JP7222486B2 - ポリエステル系繊維材料の転写捺染法及び転写捺染されたポリエステル系繊維製品の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、前記水溶性糊剤の代わりに染料と親和性を有する非水溶性樹脂を用いてインク受容層を形成すると、染料が非水溶性樹脂に捕まえられるため染料の有効転写率が低下する。
フルカラーでデジタルデータや画像データをそのままプリントできる、
写真の様に細かいデザインや文字をシャープに仕上げることが出来る、
グラデーションの再現が容易である、
工程が単純で排水が出ないため、環境にやさしい加工法である、
樹脂(接着剤)を用いる顔料プリント法に比べて繊維の硬化が無く風合いが優れている、等のメリットが考えられている。
一方、昇華転写されたポリエステル生地にアイロンや乾燥機により熱をかけたとき、染料が気化して、色落ち、他繊維への色移りが発生する等のデメリットが考えられており、製品の物流段階で倉庫や船舶内で高温に晒されて多量に不良品が発生したとの事例がある。又、昇華型染料は一般的に紫外線に弱いという特徴があるため、日光に晒されると退色し易いという問題もある。
又、使用後の昇華転写用紙は、再生紙としてリサイクル使用できないと言う問題もある。
しかしながら、非昇華型分散染料は昇華性が無く気化が極めて少ない染料であるので、発色濃度(染色力、染料の有効転写率)を高めるためには温度を上げて染料を溶融させる必要があり、この転写法は、工業的に望まれる転写時間1分以内の下では、転写温度は210~230℃で実施されている。一方、ポリエチレンテレフタレート繊維の融点は紡糸条件や糸の形状、織り方によって異なるが、232~267℃、ガラス転移点は68~81℃であり、転写温度が200℃を超えて高くなればなるほど繊維は硬化して風合いは悪化する。従って、200℃を超える高温転写が求められるこの転写法によれば、風合いが悪化して商品価値を失う可能性が高く、極端な場合は繊維が溶融して板状になり商品価値を完全に失うことがあるとの、致命的な欠点がある。
ポリエステル系繊維材料の捺染に関しては、特許文献3、4、5に記載されているような昇華転写法が提案されているが、製品の耐熱性及び耐光性すなわち堅牢度が劣るとの品質問題があり、アパレルには不向きと言われている。
特許文献6、7に記載されているような最新の方法によってそれらの問題は解決されたが、この方法では、発色濃度を高めるためには、高温で転写する必要があり、その結果、繊維材料を劣化させ風合い悪化という品質問題を生じるとの問題があった。
本発明は、前記の公知の捺染法、染色法の経済性の問題、排水負荷が大きいとの環境問題及び堅牢度が劣る等の問題を改良するとともに、さらに前記の高温で転写する方法の風合い悪化という品質問題を解決する方法であり、あらゆるアパレル製品の染色加工に適用可能で、環境に優しいエコロジーな新しい染色加工法を提供するものである。
即ち、本発明は、優れた経済性、環境対応性、堅牢度を維持するとともに、高温でダメージを受ける繊維材料の風合い悪化問題を解決しながら優れた染色力を得ることができる染色加工法を提供するものである。
非昇華型分散染料によるポリエステル系繊維材料の転写捺染法であって、
基材に、IOB値が0.05~0.80である非水溶性極性有機化合物を付与して転写用紙を作製する工程、
前記転写用紙の上に非昇華型分散染料からなるインクを印刷して転写紙を作製する工程、
前記転写紙をポリエステル系繊維材料に密着して加圧・加熱する工程
を有することを特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である。
非昇華型分散染料によるポリエステル系繊維材料の転写捺染法であって、
基材上に、非昇華型分散染料からなるインクを印刷した後、IOB値が0.05~0.80である非水溶性極性有機化合物を付与して転写紙を作製する工程、
前記転写紙をポリエステル系繊維材料に密着して加圧・加熱する工程
を有することを特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法である。
さらに、本発明は、
現在染色業界で多用されている既設のドラム型昇華転写機、又は平板型転写装置を活用してポリエステル系合成繊維材料の堅牢で転写効率の良い転写捺染ができる、
前記特定の物性の化合物としては、安価な化合物を使用できるので、安価な紙又はフイルムを使用して捺染用紙を安価に作製できる、
