JP2018049693A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の出力低下を抑制しつつ、耐久性に優れる燃料電池を提供すること。
【解決手段】電解質層4と、前記電解質層4を挟んで対向配置され、液体燃料が供給される燃料側電極2、および、酸素が供給される酸素側電極3とを備える燃料電池1において、電解質層4は、アニオン交換膜であり、液体燃料は、少なくとも水素および窒素を含有する化合物を含み、燃料側電極2は、ニオブ酸化物とニッケル酸化物とを含み、ニッケル酸化物中のニッケルに対するニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)が、0を超過し、0.5未満である。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に関し、より詳しくは、固体高分子型燃料電池に関する。
現在まで、燃料電池としては、アルカリ型(AFC)、固体高分子型(PEFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体電解質型(SOFC)などの各種のものが知られている。なかでも、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で運転できることから、例えば、自動車用途などの、各種用途での使用が検討されている。
例えば、固体高分子型燃料電池は、燃料が供給される燃料側電極(アノード)と、酸素が供給される酸素側電極(カソード)とを備えており、これらの電極は、固体高分子膜からなる電解質層を挟んで対向配置されている。
このような燃料電池では、通常、発電の効率化を図るため、各電極に金属触媒が含有されており、具体的には、アノードにおける金属触媒として、ニッケルを用いることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
また、燃料電池では、金属触媒をカーボンなどの担体に担持させて用いることや、例えば、そのような金属触媒を焼成して用いることも知られている。
Journal of Electrochemical Society, 2009年,156(4),B509−B512
一方、燃料電池の燃料側電極は、燃料電池の使用に伴って劣化する場合がある。
具体的には、液体燃料としてヒドラジン(NHNH)を用いた場合には、燃料電池の稼働中に、過酸化水素が発生し、これにより、燃料電池が劣化するという不具合がある。
また、このような不具合を解消するために、低濃度の液体燃料を使用することも検討される。しかし、このような場合には、液体燃料が低濃度であるので、燃料電池の出力が低下するという不具合がある。
そこで、本発明の目的は、燃料電池の出力低下を抑制しつつ、耐久性に優れる燃料電池を提供することにある。
本発明[1]は、電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、液体燃料が供給される燃料側電極、および、酸素が供給される酸素側電極とを備える燃料電池において、前記電解質層は、アニオン交換膜であり、前記液体燃料は、少なくとも水素および窒素を含有する化合物を含み、前記燃料側電極は、ニオブ酸化物とニッケル酸化物とを含み、ニッケル酸化物中のニッケルに対するニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)が、0を超過し、0.5未満である、燃料電池を含んでいる。
本発明の燃料電池によれば、燃料側電極が、ニオブ酸化物とニッケル酸化物を含み、ニッケル酸化物中のニッケルに対するニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)が、0を超過し、0.5未満であるので、燃料電池の出力低下を抑制しつつ、燃料電池における耐久性の向上を図ることができる。
図1は、本発明の燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。 図2は、各実施例および各比較例のそれぞれの金属酸化物触媒によって製造した触媒層の耐久性を評価した場合の、時間と電流密度との関係を示すグラフである。 図3は、図2に示すグラフ中の各実施例および各比較例の0〜145時間における電流値の変化率(電流維持率)を示すグラフである。
図1において、この燃料電池1は、燃料電池セルSを備えており、燃料電池セルSは、燃料側電極2、酸素側電極3および電解質層4を備え、燃料側電極2および酸素側電極3が、それらの間に電解質層4を挟んだ状態で、対向配置されている。換言すれば、燃料電池セルSは、電解質層4と、電解質層4を挟んで対向配置される燃料側電極2および酸素側電極3とを備えている。
燃料側電極2は、電解質層4の一方の面に対向接触されている。この燃料側電極2は、金属酸化物触媒として、ニオブ酸化物とニッケル酸化物とを含んでいる。好ましくは、金属酸化物触媒は、ニオブ酸化物とニッケル酸化物とからなる。
なお、金属酸化物触媒は、ニッケル金属単体を含まない。
このような金属酸化物触媒を製造するには、例えば、まず、ニッケル塩を含むニッケル塩溶液を調製し、次いで、そのニッケル塩溶液に、ニオブ酸化物を添加し、その後、乾燥および焼成する。
より具体的には、金属酸化物触媒を製造するには、例えば、まず、ニッケル塩を、溶剤に配合させ、ニッケル塩溶液を調製する。
ニッケル塩としては、例えば、ニッケルの無機金属塩、ニッケルの有機金属塩などが挙げられる。
