JP2018044252A - ポリエステル系繊維の転写捺染法 - Google Patents
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・ポリエステル繊維への均染性と再現性が求められる為、各色についてそれぞれ昇華性が類似の染料が要求され、使用できる染料が限定される。
・昇華型分散染料は分子量が小さい染料であるので、熱により容易に移動拡散して繊維内部から空気中に飛び出し、他繊維や白場を汚染する。例えば、転写温度が高温であると一旦染まった染料が繊維材料(布帛)から飛び出すので、柄がぼける、転写機器や環境を汚染する問題がある。そこで、200℃以下の転写温度が一般的であり、特許文献4では低温(140℃)で滞留時間を長くする(5分)方法が開示されている。しかし、この方法は生産性上問題があるので、通常、転写温度190〜200℃で30秒〜1分間の条件が採用されている。
・昇華型分散染料で染色された製品の耐熱堅牢度は極めて低く、色相やその他の堅牢度も限定されるので、加工対象製品としてアパレルには不適である。
・昇華転写法に用いられ、転写後剥離された紙には昇華染料が残りアジサイ斑点がある為再生紙には使用できない。
(1)原紙:インク受容層としての糊剤が塗工されていない紙
(2)転写捺染用紙(捺染用紙):インク受容層としての糊剤を塗工した原紙
(3)転写紙:原紙又は転写捺染用紙に染料インクが付与された後の紙
表面のベック平滑度が50秒以上、15000秒以下の原紙に、
平均粒径が0.1μm以上、10μm以下である微粒化された分散染料と、水混和性有機溶剤と、粘度調整剤と、水とを含有し、その粘度(25℃)が30mPas以上、800mPas以下の水性グラビアインクを用いて印刷して転写紙を作製する工程、及び
前記転写紙をポリエステル系繊維材料に密着し、加圧・加熱して、前記水性グラビアインクを、前記ポリエステル系繊維材料に転写捺染する工程からなり、
前記加圧・加熱が、140℃以上、250℃以下の転写温度、0.01MPa以上、5MPa以下の転写圧で行われる事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項1)。
前記水性グラビアインクに含有される水混和性有機溶剤が、炭素数1〜5のモノアルコール類である事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項2)。
前記水性グラビアインクの粘度(25℃)が50mPas以上、500mPas以下である事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項3)。
前記水性グラビアインクに含有される粘度調整剤が、水溶性ポリビニルアルコール及びその誘導体、水溶性ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、水溶性ポリウレタン及びその誘導体、水溶性ポリエチレンオキサイド及びその誘導体、水溶性ポリアミド及びその誘導体、スチレンとアクリル酸の水溶性の共重合体及びその誘導体、水溶性ポリエステル及びその誘導体、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリビニルピロリドン、天然ガム糊、繊維素誘導体、多糖類、海藻類、及び動物性糊料からなる群より選択された1種又は2種以上である事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項4)。
前記水性グラビアインクが、染料溶解剤、分散剤、界面活性剤、保湿剤、pH調整剤、濃染剤、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤、酸化還元防止剤、及び金属イオン封鎖剤からなる群より選択された1種又は2種以上の助剤を更に含有する事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項5)。
前記原紙が、片艶紙、カレンダー加工されたコート紙、グラシン紙、セロハン紙又はキャストコート紙である事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項6)。
前記原紙の坪量が20〜120g/m2である事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項7)。
前記ポリエステル系繊維材料が、ポリエステル系高分子の、フィラメント、紡績糸織物、編物、不織布、シートもしくはフイルム、又は、前記織物、編物もしくは不織布と、天然繊維及びポリエステル系高分子以外の合成繊維からなる群より選ばれる繊維との混紡、混繊、交織品もしくは複合材料である事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である(請求項8)。
本発明ではグラビア印刷がされる原紙として、表面のベック平滑度が50秒以上、15000秒以下、好ましくは、100秒以上、5000秒以下の原紙が用いられる。表面のベック平滑度は、JIS P8119に準拠して行われる測定の測定値であり、紙の表面の平滑性を示す値である。ベック平滑度が50秒未満の原紙を用いると、印刷適性及び発色性(転写時の染色力)が不十分となる。一方、ベック平滑度が15000秒を超える原紙を用いると、印刷適性(インクの流れや滲み)が低下する。
前記の原紙に、分散染料をグラビア印刷法によってインクの状態で付与(プリント)する事により転写紙が得られる。ここで使用される分散染料としては、昇華型分散染料(Eタイプ)及び非昇華型分散染料(Sタイプ又はSEタイプ)のいずれも使用できる。ただ、高温で昇華し難く各種堅牢度の優れた非昇華型分散染料が好ましい。