公知の転写捺染法における不良品発生問題を解決出来る、
排水負荷を削減できる、
製品の風合いを維持出来る、
工程が1工程で済むので優れた生産性と省エネ性を達成出来る
等の利点を有する。
すなわち本発明は、風合、繊細性、堅牢性、染色性等の卓越した転写捺染性能を示すとともに、資材コストの削減、加工の再現性向上、水の使用量と排水負荷の削減、生産効率の向上を図ることができ、前記した公知方法の問題点(経済性、環境問題、堅牢性、風合い等の品質問題)を一挙に解決するものであり、コスト競争力の優れたエコノミカルな、かつ、排水負荷の無い等のエコロジー性に優れたエコロジカルな実用性の高い新規な転写捺染法を提供するものである。
ここで、IOB値とは、例えば特許第5378753号公報、特にその段落0007にて説明されているものであり、有機概念図により定義される。「有機概念図」とは、すべての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素原子数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。そして、IOB値とは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。
より具体的には、トリエチルヘキサノイン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、トリセデス-2、トリオレイン酸ソルビタン、トリカプリリン、ニコチン酸トコフェロール、ネオペンタン酸イソデシル、ノナン酸オクチル、パーム核油、バチルアルコール、パルミチン酸、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸グリコール、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Ba、ステアリン酸Mg、パルミチン酸Ca、ヒマシ油、ヒマワリ油、フェニルフェノール、フェネチルアルコール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、テレフタル酸ビス(2エチルヘキシル)、トリメリット酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル、安息香酸グリコールエステル、へプタン酸ステアリル、ホホバ油、ポリメタクリル酸エチル、マレイン酸ジオクチル、ミリスチルアルコール、ミリスチン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、メチコン、メトキシケイヒ酸オクチル、メントール、ヤシアルコール、ヤシ油、ユーカリ油、安息酸アルキル、水添ヒマシ油、アビエチン酸、ロジン、天然バター、マーガリン、分子量が600~2000相当のポリプロピレングリコール、アジピン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸、ウンデシル酸、オリーブ油、オレイルアルコール、ヤシ脂肪酸、ラウリン酸、リノール酸、オレイン酸、カプリン酸、グラニオール、コーン油、ゴマ油、サリチル酸オクチル、ジオクタンサングリコール、セタノール、大豆油、ツバキ油、ナタネ油、トコフェノ-ル等や、特許第5378753号公報段落0015記載の極性油分等を挙げることが出来る。又、日本エマルジョン社の総合カタログに記載があるIOB値が0.05~0.80の範囲に入る化合物も使用できる。
例えば、前記非水溶性極性有機化合物と助剤の合計の質量に対する見かけの質量%として、分散剤又は乳化剤等の界面活性剤を1~25%、コラーゲン、ゼラチン等や、澱粉、セルロース、加工澱粉例えば酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉、加工セルロース例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、セルロースサルフェート、アルギン酸ソーダ、アラビアガム等の植物系化合物等の増粘剤又は分散補助剤を0.5~15%、PVAの様な水溶性高分子を0~15%、尿素等の濃染化剤を1~10%、防腐剤、防黴剤、消泡剤、脱気剤、還元防止剤、及び金属イオン封鎖剤等を0.1~5%配合すると好ましい結果が得られる。
基材としての紙にはサイズ剤、紙力増強剤、填料、顔料等を含有させることが出来る。
