以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。なお、本発明は、その適用分野がプリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、複写機能及びFAX機能を有する複合機などにも、本発明の適用が可能である。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット100、レジストローラ対101なども備えている。
四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するためのトナー像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
第一像担持体たる感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニット80から発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体たる現像ロール9Kを収容する現像部12Kと、K現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端部には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持しているK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサーが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサーとしては、透磁率センサーからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサーは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタは、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段を備えている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給され、K現像剤のKトナー濃度が所定の範囲内に維持される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる地肌ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び地肌ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用のトナー像形成ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用のトナー像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cトナー像が形成される。トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。また、ベルトクリーニング装置37、濃度センサー40なども有している。
第二像担持体たる中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の下方には、二次転写ニップ裏打ちローラ36、シート搬送ベルト(一般的には二次転写ベルトや転写部材などとも呼称される)41などを具備するシート搬送ユニット38が配設されている。無端状のシート搬送ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36などの複数のローラによって張架された状態で、二次転写ニップ裏打ちローラ36の回転駆動によって図中時計回り方向に回転せしめられる。そして、二次転写ニップ裏打ちローラ36により、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、二次転写裏面ローラ33に対する掛け回し領域に当接している。つまり、転写ユニット30の二次転写裏面ローラ33と、シート搬送ユニット38の二次転写ニップ裏打ちローラ36とは、互いの間に中間転写ベルト31及びシート搬送ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。シート搬送ベルト41のループ内に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設された二次転写裏面ローラ33には、二次転写電源39によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ33と、二次転写ニップ裏打ちローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側から二次転写ニップ裏打ちローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。なお、ニップ形成部材として、シート搬送ベルト41の代わりに、二次転写ローラを用い、これを中間転写ベルト31に直接当接させてもよい。
転写ユニット31の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給送カセット100が配設されている。この給送カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給送カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、シート搬送ベルト41を掛け回している分離ローラ42の曲率によってシート搬送ベルト41から曲率分離する。
なお、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41を中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、ニップ形成部材たるニップ形成ローラを中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成である。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
濃度センサー40は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、所定の間隙を介して対向している。この状態で、中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を測定する。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、Y,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、4つのトナー像形成ユニット1(Y,M,C,K)のうち、ブラック用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用の感光体2K上に形成する。なお、本発明は、カラー画像を形成する画像形成装置に限らず、モノクロ画像だけを形成する画像形成装置にも適用が可能である。
図3は、二次転写電源の電気回路の要部を、二次転写裏面ローラ33や二次転写ニップ裏打ちローラ36などとともに示すブロック図である。二次転写電源39は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140、電源制御部200などを有している。直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、二次転写ニップ内に交番電界を形成するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
電源制御部200は、直流電源110及び交流電源140を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置からなる。直流出力制御部111には、電源制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティー比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、電源制御部200においてDC_PWM信号のデューティーを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源39の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示すSC信号を電源制御部200に出力する。これにより、電源制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、電源制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティー比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に出力(印加)する。二次転写裏面ローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、二次転写ニップ裏打ちローラ36を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、電源制御部200においてAC_PWM信号のデューティーを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
なお、二次転写電源39は、出力電流値を所定の目標電流値と一致させるように出力電圧値を調整する定電流制御方式で直流電圧を出力する。また、ピークツウピーク値Vppを所定の目標値と一致させるように振幅を調整する定電圧制御方式で交流電圧を出力する。
特許文献1に記載のように、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いて二次転写ニップに交番電界を形成すれば、表面凹凸に富んだ記録シートの表面の凹部にトナーを良好に二次転写し得ることが既に知られている。その原理は、次のようなものであることも知られている。即ち、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いた場合、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト上のトナー像を構成するトナーのうち、ごく小数のトナー粒子だけしか、ベルト表面からシート表面凹部内に転移させることができない。重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いても、二次転写ニップ内にトナー像が進入してから、二次転写バイアスの交流成分における始めの一周期が経過するまでの間は、同様にして、ごく少量のトナー粒子だけしかシート表面凹部内に転移させることができない。ところが、次の一周期が経過すると、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するトナー粒子の量が少し増加する。具体的には、まず、次の一周期の前半において、シート表面凹部内のトナー粒子がベルト表面に戻る際に、それまでベルト表面に付着したままになっていたトナー粒子にぶつかってそのトナー粒子と他のトナー粒子やベルト表面との付着力を弱める。そして、後半において、前述のようにして付着力を弱めたトナー粒子が、ベルト表面に戻ったトナー粒子とともに、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するのである。更に次の一周期でも、同様の現象によってシート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が更に増加する。二次転写ニップ内において、トナー粒子がベルト表面とシート表面凹部内とを何度も往復移動する過程で、シート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が徐々に増加していく。そして、最終的にトナー像が二次転写ニップを通過する頃には、シート表面凹部内に十分量のトナー粒子が転移しているのである。
図4は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第一例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は正弦波になっている。オフセット電圧Voffは、重畳電圧からなる二次転写バイアスの直流成分(直流電圧)の値である。同図におけるオフセット電圧Voffは、その極性がマイナスになっている。二次転写バイアスの波形が図示のような正弦波である場合には、オフセット電圧Voffと、二次転写バイアスの一周期(T)あたりにおける平均電位Vaveとが同じ値になる。よって、同図においては、平均電位Vaveもマイナス極性になっている。
実施形態のプリンタのように、二次転写裏面ローラ(図1の33)の芯金に二次転写バイアスを印加する構成では、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性と同じになったときに、二次転写ニップ内のトナーが転写方向に静電移動する。具体的には、中間転写ベルト31の表面側からニップ内の記録シート表面側に静電移動する。また、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性とは逆極性になったときに、二次転写ニップ内のトナーが転写方向とは逆方向に静電移動する。具体的には、トナーが記録シート表面側から中間転写ベルト31の表面側に向けて静電移動する。平均電位Vaveをトナーの正規帯電極性と同極であるマイナス極性にすることで、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側とシート表面側との間で往復移動させながら、相対的にはベルト表面側からシート表面側に向けて移動させる。これにより、中間転写ベルト31の表面上のトナー像を、記録シートPの表面上に二次転写することが可能になる。