ニッケルの無機金属塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、例えば、塩化物、アンモニウム塩などが挙げられる。
ニッケルの有機金属塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩などから形成されるニッケルのカルボン酸塩、例えば、下記一般式(1)で示されるβ−ジケトン化合物またはβ−ケトエステル化合物、および/または、下記一般式(2)で示されるβ−ジカルボン酸エステル化合物から形成されるニッケルの金属キレート錯体などが挙げられる。
COCHRCOR (1)
(式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基またはアリール基を示し、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリール基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示し、R3は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
CH(COR (2)
(式中、R4は、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R5は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
上記一般式(1)および上記一般式(2)中、R1、R2およびR4の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、t−アミル、t−ヘキシルなどが挙げられる。また、R3およびR5の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。
上記一般式(1)中、R1およびR2の炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチルなどが挙げられる。また、R1およびR2のアリール基としては、例えば、フェニルが挙げられる。また、R1の炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。
β−ジケトン化合物は、より具体的には、例えば、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1−トリフルオロメチル−1,3−ブタンジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、ジピバロイルメタンなどが挙げられる。
また、β−ケトエステル化合物は、より具体的には、例えば、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどが挙げられる。
また、β−ジカルボン酸エステル化合物は、より具体的には、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどが挙げられる。
これらニッケル塩は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ニッケル塩として、好ましくは、ニッケルの無機金属塩、より好ましくは、ニッケルの無機酸塩、さらに好ましくは、ニッケルの硝酸塩が挙げられる。
溶剤としては、例えば、水、アルコール類(例えば、2−プロパノールなど)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)など)、ケトン類、エステル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。
これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
溶剤として、好ましくは、水、アルコール類、エーテル類などが挙げられる。
この場合には、ニッケル塩溶液中のニッケル塩濃度は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、1.0mol/L以下、好ましくは、0.3mol/L以下である。
次いで、得られたニッケル塩溶液に、ニオブ酸化物を配合する。
ニオブ酸化物としては、例えば、酸化ニオブ(II)、酸化ニオブ(III)、酸化ニオブ(IV)などが挙げられる。
これらニオブ酸化物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ニオブ酸化物として、好ましくは、酸化ニオブ(IV)が挙げられる。
これらのニオブ酸化物は、固体として配合してもよく、予め調製された分散液(ゾル)として配合してもよい。好ましくは、水分散液(ゾル)として配合する。
これにより、分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、溶剤との混合物)が得られる。
得られる分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、溶剤との混合物)において、ニッケル塩の濃度は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、1.0mol/L以下、好ましくは、0.1mol/L以下である。
得られる分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、溶剤との混合物)において、ニオブ酸化物の濃度は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、1.0mol/L以下、好ましくは、0.1mol/L以下である。