カオリン、炭酸カルシュウム等の顔料、澱粉、ラテックス等の接着剤、及び分散剤、消泡剤等を混合した塗料を、基材の片面又は両面に塗工して印刷適性を高めた塗工紙も基材として用いることができる。
紙の吸水性やしわ発生を制御するために、紙の上にクレイ、合成樹脂等の目止め剤を塗布した紙(目止め紙)も基材として用いることができる。目止め紙は、前記非水溶性極性有機化合物や助剤の紙内部への吸収を抑え、塗布量を少なくできるので好ましい。更に、カレンダー処理、ヤンキードライアー処理して基材の表面を物理的に平滑処理又は艶出し加工した紙も基材として用いることができる。
基材への付与は、基材への塗布、噴霧又は浸漬等により行われ、その後乾燥することにより、非水溶性極性有機化合物等が基材に吸収され又は基材表面に積層され、インク受容層兼染着促進層が形成される。基材への付与を、塗布、噴霧により行えば、基材表面に非水溶性極性有機化合物等からなるインク受容層兼染着促進層が形成されるので好ましい。
又、前記助剤を付与する場合は、前記非水溶性極性有機化合物と一部の助剤は、別工程で基材へ付与することもできるが、非水溶性極性有機化合物と助剤の混合物として付与すれば一つの工程で付与を完結できるので好ましい。
微粒化法としては、水や他の配合物を配合し水分散液としてビーズミルの様なミルによって微粒化する機械的方法の他に、固体の融点以上に加熱するメルト微粒化法を挙げることができる。塗工機の機種により水分散液の最適粘度は異なるが、水や増粘剤等の配合物の量の調整により粘度の調整は容易である。
非水溶性極性有機化合物が液体(オイル)の場合は、そのまま塗布することもでき、最も合理的であるが、有機溶剤に希釈して塗布する、又は水に乳化剤と共にエマルジョン化して塗布することも可能である。
塗布時に水はじき又は紙の収縮現象を生じ基材への均一塗布が困難な場合があり得るが、配合物の種類、前記水分散液の固形分、粘度の調整、アニオン系、ノニオン系界面活性剤、アルコール類等の表面張力低下剤の使用とその添加量の調整等を、紙の種類や処方条件により個々に行えば均一塗布が可能である。
非昇華型分散染料のインクの付与は、インクジェットプリント法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、キスタッチロール印刷法等の各種印刷法により図柄を印刷して行うことができ、無地の場合は、無地ロールによってベタ印刷して行うことができる。無地ロールとしては、ブレードコーター、コンマダイレクトコーター、リップコーター、グラビアコーター、コンマリバースコーター、エアナイフコーター等の各種コーターを挙げることができる。インクの付与後乾燥して転写紙を作製する。
インクとしては油性インクを使用しても良いが、職場の安全衛生、環境問題、危険物の取扱い、経済性を考えると水性インクの使用が望ましい。
インクジェットプリンターに使用するインクの場合は、分散剤共存下、公知の方法で平均粒径0.1μm程度まで微粒化した染料に更に分散安定化剤、乾燥防止剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、PH調整剤、防腐剤、防黴剤、金属イオン封鎖剤、消泡剤、脱気剤等を添加・混合して、微量の不溶物を1ミクロン以下のメンブレンフィルターでろ過・脱気したものが使用される。グラビア印刷で使用されるインクの場合は、分散剤と共に平均粒径1~2μm程度に微粒化した染料を、増粘剤を含有する粘調な水溶液に配合分散させ、粘度を80~500mPas程度に調整して使用できる。
この加圧・加熱の条件としては、温度が150~205℃、処理時間は20秒~5分間、圧力は100g/cm2~1kg/cm2が好ましい。温度は180~200℃の範囲がより好ましく、圧力は200~600g/cm2の範囲がより好ましい。高温、高圧になればなるほど熱処理時間は短縮されるが、温度が205℃を超えると転写捺染された繊維製品の風合いが低下し易くなる。本発明の転写捺染法によれば、風合いの低下を生じ難い150~205℃で、20秒~5分間の処理時間で、そして工業的により好ましい180~200℃、30~60秒の処理条件でも、良好な発色性(高い発色濃度)を得ることができる。
ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、解重合ポリエステル、カチオン可染ポリエステル、常温可染ポリエステル、アルカリ減量ポリエステル等のポリエステル系材料の織物、編物、不織布、シート等の単独からなる繊維材料、
