1.燃料電池
図1は、本発明の一実施形態としての燃料電池1の概略構成図である。
燃料電池1は、燃料が直接供給される固体高分子型燃料電池である。燃料電池1は、プロトン交換形燃料電池であってもよく、アニオン交換型燃料電池であってもよいが、好ましくは、アニオン交換型燃料電池である。
燃料電池1は、複数の燃料電池セルSを備えており、これらの燃料電池セルSが積層されたスタック構造として形成されている。なお、図1においては、図解しやすいように1つの燃料電池セルSのみを示している。
燃料電池セルSは、膜電極接合体15と、燃料供給部材5、酸素供給部材6とを備えている。
膜電極接合体15は、電解質層4と、電解質層4の厚み方向一方側に配置されるアノード電極2と、電解質層4の厚み方向他方側に配置されるカソード電極3とを備えている。
電解質層4は、アニオン交換膜またはカチオン交換膜から形成され、好ましくは、アニオン交換膜から形成されている。アニオン交換膜は、カソード電極3で生成されるアニオン成分としての水酸化物イオン(OH-)を、カソード電極3からアノード電極2へ移動させることができる媒体であれば、特に限定されないが、例えば、4級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられる。
電解質膜4の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、例えば、50μm以下、好ましくは、35μm以下である。
アノード電極2は、例えば、アノード触媒を含む電極材料により、電解質層4の一方の面に薄層として形成されている。なお、アノード触媒については、詳しくは後述する。
アノード電極2の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
カソード電極3は、例えば、カソード触媒を含む電極材料により、電解質層4の他方の面に薄層として形成されている。カソード触媒として、例えば、金属単体、遷移金属錯体、遷移金属錯体の焼成体、導電性高分子とカーボンとからなるカーボンコンポジットに遷移金属が担持された複合体などが挙げられる。
金属単体として、例えば、白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))、例えば、鉄族元素(鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni))などの周期表第8~10(VIII)族元素、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)など周期表第11(IB)族元素、例えば、亜鉛(Zn)などが挙げられる。金属単体は、単独使用または2種以上併用することができる。
遷移金属錯体は、遷移金属元素(中心金属)に有機化合物が配位した金属錯体である。遷移金属元素として、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)が挙げられる。遷移金属は、単独使用または2種以上併用することができる。
遷移金属元素に配位する有機化合物として、例えば、ピロール、ポルフィリン、テトラメトキシフェニルポルフィリン、ジベンゾテトラアザアヌレン、フタロシアニン、コリン、クロリン、フェナントロリン、サルコミン、ナイカルバジン、ピペミド酸系化合物、アミノベンズイミダゾール、アミノアンチピリン、またはこれらの重合体が挙げられる。有機化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
導電性高分子として、上記の有機化合物と重複する化合物もあるが、例えば、ポリアミン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリビニルカルバゾール、ポリトリフェニルアミン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン、ポリイソチアナフテン、ポリピリジンジイル、ポリチエニレン、ポリパラフェニレン、ポリフルラン、ポリアセン、ポリフラン、ポリアズレン、ポリインドール、ポリジアミノアントラキノンなどが挙げられる。導電性高分子は、単独使用または2種以上併用することができる。
このようなカソード触媒は、好ましくは、触媒担体に担持される。触媒担体として、例えば、カーボンなどの多孔質物質が挙げられる。なお、カソード電極3は、触媒担体を用いずに、カソード触媒から直接形成することもできる。
カソード電極3の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上、例えば、100μm以下、好ましくは、10μm以下である。
燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、その他方の面が、アノード電極2に対向接触されている。燃料供給部材5には、アノード電極2の全体に燃料を接触させるための燃料側流路7が、他方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。また、燃料供給部材5には、その上流側端部および下流側端部に、燃料側流路7に連通する供給口8および排出口9が形成されている。