同図において、転写ピーク値Vtは、二次転写バイアスの一周期(周期T)内で発生する二つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に向けてより強く静電移動させる方のピーク値である。また、逆ピーク値Vrは、転写ピーク値Vtではない方のピーク値である。同図に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrが転写ピーク値Vtとは逆極性(プラス極性)になっている。
二次転写バイアスの波形は、同図に示されるような正弦波に限られない。三角波や矩形波の二次転写バイアスを採用してもよい。図5は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第二例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は、矩形波である。図4に示される二次転写バイアスの正弦波や、図5に示される二次転写バイアスの矩形波は、何れも、後述する逆ピーク側デューティーが50[%]である。このような特性を有する波形からなる二次転写バイアスでは、何れも、一周期(周期T)あたりにおける平均電位Vaveがオフセット電圧Voffと同じ値になる。つまり、直流成分の値が平均電位Vaveと同じになる。
次に、本発明者らが新たに行った実験について説明する。
従来、中間転写ベルトとしては、ポリイミドベルトなどの硬質素材のベルト基体だけからなるものを用いることが一般的であった。そして、特許文献1に記載の画像形成装置においては、一般ユーザー向けの画像形成速度で画像を形成するために、中間転写ベルトを280[mm/s]の線速で駆動している。本発明者らは、このような特許文献1に記載の画像形成装置と同様の条件でテスト画像をプリントする第一実験を行った。
まず、実施形態に係るプリンタと同様の基本的な構成を有するプリンタ試験機を用意した。このプリンタ試験機には、特許文献1に記載の画像形成装置と同様に、中間転写ベルトとして、ポリイミド樹脂からなる厚み60[μm]のベルト基体だけを具備する単層ベルトからなるものを搭載した。この中間転写ベルトのマイクロゴム硬度は100であり、マルテンス硬度は240であった。
マイクロゴム硬度については、高分子計器株式会社製のマイクロゴム硬度計(MD−1)を用い、所定圧での押針の押し付けによって中間転写ベルトを変形させながら、押針の押し込み深さを測定し、その結果に基づいて硬度を求めた。押針としては、直径=0.16[mm]のタイプAのものを用いた。測定環境については、温度=23[℃]、湿度=50[%]に設定した。また、マルテンス硬度については、フィッシャーインスツルメンツ社製のFisherScopeHM2000を用いて、荷重=50[mN]、押し込み時間=10[秒]、クリープ時間=10[秒]、温度=23[℃]、湿度=50[%]の条件下で測定した。
実験室を温度23℃湿度50%の環境に設定した。そして、記録シートとして表面凹凸に富んだ特殊東海製紙株式会社製のレザック66(連量215kg)をプリンタ試験機にセットし、そのレザック66に対して青色のテストベタ画像を280[mm/s]のプロセス線速(中間転写ベルト等の線速)でプリントした。すると、テストベタ画像中に多数の白点を発生させてしまった。
この白点を発生させる原因について鋭意研究を行ったところ、二次転写ニップ内で生ずる放電に起因するものであることが解った。具体的には、二次転写ニップ内で、トナーを中間転写ベルト表面とレザック66の表面凹部との間で往復移動させつつ、最終的には、レザック66の表面凹部に転移させるためには、トナーに対して転写方向の電界を必要量だけ作用させる必要がある。そのために、二次転写バイアスの交流電圧のピークツウピーク値Vppをかなり大きくすると、中間転写ベルト表面とレザック66との間で放電を多発させ、放電に起因する多数の白点をテストベタ画像中に発生させていたのである。
本発明者らは、他の実験により、前述の白点の発生を抑えるためには、二次転写バイアスとして、逆ピーク側デューティーを50[%]未満にした低デューティーのものを用いることが有効であることを見出した。
図6は、図4に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティーを説明するためのグラフである。同図において、中心電位Vcは、二次転写バイアスの交流成分(交流電圧)のピークツウピーク値Vppにおける中心の電位である。また、逆ピーク側時間trは、交流成分の一周期(周期T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位Vcから逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始めた瞬間から、逆ピーク値Vrを経て中心電位Vcに戻るまでの時間である。また、転写ピーク側時間tfは、交流成分の一周期(周期T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位Vcから転写ピーク値Vtに向けて立ち上がり始めた瞬間から、転写ピーク値Vtを経て中心電位Vcに戻るまでの時間である。また、逆ピーク側デューティーは、周期T内で逆ピーク側時間trが占める割合であり、図示の波形の場合には50[%]である。つまり、図示の波形における逆ピーク側デューティーは50[%]である。
図7は、図5に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティーを説明するためのグラフである。図示の矩形波においても、周期T内で逆ピーク側時間trが占める割合としての逆ピーク側デューティーは50[%]である。
逆ピーク側デューティー=50[%]の二次転写バイアスを用いて、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側から記録シート表面側に静電移動させるためには、転写ピーク値Vtの絶対値を、逆ピーク値Vrの絶対値よりも大きくする必要がある。そして、転写ピーク値Vtの絶対値が大きくなり過ぎると、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト31表面と、レザック66との間で放電を発生させてしまう。この放電は、トナー粒子を逆帯電させて、そのトナー粒子の二次転写を著しく阻害することから、画像中に多くの白点を発生させてしまう。よって、転写ピーク値Vtの絶対値をある程度の値に留める必要がある。
この一方で、逆ピーク値Vrの絶対値を小さくし過ぎると、レザック66の表面凹部に十分量のトナーを転写することができなくなる。具体的には、逆ピーク値Vrの絶対値を小さくし過ぎると、二次転写ニップ内でベルト表面から凹凸シートの表面凹部内に一旦転移させたトナー粒子を、ベルト表面に戻すことができなくなる。すると、ベルト表面上で他のトナー粒子やベルト表面に付着しているトナー粒子に対し、表面凹部内から戻したトナー粒子をぶつけてその付着力を弱めることができなくなる。単にトナー粒子を単純に振動させるだけで、その振動に伴って凹凸シートの表面凹部内に転移するトナー粒子の数を増加させることができないので、表面凹部内へのトナー転移量を不足させてしまうのである。
逆ピーク値Vrを大きくする方法の一つとして、交流成分のピークツウピーク値Vppを大きくすることが挙げられる。しかしながら、逆ピーク値Vrの不足を解消するためにピークツウピーク値Vppを大きくすると、同時に転写ピーク値Vtを大きくすることから、放電による白点を引き起こし易くなる。
逆ピーク値Vrを大きくする他の方法として、オフセット電圧Voffを小さくすることが挙げられる。しかしながら、オフセット電圧Voffを小さくすると、それに伴って平均電位Vaveも小さくしてしまうことから、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に良好に静電移動させることができずに、二次転写不良を引き起こすおそれがある。
凹凸シートの表面凹部に十分量のトナーを転移させるためには、逆ピーク側デューティーを50[%]未満にすればよいことが解った。逆ピーク側デューティーを50[%]以上にすると、放電に起因する白点や、二次転写不良を発生させ易くなる。具体的には、逆ピーク側デューティーを50[%]以上にすると、その分だけ、平均電位Vaveを逆ピーク側にシフトさせてその絶対値を小さくすることから、二次転写不良を引き起こし易くなる。そして、その二次転写不良の発生を回避するために、ピークツウピーク値Vppを大きくして平均電位Vaveの増大を図ると、それに伴って転写ピーク値Vtを大きくすることから、放電に起因する白点を発生させ易くなる。よって、逆ピーク側デューティーを50[%]未満の値に設定するとよい。
図8は、逆ピーク側デューティーを50[%]よりも小さな35[%]にした二次転写バイアスの波形の一例を示すグラフである。図8に示される二次転写バイアスの逆ピーク値Vrは、図5に示される二次転写バイアスの逆ピーうちVrと同じである。また、図8に示される二次転写バイアスの転写ピーク値Vtは、図5に示される二次転写バイアスの転写ピーク値Vtと同じである。図8に示される二次転写バイアスと、図5に示される二次転写バイアスとで異なる点は、逆ピーク側時間tr及び転写ピーク側時間tfだけである。図5に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク側時間trと転写ピーク側時間tfとが同じであるのに対し、図8に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク側時間trが転写ピーク側時間tfよりも短くなっている。より詳しくは、図5に示される二次転写バイアスの逆ピーク時間trが周期Tの50[%]の長さであるのに対し、図8に示される二次転写バイアスの逆ピーク時間trは周期Tの35[%]である。つまり、図8に示される二次転写バイアスの逆ピーク側デューティーは35[%]である。
図5に示される逆ピーク側デューティー=50[%]の二次転写バイアスでは、上述したように、オフセット電圧Voffと平均電位Vaveとが同じ値になっている。これに対し、図8に示される逆ピーク側デューティー35[%]の二次転写バイアスでは、平均電位Vaveがオフセット電圧Voffよりも大きくなっている。ピークツウピーク値Vppは、図5に示される二次転写バイアスと図8に示される二次転写バイアスとで同じである。即ち、逆ピーク側デューティーを50[%]未満にすることで、50[%]以上にする場合に比べて、ピークツウピーク値Vpp、転写ピーク値Vt、及び逆ピーク値Vrを変化させることなく、平均電位Vaveを大きくすることが可能になる。よって、逆ピーク側デューティーを50[%]以上にする場合に比べて、二次転写不良や白点の発生を抑えることができるのである。
上述したように、特許文献1に記載の画像形成装置は、280[mm/s]のプロセス線速の条件で、表面凹凸に富んだ記録シートに対して画像を転写する。しかしながら、近年の市場においては、更なる高速化が望まれている。そこで、本発明者らは、上述したプリンタ試験機を用いて、プリント速度と画質との関係を調べる第二実験を行った。
プリンタ試験機には、第一実験と同じ中間転写ベルトを搭載した。また、実験室を温度23℃湿度50%の環境に設定した。そして、記録シートとして表面凹凸に富んだレザック66(連量215kg)をプリンタ試験機にセットして、そのレザック66に対して青色のテストベタ画像を様々なプロセス線速の条件でプリントした。プリントされたテストベタ画像について、レザック66の表面凹部に対するトナーの転写性(凹凸転写性)について、目視による官能評価を行った。通常視力の評価者により、1〜5までの5段階のランクで凹凸転写性を評価した。ランクの数値が大きくなるほど、良好な成績であることを示している。
二次転写バイアスとしては、直流電圧だけからなるもの、及び重畳電圧からなるものの二種類を用い、それぞれの二次転写バイアスにおいて、複数の線速でテストベタ画像をプリントした。重畳電圧としては、波形が矩形波であり、逆ピーク側デューティーが12[%]の低デューティーであり、周波数が0.8[kHz]であり、且つ、ピークツウピーク値Vppが8[kV]であるものを用いた。
実験条件を次に列記する。
・環境:23[℃]、50[%]
・中間転写ベルト:単層のポリイミドベルト(膜厚60μm)
・テスト画像:青色(MとCとの2色重ね合わせ)のベタ画像
・記録シート:レザック66(坪量215kg)
・二次転写バイアスの種類:直流電圧だけからなるもの、重畳電圧からなるもの
・重畳電圧のピークツウピーク値Vpp:8[kV]
・重畳電圧の周波数f:0.8[kHz]
・重畳電圧の逆ピーク側デューティー:12[%]
・直流成分又は直流電圧:−5[kV]
・プロセス線速[mm/s]:152、200、350、415、630
この第二実験における凹凸転写性のランクとプロセス線速とバイアス種類との関係をグラフとして図9に示す。図示のように、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いた場合には、プロセス線速によらず、凹凸転写性は最低のランク1になった。直流電圧だけからなる二次転写バイアスでは、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面とレザック66の表面凹部との間で往復移動させることができないからである。