C.I.ディスパーズイエロー49、56、58、63、67、76、79、82、86、114、121、123、126、149、163、165、180、184、185、192、198、222、226、228、231、
C.I.ディスパーズオレンジ10、13、17、21、29、30、32、50、51、55、61、62、73、96、97、148、
C.I.ディスパーズレッド5、12、13、17、43、54、56、58、64、72、73、74、76、78、82、86、88、90、92、97、107、109、113、121、125、126、127、128、129、134、135、136、137、140、143、145、151、152、153、154、160、167、177、179、181、183、184、188、189、191、202、205、210、221、225、257、258、283、285、288、302、323、356、360、
C.I.ディスパーズバイオレット26、33、35、40、43、46、48、52、58、63、69、77、92、
C.I.ディスパーズブルー7、27、40、54、60、62、73、75、77、79、82、83、85、87、90、94、96、99、102、103、104、113、122、125、128、130、139、142、143、144、146、148、158、165、167、173、174、176、181、183、197、198、200、201、207、211、214、257、259、264、266、270、301、354、
C.I.ディスパーズブラウン1、4、9、13、19、24、25等
を挙げる事ができる。ブラックは、上記の非昇華型分散染料の3原色+αの配合によって作製する事が出来る。
転写紙を作製するためのグラビア印刷には、分散剤と共に微粒化した染料を、粘度調整剤を含有する粘調な水溶液に配合分散させ、粘度を30〜800mPas程度、好ましくは50mPas以上、500mPas以下に調整してなる水性グラビアインクが使用できる。使用できる分散剤としては、ナフタリンスルフォン酸ホルマリン縮合物、メチル又はブチルナフタリンスルフォン酸ホルマリン縮合物、リグニンスルフォン酸、オルフィンPD−003、オルフィンPD−001、オルフィンPD−002W、オルフィンPD−004、オルフィンPD−005、オルフィンPD−201、オルフィンPD−301等を挙げる事が出来る。
本発明の転写捺染は、前記のようにして得られた転写紙とポリエステル系繊維材料(布帛類)を重ね合わせ、加圧・加熱により繊維材料に染料を移行染着させて行われる。加圧・加熱は、温度は140℃以上、250℃以下、圧力(転写圧)は0.01MPa以上、5MPa以下の範囲で行われる。温度や圧力が上限を超える場合は、製品の風合いが劣る傾向があり、一方温度や圧力が下限未満の場合は、発色性が不十分となる傾向がある。非昇華型分散染料の場合は、風合い及び発色性の点から圧力は0.02MPa以上、2MPa以下の範囲が好ましく、より好ましくは、0.02MPa以上、0.3MPa以下の範囲である。
本発明の転写捺染法により転写捺染されるポリエステル系繊維材料としては、ポリエステル系高分子材料を主体とする織物、編物、不織布、シート、フイルム等の単独、又は前記織物、編物、不織布等と、天然繊維やポリエステル系高分子材料以外の合成繊維との混紡、混繊、交織品、複合材料等の繊維材料を挙げる事ができる。ポリエステル系高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、解重合ポリエステル、カチオン可染ポリエステル、常温可染ポリエステル、アルカリ減量ポリエステルと呼ばれるポリエステル系材料を挙げる事ができる。前記天然繊維としては綿、麻、リヨセル、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維材料、絹、羊毛等の蛋白質系繊維材料を挙げる事ができる。合成繊維材料とは、ナイロン、ビニロン、ポリアクリル、ポリウレタン等、ポリエステル系高分子材料以外の公知の合成繊維材料の全てを意味し、更に複合系繊維でも良い。
原紙として、市販のユトリロコート紙(中性紙、坪量46g/m2、ベック平滑度1616秒、北越紀州社製)を用いた。次に、粘度調整剤として、メトローズ65SH・400(信越化学社製)とメトローズ65SH・4000(信越化学社製)、ポバールAP−17(日本酢ビ・ポバール社製)を使用し、水混和性有機溶剤としてイソプロパノール(イソプロパノールと水の合計量に対して30%)を使用して粘度が200mPasの粘調なインク用液を作製した。このインク用液に、非昇華型分散染料であるC.I.Disperse Red86・200%製品(平均粒径1.2μm)を(インク用液に対して)20%配合し、インクの粘度を125mPasに調整して水性グラビア用Magentaインクを作製した。
水性グラビア用インクとして、C.I.Disperse Red92 200%製品20%を配合し、水、セルロース系粘度調整剤、ポリビニルアルコール及びイソプロパノール(イソプロパノールと水の合計量に対して30%)を用いて粘度を110mPasに調整して水性グラビア用インクを作製した。