酸素供給部材6は、燃料供給部材5と同様に、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、カソード電極3に対向接触されている。酸素供給部材6には、カソード電極3の全体に酸素(空気)を接触させるための酸素側流路10が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。また、酸素供給部材6には、その上流側端部および下流側端部に、酸素側流路10に連通する供給口11および排出口12が形成されている。
そして、この燃料電池1では、ヒドラジン類を含む液体燃料が、燃料供給部材5の供給口8を介して燃料側流路7に供給され、酸素(空気)が、酸素供給部材6の供給口11を介して酸素側流路10に供給される。
詳しくは、液体燃料は、ヒドラジン類が溶媒に溶解される溶液であって、ヒドラジン類と、溶媒とを含有する。
ヒドラジン類として、例えば、ヒドラジン(NH2NH2)、水加ヒドラジン(NH2NH2・H2O)、炭酸ヒドラジン((NH2NH2)2CO2)、塩酸ヒドラジン(NH2NH2・HCl)、硫酸ヒドラジン(NH2NH2・H2SO4)、モノメチルヒドラジン(CH3NHNH2)、ジメチルヒドラジン((CH3)2NNH2、CH3NHNHCH3)、カルボンヒドラジド((NHNH2)2CO)などが挙げられる。ヒドラジン類は、単独使用または2種以上併用することができる。
このようなヒドラジン類のうち、好ましくは、炭素を含まないヒドラジン類、すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどが挙げられる。ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどは、COおよびCO2の生成がなく、触媒の被毒が生じないことから、耐久性の向上を図ることができ、実質的なゼロエミッションを実現することができる。
液体燃料におけるヒドラジン類の濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、3質量%以下である。
溶媒として、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールなど)などが挙げられる。溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。溶媒のなかでは、好ましくは、水が挙げられる。
また、液体燃料は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物をさらに含有する。
アルカリ金属水酸化物として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ金属水酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。アルカリ金属水酸化物のなかでは、好ましくは、水酸化カリウムが挙げられる。
液体燃料におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は、例えば、例えば、0.01mol/L以上、好ましくは、0.05mol/L以上、例えば、2.0mol/L以下、好ましくは、1.0mol/L未満、さらに好ましくは、0.5mol/L以下、とりわけ好ましくは、0.2mol/L以下である。
そして、例えば、電解質膜4がアニオン交換型の固体高分子膜であり、ヒドラジン類がヒドラジンである場合には、下記式(1)~(3)の電気化学反応が生じ、起電力が発生する。
(1) N2H4+4OH-→N2+4H2O+4e-(アノード電極2での反応)
(2) O2+2H2O+4e-→4OH-(カソード電極3での反応)
(3) N2H4+O2→N2+2H2O(燃料電池1全体での反応)
すなわち、アノード電極2では、ヒドラジン(N2H4)とカソード電極3の反応で生成した水酸化物イオン(OH-)とが反応して、窒素(N2)および水(H2O)が生成するとともに、電子(e-)が発生する(上記式(1)参照)。
一方、カソード電極3では、電子(e-)と、外部からの供給もしくは燃料電池1での反応で生成した水(H2O)と、酸素(O2)とが反応して、水酸化物イオン(OH-)が生成する(上記式(2)参照)。生成した水酸化物イオン(OH-)は、電解質膜4を通過してアノード電極2に供給される。
このような電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池1全体として上記式(3)で表わされる反応が生じて、起電力が発生する。
2.アノード触媒
次に、アノード電極2が含有するアノード触媒の詳細について説明する。
アノード触媒は、ニッケル金属単体および/またはニッケル酸化物と、等電点が7以上の水酸化物イオン吸着化合物とを含有する。なお、以下において、ニッケル金属単体およびニッケル酸化物の総和をニッケル成分とし、水酸化物イオン吸着化合物をOH吸着化合物とする。