また、分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、溶剤との混合物)において、ニオブ酸化物と、ニッケル塩との濃度(総量)は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、5mol/L以下、好ましくは、1mol/L以下である。
次いで、例えば、常温乾燥、加熱乾燥、真空(凍結)乾燥などの公知の方法により、溶剤を除去し、乾燥粉末を得る。
具体的には、例えば、分散液を常温乾燥させ、次いで、真空乾燥する。
乾燥条件としては、乾燥温度が、例えば、10℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、5時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、15時間以下である。
真空乾燥条件としては、例えば、10℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、5時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、18時間以下である。
これにより、乾燥粉末が得られる。
次いで、得られた乾燥粉末を、焼成する。これにより、ニッケルが酸化され、例えば、酸化ニッケル(II)などのニッケル酸化物が得られる。
焼成条件としては、焼成温度が、例えば、800℃未満、好ましくは、700℃以下、より好ましくは、600℃未満、さらに好ましくは、500℃以下、とりわけ好ましくは、450℃以下であり、通常、200℃以上、好ましくは、300℃以上であり、また、焼成時間が、例えば、0.2時間以上、好ましくは、0.5時間以上であり、例えば、6時間以下、好ましくは、4時間以下である。
より詳しくは、焼成温度が比較的高いほど、ニッケルが酸化されにくく、焼成温度が比較的低いほど、ニッケルは酸化されやすくなる。
焼成温度が上記の範囲内にあれば、ニッケルが十分に酸化され、ニッケル酸化物が得られる。
なお、上記焼成においては、ニオブと、ニッケルとは合金化されることなく、ニオブ酸化物と、ニッケル酸化物は、それぞれ独立して存在する。
また、本発明においては、ニオブ酸化物と、ニッケル酸化物とをカーボンに担持させることもできる。
ニオブ酸化物と、ニッケル酸化物とをカーボンに担持させるには、例えば、まず、カーボンを溶剤に分散させて分散液を調製し、次いで、その分散液に、ニッケル塩(ニッケル塩溶液)を配合し、次いで、その分散液に、ニオブ酸化物を配合する。
カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられ、好ましくは、ケッチェンブラックが挙げられる。
これらカーボンは、単独使用または2種以上を併用することができる。
分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、カーボンと、溶剤との混合物)において、ニオブ酸化物の濃度は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、1.0mol/L以下、好ましくは、0.1mol/L以下である。
また、分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、カーボンと、溶剤との混合物)において、ニッケル塩の濃度は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、1.0mol/L以下、好ましくは、0.3mol/L以下である。
分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、カーボンと、溶剤との混合物)において、カーボンの濃度は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、10mol/L以下、好ましくは、5mol/L以下である。
また、分散液(ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、カーボンと、溶剤との混合物)において、ニオブ酸化物と、ニッケル塩と、カーボンとの濃度(総量)は、例えば、0.0001mol/L以上、好ましくは、0.01mol/L以上であり、また、例えば、15mol/L以下、好ましくは、8mol/L以下である。
そして、上記と同様に、得られた分散液を乾燥および焼成する。
これにより、ニオブ酸化物とニッケル酸化物とをカーボンに担持させることができる。
なお、上記では、ニッケル塩溶液に、ニオブ酸化物を添加したが、例えば、まず、ニオブ酸化物の分散液を調製し、その分散液にニッケル塩溶液を添加してもよい。
ニッケル酸化物中のニッケルに対するニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)は、0を超過し、好ましくは、0.1以上であり、また、例えば、0.5未満、好ましくは、0.3以下、より好ましくは、0.25以下、さらに好ましくは、0.2以下である。
ニッケル酸化物中のニッケルに対するニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)が、上記した下限以下であれば、燃料電池は、耐久性に劣る。また、上記した上限以上であれば、燃料電池は、耐久性に劣る。