前記ポリエステル系材料を主体とし天然繊維材料及び/又は合成繊維材料等を含有する混紡、混繊又は交織品等を挙げることができる。
ポリエステル系繊維材料が含有してもよい前記天然繊維材料としては、綿、麻、リヨセル、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維材料、絹、羊毛、獣毛等の蛋白質系繊維材料を挙げることができ、合成繊維材料としては、ナイロン、ビニロン、ポリアクリル、ポリウレタン等の公知の合成繊維材料の全てを意味し、更に各種素材を糸の段階で混ぜる複合系繊維でも良い。
クラボウ社製、グラビア印刷試験機GP-10、ヘリオ版230μを用いて、ブラックインキを25℃、10~20m/minの条件で転写用紙に印刷した転写紙により、ポリエステルタフタ(目付45g)に対して転写発色した生地を、コニカミノルタ社製、色彩色差計、CR-400を使用して、明度L値を測定し染色力(発色性)を評価した。
特にブラックの場合は、色彩色差計の明度L値が発色濃度の濃淡を表しており、L値が小さいほど発色濃度が高い(濃く染まっている)ことを表している。ブラックのL値が22~25の場合は発色性極めて良好、L値が25~28の場合は発色性良好、L値が28~31の場合は発色性やや不良、L値が31~34の場合は発色性不良、L値が34以上の場合は発色性極めて不良と評価できる。
肉眼で染色された製品の発色性を評価し、ブラックの発色性のL値が22以上25未満の場合と同等の場合を◎、L値が25以上28未満の場合と同等の場合を〇、L値が28以上31未満の場合と同等の場合を△、L値が31以上34未満の場合と同等の場合を×、L値が34以上の場合と同等の場合を××と判定した。
[風合いの評価]:生地の硬さ、柔軟性を、KESシステム等により、染色前原布と比較して判定した。
◎:繊維材料の風合いが原布と比べて著しく優れている。
○:繊維材料の風合いが原布と同等かやや優れている。
△:繊維材料の風合いが原布と比べてやや劣る。
×:繊維材料の風合いが原布と比べて明らかに不良である。
××:繊維材料の風合いが原布と比べて極めて不良である。
特許文献6(特許第6173641号公報)に記載の実施例1と同様にして、ソルビトーゼC-5(エーテル化澱粉:AVEBE社製):20g、FDアルギンBL(アルギン酸ソーダ:古川化学工業社製):20g、EX-100(タマリンドガム:トモエ製糊社製):20g、酒石酸:40g及びイオン交換水:400gの計500gの混合物を、高速デスパー型攪拌機(3000r.p.m.)でよく攪拌し、均一で滑らかな高粘度ペーストを作った。この混合物(高粘度ペースト)を、塗工機(コンマコーター)を使用して紙(日本製紙社製、ノーカーボン原紙、坪量40g/m2)に均一に塗布・乾燥した。塗工量(乾燥重量)は8g/m2であった。塗布・乾燥後カレンダー処理をして塗工紙を得た。この塗工紙を転写用紙B(比較例1として使用)と言う。
転写用紙Bに対して、クラボウ社製、グラビア印刷試験機GP-10のヘリオ版230μの版を用いて25℃、10m/minの条件で、オレイン酸(IOB値:0.42、融点13.4℃)を塗布し、オレイン酸が塗布量7.19g/m2で塗布された転写用紙Aを作製した(実施例1として使用)。
一方、オレイン酸を塗布して転写用紙を作製することによって、非昇華型分散染料を用いたにも拘わらず、昇華染料を用いる場合と同等の低温短時間の転写条件によって良好な発色性を実現し、実用性がある所まで発色性が改良できることを示している。
なお、実施例1に於いて転写温度を215~220℃に上げると繊維材料の風合いが悪くなり(△~×)、実用的価値が失われる。
オレイン酸の代わりにオリーブオイル、菜種油、亜麻仁油、分子量1,000のポリプロピレングリコール(PP1000と略記)、又はパルミチン酸:オレイン酸=1:1の混合物、へプタン酸ステアリル、ウンデシル酸、又はカプリン酸を塗布した以外は、実施例1と同様に実施し、それぞれ実施例2、3、4、5、6、7、8、9とした。又、実施例1に於けるオレイン酸の代わりにワセリン、分子量200のポリプロピレングリコール(PP200と略記)を塗布した場合についても同様に実施し、それぞれ比較例2、3とした。又、オレイン酸等の塗布をせずに比較例1と同様に実施した場合を比較例4とした。転写条件は、実施例1と同じ、200℃、300g/cm2、36秒である。得られたポリエステル染色布について、前記の方法、基準で、発色後のL値、発色性を評価し、その結果を表2に示す。