ニッケル成分(ニッケル金属単体およびニッケル酸化物)は、アノード触媒の活性成分であって、上記式(1)の電気化学反応を促進する。
ニッケル酸化物として、例えば、NiO、Ni2O3などが挙げられ、好ましくは、NiOが挙げられる。
ニッケル成分は、触媒活性の観点から好ましくは、ニッケル金属単体およびニッケル酸化物を含む。ニッケル成分がニッケル金属単体およびニッケル酸化物を含む場合、ニッケル金属単体の含有割合は、ニッケル成分の総molに対して、例えば、20mol%以上、好ましくは、40mol%以上、例えば、80mol%以下、好ましくは、60mol%以下である。なお、ニッケル金属単体の含有割合は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
また、ニッケル成分が含有するNi原子(ニッケル金属単体とニッケル酸化物中のNi原子との総和)の含有割合は、ニッケル成分とOH吸着化合物との総和を100質量%としたときに、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、55質量%以下である。
OH吸着化合物は、等電点が7以上の化合物であって、水酸化物イオン(OH-)を表面に吸着可能である。これによって、OH吸着化合物は、上記式(1)の電気化学反応において、ニッケル成分に水酸化物イオンを供給できる。なお、等電点とは、OH吸着化合物表面の電荷が0になるpHを示す。
OH吸着化合物の等電点は、7以上、好ましくは、8以上、さらに好ましくは、10.0以上、とりわけ好ましくは、12.0以上、例えば、13.0以下である。
OH吸着化合物の等電点が上記下限以上であれば、OH吸着化合物の表面に水酸化物イオンを安定して吸着でき、液体燃料におけるアルカリ金属水酸化物の濃度を低減しても、燃料電池の出力を十分に確保することができる。
OH吸着化合物は、例えば、等電点の範囲が上記範囲内である塩基性酸化物および/または金属水酸化物を含有し、好ましくは、塩基性酸化物および/または金属水酸化物からなる。
塩基性酸化物は、塩基の無水物と見なすことができる酸化物であって、水と化合すれば塩基となり、酸を中和すれば塩をつくる。
等電点の範囲が上記範囲内である塩基性酸化物として、例えば、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物(酸化ニッケルを除く)、その他のベース金属酸化物などが挙げられる。
アルカリ土類金属酸化物として、例えば、酸化ベリリウム(BeO:等電点10.2)、酸化マグネシウム(MgO:等電点12.1~12.7)などが挙げられる。
遷移金属酸化物として、例えば、酸化鉄(FeO3:等電点8)、酸化亜鉛(ZnO:等電点8.7~9.7)、酸化プルトニウム(PuO2:等電点9)、酸化トリウム(ThO2:等電点9.0~9.3)、酸化イットリウム(Y2O3:等電点9.3)、酸化ランタン(La2O3:等電点10)、酸化銅(CuO:等電点9.5)などが挙げられる。
その他のベース金属酸化物は、ベース金属(卑金属)のうち、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属に含まれないベース金属の酸化物であって、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3:等電点7~9)、酸化水銀(HgO:等電点7.3)、酸化カドミウム(CdO:等電点10.4)、酸化鉛(PbO:等電点10.7~11.6)などが挙げられる。
等電点の範囲が上記範囲内である金属水酸化物として、例えば、アルカリ土類金属水酸化物、遷移金属水酸化物、その他のベース金属水酸化物、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイトなどが挙げられる。
アルカリ土類金属水酸化物は、脱水により上記したアルカリ土類金属酸化物を生じる。アルカリ土類金属水酸化物として、例えば、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2:等電点12.4)などが挙げられる。
遷移金属水酸化物は、脱水により上記した遷移金属酸化物を生じる。遷移金属水酸化物として、例えば、水酸化銅(Cu(OH)2:等電点7.7)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2:等電点11.1)、水酸化コバルト(Co(OH)2:等電点11.4)、水酸化鉄(Fe(OH)2:等電点12)、水酸化マンガン(Mn(OH)2:等電点12)などが挙げられる。
その他のベース金属水酸化物は、脱水により上記したその他のベース金属酸化物を生じる。その他のベース金属水酸化物として、例えば、水酸化カドミウム(Cd(OH)2:等電点10.5)などが挙げられる。
ハイドロタルサイトは、層状複水酸化物であって、下記一般式(1)により示される。
一般式(1)
M1
8-xM2
x(OH)16CO2・nH2O (1)