一方、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いた場合には、プロセス線速を200[mm/s]以下に留めれば、凹凸転写性をランク4以上にすることができる。ところが、プロセス線速を200[mm/s]よりも速くすると、ランク4以上の凹凸転写性を得ることができなくなった。二次転写ニップ内において、トナーをベルト表面とレザック66の表面凹部との間で良好に往復移動させることができなかったからである。特に、プロセス線速を事業ユーザー向けの630[mm/s]という超高速に設定した条件では、ランク0.5という極めて粗悪な凹凸転写性になってしまった。プロセス線速を高速にすると、トナーの二次転写ニップ通過時間を短くして、二次転写ニップ内でトナーを必要な回数だけ往復移動させることが困難になるからである。
二次転写バイアスのピークツウピーク値Vppを比較的高い値に設定すれば、二次転写ニップ内でトナーを高速で往復移動させて、短い二次転写ニップ通過時間でも必要な回数だけ往復させることが可能になると考えられる。
そこで、本発明者らは、上述したプリンタ試験機を用いて、ピークツウピーク値Vppと画質との関係を調べる第三実験を行った。中間転写ベルトとしては、第一実験や第二実験で用いたものを同じものをプリンタ試験機に搭載した。二次転写バイアスとしては、重畳電圧からなり、波形が矩形波であり、且つ逆ピーク側デューティーが12[%]であるものを用いた。プロセス線速としては、第三実験で特に結果が悪かった630[mm/s]を採用した。また、二次転写バイアスのピークツウピーク値としては、1[kV]刻み値を異ならせた7[kV]〜13[kV]の7通りを採用し、それぞれのピークツウピーク値でテスト画像をプリントした。テスト画像としては、青のベタ画像、及び文字画像の二つをプリントした。
第三実験における実験条件を次に列記する。
・環境:23[℃]、50[%]
・中間転写ベルト:単層のポリイミドベルト(膜厚60μm)
・テスト画像:青色のベタ画像、及び文字画像
・記録シート:レザック66(坪量215kg)
・二次転写バイアスの種類:重畳電圧からなるもの
・重畳電圧のピークツウピーク値Vpp[kV]:7、8、9、10、11、12、13
・重畳電圧の周波数f:0.8[kHz]
・重畳電圧の逆ピーク側デューティー:12[%]
・直流成分(オフセット電圧Voff):−5[kV]
・プロセス線速:630[mm/s]
・記録シート:レザック66(215kg)
青のテスト画像については、凹凸転写性のランクに加えて、放電に起因する白点のランクを評価した。通常視力の評価者により、1〜5までの5段階で白点のランクを評価し、ランクの数値が大きくなるほど、良好な成績であることを示している。
また、文字画像については、文字の周囲にトナーを飛び散らせる現象である文字チリのランクを評価した。通常視力の評価者により、1〜5までの5段階で文字チリのランクを評価し、ランクの数値が大きくなるほど、良好な成績であることを示している。何れのランクも、2.5がギリギリの許容範囲内である。望ましくは、3.5以上がよい。
第三実験における画質の評価ランクとピークツウピーク値Vppとの関係をグラフとして図10に示す。図示のように、ピークツウピーク値Vppを大きくするほど、凹凸転写性が向上する。これは、ピークツウピーク値Vppを大きくするにつれて、戻しピーク値Vrを大きくして中間転写ベルト表面にトナーを確実に戻すことが可能になるからである。この一方で、ピークツウピーク値Vppを大きくするにつれて、文字チリや画像中の白点のランクが悪化する。これは次に説明する理由による。即ち、Vppを大きくするにつれて、転写ピーク値Vtや戻しピーク値Vrを大きくして、ベルト表面とシート表面との最大電位差を大きくする。これにより、放電を発生させ易くなることで、白点のランクが悪化する。また、転写ピーク値Vtや戻しピーク値Vrを大きくすると、トナー粒子をシート表面にぶつける力が強まることから、トナー粒子を周囲に飛び散らせ易くして、文字チリのランクが悪化する。
次に、本発明者らは、中間転写ベルトとして、ある程度の弾性を発揮させるようにしたものを用いて、第四実験を実施した。具体的には、ポリイミドからなる厚み60[μm]のベルト基体(基層)のおもて面側に、アクリルゴムからなる厚み390[μm]の弾性層を設けた中間転写ベルトである。弾性層には平均粒径2[μm]の微粒子を分散せしめて、弾性層表面に微粒子による突起を設けている。この中間転写ベルトのマイクロゴム硬度は35.9であり、マルテンス硬度は0.31であった。中間転写ベルトとして、このような弾性を発揮する多層構造のものを用いた点の他は、第三実験と同様にして画質を評価した。
第四実験における実験条件を次に列記する。
・環境:23[℃]、50[%]
・中間転写ベルト:多層構造の弾性ベルト
(基層の膜厚60μm、弾性層の膜厚=390μm)
・テスト画像:青色のベタ画像、及び文字画像
・記録シート:レザック66(坪量215kg)
・二次転写バイアスの種類:重畳電圧からなるもの
・重畳電圧のピークツウピーク値Vpp[kV]:7、8、9、10、11、12、13
・重畳電圧の周波数f:0.8[kHz]
・重畳電圧の逆ピーク側デューティー:12[%]
・直流成分(オフセット電圧Voff):−5[kV]
・プロセス線速:630[mm/s]
第四実験における画質の評価ランクとピークツウピーク値Vppとの関係をグラフとして図11に示す。図示のように、ピークツウピーク値Vppを大きくするほど、凹凸転写性が向上する一方で、文字チリや白点のランクが悪化するという傾向は第三実験と同様である。但し、同じピークツウピーク値で比較すると、第四実験の方が文字チリや白点のランクが良かった。これは、第四実験では、二次転写ニップ内で弾性層をレザック66の表面凹凸にならわせて柔軟に変形させて、表面凹部の底面とベルト表面との距離を小さくしたことから、トナーの往復移動をより確実に行わせたことによるものだと考えられる。また、弾性層の変形により、中間転写ベルト表面とレザック66表面との密着性を高めたことが、文字チリのランクを向上させた原因であると考えられる。更に、密着性の向上により、中間転写ベルト表面とレザック66表面との間に生ずる空隙を少なくしたことで、放電の発生を抑えたことが、白点のランクを向上させた原因であると考えられる。
図11に示されるように、中間転写ベルトとして弾性を発揮するものを用いることで、630[mm/s]という超高速のプロセス線速の条件においても、凹凸転写性、文字チリ、白点のランクを何れも4以上にし得ることがわかる。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
第四実験の結果に鑑みて、実施形態に係るプリンタにおいては、中間転写ベルト31として、弾性ベルトからなるものを用いている。
図12は、実施形態に係るプリンタに搭載された弾性ベルトからなる中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層(硬質素材のベルト基体)31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bには、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子31cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、図13に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凸がベルト面に形成されている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、本発明を適用可能な電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層31aの前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31として好適に装備されるシームレスベルトの基層31aに含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。但し、機械強度の観点から、成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。つまり、樹脂成分(ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体など)と電気抵抗調整材との配合率を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスがとれたシームレスベルトを製造して用いることが好ましい。電気抵抗調整材の含有量は、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]がよく、更に好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量は、塗工液中の全固形分の1〜50[wt%]がよく、更に好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前述した範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、また含有量が前述した範囲よりも多いと中間転写ベルト31(シームレスベルト)の機械強度が著しく低下するので、実使用上好ましくない。
基層31aの厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層31aの厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層31aの厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層31aの層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層31aの厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト31の弾性層31bは、上述したように、分散せしめられた複数の粒子31cによる複数の凸形状を表面に有している。弾性層31bを形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。特に、表面に凹凸のある記録シート、例えばレザック紙などの表面凹凸に追従させるためには、できるだけ柔らかい材料を選択することが好ましい。また、粒子31cを分散せしめることから、熱可塑性のものよりも熱硬化性のものの方が好ましい。熱硬化性のものの方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により樹脂粒子との密着性に優れ確実に固定化することが可能だからである。加硫ゴムも同様の理由により好ましい材料の1つである。
弾性層31bを構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。更に、脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどを例示することができる。また、芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が挙げられる。4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等でもよい。更には、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等でもよい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。このような架橋促進剤としては、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ‐ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。これに対し、架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を採用することが可能である。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することによって架橋物とすることができる。好ましい加熱温度は、130〜220℃であり、より好ましくは140℃〜200℃である。また、好ましい架橋時間は、30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋の時間は、加熱方法、架橋温度、形状などによって異なるが、好ましくは1〜48時間である。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度については、適宜選択することが可能である。選択した材料に、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、架橋促進剤などの材料を適宜含有させてもよい。さらに、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤として、すでに述べた各種材料を使用することができる。但し、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、それらを併用しても構わない。