又、実施例2~9では、風合いも優れている(評価は○)。
水:64.67g、メトローズ90SH-100(信越化学工業製:加工セルロース):2g、パルミチン酸(IOB値:0.47、日本油脂社製、粉体):33.3gの混合物を80~82℃で15分間攪拌した。次いで40℃に冷却し、水:201.7g、メトローズ90SH-100:4g、尿素:23.3g、酒石酸:4gを加えて更に15分間攪拌して得た分散液を、200メッシュの網でろ過して、固形分20%、パルミチン酸分10%の分散液を作製した。この分散液中のパルミチン酸の平均粒径は19.4μmであった。
この分散液を、ノーカーボン原紙(日本製紙社製、坪量40g)にワイアバーを用いて塗布し転写用紙を作製した。ワイアバーの番手を変えることによって塗布量を変化させ、固形分のドライ換算塗布量が、それぞれ、12.21g/m2、19.23g/m2、25.04g/m2となる様に塗布した。
この転写用紙に実施例1と同じ条件で、ブラックインクをグラビア印刷して転写紙を作製し、得られた転写紙を、ポリエステルタフタ生地(目付45g/m2)に密着させ、実施例1と同じ条件で加熱・加圧することによってポリエステルタフタ生地に染料を染着させた。その後、転写紙を除去して得られたポリエステル染色布について、前記の方法で発色後のL値を測定した。
実施例10(塗布量12.21g/m2の場合): L値=24.75、
実施例11(塗布量19.53g/m2の場合): L値=23.89、
実施例12(塗布量25.04g/m2の場合): L値=23.38
実施例10~12で得られたポリエステル染色布は濃厚・繊細に染着しており(染色性の判定は◎)、繊維の風合は良好であり(判定は○)、昇華堅牢性(変、汚)はいずれも4級以上であった。
分散液の組成を、水:67.8g、メトローズ90SH-100:0.94g、パルミチン酸:15.63g、尿素:6.25g、ラベリンFMP(花王社製分散剤、ナフタリンスルフォン酸ナトリウムホルマリン縮合物):9.38gからなるものに変えた以外は実施例10、11、12に於ける分散液の作製と同様に処理して、固形分32.2%、パルミチン酸分15.6%の分散液を作製した。この分散液中のパルミチン酸の平均粒径は7.3μmであった。
基材の種類を表3に示すように変えて、前記分散液を、それぞれの基材にワイアバーを用いて塗布し転写用紙を作製した。この転写用紙に実施例1と同じ条件で、ブラックインクで印刷して転写紙を作製し、得られた転写紙を、ポリエステルタフタ生地(目付45g/m2)に密着させ、実施例1と同じ条件で加熱・加圧することによってポリエステルタフタ生地に染料を染着させた。その後、紙を除去して得られたポリエステル染色布について、前記の方法、基準で、発色後のL値、発色性を評価し、又均染性も評価した。その結果を表3に示す。
転写条件を、190℃、300g/cm2、50秒とした以外は実施例13と同様に実施してポリエステル染色布を得て、同様にしてL値、発色性、均染性を評価したところ、濃厚・繊細に染着しておりL値は26.5、発色性は○、均染性は良好であった。又、繊維の風合は良好(○)であった。
転写条件を、180℃、300g/cm2、60秒とした以外は実施例16と同様に実施してポリエステル染色布を得て、同様にしてL値を評価したところ、濃厚・繊細に染着しておりL値は25.0であった。又、繊維の風合は良好(○)であった。
非昇華型分散染料として、Disperse Blue 60を使用する以外は実施例13と同様に実施してポリエステル染色布を得て、同様にして発色性等を評価したところ、鮮明・濃色に発色した(発色性○)染色布が得られており、その染色布の昇華堅牢度は4級、耐光堅牢度は4級以上であった。又、繊維の風合は良好(○)であった。
基材として、ノーカーボン原紙の代わりに、東洋紡ポリエステルフイルムE5101(厚さ25μm、坪量35g、片面コロナ処理したフイルムに、ファインガムHEL-3:10%とオルフインE1004:3%を含有する混合物を5g/m2下塗りしたフイルム)を用い、非昇華型分散染料として、Disperse Blue 60を使用した以外は、実施例10と同様に実施した結果、鮮明・濃色に発色した(発色性○)ポリエステル染色布が得られ、この染色布の昇華堅牢度は4級、耐光堅牢度は4級以上であった。又、繊維の風合は良好(○)であった。
Claims (12)