(式(1)中、M1は、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Li2+、Ni2+、Co2+、Cu2+からなる群から選択される1種の金属元素を示す。M2は、Al3+、Fe3+、Mn3+からなる群から選択される1種の金属元素を示す。xは、1以上7以下の整数を示す。nは、0以上の整数を示す。)
ハイドロキシアパタイトは、化学式Ca10(PO4)6(OH)2により示されるリン酸カルシウムであって、その等電点は、10~11である。
このようなOH吸着化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
OH吸着化合物のなかでは、燃料電池の出力の観点から好ましくは、遷移金属酸化物、さらに好ましくは、酸化ランタンが挙げられ、液体燃料におけるアルカリ金属水酸化物の濃度を低減したときの燃料電池の出力維持の観点から好ましくは、アルカリ土類金属水酸化物、さらに好ましくは、水酸化マグネシウムが挙げられる。
つまり、OH吸着化合物は、好ましくは、遷移金属酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を含有し、さらに好ましくは、酸化ランタンおよび/または水酸化マグネシウムを含有する。
OH吸着化合物の含有割合は、ニッケル成分が含有するNi原子100molに対して、例えば、25mol以上、好ましくは、50mol以上、例えば、500mol以下、好ましくは、300mol以下である。なお、OH吸着化合物の含有割合は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
OH吸着化合物の含有割合が上記下限以上であれば、OH吸着化合物が吸着した水酸化物をニッケル成分に確実に供給することができ、燃料電池の出力の向上を確実に図ることができる。OH吸着化合物の含有割合が上記上限以下であれば、触媒の電子伝導性を確保できる。
また、OH吸着化合物の含有割合は、ニッケル成分とOH吸着化合物との総和100質量%としたときに、例えば、6質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、75質量%以下である。
また、上記したニッケル成分と、上記した水酸基吸着化合物とは、好ましくは、カーボンに担持される。つまり、アノード触媒は、好ましくは、ニッケル成分と、水酸基吸着化合物と、それらを担持するカーボンとを含み、さらに好ましくは、それらからなる。
ニッケル成分および水酸基吸着化合物の両方がカーボンに担持されると、ニッケル成分および水酸基吸着化合物が単に混合された場合と比較して、ニッケル成分および水酸基吸着化合物を互いに近接するように配置でき、OH吸着化合物が吸着した水酸化物をニッケル成分に効率よく供給することができるとともに、ニッケル成分および水酸基吸着化合物のそれぞれの比表面積の向上を図ることができる。その結果、燃料電池の出力の向上をより一層確実に図ることができる。
カーボンは、ニッケル成分およびOH吸着化合物を担持する担体である。
カーボンとして、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、好ましくは、ケッチェンブラックが挙げられる。カーボンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
カーボンの含有割合は、ニッケル成分とOH吸着化合物との総和100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、例えば、900質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
また、アノード触媒において、ニッケル成分の含有割合は、例えば、10質量%以上40質量%以下であり、OH吸着化合物の含有割合は、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、カーボンの含有割合は、例えば、10質量%以上85質量%以下である。
3.アノード触媒の製造方法
次に、上記したアノード触媒の製造方法について説明する。なお、以下では、ニッケル成分およびOH吸着化合物がカーボンに担持されるアノード触媒の製造方法(第1の方法)について詳述する。
アノード触媒を製造するには、例えば、ニッケル成分(ニッケル金属単体および/または酸化ニッケル)がカーボンに担持されるニッケル担持カーボンを調製した後、ニッケル担持カーボンにOH吸着化合物を担持させて、アノード触媒を調製する。
ニッケル担持カーボンを調製するには、例えば、まず、カーボンを溶媒に分散して、カーボン分散液を調製する。
溶媒として、例えば、水、アルコール類(例えば、2-プロパノールなど)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)など)、ケトン類、エステル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。溶媒のなかでは、好ましくは、水が挙げられる。