ゴム100重量部に対しては、種々の過塩素酸塩やイオン性液体を0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下であると、抵抗率を下げる効果が得られない。また、添加量が3部以上であると、ベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層31bの抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。
弾性層31bの層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。層厚が200μmよりも小さいと、記録シートの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2mmよりも大きいと、弾性層31bが自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層31bの弾性材料に分散せしめる粒子31cとしては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子31cとしては、体積平均粒径が1.0μm〜5.0μmであり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅の粒子である。粒子31cの粒径が1.0μm未満であると、粒子31cによる転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0μmよりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト31のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子31cは一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子31cの電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子31cとしては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子31cを弾性層31bに直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子31c同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子31cの弾性層31bの表面方向における断面の径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子31cの粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cだけを選択的に弾性層31b表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子31cを弾性層31b表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層31bの弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子31cが分散せしめられた弾性層31bの表面方向において、粒子31cが存在している部分と、弾性層31bの表面が露出している部分との投影面積比については、粒子31cが存在している部分の投影面積率を60%以上にすることが望ましい。60%に満たない場合には、トナーと弾性層31bの無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト31として、弾性層31bに粒子31cを分散させていないものを用いることも可能である。
図13に示されるように、中間転写ベルト31の表面において、粒子31c同士の重なり合いは殆ど観測されない。粒子31cの弾性層31b表面における断面の径は、できるだけ均一であることが好ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5)μm以下の分布幅となることが好ましい。このような分布幅を実現するためには、粒径分布の狭い粒子粉末を用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cを選択的に表面に局在させる方法を採用して弾性層31bを形成すれば、粒径分布の広い粒子粉末を使用してもよい。
記録シートPとして、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いたとする。この場合に、記録シートPの表面における複数の凹部にそれぞれトナーを良好に二次転写して、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えるためには、弾性層31bをある程度の柔軟性(弾性)に優れたものを採用する必要がある。そして、そのような弾性層31bを採用すると、弾性層31bの単体だけでは、張架するとすぐに伸びてしまうことから、実使用に耐えられない。このため、弾性層31bよりも剛性のある基層31aを設け、その基層31aの剛性によってベルト全体の伸びを長期間に渡って抑えることが必須の条件になる。
以上のように、実施形態に係るプリンタでは、基層31aの上に弾性層31bを積層した弾性ベルトからなる中間転写ベルト31を用いる。これにより、ベルト線速(プロセス線速)=630[mm/s]という事業ユーザー向けの超高速で画像を形成しても、凹凸シートの表面凹部内に十分量のトナーを転移させて、凹凸シートの表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えることができる。
なお、実施形態に係るプリンタにおいては、表面凹凸に富んだ記録シートである凹凸シートの表面凹部に十分量のトナーを転移させるために、凹凸シートが用いられる場合には、逆ピーク側デューティーを50[%]以下にした二次転写バイアスを用いる。より詳しくは、二次転写バイアスとして、一周期内で極性が反転し、且つ逆ピーク側デューティーが50[%]未満であるものを用いるようになっている。かかる構成では、逆ピーク側ディーティーが50[%]以上である二次転写バイアスを用いる構成に比べて、二次転写不良や、放電に起因する白点の発生を抑えることができる。以下、逆ピーク側デューティーが50[%]未満であるという特性を低デューティーという。これに対し、逆ピーク側デューティーが50[%]を超えるという特性を高デューティーという。
表面平滑性に優れた記録シートである平滑シート(表面凹部が殆ど存在しない)を用いる場合には、トナーを中間転写ベルト31表面と平滑シートとの間で往復移動させる必要がない。トナーを往復移動させなければ、文字チリの発生を有効に抑えることができる。
そこで、本発明者らは、交流成分を含む重畳電圧ではなく、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる条件で、表面平滑性に優れたコート紙からなる記録シートPに単色ハーフトーン画像や単色ベタ画像を二次転写する第五実験を行った。単色ハーフトーン画像は、面積階調により、単位面積当たりのトナー付着量を単色ベタ画像の1/4程度にした中間調の画像である。中間転写ベルトとしては、第四実験と同じ弾性ベルトからなるものを用いた。二次転写バイアスの出力値(直流電圧)を変化させながら、それぞれの出力値でテスト画像をプリントした。
第五実験における実験条件を次に列記する。
・環境:23[℃]、50[%]
・中間転写ベルト:多層構造の弾性ベルト
(基層の膜厚60μm、弾性層の膜厚=390μm)
・テスト画像:単色ハーフトーン画像、及び単色ベタ画像
・記録シート:王子製紙株式会社製のPODグロスコート128(表面コート紙)
・二次転写バイアスの種類:直流電圧だけからなるもの
・プロセス線速:630[mm/s]
プリントした単色ベタ画像や単色ハーフトーン画像の転写率を測定した。具体的には、まず、中間転写ベルト31上にハーフトーン画像を一次転写した時点でテスト機を停止させ、中間転写ベルト上のテスト画像のトナーをバキュームによって収拾し、その重量を全重量として測定した。次に、前回と全く同じ条件で中間転写ベルト上にテスト画像を一次転写した後、すぐにPODグロスコート128に二次転写した。この直後にプリンタ試験機を停止させ、中間転写ベルト上に付着している転写残トナーをバキュームによって収拾し、その重量を転写残量として測定した。そして、「(全重量−転写残量)/全重量×100」の解を転写率として求めた。
第五実験における転写率と二次転写バイアスの出力値(直流電圧)との関係をグラフとして次の図14に示す。図示のように、単色ベタ画像では良好な転写率が得られたものの、単色ハーフトーン画像では、転写率がかなり低くなった。転写率の低下(二次転写不良)を引き起こしてしまう原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことが判明した。即ち、単色ハーフトーン画像は、画像部の全てがトナーによって覆われておらず、比較的少数のドット群を構成するトナー付着箇所と、トナーを全く付着させていない空白箇所とが画像部中に混在している。弾性層31bを設けた中間転写ベルト31を用い、且つ記録シートPとして表面平滑性に優れた平滑シートを用いると、二次転写ニップ内で弾性層31bをハーフトーン画像中の少数ドット群を構成している少数ドットトナー塊の形状にならわせて柔軟に変形させる。そして、この変形により、単色ハーフトーン画像中の少数ドットトナー塊の表面だけでなく、少数ドットトナー塊の側面までも弾性層31bで包み込んでしまう。すると、弾性層31bから少数ドットトナー塊の各トナー粒子に正規帯電極性とは逆極性の電荷を注入させて、トナーの帯電量(Q/M)を低下させたり、トナーを逆帯電させたりする。この結果、転写率を低下させていることがわかった。なお、記録シートPとして、凹凸シートを用いる場合には、弾性層31bをシート表面の凹凸に応じて不規則な形状に変形させることから、弾性層31bによって少数ドットトナー塊の側面を包んでしまうことが殆どなくなる。このため、凹凸シートの表面凸部上において、二次転写不良を引き起こすことはない。
次に、本発明者らは、二次転写バイアスとして、低デューティーのものや、直流電圧だけからなるものに代えて、高デューティー(逆ピーク側デューティー=80%)のものを用いて、平滑シートにハーフトーン画像を二次転写する第六実験を行った。平滑シートとしては、王子製紙株式会社製のPODグロスコート128を用いた。27℃/80%の環境下、プロセス線速=630[mm/s]の条件で、平滑シートにK(単色)のハーフトーン画像(2by2)を二次転写したところ、二次転写不良を引き起こすことなく、平滑シートにブラックハーフトーン画像を良好に二次転写することができた。低デューティーの二次転写バイアスを用いる場合よりもハーフトーン画像の転写率が飛躍的に向上した。
高デューティーの二次転写バイアスを用いることで、平滑シートに対するハーフトーン画像の二次転写性を向上させることができたのは、次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、無端移動する中間転写ベルト31が二次転写ニップ内に進入すると、二次転写バイアスにより、二次転写ニップに進入したベルト箇所に対する充電が始まる。そして、その充電量がある閾値を超えると、ハーフトーン画像中の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入が始まる。二次転写ニップに進入したベルト箇所に対する充電は、主に転写ピーク時間tf内で起こることから、この転写ピーク時間tfが長くなるほど、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量が増加する。高デューティーの二次転写バイアスは、低デューティーの二次転写バイアスに比べて、転写ピーク時間tfが短いことから、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を低減して、二次転写不良の発生を抑えることが可能になると考えられる。
なお、本発明者らによって行われた別の実験により、次のようなことも判明した。即ち、一周期内で極性を反転させる高デューティーの二次転写バイアスよりも、極性を反転させない高デューティーの二次転写バイアスを用いる方が、平滑シートに対する二次転写性を向上させることができた。
また、本発明者らは、中間転写ベルト31の弾性層31bの二次転写ニップにおける弾性変形をある程度の変形量に留めることで、平滑シートにおけるハーフトーン画像の転写率を更に向上させ得るかもしれないと考えた。
そこで、中間転写ベルト31として、互いに硬度の異なる複数のものを用意し、それぞれを用いてテスト画像をプリントする第七実験を行った。中間転写ベルト31としては、次の表1に示す11種類のものを用意した。
表1において、表面層は、弾性層の上に積層される最上層であり、その厚みは10[μm]である。ベルトA〜ベルトKの11種類のベルトにおいて、ベルトAは、弾性層及び表面層を設けてない単層ベルトであるので、実施形態に係るプリンタの中間転写ベルト31として用いられるベルトではない。弾性層を設けているのは、ベルトA〜ベルトKのうち、ベルトB〜ベルトKの10種類である。また、ベルトB〜ベルトKのうち、弾性層の上に表面層を設けているのは、ベルトE〜ベルトHの4種類である。