ニオブ酸化物と、ニッケル酸化物とをカーボンに担持させた金属酸化物触媒の比表面積は、例えば、100m/g以上、好ましくは、200m/g以上であり、また、例えば、1000m/g以下、好ましくは、800m/g以下である。
なお、比表面積は、JIS Z 8830(2013)に準拠したキャリアガス法により測定される。
ニオブ酸化物とニッケル酸化物とをカーボンに担持させる場合、ニオブ(金属)とニッケル(金属)とカーボンとの総量に対して、カーボンの含有割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、50質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、65質量%以下、より好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、55質量%以下である。
また、ニッケル(金属)の含有割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下である。
また、ニオブ(金属)の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、35質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、8質量%以下、とりわけ好ましくは、7質量%以下、さらには、6質量%以下である。
また、このような触媒から燃料側電極2を形成するには、特に制限されないが、例えば、膜−電極接合体を形成する。膜−電極接合体は、公知の方法により形成することができる。例えば、まず、上記金属酸化物触媒と電解質溶液(アニオン交換樹脂溶液)とを混合し、必要によりアルコールやエーテルなどの適宜の溶媒を添加して粘度を調整することにより、上記金属酸化物触媒の分散液(燃料側電極インク)を調製する。次いで、その分散液を、電解質層4(アニオン交換膜)の厚み方向一方側の面(以下、単に一方面とする。)の表面にコーティングすることにより、上記金属酸化物触媒を電解質層4の一方面の表面に定着させる。
金属酸化物触媒の使用量は、例えば、0.01〜5mg/cmである。
この燃料側電極2では、後述するように、供給される液体燃料に含まれる、少なくとも水素および窒素を含有する化合物(以下、「燃料化合物」という。)と、電解質層4を通過した水酸化物イオン(OH)とを反応させて、電子(e)と窒素(N)と水(HO)とを生成させる。
酸素側電極3は、電解質層4の他方の面に対向接触されている。この酸素側電極3は、特に限定されないが、例えば、金属触媒が担持される多孔質電極として形成されている。
上記金属触媒は、遷移金属が含まれており、例えば、遷移金属と錯体形成有機化合物とが錯体を形成することにより、形成されているか、または、例えば、遷移金属が導電性高分子からなる担体に担持されることにより、形成されている。
遷移金属としては、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、鉄、銀、コバルトが挙げられ、より好ましくは、鉄が挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができ、これらの合金も使用することができる。
錯体形成有機化合物は、金属原子に配位することによって、当該金属原子と錯体を形成する有機化合物であって、例えば、ピロール、ポルフィリン、テトラメトキシフェニルポルフィリン、ジベンゾテトラアザアヌレン、フタロシアニン、コリン、クロリン、フェナントロリン、サルコミン、アミノアンチピリン(AAPYr)などの錯体形成有機化合物またはこれらの重合体が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ピロールの重合体であるポリピロール、フェナントロリン、サルコミン、アミノアンチピリンが挙げられ、とりわけ好ましくは、アミノアンチピリンが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
導電性高分子としては、上記した錯体形成有機化合物と重複する化合物もあるが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリビニルカルバゾール、ポリトリフェニルアミン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン、ポリイソチアナフテン、ポリピリジンジイル、ポリチエニレン、ポリパラフェニレン、ポリフルラン、ポリアセン、ポリフラン、ポリアズレン、ポリインドール、ポリジアミノアントラキノンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
金属触媒を形成するには、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
このような金属触媒から酸素側電極3を形成するには、特に制限されないが、例えば、上記した燃料側電極2と同様にして、金属触媒を電解質層4の他方の面(以下、他方面とする。)の表面に定着させる。
具体的には、例えば、まず、上記金属触媒と電解質溶液(アニオン交換樹脂溶液)とを混合し、必要によりアルコールやエーテルなどの適宜の溶媒を添加して粘度を調整することにより、上記金属触媒の分散液(酸素側電極インク)を調製する。次いで、その分散液を、電解質層4(アニオン交換膜)の他方面の表面にコーティングすることにより、上記金属触媒を電解質層4の他方面の表面に定着させる。
