工程では、ハウジング13の上部空間で空気を分散させることにより、中空糸膜14が洗浄される。
また上側バブリング工程において、バブリングの開始直後においては内部空間S1全体が充水されているため、最上部の通水孔54及びその真下の通水孔54から吐出される空気によってバブリング洗浄することができる。そして、バブリング開始から一定時間経過すると、気体抜き口11から空気を含む原水が排出されるため、内部空間S1の液面が下面11Aまで低下する。この状態においても、導水管5に供給される空気の浮力によって導水管5内の原水を気体抜き口11の下面11Aよりも上側の通水孔54(最上部の通水孔54から空気と共に噴出させることができる。そして、ハウジング13内の原水を気体抜き口11の下面11Aよりも下側の通水孔54から導水管5内に流入させることができる。これにより、原水と空気の混合流体を気体抜き口11の下面11Aよりも上側の通水孔54から継続的に噴出させてバブリングすることができるため、中空糸膜14の上端14Bまで効果的に洗浄することができる。
次に、排水工程が実施される。この工程では、第3気体導入バルブ36が閉じられると共に液体排出口バルブ42が開かれる。これにより、上側バブリング工程で膜表面から剥がれた汚濁物質を含む原水がドレン抜き口12から系外に排出される。以上のようにして中空糸膜モジュール10の洗浄が行われた後、濾過運転が再開される。
また上側及び下側バブリング工程のいずれにおいても、空気の供給量は20000NL/h以下であることが好ましく、500〜10000NL/hの範囲内であることが好ましい。また下側バブリング工程では、空気の供給量が過剰になると中空糸膜14同士が絡まり合って膜表面が傷付いてしまうのに対し、上側バブリング工程ではこのような問題が生じ難い。そのため、上側バブリング工程では、下側バブリング工程よりも空気の供給量を高く設定することができる。
[作用効果]
次に、上記本実施形態に係る中空糸膜モジュール10の特徴及び作用効果について説明する。
上記中空糸膜モジュール10は、外圧濾過式のものであって、束状の複数の中空糸膜14を有する中空糸膜束15と、中空糸膜束15が収容される内部空間S1が形成されたハウジング13と、内部空間S1に配置され、内部空間S1に向けて原水を吐出するための複数の通水孔54が形成され、通水孔54の径よりも内径が大きい導水管5と、を備える。導水管5には、管内に原水を導入するための原水入口9が設けられている。導水管5は、導水管5において原水入口9により近い下側管部5B(上流管部)と、導水管5において下側管部5Bよりも原水入口9から遠い上側管部5A(下流管部)と、を有する。下側管部5B及び上側管部5Aの各々に通水孔54が形成されている。下側管部5Bは、上側管部5Aに比べて、通水孔54の開孔率が大きくなっている。より具体的には、下側管部5Bは、上側管部5Aに比べて多数の通水孔54が形成されている。
この構成によれば、導水管5の各通水孔54から均一な流速で原水を吐出することができる。これにより、濾過中に中空糸膜14に対して均一に原水を行き渡らせることが可能となり、原水の濾過処理を行いながら中空糸膜14を均一に洗浄することができる。その結果、濾過中におけるモジュールの差圧の急激な上昇を抑制することにより濾過寿命を延長すると共に、濾過処理を中断して行われる逆流洗浄やバブリングなどの膜洗浄の頻度をより少なくすることができる。
図11は、中空糸膜モジュールを用いた原水の濾過における、SSの捕捉量(横軸)と濾過抵抗(縦軸)との関係を示している。このグラフにおいて、(A)は導水管5の下端に原水入口9を設けると共に下側管部5Bにおける通水孔54の数を上側管部5Aよりも多くした場合、(B)は上側管部5A及び下側管部5B共に同数の通水孔54を形成した場合、(C)は導水管5を設けずにハウジング13の下部に設けられた入口から原水を供給した場合をそれぞれ示している。このグラフから明らかなように、原水の流れに対して上流側にある下側管部5Bにおいて下流側にある上側管部5Aよりも多数の通水孔54を形成することで、濾過抵抗の上昇を大幅に抑えることができる。