弾性層と表面層とのうち、弾性層だけを設けているのは、ベルトB〜ベルトD、及びベルトI〜ベルトKの6種類である。これらのうち、ベルトB〜ベルトDの3種類は、弾性層の材料として、アクリルゴムを用いているのに対し、ベルトI〜ベルトKの3種類は、弾性層の材料として、アクリルゴムにアクリル樹脂を混合したものを用いている。このような材料の違いと、弾性層の厚みとの組み合わせを異ならせることで、6種類のそれぞれで互いの硬度(マルテンス硬度やマイクロゴム硬度)を異ならせている。また、ベルトE〜Hの6種類は、弾性層の厚みを互いに同じ390[μm]にしているが、表面層の材料におけるアクリル樹脂の含有比率を互いに異ならせることで、互いの硬度を異ならせている。
第七実験では、11種類のベルトのそれぞれについて、凹凸シート(レザック66)に青色のベタ画像や文字画像をプリントしたり、平滑シート(PODグロスコート128)に単色のハーフトーン画像をプリントしたりする実験を行った。凹凸シートにベタ画像や文字画像をプリントする際には、二次転写バイアスとして、低デューティー(12%)の重畳電圧からなるものを用いた。また、平滑シートにハーフトーン画像をプリントする際には、二次転写バイアスとして、高デューティー(80%)の重畳電圧からなるものを用いた。何れの場合も、プロセス線速は630[mm/s]に設定した。
第七実験における実験条件を次に列記する。
・環境:23[℃]、50[%]
・中間転写ベルト:ベルトA〜ベルトK
・テスト画像:青色のベタ画像、黒色の文字画像、及び単色のハーフトーン画像
・ベタ画像や文字をプリントする記録シート:凹凸紙
レザック66(坪量215kg)
・ハーフトーン画像をプリントする記録シート:コート紙
PODグロスコート128
・二次転写バイアス:重畳電圧からなるもの
・同二次転写バイアスの周波数f:0.8[kHz]
・同二次転写バイアスのピークツウピーク値Vpp:10[kV]
・同二次転写バイアスの直流成分(オフセット電圧Vpff):−5[kV]
・凹凸紙使用時の二次転写バイアスの逆ピーク側デューティー:12[%]
・コート紙使用時の二次転写バイアスの逆ピーク側デューティー:80[%]
・プロセス線速:630[mm/s]
第七実験における中間転写ベルトのマルテンス硬度と、凹凸シートに対するベタ画像の凹凸転写性のランクと、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率との関係をグラフとして図15に示す。また、第六実験における中間転写ベルトのマイクロゴム硬度と、凹凸シートに対するベタ画像の凹凸転写性のランクと、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率との関係をグラフとして図16に示す。なお、マルテンス硬度はベルトの表面付近の硬度を主に示すのに対し、マイクロゴム硬度はベルトの厚み全体の硬度を主に示す。
図15、図16からわかるように、中間転写ベルト31のマルテンス硬度やマイクロゴム硬度を低くするほど、凹凸転写性を向上させることができる反面、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率を低下させてしまう。つまり、凹凸シートに対する凹凸転写性と、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写性とはトレードオフの関係にある。中間転写ベルト31の硬度を低くするほど、弾性層31bを良好に変形させて凹凸シートの表面凹部の底面とベルト表面との距離を小さくして、平滑シートへの凹凸転写性を向上させることができる。この反面、平滑シート上の少数ドットトナー塊のベルト表面による包み込みを大きくして、トナーに対する逆電荷の注入量を増加させてしまい、ハーフトーン画像の転写性を低下させてしまうのである。記録シートの種類に応じて中間転写ベルト31を交換することは困難であることから、中間転写ベルト31の硬度については、ハーフトーン画像の転写率と、凹凸転写性との兼ね合いで適切な値に設定する必要がある。
第七実験における中間転写ベルト31の硬度と画質の評価結果とを次の表2にまとめて示す。なお、文字チリは、凹凸紙に転写した文字画像の周囲にトナーが飛び散る現象であり、交流成分を含む重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いると、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて文字チリが発生し易くなる。また、白点は、二次転写ニップ内で発生する放電に起因して画像中に多数の白点を発生させる現象である。
表2においては、行の上から下に向けて、硬度の低いベルトから順にデータを記している。つまり、ベルトの硬度は、最上行に記されたベルトDが最も低く、最下行に記されたベルトAが最も高い。平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率、凹凸シートに対する凹凸転写性、文字チリ、及び白点のランクを総合的にみると、表2の上から下に向けて、ベルトC〜ベルトJの硬度範囲にある中間転写ベルト31を用いることが望ましい。具体的には、マイクロゴム硬度が82以下、36以上であり、マルテンス硬度が1.1以下、0.3以上であるベルトである。
弾性層31bの厚みについては、600[μm]まで大きくすると、ハーフトーン画像の転写率が著しく低下する。低デューティーの二次転写バイアスを用いれば、厚みを390[μm]程度まで大きくしても、許容範囲の凹凸転写性が得られるため、弾性層の厚みについては、390[μm]以下にすることが望ましい。
次に、本発明者らは、第七実験で用いた11種類のベルトのそれぞれについて、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いて平滑シートにハーフトーン画像を二次転写した場合における二次転写性を調べる第八実験を行った。
第八実験における実験条件を次に列記する。
・環境:23[℃]、50[%]
・中間転写ベルト:ベルトA〜ベルトK
・テスト画像:単色のハーフトーン画像
・ハーフトーン画像をプリントする記録シート:コート紙
PODグロスコート128
・二次転写バイアス:−5[kV]の直流電圧だけからなるもの
・プロセス線速:630[mm/s]
第八実験における中間転写ベルトのマルテンス硬度と、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率との関係を図17に示す。また、第八実験における中間転写ベルトのマイクロゴム硬度と、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率との関係を図18に示す。
表3、図17及び図18と、表2、図15及び図16との比較からわかるように、中間転写ベルトの硬度が同じであれば、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率は、第七実験の方が優れている。即ち、中間転写ベルトの硬度が同じであれば、二次転写バイアスとして、高デューティーの重畳電圧からなるものを用いる方が、直流電圧だけからなるものを用いる場合に比べて、平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率を向上させることができる。但し、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる場合であっても、中間転写ベルトとして、次のようなものを用いれば、平滑シートに画像を形成するモードにおいて実用に耐え得るほどの値の、ハーフトーン画像の転写率を実現することが可能である。即ち、凹凸シートに画像を形成するモードで優れた凹凸転写性を実現し得る程度に軟らかいものの、柔らか過ぎない中間転写ベルト31である。かかる中間転写ベルト31を用いて、平滑シートに画像を形成するモードにおいて、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを用いる場合には、重畳電圧からなるものを用いる場合に比べて、次のようなメリットがある。即ち、二次転写裏面ローラ33や中間転写ベルト31にかける電気的な付加を低減して、それらの長寿命化を図ることができる。
図19は、実施形態に係るプリンタの入力操作部501の電気回路を示すブロック図である。図示のように、入力操作部501は、平滑紙ボタン501aと、凹凸紙ボタン501bとを有している。実施形態に係るプリンタにおいては、ユーザーに対して次のような操作を行ってもらうための説明を、取り扱い説明書に記載している。即ち、給紙カセット(図1の100)に対し、記録シートPとして、コート紙などの表面平滑性に優れた高平滑シートをセットした場合には、平滑紙ボタン501aを押下する。これに対し、給紙カセットに対し、記録シートPとして、普通紙や和紙などの表面平滑性に劣る低平滑シートをセットした場合には、凹凸紙ボタン501bを押下する。つまり、入力操作部501は、次のような情報を取得することが可能な情報取得手段として機能している。即ち、トナー像の二次転写対象となる記録シートPについて、少なくとも、表面平滑性に優れた高平滑シートであるのか、あるいは高平滑シートよりも表面平滑性が劣る低平滑シートであるのかを把握することが可能な情報である。
制御手段としての電源制御部200は、入力操作部501による前記情報の取得結果に基づいて、高平滑シートにトナー像を二次転写するための高平滑モードと、低平滑シートにトナー像を二次転写するための低平滑モードとで転写モードを切り替える。具体的には、平滑紙ボタン501aが押下された場合には、転写モードを高平滑モードに設定する。そして、高平滑モードでは、平滑シートにハーフトーン画像を二次転写する際の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入を抑えるために、高デューティーの二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。その二次転写バイアスは、極性がマイナス極性で一定(反転しない)であり、且つ逆ピーク側デューティーが70[%]〜90[%]の範囲内であるという特性になっている。
一方、凹凸紙ボタン501bが押下された場合には、電源制御部200は、転写モードを低平滑モードに設定する。そして、低平滑モードでは、凹凸シートの表面凹部内に十分量のトナーを二次転写するために、低デューティーの二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。その二次転写バイアスは、次のような特性になっている。即ち、一周期内で極性が反転し、平均電位Vaveの極性や転写ピーク値Vtの極性が電界の向きを転写方向にするマイナス極性であり、逆ピーク値Vrの極性が電界の向きを転写方向とは逆横行にするプラス極性である。加えて、逆ピーク側デューティーが8[%]〜17[%]の範囲内であるという特性である。
かかる構成では、記録シートとして普通紙や和紙のような低平滑シート(凹凸シート)が用いられる場合に、低デューティーの二次転写バイアスを二次転写電源39から出力することで、次のような作用効果を奏する。即ち、二次転写ニップ内において、ベルト表面と記録シートPの表面凹部内との間でトナー粒子を良好に往復移動させることで、記録シートPの表面凹部内に十分量のトナーを転移させて、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えることができる。また、逆ピーク側デューティーを低デューティーにすることで、放電による白点の発生を抑えることができる。
一方、記録シートとしてコート紙のような高平滑シートが用いられる場合に、高デューティーの二次転写バイアスを二次転写電源39から出力することで、次のような作用効果を奏する。即ち、逆ピーク側デューティーを高デューティーにすることで、ハーフトーン画像の少数ドットトナー群に対する逆電荷の注入を抑えて、平滑シートに対するハーフトーン画像の二次転写性を向上させる。これにより、ハーフトーン画像の画像濃度不足の発生を抑えることができる。
なお、高平滑モードにおいて、高デューティーの二次転写バイアスに代えて、低デューティーの二次転写バイアスを用いてもよい。直流電流だけからなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、高平滑シートに対するハーフトーン画像の転写率を向上させることができるからである。また、中間転写ベルト31として、低平滑モードで優れた凹凸転写性を実現し得る程度に軟らかいものの、柔らか過ぎないことから高平滑モードで許容範囲のハーフトーン画像の転写率を得られるものを用いれば、次のようにしてもよい。即ち、高平滑モードにおいて、高デューティーの二次転写バイアスに代えて、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いてもよい。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
図20は、実施例に係るプリンタにおけるK用のトナー像形成ユニット1Kを拡大して示す拡大構成図である。このトナー像形成ユニット1Kは、電荷付与手段たる電荷付与チャージャー14Kを有している。この電荷付与チャージャー14Kは、感光体2Kに対向する開口を具備する筺体15Kや、筐体15K内で張架されているコロナワイヤー16Kなどを有するコロナ放電器からなる。−3.5〜−8[kV]、好ましくは−4.0〜−5.5[kV]の電圧が印加される、タングステンワイヤに金メッキが施されたコロナワイヤー16Kと、感光体2Kとの間には、コロナ放電が発生する。このときの電流値は−300〜−1000[μA]である。