金属触媒の使用量は、例えば、0.01〜5mg/cmである。
この酸素側電極3では、後述するように、供給される酸素(O)と、水(HO)と、外部回路13を通過した電子(e)とを反応させて、水酸化物イオン(OH)を生成させる。
電解質層4は、アニオン交換膜から形成されている。アニオン交換膜としては、酸素側電極3で生成される水酸化物イオン(OH)を、酸素側電極3から燃料側電極2へ移動させることができる媒体であれば、特に限定されないが、例えば、4級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられる。
燃料電池セルSは、さらに、燃料供給部材5および酸素供給部材6を備えている。燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、燃料側電極2に対向接触されている。そして、この燃料供給部材5には、燃料側電極2の全体に液体燃料を接触させるための燃料側流路7が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この燃料側流路7は、その上流側端部および下流側端部に、燃料供給部材5を貫通する供給口9および排出口8がそれぞれ連続して形成されている。
また、酸素供給部材6も、燃料供給部材5と同様に、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、酸素側電極3に対向接触されている。そして、この酸素供給部材6にも、酸素側電極3の全体に酸素(空気)を接触させるための酸素側流路10が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この酸素側流路10にも、その上流側端部および下流側端部に、酸素供給部材6を貫通する供給口11および排出口12がそれぞれ連続して形成されている。
また、図示しないが、燃料電池1においては、必要に応じて、燃料供給部材5と燃料側電極2との間、および、酸素供給部材6と酸素側電極3との間に、公知のガス拡散層を積層することができる。
そして、この燃料電池1は、実際には、上記した燃料電池セルSが、複数積層されるスタック構造として形成される。そのため、燃料供給部材5および酸素供給部材6は、実際には、両面に燃料側流路7および酸素側流路10が形成されるセパレータとして構成される。
なお、図示しないが、この燃料電池1には、導電性材料によって形成される集電板が備えられており、集電板に備えられた端子から燃料電池1で発生した起電力を外部に取り出すことができるように構成されている。
また、試験的(モデル的)には、この燃料電池セルSの燃料供給部材5と酸素供給部材6とを外部回路13によって接続し、その外部回路13に電圧計14を介在させて、発生する電圧を計測することもできる。
そして、本発明においては、上記燃料化合物を含む液体燃料が、改質などを経由することなく、直接供給される。
この燃料化合物では、水素は窒素に直接結合していることが好ましい。また、燃料化合物は、窒素−窒素結合を有するものが好ましく、炭素−炭素結合を有しないものが好ましい。また、炭素の数はできる限り少ない(できればゼロである)ものが好ましい。
また、このような燃料化合物には、その性能を阻害しない範囲において、酸素原子、イオウ原子などを含んでいてよく、より具体的には、カルボニル基、水酸基、水和物、スルホン酸基あるいは硫酸塩などとして、含まれていてもよい。
このような観点から、本発明において燃料化合物としては、具体的には、例えば、ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、カルボンヒドラジド((NHNHCO)などのヒドラジン類、例えば、尿素(NHCONH)、例えば、イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールなどの複素環類、例えば、ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)などのヒドロキシルアミン類などが挙げられる。このような燃料化合物は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。好ましくは、ヒドラジン類が挙げられる。
上記した燃料化合物のうち、炭素を含まない化合物、すなわち、ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)などは、後述するヒドラジンの反応のように、COによる触媒の被毒がないので耐久性の向上を図ることができ、実質的なゼロエミッションを実現することができる。
また、液体燃料には、添加剤として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物などが添加することができる。添加剤の添加量は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
液体燃料は、上記例示の燃料化合物をそのまま用いてもよいが、上記例示の燃料化合物を、例えば、水および/またはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールなど)などの溶液として用いることができる。この場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、燃料化合物の種類によっても異なるが、例えば、1〜90重量%、好ましくは、1〜30重量%である。