- 非昇華型分散染料によるポリエステル系繊維材料の転写捺染法であって、
基材に、IOB値が0.05~0.80である非水溶性極性有機化合物を付与して転写用紙を作製する工程、
前記転写用紙の上に非昇華型分散染料からなるインクを印刷して転写紙を作製する工程、
前記転写紙をポリエステル系繊維材料に密着して加圧・加熱する工程
を有することを特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法。 - 非昇華型分散染料によるポリエステル系繊維材料の転写捺染法であって、
基材上に、非昇華型分散染料からなるインクを印刷した後、IOB値が0.05~0.80である非水溶性極性有機化合物を付与して転写紙を作製する工程、
前記転写紙をポリエステル系繊維材料に密着して加圧・加熱する工程
を有することを特徴とするポリエステル系繊維材料の転写捺染法。 - 前記非水溶性極性有機化合物の基材への付与が、前記非水溶性極性有機化合物の1種単独もしくは2種以上の混合物及び助剤との混合物として、固体を分散した状態又は液体の状態で基材上への塗布により行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記助剤が、セルロース誘導体、分散剤、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、濃染化剤、表面張力調整剤、水溶性高分子、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤、金属イオン封鎖剤及び還元防止剤からなる群より選択された1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記非水溶性極性有機化合物が、IOB値が0.10~0.70の非水溶性極性有機化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記非水溶性極性有機化合物が、高級脂肪酸類、高級脂肪酸類のエステル、高級脂肪酸類の金属塩、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールのエステル、芳香族カルボン酸類及び芳香族カルボン酸エステル化合物からなる群より選択された1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記非水溶性極性有機化合物が、UV吸収性化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記非昇華型分散染料からなるインクが、Sタイプ又はSEタイプの分散染料の中から選択された1種又は2種以上の分散染料を用いたインクジェット用インク、グラビアインク、又はフレキソインクであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記転写紙をポリエステル系繊維材料に密着して加圧・加熱する工程が、100g/cm2~1kg/cm2に加圧した状態で、150~205℃に加熱して行われることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 前記ポリエステル系繊維材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、解重合ポリエステル、カチオン可染ポリエステル、常温可染ポリエステル及びアルカリ減量ポリエステルからなる群より選ばれるポリエステル系繊維の織物、編物、不織布、シートもしくはフイルム、又は前記ポリエステル系繊維と他の合成繊維及び天然繊維からなる群より選ばれる繊維との混紡、混繊又は交織品であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法。
- 請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のポリエステル系繊維材料の転写捺染法を含むことを特徴とする転写捺染されたポリエステル系繊維製品の製造方法。
- 非昇華型分散染料によるポリエステル系繊維材料の転写捺染法に使用される転写用紙であって、基材及び前記基材に付与されたIOB値が0.05~0.80である非水溶性極性有機化合物を有することを特徴とする転写用紙。
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