電荷付与チャージャー14Kは、感光体2Kの周面における全域のうち、現像ロール9Kとの対向位置を通過した後、K用の一次転写ニップに進入する前の領域に対向するように配設されている。そして、上述したコロナ放電により、前記領域に担持されているKトナー像に対してトナーの正規帯電極性(本例ではマイナス極性)と同極性の電荷を付与する。これにより、感光体2K上で現像されたKトナー像は、K用の一次転写ニップに進入するのに先立って、トナー帯電量(Q/M)が増加せしめられる。そして、その増加により、感光体2Kから中間転写ベルト31上に一次転写された後のKトナー像のトナー帯電量も、電荷付与チャージャー14Kによる電荷付与を行わない場合に比べて増加する。かかる構成では電荷付与チャージャー14Kによる電荷付与を行わない場合に比べて、二次転写ニップ内で高平滑シートに二次転写する際のKハーフトーン画像のトナー帯電量を増加させる。これにより、二次転写ニップ内でKハーフトーン画像に逆電荷を注入してしまうことによるKハーフトーン画像の画像濃度不足の発生を抑えることができる。つまり、逆電荷の注入によるKハーフトーン画像の画像濃度不足について、中間転写ベルト31の硬度を低くし過ぎないことによってその発生を抑える対策とは別に、電荷付与チャージャー14Kによる電荷の付与によってその発生を抑えることができる。従って、中間転写ベルト31の硬度設定範囲の自由度を向上させて、高平滑シートへのハーフトーン画像の高転写性と、凹凸シートへの画像の高転写性との両立をより実現させ易くすることができる。
なお、高平滑シートへのハーフトーン画像の二次転写性は、Y,M,C,Kの四色のうち、Kが最も悪くなる傾向にある。これは、Yトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーのうち、Kトナーだけが色材としてカーボンを含有していることで、Kトナーの体積抵抗が最も低くなることから、Kハーフトーン画像のトナー帯電量が最も少なくなるからである。体積抵抗が低くなるほど、トナー帯電量が少なくなる理由としては、これは電気抵抗が低くなることで、見かけ上の静電容量が減少するためだと考えられる。
よって、Y,M,C,K用のトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、少なくとも、K用のトナー像形成ユニット1Kについては、電荷付与チャージャー14Kを設けている。M,C,K用のトナー像形成ユニット1M,1C,1Kについては、ハーフトーン画像の二次転写性に基づいて、電荷付与チャージャーの付設の有無を検討すればよい。
M,C,Kの三色の全てについても電荷付与チャージャーを設けてもよいし、それら三色のうち、一部の色についてだけ電荷付与チャージャーを設けてもよい。一般的には、二次転写ニップに進入する直前のトナー像のトナー帯電量は、Y,M,Cの順で多くなる。これは、Yトナー像が下流側一次転写ニップに進入する回数が最も多くなるからである。具体的には、Yトナー像は、二次転写ニップに進入する前に、下流側一次転写ニップであるM用、C用、K用の一次転写ニップに進入し、それぞれの一次転写ニップで正規帯電極性の電荷が注入される。つまり、下流側一次転写ニップで正規帯電極性の電荷注入を受ける回数が3回になり、これは、M,C,Kの三色の中で最も多くなる。このため、三色のうち、Yトナー像のトナー帯電量が最も多くなるのである。従って、電荷付与チャージャーの付設の要求度は、K>C>M>Yという大小関係になる。
以下、二次転写ニップに進入する前のトナー像に対して電荷付与チャージャーによって正規帯電極性の電荷を付与する態様をプレチャージという。また、実施例に係るプリンタのように、感光体2の表面上のトナー像に対して電荷付与チャージャーによって電荷を付与する態様を感光体上プレチャージという。また、実施例に係るプリンタとは異なり、中間転写ベルト31の表面上のトナー像に対して電荷付与チャージャーによって電荷を付与する態様をベルト上プレチャージという。
本発明者らは、上述したプリンタ試験機を用いて、プレチャージの方式と、画像の種類と、高平滑シートへのトナーの二次転写率との関係を調べる第九実験を行った。
図21は、プレジャージの方式として、ベルト上プレチャージを採用した場合における二次転写率と、二次転写電流(定電流制御目標値)と、画像の種類との関係を示すグラフである。同図において、ブルーベタ画像は、Mベタ画像とCベタ画像との重ね合わせによるベタ画像である。また、「HT画像」はハーフトーン画像を意味している。
Kハーフトーン画像は、二次転写電流を増加させるにつれてその二次転写率が低下するのに対し、ブルーベタ画像は、それとは逆に、二次転写電流を増加させるにつれて二次転写率が増加する。このため、Kハーフトーン画像と、ブルーベタ画像とのそれぞれである程度良好な二次転写率を得るためには、定電流制御における二次転写電流の制御目標値を過不足ない適切な値に設定する必要がある。
同図において、Kハーフトーン画像に着目すると、ベルト上プレチャージを施した場合には、施さない場合に比べて、同じ値の二次転写率を得るためにより多くの二次転写電流が必要になることがわかる。また、ブルーベタ画像に着目すると、Kハーフトーン画像と同様に、ベルト上プレチャージを施した場合には、施さない場合に比べて、同じ値の二次転写率を得るためにより多くの二次転写電流が必要になることがわかる。つまり、ベルト上プレチャージを施すと、Kハーフトーン画像及びブルーベタ画像のそれぞれについて、同じ値の二次転写率を得るためのより多くの二次転写電流が必要になる。これは、Kハーフトーン画像の二次転写率と、ブルーベタ画像の二次転写率との差が、ベルト上プレチャージを実施する場合と、実施しない場合とでほぼ同じ値になることを意味している。
例えば、ベルト上プレチャージを実施する場合に、ブルーベタ画像で85[%]の二次転写率を得るためには、二次転写電流の制御目標値を170[μA]程度に設定する必要がある。そして、その設定では、Kハーフトーン画像の二次転写率が50[%]程度しか得られない。その差は、35[%]である。一方、ベルト上プレチャージを実施しない場合に、ブルーベタ画像で85[%]の二次転写率を得るためには、二次転写電流の制御目標値を110[μA]程度に設定する必要がある。そして、その設定では、Kハーフトーン画像の二次転写率が50[%]程度しか得られない。その差も、35[%]である。
よって、ベルト上プレチャージによって二次転写前のトナー像に電荷を付与する構成では、プレチャージを実施しても、高平滑シートに対するハーフトーン画像の二次転写性を向上させることが困難である。これは、ベルト上プレチャージでは、ハーフトーン画像を構成するトナーだけでなく、ベタ画像を構成するトナーにも電荷を付与することから、ハーフトーン画像及びベタ画像のそれぞれについて適切な二次転写電流値を上昇させてしまうからである。
図22は、プレジャージの方式として、実施例に係るプリンタと同様に、感光体上プレチャージを採用した場合における二次転写率と、二次転写電流(定電流制御目標値)と、画像の種類との関係を示すグラフである。なお、この例では、感光体上プレチャージをKだけで実施しており、M,C,Kの三色についてはプレチャージを実施していない。
同図において、Kハーフトーン画像に着目すると、ベルト上プレチャージと同様に、感光体上プレチャージを施した場合には、施さない場合に比べて、同じ値の二次転写率を得るためにより多くの二次転写電流が必要になることがわかる。
一方、同図において、ブルーベタ画像は、感光体上プレチャージのあり、なしの二つの態様がグラフに掲載されておらず、一つの態様しか掲載されていない。これは次に説明する理由による。即ち、ブルーベタ画像は、Mベタ画像とCベタ画像との重ね合わせによるものである。そして、Mベタ画像を形成するためのトナー像形成ユニット1M、Cベタ画像を形成するためのトナー像形成ユニット1Cの何れにおいても、電荷付与チャージャーを搭載していない。このため、K用のトナー像形成ユニット1Kにおいてハーフトーン画像の形成時に感光体上プレチャージを実施しても、Mベタ画像やCベタ画像についてはプレジャージを施さずに二次転写ニップに進入させることになる。つまり、Kハーフトーン画像に対する感光体上プレチャージの実施の有無にかかわらず、ブルーベタ画像など、Kとは異なる単色、あるいはそれらの重ね合わせによるトナー像はプレチャージが施されない状態になる。よって、同図におけるブルーベタ画像には、プレチャージが施されていない。
かかる構成では、Kにおける感光体上プレチャージの実施により、Kについて同じ値の二次転写率を得るための二次転写電流を増加させると、それに伴ってY,M,Cの三色のそれぞれについて二次転写率を高めることになる。これは、Kハーフトーン画像の二次転写率と、ブルーベタ画像の二次転写率との差が、感光体上プレチャージを実施する場合と、実施しない場合とで大きく異なることを意味している。
例えば、ブルーベタ画像で85[%]の二次転写率を得るためには、二次転写電流の制御目標値を110[μA]程度に設定する必要がある。そして、その設定におけるKハーフトーン画像の二次転写率は、Kにおいて感光体上プレチャージを実施しない場合には50[%]しか得られないのに対し、感光体上プレチャージを実施すると70[%]まで向上させることができる。このように、プレチャージによってハーフトーン画像の二次転写率を向上させるためには、プレチャージの方式として、ベルト上プレチャージではなく、感光体上プレチャージを採用する必要がある。
なお、Y,M,C,Kの全色について感光体2上のトナー像に電荷を付与する電荷付与チャージャーを設けたとしても、ベルト上プレチャージ方式とは異なり、感光体上プレチャージ方式に特有の効果を得ることが可能である。いくつか又は全ての色で電荷付与チャージャーによる電荷付与量を異ならせることが可能であるので、全ての色について電荷付与量を一律にしてしまうベルト上プレチャージ方式とは異なり、感光体上プレチャージ方式に特有の効果が得られるのである。
次に、実施例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各具体例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各具体例に係るプリンタの構成は、実施例と同様である。
[第一具体例]
図23は、第一具体例に係るプリンタにおけるK用のトナー像形成ユニット1Kを、電源制御部200やプレチャージ電源201とともに示す構成図である。プレチャージ電源201は、電荷付与チャージャー14Kに印加される直流電圧からなるチャージバイアスを出力するものである。電源制御部200は、プレチャージ電源201からのチャージバイアスの出力のオンオフを制御する。
実施例に係るプリンタのように、感光体上プレチャージ方式を採用した構成では、硬度の比較的低い中間転写ベルト31を用いて凹凸シートへのトナー転写性を高めつつ、プレチャージによって平滑シートへのハーフトーン画像転写性も高めることができる。この一方で、電荷付与チャージャー14Kに印加するチャージバイアスの絶対値を大きくし過ぎると、電荷付与チャージャー14Kによる電荷付与時に画像部の周囲にトナーを飛び散らせるトナーチリが発生して画質を低下させるというデメリットがある。
コート紙などの平滑シートを用いるとハーフトーン画像で良好な転写率を得られ難くなるが、凹凸シートや、普通紙(上質紙)などの普通シートでは、ハーフトーン画像の転写性の悪化は殆ど認められない。このため、感光体上プレチャージについては、平滑シートが用いられる場合には実施する必要があるものの、平滑シートとは異なる種類の記録シートが用いられる場合には、実施の必要性はそれほど高くない。
そこで、電源制御部200は、ユーザーによって平滑紙ボタン(図19の501a)が押下されたことによって高平滑モードを実施する場合だけ、プレチャージ電源201からチャージバイアスを出力させて電荷付与チャージャー14Kに供給する処理を実施する。かかる構成では、平滑シートではない記録シートを用いる低平滑モードにおいて、感光体上プレチャージを不要に実施することによるトナーチリの発生を回避することができる。
[第二具体例]
第二具体例に係るプリンタにおいても、電源制御部200がプレチャージ電源201からのチャージバイアスの出力を制御するようになっている。
図24は、画質の評価ランクと、電荷付与チャージャー14Kに印加する直流電圧からなるチャージバイアスとの関係を示すグラフである。画質としては、トナーチリ、平滑シートへのハーフトーン画像転写性、及び非平滑シートへのハーフトーン画像転写性の三種類を評価している。
トナーチリについては、ランク5=発生していない、ランク4=僅かに認められる、ランク3=認められる、ランク2=かなり散っている、ランク1=ランク2よりも散っている、の5段階で評価した結果を、グラフ上にプロットした。そのランクについては4以上にすることが望ましい。画像としては、 トナー量400%(各色成分トナー像が夫々100%のベタ画像)、20mm四方のパッチ画像を形成した。記録シートとしては、平滑シート、非平滑シートの2つを用いたが、何れを用いた場合であっても、同じチャージバイアスの条件であれば、トナーチリのランクは同じになった。
ハーフトーン画像転写性については、ランク5=濃度低下なし、ランク4=僅かに薄くなっている、ランク3=薄くなっている、ランク2=かなり薄くなっている、ランク1=殆ど転写されていない、の5段階で評価した結果をグラフ上にプロットした。そのランクについては、4以上にすることが望ましい。ハーフトーン画像としては、K単色で、2×2のドットで中間調を表現したものを形成した。
同図に示される結果を得た実験では、平滑シートとして、グロスコート紙であるPODグロスコート(128gsm)を用いた。また、非平滑シートとして、普通紙であるリコー タイプ6000(80gsm)を用いた。
同図に示されるように、チャージバイアスの絶対値を大きくするほど、トナーチリの評価ランクの数値を小さくしてしまう(トナーチリを悪化させてしまう)。この現象は、平滑シートを用いる場合でも、非平滑シートを用いる場合でも同様である。