そして、酸素供給部材6の酸素側流路10に酸素(空気)を供給しつつ、燃料供給部材5の燃料側流路7に上記した液体燃料を供給すれば、酸素側電極3においては、次に述べるように、燃料側電極2で発生し、外部回路13を介して移動する電子(e)と、水(HO)と、酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)を生成する。生成した水酸化物イオン(OH)は、アニオン交換膜からなる電解質層4を、酸素側電極3から燃料側電極2へ移動する。そして、燃料側電極2においては、電解質層4を通過した水酸化物イオン(OH)と、液体燃料とが反応して、電子(e)が生成する。生成した電子(e)は、燃料供給部材5から外部回路13を介して酸素供給部材6に移動され、酸素側電極3へ供給される。このような燃料側電極2および酸素側電極3における電気化学的反応によって、起電力が生じ、発電が行われる。
そして、このような電気化学的反応には、燃料側電極2において、液体燃料に水酸化物イオン(OH)を直接反応させる一段反応と、液体燃料を、水素(H)と窒素(N)とに分解した後に、分解により生成した水素(H)に水酸化物イオン(OH)を反応させる二段反応との2種類の反応がある。
例えば、液体燃料としてヒドラジン(NHNH)を用いた場合には、一段反応は、燃料側電極2、酸素側電極3および全体として、次の反応式(1)〜(3)で表すことができる。
(1) NHNH+4OH→4HO+N+4e (燃料側電極)
(2) O+2HO+4e→4OH (酸素側電極)
(3) NHNH+O→2HO+N (全体)
また、二段反応は、燃料側電極2、酸素側電極3および全体として、次の反応式(4)〜(7)で表すことができる。
(4) NHNH→2H+N (分解反応;燃料側電極)
(5) H+2OH→2HO+2e (燃料側電極)
(6) 1/2O+HO+2e→2OH (酸素側電極)
(7) H+1/2O→HO (全体)
一方、上記の反応では、燃料電池の稼働中に、過酸化水素が発生し、これにより、燃料電池が劣化するという不具合がある。この反応は、反応式(8)のように示される。
(8) NHNH+2O→2H+N
しかし、燃料側電極2が、ニッケル酸化物中のニッケルに対するニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)が、上記した範囲であるため、燃料電池の出力低下を抑制しつつ、燃料電池の耐久性に優れる。
なお、この燃料電池1の運転条件は、特に限定されないが、例えば、燃料側電極2側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、酸素側電極3側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、燃料電池セルSの温度が0〜120℃、好ましくは、20〜80℃として設定される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
本発明の燃料電池の用途としては、例えば、自動車、船舶、航空機などにおける駆動用モータの電源や、携帯電話機などの通信端末における電源などが挙げられる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
実施例1(ニッケル酸化物およびニオブ酸化物(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0.125)、焼成温度400℃)
カーボン粉末(商品名:カーボンECP600JD(ケッチェンブラックECP600JDの粉末)、ライオン社製)10gを、純水0.323Lに加え、カーボン粉末を分散させ、分散液を得た。この分散液に、硝酸ニッケル水溶液(商品名:硝酸ニッケル六水和物、ニッケル含有量:ニッケル金属単体に換算して8g、溶媒:純水0.099L)を配合し、十分に混合させた。次いで、この分散液に、ニオブゾル(酸化ニオブ、商品名:バイラール、ニオブ含有量:ニオブ金属担体に換算して1g、溶媒:純水0.024L)を配合し、十分に混合させた。その後、この分散液を蒸発させ、粉末を得た。次いで、その粉末を60℃で15時間真空乾燥させた。その後、その粉末をアルゴン(Ar)ガス中(酸素濃度0.005%以下)において400℃で3時間熱処理(焼成)して、金属酸化物触媒粉末を得た。
なお、得られた金属酸化物触媒粉末を、JIS K 0131に準拠して、X線回折装置(商品名:RINT2500、Rigaku社製)により測定した。これにより、得られた金属酸化物触媒粉末は、ニッケル酸化物およびニオブ酸化物を含む触媒であることを確認した。
実施例2(ニッケル酸化物およびニオブ酸化物(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0.25)、焼成温度400℃)
硝酸ニッケル水溶液のニッケル含有量を、ニッケル金属単体に換算して4gに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、金属酸化物触媒粉末を得た。
なお、実施例1と同様に測定して、得られた金属酸化物触媒粉末は、ニッケル酸化物およびニオブ酸化物を含む触媒であることを確認した。
比較例1(ニッケル金属単体、焼成温度600℃)