上記中空糸膜モジュール10において、通水孔54は、導水管5の軸方向に互いに間隔を空けて形成されると共に、当該軸方向の同じ位置において導水管5の周方向に互いに間隔を空けて形成されている。導水管5は、軸方向の同じ位置において周方向に形成される通水孔54の数が原水入口9に近づくに従って増加する部分(導水管5の上端から見て2番目〜10番目の範囲)を含む。このように、原水入口9に近づくに従って周方向の通水孔54の数を増加させることで、各通水孔54から吐出される原水の流速をより均一化することができる。
上記中空糸膜モジュール10において、通水孔54は、軸方向の同じ位置から吐出される原水の吐出量の合計が0.02m3/h以上10m3/h以下となるように形成されている。上記吐出量の合計が0.02m3/h未満である場合には、吐出量が不足し、膜の洗浄効果に劣る。一方で、上記吐出量の合計が10m3/hを超える場合には、吐出量が過剰であり、膜を傷める虞がある。このため、上記吐出量の合計は、0.02m3/h以上10m3/h以下であることが好ましい。
上記中空糸膜モジュール10において、通水孔54は、内部空間S1に向けて吐出される原水の流速が0.05m/s以上4m/s以下となる大きさに形成されている。この時、通水孔54の径は、5mm以上20mm以下であることが好ましい。
通水孔54から吐出される原水の流速が0.05m/s未満である場合には、濾過中における原水の流れによる膜の洗浄効果が弱くなり、一方で原水の流速が4m/sを超える場合には、原水の吐出によって中空糸膜を傷める虞がある。このため、通水孔54は、原水の流速が0.05m/s以上4m/s以下となる大きさに形成されることが好ましく、0.1m/s以上2m/s以下となる大きさに形成されることがより好ましい。
上記中空糸膜モジュール10において、導水管5の内径は、40mm以上である。導水管5の内径が40mm未満である場合には、通水時における管内の流速が大きくなりすぎるため、圧力損失が増大する。このため、導水管5の内径は、40mm以上に設計されることが好ましい。
上記中空糸膜モジュール10において、中空糸膜束15は、中空糸膜14の上端14Bが固定されると共に、下端14Aにおいて中空糸膜14が一本ずつ固定されない片端フリータイプである。これにより、バブリング時に気泡によって中空糸膜14を容易に振動させることができるため、膜表面の洗浄効果をより向上させることができる。
上記中空糸膜モジュール10では、導水管5において中空糸膜14の上端14Bに最も近接する通水孔54は、これに隣接する通水孔54よりも多数形成されている。これにより、特に洗浄が困難な中空糸膜14の上端14Bの近傍を通水孔54からの原水の吐出によって効果的に洗浄することができる。
(その他実施形態)
次に、本発明のその他実施形態について説明する。
上記実施形態1では、導水管5の下端に原水入口9が設けられ、導水管5の下端から上端に向かって原水が流れる場合について説明したが、これに限定されない。図12に示すように、導水管5の上端近傍に原水配管21が接続され、導水管5の上端から下端に向かって原水が流れる構成としてもよい。この場合、上側管部5Aが上流管部となり、下側管部5Bが下流管部となる。そして、上側管部5Aにおいて下側管部5Bよりも多くの通水孔54を形成し、通水孔54の開孔率も大きくすることにより、上記実施形態1と同様に各通水孔54から吐出される原水の流速を均一化することができる。
上記実施形態1では、下側管部5Bにおいて上側管部5Aよりも通水孔54の数を多くすることにより開孔率を大きくする場合について説明したが、これに限定されない。例えば、通水孔54の数を同じとし、通水孔54の大きさ(開孔面積)を変えてもよい。