非平滑シート(普通紙)を用いた場合、チャージバイアスの絶対値をかなり大きな値にしても、ハーフトーン画像転写性の評価ランクを最高のランク5に維持することができている。但し、チャージバイアスの絶対値を小さくし過ぎると、ハーフトーン画像転写性の評価ランクを4.5に下げてしまう。非平滑シートを用いる低平滑モードにおいては、トナーチリ、ハーフトーン画像転写性の評価ランクを何れも最高の5にするために、図中においてA2の符号で示されるように、チャージバイアスを−1[kV]〜−4[kV]の範囲に制御することが望ましい。
一方、平滑シート(グロスコート紙)を用いた場合、チャージバイアスの絶対値を小さくするほど、ハーフトーン画像転写性の評価ランクの数値を小さくしてしまう(転写性を低下させてしまう)。平滑シートを用いる高平滑モードにおいては、トナーチリ、ハーフトーン転写性を何れも4以上に維持するために、同図においてA1の符号で示されるように、チャージバイアスを−4[kV]〜−5.5[kV]の範囲に制御することが望ましい。
そこで、電源制御部200は、次のような制御を行うようになっている。即ち、ユーザーによって平滑紙ボタンが押下されたことによって高平滑モードを実施する場合には、凹凸紙ボタンが押下されたことによって低平滑モードを実施する場合に比べて、絶対値のより大きなチャージバイアスをプレチャージ電源201から出力させる。かかる構成においても、平滑シートではない記録シートを用いる低平滑モードにて、感光体上プレチャージを不要に実施することによるトナーチリの発生を回避することができる。
なお、第一具体例や第二具体例に係るプリンタにおいては、低平滑モードにて、逆ピーク側デューティーが50%未満である二次転写バイアスを必ずしも用いなくても良い。二次転写バイアスとして直流電圧のみからなるものを用いてもよいし、逆ピーク側デューティーが50%以上の重畳電圧を用いてもよい。すなわち、プリンタ(画像形成装置)を次のような構成にしてもよい。
即ち、
像担持体(例えば感光体2Y,2M,2C,2K)と、
像担持体上のトナーにその正規帯電極性と同極性の電荷を付与する電荷付与手段(電荷付与チャージャー)と、
マイクロゴム硬度が100未満であり、像担持体上のトナー像が転写される中間転写体(例えば中間転写ベルト31)と、
中間転写体との間に転写ニップ(例えば二次転写ニップ)を形成するニップ形成部材(例えばシート搬送ベルト41)と、
前記中間転写体上のトナー像を前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写するために転写バイアス(例えば直流電圧のみからなる転写バイアス)を出力する転写電源(例えば二次転写電源39)と、
トナー像の転写対象となる記録シートの表面平滑性に関する情報を取得する情報取得手段(例えば入力操作部501)と、
前記情報取得手段による前記情報の取得結果に基づいて、表面平滑性に優れた高平滑シートにトナー像を転写する場合は電荷付与手段によってトナー像に電荷を付与し、表面平滑性に劣る低平滑シートにトナー像を転写する場合は電荷付与手段による電荷の付与をおこなわない又は電荷付与手段によって高平滑シートの場合よりも弱い電荷をトナー像に付与するように前記電荷付与手段を制御する制御手段(例えば電源制御部200)と、を備える構成である。
このような構成によれば、比較的硬度の低い柔軟性のある中間転写体を用いた場合であっても、高平滑シートへのハーフトーン画像の転写率を向上させることができるとともに高平滑シートへの画像のトナーチリを防止することができる。
次に、実施形態、実施例、又は各具体例に係るプリンタにおける一部の構成を他の構成に置き換えた変形例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例に係るプリンタの構成は、実施形態、実施例、又は各具体例と同様である。
[変形例]
変形例に係るプリンタは、入力操作部501に、平滑紙ボタンや凹凸紙ボタンを有していない。そして、ユーザーによって記録シートの表面平滑性の情報が入力される仕様にはなっていない。その代わりに、記録シートの表面平滑性を検知する平滑性検知センサーを備えている。
図25は、変形例に係るプリンタの給紙路を示す構成図である。給紙路は、第一案内板503と第二案内板504との間に挟み込んだ記録シートPを、レジストローラ対101のレジストニップに案内するようになっている。第一案内板503には貫通口が設けられており、この貫通口には平滑性検知センサー502が嵌め込まれている。反射型光学センサーからなる平滑性検知センサー502は、発光素子から発した光を給紙路内の記録シートPに向けて照射し、記録シートPの表面で正反射した正反射光を受光素子によって受光する。コート紙等の平滑シートの表面で得られる正反射光量は、和紙等の凹凸シートの表面で得られる正反射光量よりも多くなる。
平滑性検知センサー502は、電源制御部200に電気的に接続されている。電源制御部200は、プリンタの主電源が投入された直後の装置起動時に、平滑性検知センサー502の校正を実施する。具体的には、発光素子を点灯させて発光素子からの光を白色の第二案内板504の表面で反射させる状態で、所定の正反射光量が得られるように発光素子の発光量(供給電圧)を調整する。このときの供給電圧値を記憶回路に記憶しておき、以降、平滑性検知センサー502によって記録シートPの表面における正反射光量を検知するときには、記憶回路に記憶してある供給電圧値と同じ値の電圧を発光素子に供給する。
プリントジョブが開始されると、所定のタイミングで給紙カセット100から送り出された記録シートPは、スキュー補正のために、駆動していないレジストローラ対101のレジストニップに突き当てられて搬送が一時停止される。このとき、給紙路内において、平滑性検知センサー502に対向する。この状態で、電源制御部200は、平滑性検知センサー502により、シート表面で得られる正反射光量を検知する。そして、その検知結果が所定の閾値を上回った場合に、記録シートPを平滑シートであると判定して、上述した高平滑モードを実施する。一方、正反射光量が所定の閾値を上回らなかった場合には、記録シートPを凹凸シートであると判定して、上述した低平滑モードを実施する。
かかる構成においては、二次転写ニップに搬送される記録シートPについて、平滑シート(高平滑シート)であるのか、あるいは凹凸シート(低平滑シート)であるのかを、ユーザーの操作によらずに自動で取得して、ユーザーの操作性を向上させることができる。
なお、第一具体例に係るプリンタの構成を採用する場合には、高平滑モードと低平滑モードとのうち、高平滑モードだけにおいて、プレチャージ電源201からチャージバイアスを出力させる。また、第二具体例に係るプリンタの構成を採用する場合には、高平滑モードにおけるチャージバイアスの絶対値を、低平滑モードにおけるチャージバイアスの絶対値よりも大きくする。
次に、実施形態、実施例、又は各具体例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した詳細例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、詳細例に係るプリンタの構成は、実施形態、実施例、又は各具体例と同様である。
[詳細例]
図は、詳細例に係るプリンタの入力操作部501の電気回路を示すブロック図である。この入力操作部501は、実施形態、実施例、各具体例のものとは異なり、平滑紙ボタンや凹凸紙ボタンを有していない。その代わりに、メニューキー501c、上キー501d、下キー501e、決定キー501f、ディスプレイ501gなどを有している。
ユーザーによってメニューキー501cが押されると、メイン制御部は、ディスプレイ501gにメニュー画面を表示させる。ユーザーは、上キー501dや下キー501eの操作により、メニュー画面に表示されている複数のメニューのうち、所望のメニューにカーソルを合わせた状態で決定キー501fを押すことで、そのメニューを選択することができる。ユーザーのキー操作により、「シート種入力」メニューが選択されると、メイン制御部は、ディスプレイ501gにシート銘柄一覧を表示させる。ユーザーは、上キー501dや下キー501eの操作により、銘柄一覧に表示されている複数の銘柄のうち、給紙カセット100にセットした記録シートと同じ銘柄を選択することができる。銘柄と、その銘柄の記録シートにおける表面平滑性とは、一対一の関係であるので、銘柄は表面平滑性を示す情報として機能し得る。
メイン制御部は、銘柄と、逆ピーク側デューティーの数値とを関連付けたデーターテーブルをデータ記憶回路に記憶している。その数値は、平滑シートの銘柄に対しては高デューティーの値が設定されている一方で、凹凸シートの銘柄に対しては低デューティーの値が設定されている。更に、凹凸シートの銘柄については、シート表面凹凸の度合いの大きな銘柄になるほど、逆ピーク側デューティーの数値が小さくなっている。メイン制御部は、ユーザーのメニュー操作によって銘柄が選択されると、その銘柄に対応する逆ピーク側デューティーの数値をデーターテーブルから特定する。そして、その結果を電源制御部200に送信する。電源制御部200は、メイン制御部から逆ピーク側デューティーの数値が送られてくると、以降のプリントにおいて、その数値と同じ逆ピーク側デューティーの二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。これにより、平滑シートの銘柄が選択された場合には高平滑モードを実施する一方で、凹凸シートの銘柄が選択された場合には低平滑モードを実施する。
かかる構成では、低平滑モードにおいて、逆ピーク側デューティーの値を一定にする場合に比べて、凹凸シートの表面凸部に対するハーフトーン画像の二次転写効率を向上させたり、表面凹部に対するトナーの転写量を増加させたりすることができる。具体的には、凹凸シートは、そのシート表面凹凸の度合いが小さくなるほど、表面凸部の面積が増加して、表面凸部においてハーフトーン画像の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入が起こり易くなる。この一方で、シート表面凹凸の度合いが大きくなるほど、表面凹部の大きさや深さが増加して、表面凹部へのトナーの転移不良が起こり易くなる。そこで、シート表面凹凸の度合いが大きくなるほど、逆ピーク側デューティーの値を小さくする。これにより、シート表面凹凸の度合いが比較的大きな凹凸シートであっても表面凹部に十分量のトナーを転移させることができる。加えて、シート表面凹凸の度合いが比較的小さな凹凸シートであっても表面凸部に対してハーフトーン画像部を良好に二次転写することができる。
なお、シート表面凹凸の度合いを示す指標としては、最大凹凸落差を用いることが可能である。また、最大凹凸落差を測定することが可能な測定装置の市販機としては、東京精密社製の「SURFCOM 1400D」を例示することができる。この測定装置にて、記録シート表面を顕微鏡で撮影した映像に基づいて、表面全域の中から、被検領域とする箇所をアトランダムに5つ選定する。それぞれの箇所について、評価長さ20[mm]、基準長さ20[mm]という条件で、断面曲線の最大断面高さPt(JIS B 0601:2001)を測定する。そして、得られた5つの最大断面高さPtのうち、上位3つの平均値を求める。以上の処理を、記録シートPの先端部分、中央部分、後端部分のそれぞれで実施し、それぞれの平均値の更なる平均を最大凹凸落差として求める。この最大凹凸落差(=特定情報)が例えば50[μm]以上である記録シートPを、凹凸シート(低平滑シート)とし、50[μm]未満である記録シートPを平滑シート(高平滑シート)表面凹凸シートとすればよい。
また、第一具体例に係るプリンタの構成を採用する場合には、前述したデータテーブルとして、銘柄と、逆ピーク側デューティーの数値と、チャージバイアスの出力の有無とを関連付けたものをデータ記憶回路に記憶させておく。チャージバイアスの出力の有無については、平滑シートに対応する銘柄には出力有りを関連付ける一方で、非平滑シートに対応する銘柄には出力無しを関連付けておく。
また、第二具体例に係るプリンタの構成を採用する場合には、前述したデータテーブルとして、銘柄と、逆ピーク側デューティーの数値と、チャージバイアスの値とを関連付けたものをデータ記憶回路に記憶させておく。チャージバイアスについては、平滑シートに対応する銘柄には、非平滑シートに対応する銘柄に比べて、絶対値の大きな値を関連付けておく。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、直流電圧と交流電圧との重畳による重畳電圧からなる転写バイアス(例えば二次転写バイアス)を転写電源(例えば二次転写電源39)から出力して、像担持体(例えば中間転写ベルト31)とニップ形成部材(例えばシート搬送ベルト41)との当接による転写ニップ(例えば二次転写ニップ)に転写電流(例えば二次転写電流)を流しながら、前記像担持体の表面上のトナー像を前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写する画像形成装置(例えばプリンタ)において、前記像担持体のマイクロゴム硬度が100未満であり、且つ前記転写バイアスにおける二つのピーク値のうち、前記転写ニップ内でトナーを像担持体側からニップ形成部材側により強く静電移動させる方の転写ピーク値とは逆のピーク値の側におけるデューティーである逆ピーク側デューティーが50[%]未満であることを特徴とするものである。