カーボン分散液におけるカーボンの含有割合は、例えば、0.8質量%以上、好ましくは、1.3質量%以上、例えば、3.3質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下である。
次いで、カーボン分散液にニッケル塩を添加する。
ニッケル塩として、例えば、ニッケルの無機金属塩、ニッケルの有機金属塩などが挙げられる。
ニッケルの無機金属塩として、例えば、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、塩化物、アンモニウム塩などが挙げられる。
ニッケルの有機金属塩として、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩など)、下記一般式(2)で示されるβ-ジケトン化合物またはβ-ケトエステル化合物、および/または、下記一般式(3)で示されるβ-ジカルボン酸エステル化合物から形成される金属キレート錯体などが挙げられる。
一般式(2)
R1COCHR3COR2 (2)
(一般式(2)中、R1は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基またはアリール基を示す。R2は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、アリール基または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。R3は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示す。)
一般式(3)
R5CH(COR4)2 (3)
(一般式(3)中、R4は、炭素数1~6のアルキル基を示す。R5は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示す。)
このようなニッケル塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
ニッケル塩のなかでは、好ましくは、ニッケルの無機金属塩が挙げられ、さらに好ましくは、ニッケルの無機酸塩が挙げられ、とりわけ好ましくは、ニッケルの硝酸塩が挙げられる。
ニッケル塩は、直接カーボン分散液に添加することができるが、好ましくは、ニッケル塩が上記した溶媒に溶解されたニッケル塩溶液を、カーボン分散液に添加する。ニッケル塩溶液におけるニッケル塩の濃度は、例えば、0.05質量%以上10質量%以下である。
これによって、ニッケル塩がカーボン分散液に溶解または分散されて、ニッケル塩を含むカーボン分散液が調製される。
ニッケル塩を含むカーボン分散液において、Ni原子の含有割合は、例えば、0.05質量%以上、好ましくは、0.23質量%以上、例えば、39.2質量%以下、好ましくは、19.4質量%以下である。
次いで、ニッケル塩を含むカーボン分散液にアルカリ溶液を添加する。
アルカリ溶液は、アルカリ成分が上記した溶媒に溶解されている。アルカリ成分として、例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。溶媒として、好ましくは、水が挙げられる。アルカリ成分の添加割合は、ニッケル塩100質量部に対して、例えば、6質量部以上、好ましくは、32質量部以上、例えば、1200質量部以下、好ましくは、650質量部以下である。
これによって、ニッケル塩から生成する水酸化ニッケルがカーボンに担持されて、水酸化ニッケル担持カーボンが調製される。
次いで、水酸化ニッケル担持カーボンを溶媒から分離する。例えば、水酸化ニッケル担持カーボンをろ過により溶媒から分離した後、必要に応じて真空乾燥させて水酸化ニッケル担持カーボンの粉末を調製する。
乾燥温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、50℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。乾燥時間は、例えば、5時間以上、好ましくは、8時間以上、例えば、24時間以下、好ましくは、15時間以下である。
次いで、水酸化ニッケル担持カーボンの粉末を、例えば、アルゴン(Ar)ガスなどの不活性雰囲気下において焼成する。
焼成温度は、例えば、400℃を超過し、好ましくは、500℃以上、さらに好ましくは、550℃以上、例えば、800℃未満、好ましくは、700℃以下、さらに好ましくは、650℃以下である。
なお、ニッケル成分におけるニッケル金属単体および酸化ニッケルの含有割合は、上記した焼成温度に依存する。焼成温度が比較的高いほど、ニッケル酸化物の含有割合が小さく、ニッケル金属単体の含有割合が大きくなり、焼成温度が比較的低いほど、ニッケル金属単体の含有割合は小さく、ニッケル酸化物の含有割合は大きくなる。
また、焼成時間は、例えば、0.2時間以上、好ましくは、0.5時間以上、例えば、5時間以下、好ましくは、3時間以下である。
これによって、水酸化ニッケルからニッケル金属単体および/またはニッケル酸化物が生成して、ニッケル担持カーボンが調製される。