上記実施形態1では、導水管5における管部5Cの全体に亘って通水孔54が形成される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、上側管部5Aのみに通水孔54が形成されてもよいし、下側管部5Bのみに通水孔54が形成されてもよい。この場合でも、原水入口9に近い部分において原水入口9から遠い部分に比べて通水孔54の開孔率が大きくなるように設計される。
上記実施形態1のように、導水管5が中空糸膜束15の中心に配置される場合に限定されず、中空糸膜束15の外側に配置されてもよい。
上記実施形態1において、散気部材4を省略してもよい。
上記実施形態1のように下側バブリング工程の後に上側バブリング工程を行う場合に限定されず、両バブリング工程を同時に行ってもよいし、上側バブリング工程の後に下側バブリング工程を行ってもよい。しかし、下側バブリング工程の後に上側バブリング工程を行う順序が洗浄効果の面で最も好ましい。
(実施例1)
まず、本実施例に使用した中空糸膜モジュール10について、図2を参照して説明する。中空糸膜束15としては、膜面積が30m2である片端フリータイプのものを使用した。中空糸膜14としては、親水化処理されたポリフッ化ビニリデン系樹脂からなり、平均孔径が0.02μmであり、有効長が890mmのものを使用した。
導水管5としては、長さが985mm、内径が40mmの円筒状のものを使用した。導水管5は、中空糸膜束15の中心に配置し、固定部材3により中空糸膜束15と共に固定した。導水管5において、固定部材3から長手方向に70mm離れた位置から100mmの間隔で、上端から下端に向かって、4個、4個、5個、5個、6個、6個、8個、8個、8個(合計54個)の通水孔54を、固定部材3から長手方向に970mmの位置まで形成した。通水孔54は、周方向に等間隔で形成し、孔径は10mmとした。
散気部材4は、固定部材3から長手方向に915mm離れた位置に取り付けた。散気部材4は、複数の通気孔43が形成された円板状の本体部44と、気体受け部45と、周壁部47と、からなるものを用いた。導水管5内への気体供給口として導水管用気体入口8を設け、散気部材4の気体受け部45への気体供給口として散気用気体入口7を設けた。
上記中空糸膜モジュール10を使用し、水酸化第二鉄の懸濁液からなり、SS濃度が400mg/Lのモデル水を原水として、外圧全濾過方式により流量5000L/hの条件で30分間定流量濾過を行った。そして、濾過運転後、中空糸膜モジュール10の濾液側から0.2MPaの圧縮空気により逆圧洗浄を実施し、その後バブリング洗浄を実施した。散気部材4及び導水管5に供給するバブリング用の空気の流量は1700NL/hとした。濾過運転中に中空糸膜モジュール10に供給されたSS供給量に対する、排出されたSS排出量の比率(SS排出量/SS供給量)は、98%であった。
(比較例1)
導水管5以外は上記実施例と同じ構成の中空糸膜モジュール10を使用した。導水管5は、固定部材3から長手方向に70mm離れた位置から100mmの間隔で6個ずつ(合計54個)の通水孔54を水供給部材970mmの位置まで形成した。通水孔54は、周方向に等間隔で形成し、孔径は10mmとした。
上記中空糸膜モジュール10を使用し、水酸化第二鉄の懸濁液からなり、SS濃度が400mg/Lのモデル水を原水として、外圧全濾過方式により流量5000L/hの条件で30分間定流量濾過を行った。そして、濾過運転後、中空糸膜モジュール10の濾液側から0.2MPaの圧縮空気により逆圧洗浄を実施し、その後バブリング洗浄を実施した。散気部材4及び導水管5に供給するバブリング用の空気流量は1700NL/hとした。濾過運転中に中空糸膜モジュール10に供給されたSS供給量に対する、排出されたSS排出量の比率(SS排出量/SS供給量)は、78%であった。
今回開示された実施形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。