カーボン粉末(商品名:カーボンECP600JD(ケッチェンブラックECP600JDの粉末)、ライオン社製)5gを純水0.45Lに加え、カーボン粉末を分散させ、分散液を得た。この分散液に、硝酸ニッケル水溶液(商品名:硝酸ニッケル六水和物、ニッケル含有量:ニッケル金属単体に換算して5g、溶媒:純水0.6L)を配合し、十分に混合させた。次いで、この分散液に、水素化ホウ素ナトリウム6.4gを含む水溶液1.5Lを滴下し、ニッケルをカーボン上に担持させた。その後、この分散液をろ過するとともに、ろ液の導電率が50μS/cm以下になるまで水洗し、粉末を得た。次いで、その粉末を100℃で10時間真空乾燥させた。その後、アルゴン(Ar)ガス中(酸素濃度0.005%以下)において600℃で2時間熱処理(焼成)して、金属触媒粉末を得た。
なお、実施例1と同様に測定して、得られた金属触媒粉末は、ニッケル金属単体を含む触媒であることを確認した。
比較例2(ニッケル酸化物(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0)、焼成温度400℃)
アルゴンガス中における熱処理の温度を400℃とした以外は、比較例1と同様に処理して、金属酸化物触媒粉末を得た。
なお、実施例1と同様に測定して、得られた金属酸化物触媒粉末は、ニッケル酸化物を含む触媒であることを確認した。
比較例3(ニッケル酸化物およびニオブ酸化物(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0.5)、焼成温度400℃)
硝酸ニッケル水溶液のニッケル含有量を、ニッケル金属単体に換算して2gに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、金属酸化物触媒粉末を得た。
なお、実施例1と同様に測定して、得られた金属酸化物触媒粉末は、ニッケル酸化物およびニオブ酸化物を含む触媒であることを確認した。
(評価)
<耐久性評価>
各実施例および各比較例のそれぞれの金属酸化物触媒粉末0.15gと、電解質樹脂溶液(炭化水素系アイオノマー(電解質樹脂)(商品名:A3、AS4)、溶媒:1−プロパノール:THF=1:1(質量比)、2質量%濃度、トクヤマ社製)3.75gとを混合し、得られた混合物を、溶媒(1−プロパノール:THF=1:1(質量比))2.0gに分散させて、燃料側電極インクを調製した。
カーボンペーパー(商品名:10AA SGL社製)の表面に金属酸化物触媒粉末の量が1.5mg/cmとなり、かつ、乾燥後の表面の面積が6×6cm、厚みが50μmとなるように、触媒インクを塗布して常温で乾燥させた。これにより触媒層を形成した。
その後、溶媒を常温の大気中で蒸発させ、3.25MPaの圧力で油圧プレス機により、カーボンペーパーの厚み方向両側から、触媒層ペーパーを2分加圧した。
作成した触媒層シートを3mm×12mmに切り出し、作用電極にセットした。また、分析セルに参照電極、対電極および作用電極をセットした。また、3つの電極にポテンショスタット(1470E、Solartron社製)を接続した。
別途、燃料として1MのKOHと1体積%の水加ヒドラジンとの混合液を調製し、200mlを燃料タンクに入れ、チュービングポンプで3ml/分で分析セルへ供給した。
次いで、電気化学測定法(定電位保持)により、触媒層の耐久性を測定した。結果を図2および図3に示す。
<評価条件>
設定電位;0.3V(vs.NHE)
参照電極;Hg/HgO
対電極;Ptコイル
測定温度;60度
測定時間:145時間
燃料:1MKOH+1%ヒドラジン
燃料流量:15cc/min
(考察)
図2に示すように、各実施例および各比較例のそれぞれの金属酸化物触媒は、耐久性評価の開始から触媒活性が低下した。
具体的には、図3に示すように、実施例1(ニッケル酸化物およびニオブ酸化物(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0.125))は、耐久性評価を開始した時点での電流値を100%とした場合に、145時間経過した時点での電流維持率が82%まで低下している。
同様に、実施例2(ニッケル酸化物およびニオブ酸化物(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0.25))は、電流維持率が52%まで低下している。
また、比較例3(ニッケル酸化物およびニオブ酸化物(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0.5)は、電流維持率が2%まで低下しており、比較例2(ニッケル酸化物のみ(ニオブの含有割合/ニッケルの含有割合=0))は、電流維持率が1%まで低下している
これらの結果から、燃料側電極が、ニオブ酸化物とニッケル酸化物とを含み、ニッケル酸化物中のニッケルに対するニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)が、0を超過し、0.5未満であれば、燃料側電極の耐久性に優れると考察できる。
1 燃料電池
2 燃料側電極
3 酸素側電極
4 電解質層

Claims (1)

  1. 電解質層と、前記電解質層を挟んで対向配置され、液体燃料が供給される燃料側電極、および、酸素が供給される酸素側電極とを備える燃料電池において、
    前記電解質層は、アニオン交換膜であり、
    前記液体燃料は、少なくとも水素および窒素を含有する化合物を含み、
    前記燃料側電極は、ニオブ酸化物とニッケル酸化物とを含み、
    前記ニッケル酸化物中のニッケルに対する前記ニオブ酸化物中のニオブの比率(ニオブ/ニッケル)が、0を超過し、0.5未満であることを特徴とする、燃料電池。
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