この水性グラビア用インクを用い、実施例1と同様の条件にて、市販のユトリロコート紙(中性紙、坪量55g/m2、ベック平滑度3559秒、北越紀州社製)にプリントして転写紙を得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、市販のグラシン紙(坪量35g/m2、ベック平滑度256秒、日本製紙社製)を使用する以外は実施例2と同様に処理して堅牢で濃色のポリエステル捺染布を得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、市販の片艶晒クラフト紙(坪量60g/m2、ベック平滑度126秒、北越紀州社製)を使用する以外は実施例2と同様に処理して堅牢で濃色のポリエステル織物を得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、市販のキャピタルラップ紙(坪量50g/m2、ベック平滑度2650秒、日本製紙社製)を使用する以外は実施例2と同様に処理して堅牢で濃色のポリエステルニットを得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、市販の純白ロール紙(金シャチ、坪量30g/m2、ベック平滑度190秒、大王製紙社製)を使用する以外は実施例2と同様に処理して堅牢で濃色のポリエステル捺染布を得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、市販のN金藤片面L(酸性紙、坪量59g/m2、ベック平滑度378秒、大王製紙社製)を使用する以外は実施例2と同様に処理して堅牢で濃色のポリエステル捺染布を得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、市販のセロファン紙(坪量30g/m2、ベック平滑度7560秒、レンゴー社製)を使用する以外は実施例2と同様に処理して、インクの流れが多少見られるが、堅牢で濃色のポリエステル捺染布を得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、市販のミラーコート紙(坪量65g/m2、ベック平滑度3478秒、日本製紙社製、キャストコート紙)を使用する以外は実施例2と同様に処理して堅牢で濃色のポリエステル捺染布を得た。
実施例2に於ける市販のユトリロコート紙の代わりに、坪量65g/m2、ベック平滑度45秒の上質紙(日本製紙社製)を使用する以外は実施例2と同様に処理したところ、印刷適性及び発色性とも不良で実用性は無いと判断した。
実施例6に於ける水性グラビアインクの代わりに特許文献5又は7に記載された水性インクジェット用分散染料インクを使用して、実施例6と同様に処理した結果、滲みが大きく、発色性も不良で、実用性は無いと判断した。
Claims (10)
- 表面のベック平滑度が50秒以上、15000秒以下の原紙に、
平均粒径が0.1μm以上、10μm以下である微粒化された分散染料と、水混和性有機溶剤と、粘度調整剤と、水とを含有し、その粘度(25℃)が30mPas以上、800mPas以下の水性グラビアインクを用いて印刷して転写紙を作製する工程、及び
前記転写紙をポリエステル系繊維材料に密着し、加圧・加熱して、前記水性グラビアインクを、前記ポリエステル系繊維材料に転写捺染する工程からなり、
前記加圧・加熱が、140℃以上、250℃以下の転写温度、0.01MPa以上、5MPa以下の転写圧で行われる事を特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法。 - 前記水性グラビアインクに含有される水混和性有機溶剤が、炭素数1〜5のモノアルコール類である事を特徴とする請求項1に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記水性グラビアインクの粘度(25℃)が、50mPas以上、500mPas以下である事を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記水性グラビアインクに含有される粘度調整剤が、
水溶性ポリビニルアルコール及びその誘導体、水溶性ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、水溶性ポリウレタン及びその誘導体、水溶性ポリエチレンオキサイド及びその誘導体、水溶性ポリアミド及びその誘導体、スチレンとアクリル酸の水溶性の共重合体及びその誘導体、水溶性ポリエステル及びその誘導体、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリビニルピロリドン、天然ガム糊、繊維素誘導体、多糖類、海藻類、及び動物性糊料からなる群より選択された1種又は2種以上である事を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。 - 前記水性グラビアインクが、染料溶解剤、分散剤、界面活性剤、保湿剤、pH調整剤、濃染剤、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤、酸化還元防止剤、及び金属イオン封鎖剤からなる群より選択された1種又は2種以上の助剤を更に含有する事を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記原紙が、片艶紙、カレンダー加工されたコート紙、グラシン紙、セロハン紙又はキャストコート紙である事を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記原紙の坪量が、20〜120g/m2である事を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記ポリエステル系繊維材料が、ポリエステル系高分子の、フイラメント、紡績糸織物、編物、不織布、シートもしくはフイルム、又は、前記織物、編物もしくは不織布と、天然繊維及びポリエステル系高分子以外の合成繊維からなる群より選ばれる繊維との混紡、混繊、交織品もしくは複合材料である事を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法を使用する事を特徴とする転写紙の製造方法。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法により作製された事を特徴とする転写捺染されたポリエステル系繊維材料。
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