態様Aにおいて、表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部に対して十分量のトナーを転写するためには、転写ニップ内の像担持体表面と記録シートの表面凹部との間でトナーを例えば四往復など必要な回数だけ往復移動させる必要がある。にもかかわらず、事業ユース向けの要望に応え得るほどの高速プリント化を図ると、転写ニップ内でトナーを必要な十分に往復移動させることが困難になる。具体的には、前述のような高速プリント化を図ると、トナーの転写ニップ通過時間を極めて短くする。このような極めて短い通過時間の間で、トナーを高速で移動させて必要な回数だけ往復移動させるために、転写バイアスの交流電圧としてピークツウピーク値の非常に大きなものを採用すると、転写ニップ内で放電を多発させる。そして、その放電により、画像中に多数の白点を発生させてしまう。また、放電の発生を抑えるためにピークツウピーク値の比較的小さな交流電圧を用いて、短時間のうちにトナーを複数回往復移動させるために、交流電圧の周波数を非常に高くしたとする。すると、周期を非常に短くしてしまうことから、トナーを往路や復路で移動先に到達させる前のタイミングで転写バイアスの極性を反転させてしまう。そして、トナーを微振動させるだけで往復移動させることができなくなる。
そこで、態様Aにおいては、像担持体として、マイクロゴム硬度が100未満であるという柔軟性のあるものを用いる。このような像担持体は、ニップ内で表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹凸形状にならって柔軟に変形することで、像担持体表面と記録シートの表面凹部の底面との距離を短くする。また、態様Aにおいては、転写バイアスとして、逆ピーク側デューティーが50[%]未満であるものを用いる。このような転写バイアスは、逆ピーク側デューティーが50[%]以上であるものに比べて、より低いピークツウピーク値の転写バイアスでトナーを像担持体表面と記録シートの表面凹部との間で往復移動させることが可能になる。これらの結果、態様Aでは、転写バイアスの交流電圧として、ピークツウピーク値が比較的小さく且つ周波数の比較的高いものを用いても、トナーを転写ニップ内で必要な回数だけ往復移動させることが可能になる。よって、高速プリント化を図りつつ、表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部に対して十分量のトナーを転写し、且つ画像中の白点の発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aであって、前記像担持体のマイクロゴム硬度が82以下であることを特徴とするものである。かかる構成では、本発明者らが上述した実験で明らかにしたように、ピークツウピーク値の比較的低い転写バイアスを用いて、トナーを転写ニップ内で必要な回数だけ往復移動させることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bであって、前記像担持体のマイクロゴム硬度が36以上であることを特徴とするものである。かかる構成では、本発明者が上述した実験で明らかにしたように、表面平滑性に優れた記録シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様A〜Bの何れかの画像形成装置であって、前記像担持体の構造が、基層とこれの表面上に積層された弾性層とを有する多層構造であることを特徴とするものである。かかる構成では、像担持体に弾性層を設けることで、像担持体に対して、所望の耐久性と所望のマイクロゴム硬度とを発揮させることができる。
[態様E]
態様Eは、態様Dであって、前記像担持体のマルテンス硬度が240未満であることを特徴とするものである。かかる構成では、柔軟性のある像担持体によってプリント速度の高速化を図ることができる。
[態様F]
態様Fは、態様Eであって、前記像担持体のマルテンス硬度が1.1以下であることを特徴とするものである。かかる構成では、本発明者らが上述した実験で明らかにしたように、ピークツウピーク値の比較的低い転写バイアスを用いて、トナーを転写ニップ内で必要な回数だけ往復移動させることができる。
[態様G]
態様Gは、態様Fであって、前記像担持体のマルテンス硬度が0.3以上であることを特徴とするものである。かかる構成では、本発明者が上述した実験で明らかにしたように、表面平滑性に優れた記録シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えることができる。
[態様H]
態様Hは、態様D〜Gの何れかであって、前記像担持体が、前記弾性層の上に積層された表面層を有するものであることを特徴とするものである。かかる構成では、弾性層の硬度と表面層の硬度とを調整することで、像担持体に対して所望のマイクロゴム硬度及びマルテンス硬度を発揮させることができる。また、表面層として離型性に優れた材料からなるものを用いることで、トナーの転写性を向上させることもできる。
[態様I]
態様Iは、態様D〜Gの何れかであって、前記弾性層がゴムを含有する樹脂材料からなることを特徴とするものである。かかる構成では、弾性層に対するゴムの含有比率により、像担持体に対して所望のマイクロゴム硬度及びマルテンス硬度を発揮させることができる。
[態様J]
態様Jは、態様D〜Gの何れかであって、前記弾性層の厚みが240[μm]以上であることを特徴とするものである。かかる構成では、本発明者らが上述した実験で明らかにしたように、像担持体に良好な弾性を発揮させて、表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部に対してトナーを良好に転写することができる。
[態様K]
態様Kは、態様Jであって、前記弾性層の厚みが390[μm]以下であることを特徴とするものである。かかる構成では、本発明者らが上述した実験で明らかにしたように、像担持体を柔らかくし過ぎることに起因する、表面平滑性に優れた記録シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えることができる。
[態様L]
態様A〜Kの何れかにおいて、トナー像の転写対象となる記録シートの表面平滑性に関する情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段による前記情報の取得結果に基づいて、表面平滑性に優れた高平滑シートにトナー像を転写するための高平滑モードと、表面平滑性に劣る低平滑シートにトナー像を転写するための低平滑モードとで転写モードを切り替え、前記低平滑モードにて、前記逆ピーク側デューティーが50[%]未満である低デューティーの転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施する制御手段とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部に対してトナー像を良好に転写しつつ、表面平滑性に優れた記録シートにトナー像を良好に転写することができる。
[態様M]
態様Mは、態様Lにおいて、前記低平滑モードにて、前記交流電圧の一周期内で極性を反転させる転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップ内でトナーを記録シートの表面凹部から像担持体表面に戻して往復移動させることが可能になる。
[態様N]
態様Nは、態様Mにおいて、前記高平滑モードにて、前記逆ピーク側デューティーが50[%]を超える高デューティーの転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高平滑モードで低デューティーの転写バイアスや直流電圧だけからなる転写バイアスを用いる場合に比べて、表面平滑性に優れた記録シートにトナー像を良好に転写することができる。
[態様O]
態様Oは、態様Nにおいて、前記高平滑モードにて、前記交流電圧の一周期内で極性を反転させない転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高平滑モードで極性を反転させる転写バイアスを用いる場合に比べて、画像中の白点の発生を抑えることができる。
[態様P]
態様Pは、態様Mにおいて、前記高平滑モードにて、直流電圧だけからなる転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高平滑モードにて、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、像担持体に付与する電気的な付加を低減して像担持体の長寿命化を図ることができる。
[態様Q]
態様Qは、態様A〜Pの何れかであって、前記像担持体の線速が280[mm/s]を超えることを特徴とするものである。かかる構成では、280[mm/s]を超える線速という超高速で、トナーを表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部に良好に転写することができる。
[態様R]
態様Rは、態様A〜Qの何れかにおいて、前記像担持体たる第二像担持体(例えば中間転写ベルト31)に転写されるトナー像を自らの表面に担持する第一像担持体(例えば感光体2Y,2M,2C,2K)と、前記第一像担持体上のトナーにその正規帯電極性と同極性の電荷を付与する電荷付与手段(電荷付与チャージャー)とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、第二像担持体の硬度を低下させ過ぎないことに加えて、電荷付与手段によって第一像担持体上のトナーに電荷を付与することによっても、高平滑シートへのハーフトーン画像の転写率を向上させることができる。
[態様S]
態様Sは、態様Rにおいて、トナー像の転写対象となる記録シートの表面平滑性に関する情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段による前記情報の取得結果に基づいて、前記電荷付与手段に対する印加電圧を制御する制御手段とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、電荷付与手段に対する印加電圧を適切な値に制御することができる。
[態様T]
態様Tは、態様Sにおいて、前記情報取得手段による前記情報の取得結果に基づいて、前記印加電圧について、表面平滑性に優れた高平滑シートにトナー像を転写する高平滑モード用の値と、表面平滑性に劣る低平滑シートにトナー像を転写する低平滑モード用の値とで切り替えるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高平滑モードと低平滑モードとのそれぞれで、電荷付与手段に対する印加電圧を適切な値に制御することができる。
[態様U]
態様Uは、態様Tにおいて、高平滑モード用の前記印加電圧の絶対値を、低平滑モード用の前記印加電圧の絶対値よりも大きくするように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、低平滑モードで印加電圧を不要に高くすることによるトナーチリの発生を抑えることができる。
[態様V]
態様Vは、態様R〜Uの何れかにおいて、前記第二像担持体の表面移動方向に沿って並びながら前記第二像担持体に当接する複数の前記第一像担持体を設け、それら第一像担持体のうち、少なくとも、前記第二像担持体に転写された後で且つ前記転写ニップに進入する直前のトナー帯電量が最も少なくなるトナー像を担持する第一像担持体について、その表面上のトナーに電荷を付与する前記電荷付与手段を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施例で説明したように、第二像担持体上のトナー像に電荷を付与する構成とは異なり、電荷付与手段によってトナーに電荷を付与することによるハーフトーン画像の転写率の向上を確実に実現することができる。
態様Wは、態様R〜Uの何れかにおいて、前記第二像担持体の表面移動方向に沿って並びながら前記第二像担持体に当接する複数の前記第一像担持体を設け、それら第一像担持体のうち、少なくとも、前記第二像担持体に転写された後で且つ前記転写ニップに進入する直前のトナー帯電量が最も少なくなるトナー像を担持する第一像担持体について、その表面上のトナーに電荷を付与する前記電荷付与手段を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、実施例で説明したように、第二像担持体上のトナー像に電荷を付与する構成とは異なり、電荷付与手段によってトナーに電荷を付与することによるハーフトーン画像の転写率の向上を確実に実現することができる。また、カーボンを含む黒トナーによる黒色のトナー像を担持する第一像担持体だけについて電荷付与手段を設けることで、各色のうち、ハーフトーン画像の転写不良が最も生じ易い同第一像担持体において、重点的に転写不良の発生を抑えることができる。
[態様X]
態様Xは、直流電圧と交流電圧との重畳による重畳電圧からなる転写バイアスを転写電源から出力して、像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに転写電流を流しながら、前記像担持体の表面上のトナー像を前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写する画像形成方法において、前記像担持体としてマイクロゴム硬度が100未満であるものを用い、且つ前記転写バイアスとして、二つのピーク値のうち、前記転写ニップ内でトナーを像担持体側からニップ形成部材側により強く静電移動させる方の転写ピーク値とは逆のピーク値の側におけるデューティーである逆ピーク側デューティーが50[%]未満であるものを用いることを特徴とするものである。