次いで、ニッケル担持カーボンを、上記した溶媒に分散して、ニッケル担持カーボン分散液を調製する。溶媒として、好ましくは、水が挙げられる。
ニッケル担持カーボン分散液におけるニッケル担持カーボンの含有割合は、例えば、0.8質量%以上、好ましくは、1.3質量%以上、例えば、3.3質量%以下、好ましくは、2.5質量%以下である。
次いで、ニッケル担持カーボン分散液に上記したOH吸着化合物の前駆体を混合する。
OH吸着化合物の前駆体として、例えば、上記したOH吸着化合物に含まれる金属元素の塩などが挙げられる。OH吸着化合物の前駆体が含む金属元素として、具体的には、アルカリ土類金属(例えば、ベリリウム、マグネシウムなど)、遷移金属(例えば、クロム、水銀、鉄、亜鉛、イットリウム、ランタン、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、プルトニウム、トリウムなど)、アルミニウム、カドミウム、鉛などが挙げられる。
そのような金属の塩として、例えば、上記金属元素の無機金属塩、上記金属元素の有機金属塩などが挙げられる。
上記金属元素の無機金属塩として、例えば、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、塩化物、アンモニウム塩などが挙げられる。上記金属元素の有機金属塩として、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩など)、上記一般式(2)で示されるβ-ジケトン化合物またはβ-ケトエステル化合物、および/または、上記一般式(3)で示されるβ-ジカルボン酸エステル化合物から形成される金属キレート錯体などが挙げられる。
このようなOH吸着化合物の前駆体は、単独使用または2種以上併用することができる。
OH吸着化合物の前駆体のなかでは、好ましくは、上記金属元素の無機金属塩が挙げられ、さらに好ましくは、アルカリ土類金属の無機酸塩、遷移金属の無機酸塩が挙げられ、とりわけ好ましくは、アルカリ土類金属の硝酸塩、遷移金属の硝酸塩が挙げられ、特に好ましくは、硝酸マグネシウム、硝酸ランタンが挙げられる。
OH吸着化合物の前駆体は、ニッケル担持カーボン分散液に直接添加してもよく、OH吸着化合物の前駆体を上記した溶媒に溶解した溶液を、ニッケル担持カーボン分散液に添加してもよい。
これによって、OH吸着化合物の前駆体がニッケル担持カーボン分散液に溶解または分散されて、OH吸着化合物の前駆体を含むニッケル担持カーボン分散液が調製される。
OH吸着化合物の前駆体を含むニッケル担持カーボン分散液において、OH吸着化合物の前駆体の含有割合は、そのニッケル担持カーボン分散液が含有するNi原子の総和100molに対して、例えば、50mol以上、好ましくは、80mol以上、例えば、200mol以下、好ましくは、120mol以下である。
次いで、OH吸着化合物の前駆体を含むニッケル担持カーボン分散液に上記したアルカリ溶液を添加する。
アルカリ成分の添加割合は、OH吸着化合物の前駆体100質量部に対して、例えば、6質量部以上、好ましくは、32質量部以上、例えば、1200質量部以下、好ましくは、650質量部以下である。
これによって、上記した金属水酸化物がニッケル担持カーボンに担持されて、ニッケル成分(ニッケル金属単体および/または酸化ニッケル)と、上記した金属水酸化物とがカーボンに担持されるニッケル・金属水酸化物担持カーボンが調製される。
次いで、ニッケル・金属水酸化物担持カーボンを溶媒から分離する。例えば、ニッケル・金属水酸化物担持カーボンをろ過により溶媒から分離した後、必要に応じて真空乾燥させてニッケル・金属水酸化物担持カーボンの粉末を調製する。
乾燥温度の範囲は、例えば、上記した乾燥温度の範囲と同じである。乾燥時間の範囲は、例えば、上記した乾燥時間の範囲と同じである。
OH吸着化合物が金属水酸化物である場合、以上によって、アノード触媒(ニッケル・金属水酸化物担持カーボン)が調製される。
また、OH吸着化合物が塩基性酸化物である場合、ニッケル・金属水酸化物担持カーボンを、例えば、アルゴン(Ar)ガスなどの不活性雰囲気下において焼成する。
焼成温度の範囲は、例えば、上記した焼成温度の範囲と同じである。焼成時間の範囲は、例えば、上記した焼成時間の範囲と同じである。
以上によって、金属水酸化物から塩基性酸化物が生成して、アノード触媒(ニッケル・塩基性酸化物担持カーボン)が調製される。
また、上記では、ニッケル成分およびOH吸着化合物がカーボンに担持されるアノード触媒の製造方法について説明したが、アノード触媒はカーボンを含有しなくてもよい。
この場合、例えば、ニッケル成分を、上記した溶媒に分散して、ニッケル成分分散液を調製した後、上記したOH吸着化合物の前駆体および上記したアルカリ溶液を順次添加し、その後、ニッケル成分および金属水酸化物の混合物を、溶媒から分離する。これによって、ニッケル成分および金属水酸化物を含有するアノード触媒を調製することができる(第2の方法)。また、ニッケル成分および金属水酸化物の混合物を、必要に応じて、上記と同様に焼成することにより、ニッケル成分および塩基性酸化物を含有するアノード触媒を調製することができる(第2の方法)。
また、上記のように調製したニッケル成分とOH吸着化合物(金属水酸化物および/または塩基性酸化物)の混合物をカーボンに担持させて、アノード触媒とすることもできる(第3の方法)。また、ニッケル担持カーボンとOH吸着化合物担持カーボンとを別々に調製し、ニッケル担持カーボンとOH吸着化合物担持カーボンとを混合して、アノード触媒を調製することもできる(第4の方法)。
一方、ニッケル成分およびOH吸着化合物を互いに近接するように配置する観点から、カーボンにニッケル成分およびOH吸着化合物を順次担持させる上記第1の方法が好ましい。
また、このようなアノード触媒からアノード電極2を形成するには、まず、アノード触媒と、必要に応じて公知のアイオノマーとを、有機溶媒(例えば、公知のアルコール類など)中に分散して、分散液(インク)を調製する。
次いで、その分散液(インク)を、公知の塗工方法により、電解質層4の表面に塗工する。その後、電解質層4の表面に塗工されたインクを、乾燥し、必要によりプレスする。
これによって、アノード触媒が電解質層4の表面に担持される。その結果、電解質層4の表面に定着したアノード電極2が調製される。
アノード触媒(金属換算)の目付量は、電解質層4に対して、例えば、0.01mg/cm2以上、好ましくは、0.1mg/cm2以上、例えば、5mg/cm2以下、好ましくは、2mg/cm2以下である。
4.作用効果
燃料電池1では、アノード電極2に含まれるアノード触媒が、ニッケル金属単体および/またはニッケル酸化物と、等電点が7以上のOH吸着化合物とを含有する。
そのため、上記した(1)の電気化学反応において、OH吸着化合物が、ニッケル金属単体および/またはニッケル酸化物の近傍において、水酸化物イオン(OH-)を吸着する。その結果、液体燃料におけるアルカリ金属水酸化物の濃度を低減しても、ニッケル金属単体および/またはニッケル酸化物に、水酸化物イオンが円滑に供給される。これによって、燃料電池1の出力を十分に確保することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
本発明の燃料電池の用途として、例えば、自動車、船舶、航空機などにおける駆動用モータの電源や、携帯電話機などの通信端末における電源などが挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
実施例1
カーボン粉末(商品名:カーボンECP600JD(ケッチェンブラックECP600JDの粉末)、ライオン社製)0.8gを、純水0.06Lに加え、カーボン粉末を分散させて、カーボン分散液を得た。
このカーボン分散液に、硝酸ニッケル水溶液(商品名:硝酸ニッケル六水和物、ニッケル含有量:ニッケル原子に換算して0.2g、溶媒:純水、0.01L)を混合した。次いで、硝酸ニッケルを含むカーボン分散液に、1.6質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液16gを滴下して、水酸化ニッケルをカーボンに担持させて、水酸化ニッケル担持カーボンを調製した。
次いで、水酸化ニッケル担持カーボンが分散する分散液をろ過して、得られたろ物を水洗した後、そのろ物を100℃で10時間真空乾燥させて、水酸化ニッケル担持カーボンの粉末を得た。
その後、その粉末を、アルゴン(Ar)ガス中において600℃で2時間熱処理(焼成)した。これによって、ニッケル金属単体および酸化ニッケルがカーボンに担持されるニッケル担持カーボンを得た。
次いで、ニッケル担持カーボン0.92gを、純水0.06Lに添加して、純水中に分散させて、ニッケル担持カーボン分散液を得た。このニッケル担持カーボン分散液に、硝酸マグネシウム(商品名:硝酸マグネシウム6水和物、マグネシウム含有量:マグネシウム原子に換算して0.08g)を混合した。
次いで、硝酸マグネシウムを含むニッケル担持カーボン分散液に、1.6質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液18gを滴下して、水酸化マグネシウムをカーボンに担持させた。
これによって、ニッケル金属単体および酸化ニッケルと、水酸化マグネシウム(金属水酸化物)とがカーボンに担持されるニッケル・水酸化マグネシウム担持カーボンを得た。
次いで、ニッケル・水酸化マグネシウム担持カーボンが分散する分散液をろ過して、得られたろ物を水洗した後、そのろ物を100℃で10時間真空乾燥させた。
以上によって、ニッケル金属単体および酸化ニッケルと、水酸化マグネシウム(金属水酸化物)とがカーボンに担持されるアノード触媒を調製した。表1では、実施例1におけるアノード触媒を、Ni・Mg(OH)2/Cとする。
なお、得られたアノード触媒を、JIS K 0131に準拠して、X線回折装置(商品名:RINT2500、Rigaku社製)により測定した。これにより、アノード触媒において、ニッケル金属単体の含有割合は8.5質量%、酸化ニッケルの含有割合は8.5質量%、水酸化マグネシウムの含有割合は15質量%、カーボンの含有割合は、68質量%であることが確認された。
また、ニッケル金属単体および酸化ニッケルが含有するNi原子の総和と、水酸化マグネシウムが含有するMg原子とのモル比は、1:1であった。
実施例2
実施例1と同様にして、ニッケル担持カーボンを得た。
次いで、ニッケル担持カーボン0.68gを、純水0.06Lに添加して、純水中に分散させて、ニッケル担持カーボン分散液を得た。このニッケル担持カーボン分散液に、硝酸ランタン(商品名:硝酸ランタン6水和物、ランタン含有量:ランタン金属単体に換算して0.32g)を混合した。
次いで、硝酸ランタンを含むニッケル担持カーボン分散液に、1.6質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液16gを滴下して、水酸化ランタンをカーボンに担持させた。
これによって、ニッケル金属単体および酸化ニッケルと、水酸化ランタンとがカーボンに担持されるニッケル・水酸化ランタン担持カーボンを得た。
次いで、ニッケル・水酸化ランタン担持カーボンが分散する分散液をろ過して、得られたろ物を水洗した後、そのろ物を100℃で10時間真空乾燥させて、ニッケル・水酸化ランタン担持カーボンの粉末を得た。その後、その粉末を、アルゴン(Ar)ガス中において400℃で2時間熱処理(焼成)した。
以上によって、ニッケル金属単体および酸化ニッケルと、酸化ランタン(塩基性酸化物)とがカーボンに担持されるアノード触媒を調製した。表1では、実施例2におけるアノード触媒を、Ni・La2O3/Cとする。
なお、実施例1と同様にして、得られたアノード触媒をX線回折装置により測定した。これにより、アノード触媒において、ニッケル金属単体の含有割合は5.5質量%、酸化ニッケルの含有割合は5.5質量%、酸化ランタン(La2O3)の含有割合は27質量%、カーボンの含有割合は、62質量%であることが確認された。
また、ニッケル金属単体および酸化ニッケルの総和が含有するNi原子と、酸化ランタンが含有するLa原子とのモル比は、1:1であった。
比較例1
実施例1と同様にして、ニッケル担持カーボンを得た。そして、そのニッケル担持カーボンをアノード触媒とした。表1では、比較例1におけるアノード触媒を、Ni/Cとする。
なお、実施例1と同様にして、アノード触媒をX線回折装置により測定した。これにより、アノード触媒において、ニッケル金属単体の含有割合は18質量%、酸化ニッケルの含有割合は18質量%、カーボンの含有割合は、64質量%であることが確認された。
(評価)
<<ヒドラジン酸化活性の評価>>
回転ディスク電極(Pine社、Rotating Disk Electrode:RDE)を用いて、ヒドラジン酸化の活性を測定した。
具体的には、各実施例および比較例におけるアノード触媒5mgと、アイオノマー溶液(炭化水素系アイオノマー(電解質樹脂)、商品名:AS4、固形分濃度:2質量%、溶媒:1-プロパノール、トクヤマ社製)0.15mLとを、有機溶媒0.85mL中に分散して調製したインクを、グラッシーカーボン上に滴下し、測定電極(担持量0.51μg/mm2)とした。
次いで、上記測定電極と、参照電極(水銀-水銀酸化物電極(Hg/HgO))と、カウンター電極(白金線)とを備える三電極型セルを作製した。また、1質量%水加ヒドラジン水溶液に水酸化カリウム(KOH)を表1に示す含有割合となるように添加して、液体燃料を調製し、その液体燃料を三電極型セルに加えた。
測定温度は、30℃で、回転数は、2400rpmとした。走査速度は、0.005V/sとし、高電位から低電位に向けて走査して、ヒドラジン酸化活性(質量活性(A/g))と電位との相関を測定した。
電位-0.7Vにおけるニッケル単位質量あたりの触媒活性(A/g)を、表1に示す。また、電位-0.7Vにおけるニッケル単位質量あたりの触媒活性(A/g)に関して、水酸化カリウム濃度が1mol/Lである液体燃料を使用したときの触媒活性を100としたときの、水酸化カリウム濃度が0.1mol/Lである液体燃料を使用したときの触媒活性の比率(活性維持率)を表1および図2に示す。
(考察)
表1および図1に示すように、各実施例のアノード触媒は、比較例1のアノード触媒と比較して、液体燃料における水酸化カリウム濃度を1mol/Lから0.1mol/Lに変更しても、触媒活性を十分に確保できることが確認された。
とりわけ、実施例1のアノード触媒は、液体燃料における水酸化カリウム濃度が0.1mol/Lであると、液体燃料における水酸化カリウム濃度が1mol/Lである場合よりも触媒活性の向上を図ることができ、比較例1のアノード触媒よりも優れた触媒活性を示すことが確認された。
また、実施例2のアノード触媒は、液体燃料における水酸化カリウム濃度が0.1mol/Lであると、液体燃料における水酸化カリウム濃度が1mol/Lである場合と比較してやや触媒活性が低下するが、比較例1のアノード触媒よりも優れた触媒活性を示すことが確認された。
つまり、各実施例のアノード触媒は、液体燃料における水酸化カリウム濃度が0.1mol/Lであると、比較例1のアノード触媒よりも優れた触媒活性を示すことが確認された。